特許第6146980号(P6146980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6146980トンネルの拡幅部構築方法と、トンネル拡幅部の構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146980
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】トンネルの拡幅部構築方法と、トンネル拡幅部の構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20170607BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20170607BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20170607BHJP
   E21D 13/02 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   E21D9/04 Z
   E21D11/00 A
   E21D11/04 Z
   E21D13/02
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-225434(P2012-225434)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-77283(P2014-77283A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228811
【氏名又は名称】日本シビックコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】大塚 孝義
(72)【発明者】
【氏名】田家 学
(72)【発明者】
【氏名】近藤 紀夫
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080310(JP,A)
【文献】 特開2009−174185(JP,A)
【文献】 特開2008−267117(JP,A)
【文献】 特開2009−046871(JP,A)
【文献】 特開2007−182696(JP,A)
【文献】 特開2007−016509(JP,A)
【文献】 米国特許第04929123(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01355039(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04−9/13
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並行するトンネル間を掘削してトンネル領域を拡幅する方法において、
前記並行トンネル間の中間部を介して上部と下部の掘削地盤領域を、トンネル軸方向において交互に先行工区間と後行工区間とに区分けして配置し、
まず、先行工区間に相対する箇所の並行トンネルのセグメントを除去し且つこの除去セグメントに隣接している場所の残置セグメントを残し、その除去した前記先行工区間の地盤を掘削することによって順次先行拡幅用セグメントを継ぎ足して先行拡幅アーチを前記並行トンネル間に架設し、
前記残置セグメントの端部にある当接部において略同厚で、それに続く幅厚をテーパ状に厚くした不等厚の拡幅用セグメントを組み立て、
前記、トンネル軸方向の左右にある不等厚の拡幅用セグメント間に、同厚の拡幅用セグメントを組み立て、
その後、残された後行工区間を前記先行工区間と同様にして後行拡幅用セグメントを組み立てることにより後行拡幅アーチを構築し、
さらに、前記中間部の地盤を除去することを特徴とする、
トンネルの拡幅部構築方法。
【請求項2】
前記並行するトンネル間を掘削する前に、掘削周辺の地盤改良を行い、
並行トンネルの内部にセグメントの水平補強桁と垂直補強柱を設置し、
前記並行トンネルの各トンネル内に、前記拡幅用セグメントを組み立てる上下の拡幅アーチ作業用空間を設置し、
前記相対するトンネルの各接続部における前記拡幅アーチ作業用空間で、前記各トンネルを形成しているセグメントを除去してから、拡幅用セグメントを接合して前記拡幅アーチを組み立て、
前記水平補強桁の上部に拡幅用セグメントを支保する複数の支保工を設置し、
前記拡幅アーチの接合部の中央部に、調整セグメントを設置及び/又は場所打ちコンクリートを打設した、
請求項1に記載のトンネルの拡幅部構築方法。
【請求項3】
前記トンネルの拡幅用セグメント間の接合部及び/又はトンネル周方向と軸方向の各拡幅用セグメント間の接合部を現場打ちコンクリートで接合している請求項2に記載のトンネルの拡幅部構築方法。
【請求項4】
前記トンネルの拡幅用セグメント間の接合部及び/又はトンネル周方向と軸方向の各拡幅用セグメント間の接合部を調整用セグメントの組み込みによるものとした請求項2に記載のトンネルの拡幅部構築方法。
【請求項5】
並行するトンネル間を拡幅アーチで構築したトンネル拡幅部の構造において、
前記各並行トンネルから撤去したトンネルの上下とトンネル軸方向の左右の撤去セグメントに隣接している場所の残置セグメントと、 該各残置セグメントのある並行セグメントより曲率半径が大きく、かつ前記残置セグメントと当接部において略同厚で、それに続く幅厚をテーパ状に厚くした不等厚の拡幅用セグメントとで組み立てたものから成り、
前記トンネル軸方向の左右にある不等厚の拡幅用セグメント間を同厚の拡幅用セグメントで接合されており、
前記拡幅用セグメント間の接合部は、拡幅トンネルのほぼ中央部に配置され、かつ前記拡幅用セグメントと略同厚であり、
前記接合部は、位置ずれを補う場所打ちコンクリート又は調整セグメントで構成されている、
ことを特徴とする、トンネル拡幅部の構造。
【請求項6】
前記拡幅用セグメント間における最上部が、そのトンネル周方向と軸方向の接合部において、位置ずれを補う場所打ちコンクリートあるいは調整セグメントで構築されている請求項5に記載のトンネル拡幅部の構造。
【請求項7】
並行するトンネル内に垂直桁と、同桁間で上下間隔を置いて設置した上下水平桁とを配置し、前記上下水平桁から前記並行トンネル間の中間部の上下に位置する上部と下部水平桁とを接合して並行トンネル間に作業空間を形成している請求項5又は6に記載のトンネル拡幅部の構造。
【請求項8】
並行するトンネルの上下間に架け渡された拡幅アーチの始まりと終りには、前記拡幅アーチを形成している拡幅用セグメントに沿って妻部側壁を設置する請求項5又は6に記載のトンネル拡幅部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの拡幅部構築方法、特に並行トンネル間における地盤の掘削方法と、トンネルのセグメントと拡幅用セグメントの接合部におけるトンネル拡幅部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本線トンネルとランプトンネル等におけるトンネルの分岐又は集合する箇所のトンネルの拡幅方法としては、一般にトンネルの拡幅箇所のセグメントを取り外し、これに新たな拡幅用セグメントを接合して組み立てる方法や、トンネルに拡幅用セグメントを溶接等で連結する方法があるが、セグメントを取り外す際におけるトンネル全体の変形防止のために新たな補強工が大規模となり、なによりも周辺に工事エリアを確保しなければならず、都市部においては使えない場合が多い。また、トンネルの拡幅のために鉄筋コンクリートにより躯体を構築する方法もあるが、躯体寸法が大きくなり、その切り拡げ掘削の範囲が大きくなり、工事面積を十分に確保しなければならないという不都合があった。
【0003】
そこで、都市部における道路の集積化のためにシールドトンネルの拡幅機械の改造や(特許文献1)、拡幅セグメントを接合するためにシールドトンネルのセグメントの一端部を厚くし、そこに接合用凹部を形成して拡幅するシールドトンネルの拡幅構造の発明が知られる(特許文献2)。
【0004】
しかし、前記特許文献1のシールドトンネルの拡幅機械は、拡幅セグメントをシールドトンネル内から特殊機械により押し出す構造になっており、コストが高いだけでなく、拡幅セグメントを押し出すために止水性を十分に確保する必要がある。また、特許文献2のシールドトンネルの拡幅構造ではシールドトンネルのセグメントの外面に拡幅セグメントを接合するために接合箇所のセグメントの端部を嵌込のための特異形状のセグメントを要し、また補強ピース等の補強が必要になるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−183352
【特許文献2】特許第4782704号(特開2008−169550)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術のようなトンネルの特殊拡幅機械や、トンネルのセグメントに凹部を設けた特異セグメントを用いるといった観点ではなく、トンネル間の地山の拡幅を迅速かつ安全に施工することができるように並行するトンネル間を効率よく拡幅して掘削する構築方法と、トンネル拡幅部の構造を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決したものであり、その要旨は、並行するトンネル間を掘削してトンネル領域を拡幅する方法において、前記並行トンネル間の中間部を介して上部と下部の掘削地盤領域を、トンネル軸方向において交互に先行工区間と後行工区間とに区分けして配置し、まず、先行工区間に相対する箇所の並行トンネルのセグメントを除去し且つこの除去セグメントに隣接している場所の残置セグメントを残し、その除去した前記先行工区間の地盤を掘削することによって順次先行拡幅用セグメントを継ぎ足して先行拡幅アーチを前記並行トンネル間に架設し、前記残置セグメントの端部にある当接部において略同厚で、それに続く幅厚をテーパ状に厚くした不等厚の拡幅用セグメントを組み立て、前記、トンネル軸方向の左右にある不等厚の拡幅用セグメント間に、同厚の拡幅用セグメントを組み立て、その後、残された後行工区間を前記先行工区間と同様にして後行拡幅用セグメントを組み立てることにより後行拡幅アーチを構築し、さらに、前記中間部の地盤を除去するようにした、トンネルの拡幅部構築方法の提供にある。
【0008】
前記並行するトンネルとしては、例えば地下の本線トンネルからランプトンネルを地上に引き出す、或いは地上から地下の本線トンネルに引き入れる場合に数百mに亘って両トンネルを集積したトンネルの拡幅部が必要になる場合に利用する。
本発明方法の請求項1は、並行するトンネル間の地盤が土砂や崩壊地山にある場合等において利用できるもので、並行トンネル間の地盤を中央に位置する中間部を残し、その中間部の上部と下部の掘削地質領域をトンネル軸方向に先行して掘削する先行工区間と、その先行工区間を掘削した後で後行工区間の掘削を交互に行うようにしたところに主な特徴がある。
そして、前記掘削は先行工区間と後方工区間の掘削の際に、並行トンネルの相対する箇所のセグメントを除去し、その除去したところの地盤を掘削しながら先行と後行の拡幅用セグメントを継ぎ足して両トンネル間の上下に架設する拡幅アーチ(逆アーチ状)を形成する。
それから、残された前記中間部の地盤を除去して並行トンネルを拡幅する。
【0009】
本発明方法の請求項2は、請求項1を限縮したもので、それは並行トンネル間を掘削する前に掘削地質領域を含む周辺の地盤改良を行い、並行トンネル内に前記拡幅用セグメントを組み立てる上下の拡幅アーチ作業用空間を設置し、該作業用空間で前記並行トンネルのセグメントを除去してから、拡幅用セグメントを接合により延長して前記拡幅部アーチを組み立てることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3と4は、並行トンネル間の拡幅アーチは、拡幅用セグメントのトンネル周方向の接合部と、トンネル軸方向に隣接する拡幅用セグメント間の接合部とを、現場打ちコンクリートか調整用セグメントの片方か双方によって接合するようにしている。
【0011】
本発明の請求項5は、並行するトンネル間に架設したトンネル拡幅部の構造であり、その要旨は各並行トンネルの上下部の内側が撤去した撤去セグメントで、その外側隣りが残置セグメントである。残置セグメントの端部の継手部に、略同厚の先部継手部を持ち、それに続くテーパ状の主桁と、前記継手部より厚い継手部を有し、かつ前記並行トンネルより曲率半径の大きい不等厚の拡幅用セグメントが接合されている。
【0012】
請求項6の発明では、前記不等厚の拡幅用セグメントが並行セグメントからアーチ状と逆アーチ状に架け渡された主桁厚が同厚のトンネル最上部の接合部が、対面する継手部間で位置ずれを起こしている場合にはその間で場所打ちコンクリートあるいは調整セグメントを嵌合することができる。
【0013】
請求項7の発明によれば、互いの並行トンネル間にある地山の中間部の上下部に位置する水平桁と、並行トンネル内の上下水平桁とを接合することにより、並行トンネル間に作業空間を形成するようにしている。
【0014】
請求項8の発明では、並行するトンネルの上下間に架け渡された拡幅アーチの始まりと終わりには、拡幅アーチを形成している拡幅用セグメントに沿って妻部側壁を設置している。
【発明の効果】
【0015】
本発明の基本技術は、並行して施工したトンネル間における拡幅施工区間において、トンネル横断方向への掘削を先行工区間と後行工区間に分けて拡幅施工するトンネルとそれを用いたシールドトンネルの拡幅方法を提供することにある。また、これら先行工区間と後行工区間の各区間の掘削をトンネル横断方向、すなわち外周方向に、例えば先行工区間と後行工区間を1工区間から5工区間、好ましくは3工区間づつに分割して、トンネルを掘削することができる。
そこで、本発明の効果の特徴は、地中拡幅施工をトンネルの横断方向すなわちトンネルの軸方向と交差する方向に各並行トンネルから対向する相手のトンネルに向って掘削することにあり、これまでのトンネル軸方向にランダムに掘削した従来とは異なる。そのために、本発明では相対するトンネルの双方から先行工区間を何本かに分けて同時的に施工し、残った後行工区間を同様に施工することにより、今までのトンネル上半部や下半部内における重機での掘削とでは、大幅な施工期間の短縮が図れる。
【0016】
その他、本発明の拡幅工事で期待できる効果としては、並行するトンネル工事としての本線シールド工事やランプ工事との工期を各別にせず、これらの工事を同時施工することもできる。
【0017】
さらに、上半部と後半部における先行と後行工区間との分割施工により、地山の安定性が得られる。また、先行と後行区間における複数回の分割施工によって、施工時における地山の安定を図ることができる。
【0018】
先行工区間に沿った妻部側壁を高強度吹付けコンクリートやアンカーボルトを設置することにより、拡幅部施工時の安定性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明方法の第1ステップで、地盤改良した並行するトンネルの上下部からセグメントを撤去して、そこに不等厚の拡幅用セグメントを接合していく状態の並行トンネルの横断面図である。
図2図1のトンネル上下部にある不等厚の拡幅用セグメントから等厚の拡幅セグメントを繋いだトンネル横断面図である。
図3図1のI−I断面図の一部である。
図4図2に続いて拡幅用セグメントを結合したトンネル横断面図である。
図5図4から頂部と底部の接合部と下部の拡幅用セグメントの一部を残したトンネル横断面図である。
図6】等厚の拡幅用セグメントの接続部を示す図7のII−II断面図である。
図7図6のIII−III断面図である。
図8図5で残された地盤改良した中間部を掘削除去するとともに、各並行セグメント間に上部と下部の水平桁を設置したトンネル横断面図である。
図9図8で残されていた底部の接合部とそれに隣接する拡幅用セグメントを除いて、並行セグメントの相対する残りのセグメントを除去し、頂部の接合部を接合したトンネル横断面図である。
図10図9から拡幅を完成したトンネル横断面図である。
図11】本発明の方法で仕上げたランプと本線の並行トンネル間の上部にある拡幅セグメント(一部図示)でできた拡幅アーチの平面図である。
図12図11の側面図である。
図13図5の上部施工途中における妻部側壁と、本線とランプの各トンネル及び拡幅トンネルの斜視説明図である。
図14図13における矢印から見た部分の地山掘削時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明であるトンネル拡幅部構築方法の主要部は、並行するトンネルの拡幅する方法において、その拡幅する掘削地盤領域を並行トンネル間の中間部を除くトンネル軸方向に先行工区間と後行工区間を交互に区分けして配置し、まず、前記先行工区間を掘削して拡幅アーチを並行トンネル間に架設し、残された後行工区間を先行工区間と同様に掘削して拡幅アーチを並行トンネル間に架設してから前記中間部の地盤を除去するようにしたものである(図1乃至図7)。
【実施例】
【0021】
〈拡幅部施工の概略〉
1.本線トンネル1とランプトンネル2の施工と同時、又は各トンネルの施工後に拡幅部トンネル3を構築する。
2.本線トンネルおよびランプトンネル1,2内の中央にある架設壁4を立設してトンネルの軸方向を左右に区画し、片側区画で本線とランプトンネルの土砂搬出、セグメント18などの搬入出に使用し、残りの区画を拡幅部の施工機械(掘削機14とセグメントの組立解体機15)などの搬入出に使用する。
3.ズリ出しは、本線およびランプトンネルの掘進に用いるベルトコンベア25などのズリ出し設備を利用する。
4.本線およびランプトンネル1,2の上部と下部の空間を使用し、相対向するトンネルのセグメントを撤去してから地山を掘削して、接続用の不等厚とそれに続く等厚の拡幅セグメント12の設置及び継ぎ足しにより拡幅アーチを施工して、大断面の拡幅トンネルを構築する。
5.上記の拡幅部トンネルの構築は、トンネル軸方向に複数ある先行工区間と複数ある後行工区間とを交互に区分けし、先行工区間を掘削してから後行工区間を掘削してトンネル拡幅部を構築する。
【0022】
〈実施例1〉
1)施工ステップ1(図1図3図6及び図7参照)
a.本線トンネル1、ランプトンネル2内に前記仮設壁4の他に縦支保柱5,6と上部水平桁7と下部水平桁8とを、好ましくはセグメント1〜2リングに1か所程度設置する。
b.これから拡幅する拡幅部上部および下部の地山及びトンネル中間部の地山を地盤条件に応じて地盤改良9する。ただし、固結土などで地盤が自立する場合や地下水がない場合などでは地盤改良が不要な場合がある。
c.各トンネル間の上方と下方の地山も必要により地盤改良10,10’する。
d.本線トンネル1とランプトンネル2の上部水平桁7上にある本線とランプセグメント11の撤去、撤去後の地山の掘削、拡幅用セグメント12の組立などに使用する作業床13を設置する。
e.作業床13上の空間に、掘削機14とセグメント組立解体機15を分割して吊り上げ、作業床13上で組み立てる。なお、掘削機14のバケットは、ブレーカーなどと付け替えが可能である。
f.セグメント組立解体機15により、拡幅部の本線とランプセグメント11を除去(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
g.接続用の不等厚の拡幅セグメント12を取り付けるために必要な拡幅部を確保するために地山を掘削機14で、図3に示す手順により掘削する(請求項1の方法)。
h.掘削土砂は、作業床13上に設けたホッパー付ベルトコンベア(図示せず)により、側方に搬出し、本線トンネルの残土搬出用の連続ベルトコンベア25に落として、トンネル後方へ搬出する。
i.接続用の拡幅用セグメント12は、本線トンネル1とランプトンネル2内の拡幅用の作業空間を利用して、トンネル上部に設置した吊り上げ装置16で作業床13上に吊り上げる。
j.なお、不等厚と等厚の拡幅用セグメント12は、2分割もしくは複数に分割にして、作業床の上部に持ち込んで組み立てる場合もある(例えば分割したピース重量2ton程度以下にする)。
k.セグメント組立解体機15により、不等厚の拡幅用セグメント12を把持し、トンネルを拡幅する作業位置に移動し、前記した撤去したセグメントの隣りに残置してある本線とランプのセグメント18とにボルトなどで接合して組み立てる(請求項1と5、及び〔0011〕)。
l.拡幅アーチ20となる接続用の拡幅セグメント12の妻側端部は、鋼材と鋼板またはコンクリート板などからなる妻部側壁19を設置し、アンカーボルト21等で土留め防護する。
m.接続用の拡幅用セグメント12の下部に支保工22を設置する。
n.接続用の拡幅用セグメント12の前記gの掘削機14で掘削した拡幅部に当たる当該セグメントの背面に、裏込材23を実施する。
o.上部の接続用の拡幅用セグメント12と同様に、上下対称の位置にある下部の接続用の拡幅セグメント12も上部と同様な手順で設置する。
p.下部のセグメント組立解体機15は、下部の水平桁8に敷設した走行レール33で移動・回転自在に構成する。
q.下部の掘削機14も、下部の水平桁8の下部空間で、セグメント組立解体機15と同様、走行レールで移動・回転自在とする。
【0023】
2)施工ステップ2〔図2参照〕
a.前記fで除去したセグメントに隣接する本線とランプのセグメント18をセグメント組立解体機15により除去する(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
b.掘削機14により前記不等厚のセグメントと隣接する等厚の拡幅用セグメント12を取り付けるために廻りの地山を掘削する(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
c.掘削土砂は、ステップ1のhと同様にベルトコンベア25などで坑外に搬出する。
d.等厚の拡幅用セグメント12は、同様に作業床13の上部まで搬送、吊り上げ装置16で吊り上げておく。
e.セグメント組立解体機15により等厚の拡幅用セグメント12を把持し、所定の位置に移動し、先に組み立てた接続用の不等厚の拡幅用セグメント12とボルトで接合して組み立てる(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
f.等厚の拡幅用セグメント12の端部に支保工24を立設する。
g.等厚の拡幅用セグメント12の背面に裏込材23を実施する。
【0024】
3)施工ステップ3〔図4参照〕
a.前記ステップ2における本線とランプセグメント1,2に隣接する本線とランプセグメント18を、セグメント組立解体機15により除去する。
b.掘削機14により、更に隣りの地山を掘削する。
c.セグメント組立解体機15により、等厚の拡幅用セグメント12を把持し、所定の位置に移動し、先に組み立てた等厚の拡幅セグメント12とボルトなどで接合し、アーチ状に組み立てていく(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
d.前記等厚の拡幅用セグメント12の端部に、支保工24を設置する。
e.等厚の拡幅用セグメント12の背面に裏込材25を実施する。
【0025】
4)施工ステップ4〔図5と、図6乃至図7参照〕
a.前記等厚の拡幅セグメント12とそれに隣接する拡幅用セグメント12との接合部29は、型枠兼添接板26、側面型枠27を設置して場所打ちコンクリート28を打設して、拡幅セグメントの横断方向、縦断方向の施工誤差を調整できる構造とすることもできる。
b.拡幅アーチの最頂部にある接合部29は、型枠の大きさや、コンクリート量を少なくするために、小さいことが望ましい。場所打ちコンクリートは、早強・高流動・無収縮の材料が望ましい。
c.接合部29の拡幅用セグメント12の端部にあらかじめジベル30を溶接しておき、場所打ちコンクリートと一体化を図る。必要により、鉄筋を配筋することもある。
d.型枠兼添接板、側面型枠のセグメントとの接合部29は、長穴31とボルト(図示せず)による接合とすることで、施工誤差を調整して、容易に接合できる。型枠兼添接板26は、トンネル本体の強度部材として、残置することもある。
e.等厚の拡幅セグメント12と場所打ちの接合面には、止水材32を設置する。
f.接合部29の施工誤差を含む形状寸法を計測し、寸法にあった調整セグメントを製造して、セグメント組立解体機15で組み立てることもできる。この場合は、セグメントに止水材32を設け、組立後裏込材23を実施する。拡幅トンネル調整セグメントは、挿入に容易な挿入角、形状にして分割構造とする場合もある。
【0026】
5)施工ステップ5〔図8参照〕
a.接合部29を場所打ちコンクリートで構築した場合は、必要な強度を確認後、前記した支保工24や型枠(図示せず)を撤去する。
b.掘削機14で、中間部34の地山を次に設置する上部水平桁7の高さまで掘削してから前記上部水平桁7を設置する。
c.本線およびランプのトンネルセグメント18の上部を撤去する(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
d.上部水平桁7の延長上にある中間部34上にある上部水平桁71とボルトなどで接続する。
e.掘削機14で、中間部34の地山の上部水平桁71の下部を掘削しながら、本線およびランプセグメント12を撤去する。
f.下部水平桁8の延長上にある下端まで掘削後、下部水平桁81を設置して、下部水平桁8とボルトなどで接続する。
6)施工ステップ6〔図9参照〕
a.下部掘削部の地山を掘削機14(図示せず)で残りの掘削するとともに、縦支保工の下部および本線とランプセグメント18をセグメント組立解体機15で撤去する。
b.下部掘削地山の拡幅用セグメント12の設置部を掘削機14で掘削する。
c.下部の拡幅用セグメント12をセグメント組立解体機15で組み立てる。
d.cと同時にセグメント下部の均しコンクリートを兼ねた裏込材を施工する。下部の裏込材は、例えば固練りのモルタルを突き固めて成型する。また、拡幅用セグメント12については背面に袋を取り付けた袋詰めセグメントにしても良い。
【0027】
7)施工ステップ7〔図10参照と図6及び図7
a.拡幅セグメント12の最下部を併合する場所打ちコンクリートを打設する。場所打ちの場合は、拡幅セグメント12の端部にジベル30を溶接しておき、必要により補強鉄筋と一体化する。
b.上記aの場所打ちコンクリートに代えて、拡幅セグメント12間を計測し、施工誤差を考慮した形状に合わせた調整セグメントを製作し、組み立てる。
c.本線およびランプトンネルの施工に支障のない、上部水平桁7,71、下部水平桁8,81および縦支保工5,6と仮設壁4を、セグメント組立解体機15や掘削機14などで順次撤去、トンネル外に搬出し、拡幅部のトンネルを完成させる。
【0028】
なお、本実施例1では、上下の拡幅部アーチの構築を、ほぼ同時に施工する手順を示したが、上部から又下部の一か所から適宜、条件に応じて施工することもできる。
この手順で、先行工区間を数リング宛施工するとともに、所定の間隔をおいて、その前方の数か所で、後行工区間をほぼ同時に施工する。
先行工区間の拡幅アーチトンネルと後行工区間の拡幅アーチの接合部19は、施工の誤差を吸収するために、場所打ちコンクリートか、施工誤差によるずれを計測し、小さい幅の調整セグメントを組立てることもできる。
【0029】
本実施例では、本線及びランプトンネル間の中間部の上部水平桁7と、下部水平桁8を、中間部掘削及びセグメント撤去時に設置しているが、地盤の条件などにより、本線トンネル及びランプトンネルセグメントを撤去する前に、あらかじめこれらのセグメントを貫通させて設置し、上部水平桁7及び下部水平桁8と連結する場合もある。
また、本実施例では、本線及びランプセグメントを撤去後、拡幅セグメントを1ピースずつ設置しているが、地盤条件や吹付アンカーボルトの併用等により拡幅部を先行して掘削し、拡幅セグメントを数ピースまとめて、組み立てることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明のトンネルの拡幅部構築方法とトンネル拡幅部の構造は、新設の並行トンネルの拡幅だけでなく、既設のトンネルにも応用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 本線トンネル
2 ランプトンネル
3 拡幅部トンネル
12 拡幅トンネルのセグメント
18 本線とランプトンネルのセグメント
19 妻部側壁
29 接合部
33 本線とランプトンネル間である中間部
X 先行工区間(4本)
Y 後行工区間(4本)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図13
図14