【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、裏面に剥離層が形成された感熱紙と、該剥離層の裏面側に所定の樹脂が塗工されてなる樹脂塗工層と、該樹脂塗工層の裏面側に粘着剤が塗工されてなる粘着層と、該粘着層の裏面に貼り付けられた剥離可能なセパレータとを備えたラベル帳票において、前記樹脂塗工層は、その全体または一部が、単一層状の塗工単位層を厚み方向に複数積み重ねた多重層構造からなるものであることを特徴とするラベル帳票である。
【0007】
ここで、樹脂塗工層は、その全体または一部が多重層構造を成すものであり、一部が多重層構造である場合には、該多重層構造以外の部位が単一の塗工単位層による単層構造からなる。また、多重層構造としては、その全体で塗工単位層の層数が全て同じものであっても良いし、異なる層数の塗工単位層からなる部位が混在するものであっても良い。
【0008】
かかる構成にあっては、樹脂塗工層が多重層構造からなるものであることから、仮に該多重層構造を構成する塗工単位層のいずれかがその製造中に生成されたスジや亀裂等を有していた場合でも、他の塗工単位層が積み重なっていることにより該スジ等を補強できるため、塗工単位層に生じたスジ等によって樹脂塗工層の強度が低下してしまうことを抑制できる。また、多重層構造を形成するためには、通常、各塗工単位層を順次別々に形成することを要することから、例えば、夫々異なるコータにより順次樹脂を塗工して各塗工単位層を夫々形成する。そのため、仮に複数の塗工単位層にスジや亀裂等が生じたとしても、それらが厚み方向で重なることは極希であることから、各塗工単位層が相互に補強し合える。これにより、複数の塗工単位層にスジや亀裂が生じたとしても、前記した樹脂塗工層の強度低下を抑制するという作用効果は発揮され得る。したがって、本構成によれば、スジや亀裂等の発生による樹脂塗工層の強度低下を抑制でき、所望の耐久性を発揮できる。
【0009】
尚、ラベル帳票としては、その用途により感熱紙にハーフカット線を形成する構成もある。この構成の場合には、樹脂塗工層の、ハーフカット線の裏側に位置する部位を、少なくとも多重層構造からなるものとした構成が好適である。これは、ハーフカット線による感熱紙の強度低下を、多重層構造により抑制することができるためである。
【0010】
上述した本発明のラベル帳票にあって、樹脂塗工層の多重層構造は、最も表側に位置する塗工単位層が、所定の熱溶解性樹脂を塗工することにより形成され、前記最も表側の塗工単位層よりも裏側に位置する塗工単位層が、最も表側の塗工単位層と同一または異なる種類の熱溶解性樹脂を塗工することにより形成されてなるものである構成が提案される。
【0011】
ここで、樹脂塗工層が熱溶解性樹脂を塗工することにより形成される場合には、通常、該熱溶解性樹脂を加熱溶解して塗工する。上述した従来構成では、樹脂層(本発明の樹脂塗工層に相当)が単一な層構造であることから、比較的厚く塗工する必要があり、塗工の際に感熱紙に作用する熱量も大きくなってしまう。そのため、こうした従来構成では、溶解状態の熱溶解性樹脂を塗工する際に作用する熱量によって、感熱紙が変色してしまう虞があった。
【0012】
本構成にあっては、多重層構造により樹脂塗工層を構成したものであり、各塗工単位層の層厚みを比較的薄く設定可能である。これにより、樹脂塗工層の塗工単位層を形成する際に、溶解状態の熱溶解性樹脂を塗工することにより作用する熱量を低減することができる。そして、最も表側に位置して感熱紙に最も近接する塗工単位層を形成する際に作用する熱量を低減できることから、感熱紙の変色を抑制することができる。すなわち、本構成は、感熱紙の変色が抑制されるようにして形成されたものであり、所望の用途の製品として安定的に供給でき且つ使用され得る。
【0013】
尚、本構成としては、上記した作用効果を一層安定して発揮するために、最も表側に位置する塗工単位層が感熱紙の剥離層の裏側全体に形成された構成が好適である。
【0014】
ここで、各塗工単位層は、全て同一の熱溶解性樹脂により形成したものが好適である。これは、安定かつ高い生産性が発揮されることに因る。また、各塗工単位層が異なる種類の熱溶解性樹脂により形成されるものとする場合には、全てが異なる種類であっても良いし、いずれかの塗工単位層が異なる種類となっているものであっても良い。
【0015】
尚、熱溶解性樹脂としては、EVA系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ナイロン系、ポリエステル系、ゴム系、セルロース系等が好適に用いられる。さらに具体的には、ポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、これら(SBR、SIS、SBS)の水素化変形樹脂(例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPSブロックコポリマー)、スチレンブロックコポリマー、非晶質ポリ−α−オレフィン(APAO)等が好適に用いられる。
【0016】
上述した本発明のラベル帳票にあって、多重層構造を構成する最も表側の塗工単位層は、その層厚みが感熱紙の厚みに対して5%以上かつ20%以下となるように形成されてなるものである構成が提案される。
【0017】
かかる構成にあっては、上記した塗工の際に感熱紙に作用する熱量によって該感熱紙が変色してしまうことを一層抑制できるように、感熱紙に最も近接する塗工単位層の層厚みを定めたものである。この塗工単位層の層厚みを、感熱紙の厚み対して20%以下とすることにより、溶解状態のポリオレフィン系熱溶解性樹脂を塗工する際に感熱紙に作用する熱量を一層低減でき、該熱量による感熱紙の変色を抑制する効果が向上する。また、塗工単位層の層厚みの下限である5%は、生産安定性から設定される値である。したがって、本構成は、感熱紙の変色が一層抑制されたものとして、安定して生産されるものである。
【0018】
尚、最も表側の塗工単位層の層厚みとしては、感熱紙の厚みに比して16%以下とした構成が好適である。この構成により、感熱紙の変色を抑制する効果がさらに向上する。
【0019】
上述した本発明のラベル帳票にあって、熱溶解性樹脂が、ポリオレフィン系熱溶解性樹脂である構成が提案される。ここで、全ての塗工単位層を形成する熱溶解性樹脂がポリオレフィン系熱溶解性樹脂である構成が好適である。
【0020】
ポリオレフィン系熱溶解性樹脂は、比較的高い強度を有するものであることから、上述のように比較的薄い層厚みの塗工単位層を形成した場合にも、該塗工単位層の強度が向上できる。そのため、上述したように塗工単位層にスジや亀裂等が生じた場合に、各塗工単位層による相互の補強作用が向上し、該スジや亀裂等による樹脂塗工層の強度低下を抑制できるという本発明の作用効果が一層向上する。また、ポリオレフィン系熱溶解性樹脂は、塗工の際における取扱性にも優れることから、複数の塗工単位層を安定かつ容易に形成し易いという利点も有する。
【0021】
一方、上述した本発明のラベル帳票を製造する製造方法として、本発明は、裏面に剥離層が形成された感熱紙の、該剥離層の裏面側に、所定の樹脂を塗工して樹脂塗工層を形成する樹脂塗装工程と、樹脂塗工層の裏面側に、粘着剤を塗工して粘着層を形成する粘着剤塗装工程と、剥離可能なセパレータ紙を、粘着層に貼り付ける貼付工程とを順次実行するラベル帳票の製造方法において、前記樹脂塗装工程は、感熱紙の剥離層の裏面全体または一部に、所定の樹脂を塗工して単一層状の塗工単位層を形成する単位層形成過程を、複数回繰返し実行することによって、樹脂塗工層の全体または一部を、複数の塗工単位層を厚み方向に積み重ねた多重層構造により形成する多重層形成工程を備えたものであることを特徴とするラベル帳票の製造方法である。
【0022】
かかる製造方法にあっては、多重層構造の各塗工単位層を夫々の単位層形成過程により形成するようにしていることから、仮に単位層形成過程のいずれかでスジや亀裂の入った塗工単位層が形成されたとしても、他の単位層形成過程によって積み重ねられた塗工単位層により、該スジや亀裂を補強することができる。そのため、樹脂塗工層の全体として、前記スジや亀裂による強度低下を抑制することができ、所望の耐久性を発揮し得るラベル帳票を製造できる。したがって、本発明の製造方法によれば、上記した本発明のラベル帳票を安定して製造することができ、安定した生産性も発揮できる。そして、本発明のラベル帳票の製造方法が、上記した本発明のラベル帳票を製造する方法として好適に用いられ得る。
【0023】
上述した本発明のラベル帳票の製造方法にあって、樹脂塗装工程の多重層形成工程は、感熱紙の剥離層の裏面全体に熱溶解性樹脂を塗工して、最も表側に位置する塗工単位層を所定の層厚みにより形成する最初の単位層形成過程を実行し、その後に、最初の熱溶解性樹脂と同一または異なる種類の熱溶解性樹脂を塗工して塗工単位層を形成する単位層形成過程を、一回または複数回繰返し実行するようにした方法が提案される。
【0024】
さらに、樹脂塗装工程の多重層形成工程を構成する最初の単位層形成過程は、最も表側の塗工単位層の層厚みが感熱紙の厚みに対して5%以上かつ20%以下となるように、熱溶解性樹脂を塗工するようにした方法が提案される。
【0025】
これら製造方法によれば、熱溶解性樹脂により形成された塗工単位層を有する上述の本発明のラベル帳票を製造することができる。そして、上述したように、単位層形成過程で熱溶解性樹脂を塗工する際の熱量によって、感熱紙が変色してしまうことを抑制することができる。この作用効果は、最も感熱紙に近接される塗工単位層の層厚みを、感熱紙の厚みに対して上記範囲で設定することにより一層向上する。したがって、上述した熱溶解性樹脂により塗工単位層を形成した本発明のラベル帳票を、安定して製造することができる。
【0026】
また、上述した本発明のラベル帳票の製造方法にあって、熱溶解性樹脂が、ポリオレフィン系熱溶解性樹脂である方法が提案される。かかる製造方法によれば、上述したように比較的高い強度の塗工単位層を形成できることから、該スジや亀裂等による強度低下を一層抑制した樹脂塗工層を備えたラベル帳票を製造できる。尚ここで、全ての塗工単位層を形成するために塗工する熱溶解性樹脂がポリオレフィン系熱溶解性樹脂である方法が好適である。