特許第6146859号(P6146859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146859
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20170607BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20170607BHJP
   B29L 22/00 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
   B29C45/17
   B29C45/26
   B29L22:00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-81135(P2013-81135)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-201041(P2014-201041A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】508309289
【氏名又は名称】株式会社山口製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508091649
【氏名又は名称】有限会社浦野技研
(73)【特許権者】
【識別番号】513088560
【氏名又は名称】三洋技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】木坊子 真治
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和之
(72)【発明者】
【氏名】浦野 隆実
(72)【発明者】
【氏名】田端 泰裕
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−344391(JP,A)
【文献】 特開平10−180790(JP,A)
【文献】 特開2001−018258(JP,A)
【文献】 特開平08−323818(JP,A)
【文献】 特開平09−300406(JP,A)
【文献】 特開平06−297491(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0046091(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型とを型閉したときに形成されるキャビティを複数備え、これら複数のキャビティに対して溶融樹脂を射出充填し、該射出充填された溶融樹脂に対してガスを注入し、複数の中空成形体を成形する射出成形機において、
前記キャビティに射出充填された前記溶融樹脂に対し前記ガスを注入するガス注入口と、
該ガス注入口から注入される前記ガスを供給するガス供給装置と、
前記キャビティの各々を連通させた均等圧力区域と、
記均等圧力区域に流体を注入する流体供給装置と、
を備え
該流体供給装置により、前記固定金型と前記可動金型とが型閉された状態で、前記均等圧力区域に流体を注入することにより、該均等圧力区域により連通された前記キャビティの各々の圧力を均等に昇圧することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記キャビティの各々を均等に昇圧する圧力は、前記キャビティに前記溶融樹脂を射出充填するときの射出圧力より低く、且つ大気圧よりも高くしたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記流体供給装置から前記均等圧力区域へ注入される前記流体は、不活性ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記均等圧力区域へ注入される不活性ガスは窒素ガスであることを特徴とする請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記ガス供給装置から前記溶融樹脂に対して注入される前記ガスは、不活性ガスであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記溶融樹脂に対して注入される不活性ガスは窒素ガスであることを特徴とする請求項5に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて成形体を成形する射出成形機に関し、特に金型内に射出充填された溶融樹脂に対しガス(気体)を注入し、中空構造の成形体を成形する射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている一般的な射出成形機においては、加熱シリンダ内に原料である粒状の熱可塑性樹脂を送り、加熱シリンダ内に設けられた進退可能なスクリューにより樹脂を溶融しながらスクリュー先端のノズル側に送り出し、スクリューの先端側に設けられたノズルから金型装置のキャビティに溶融樹脂を射出させ、キャビティ内で溶融樹脂を冷却させ固化させた後、金型装置を開き、突出しピンなどにより金型に張り付いている成形物を金型から外すことにより、成形体が成形されている。
【0003】
このようなプラスチックなどの成形体を成形する射出成形機においては、その構成を大別すると概ね、型締ユニットと及び射出ユニットから構成されており、型締ユニットにおいては、一般的に固定金型と可動金型を有する金型装置が備えられており、可動金型をトグル機構若しくは直圧方式などの型締を可能とする可動手段によって、固定金型に対し可動金型を進退させ、型締の際の型閉、及び型開を行っている。
【0004】
ところで、射出成形機で中空構造の成形体を成形する際には、金型のキャビティに溶融樹脂を射出充填した後、その溶融樹脂にガスを注入する中空射出成形法(ガスアシスト成形法)が知られており、こうした技術が例えば特許文献1、2、及び非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−300406号公報
【特許文献2】特開2003−127176号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「プラスチック成型加工学会 第21回年次大会予稿集(2010.6.1−2,東京)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2等の従来の中空射出成形法により中空成形体を成形する射出成形機においては、金型のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂にガスを注入することで、中空成形体を成形するものの、従来の中空射出成形法では、金型のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂に対してガスを注入した際、ガスの注入に伴って、ガス放出流路側に配置された捨てキャビティに樹脂が排出される。この排出された樹脂は、製品となり得る部分ではないことから最終的には切断するなどして取り除かれるが、こうした不要となる部分が製品となり得る成形体に一体に成形されてしまう場合には、それを除去する煩雑な作業を要するばかりでなく、材料の歩留まりが悪くなるといった問題がある。
【0008】
また、製品となり得る中空成形体を多数個製造するに際しては、個々の中空成形体の形状にできるだけ差異が生じぬよう製造することが求められるわけであるが、例えば特許文献2において、各々のキャビティのショット量に変動があると、中空成形体に形成される中空部の周囲には偏肉や中空部にばらつきが発現することがあり、場合により多数個取りのキャビティの一部に吹き飛ばしが生じ、製品とは成りえないことがあることから、こうした問題点を解消することが従来より望まれていた。
【0009】
また、非特許文献1においては、中空射出成形法(ガスアシスト成形法)を用いて多数個取りするに際し、充填不良等の種々の問題により成形不良が生じることが記載されており、こうした多数個取り成形の問題点を解消するため、1個取り成形の可能性を模索することが記載されている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一度に複数個の中空成形体を成形する射出成形機において、成形される中空成形体の品質にばらつきが生じることを防止し高品質化を図ることを可能とした射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本射出成形機の発明は、
固定金型と可動金型とを型閉したときに形成されるキャビティを複数備え、これら複数のキャビティに対して溶融樹脂を射出充填し、該射出充填された溶融樹脂に対してガスを注入し、複数の中空成形体を成形する射出成形機において、
前記キャビティに射出充填された前記溶融樹脂に対し前記ガスを注入するガス注入口と、
該ガス注入口から注入される前記ガスを供給するガス供給装置と、
前記キャビティの各々を連通させた均等圧力区域と、
記均等圧力区域に流体を注入する流体供給装置と、
を備え
該流体供給装置により、前記固定金型と前記可動金型とが型閉された状態で、前記均等圧力区域に流体を注入することにより、該均等圧力区域により連通された前記キャビティの各々の圧力を均等に昇圧することを特徴とする。
【0012】
さらに本射出成形機の発明は、
前記キャビティの各々を均等に昇圧する圧力は、前記キャビティに前記溶融樹脂を射出充填するときの射出圧力より低く、且つ大気圧よりも高くしたことを特徴とする。
【0013】
さらに本射出成形機の発明は、
前記流体供給装置から前記均等圧力区域へ注入される前記流体は、不活性ガスであることを特徴とする。
【0014】
さらに本射出成形機の発明は、
前記均等圧力区域へ注入される不活性ガスは窒素ガスであることを特徴とする。
【0015】
さらに本射出成形機の発明は、
前記ガス供給装置から前記溶融樹脂に対して注入される前記ガスは、不活性ガスであることを特徴とする。
【0016】
さらに本射出成形機の発明は、
前記溶融樹脂に対して注入される不活性ガスは窒素ガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本射出成形機の発明によれば、流体供給装置により流体が均等圧力区域に注入されることにより、均等圧力区域及び当該均等圧力区域により連通された各キャビティは均等の圧力で昇圧(キャビティに溶融樹脂を射出充填するときの射出圧力より低く、且つ大気圧よりも高い)される。これにより、各キャビティに射出充填された各樹脂に対する抗力(カウンタープレッシャー)を均等にすることができることから、各キャビティで成形される中空成形体の各々の品質にばらつきが生じてしまうことを防止することが可能となり、ひいては、高品質な成形体を得ることができる。
【0018】
さらに、均等圧力区域へ注入される流体を、窒素ガス等の不活性ガスとしたことにより、当該不活性ガスに触れる樹脂部分の樹脂焼けを防止することができる。
【0019】
さらに、溶融樹脂へ注入されるガスを、窒素ガス等の不活性ガスとしたことにより、中空成形体に形成される中空部の樹脂焼けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】射出成形機を示す側面図である。
図2】射出成形機に構成される金型装置の要部を示す断面図である。
図3】金型装置の動作を示す説明図であり、(a)は型閉(型締)工程を示し、(b)は均等圧力区域に窒素ガスを注入する昇圧工程を示し、(c)はキャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程を示し、(d)はキャビティに射出充填された溶融樹脂に窒素ガスを注入するガス充填工程を示し、(e)は成形された中空成形体の冷却工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための実施形態を図1図3により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0022】
図1に示すように、射出成形機1は機台2を有し、この機台2上に射出ユニット3、型締ユニット4、金型装置5が配置されている。
【0023】
射出ユニット3の構成について以下に詳述すると、射出ユニット3には、この射出ユニット3のスクリュー6を回転させ金型のキャビティCに溶融樹脂を送り出すようになっており、射出ユニット3の上方側には粒状の原料である樹脂(ペレット)が投入されるホッパ7を有し、このホッパ7からその下方に設けられた筒型の加熱シリンダ8内に粒状の樹脂が自重により落下して投入されるようになっている。
【0024】
射出ユニット3では、スクリュー6を回転させると共に加熱シリンダ8内に供給され加熱された溶融樹脂の計量などを行うものであり、駆動源たる計量駆動用モータ9を備え、この計量駆動用モータ9の回転軸部10に固定されているプーリ11が、計量駆動用タイミングベルト12を介してスクリュー6の後側を回転することで、スクリュー6は連動して回転される。
【0025】
また、射出ユニット3の後方(図1に示す右側)には、図示しない射出駆動用モータが、機台2上に載置されている後側支持フレーム13に固定されており、射出駆動用モータのプーリ、射出駆動用タイミングベルトなどからなる駆動伝達機構を介して、後述するボールネジユニットに構成されるボールネジ部14を回動するようになっており、機台2上に固定されている前側支持フレーム15と後側支持フレーム13とは円柱状のタイバー17で連結されている。
【0026】
ここで、ボールネジユニットについて説明すると、ボールネジユニットに構成されるナット部16は、スクリュー6を回転自在に保持すると共に前記タイバー17にガイドされたスクリュー保持プレート18に取り付けられている。また、計量駆動用モータ9はスクリュー保持プレート18に固定されており、射出駆動用モータとボールネジユニットにより、ナット部16が前進されると、キャビティCに溶融樹脂を射出し、一方、後退されるときには、キャビティCに射出される樹脂の可塑化・計量を行なう。
【0027】
また、ボールネジ部14は、ボールネジ部14を正逆回転させることによりナット部16を前後方向に進退させるものであって、後側支持フレーム13に回動自在に軸支されており、ボールネジ部14の軸線方向(図1に示す左右方向)に進退するナット部16の可動時には、このナット部16とボールネジ部14との間に有する図示しない溝部の間を鋼球が転がりながら繰り返し通過することで、ボールネジ部14に対してナット部16がスムーズに進退するものである。
【0028】
また、前側支持フレーム15に固定されている加熱シリンダ8内に回動可能に設けられたインライン式のスクリュー6は、計量駆動用モータ9を駆動源として回転されるが、スクリュー6は、スクリュー6と加熱シリンダ8との間に供給されてきた溶融樹脂をスクリュー6先端側のノズル20に移動させる機能を有する一方で、前進することで溶融樹脂をキャビティCに注入するプランジャとしての機能もある。なお、ノズル20にはヒータが具備されると共に、ノズル20の後部は、加熱シリンダ8内の内側先端側に螺合され、また、可動金型21と固定金型22とからなるキャビティCには、ノズル20の先端から溶融樹脂が供給される。なお、ノズル20に具備されたヒータは、図示はしないがキャビティCに充填されるノズル20内の溶融樹脂の温度の低下を防止するものである。
【0029】
次に上記射出成形機に構成される型締ユニット4の構成について以下に説明する。型締ユニット4は、固定金型22に対し可動金型21を前進後退させ型締(型閉)及び型開を行う型締駆動装置23を備え、金型の型開時に可動金型21内に貼着している成形体を突き出して取り出す図示しないエジェクト駆動装置を備えている。
【0030】
また、型締ユニット4には、テールストック24、固定ダイプレート25、可動ダイプレート26が機台2上に設けられており、機台2上に固定されたテールストック24と固定ダイプレート25とは、複数の円柱型のタイロッド27で連結されている。
【0031】
次に、型締駆動装置23について以下に説明する。30は、テールストック24の上部に固定されると共に、固定金型22に対し可動金型21の型締を行う駆動源たる型締用モータである。型締駆動装置23においては、プーリ31が型締用モータ30に回動自在に取り付けられており、型締用モータ30が型締用タイミングベルト31Aを介してテールストック24に軸支されているプーリ32を回転させ、こうした駆動を伝達するための駆動伝達機構によりトグル機構33に駆動力を伝達させる。そして、型締用モータ30の駆動に伴い、トグル機構33に構成された複数のアームからなるリンクアーム34が縮められ型開した状態(図1に示す状態)から、型閉じを行う際には、リンクアーム34が直線状に伸びることで、固定金型22に対し可動金型21の型閉(型締)が行われる。なお、型閉じされた前記可動金型21を型開する際には、型締用モータ30の回転方向を型締時の逆回転で行うことで型開される。
【0032】
次に、金型装置5について説明する。この金型装置5は、図1、2に示すように、可動金型21、可動金型21の固定された可動ダイプレート26、固定金型22、固定金型22の固定された固定ダイプレート25、ガス供給装置40、流体供給装置41、均等圧力区域46、調整弁48、タンク50等を備え、可動ダイプレート26の進退に伴い、固定金型22に対して可動金型21が進退し、型開閉が行われる。
【0033】
また、図2に示すように、固定金型22の略中央部にはノズル20から射出される溶融樹脂が供給される単一のスプルー42が形成されており、スプルー42、当該スプルー42から複数(本実施形態では2つ)に分岐されたランナー43を介して、各キャビティC(本実施形態では2つ)に溶融樹脂が一度に射出充填される。
【0034】
固定金型22には、前進されることでランナー43を遮断し、当該ランナー43により連通された各キャビティC間のガス圧の干渉を無くすためのガス圧干渉防止ピン44、ガス供給装置40から供給されてきた窒素ガスG1をキャビティCへ注入するためのガス注入口45が設けられている。
【0035】
また、可動金型21の外部には、ポンプ等からなる流体供給装置41から供給されてきた窒素ガスG1が注入される均等圧力区域46が一体に設けられており、この均等圧力区域46により、キャビティCの各々が連通されていて、各キャビティCが連通されていることで、流体供給装置41から窒素ガスG2が均等圧力区域46に供給されたときには、均等圧力区域46と各キャビティCの圧力は均等になる。
【0036】
また、均等圧力区域46には、均等圧力区域46及び当該均等圧力区域46に連通された各キャビティCの圧力を一定に保つための調整弁48が接続されており、当該調整弁48は、各キャビティCに溶融樹脂を射出充填するなどして、各キャビティCの圧力が予め設定された数値を超えようとするときに、均等圧力区域46に有する窒素ガスG2をタンク50へと放出し、各キャビティCの圧力を予め設定された数値に一定になるよう維持する。
【0037】
次に、金型装置5の動作について、図3により以下に説明する。なお、図3においては、動作順について(a)〜(e)の順で表しており、前述したように、(a)は型閉(型締)工程を示し、(b)は均等圧力区域46に窒素ガスG2を注入する昇圧工程を示し、(c)はキャビティCに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程を示し、(d)はキャビティCに射出充填された溶融樹脂に窒素ガスG1を注入するガス充填工程を示し、(e)は金型で成形された中空成形体の冷却工程を示している。
【0038】
図3の(a)に示すように、固定金型22に対して可動金型21が型閉(型締)されると共に、ガス圧干渉防止ピン44の各々が後退されることにより各キャビティCが連通されている状態において、図3の(b)に示すように、均等圧力区域46に窒素ガスが注入され、当該均等圧力区域46とこれに連通する各キャビティC等の昇圧が均等になされると、次に、ノズル20から溶融樹脂が射出され、当該射出された溶融樹脂は、スプルー42、ランナー43を通じて各キャビティCへ供給され、図3の(c)に示すように、キャビティCの各々は溶融樹脂により満たされる。なお、キャビティCに射出される溶融樹脂の充填量は、キャビティC容積の70%〜80%としている。
【0039】
次に、ガス圧干渉防止ピン44が前進されることによりランナー43が遮断されると、続いて、ガス供給装置40は、ガス注入口45を介してキャビティCに射出充填された溶融樹脂(の中心)に対して窒素ガスG1を高圧で注入し、それにより、図3の(d)に示すように、キャビティCに有する樹脂に中空部が形成される。
【0040】
そして、キャビティC内に有する樹脂に中空部が形成されると、中空部が形成された中空成形体の冷却が行われ(図3の(e)の状態)、当該冷却後に金型内のガスベントがなされると、固定金型22に対して可動金型21が型開され、成形された中空成形体がキャビティCから取り出されることになる。
【0041】
本実施形態における射出成形機1によれば、固定金型22と可動金型21とを型閉したときに形成されるキャビティCを複数備え、これら複数のキャビティCに対して、単一のスプルー42からそれぞれのキャビティCに対応して分岐されたランナー43を介して溶融樹脂を射出充填し、該射出充填された溶融樹脂に対して窒素ガスG1を注入し、複数の中空成形体を一度に成形する射出成形機1において、キャビティCに射出充填された溶融樹脂に対し窒素ガスG1を注入するガス注入口45と、該ガス注入口45から注入される窒素ガスG1を供給するガス供給装置40と、キャビティCの各々を連通させた均等圧力区域46と、固定金型22と可動金型21とが型閉された状態で、均等圧力区域46に流体たる窒素ガスG2を注入することにより、該均等圧力区域46により連通されたキャビティCの各々の圧力を均等に昇圧する流体供給装置41と、を備えており、固定金型22と可動金型21とが型閉された状態で、均等圧力領域46の圧力が所定圧力に昇圧されていることにより、均等圧力領域46で連通されたキャビティCの各々の圧力が金型の型閉中に均等になるようにしたものである。これにより、各キャビティCに射出充填された各樹脂に対する抗力(カウンタープレッシャー)を均等にすることができることから、各キャビティCで成形される中空成形体の各々の品質にばらつきが生じてしまうことを防止することが可能となり、ひいては、高品質な中空成形体を得ることができる。
【0042】
さらに、均等圧力区域46へ注入される流体を、窒素ガスG2等の不活性ガスとしたことにより、当該不活性ガスに触れる樹脂部分の樹脂焼けを防止することができる。
【0043】
さらに、溶融樹脂へ注入されるガスを、窒素ガスG1等の不活性ガスとしたことにより、中空成形体に形成される中空部の樹脂焼けを防止することができる。
【0044】
さらに、進退自在に設けられたガス圧干渉防止ピン44により、ランナー43を遮断し、当該ランナー43を通じての各キャビティC間のガス圧の干渉を防止することができる。よって、これにより、各キャビティCに対するガス圧のばらつきをより抑えることが可能となり、より一層高品質でばらつきを抑制した中空成形体を得ることができる。
【0045】
以上、本実施例の一実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。本実施例においては、固定金型22に対して可動金型21の型開閉を行う機構にトグル機構を用いている例を示しているが、これに特に限定するものではなく、これに代えて電動モータによる直圧式の型締/型開装置、或いは油圧式の装置であっても適用可能である。また、均等圧力区域46は、図2に示すように金型の外側に設けているが、可動金型21の内部に形成して設けるようにしてもよい。また、本実施例では、不活性ガスとして窒素ガスを適用しているが、窒素ガスに限らずヘリウムガス等の不活性ガスでもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 射出成形機
21 可動金型
22 固定金型
40 ガス供給装置
41 流体供給装置
42 スプルー
43 ランナー
45 ガス注入口
46 均等圧力区域
C キャビティ
G1 窒素ガス(ガス)
G2 窒素ガス(流体)
図1
図2
図3