特許第6146937号(P6146937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岩城 千鶴の特許一覧

<>
  • 特許6146937-S字体形保持椅子 図000002
  • 特許6146937-S字体形保持椅子 図000003
  • 特許6146937-S字体形保持椅子 図000004
  • 特許6146937-S字体形保持椅子 図000005
  • 特許6146937-S字体形保持椅子 図000006
  • 特許6146937-S字体形保持椅子 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6146937
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】S字体形保持椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20170607BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   A47C7/40
   A47C7/62
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-25371(P2016-25371)
(22)【出願日】2016年2月12日
【審査請求日】2016年2月15日
【審判番号】不服2016-15421(P2016-15421/J1)
【審判請求日】2016年10月14日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516045953
【氏名又は名称】岩城 千鶴
(74)【代理人】
【識別番号】100094581
【弁理士】
【氏名又は名称】鯨田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】岩城 典佳
【合議体】
【審判長】 黒瀬 雅一
【審判官】 森次 顕
【審判官】 藤本 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−112707(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3190627(JP,U)
【文献】 特開平10−146241(JP,A)
【文献】 特開2001−353041(JP,A)
【文献】 特開2009−293662(JP,A)
【文献】 特開2006−95262(JP,A)
【文献】 特開平8−252150(JP,A)
【文献】 特表2005−517466(JP,A)
【文献】 実開昭48−7305(JP,U)
【文献】 実開昭48−43811(JP,U)
【文献】 実開昭53−156710(JP,U)
【文献】 特開2009−11500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの臀部及び大腿部が載置される座面部であって、平面視において自ら(座面部)の中の後記脊椎支持部よりも後方側の後臀載置領域であってユーザーの臀部の後部が載置可能な幅を有する後臀載置領域を含む座面部と、
前記座面部のユーザーから見て後方の部分から上方に延びるように配置された背凭れ部と、
前記背凭れ部に備えられ、「ユーザーの脊椎中の臀部の上方部分であって、脊椎が側面視でS字形状となっているとき前方に向かって湾曲する部分」を前方向に支持する脊椎支持部と、
前記背凭れ部と前記座面部の後臀載置領域との間に形成された「ユーザーの臀部の後部が載置可能な幅と高さを有する凹部」であってユーザーの臀部の後部が当該凹部内に挿入されて前記後臀載置領域上に配置されることを可能とし、これにより、ユーザーの脊椎中の臀部の上方部分が前記脊椎支持部により前方向に支持されることと相俟って、ユーザーに対しS字体形を保持させるように作用する凹部と、
前記背凭れ部に対して取り付け及び取り外し可能な柔軟部材であって、前記背凭れ部の凹部を塞ぐ形状を有しており、前記凹部を塞ぐように配置されたとき、ユーザーの臀部が当該柔軟部材の前方部分に当接されることにより、前記座面部に座っているユーザーの臀部の位置を、「当該柔軟部材が前記凹部を塞いでいないときの前記凹部の内部の位置」から、「前記凹部の外側の位置、すなわちユーザーの臀部が当該柔軟部材の前方部分に当接する位置」に変更させる柔軟部材と、
を備えたS字体形保持椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザー(着座者)が自らのS字体形(脊椎が側面視でS字形状となっている体形)を保持したまま着座を続けられる椅子(ソファーを含む。また、当然、自動車、バス、電車、船舶、飛行機等の交通機関に使用される椅子も含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザーが脊椎のS字形状(側面視でのS字形状)を保持したまま着座を続けられる椅子が提案されている。例えば、特許文献1は、背凭れ部の内部に横方向に延びる背凭れベルトを上下方向に渡って互いに平行に複数本配置し、各背凭れベルトの張力等をモーターなどで調整することにより、背凭れ部の形状・角度等をユーザーが脊椎のS字形状を保持できるようにした椅子を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5170519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来より特許文献1などが提案しているユーザーが自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子は、いずれも、背凭れ部の内部または外部に複雑な構造を採用している(例えば特許文献1が提案する椅子では背凭れ部の内部に複数本の背凭れベルトやモーターなどを含む複雑な機構を内蔵させている)ことから、製造コストが極めて高くなってしまい、多くの人々に安価に提供することができないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目して為されたものであって、極めて単純な構成にして低コストで製造することができ、多くの人々に安価に提供することができる、ユーザーが自らのS字体形(脊椎が側面視でS字形状となっている体形)を保持したまま着座を続けられる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するための本発明によるS字体形保持椅子(「椅子」はソファーを含む。また、当然、自動車、バス、電車、船舶、飛行機等の乗り物に使用される椅子をも含む。)は、ユーザーの脊椎の上下方向の中間部分を前方向に向けて支持する脊椎支持部と、ユーザーの臀部及び大腿部が載置される座面部であって、「平面視において前記座面部中の前記脊椎支持部よりも後方側に位置する後臀載置領域であって、ユーザーの臀部の後部(臀部の一部)が載置可能な幅を有する後臀載置領域」を含む座面部とを備え、前記脊椎支持部の下側と前記座面部中の後臀載置領域との間に、ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部(臀部の一部)が挿入又は配置可能な幅を有する後臀配置空間が形成されて成るものである。
【0007】
また、本発明によるS字体形保持椅子は、「ユーザーの脊椎中の臀部の上方部分であって、脊椎が側面視でS字形状となっているとき前方に向かって湾曲する部分」を前方向に支持する脊椎支持部と、ユーザーの臀部及び大腿部が載置される座面部であって平面視において自ら(座面部)の中の前記脊椎支持部よりも後方側の後臀載置領域であってユーザーの臀部の後部が載置可能な幅を有する後臀載置領域を含む座面部と、前記脊椎支持部の下側と前記座面部中の後臀載置領域との間に形成された「ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部が挿入及び配置可能な幅」を有する後臀配置空間とを有するS字体形保持椅子であって、前記脊椎支持部は、前記座面部の後部から上方に延びるように配置された背凭れ部に備えられており、前記背凭れ部と座面部との間には、「ユーザーから見て上下左右方向において前記後臀載置領域からユーザーの臀部上端部又はその近傍部分と対向する高さ位置までの範囲を有する開口部であって、ユーザーの臀部の後部が当該開口部から後方向に挿入され且つ前記後臀載置領域上に配置されることを可能とし、これにより、ユーザーの脊椎中の臀部の上方部分が前記脊椎支持部により前方向に支持されることと相俟って、ユーザーの身体がS字体形に保持されるようにする、開口部」が形成されており、前記後臀載置領域は前記座面部中の前記開口部よりも後方に位置しており、前記後臀配置空間は前記開口部及びその後方の空間を含むように形成されているものである。
【0008】
また、本発明によるS字体形保持椅子は、ユーザーの臀部及び大腿部が載置される座面部であって、平面視において自ら(座面部)の中の後記脊椎支持部よりも後方側の後臀載置領域であってユーザーの臀部の後部が載置可能な幅を有する後臀載置領域を含む座面部と、前記座面部のユーザーから見て後方の部分から上方に延びるように配置された背凭れ部と、前記背凭れ部に備えられ、「ユーザーの脊椎中の臀部の上方部分であって、脊椎が側面視でS字形状となっているとき前方に向かって湾曲する部分」を前方向に支持する脊椎支持部と、前記背凭れ部と前記座面部の後臀載置領域との間に形成された「ユーザーの臀部の後部が載置可能な幅と高さを有する凹部」であって、ユーザーの臀部の後部が当該凹部内に挿入されて前記後臀載置領域上に配置されることを可能とし、これにより、ユーザーの脊椎中の臀部の上方部分が前記脊椎支持部により前方向に支持されることと相俟って、ユーザーに対しS字体形を保持させるように作用する凹部と、前記背凭れ部に対して取り付け及び取り外し可能な柔軟部材であって、前記背凭れ部の凹部を塞ぐ形状を有しており、前記凹部を塞ぐように配置されたとき、ユーザーの臀部が当該柔軟部材の前方部分に当接されることにより、前記座面部に座っているユーザーの臀部の位置を、「当該柔軟部材が前記凹部を塞いでいないときの前記凹部の内部の位置」から、「前記凹部の外側の位置、すなわちユーザーの臀部が当該柔軟部材の前方部分に当接する位置」に変更させる柔軟部材とを備えたものである。
【0009】
さらに、本発明によるS字体形保持椅子においては、前記脊椎支持部は、前記座面部の後部から上方に延びるように配置された背凭れ部のユーザーの脊椎の上下方向の中間部分に対向する位置に備えられた、ユーザーから見て前方向に突出する突部であり、前記後臀載置領域は前記座面部中の前記突部の下面と対向するように配置されており、前記突部の下面と前記後臀載置領域との間には、ユーザーから見て上下左右方向において前記後臀載置領域からユーザーの臀部上端部又はその近傍の位置と対向する高さ位置までの範囲を有する後臀配置空間であって、ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部が挿入及び配置可能な幅を有する後臀配置空間が形成されていてもよい。また、この場合、前記突部を前記背凭れ部に対して(例えば面ファスナーなどにより)着脱可能なものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、椅子の座面部中の前記後臀載置領域(平面視において座面部中の脊椎支持部よりも後方側に位置する後臀載置領域であってユーザーの臀部の後部が載置可能な幅を有する後臀載置領域)にユーザーの臀部の後部(臀部の一部)を配置できるようにし、前記脊椎支持部の下側と前記座面部中の後臀載置領域との間の後臀配置空間(ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部が挿入及び配置可能な幅を有する空間)にユーザーの臀部の後部が挿入及び配置できるようにしている。本発明では、このような単純な構成(安価に製造できる構成)により、椅子を利用するユーザーは、自らの身体を「自らの脊椎の中間位置が前記脊椎支持部により前方に押された状態で支持されながら、自らの臀部の後部が平面視で前記脊椎支持部よりも後方の領域(後臀載置領域)に配置されているというS字体形」に保持できるようになる。よって、本発明によれば、ユーザーが自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子を、極めて単純な構成のまま低コストで製造して、より多くの人々に安価に販売・提供することができるようになる。
【0011】
また、本発明において、前記背凭れ部中に「ユーザーの臀部の後部が後方向に挿入可能な開口部」を形成するようにし、この開口部により、前記座面部中の前記開口部から後方の部分にユーザーの臀部の後部(臀部の一部)を載置できる後臀載置領域を形成又は配置するようにしたときは、ユーザーが自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子を、極めて単純な構成としたまま低コストで製造できるようになる。
【0012】
また、本発明において、前記背凭れ部に「ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部が挿入及び配置可能な幅を有する凹部」を形成し、且つ前記座面部中の前記凹部の底部に前記後臀載置領域を形成又は配置するようにしたときは、ユーザーが自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子を、極めて単純な構成としたまま低コストで製造できるようになる。また、この場合において、さらに、前記背凭れ部の凹部を塞ぐ形状を有する柔軟部材(前記背凭れ部に対して取り付け及び取り外し可能な、背凭れ用のクッション部など)を備えるようにしたときは、前記凹部の使用を希望しないユーザーは、前記柔軟部材で前記凹部を塞ぐことにより、従来と同様の椅子(ソファーを含む)として使用することができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記背凭れ部のユーザーの脊椎の上下方向の中間部分に対向する位置に「ユーザーから見て前方向に突出する突部」を備え、且つ前記座面部中の前記突部の下面と対向する後臀載置領域にユーザーの臀部の後部を載置できるようにし、前記突部の下面と前記後臀載置領域との間の後臀配置空間(ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部が挿入及び配置可能な幅を有する空間)にユーザーの臀部の後部を配置できるようにしたときは、利用者が自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子を、極めて単純な構成としたまま低コストで製造できるようになる。また、この場合において、前記突部を、前記背凭れ部に対して(例えば面ファスナーなどにより)着脱可能なものとしたときは、前記突部の使用を希望しないユーザーは、前記突部を取り除くことにより、従来と同様の椅子(ソファーを含む)として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係るS字体形保持椅子を示す図で、(a)はその側面図、(b)はその正面図、(c)はその平面図である。
図2】本実施形態1のS字体形保持椅子の動作を説明するための図である。
図3】本発明の実施形態2に係るS字体形を保持できるソファーを説明するための側面図である。
図4】本発明の実施形態3に係るS字体形を保持できる椅子を示す図で、(a)はその側面図、(b)はその正面図、(c)はその平面図である。
図5】本実施形態3のS字体形保持椅子の動作を説明するための図である。
図6】本実施形態3の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1(a)は本発明の実施形態1に係るS字体形保持椅子を示す図で、(a)は側面図、(b)はその正面図、(c)はその平面図である。図1において、1はユーザーの臀部及び大腿部を載せる座面部、2は前記座面部1を支持する脚部、3は前記座面部1の後方(図示右方向)部分から図示上方に突設される背凭れ部、4は前記背凭れ部3の図示上下方向の中間位置に横方向に配置された正面側が細長い形状で所定の厚みを有する板状体から成る脊椎支持部である。また、図1(b)の5は、前記背凭れ部3中の前記脊椎支持部4と前記座面部1との間に形成された開口部である。また、図1(c)の平面図では、前記背凭れ部3及び脊椎支持部4の図示を省略している。
【0016】
本実施形態1の前記座面部1においては、図1(c)の平面図に示すように、平面視において前記座面部1中の前記開口部5及び前記脊椎支持部4(図1(c)では図示省略)よりもユーザーから見て後方側(図1(c)において上側)の位置に、ユーザーの臀部の後部(臀部の一部)を載置できる後臀載置領域Aが配置されている。また、本実施形態1では、図2(b)に示すように、前記座面部1中の後臀載置領域Aと前記脊椎支持部4との間に、ユーザー10の臀部の後部10aが載置可能な幅B(前記後臀載置領域Aのユーザーから見て前後方向の幅)を有する後臀配置空間A’が形成され、この後臀配置空間A’中に、ユーザーの臀部の後部を配置できるようになっている。
【0017】
本実施形態1では、前記開口部5(図1(b)参照)は、ユーザー10から見たときの上下左右方向において前記後臀載置領域Aから臀部上端部又はその近傍と対向する高さ位置までの範囲を有するように形成されており、且つユーザーの臀部の後部が後方向(図示右方向)に挿入可能となるように形成されている。よって、本実施形態1では、ユーザー10が前記座面部1上に着座すると、図2に示すように、ユーザー10の脊椎の上下方向の中間位置は、前記脊椎支持部4により前方向(図示左方向)に支持される。このとき、ユーザー10の臀部の後部10aは、前記開口部5の中を通って後方向(図2の右方向)に挿入され、その結果、平面視において前記座面部1中の前記脊椎支持部4よりも後方側(図2の右側)の後臀載置領域Aの上に載置され、前記後臀載置領域Aの上方の後臀配置空間A’(前記脊椎支持部4の下方の空間であって前記開口部5を含む空間)に配置される。
【0018】
以上のように、本実施形態1においては、椅子の座面部1に、平面視において座面部1中の脊椎支持部4よりもユーザーから見て後方側に位置する後臀載置領域Aであって、ユーザー10の臀部の後部10aが載置可能な幅Bを有する後臀載置領域Aを含むようにし、これにより、前記脊椎支持部4の下面と前記座面部1中の後臀載置領域Aとの間に、ユーザー10から見たときの前後方向においてユーザー10の臀部の後部10aが挿入及び配置可能な幅Bを有する後臀配置空間A’が形成されている。よって、本実施形態1では、前記背凭れ部3に前述のような脊椎支持部4と開口部5を備えるという極めて単純な構成(安価に製造できる構成)を採用するだけで、ユーザー10の身体を、自らの脊椎の中間位置が前記脊椎支持部4により前方に押された状態で支持されながら自らの臀部の後部10aが平面視で前記脊椎支持部4よりも後方の領域(後臀載置領域A及び後臀配置空間A’)に配置されているというS字体形(脊椎が側面視でS字形状となっている体形)となる。よって、本実施形態1によれば、ユーザー10が自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子を、極めて単純な構成としたまま低コストで製造できるようになる。
【0019】
〔第2の実施形態〕
次に、図3(a)及び(b)は本発明の実施形態2に係るS字体形を保持できるソファーを示す図である。図3(a)において、14は略L字状の骨格部、11は前記骨格部14の図示略水平部分の上に配置された座面部、12は前記骨格部14の下面に固定された脚部、13は前記骨格部14の図示略垂直部分の側部の図示左側に配置された背凭れ部である。
【0020】
本実施形態2では、前記背凭れ部13が図示上下2つのクッション部(柔軟部材)13a,13bから構成されている点に特徴がある。すなわち、本実施形態2では、前記背凭れ部13中の座面部11に近い側(下側)のクッション部13bが、座面部11から離れた側(上側)のクッション部13aに対して着脱自在に構成されている。
【0021】
図3(b)は前記下側クッション部13bを前記上側クッション部13aから取り外した状態を示している。この状態においては、前記上側クッション部13aのユーザーから見て前方側(図示左側)に突出する部分13cが、ユーザーの脊椎をユーザーから見て前方向(図示左方向)に押すように支持する脊椎支持部となる。
【0022】
このように、本実施形態2では、前記座面部11に、平面視において前記座面部11中の前記脊椎支持部13cよりも後方側(図示右側)に位置する後臀載置領域Aであって、ユーザーの臀部の後部が載置可能な幅Bを有する後臀載置領域Aが配置される。また、本実施形態2では、前記脊椎支持部13cの下側と前記座面部11中の後臀載置領域Aとの間に、「ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部(図2の10a参照)が挿入及び配置可能な幅(図3(b)のB参照)を有する凹部(後臀配置空間)A’」が形成される。
【0023】
以上のように、本実施形態2によれば、前記背凭れ部13に「ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部10aが挿入及び配置可能な幅Bを有する凹部(後臀配置空間)A’」を形成し、且つ前記座面部11中の前記凹部(後臀配置空間)A’の底部(前記座面部11の一部)に前記後臀載置領域Aが配置されるようにしたので、前記実施形態1(図2参照)と同様に、ユーザーが自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子を、極めて単純な構成としたまま低コストで製造できるようになる。また、本実施形態2では、前記下側クッション部13bを前記上側クッション部13aの下側に配置することにより、前記凹部A’が塞がれた状態(図3(a)に示す状態)とし、従来と同様の形態のソファーとして利用することもできるので、ユーザーにとって利便性が高まるメリットがある。
【0024】
〔第3の実施形態〕
次に、図4は本発明の実施形態3に係るS字体形を保持できる椅子を示す図で、(a)は側面図、(b)はその正面図、(c)はその平面図である。図4において、前記実施形態1に関する図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態3では、前記実施形態1と異なって、図4(a)及び(b)に示すように、背凭れ部23の上下方向の中間位置(ユーザーの脊椎の上下方向の中間的位置が対向する部分)にユーザーから見て前方向(図示左方向)に突出する脊椎支持用突部24が備えられている。また本実施形態3においては、図4(c)の平面図(この平面図では、前記背凭れ部23及び脊椎支持部24は図示省略している)に示すように、前記座面部1中に、平面視において前記座面部1中の前記脊椎支持部24(図4(c)では図示省略)よりもユーザーから見て後方側(図4(c)において上側)の位置に、ユーザーの臀部の後部(臀部の一部)を載置できる後臀載置領域Aが配置されている。
【0025】
次に図5を参照して本実施形態3の動作を説明する。本実施形態3では、図5(a)に示すように、前記座面部1中の前記突部24の下側と対向する部分(図4(c)に示すように、平面視において前記座面部1中の前記突部24よりも後方側(図4(c)において上側)の領域)が、ユーザー10の臀部の後部10aが載置可能な幅Bを有する後臀載置領域Aとなっている。また、本実施形態3では、前記突部24の下側と前記座面部1中の後臀載置領域Aとの間に、ユーザーから見た上下左右方向においてユーザー10の臀部の後部10aを挿入可能であり、且つユーザーから見て前後方向においてユーザー10の臀部の後部10aが配置可能な幅Bを有する後臀配置空間A’が形成されている。
【0026】
以上のように、本実施形態3においては、前記背凭れ部23のユーザーの脊椎の上下方向の中間部分に対向する位置に「ユーザーから見て前方向に突出する突部24」を備え、且つ前記突部24の下側とその下方の前記座面部1との間に、ユーザーから見て上下左右方向において前記後臀載置領域Aから臀部上端部又はその近傍部分と対向する高さ位置までの範囲を有し、ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部10aが配置可能な幅Bを有する後臀配置空間A’を形成するようにしている。よって、本実施形態3によれば、ユーザーが自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子(ソファーを含む)を、極めて単純な構成としたまま低コストで製造できるようになる。
【0027】
なお、図6は本実施形態3の変形例を示す図である。図6において、31は自動車用座席(椅子)の座面部、33は背凭れ部、34は前記背凭れ部33中の上下方向の中間的位置のユーザー側(前方側)に配置された脊椎支持用突部である。前記突部34は、例えば面ファスナー(商標として「マジックテープ」)などを利用して、前記背凭れ部33に対して着脱自在に構成されている。このような変形例は、自動車だけでなく、船舶、電車、飛行機などの乗り物用の椅子に関して広く適用可能である。以上のような変形例によっても、前記実施形態3と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は前記の各実施形態として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施形態1,3においては、前記脊椎支持部4,24は前記背凭れ部3,23に取り付けたときは位置を変動させないようにしているが、本発明ではこれに限定されるものではなく、前記脊椎支持部4,24を前記背凭れ部3,23に対して、公知の手段(例えば、従来より椅子に備えられている、背凭れ部の傾きを調整する機構、背凭れ部及び座面部をユーザーから見て前後方向又は上下方向に位置調整する機構など)を利用して、ユーザーから見て前後方向又は上下方向に所定範囲だけその位置を調整・変動できるように構成してもよい。また、前記実施形態2の各クッション部13a,13bは例えば空気を出し入れして厚さ・大きさを調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1,11 座面部
3,13,23,33 背凭れ部
4 脊椎支持部
5 開口部
10 ユーザー
10a ユーザーの臀部の後部
13 クッション部
13a 上側クッション部
13b 下側クッション部
14 骨格部
24,34 突部
A 後臀載置領域
A’ 後臀配置空間(凹部)

【要約】      (修正有)
【課題】極めて単純な構成により低コストで製造することができ、多くの人々に安価に販売することができる、利用者が自らのS字体形を保持したまま着座を続けられる椅子を提供する。
【解決手段】ユーザーの脊椎の上下方向の中間部分を前方向に支持する脊椎支持部4と、ユーザーの臀部及び大腿部が載置される座面部1であって、平面視において前記座面部中の前記脊椎支持部よりも後方側に位置する後臀載置領域Aであって、ユーザーの臀部の後部が載置可能な幅を有する後臀載置領域を含む座面部とを備え、前記脊椎支持部の下側と前記座面部中の後臀載置領域との間に、ユーザーから見て前後方向においてユーザーの臀部の後部が配置可能な幅を有する後臀配置空間が形成されているS字体形保持椅子である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6