(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[アミノ基含有共重合体]
<アミノ基含有構造単位(a)>
本発明のアミノ基含有共重合体は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表わされるアミノ基含有構造単位(a)を有する。
【0016】
上記一般式(1)中、R
0は、水素原子またはCH
3基を表し、R
1は、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R
2、R
3は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を表す。
上記一般式(2)中、R
0は、水素原子またはCH
3基を表し、R
1は、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R
2、R
3、R
4は、同一若しくは異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を表し、X
−は、カウンターアニオンを表す。
上記一般式(3)中、R
5、R
6は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、X
−は、カウンターアニオンを表す。
【0017】
上記一般式(1)、上記一般式(2)において、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向になることから、R
0は、CH
3基であることが好ましい。
上記一般式(1)、上記一般式(2)において、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向になることから、R
1は、炭素数1〜2のアルキレン基であることが好ましい。
上記一般式(1)におけるR
2、R
3、上記一般式(2)における、R
2、R
3、R
4は、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向になることから、同一若しくは異なって、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)であることがより好ましい。
上記一般式(3)における、R
5、R
6は、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向になることから、炭素数1のアルキル基(メチル基)であることが好ましい。
上記一般式(1)、上記一般式(2)におけるカウンターアニオンX
−の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子のイオン、アルキル硫酸イオン、有機酸のイオンが好ましい。ハロゲン原子のイオンとしては、塩素原子、ヨウ素原子等のイオンが好ましい。アルキル硫酸イオンとしては、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が好ましい。上記有機酸のイオンとしては、酢酸イオン(CH
3COO
−)、プロピオン酸イオン(CH
3CH
2COO
−)が好ましい。
【0018】
上記アミノ基含有構造単位(a)は、例えば下記一般式(5)〜(7)で表わされる構造を有する単量体(アミノ基含有単量体(A)ともいう)を重合することにより形成することができる。但し、下記一般式(5)〜(7)で表わされる構造を有する単量体以外の単量体を重合した後に、後反応で変性する事により上記アミノ基含有構造単位(a)を形成することも可能である。
【0020】
上記一般式(5)中、R
0は、水素原子またはCH
3基を表し、R
1は、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R
2、R
3は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を表す。
上記一般式(6)中、R
0は、水素原子またはCH
3基を表し、R
1は、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R
2、R
3、R
4は、同一若しくは異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を表し、X
−は、カウンターアニオンを表す。
上記一般式(7)中、R
5、R
6は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、X
−は、カウンターアニオンを表す。
【0021】
上記一般式(5)で表わされる単量体としては、具体的には、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルメタクリレート等が例示される。なお、上記一般式(5)で表わされる単量体のアミノ基は、酸で中和されていても良い。
【0022】
上記一般式(6)で表わされる単量体としては、上記一般式(5)で表わされる単量体のアミノ基を、ハロゲン化アルキルやジアルキル硫酸等の公知の4級化剤で4級化した単量体が例示される。
【0023】
上記一般式(7)で表わされる単量体としては、具体的には、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、ジアリルジブチルアンモニウムクロリド等が例示される。
【0024】
アミノ基含有共重合体は、上記一般式(1)〜(3)のいずれかで表わされるアミノ基含有構造単位(a)をアミノ基含有共重合体100質量%(但し、単量体に由来しない構造単位に該当する質量は除いて計算する)に対して0.1質量%以上、20質量%以下有することを特徴としている。
なお、上記「単量体に由来しない構造単位」とは、具体的には、重合開始剤に由来する構造単位と連鎖移動剤に由来する構造単位とをいう。「単量体に由来する構造単位」とは、具体的には、上記アミノ基含有構造単位(a)、カルボキシル基含有構造単位(b)、後述するその他の単量体に由来する構造単位、をいう。
アミノ基含有構造単位(a)が上記範囲内であれば、共重合体の炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能の顕著な向上効果が得られる。アミノ基含有共重合体100質量%に対するアミノ基含有構造単位(a)の割合は、好ましくは0.5質量%以上、15.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上、12.0質量%以下であり、特に好ましくは1.5質量%以上、9.0質量%以下であり、さらに特に好ましくは2.0質量%以上、6.0質量%以下である。
【0025】
なお、本発明において、アミノ基含有構造単位(a)のアミノ基含有共重合体に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、1〜3級アミン塩の場合は対応する1〜3級アミンとして計算し4級アミン塩の場合は、カウンターアニオンは計算に入れないこととする(以下、アミン換算ともいう)。全単量体における一般式(5)〜(7)で表わされる単量体の質量割合(質量%)を計算する場合も同様に計算する。
【0026】
<カルボキシル基含有構造単位(b)>
本発明のアミノ基含有共重合体は、下記一般式(4)で表わされるカルボキシル基含有構造単位(b)を有する。
【0028】
上記一般式(4)中、R
0は、水素原子またはCH
3基を表し、R
1は、水素原子、−COOM
2基(但し、M
2は水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アミン基を表わす)を表わし、M
1は水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アミン基を表わす。
【0029】
上記一般式(4)において、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向になることから、R
0は、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(4)において、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向になることから、R
1は、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(4)において、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向になることから、M
1は、水素原子またはナトリウム原子であることが好ましい。
【0030】
上記カルボキシル基含有構造単位(b)は、例えば下記一般式(8)で表わされる構造を有する単量体(カルボキシル基含有単量体(B)ともいう)を重合することにより形成することができる。但し、下記一般式(8)で表わされる構造を有する単量体以外の単量体を重合した後に、後反応で変性する事により上記カルボキシル基含有構造単位(b)を形成することも可能である。
【0032】
上記一般式(8)中、R
0は、水素原子またはCH
3基を表し、R
1は、水素原子、−COOM
2基(但し、M
2は水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アミン基を表わす)を表わし、M
1は水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アミン基を表わす。
【0033】
上記一般式(8)で表わされる単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびこれらの塩等が例示される。
【0034】
アミノ基含有共重合体は、下記一般式(4)で表わされるカルボキシル基含有構造単位(b)をアミノ基含有共重合体100質量%(但し、単量体に由来しない構造単位に該当する質量は除いて計算する)に対して80質量%以上、99.9質量%以下有することを特徴としている。
カルボキシル基含有構造単位(b)が上記範囲内であれば、共重合体の炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能の顕著な向上効果が得られる。アミノ基含有共重合体100質量%に対するカルボキシル基含有構造単位(b)の割合は、好ましくは85.0質量%以上、99.5質量%以下であり、さらに好ましくは88.0質量%以上、99.0質量%以下であり、特に好ましくは91.0質量%以上、98.5質量%以下であり、さらに特に好ましくは94.0質量%以上、98.0質量%以下である。
【0035】
なお、本発明において、カルボキシル基含有構造単位(b)のアミノ基含有共重合体に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸として計算するものとする(以下、酸換算ともいう)。例えば、カルボキシル基含有構造単位(b)が、−CH
2−CH(COONa)−で表わされる構造であれば、対応する酸である構造単位、−CH
2−CH(COOH)−として、質量割合(質量%)の計算をする。同様に、上記一般式(8)で表わされる構造を有する単量体のアミノ基含有共重合体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
【0036】
<その他の単量体に由来する構造単位(e)>
本発明のアミノ基含有共重合体は、任意成分として、その他の単量体に由来する構造単位(e)を有していてもよい。
その他の単量体に由来する構造単位(e)とは、単量体が重合して形成される構造や、それらを変性して形成されるのうち、上記アミノ基含有構造単位(a)、カルボキシル基含有構造単位(b)のいずれにも該当しない構造をいう。本発明において単量体とは、重合性の炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物である。
【0037】
上記その他の単量体に由来する構造単位(e)は、例えば上記一般式(5)〜(8)で表わされる構造を有する単量体以外の単量体を重合することにより形成することができる。但し、上記一般式(5)〜(8)で表わされる構造を有する単量体以外の単量体が重合して形成された後に、後処理により結果的にアミノ基含有構造単位(a)、カルボキシル基含有構造単位(b)に変性された場合、その他の単量体に由来する構造単位(e)には該当しない。
上記一般式(5)〜(8)で表わされる構造を有する単量体以外の単量体(その他の単量体(E)ともいう)としては、特に限定されるものではなく、所望の効果によって適宜選択される。具体的には、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、不飽和エポキシ化合物のエポキシ基にアミンが付加して形成される単量体、およびこれらの4級化物や塩等のアミノ基含有単量体(上記一般式(5)〜(7)で表わされる構造を有する単量体(アミノ基含有単量体(A))を除く);αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸、イタコン酸、2−メチレングルタル酸、およびこれらの塩等のカルボキシル基含有単量体(上記一般式(8)で表わされる構造を有する単量体(カルボキシル基含有単量体(B))を除く);3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸系単量体及びこれらの塩;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを6〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)、(メタ)アリルアルコール等のアリルエーテル系単量体;イソプレノール、等のイソプレン系単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(アルキレングリコールの付加モル数1〜300)、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(アルキレングリコールの付加モル数1〜300)等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体、スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体、イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
また、上記その他の単量体(E)は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0038】
本発明のアミノ基含有共重合体は、任意であるが、所望に応じてその他の単量体に由来する構造単位(e)をアミノ基含有共重合体100質量%(但し、単量体に由来しない構造単位に該当する質量は除いて計算する)に対して、上記アミノ基含有構造単位(a)、カルボキシル基含有構造単位(b)の組成を満足する範囲(例えば0質量%以上19.9質量%以下)の割合で有することができる。
【0039】
なお、本発明において、その他の単量体に由来する構造単位(e)のアミノ基含有共重合体に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、該当する場合には上記酸換算および/または上記アミン換算で計算する。全単量体に対する上記他の単量体(E)の質量割合(質量%)を計算する場合も同様に計算する。
【0040】
<重合体の主鎖末端の構造単位>
本発明の重合体は、主鎖末端にスルホン酸(塩)基を有することが好ましい。主鎖末端にスルホン酸(塩)基を有することにより、重合体のスケール防止能が向上する傾向にある。
ここでスルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基、スルホン酸の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩をいう。
主鎖末端にスルホン酸(塩)基を導入する方法としては、後述の通り、亜硫酸(塩)(亜硫酸若しくは亜硫酸水素またはこれらの塩をいう)を連鎖移動剤として使用する方法が例示される。
【0041】
<アミノ基含有共重合体の分子量等>
本発明のアミノ基含有共重合体は、上記アミノ基含有構造単位(a)、カルボキシル基含有構造単位(b)、ならびに任意成分であるが、その他の単量体に由来する構造単位(e)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構成単位は、ブロック状あるいはランダム状のいずれで存在していてもよい。また、本発明のアミノ基含有共重合体の重量平均分子量は、適宜設定できるものであり、特に限定されない。具体的には、アミノ基含有共重合体の重量平均分子量は、1,000〜50,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜40,000、さらに好ましくは5,000〜30,000、特に好ましくは6,000〜20,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能が向上する傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、具体的な測定方法は実施例に記載される方法に従って算出される。
【0042】
〔本発明のアミノ基含有共重合体組成物〕
本発明のアミノ基含有共重合体組成物は、本発明のアミノ基含有共重合体を必須として含有し、アミノ基含有共重合体のみを含んでいても良いが、通常はその他に、重合開始剤残渣、残存単量体、重合時の副生成物、水分から選ばれる1以上を含有する。好ましいアミノ基含有共重合体組成物の形態は、アミノ基含有共重合体を40〜60質量%含有し、水を40〜60質量%含有する形態である。
【0043】
〔アミノ基含有共重合体の製造方法〕
<単量体>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、(i)上記一般式(5)〜(7)で表わされる構造を有する単量体(アミノ基含有単量体(A))、(ii)上記一般式(8)で表わされる単量体(カルボキシル基含有単量体(B))を必須として、重合開始剤の存在下で重合する工程(重合工程)を含むことが好ましい。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、アミノ基含有単量体(A)の使用量は、全単量体(アミノ基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、その他の単量体(E))の合計100質量%に対して、0.1質量%以上、80質量%以下であり、0.5質量%以上、15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上、12.0質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以上、9.0質量%以下であることが特に好ましく、2.0質量%以上、6.0質量%以下であることがもっとも好ましい。上記範囲内であれば、得られる共重合体の炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能の向上効果が顕著に得られる傾向にある。本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、アミノ基含有単量体(A)は、1種または2種以上を使用すことができる。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、カルボキシル基含有単量体(B)の使用量は、全単量体(アミノ基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、その他の単量体(E))の合計100質量%に対して、80.0質量%以上、99.9質量%以下であり、85.0質量%以上、99.5質量%以下であることが好ましく、88.0質量%以上、99.0質量%以下であることがさらに好ましく、91.0質量%以上、98.5質量%以下であることが特に好ましく、94.0質量%以上、98.0質量%以下であることがもっとも好ましい。上記範囲内であれば、得られる共重合体の炭酸カルシウムの分散能および水酸化鉄の分散能の向上効果が顕著に得られる傾向にある。本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、カルボキシル基含有単量体(B)は、1種または2種以上を使用すことができる。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、任意であるが所望により、上記その他の単量体(E)を使用(共重合)しても良く、その他の単量体(E)の使用量は、上記アミノ基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)の使用量を満足する範囲(例えば0質量%以上、19.9質量%以下)であることが好ましい。本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、その他の単量体(E)は、1種または2種以上を使用すことができる。
【0044】
<重合開始剤(開始剤)>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、重合工程等において、重合開始剤を使用することが好ましい。上記重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0045】
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、開始剤の使用量は、特に言及する場合を除き、全単量体(アミノ基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、その他の単量体(E))1モルに対して、15g以下、より好ましくは1〜12gであることが好ましい。
開始剤として、過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、単量体(全単量体)1molに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。
開始剤として、過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、単量体(全単量体)1molに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られる共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに、得られる共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
開始剤として過酸化水素と過硫酸塩を併用する場合、過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、質量比で過酸化水素の質量を1としたときに、過硫酸塩の質量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の質量比が0.1未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の質量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
【0046】
<連鎖移動剤>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、必要に応じ、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤を使用すると、製造されるアミノ基基含有共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量のアミノ基含有共重合体を効率よく製造することができるという利点がある。これらのうち、本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法に係る共重合反応(重合工程)においては、亜硫酸(塩)(亜硫酸若しくは亜硫酸水素またはこれらの塩をいう)を用いることが好適である。これにより、得られるアミノ基基含有共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができるととなり、スケール防止能を向上することが可能となる。また、連鎖移動剤として、亜硫酸(塩)を用いることにより、アミンの酸化を抑え、得られるアミノ基含有共重合体(組成物)の色調を改善することができるので好ましい。本発明で好ましく使用される亜硫酸(塩)としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0047】
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、連鎖移動剤の使用量は、特に言及する場合を除き、全単量体(アミノ基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、その他の単量体(E))1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがあり、特に亜硫酸塩を使用する場合には、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがある。しかも、経済的にも不利となるおそれがある。
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、過硫酸塩と亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と亜硫酸塩との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩0.5〜5質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、亜硫酸塩の上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは4質量部であり、最も好ましくは3質量部である。ここで、亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加するおそれがあり、逆に5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
なお、過硫酸塩と亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いる場合には、さらに、反応促進剤として、重金属イオンを併用することが好ましい。
【0048】
<反応促進剤>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、開始剤などの使用量を低減する等の目的で反応促進剤を加えても良い。反応促進剤としては、重金属イオンが例示される。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm
3以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe
2+であっても、Fe
3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH
4)
2(SO
4)
2・6H
2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明の疎水基含有共重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0049】
反応促進剤の使用量に関して、上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の合計の使用量を、全単量体(アミノ基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、その他の単量体(E))1モルに対して、2〜20gにすることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明のアミノ基含有共重合体を効率よく生産することができ、また、アミノ基含有共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
上記重金属イオンの使用量としては重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる共重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である共重合体をスケール防止剤として用いる場合に、スケールの原因となるおそれがある。
【0050】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体がアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0051】
<その他の添加剤>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、重合の際には、上述した化合物等に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;L−アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0053】
還元性化合物を使用する場合には、還元性化合物と連鎖移動剤の合計の使用量を、上記連鎖移動剤の使用量の範囲に設定することが好ましい。
【0054】
<重合溶媒>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、単量体の共重合は、重合溶媒の存在下で行うことが好ましい。上記重合溶媒は、水を含むことが好ましい。使用する溶媒の全量に対して50質量%以上が水であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、最も好ましくは水単独(即ち、100質量%)である。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、重合に使用される単量体の溶媒への溶解性向上という観点から、必要に応じて、有機溶媒を添加してもよい。この際使用できる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で試用されてもよい。有機溶剤としては、炭素数1〜4の低級アルコールが好ましい。
【0055】
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、水等の溶媒の使用量としては、全単量体(アミノ基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、その他の単量体(E))100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。
なお、本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことが可能であるがが、溶液重合が好ましい。
【0056】
<重合原料等の反応容器への添加方法>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、単量体や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体と重合開始剤の全量を添加する方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、スケール防止剤として用いる場合の分散性を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
【0057】
重合開始剤として過酸化水素を使用する場合の添加方法としては、過酸化水素の全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは90重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過酸化水素は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
過酸化水素の滴下は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体(初期仕込みする単量体を除く)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。好ましくはカルボキシル基含有単量体の滴下開始後1分以上経過後、更に好ましくは3分以上経過後、より好ましくは5分以上経過後、最も好ましくは10分以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始時間を遅らすことにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始時間を遅らす時間は、単量体の滴下開始後60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下を単量体の滴下と同時に開始すること、単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、単量体の滴下開始時間から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応等が起こらなくなる為、重合初期の分子量が高くなる。
過酸化水素の滴下終了時間は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体の滴下終了時間と同時に終了することが好ましく、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することがより好ましく、30分以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、過酸化水素としての効果が得られず無駄となり、また、過酸化水素が多量に残存する恐れがあることから、得られた共重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくはない。
【0058】
重合開始剤として過硫酸塩を使用する場合の添加方法としては、その分解性等を鑑み、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩は連続的に滴下することが好ましいが、その滴下速度は変えてもよい。
滴下時間においても特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤においては、単量体の滴下終了時間まで滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、共重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る効果を見出せる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた共重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良いものである。
これら比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、或は特に併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、或は終了してから別の開始剤の滴下を開始しても良い。何れも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
【0059】
連鎖移動剤として亜硫酸(塩)を使用する場合の添加方法としては、特に限定はされないが、亜硫酸(塩)の全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。亜硫酸(塩)は連続的に滴下することが好ましいが、その滴下速度は変えてもよい。
【0060】
上記重金属イオンを使用する場合の添加方法は特に限定されないが、単量体の滴下終了前までに添加することが好ましく、全量初期仕込することが特に好ましい。
上記溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
なお、本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、重合方法としては、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0061】
<重合温度>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、単量体を重合する温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。特に、亜硫酸(塩)を用いる場合には、共重合温度は、通常、60℃〜95℃、好ましくは70℃〜95℃、さらに好ましくは、80℃〜95℃である。この際、60℃未満では、亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。逆に、95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0062】
<重合時間、重合圧力、重合pH>
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜300分である。なお、本発明において、「重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間を表す。
上記共重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0063】
<重合時のpH>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法における重合中のpHは、酸性が好ましい。特に、上記開始剤として、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)とを併用する場合は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で行うことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇を抑制し、共重合体を良好に製造することができる。また、高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるので、製造効率を大幅に上昇することができ、最終固形分濃度が40%以上の高濃度重合とすることができ、含まれる残存モノマーの総濃度が30000ppm以下のものを得ることができる。更に、アミノ基含有単量体の重合性を向上することができる。
上記酸性条件としては、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であることが好ましい。より好ましくは、5以下であり、更に好ましくは、3以下である。上記共重合方法により得られる共重合体は、そのままでもスケール防止剤の主成分等として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アンモニウム(有機アミン)等を用いることが好ましい。
【0064】
共重合を行う際の中和率は、開始剤(或いは開始剤と連鎖移動剤との組み合わせ)によって適宜変更できる。例えば、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、カルボキシル基含有単量体等の酸基含有単量体の酸基の合計量に対して、単量体の中和率を0〜60モル%として単量体成分の共重合を行うことが好ましい。単量体の中和率は、単量体の全モル数を100モル%としたときに、塩を形成している単量体のモル%で表されることになる。単量体の中和率が60モル%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる共重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50モル%以下であり、更に好ましくは、40モル%以下、特に好ましくは、30モル%以下であり、より特に好ましくは、20モル%以下であり、最も好ましくは、10モル%以下である。
また、過硫酸塩と過酸化水素を併用する場合は、カルボキシル基含有単量体等の酸基含有単量体の酸基の合計量に対して、99mol%以下、好ましくは50〜95mol%以下である。中和度が50mol%未満であると過酸化水素の分解が十分に起こらず、重量平均分子量が高くなる傾向がある。また99mol%を越えると強アルカリ性の腐食性条件となるため、高温では製造設備が腐食する恐れがあり、さらに、アルカリによって過酸化水素が分解してしまうため、添加量が多くなってしまうという恐れもある。重合終了後(即ち単量体滴下終了後)の中和度は、残存する過酸化水素の分解を促進するために、カルボキシル基含有単量体およびアミノ基含有単量体の酸量の合計量に対して、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上とする。
【0065】
上記単量体の中和率を0〜60モル%として共重合を行う方法としては、例えば、単量体が不飽和カルボン酸系単量体である場合、全て酸型である不飽和カルボン酸系単量体を中和せずに共重合に付することにより行う方法や、不飽和カルボン酸系単量体をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩等の塩の形態に中和するときに中和率を0〜60モル%としたものを共重合に付することにより行う方法等が好適である。
【0066】
<重合工程以外の工程>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、上記重合工程を必須としているが、必要に応じて、精製工程、脱塩工程、濃縮工程、希釈工程、乾燥工程等を含んでいても良い。
【0067】
乾燥工程は、粉体化などを行なう工程であり、一般的方法で行えばよく、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、ベルト式乾燥などにより、粉末に移行させることができる。
【0068】
[共重合体、重合体組成物のその他の用途]
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、繊維処理剤、分散剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤等として有用に用いられる。
【0069】
<水処理剤>
本発明の水処理剤は、本発明のアミノ基含有共重合体を含む。本発明の水処理剤は、本発明のアミノ基含有共重合体を含むことにより、炭酸カルシウムおよび水酸化鉄のスケール防止能を示す。すなわち、本発明の水処理剤は、スケール防止剤(以下、本発明のスケール防止剤とも言う)として有用に使用することができる。
本発明の水処理剤は、本発明のアミノ基含有共重合体単独からなるものであっても良いし、上記アミノ基含有共重合体と他の添加剤とを含むものであっても良い。上記他の添加剤としては、任意の適切な添加剤を採用し得る。例えば、リン系化合物、ポリアクリル酸および/またはその塩、ポリマレイン酸および/またはその塩、アクリル酸系共重合体、スチレン/マレイン酸系共重合体等のポリカルボン酸系重合体;他のスケール防止剤;スライム防止剤;キレート剤;脱酸素剤;などが挙げられる。上記他の添加剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。本発明の水処理剤は、水や他の有機溶剤を含んでいても良い。
本発明の水処理剤は、スケール防止剤(本発明のスケール防止剤)として使用できる。すなわち、本発明のスケール防止剤は、上記アミノ基含有共重合体を含み、任意成分として他の添加剤とを含むものであっても良い。
本発明の水処理剤は、冷却水系、ボイラー水系等の水系の水に対して、任意の適切な量を添加して用いることができる。好ましくは、水に対して、上記アミノ基含有共重合体が0.1〜100ppmとなるように添加することであり、より好ましくは、水に対して、1〜50ppmである。
本発明の水処理剤は、例えば、冷却水系、ボイラー水系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等の水系に、そのまま添加すれば良い。また、本発明の水処理剤を水系に添加する際には、リン酸系化合物および/または亜鉛塩を併せて添加しても良い。リン酸系化合物および/または亜鉛塩を併せて添加することにより、水系の流路として用い得る鉄の配管の腐食を防ぐことができる。リン酸系化合物としては、例えば、重合リン酸および/またはその塩、リン酸および/またはその塩、ホスホン酸および/またはその塩などが挙げられる。亜鉛塩としては、例えば、硝酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられる。添加し得るリン酸系化合物や亜鉛塩は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0070】
<繊維処理剤>
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)を含む。
【0071】
上記繊維処理剤における本発明のアミノ基含有共重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0072】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0073】
本発明のアミノ基含有共重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明のアミノ基含有共重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0074】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0075】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のアミノ基含有共重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のアミノ基含有共重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0076】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のアミノ基含有共重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0077】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0078】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、残存単量体、重合体の重量平均分子量、炭酸カルシウムの分散能、水酸化鉄の分散能は、下記方法に従って測定した。
【0080】
<アミノ基含有単量体(A)の定量方法>
アミノ基含有単量体(A)の定量は、以下の条件の高速クロマトグラフィーで行った。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)
<カルボキシル基含有単量体(B)の定量方法>
カルボキシル基含有単量体(B)の含有量の測定は、下記条件で、液体クロマトグラフィーを用いて行なった。
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 Shodex RSpak DE−413
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
移動相:0.1%リン酸水溶液
<重量平均分子量の測定条件>
装置:日立社製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ, GF−710−HQ, GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
<炭酸カルシウム分散能>
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファー(1)とする)。バッファー(1)60gに塩化カルシウム二水和物0.3268gを加え、さらに純水を加え、1000gとした(これをバッファー(2)とする)。測定対象の共重合体の0.1質量%水溶液4gに、バッファー(2)を36g加え、攪拌し分散液とした。試験管(IWAKI GLASS製、直径18mm、高さ180mm)に炭酸カルシウム(関東化学製)0.6gを入れた後、上記の分散液を30g加え、密封する。
試験管を振り、炭酸カルシウムを均一に分散させた。その後、試験管を暗所に1時間静置した。1時間後、分散液の上澄みを5cc取り、UV分光器(島津製作所、UV−1200;内寸が、底面積1cm
2×高さ4.5cmのセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この値が大きいほど炭酸カルシウム分散能が高いことを示す。
【0081】
<水酸化鉄分散能>
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファー(1)とする)。バッファー(1)60gに塩化カルシウム二水和物0.3268gを加え、さらに純水を加え、1000gとした(これをバッファー(2)とする)。測定対象の共重合体の0.1質量%水溶液4gに、バッファー(2)を36g加え、攪拌し分散液とした。試験管(IWAKI GLASS製、直径18mm、高さ180mm)に酸化水酸化鉄(III)(関東化学製)0.3gを入れた後、上記の分散液を30g加え、密封する。
試験管を振り、水酸化鉄を均一に分散させた。その後、試験管を暗所に18時間静置した。1時間後、分散液の上澄みを5cc取り、UV分光器(島津製作所、UV−1200;内寸が、底面積1cm
2×高さ4.5cmのセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この値が大きいほど水酸化鉄分散能が高いことを示す。
【0082】
<実施例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水120.2g、およびモール塩0.0148gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)270.0g、65%ジアリルジメチルアンモニウムクロリド溶液(以下、「65%DADMAC」とも称する。)17.5g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)61.4g、および35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。)26.3gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、65%DADMACについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)206.6gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液(重合体水溶液(1))を得た。重合体水溶液(1)に含まれる残存単量体の合計は1000ppm未満であり、重合体水溶液(1)に含まれる重合体(重合体(1))の重量平均分子量は21,200であった。
【0083】
<実施例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水122.9g、およびモール塩0.0139gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA225.0g、65%DADMAC48.9g、15%NaPS53.9g、および35%SBS46.2gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、65%DADMACについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH160.7gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液(重合体水溶液(2))を得た。重合体水溶液(2)に含まれる残存単量体の合計は1000ppm未満であり、重合体水溶液(2)に含まれる重合体(重合体(2))の重量平均分子量は11,600であった。
【0084】
<実施例3>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水138.8g、およびモール塩0.0145gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA225.0g、65%DADMAC69.2g、15%NaPS55.6g、および35%SBS47.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、65%DADMACについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH153.9gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液(重合体水溶液(3))を得た。重合体水溶液(3)に含まれる残存単量体の合計は1000ppm未満であり、重合体水溶液(3)に含まれる重合体(重合体(3))の重量平均分子量は13,600であった。
【0085】
<実施例4>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水122.4g、およびモール塩0.0148gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA270.0g、80%メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド溶液(以下、「80%METMAC」とも称する。)14.2g、15%NaPS61.1g、および35%SBS26.2gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、80%METMACについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH207.9gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液(重合体水溶液(4))を得た。重合体水溶液(4)に含まれる残存単量体の合計は1000ppm未満であり、重合体水溶液(4)に含まれる重合体(重合体(4))の重量平均分子量は19,100であった。
【0086】
<実施例5>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水129.1g、およびモール塩0.0138gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA225.0g、80%METMAC39.7g、15%NaPS53.1g、および35%SBS45.5gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、80%METMACについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH164.3gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液(重合体水溶液(5))を得た。重合体水溶液(5)に含まれる残存単量体の合計は1000ppm未満であり、重合体水溶液(5)に含まれる重合体(重合体(5))の重量平均分子量は6,100であった。
【0087】
<実施例6>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水126.5g、およびモール塩0.0148gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA270.0g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(以下、「MDMAE」とも称する。)11.4g、15%NaPS61.4g、および35%SBS26.3gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、MDMAEについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH206.5gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液(重合体水溶液(6))を得た。重合体水溶液(6)に含まれる残存単量体の合計は1000ppm未満であり、重合体水溶液(6)に含まれる重合体(重合体(6))の重量平均分子量は15,300であった。
【0088】
<参考例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水140.4g、およびモール塩0.0139gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA225.0g、MDMAE31.8g、15%NaPS54.0g、および35%SBS46.3gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、MDMAEについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH160.2gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液(重合体水溶液(7))を得た。重合体水溶液(7)に含まれる残存単量体の合計は1000ppm未満であり、重合体水溶液(7)に含まれる重合体(重合体(7))の重量平均分子量は4,500であった。
【0089】
<実施例8>
実施例1〜4、6で得られた重合体について、上記方法に従って炭酸カルシウムの分散能と、水酸化鉄の分散能を評価した。比較例として重量平均分子量5,500のポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒製「アクアリックYS100」、比較重合体(1)と言う。)について、炭酸カルシウムの分散能と、水酸化鉄の分散能を評価した。結果を表1にまとめた。
【0090】
【表1】
【0091】
表1から明らかなように、本発明の重合体は、従来の重合体に比して、優れた炭酸カルシウムの分散能と、水酸化鉄の分散能を有していることが明らかとなった。よって、本発明の重合体は水処理剤として好適に使用できる。