【実施例】
【0021】
〈拡幅部施工の概略〉
1.本線トンネル1とランプトンネル2の施工と同時、又は各トンネルの施工後に拡幅部トンネル3を構築する。
2.本線トンネルおよびランプトンネル1,2内の中央にある架設壁4を立設してトンネルの軸方向を左右に区画し、片側区画で本線とランプトンネルの土砂搬出、セグメント18などの搬入出に使用し、残りの区画を拡幅部の施工機械(掘削機14とセグメントの組立解体機15)などの搬入出に使用する。
3.ズリ出しは、本線およびランプトンネルの掘進に用いるベルトコンベア25などのズリ出し設備を利用する。
4.本線およびランプトンネル1,2の上部と下部の空間を使用し、相対向するトンネルのセグメントを撤去してから地山を掘削して、接続用の不等厚とそれに続く等厚の拡幅セグメント12の設置及び継ぎ足しにより拡幅アーチを施工して、大断面の拡幅トンネルを構築する。
5.上記の拡幅部トンネルの構築は、トンネル軸方向に複数ある先行工区間と複数ある後行工区間とを交互に区分けし、先行工区間を掘削してから後行工区間を掘削してトンネル拡幅部を構築する。
【0022】
〈実施例1〉
1)施工ステップ1(
図1と
図3,
図6及び
図7参照)
a.本線トンネル1、ランプトンネル2内に前記仮設壁4の他に縦支保柱5,6と上部水平桁7と下部水平桁8とを、好ましくはセグメント1〜2リングに1か所程度設置する。
b.これから拡幅する拡幅部上部および下部の地山及びトンネル中間部の地山を地盤条件に応じて地盤改良9する。ただし、固結土などで地盤が自立する場合や地下水がない場合などでは地盤改良が不要な場合がある。
c.各トンネル間の上方と下方の地山も必要により地盤改良10,10’する。
d.本線トンネル1とランプトンネル2の上部水平桁7上にある本線とランプセグメント11の撤去、撤去後の地山の掘削、拡幅用セグメント12の組立などに使用する作業床13を設置する。
e.作業床13上の空間に、掘削機14とセグメント組立解体機15を分割して吊り上げ、作業床13上で組み立てる。なお、掘削機14のバケットは、ブレーカーなどと付け替えが可能である。
f.セグメント組立解体機15により、拡幅部の本線とランプセグメント11を除去(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
g.接続用の不等厚の拡幅セグメント12を取り付けるために必要な拡幅部を確保するために地山を掘削機14で、
図3に示す手順により掘削する(請求項1の方法)。
h.掘削土砂は、作業床13上に設けたホッパー付ベルトコンベア(図示せず)により、側方に搬出し、本線トンネルの残土搬出用の連続ベルトコンベア25に落として、トンネル後方へ搬出する。
i.接続用の拡幅用セグメント12は、本線トンネル1とランプトンネル2内の拡幅用の作業空間を利用して、トンネル上部に設置した吊り上げ装置16で作業床13上に吊り上げる。
j.なお、不等厚と等厚の拡幅用セグメント12は、2分割もしくは複数に分割にして、作業床の上部に持ち込んで組み立てる場合もある(例えば分割したピース重量2ton程度以下にする)。
k.セグメント組立解体機15により、不等厚の拡幅用セグメント12を把持し、トンネルを拡幅する作業位置に移動し、前記した撤去したセグメントの隣りに残置してある本線とランプのセグメント18とにボルトなどで接合して組み立てる(請求項1と5、及び〔0011〕)。
l.拡幅アーチ20となる接続用の拡幅セグメント12の妻側端部は、鋼材と鋼板またはコンクリート板などからなる妻部側壁19を設置し、アンカーボルト21等で土留め防護する。
m.接続用の拡幅用セグメント12の下部に支保工22を設置する。
n.接続用の拡幅用セグメント12の前記gの掘削機14で掘削した拡幅部に当たる当該セグメントの背面に、裏込材23を実施する。
o.上部の接続用の拡幅用セグメント12と同様に、上下対称の位置にある下部の接続用の拡幅セグメント12も上部と同様な手順で設置する。
p.下部のセグメント組立解体機15は、下部の水平桁8に敷設した走行レール33で移動・回転自在に構成する。
q.下部の掘削機14も、下部の水平桁8の下部空間で、セグメント組立解体機15と同様、走行レールで移動・回転自在とする。
【0023】
2)施工ステップ2〔
図2参照〕
a.前記fで除去したセグメントに隣接する本線とランプのセグメント18をセグメント組立解体機15により除去する(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
b.掘削機14により前記不等厚のセグメントと隣接する等厚の拡幅用セグメント12を取り付けるために廻りの地山を掘削する(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
c.掘削土砂は、ステップ1のhと同様にベルトコンベア25などで坑外に搬出する。
d.等厚の拡幅用セグメント12は、同様に作業床13の上部まで搬送、吊り上げ装置16で吊り上げておく。
e.セグメント組立解体機15により等厚の拡幅用セグメント12を把持し、所定の位置に移動し、先に組み立てた接続用の不等厚の拡幅用セグメント12とボルトで接合して組み立てる(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
f.等厚の拡幅用セグメント12の端部に支保工24を立設する。
g.等厚の拡幅用セグメント12の背面に裏込材23を実施する。
【0024】
3)施工ステップ3〔
図4参照〕
a.前記ステップ2における本線とランプセグメント1,2に隣接する本線とランプセグメント18を、セグメント組立解体機15により除去する。
b.掘削機14により、更に隣りの地山を掘削する。
c.セグメント組立解体機15により、等厚の拡幅用セグメント12を把持し、所定の位置に移動し、先に組み立てた等厚の拡幅セグメント12とボルトなどで接合し、アーチ状に組み立てていく(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
d.前記等厚の拡幅用セグメント12の端部に、支保工24を設置する。
e.等厚の拡幅用セグメント12の背面に裏込材25を実施する。
【0025】
4)施工ステップ4〔
図5と、
図6乃至
図7参照〕
a.前記等厚の拡幅セグメント12とそれに隣接する拡幅用セグメント12との接合部29は、型枠兼添接板26、側面型枠27を設置して場所打ちコンクリート28を打設して、拡幅セグメントの横断方向、縦断方向の施工誤差を調整できる構造とすることもできる。
b.拡幅アーチの最頂部にある接合部29は、型枠の大きさや、コンクリート量を少なくするために、小さいことが望ましい。場所打ちコンクリートは、早強・高流動・無収縮の材料が望ましい。
c.接合部29の拡幅用セグメント12の端部にあらかじめジベル30を溶接しておき、場所打ちコンクリートと一体化を図る。必要により、鉄筋を配筋することもある。
d.型枠兼添接板、側面型枠のセグメントとの接合部29は、長穴31とボルト(図示せず)による接合とすることで、施工誤差を調整して、容易に接合できる。型枠兼添接板26は、トンネル本体の強度部材として、残置することもある。
e.等厚の拡幅セグメント12と場所打ちの接合面には、止水材32を設置する。
f.接合部29の施工誤差を含む形状寸法を計測し、寸法にあった調整セグメントを製造して、セグメント組立解体機15で組み立てることもできる。この場合は、セグメントに止水材32を設け、組立後裏込材23を実施する。拡幅トンネル調整セグメントは、挿入に容易な挿入角、形状にして分割構造とする場合もある。
【0026】
5)施工ステップ5〔
図8参照〕
a.接合部29を場所打ちコンクリートで構築した場合は、必要な強度を確認後、前記した支保工24や型枠(図示せず)を撤去する。
b.掘削機14で、中間部34の地山を次に設置する上部水平桁7の高さまで掘削してから前記上部水平桁7を設置する。
c.本線およびランプのトンネルセグメント18の上部を撤去する(請求項1と〔0007〕及び〔0008〕)。
d.上部水平桁7の延長上にある中間部34上にある上部水平桁71とボルトなどで接続する。
e.掘削機14で、中間部34の地山の上部水平桁71の下部を掘削しながら、本線およびランプセグメント12を撤去する。
f.下部水平桁8の延長上にある下端まで掘削後、下部水平桁81を設置して、下部水平桁8とボルトなどで接続する。
6)施工ステップ6〔
図9参照〕
a.下部掘削部の地山を掘削機14(図示せず)で残りの掘削するとともに、縦支保工の下部および本線とランプセグメント18をセグメント組立解体機15で撤去する。
b.下部掘削地山の拡幅用セグメント12の設置部を掘削機14で掘削する。
c.下部の拡幅用セグメント12をセグメント組立解体機15で組み立てる。
d.cと同時にセグメント下部の均しコンクリートを兼ねた裏込材を施工する。下部の裏込材は、例えば固練りのモルタルを突き固めて成型する。また、拡幅用セグメント12については背面に袋を取り付けた袋詰めセグメントにしても良い。
【0027】
7)施工ステップ7〔
図10参照と
図6及び
図7〕
a.拡幅セグメント12の最下部を併合する場所打ちコンクリートを打設する。場所打ちの場合は、拡幅セグメント12の端部にジベル30を溶接しておき、必要により補強鉄筋と一体化する。
b.上記aの場所打ちコンクリートに代えて、拡幅セグメント12間を計測し、施工誤差を考慮した形状に合わせた調整セグメントを製作し、組み立てる。
c.本線およびランプトンネルの施工に支障のない、上部水平桁7,71、下部水平桁8,81および縦支保工5,6と仮設壁4を、セグメント組立解体機15や掘削機14などで順次撤去、トンネル外に搬出し、拡幅部のトンネルを完成させる。
【0028】
なお、本実施例1では、上下の拡幅部アーチの構築を、ほぼ同時に施工する手順を示したが、上部から又下部の一か所から適宜、条件に応じて施工することもできる。
この手順で、先行工区間を数リング宛施工するとともに、所定の間隔をおいて、その前方の数か所で、後行工区間をほぼ同時に施工する。
先行工区間の拡幅アーチトンネルと後行工区間の拡幅アーチの接合部19は、施工の誤差を吸収するために、場所打ちコンクリートか、施工誤差によるずれを計測し、小さい幅の調整セグメントを組立てることもできる。
【0029】
本実施例では、本線及びランプトンネル間の中間部の上部水平桁7と、下部水平桁8を、中間部掘削及びセグメント撤去時に設置しているが、地盤の条件などにより、本線トンネル及びランプトンネルセグメントを撤去する前に、あらかじめこれらのセグメントを貫通させて設置し、上部水平桁7及び下部水平桁8と連結する場合もある。
また、本実施例では、本線及びランプセグメントを撤去後、拡幅セグメントを1ピースずつ設置しているが、地盤条件や吹付アンカーボルトの併用等により拡幅部を先行して掘削し、拡幅セグメントを数ピースまとめて、組み立てることもできる。