(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示すドライエッチング装置10は、真空チャンバー12と、電極板14と、基台16と、リング状電極としてのフォーカスリング18とを備える。電極板14は、円板状の部材であり、支持リング20によって真空チャンバー12内の上部に固定されている。支持リング20は、絶縁部材であるシリコンで形成されている。電極板14は、厚さ方向に貫通した複数の貫通穴15を有する。電極板14は、高周波電源26が電気的に接続されている。電極板14は、ガス供給管24が接続されている。ガス供給管24から供給されたエッチングガスは、電極板14の貫通穴15から真空チャンバー12内へ流れ込み、排出口28から外部に排出される。
【0012】
基台16は、真空チャンバー12内の下部に設置されており、その周囲はグラウンドリング30で囲まれている。グラウンドリング30は絶縁部材であるシリコンで形成されており、接地されている。基台16上には、フォーカスリング18が設けられている。フォーカスリング18は、絶縁部材であるシリコンで形成され、ウエハ22の周縁を支持する凹部19が内側の全周に渡って形成されている。
【0013】
ドライエッチング装置10は、電極板14を通じてエッチングガスが供給され、高周波電源26から高周波電圧が印加されると、電極板14とウエハ22の間でプラズマを生じる。このプラズマによってウエハ22表面がエッチングされる。
【0014】
図2に示すように、フォーカスリング18は、リング体32と、接合部(本図には図示しない)を介して接合されたカバー体34とを有する。リング体32は、絶縁部材であるシリコンで形成され、ウエハ22の周縁を支持する凹部38が、一側表面内側の全周に渡って形成されている。リング体32のシリコンは、単結晶でも多結晶でもよく、その製造方法、純度、結晶方位等において限定されない。凹部38を除く一側表面(凸部)には、カバー体34が設けられている。カバー体34は、シリコンよりもプラズマ耐性に優れた材料、例えばSiCで形成されたリング状の部材である。カバー体34は、リング体32の凸部39を覆うように幅が凸部39と同じであると共に、厚さが0.5〜5.0mmであるのが好ましい。
【0015】
図3に示すように、接合部36は、リング体32の凸部39表面(以下、接合面ともいう)33とカバー体34の接合面35の間に設けられている。接合部36は、150℃以上の耐熱性を有し、700℃以下で融解する。接合部36は、300℃以上の耐熱性を有するのがより好ましい。本実施形態の場合、接合部36は、シリコンと共晶合金を形成する金属を含むシリコンとの共晶合金である。シリコンと共晶合金を形成する金属は、In、Sn及びAlのいずれか(以下、「合金形成金属」ともいう)である。合金形成金属の純度は、シリコンと共晶を形成することが可能であれば特に限定されず、好ましくは98%以上である。
【0016】
次にフォーカスリング18を製造する方法について説明する。まずリング体32及びカバー体34に対し表面処理をする。具体的には、リング体32及びカバー体34の表面を研削及び研磨などにより加工し、好ましくは鏡面にする。リング体32及びカバー体34の表面を、弗酸と硝酸の混合液などによりエッチングしてもよい。混合液としてはJIS規格H0609に規定の化学研磨液(弗酸(49%):硝酸(70%):酢酸(100%)=3:5:3)などを用いることができる。
【0017】
続いて、リング体32の凸部39の表面33に、合金形成金属箔を配置する。合金形成金属箔の厚みは、融解させるためのエネルギーが少なくて済む点では薄い方がよい。合金形成金属箔は、接合強度を得るために0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましい。合金形成金属箔は、上記下限値より薄いと接合面33に合金形成金属箔を載せる際に破損し易い。合金形成金属箔は、上記上限値より厚いと、シリコンとの接合が十分ではない部分が生じやすい。
【0018】
続いて、合金形成金属箔上に、カバー体34を置く。カバー体34は、先に配置されたリング体32に対し、同軸上に配置する。上記のようにして、先に配置されたリング体32上に、合金形成金属箔を介して、カバー体34が重ねられた状態となる。
【0019】
次に、カバー体34側から加熱して、シリコンと合金形成金属を含む融解物を生成する。加熱方法は特に限定されず、抵抗加熱、光加熱等により行うことができる。加熱部位を容易に移動でき、かつ供給する電力に応じて加熱量を変化させることが容易である点で、光加熱が好ましく、例えば各種ランプ、レーザーが使用される。
【0020】
本実施形態の場合、
図4に示す装置を用いることができる。本図に示す装置は、少なくとも一つの、ランプ48及び当該ランプ48が出射する光を集光する集光部50を備える。ランプ48としては、赤外線結晶成長装置に一般的に用いられるキセノンランプやハロゲンランプを用いることができる。出力としては1〜30kW程度のものが好ましい。
【0021】
加熱は、カバー体34の上側から行う。上側であればよく、カバー体34に対して垂直方向上側には限られず、斜め上側からであってもよい。加熱により先ず合金形成金属箔が融解し金属融解物が生成する。次いで、該金属融解物に接しているカバー体34及びリング体32の接合面33,35がこの金属融解物に侵され、シリコンを含む融解物が生成される。加熱を止めて温度が低下すると、該融解物が共晶を含む合金相を形成しながら凝固し、接合が完成するものと考えられる。例えば、Al箔を用いた場合、800℃程度までの加熱で十分にリング体32及びカバー体34を接合することができる。
【0022】
集光領域は、通常直径10〜30mm程度である。集光領域は、該ランプの発光位置を楕円ミラーの焦点からずらすことにより、30〜100mm程度に広がる。集光領域が広がることにより、加熱範囲をひろげることができる。該集光領域を金属箔、リング体32及びカバー体34の表面全体に亘って走査させて加熱するのが好ましい。
【0023】
次に、シリコンと合金形成金属とを含む融解物を冷却し固化させることにより、共晶合金を含む接合部36を生成する。以上により、リング体32及びカバー体34を接合し、フォーカスリング18を製造することができる。
【0024】
合金形成金属がAlの場合、約577℃まで冷却すると、Al−シリコン共晶物(12.2原子%Al)を含む接合部3636が生成する。冷却速度は、使用する合金形成金属に応じて異なるが、Alを使用する場合には10〜100℃/分となるように制御することが好ましい。冷却速度が前記下限値未満では冷却時間が長くなり、効率が悪い。冷却速度が前記上限値より大きいと接合部36中に歪が残る傾向がある。
【0025】
冷却速度は、合金形成金属箔の融解が完了した後、加熱手段の出力を徐々に低下させて、接合部36の温度が共晶物の融解温度より低くなったと推測されたときに加熱を停止することによって制御することができる。このような加熱温度の制御は、例えば実際に貼り合わせるカバー体34と同様な形状の熱電対をリング体32及びカバー体34の間に設置し、あらかじめ加熱手段のパワーと温度の関係を測定しておき、該測定結果に基づき行うことができる。
【0026】
上記の加熱による融解物の生成、冷却による共晶合金を含む接合部36の生成は、合金形成金属及びシリコンの酸化を防ぐために10〜200torr(約1333〜26664Pa)のアルゴン雰囲気のチャンバー内で行うことが好ましい。アルゴンガスを使用せずに、減圧することによって酸化を防ぐこともできるが、減圧にするとシリコンの蒸発が起き、チャンバー内が汚染される場合があるので好ましくない。また窒素ガスによっても酸化を防ぐことはできるが、1200℃以上でシリコンの窒化が起こるため、好ましくない。
【0027】
上記のようにして得られたフォーカスリング18は、ドライエッチング装置10の真空チャンバー12内に設置され、エッチング処理に供される。フォーカスリング18は、使用頻度に応じ、厚さが減少する。カバー体34がウエハ22に面した状態でフォーカスリング18が設置されるので、カバー体34の厚さが減少していく。カバー体34の厚さの減少量が所定値を超えた場合、カバー体34は交換される。
【0028】
上記のようにフォーカスリング18は、SiCで形成されたカバー体34を備えることにより、シリコンのみで形成された従来のフォーカスリングに比べ、耐久性に優れるので、交換頻度を低減することができる。
【0029】
交換された使用済のフォーカスリング18におけるリング体32は、リング体32に対しカバー体34を新品に交換することにより、再利用することができる。リング体32に対しカバー体34を新品に交換するには、まずフォーカスリング18を600℃以上に加熱して接合部36を融解し、カバー体34をリング体32から分離する。次いでリング体32表面から研削加工により共晶合金を除去する。その後、上記フォーカスリング18を製造する方法と同じ手順で、リング体32にカバー体34を接合することにより、新品のフォーカスリング18を得ることができる。
【0030】
上記のようにフォーカスリング18は、接合部36を再加熱して融解することにより、厚さが減少したカバー体34を交換することができる。したがってフォーカスリング18は、リング体32を再利用することができるので、交換によって生じる部材の無駄を低減することができる。
【0031】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0032】
図2に示したリング体32は、一体物であるが、本発明はこれに限らず、円周方向に3分割以上されたシリコン部材により形成してもよい。3個以上分割されていることにより、より小さいウエハ用シリコン結晶インゴットから切り出したシリコン部材を用いてより大きいリング体32を得ることができる。
【0033】
図2に示したカバー体34は、一体物であるが、本発明はこれに限らず、円周方向に3分割以上された部材により形成してもよい。
【0034】
上記実施形態の場合、カバー体34は、リング体32の凸部39の表面33に設ける場合について説明したが、本発明はこれに限らず、凹部38、内周面、外周面、他側表面のいずれか、または全面に設けてもよい。
【0035】
上記実施形態の場合、合金形成金属箔を用いてリング体32及びカバー体34を接合する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。合金形成金属の粉体又は粒子を用いても電極部材同士を接合することは可能であると考えられる。
【0036】
上記実施形態の場合、接合部36は、合金形成金属を含む場合について説明したが、本発明はこれに限らず、酸化ホウ素を含むこととしてもよい。接合部36が酸化ホウ素を含む場合のフォーカスリング18の製造方法について以下、説明する。
【0037】
まず、上記実施形態と同様に表面処理をしたリング体32を第1の温度(180〜280℃)に加熱し、リング体32の接合面の少なくとも一部に、粒子状のホウ酸(B(OH)
3)からなる出発原料を供給する。リング体32は、一般的な電気抵抗ヒーターを用いた加熱手段により加熱することができる。接合面33の温度が180〜280℃であるので、この接合面33上ではホウ酸の脱水反応が生じる。水は、10〜60秒程度でホウ酸から脱離し、メタホウ酸(HBO
2)を生じる。脱離した水にメタホウ酸が溶解し、流動性に富む液体状物になる。
【0038】
リング体32の温度が低すぎる場合には、ホウ酸から水を脱離させてメタホウ酸を得ることができない。一方、リング体32の温度が高すぎると、ホウ酸から水が急激に脱離する。それによって、リング体32の接合面33に供給されたホウ酸が飛び散ったり、固化したメタホウ酸が直ちに生じてしまう。第1の温度が180〜280℃であれば、より確実にメタホウ酸を得ることができる。第1の温度は、200〜240℃が好ましい。
【0039】
粒子状のホウ酸からなる出発原料としては、直径0.1〜2mmの顆粒状の市販品を、そのまま用いることができる。直径が0.1〜2mmのホウ酸からなる出発原料を、第1の温度に加熱されたリング体32の接合面33に供給することによって、後述するようなメタホウ酸を含む層を形成することができる。ホウ酸は、リング体32の接合面33の一部に少量ずつ供給することが好ましい。
【0040】
ホウ酸から水が脱離して生じた液体状物をヘラで延ばすことによって、メタホウ酸を含む層が得られる。上述したようにリング体32の接合面33に、出発原料としてのホウ酸を少量ずつ供給し、生じた液体状物をその都度延ばすことによって、均一なメタホウ酸を含む層を接合面33に形成することができる。ヘラとしては、ウエハを切断して得られたものを用いることで、メタホウ酸を含む層への不純物の混入は避けられる。
【0041】
メタホウ酸を含む層の厚さは、1mm以下であることが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。メタホウ酸を含む層の厚さが薄いほど、後の工程で加熱された際に、脱水反応による泡の発生を抑制することができる。メタホウ酸を含む層の厚さは、供給する出発原料としてのホウ酸の量を制御して、調整することができる。
【0042】
接合面33にメタホウ酸を含む層が形成されたリング体32を加熱して、第2の温度(500〜700℃)に昇温する。その結果、メタホウ酸から水がさらに脱離して、酸化ホウ素(B
2O
3)を含む溶融物が得られる。第2の温度が高すぎる場合には、後の工程で冷却した際に、酸化ホウ素とシリコンとの熱膨張係数の違いによって、リング体32及びカバー体34に割れが生じるおそれがある。第2の温度が500〜700℃であれば、より確実に酸化ホウ素を含む溶融物を得ることができる。第2の温度は、550〜600℃が好ましい。
【0043】
リング体32の接合領域に生じた酸化ホウ素を含む溶融物の上に、表面処理をしたカバー体34を圧着する。圧着の際の圧力は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0044】
酸化ホウ素の溶融物を固化させることで、リング体32及びカバー体34とが酸化ホウ素の層によって接合される。溶融物は、例えば室温で放置することで、固化する。以上のようにして接合部36を生成することにより、フォーカスリング18を製造することができる。
【0045】
フォーカスリング18を新品に交換するには、まずフォーカスリング18を500℃以上に加熱して接合部36を融解するか、あるいは長時間水中に浸漬させ酸化ホウ素を溶出させることにより、カバー体34をリング体32から分離する。次いでリング体32表面から水あるいはエタノールを含んだ布を用いて拭うことにより酸化ホウ素の層を除去する。その後、上記と同じ手順で、リング体32にカバー体34を接合することにより、新品のフォーカスリング18を得ることができる。
【0046】
メタホウ酸を含む層を、リング体32及びカバー体34の接合面33,35の全域ではなく、接合面33,35の外縁に沿って枠状に形成してもよい。枠状のメタホウ酸を含む層の幅は、5〜10mmとすることができる。枠状のメタホウ酸を含む層の内側の領域には、合金形成金属箔を配置する。合金形成金属箔を内側の領域に配置する前に、枠状のメタホウ酸を含む層を冷却して、表面を研磨して厚さを低減してもよい。リング体32の接合面33に枠状のメタホウ酸を含む層を形成し、合金形成金属箔を配置した後、カバー体34を配置して、共晶温度以上700℃以下に加熱する。加熱によって合金形成金属がシリコンと共晶を形成することで、リング体32及びカバー体34を、よりいっそう強固に接合することができる。ここで形成された共晶合金は、枠状の酸化ホウ素の層で囲まれることになるので、金属が拡散して汚染源となるおそれも小さい。この場合も、上記実施形態と同様に、リング体32に対しカバー体34を新品に交換することができる。
【0047】
上記実施形態の場合、リング状電極をフォーカスリングに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えばリング状電極は、支持リング、グラウンドリングのほか、ドライエッチング装置の真空チャンバー内に設置され、電圧が印加され、又は接地されるシリコン部材に適用することができる。
【解決手段】シリコンのリング体32と、接合部を介して前記リング体32表面の少なくとも一部に接合された、シリコンよりもプラズマ耐性に優れたカバー体34とを備え、前記接合部は、150℃以上の耐熱性を有し、700℃以下で融解することを特徴とする。