(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出力トランスの1次巻線の電流を、駆動部によるインバータ素子の駆動でオン、オフし、前記出力トランスの2次巻線に誘起したフライバック電圧を整流平滑して直流出力を得るフライバック方式のスイッチング電源装置に於いて、
遠隔的に運転を指示するリモートオン信号と運転停止を指示するリモートオフ信号を入力するリモート入力部と、
直流入力電圧を印加した場合に、起動電流を前記駆動部に供給して前記インバータ素子をオンとする起動部と、
前記リモート入力部にリモートオフ信号が入力した場合に、前記インバータ素子の駆動電流を引き込むと共に前記起動部の起動電流を引き込んで前記起動部を停止して前記インバータ素子をオフ状態に固定して運転停止し、当該運転停止状態で前記リモート入力部にリモートオン信号が入力した場合に、前記起動電流及び前記駆動電流の引き込みを解除すると共に前記起動部を動作して運転を再開させるリモート制御部と、
を備えたことを特徴とするフライバック方式のスイッチング電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のリモート端子付きのフライバック式のスイッチング電源装置にあっては、リモートオフ信号の入力により運転動作を停止した状態においても、オン状態としたリモート制御用のスイッチ素子を通して起動回路から起動電流とインバータ素子の駆動回路からの駆動電流が継続的に流れて電力損失を生じている。
【0008】
特に、多数のフライバック式のスイッチング電源装置を筐体に収納して使用するような設備や機器にあっては、待機状態又は運転停止状態における消費電力の低減が強く求められるが、この場合に、従来はスイッチング電源装置の停止に伴う消費電力が全体の消費電力を引き上げる要因となっており、この点の改善が望まれる。
【0009】
本発明は、リモートオフ信号の入力による運転停止状態で消費電力を実質的に零として電力消費の低減に大きく寄与可能とするフライバック方式のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(フライバック方式のスイッチング電源装置)
本発明は、
出力トランスの1次巻線の電流を、駆動部によるインバータ素子の駆動でオン、オフし、出力トランスの2次巻線に誘起したフライバック電圧を整流平滑して直流出力を得るフライバック方式のスイッチング電源装置に於いて、
遠隔的に運転を指示するリモートオン信号と運転停止を指示するリモートオフ信号を入力するリモート入力部と、
直流入力電圧を印加した場合に、起動電流を駆動部に供給してインバータ素子をオンとする起動部と、
リモート入力部にリモートオフ信号が入力した場合に、インバータ素子の駆動電流を引き込むと共に起動部の起動電流を引き込ん
で起動部を停止してインバータ素子をオフ状態に固定して運転停止し、当該運転停止状態でリモート入力部にリモートオン信号が入力した場合に、起動電流及び駆動電流の引き込みを解除すると共に起動部を動作して運転を再開させるリモート制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、
1次巻線、2次巻線及び帰還巻線を備えた出力トランスと、
1次巻線に流れる1次電流を周期的にオン、オフするインバータ素子と、
インバータ素子のオンにより1次巻線に1次電流が流れている間、出力トランスにエネルギーを蓄積させ、インバータ素子のオフにより1次巻線に1次電流が流れていない間、出力トランスの蓄積エネルギーの放出により2次巻線に発生したフライバック電圧を整流平滑して出力する整流平滑部と、
帰還巻線に流れる電流に基づき、1次側電流が所定の上限値に達したときに同期して、インバータ素子をオフ状態に切り替えると共に、フライバック電圧の終了に同期して、インバータ素子をオン状態に切り替える駆動部と、
を備えた自励フライバック方式のスイッチング電源装置に於いて、
遠隔的に運転を指示するリモートオン信号と運転停止を指示するリモートオフ信号を入力するリモート入力部と、
直流入力電圧を印加した場合に、駆動部に起動電流を供給してインバータ素子をオン状態とする起動部と、
リモート入力部にリモートオフ信号が入力した場合に、駆動部の駆動電流を引き込むと共に起動部の起動電流を引き込ん
で起動部を停止してインバータ素子をオフ状態に固定して運転停止し、当該運転停止状態でリモート入力部にリモートオン信号が入力した場合に、起動電流及び駆動電流の引き込みを解除すると共に起動部を動作して運転を再開させるリモート制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(定電流型起動部とリモートオフ)
起動部は、ツェナーダイオードによる一定のバイアス電圧により制御素子をオンして所定の定電流を起動電流として駆動部に供給する定電流回路であり、
リモート制御部は、
定電流回路のツェナーダイオードを介して接続され、リモートオン信号が入力した場合に短絡状態とされ、リモートオフ信号が入力した場合に短絡状態を解除してツェナーダイオードを介して充電されるコンデンサと、
コンデンサの充電電流によるバイアスでオンすると共にオン状態を自己保持し、起動部の起動電流を引き込むと共に駆動部の駆動電流を引き込んでインバータ素子の動作を停止させる停止駆動部と、
を備え、
コンデンサは、充電が完了した場合の充電完了電圧によるツェナーダイオードの逆バイアスにより定電流回路をオフして起動電流を停止させる。
【0013】
(定電流型起動部とリモートオフ)
起動部は、ツェナーダイオードによる一定のバイアス電圧により制御素子をオンして所定の定電流を起動電流として駆動部に供給する定電流回路であり、
リモート制御部は、
コンデンサと抵抗を直列接続した充放電回路と、
定電流回路及び駆動部に接続し、抵抗に生ずるバイアス電圧により制御されるスイッチ回路と、
を備え、
リモート入力部を充放電回路に並列接続し、
リモートオフ信号が入力した場合に、充放電回路の両端の短絡を解除してツェナーダイオードを介してコンデンサの充電を開始すると共に抵抗に流れる充電電流によるバイアス電圧でスイッチ回路をオンすると共にオン状態を保持して定電流回路の起動電流及び前記駆動部の駆動電流を引き込んでインバータ素子の動作を停止させ、更に、コンデンサの充電電圧が上昇してツェナーダイオードのバイアス電圧が低下することにより定電流回路の動作を停止させる。
(定電流型起動部とリモートオン)
充放電回路は、更に抵抗と並列にダイオードを接続し、リモートオン信号が入力した場合に、充放電回路の両端を短絡して定電流回路の停止を解除すると同時に、コンデンサをダイオードを介して放電し、インバータ素子の動作を停止させているスイッチ回路をオフしてインバータ素子の動作を開始させる。
【0014】
(カレントミラー型起動部とリモートオフ)
起動部は、制御素子と出力素子の各制御端子を接続して共通バイアスし、所定の定電流を起動電流として駆動部に供給するカレントミラー回路であり、
リモート制御部は、
コンデンサと抵抗を直列接続した充放電回路と、
カレントミラー回路及び駆動部に接続し、抵抗に生ずるバイアス電圧により制御されるスイッチ回路と、
を備え、
リモート入力部を充放電回路に並列接続し、
リモートオフ信号が入力した場合に、充放電回路の両端の短絡を解除してカレントミラー回路の制御素子を介してコンデンサの充電を開始すると共に抵抗に流れる充電電流によるバイアス電圧で
スイッチ回路をオンすると共にオン状態を保持してカレントミラー回路の起動電流及び駆動部の駆動電流を引き込んでインバータ素子の動作を停止させ、更に、コンデンサの充電が完了した場合の充電完了電圧によるカレントミラー回路の制御素子の逆バイアスによりカレントミラー回路の動作を停止させる。
【0015】
(カレントミラー型起動部とリモートオン)
充放電回路は、更に抵抗と並列にダイオードを接続し、リモートオン信号が入力した場合に、充放電回路の両端を短絡してコンデンサからダイオードを介して放電し、インバータ素子の動作を停止させているスイッチ回路をオフしてインバータ素子の動作を開始させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフライバック方式のスイッチング電源装置によれば、リモート入力部にリモートオフ信号が入力した場合に、駆動部の駆動電流を引き込むと共に起動部の起動電流を引き込んだ後に起動部を停止してインバータ素子をオフ状態に固定して運転停止するようにしたため、リモートオフに基づく運転停止状態では、起動部は停止して起動電流は流れず、また、インバータ素子及びその駆動部も停止して駆動電流は流れず、運転停止状態における消費電力を実質的に零とし、例えば複数の自励フライバック方式のスイッチング電源装置を使用した機器又は設備の運転停止を伴う待機状態での消費電力を低減して省エネに大きく寄与することを可能とする。ここで、消費電力を実質的に零とは、各回路部における漏れ電流などに起因した無視できる程度に極僅かな消費電力を除いた消費電力が零となることを意味する。
【0017】
また、フライバック方式のスイッチング電源装置の運転停止状態でリモート入力部にリモートオン信号が入力した場合、リモート制御部は、起動電流及び駆動電流の引き込み状態を解除すると共に起動部を動作して運転を再開させるようにしたため、消費電力を零とした停止状態から確実に運転を再開することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[スイッチング電源装置の構成]
図1はリモートオン信号の入力状態で動作している本発明による自励フライバック方式のスイッチング電源装置の第1実施形態を示した回路図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のスイッチング電源装置は、出力トランス10、MOS−FETを用いたインバータ素子(スイッチング素子)12、整流平滑部14、駆動部16、制御部18、起動部20、リモート入力部22及びリモート制御部24で構成される。
【0021】
出力トランス10は、1次巻線10a、2次巻線10b及び帰還巻線10cを備える。
【0022】
インバータ素子12は入力端子1a,1bの間に出力トランス10と直列に接続され、1次巻線10aに流れる1次電流を周期的にオン、オフする。インバータ素子12がオンすると、これにより出力トランス10の1次巻線10aに1次電流がながれている間、出力トランス10にエネルギーが蓄積され、インバータ素子12がオフして1次巻線10aに1次電流が流れなくなる間、出力トランス10の蓄積エネルギーの放出により2次巻線10bにフライバック電圧を発生する。このフライバック電圧は帰還巻線10cにも発生する。
【0023】
整流平滑部14は整流用のダイオード42と平滑用のコンデンサ44を備え、インバータ素子12のオフに伴い出力トランス10の2次巻線
10bに発生したフライバック電圧を整流平滑し、出力端子2a,2bから安定化した所定の直流電圧を出力する。
【0024】
インバータ素子12の駆動部16は、NPN型のトランジスタ36、抵抗30,37,38、コンデンサ32,40、ダイオード33、制御部18の発光部34aからの光を受光する受光部34b、及び過電流保護動作
補正部35を備える。
【0025】
帰還巻線10cの一端とインバータ素子12のゲートGとの間には帰還用の
コンデンサ32と帰還用の抵抗30を直列接続し、帰還巻線10cと抵抗30の間をダイオード33及びフォトカプラの受光部34bを介してトランジスタ36のベースに接続している。またダイオード33とびフォトカプラの受光部34bの直列回路と並列に過電流保護動作補正部35を接続している。
【0026】
過電流保護動作補正部35は、過電流動作値が入力電圧で大きく変動するので、それを補正し、且つ垂下特性も制御する回路部として機能する。
【0027】
コンデンサ32は起動時に起動部20からの起動電流により充電され、充電電圧によるバイアスでインバータ素子12をオンさせる。また、コンデンサ32はインバータ素子12のオフにより帰還巻線10cに生じたフライバック電圧により充電される。
【0028】
インバータ素子12のソースSとこれに接続した抵抗38の間はコンデンサ40を介してトランジスタ36のベースに接続され、更に、
インバータ素子12のゲートGとソースS(又はグランド)の間に抵抗37を接続している。なお、抵抗38は十分に低い値とするか、或いは零オームとしても良い。
【0029】
トランジスタ36はインバータ素子12のオフ制御を行う。トランジスタ36は、入力端子1a,1b間に対する所定の定格直流入力電圧の印加に伴う起動時に、インバータ素子12のオンに伴い流れる1次電流により抵抗38に生ずる電圧を、コンデンサ40を介して入力し、1次電流が所定の最大値に達した場合のベース電流の増加によりオンし、インバータ素子12のゲート・ソース間電圧Vgsをスレッショルド電圧Vth以下に引き込んでオフし、このインバータ素子12のスイッチングを繰り返して出力電圧を所定電圧に向けて上昇させる。
【0030】
整流平滑部14の出力電圧が所定電圧に達し、所定電圧を超えた場合には、出力電圧が所定の基準電圧を超えたことを制御部18が検出してフォトカプラの発光部34aを発光駆動し、その受光部34bをオンする。このため帰還巻線10cに発生している誘起電圧によって、受光部34bを介してトランジスタ36にベース電流が流れてオンし、インバータ素子12をオフする。このためインバータ素子12がオフするタイミングが、受光部34bをオフしているときに比べ早くなることで、出力電圧を所定電圧に下げて安定化させる。
【0031】
起動部20は、PNP型のトランジスタ25、ツェナーダイオード26及び抵抗27,28を備え、入力端子1a,1b間に所定の定格直流入力電圧が印加された起動時に、ツェナーダイオード26のオンによる一定のバイアス電圧によりトランジスタ25をオンして所定の定電流を起動電流として駆動部16に流し、インバータ素子12のゲート・ソース間電圧Vgsをスレッショルド電圧Vth以上とし、インバータ素子12をオンさせる。抵抗28は起動後の電流を制限するために設けている。
【0032】
リモート入力部22は、外部装置から出力された運転を指示するリモートオン信号と運転停止を指示するリモートオフ信号を入力する。リモートオン信号はリモート
端子1c
、入力端子1b間をスレッショルド以下に引き下げるLowレベル信号であり、
図1にあっては、
リモートオン22aとしてスイッチを閉じた状態で示している。また、リモートオフ信号はリモート
端子1c
、入力端子1b間を、スレッショルドを越えるようにプルアップするHighレベル信号であり、後述する
図2にあっては、
リモートオフ22bとしてスイッチを開いた状態で示している。
【0033】
リモート制御部24は、コンデンサ46、抵抗48,
56、ダイオード50、NPN型のトランジスタ52、及びPNP型のトランジスタ54を備える。コンデンサ46に対しては、抵抗48とダイオード50の並列回路を直列接続して充放電回路を構成している。この充放電回路のコンデンサ46側は起動部20の抵抗28に接続され、また充放電回路の両端にはリモート入力部22が接続される。
【0034】
トランジスタ52,54はスイッチ回路を構成し、各コレクタを相手先のベースに相互に正帰還接続しており、トランジスタ52がオンするとトランジスタ54もオンし、更にオン状態を保持するサイリスタと等価なスイッチ動作を行う。
【0035】
リモート入力部22が図示のリモートオン22a(Lowレベル信号の入力状態)の場合、充放電回路の両端は短絡状態にあり、コンデンサ46の充電は行われず、トランジスタ52,54のスイッチ回路はオフしている。
【0036】
リモート入力部22がリモートオフ
22b(Highレベル信号の入力状態)となって開放されると、起動部20のツェナーダイオード26、抵抗28、コンデンサ46、抵抗48を通る経路で、コンデンサ46に充電電流が流れ、コンデンサ46の充電を開始すると共に、抵抗48に生ずるバイアス電圧でトランジスタ52,54のスイッチ回路をオンして保持し、起動部20の起動電流及び駆動部16の駆動電流を引き込んでインバータ素子12をオフ状態に固定する。更に、コンデンサ46の充電が完了すると、起動部
20のツェナーダイオード26を充電電圧による逆バイアスでオフし、トランジスタ25をオフに固定する。
【0037】
次に、本実施形態によるスイッチング電源装置の動作を、起動時、リモートオフ時、リモートオン時に分けて説明する。
【0038】
[起動時の動作]
図1に示すように、リモート入力部22に対するリモートオン信号の入力によりリモートオン22aとした状態(Lowレベル信号の入力状態)で、入力端子1a,1b間に所定の定格直流入力電圧が印加されると、所定の出力電圧に向けて上昇させる起動動作が行われる。
【0039】
この起動動作は、入力端子1a,1b間に対する定格直流入力電圧の印加により、起動部20のツェナーダイオード26がオンし、トランジスタ25のエミッタ・ベース間にバイアス電圧が加わってトランジスタ25がオンし、駆動部16に起動電流を流す。この場合、リモート制御部24のコンデンサ46の充電は行われておらず、トランジスタ52,54はオフしている。
【0040】
起動部20からの起動電流は、駆動部16のコンデンサ32及び抵抗30を介して帰還巻線10cに流れ、コンデンサ32を充電し、コンデンサ32の充電電圧によりインバータ素子12のゲート・ソース間電圧Vgsをスレッショルド電圧Vth以上に引き上げ、これによりインバータ素子12がオンし、出力トランス10の1次巻線
10aに1次電流を流し、エネルギー蓄積する。インバータ素子12のオンにより1次電流は直線的に増加する。
【0041】
またインバータ素子12のオンによる1次電流で抵抗38に生じた直線的に増加する電圧はコンデンサ40を介してトランジスタ36に供給され、1次電流が所定の最大値に達したときのベース電流の増加でトランジスタ36がオンし、ゲート・ソース間電圧Vsgをスレッショルド電圧Vth以下に引き込んでインバータ素子12をオフする。
【0042】
インバータ素子12がオフすると、蓄積されたエネルギーの放出により2次巻線10bにフライバック電圧(逆誘導電圧)が発生し、これを整流平滑部14のダイオード42で整流し、コンデンサ44で平滑して出力する。また、帰還巻線10cに生じたフライバック電圧(逆誘導電圧)によりコンデンサ32が充電される。
【0043】
2次巻線10bからのエネルギー放出が終了してフライバック電圧がなくなると、インバータ素子12は帰還巻線10cの電圧上昇とコンデンサ32に充電された電圧を加算した電圧によりゲート・ソース間電圧Vgsが増加することでオンし、以下同様にインバータ素子12のスイッチングを繰り返すことで、出力電圧が所定電圧に向って上昇する。なお、インバータ素子12のオンは、主に帰還巻線10cの電圧上昇に依存している。
【0044】
出力電圧が所定電圧に達すると、制御部18で出力電圧が基準電圧を超えた場合にフォトカプラの発光部34aを発光駆動して受光部34bをオンする。このため1次電流が所定の最大値に達する前の早いタイミングで、帰還巻線10cの電圧ににコンデンサ32に既に充電されている電圧を加えた電圧によりダイオード33及び受光部34bを介してトランジスタ36にベース電流を流してオンし、インバータ素子12のゲート・ソース間電圧Vgsをスレッショルド電圧Vth以下に引き込んでインバータ素子12をオフし、インバータ素子12のオン期間を短くして出力電圧を所定電圧に下げ、出力電圧を所定電圧に維持するようにインバータ素子12のスイッチングを繰り返す。
【0045】
[リモートオフへの切替動作]
図2はリモートオフ信号の入力により運転停止に移行した
図1のスイッチング電源装置を示した回路図、
図3は
図2の運転停止に移行する場合の動作と電流波形を示したタイムチャートである。なお、
図3(A)はリモコン入力部22の入力状態、
図3(B)はコンデンサ46に流れる電流I1、
図3(C)は起動部20が流す電流I2、
図3(D)はインバータ素子12のゲート・ソース間のスイッチング波形を示す。
【0046】
図1に示したリモートオン22aに基づく運転状態で、
図3(A)の時刻t1に示すように、外部からリモートオフ信号が入力して、リモートオンからリモートオフに切り替わると、
図2に示すように、リモート入力部22は接点を開いたリモートオフ22bとなり、リモート制御部24の充放電回路に対する両端の短絡状態を解除することで、路
起動部20のツェナーダイオード26、抵抗28からリモート制御部
24のコンデンサ46、抵抗48を通る経路で電流I4が流れ、コンデンサ46の充電が開始される。
【0047】
また抵抗48に流れる電流I4により発生したバイアス電圧でトランジスタ52がオンし、トランジスタ52がオンすると、抵抗58に流れる電流で発生したバイアス電圧でトランジスタ54をオンし、トランジスタ52,54の相互の正帰還によりトランジスタ52,54はオン状態を保持する。
【0048】
トランジスタ52,54がオンすると、起動部20のトランジスタ25から流れる起動電流I2は、トランジスタ54,52に流れ、また、駆動部16で発生している電圧による駆動電流I3がトランジスタ54,52に流れ、インバータ素子12のゲート・ソース間電圧Vgsは強制的にスレッショルド電圧Vth以下に引き込まれ、インバータ素子12をオフ状態に固定し、
図3(D)に示すように、スイッチ動作を停止し、これにより運転動作が停止する。
【0049】
時刻t1で充電を開始したコンデンサ46に流れる電流I1は、
図3(B)に示すように、所定の時定数に従って減少し、時刻t2でコンデンサ46の充電が終了すると、ツェナーダイオード
26の両端に加わっていた電圧がコンデンサ46の充電電圧の増加に応じた逆バイアスを受けて減少し、時刻t2でツェナーダイオード26がオフとなり、トランジスタ25のバイアス電圧がなくなり、トランジスタ25もオフし、
図3(C)に示すように、時刻t2で起動部20から流れていた電流I2も停止する。
【0050】
この結果、リモートオフ22bへの切替えに伴う運転停止状態にあっては、インバータ素子12、起動部20及び駆動部16の動作が完全に停止して消費電流は流れず、リモートオフに基づく運転停止状態での消費電力を実質的に零とすることができる。また、この運転停止期間、トランジスタ52,54で構成されている回路はコンデンサ46の充電電圧を受けてオンを保持し続けるが、このための消費電流はコンデンサ46に充電電圧によることから、入力端子1a,1bの外部から見た場合の消費電流は零となる。
【0051】
[リモートオンへの切替動作]
図2に示すリモートオフに基づく運転停止状態で、外部からリモートオン信号が入力して、リモートオフからリモートオフに切り替わると、
図1に示したように、リモート入力部22は接点を閉じたリモートオン22aとなり、リモート制御部24の充放電回路の両端を短絡状態とする。
【0052】
このため充電状態にあるコンデンサ46はダイオード50及びリモートオン22aとなる経路で急速放電され、コンデンサ46の充電電圧がなくなることで、起動部20のツェナーダイオード26がオンして一定のバイアス電圧によりトランジスタ25をオンし、起動電流を流す。
【0053】
また、コンデンサ46の放電に伴いトランジスタ52,54のオン状態も解除されてオフとなる。このため起動部20からの起動電流は駆動部16に有効に流れ、インバータ素子12のゲート・ソース間電圧Vgsをスレッショルド電圧Vth以上に引き上げてオンし、前述した場合と同様にして起動動作を経て出力電圧を所定電圧に保つ運転動作に移行する。
【0054】
[第2実施形態]
図4は起動部にカレントミラー回路を設けた本発明の第2実施形態を示した回路図である。
【0055】
図4に示すように、本実施形態では、出力トランス10、インバータ素子12、整流平滑部14、駆動部16、制御部18、リモート入力部22及びリモート制御部24は、
図1の第1実施形態と同じであるが、起動部20をカレントミラー回路とし、更に過電圧保護用の定電圧回路64を新たに設けている。
【0056】
起動部20は、制御素子として機能するPNP型のトランジスタ58と、出力素子として機能するPNP型のトランジスタ60の各制御端子となるベースを共通接続し、トランジスタ58のコレクタ側に電流制限用の抵抗62を接続してカレントミラー回路を構成している。
【0057】
起動部20のカレントミラー回路は,トランジスタ58に流れる電流I1と同じ値の電流I2をトランジスタ60から駆動部16へ起動電流として流すようしている。
【0058】
また起動部20と駆動部16の間には、ツェナーダイオード66と抵抗68を備えた定電圧回路部64を設けており、入力端子1a,1b間に過大な直流入力電圧が加わった場合に、定電圧回路部64によりインバータ素子12のゲート・ソース間に加わる電圧をツェナーダイオード66で決まる一定電圧に押え、インバータ素子12及びその駆動部16を保護するようにしている。
【0059】
このような起動部20にカレントミラー回路を用いた第2実施形態は、入力端子1a,1bに印加する定格の直流入力電圧が低い場合に対応する。即ち、
図1の実施形態におけるツェナーダイオード26を用いた定電圧回路では、定格の直流入力電圧が低い場合には、ツェナー電圧を確保することが困難となって動作できなくなる場合があるが、
図4の起動部20にカレントミラー回路を用いると、この問題がなくなり、定格の直流入力電圧が低い場合にも確実に動作することができる。
【0060】
[第3実施形態]
図5は
図1に対しリモートオン信号及びリモートオフ信号の論理が反転した場合に対応する本発明の第3実施形態を示した回路図である。
【0061】
図5に示すように、出力トランス10、インバータ素子12、整流平滑部14、駆動部16、制御部18、起動部20、リモート入力部22及びリモート制御部24は、
図1の第1実施形態と同じであるが、リモート入力部22とリモート制御部24の間に、リモートオフ信号及びリモートオン信号の論理を反転する変換回路部70を設けている。
【0062】
本実施形態で、リモート入力部22に対するリモートオン信号はHighレベル信号であり、スイッチ接点を開いたリモートオン22aとして示しており、
図1の場合と論理が逆になる。また、リモート入力部22に対するリモートオフ信号はLowレベル信号であり、スイッチ接点を閉じた点線で示すリモートオフ22bとして示しており、同様に、
図1の場合と論理が逆になる。
【0063】
変換回路部70は、MOS−FETを用いた変換素子72,抵抗74、ツェナーダイオード76を備える。この変換素子72は、トランジスタやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの他の素子を用いても同様の動作を得ることができる。
【0064】
リモート入力部22がリモートオン22a(Highレベル信号入力)になると、抵抗74を介して入力するHighレベル信号により変換素子72がオンし、リモート制御部24に対する入力をLowレベル信号に変換し、充放電回路の両端を短絡状態としてコンデンサ46の充電を禁止し、且つトランジスタ52,54をオフに固定している。
【0065】
一方、リモート入力部22がリモート
オフ22b(Lowレベル信号入力)になると、Lowレベル信号の入力により変換素子72がオフし、リモート制御部24に対する入力をHighレベル信号に変換し、充放電回路の両端の短絡を解除してコンデンサ46の充電を開始し、且つトランジスタ52,54をオンすると共にオン状態を保持し、これにより消費電力を実質的に零とする運転停止状態とする。なお、リモートオフ22bは、図示のようにグランドに対し短絡しなくとも、オープンさせることで、変換素子72をオフさせることができる。
【0066】
[本発明の変形例]
(他励フライバック方式)
上記の実施形態にあっては、自励フライバック方式のスイッチング電源装置を例にとるものであったが、発振回路を備えた他励フライバック方式のスイッチング電源装置でリモート端子を備えたものについても、上記の実施形態と同様に、起動部とリモート制御部を設けることで、リモートオフによる運転停止中の消費電力を実質的に零にすることができる。
【0067】
(インバータ素子の駆動部)
上記の実施形態は、インバータ素子のスイッチング駆動する駆動部を、2次側に設けた出力電圧が基準電圧を超えた場合にフォトカプラで1次側に伝えてインバータ素子のオフタイミングを制御しているが、帰還巻線に生ずる誘起電圧に基づいてインバータ素子のオフタイミングを全て1次側回路部で制御するようにしても良い。
【0068】
また、上記の実施形態のインバータ素子の駆動部は一例であり、これに限定されず、リモート端子を備えた適宜のフライバック方式のスイッチング電源装置に、上記の実施形態の起動部とリモート制御部を設けることで、リモートオフによる運転停止中の消費電力を実質的に零とすることができる。
【0069】
(トランジスタ回路部)
上記の実施形態で使用しているPNP型のトランジスタの回路部は、NPN型のトランジスタの回路部としても良いし、また、NPN型のトランジスタの回路部は、PNP型のトランジスタの回路部としても良い。
【0070】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。