(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146912
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】分散剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20170607BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20170607BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170607BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20170607BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
C08G59/14
C08L63/00 C
C09D7/12
C09D11/00
C09D163/00
【請求項の数】29
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-506192(P2013-506192)
(86)(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公表番号】特表2013-529228(P2013-529228A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】US2011032648
(87)【国際公開番号】WO2011133415
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月8日
【審判番号】不服2015-19252(P2015-19252/J1)
【審判請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/327,301
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シューター, アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ, スチュアート エヌ.
【合議体】
【審判長】
小野寺 務
【審判官】
原田 隆興
【審判官】
渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−120759号公報
【文献】
特開2007−154091号公報
【文献】
米国特許出願公開第2005/0059794号明細書
【文献】
特表2007−537328号公報
【文献】
特表2010−500443号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
C08L1/00-101/16
C08K3/00-13/08
C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
C09D11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状固体、有機媒体または水性媒体、膜形成樹脂、および少なくとも1から100個の繰り返し単位を含むポリマーを含む、塗料またはインク組成物であって、前記繰り返し単位が、
(a)次式で表される繰り返し単位5から60モルパーセント、および
【化4】
(b)次式で表される繰り返し単位40から95モルパーセント
【化5】
を含む構造(a)および(b)を有し、
式中、
各R
1は独立にC
1〜C
100ヒドロカルビル基であり、
各R
2は次式で表され、
【化6】
R
3は、水素およびC
1〜C
24ヒドロカルビル基のいずれかからなる群から独立に選択され、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5およびX
6は、水素、フェニル、メチルおよびエチルからなる群から独立に選択され、ただし同じポリオキシアルキレンオキシアルキレン単位に結合した前記2個のX基の少なくとも1個は水素であり、
p、qおよびrは各々独立に、0を含めて、0から100の任意の整数であり、ただしp、qおよびrの少なくとも1個は0でなく、
R
4は独立に、C
1〜30ヒドロカルビル基またはC
6〜24ヒドロカルビル基またはC
8〜18ヒドロカルビル基であり、
sは0または1のいずれかであり、
前記ポリマーが、前記粒子状固体に基づいて、0.6重量%から8重量%で存在する、組成物。
【請求項2】
R1がエポキシドから誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシドが脂肪族または芳香族である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
X1からX6が、水素とメチル基との混合が存在するように独立に選択される、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
R2がポリオキシアルキレン基であり、p、qおよびrの合計が少なくとも9である、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
R2がポリオキシアルキレン基であり、p、qおよびrの合計が最高90である、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
R2がポリオキシアルキレン基であり、p、qおよびrの合計が9から90である、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
R3が、重合開始剤から誘導される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
R4が式R4−NH2の第一級アミンから誘導される、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
R4が、C6〜24炭素原子またはC8〜18炭素原子を有する第一級鎖状または分枝アミンから誘導される、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子状固体が顔料であり、ここで、前記顔料がフタロシアニンまたはその混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記媒体が、極性液体である、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記媒体が、極性液体であり、そして前記粒子状固体が、顔料であり、前記組成物が、インクジェット式印刷インクである、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが前記粒子状固体の分散剤である、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記粒子状固体が顔料または充填剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが1から50個の繰り返し単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記繰り返し単位(a)の量が15から50モルパーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記繰り返し単位(b)の量が50から85モルパーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
R1がジエポキシドまたはジエポキシドの混合物から誘導される、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
前記エポキシドが芳香族である、請求項3に記載の組成物。
【請求項21】
p、qおよびrの合計が少なくとも15である、請求項5に記載の組成物。
【請求項22】
p、qおよびrの合計が少なくとも25である、請求項5に記載の組成物。
【請求項23】
p、qおよびrの合計が少なくとも30である、請求項5に記載の組成物。
【請求項24】
p、qおよびrの合計が最高75である、請求項6に記載の組成物。
【請求項25】
p、qおよびrの合計が最高50である、請求項6に記載の組成物。
【請求項26】
p、qおよびrの合計が15から90である、請求項7に記載の組成物。
【請求項27】
p、qおよびrの合計が25から75である、請求項7に記載の組成物。
【請求項28】
p、qおよびrの合計が30から50である、請求項7に記載の組成物。
【請求項29】
前記重合開始剤がアルコールである、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル側鎖とペンダントヒドロカルビル基とを有するポリエポキシドを含む組成物に関する。本発明は、さらに、粒子状固体、有機媒体または水性媒体、およびポリエーテル側鎖とペンダントヒドロカルビル基とを有するポリエポキシドを含む、組成物に関する。本発明は、さらに、新規化合物、およびポリエーテル側鎖とペンダントヒドロカルビル基とを有するポリエポキシドの分散剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、インクおよびコーティングは、金属、アロイ、複合材、プラスチック、コンクリート、セラミック、木、紙、および繊維ガラスなどの材料に保護コーティング層を提供する手段として確立された。塗料およびインクは、顔料および充填剤などの粒子状固体を使用して色を与える。塗料およびインクは、有機系または水系であり得る。様々な開示が、特に水系または水溶液系の、塗料およびインク用分散剤を考察している。これらは以下のように要約される。
【0003】
特許文献1および特許文献2はどちらも、一官能性アミン末端ポリエーテルをポリオールのグリシジルエーテルと反応させることによって形成される水溶性分散剤を開示している。特許文献1は、さらに、非水系および水系の顔料インクおよびコーティング用水溶性分散剤の利用を開示している。
【0004】
特許文献3は、(a)エポキシ樹脂1.0当量、(b)多価フェノール0.01から1.0当量、および(c)(i)芳香族ポリエポキシドと(ii)ポリオキシアルキレンアミンを当量比1:0.10から1:0.28で反応させることによって形成されるアミン/エポキシ付加体0.005から0.5当量の反応生成物を含む、自己分散性硬化性エポキシ樹脂組成物を開示している。
【0005】
特許文献4は、水性エポキシ樹脂組成物を開示している。エポキシ樹脂は、保護コーティングに有用である。この組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の改変ジグリシジルエーテルとポリアミドポリアミンを水性媒体中に含む。ビスフェノールAのジグリシジルエーテルは、ポリオキシアルキレンアミンとの部分反応によって改変される。ポリアミドポリアミンは、二量体脂肪酸およびポリアミンから調製される。
【0006】
特許文献5は、A)1種類以上の親水性ポリ(オキシアルキレン)アミン、および場合によっては1種類以上の疎水性ポリアミンを含む、ポリアミン成分と、B)ポリアルキレングリコールの1種類以上のジグリシジルエーテル、シクロアルキレングリコールの1種類以上のジグリシジルエーテル、および場合によっては1種類以上の疎水性ポリグリシジルエーテルを含む、ポリエポキシド成分であって、混合物は、場合によっては、アミンエキステンダーによって改善される、ポリエポキシド成分と、C)場合によっては、エポキシ樹脂と反応することができる反応性希釈剤と、D)場合によっては、アミンとエポキシ樹脂の反応触媒との反応生成物を含む、硬化剤として有用である水混和性または可溶性アミン末端樹脂を開示している。ここで、成分Aは、反応生成物の末端部分がエポキシ樹脂と反応することができるアミン部分であるように、成分Bに対して過剰の当量で使用され、組成物は、アミン水素当量が140から240であり、水溶性または水混和性である。
【0007】
特許文献6は、(A−1)(i)1種類以上の芳香族、脂環式またはノボラックエポキシ化合物(単数または複数)と(ii)分子量が700〜5000であり、エチレンオキシド含有率が少なくとも60重量%である1種類以上のアミン末端ポリアルキレングリコール(単数または複数)とをアミン末端ポリアルキレングリコール(単数または複数)とエポキシ化合物(単数または複数)の当量比0.01:1から0.9:1で反応させて得られる1種類以上のエポキシ−アミン付加体(単数または複数)、(A−2)(i)1種類以上の脂肪族エポキシ化合物(単数または複数)と(ii)分子量が700〜5000であり、エチレンオキシド含有率が少なくとも60重量%である1種類以上のアミン末端ポリアルキレングリコール(単数または複数)とをアミン末端ポリアルキレングリコール(単数または複数)とエポキシ化合物(単数または複数)の当量比0.01:1から0.9:1で反応させて得られる1種類以上のエポキシ−アミン付加体(単数または複数)、(B−1)芳香族、脂環式またはノボラックポリグリシジルエーテル、(B−2)場合によっては、芳香族または脂環式ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、および(C)場合によっては、反応性希釈剤、顔料、充填剤または他の添加剤の少なくとも1種類を含む、水性エポキシ樹脂分散系の乳化剤として有用であるエポキシ−アミン付加体のブレンドを開示している。
【0008】
特許文献7は、少なくとも2個の1,2−エポキシド基を含む化合物を含むエポキシ樹脂組成物を開示している。エポキシド基含有化合物は、1分子当たり少なくとも2個の1,2−エポキシド基を含む化合物(A1)、分子量130から900のポリオキシアルキレンモノアミンである化合物(A2)、必要に応じて、分子量900から5000のポリオキシアルキレンモノアミン(A3)、および/またはポリカルボン酸(A4)の反応生成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/018873号
【特許文献2】国際公開第2005/113676号
【特許文献3】米国特許第6,506,821号明細書
【特許文献4】米国特許第4,421,906号明細書
【特許文献5】米国特許第5,567,748号明細書
【特許文献6】米国特許第6,077,884号明細書
【特許文献7】米国特許第5,585,446号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、本明細書に開示する組成物が、高いミルベース粘度、および水性分散系の高い安定性、改善された顔料分散、より低いインク粘度、高顔料添加量、およびエージング後のより低いずり減粘度の少なくとも1つが可能であることを発見した。
【0011】
一実施形態においては、本発明は、少なくとも1から100個または1から50個の繰り返し単位を含むポリマーであって、繰り返し単位が、
(a)次式で表される繰り返し単位5から60(または15から50)モルパーセント、および
【0012】
【化1】
【0013】
(b)次式で表される繰り返し単位40から95(または50から85)モルパーセント
【0014】
【化2】
【0015】
を含む構造(a)および(b)を有する、ポリマーを提供する。
【0016】
式中、
各R
1は独立にC
1〜C
100ヒドロカルビル基であり得、
各R
2は次式で表わされ得、
【0017】
【化3】
【0018】
R
3は、水素およびC
1〜C
24ヒドロカルビル基のいずれかからなる群から独立に選択され、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5およびX
6は、水素、フェニル、メチルおよびエチルからなる群から独立に選択され得、ただし同じポリオキシアルキレンオキシアルキレン単位に結合した前記2個のX基の少なくとも1個は水素であり、
p、qおよびrは各々独立に、0を含めて、0から100の任意の整数であり得、ただしp、qおよびrの少なくとも1個は0でなく、
R
4は独立に、C
1〜30ヒドロカルビル基またはC
6〜24ヒドロカルビル基またはC
8〜18ヒドロカルビル基(代表的にはアルキル基またはアルカリール基またはアリール基)であり得、
sは0または1のいずれかであり得る。
【0019】
各R
2は独立に、ランダム構造またはブロック構造を有し得る。
【0020】
このポリマーは、水素またはアルキル、代表的には水素などの重合停止基によって停止され得る。
【0021】
一実施形態においては、本発明ポリマーは、エポキシド(代表的にはジエポキシド)、第一級ヒドロカルビルアミンおよびポリオキシアルキレン第一級アミン(代表的にはポリエーテルアミン)の反応を含むプロセスによって得られ得る/得ることができる。
【0022】
一実施形態においては、本発明は、粒子状固体(代表的には顔料または充填剤)、有機媒体または水性媒体、および本明細書に開示するポリマーを含む、組成物を提供する。
【0023】
一実施形態においては、本発明は、粒子状固体、極性液体、膜形成樹脂、および本明細書に開示するポリマーを含む、塗料またはインクを提供する。
【0024】
一実施形態においては、本発明は、顔料、極性液体、および本明細書に開示するポリマーを含む、インクジェット式印刷インクを提供する。
【0025】
一実施形態においては、本発明は、インクジェット式印刷インクを含むカートリッジを提供する。インクジェット式印刷インクは、顔料、極性液体、および本明細書に開示するポリマーを含む。
【0026】
一実施形態においては、本発明は、本明細書に開示するポリマーの分散剤としての使用を提供する。
【0027】
一実施形態においては、本発明は、本明細書に開示する組成物における分散剤としての本明細書に開示するポリマーの使用を提供する。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
少なくとも1から100個または1から50個の繰り返し単位を含むポリマーであって、前記繰り返し単位が、
(a)次式で表される繰り返し単位5から60(または15から50)モルパーセント、および
【化4】
(b)次式で表される繰り返し単位40から95(または50から85)モルパーセント
【化5】
を含む構造(a)および(b)を有し、
式中、
各R1は独立にC1〜C100ヒドロカルビル基であり、
各R2は次式で表され、
【化6】
R3は、水素およびC1〜C24ヒドロカルビル基のいずれかからなる群から独立に選択され、
X1、X2、X3、X4、X5およびX6は、水素、フェニル、メチルおよびエチルからなる群から独立に選択され、ただし同じポリオキシアルキレンオキシアルキレン単位に結合した前記2個のX基の少なくとも1個は水素であり、
p、qおよびrは各々独立に、0を含めて、0から100の任意の整数であり、ただしp、qおよびrの少なくとも1個は0でなく、
R4は独立に、C1〜30ヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基C6〜24またはC8〜18ヒドロカルビル基(代表的にはアルキル基またはアルカリール基またはアリール基)であり、
sは0または1のいずれかである、ポリマー。
(項目2)
R1がエポキシド、代表的にはジエポキシド、またはその混合物から誘導され得る、項目1に記載のポリマー。
(項目3)
前記エポキシドが脂肪族または芳香族、代表的には芳香族である、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目4)
X1からX6が、水素とメチル基との混合が存在するように独立に選択される、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目5)
R2がポリオキシアルキレン基であり、p、qおよびrの合計が少なくとも9、少なくとも15、少なくとも少なくとも25または少なくとも30であり得る、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目6)
R2がポリオキシアルキレン基であり、p、qおよびrの合計が最高90または最高75または最高50であり得る、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目7)
R2がポリオキシアルキレン基であり、p、qおよびrの合計が9から90、または15から90、または25から75、または30から50であり得る、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目8)
R3が、アルコールなどの重合開始剤から誘導され得る、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目9)
R4が式R4−NH2の第一級アミンから誘導され得る、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目10)
R4が、C6〜24炭素原子またはC8〜18炭素原子を有する第一級鎖状または分枝(代表的には鎖状)アミンから誘導される、先行する項目のいずれかに記載のポリマー。
(項目11)
粒子状固体(代表的には顔料または充填剤)、有機媒体または水性媒体、および先行する項目1から10のいずれかに記載のポリマーを含む、組成物。
(項目12)
顔料がフタロシアニンまたはその混合物である、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記ポリマーが、0.1から50重量%、または0.25から35重量%、および0.5から30重量%から選択される範囲に存在する、先行する項目11から12のいずれかに記載の組成物。
(項目14)
粒子状固体、極性液体、膜形成樹脂、および先行する項目1から10のいずれかに記載のポリマーを含む、塗料またはインク。
(項目15)
顔料、極性液体、および先行する項目1から10のいずれかに記載のポリマーを含む、インクジェット式印刷インク。
(項目16)
先行する項目1から10のいずれかに記載のポリマーの分散剤としての使用。
(項目17)
インクまたは塗料における分散剤としての先行する項目1から10のいずれかに記載のポリマーの使用。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、本明細書に開示する組成物を提供する。
【0029】
R
1は、エポキシド、代表的にはジエポキシド、またはその混合物から誘導され得る。エポキシドは、ポリオールのグリシジルエーテルであり得る。エポキシドは、鎖状、分枝または環式であり得る。エポキシドは、脂肪族または芳香族、代表的には芳香族であり得る。
【0030】
エポキシドとしては、ジグリシジルエーテルビスフェノールA(DGEBA)、ジグリシジルエーテルテトラブロモビスフェノールA、トリグリシジルエーテルトリフェノールメタン、トリグリシジルエーテルトリフェノールエタン、トリ−2,3−エポキシプロピルイソシアヌラート、テトラグリシジルエーテルテトラフェノールエタン、テトラグリシジルエーテルメチレンジアニリン、パーグリシジル(perglycidyl)エーテルノボラック樹脂およびオリゴマー、またはその混合物が挙げられ得る。
【0031】
エポキシドは、Dow Chemicals製DER331(登録商標)エポキシ樹脂、またはHexion Specialty Chemicals製(EPON(登録商標)樹脂828などの)EPON(登録商標)樹脂として市販されている場合もある。
【0032】
一実施形態においては、X
1からX
6基の少なくとも50モルパーセントは水素であり得、その結果、オキシエチレン基であるポリオキシアルキレンオキシアルキレン単位が得られ得る。
【0033】
一実施形態においては、X
1からX
6基の50モルパーセント未満は水素であり得、その結果、オキシプロピレン基であるポリオキシアルキレンオキシアルキレン単位が得られ得る。
【0034】
一実施形態においては、X
1からX
6は、水素とメチル基との混合が存在するように独立に選択され得る。得られるポリオキシアルキレンオキシアルキレン単位は、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合であり得る。
【0035】
R
2基は、ポリオキシアルキレン第一級アミン(代表的にはポリエーテルアミン)の残基であり得る。ポリオキシアルキレン第一級アミンは、Huntsman Corporation製Surfonamine(登録商標)アミンとして市販されている場合もある。Surfonamine(登録商標)アミンの具体例は、L−100(プロピレンオキシドとエチレンオキシドのモル比が3:19)、およびL−207(プロピレンオキシドとエチレンオキシドのモル比が10:32)、L200(プロピレンオキシドとエチレンオキシドのモル比が3:41)、L−300(プロピレンオキシドとエチレンオキシドのモル比が8:58)である。括弧内の数字は、それぞれプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのおおよその繰り返し単位である。R
2の繰り返し単位は、構造に沿って無秩序に変動し得、類似単位のブロックであり得、または類似単位のブロックの無秩序な組合せであり得る。
【0036】
一実施形態においては、R
2基はポリオキシアルキレン基であり得、p、qおよびrの合計は少なくとも9、少なくとも15、少なくとも少なくとも25または少なくとも30であり得る。p、qおよびrの合計は、最高90または最高75または最高50であり得る。例えば、p、qおよびrの合計は、9から90、または15から90、または25から75、または30から50であり得る。
【0037】
R
3は、アルコールなどの重合開始剤から誘導され得る。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、ブタデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、エリトリトール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール(トリメチロールエタン)、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、1,2,4−ヘキサントリオール、またはその混合物が挙げられ得る。
【0038】
アルコール混合物を使用してR
3基を形成するときには、アルコールは、例えば、MonsantoのOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900およびOxo Alcohol(登録商標)1100、ICIのAlphanol(登録商標)79、Condea(現在のSasol)のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810、Ethyl CorporationのEpal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810、Shell AGのLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25L、Condea Augusta、MilanのLial(登録商標)125、Henkel KGaA(現在のCognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)、ならびにUgine KuhlmannのLinopol(登録商標)7−11およびAcropol(登録商標)91であり得る。
【0039】
R
4は、式R
4−NH
2の第一級アミンから誘導され得る。R
4は、鎖状または分枝ヒドロカルビル基、代表的にはアルキル基またはアルカリール基またはアリール基であり得る。R
4は、C
1〜30炭素原子またはC
6〜24またはC
8〜18炭素原子を有する第一級鎖状または分枝(代表的には鎖状)アミンから誘導され得る。
【0040】
第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、またはその混合物が挙げられ得る。
【0041】
上述したように、ポリマーは、エポキシド(代表的にはジエポキシド)、第一級ヒドロカルビルアミンおよびポリオキシアルキレン第一級アミン(代表的にはポリエーテルアミン)の反応を含むプロセスによって得られ得る/得ることができる。
【0042】
エポキシドと第一級アミン(第一級ヒドロカルビルアミンおよびポリオキシアルキレン第一級アミン)のモル比は、1:1から1:2、または1:1.05から1:1.3、または1:1.1から1:1.2であり得る。ヒドロカルビルアミンとポリオキシアルキレンアミンの比は、1:20から20:1、または5:1から1:5、または2:1から1:2であり得る。
【0043】
プロセスは、20から200℃、40℃から120℃、または60℃から100℃の範囲の反応温度を有し得る。
【0044】
プロセスは、不活性雰囲気または空気中で実施され得る。不活性雰囲気が使用される場合、雰囲気は窒素またはアルゴンであり得る。
【0045】
反応は、場合によっては、溶媒の存在下で実施され得る。代表的には、溶媒は不要である。
【0046】
溶媒としては、水、または本明細書に開示する有機媒体が挙げられる。
【0047】
産業上の利用
一実施形態においては、本明細書に開示する本明細書に開示するポリマーは、分散剤、代表的には粒子状固体分散剤である。
【0048】
本明細書の異なる実施形態において開示されるポリマーは、0.1から50重量%、または0.25から35重量%、および0.5から30重量%から選択される範囲で本発明の組成物中に存在し得る。
【0049】
組成物中に存在する粒子状固体は、有機媒体に実質的に不溶である任意の無機固体材料または有機固体材料であり得る。一実施形態においては、粒子状固体は、顔料または充填剤である。
【0050】
一実施形態においては、本発明の組成物は、粒子状固体、有機液体、結合剤、および本明細書に開示するポリマーを含む、塗料またはインクを与える。
【0051】
一実施形態においては、固体は、例えば、Third Edition of the Colour Index(1971)、およびその後の改訂版、およびその増補において、「Pigments」の標題の章で記述された一般に認められたクラスの顔料のいずれかからの有機顔料である。カーボンブラックは、厳密には無機であるが、その分散性においてむしろ有機顔料のように振る舞う。
【0052】
適切な固体の例は、油性インク用顔料;塗料およびプラスチック材料用顔料、増量剤および充填剤;分散染料;溶媒染浴、インクおよび他の溶媒適用システム用蛍光増白剤および繊維助剤;油性および逆相乳濁液掘削泥水用固体;有機固体において分散系として適用されるドライクリーニング流体、殺生物剤、農薬および医薬品における塵埃および固体粒子;粒子状セラミック材料;磁性材料および磁性記録媒体;複合材料用のガラス、鋼、炭素、ホウ素などの繊維である。
【0053】
無機固体としては、タルク、カオリン、シリカ、重晶石およびチョーク、酸化アルミニウム三水和物などの難燃充填剤、または水酸化マグネシウムなどの増量剤および充填剤;アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、混合ケイ素−アルミニウム窒化物、金属チタナートなどの粒子状セラミック材料;遷移金属、特に鉄およびクロムの磁性酸化物、例えば、ガンマ−Fe
2O
3、Fe
3O
4、およびコバルトドープ酸化鉄、酸化カルシウム、フェライト、特にバリウムフェライトなどの粒子状磁性材料;ならびに金属粒子、特に金属の鉄、ニッケル、コバルト、銅およびそのアロイが挙げられる。
【0054】
一実施形態においては、顔料は、フタロシアニン、またはその混合物であり得る。フタロシアニンとしては、例えば、フタロシアニングリーン顔料(Clariant製Hostaperm Green GNX)、フタロシアニンブルー顔料(ICI Chemicals製Monastral Blue BG)、またはフタロシアニンブルー顔料(Toyo Ink MFG.Co.,Ltd製Lionel Blue FG7400G)が挙げられ得る。フタロシアニン顔料は、多くの場合、高ミルベース粘度で低分散をもたらす(代表的には、アルコール/水媒体)。
【0055】
一実施形態においては、本発明の組成物中に存在する有機媒体は、水性または有機液体であり得る。有機液体は、非極性または極性の有機液体であり得るが、極性有機液体が代表的には使用される。有機液体に関連した「極性」という用語は、有機液体が、Journal of Paint Technology,Vol.38,1966,269ページのCrowley et al.による“A Three Dimensional Approach to Solubility”と題する論文に記載のように、中程度から強度の結合を形成することができることを意味する。かかる有機液体は、一般に、上記論文に定義されたように、水素結合数(hydrogen bonding number)が5以上である。
【0056】
適切な極性有機液体の例は、アミン、エーテル、特に低級アルキルエーテル、有機酸、エステル、ケトン、グリコール、アルコールおよびアミドである。かかる適度に強い水素結合性液体の多数の具体例が(1968年にNoyes Development Corporationによって刊行された)Ibert Mellanによる”Compatibility and Solubility”と題する本の39〜40ページの表2.14に記載されている。これらの液体すべてが、本明細書で使用される極性有機液体という用語の範囲内にある。
【0057】
一実施形態においては、極性有機液体としては、ジアルキルケトン、アルカンカルボン酸のアルキルエステル、およびアルカノールが挙げられ、特にかかる液体は6個または8個を含めて合計6個または8個までの炭素原子を含む。極性有機液体の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノンなどのジアルキル、およびシクロアルキルケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、酢酸メトキシプロピル、および酪酸エチルなどのアルキルエステル、エチレングリコール、2−エトキシエタノール、3−メトキシプロピルプロパノール、3−エトキシプロピルプロパノール、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシプロピル、酢酸3−エトキシプロピル、および酢酸2−エトキシエチルなどのグリコールならびにグリコールエステルおよびエーテル;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、およびイソブタノールなどのアルコール、ならびにジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランなどのジアルキルエーテルおよび環式エーテルが挙げられる。一実施形態においては、溶媒はアルコール、アルカンカルボン酸およびアルカンカルボン酸エステルである。
【0058】
極性有機液体としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソブタノール、またはその混合物が挙げられる。
【0059】
極性有機液体として使用することができる有機液体の例は、塗料、インクなどの種々の用途に使用されるインク、塗料、チップ(chip)などの膜形成樹脂である。かかる樹脂の例としては、その混合物を含めて、Versamid(商標)、Wolfamid(商標)などのポリアミド、ならびにエチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースおよび酢酸酪酸セルロース樹脂などのセルロースエーテルが挙げられる。塗料樹脂の例としては、短油アルキド/メラミン−ホルムアルデヒド、ポリエステル/メラミン−ホルムアルデヒド、熱硬化性アクリル/メラミン−ホルムアルデヒド、長油アルキド、ポリエーテルポリオール、ならびにアクリル、および尿素/アルデヒドなどのマルチメディア樹脂(multi−media resin)が挙げられる。
【0060】
有機液体は、ポリオール、すなわち、2個以上のヒドロキシ基を有する有機液体であり得る。一実施形態においては、ポリオールとしては、アルファ−オメガジオールまたはアルファ−オメガジオールオキシアルキレンが挙げられる。
【0061】
一実施形態においては、非極性有機液体は、脂肪族基、芳香族基またはその混合物を含む化合物である。非極性有機液体としては、非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン)、ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン)、非ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、6個以上の炭素原子を含む、完全飽和と部分飽和の両方の鎖状および分枝脂肪族炭化水素)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエタン)および天然非極性有機物(例えば、植物油、ヒマワリ油、亜麻仁油、テルペンおよびグリセリド)が挙げられる。
【0062】
有機液体は、アクリラート希釈モノマーであり得る。アクリラート希釈モノマーは、アクリル化エポキシダイズ油、ビスフェノールAエポキシジアクリラート、エポキシアクリラート/モノマーブレンド、アクリル化エポキシ亜麻仁油、ノニルフェノールエトキシラート、2−フェノキシエチルアクリラート、フェノールエトキシラートモノアクリラート、ラウリルアクリラート、ヘキサデシルアクリラート、ステアリルアクリラート、ノニルフェノールプロポキシラート(2.5)モノアクリラート、ミリスチルアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、ビスフェノールAエトキシラートジアクリラート、ポリエチレングリコール200ジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールプロポキシラートジアクリラート、ネオペンチルグリコールエトキシラートジアクリラート、脂肪族エトキシラートジアクリラート、脂肪族ジアクリラート、ジプロピレングリコールジアクリラート、ビスフェノールAエトキシラートジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールエトキシラートジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールプロポキシラートジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパンプロポキシラートトリアクリラート、トリメチロールプロパンエトキシラートトリアクリラート、脂肪族ジアクリラート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリラート、ジペンタエリスリトールペンタアクリラート、脂肪族アミンアクリラート、脂肪族アミンアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、グリセリルプロポキシラートトリアクリラート、トリメチロールプロパンプロポキシラートトリアクリラート、トリメチロールプロパンエトキシラートトリアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ジトリメチロールプロパンペンタアクリラート、脂肪族ウレタントリアクリラート、脂肪族ウレタンジアクリラート、芳香族ウレタンヘキサアクリラート、脂肪族ウレタンジアクリラート、脂肪族ウレタントリアクリラート、芳香族ウレタンジアクリラート、モノメトキシトリメチロールプロパンエトキシラートジアクリラートおよびトリプロピレングリコールジアクリラートからなる群から選択される。
【0063】
一実施形態においては、有機液体は、全有機液体に基づいて少なくとも0.1重量%、または1重量%以上の極性有機液体を含む。
【0064】
有機液体は、場合によっては、さらに水を含む。一実施形態においては、有機液体は水を含まない。
【0065】
有機液体が水を含むときには、存在量は、一実施形態においては、有機液体+水の総量に基づいて70%以下、または50%以下、または40重量%以下である。
【0066】
必要に応じて、組成物は、他の成分、例えば、樹脂(これは、有機媒体をまだ構成していない)、結合剤、流動化剤、抗沈降剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、レオロジー調節剤、レベリング剤、光沢調節剤および防腐剤を含み得る。
【0067】
組成物は、代表的には、1から95重量%の粒子状固体を含み、正確な量は固体の性質に依存し、量は、固体の性質および固体と極性有機液体の相対密度に依存する。例えば、固体が有機顔料などの有機材料である組成物は、一実施形態においては、15から60重量%の固体を含むのに対して、固体が無機顔料、充填剤、または増量剤などの無機材料である組成物は、一実施形態においては、組成物の総重量に基づいて40から90重量%の固体を含む。
【0068】
組成物は、分散系を調製することが知られている従来の方法のいずれかによって調製され得る。したがって、固体、有機媒体および分散剤は、任意の順序で混合され得る。次いで、混合物を機械的処理に供して、例えば、分散系が形成されるまでボールミル、ビーズミル、グラベルミルまたはプラスチックミルで粉砕することによって、固体の粒子を適切なサイズに小さくすることができる。あるいは、固体を単体で、または有機媒体もしくは分散剤のいずれかと混合して、処理して、その粒径を減少させることができる。次いで、他の成分(単数または複数)を添加し、混合物を撹拌して組成物を提供することができる。
【0069】
一実施形態においては、本発明の組成物は液体分散系に適している。分散系は、ナノ分散系(代表的には、平均粒径100nm以下)またはミクロ分散系(代表的には、平均粒径100nm超から3ミクロン)であり得る。一実施形態においては、かかる分散組成物は、(a)粒子状固体0.5から40部、(b)本明細書に開示するポリマー0.5から30部、および(c)有機媒体または水性媒体30から99部を含む。ここで、すべての部は重量部であり、量(a)+(b)+(c)=100である。
【0070】
一実施形態においては、成分a)は顔料0.5から40部を含み、かかる分散系は液体インク、塗料およびミルベースとして有用である。一実施形態においては、成分a)は顔料0.5から40部を含み、かかる分散系は液体インクとして有用である。
【0071】
粒子状固体および本明細書に開示するポリマーを乾燥形態で含む組成物が必要である場合、有機液体は、代表的には、蒸発などの簡単な分離手段によって粒子状固体から容易に除去され得るように、揮発性である。一実施形態においては、組成物は有機液体を含む。
【0072】
乾燥組成物は、本明細書に開示するポリマー生成物および粒子状固体から本質的になる場合、代表的には、粒子状固体の重量に基づいて少なくとも0.2%、少なくとも0.5%または少なくとも1.0%のポリマーを含む。一実施形態においては、乾燥組成物は、粒子状固体の重量に基づいて100重量%以下、50重量%以下、20重量%以下または10重量%以下の本明細書に開示するポリマーを含む。一実施形態においては、本明細書に開示するポリマーは、0.6重量%から8重量%で存在する。
【0073】
上に開示したように、本発明の組成物は、粒子状固体が本明細書に開示するポリマーの存在下で有機液体中で粉砕される、ミルベースの調製に適している。
【0074】
したがって、本発明の更なる一実施形態によれば、粒子状固体、有機液体、および本明細書に開示するポリマーを含む、ミルベースが提供される。
【0075】
代表的には、ミルベースは、ミルベースの総重量に基づいて20から70重量%の粒子状固体を含む。一実施形態においては、粒子状固体は、ミルベースの10重量%以上または20重量%以上である。かかるミルベースは、場合によっては、粉砕前または後のいずれかに添加される結合剤を含むことができる。結合剤は、有機液体が揮発すると組成物を結合することができるポリマー物質である。
【0076】
結合剤は、天然および合成物質を含めて、ポリマー物質であり得る。一実施形態においては、結合剤としては、ポリ(メタ)アクリラート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド、セルロースなどの多糖、およびカゼインなどの天然タンパク質が挙げられる。一実施形態においては、結合剤は、組成物中に、粒子状固体の量に基づいて100%を超えて、200%を超えて、300%を超えて、または400%を超えて、存在する。
【0077】
ミルベース中の任意に選択される結合剤の量は、広範に変わり得るが、代表的にはミルベースの連続/液相の10%重量以上であり、20重量%以上であることが多い。一実施形態においては、結合剤の量は、ミルベースの連続/液相の50重量%以下または40重量%以下である。
【0078】
ミルベース中の分散剤の量は、粒子状固体の量に依存するが、代表的には、ミルベースの0.5から5重量%である。
【0079】
本発明の組成物から作製された分散系およびミルベースは、溶媒系と水系の両方のコーティングおよび塗料、特にハイソリッド塗料;インク、特にオフセット、フレキソ、グラビア、放射線硬化およびスクリーンインク;非水系セラミックプロセス、特にテープコーティング、ドクターブレード、押し出しおよび射出成形型プロセス、複合材、化粧品、接着剤およびプラスチック材料における使用に適する。一実施形態においては、分散系およびミルベースは、インク、特にオフセット、フレキソ、グラビア、放射線硬化およびスクリーンインク用の本発明の組成物から作製され得る。
【0080】
一実施形態においては、本発明の組成物は、さらに、1種類以上の追加の公知の分散剤を含む。
【0081】
以下の実施例で本発明を説明する。これらの実施例は、すべてを網羅するものではなく、本発明の範囲を限定するものでもない。化学物質はすべて、特に記述しない限り、Aldrichから購入された。ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィーによってポリスチレン標準に対して特徴づけられた。
【実施例】
【0082】
比較例1(COMPA1):丸底フラスコにSulfonamine(登録商標)L−207(Huntsman製100部)およびDER331(16.4部、Dow Chemicals製)を充填する。DER31はDowによってビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応からのポリエポキシドとして報告され、エポキシド当量が約182〜192(g/eq)であり、主にビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)であるが、より高分子量のそのオリゴマー約10〜15モル%を含む(例えば、一部の分子は、オリゴマー1個当たり2個以上のビスフェノールA系繰り返し単位および3個以上のエピクロロヒドリン系繰り返し単位を有する)。反応混合物を90℃で20時間保持する。得られた生成物は、Mn=5900およびMw=9100であった。この生成物は、国際公開第2005/113676号の調製実施例5に類似している。
【0083】
実施例1(EX1):丸底フラスコにSulfonamine(登録商標)L−207(Huntsman製100部)およびDER331(29.09部、Dow Chemicals製)、およびドデシルアミン(Aldrich製7.96部)を充填する。反応混合物を90℃で20時間保持する。得られた生成物は、Mn=8500およびMw=17,400であった。
【0084】
実施例2(EX2):丸底フラスコにSulfonamine(登録商標)L−207(Huntsman製100部)およびDER331(29.09部、Dow Chemicals製)、およびオクタデシルアミン(Aldrich製11.57部)を充填する。反応混合物を90℃で20時間保持する。得られた生成物は、Mn=7700およびMw=16,500であった。
【0085】
実施例3(EX3):丸底フラスコにSulfonamine(登録商標)L−207(Huntsman製100部)およびDER331(29.09部、Dow Chemicals製)、およびオクチルアミン(Aldrich製5.55部)を充填する。反応混合物を90℃で20時間保持する。得られた生成物は、Mn=7500およびMw=16,900であった。
【0086】
分散評価組成物1:ミルベースを調製することによって分散系を調製する。分散剤CE1および実施例EX1からEX3(0.5部)を水(3部)およびイソプロピルアルコール(3部)に溶解させることによってミルベースを調製する。3mmガラスビーズ(20部)および顔料(3.5部)を添加し、内容物を水平振とう機によって16時間粉砕する。評価した顔料としては、Hostaperm Green GNX顔料(Clariant製)およびMonastral Blue BG顔料(ICI Chemicals製)が挙げられる。形成された分散系を以下に要約する。
【0087】
【表1】
【0088】
分散評価組成物2:分散剤CE1および実施例EX1からEX3(0.9部)を水(7.6部)に溶解させることによってミルベース分散系を調製する。3mmガラスビーズ(20部)および青色顔料(Toyo Ink製Lionel Blue FG7400G、1.5部)を添加し、内容物を水平振とう機によって16時間粉砕する。ミルベースはすべて優れた流動性を示した。次いで、ミルベースの粒径(PS)をNanotrac(登録商標)NPA251粒径分析計で測定した。平均等価直径D50を使用して、分散系の粒径を比較した。
【0089】
【表2】
【0090】
次いで、分散系(5部)を、水(16部)、2−ピロリジノン(0.5部)、1,5−ペンタンジオール(1.25部)、グリセロール(2.5部)、Tego wet 500(0.125部、Tego製)を含むインク溶液で希釈する。インク溶液をオーブン中に70℃で2週間保存し、粒径を5、8および14日後に測定する。得られたデータは、以下のとおりである。
【0091】
【表3】
【0092】
脚注:
F.D.は、分散系が凝集したことを示す(5日後の粒径600nm超)。
【0093】
上記試験から得られるデータによれば、本発明の組成物は、比較例分散剤を含む組成物よりも高いミルベース粘度および高い水性分散系安定性の少なくとも1つを示す。
【0094】
上で言及した文書の各々を参照により本明細書に援用する。実施例を除いて、または特に明示しない場合、この記述において物質、反応条件、分子量、炭素原子数などの量を画定するすべての数量は、「約」という語によって修飾されると理解すべきである。別段の記載がない限り、本明細書で言及する各化学物質または組成物は、市販グレードの物質であると解釈すべきであり、異性体、副生成物、誘導体、および市販グレードに存在すると通常は理解される他の物質を含み得る。しかし、各化学成分の量は、別段の記載がない限り、市販物質中に慣習的に存在し得る任意の溶媒または希釈油を除いて示される。本明細書に記載の上限および下限の、量、範囲、ならびに比の限度は、独立に組み合わせることができることを理解されたい。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と一緒に使用することができる。
【0095】
本明細書では「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残部に直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素の特性を有する、基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、以下が挙げられる。
【0096】
(i)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、芳香族置換芳香族置換基、脂肪族置換芳香族置換基、脂環式置換芳香族置換基、および環が分子の別の部分を介して完結する(例えば、2個の置換基が一緒に環を形成する)環式置換基、
(ii)置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、置換基の主として炭化水素の性質を変えない非炭化水素基を含む置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)、ならびに
(iii)ヘテロ置換基、すなわち、主として炭化水素の性質を有するが、本発明の文脈において、環または鎖中に炭素以外を含み、それ以外は炭素原子で構成されるものであり、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルとしての置換基を包含する、置換基。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素および窒素が挙げられる。一般に、2個以下または1個以下の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに存在し、代表的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0097】
本発明をその好ましい実施形態に関連して説明したが、本明細書を読むことによって、その種々の改変が当業者に明白になるであろうことを理解されたい。したがって、本明細書に開示する本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるかかる改変を包含するように意図されることを理解されたい。