特許第6147033号(P6147033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147033
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】光触媒を用いた汚染空気の浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20170607BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20170607BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20170607BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   B01D53/86 110
   B01D53/86 150
   B01J35/02 J
   A61L9/00 C
   A61L9/18
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-47731(P2013-47731)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-171989(P2014-171989A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】592219961
【氏名又は名称】リオン熱学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】松田 強
(72)【発明者】
【氏名】徳岳 文夫
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−050979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
A61L 9/00
A61L 9/18
B01J 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒の作用によって汚染空気を浄化させる光触媒フィルタと光源を備えるフィルタユニットと、該フィルタユニットを収納するフィルタチャンバーとを備える光触媒を用いた汚染空気の浄化装置であって、
前記フィルタチャンバーの空間が、該フィルタチャンバーに収納される一方のフィルタユニットと他方のフィルタユニットによって三分割され、
前記一方と他方のフィルタユニットの間の空間である中間空間が前記汚染空気の吸入側の通気空間として設けられ、
前記三分割された両脇の空間である一方側空間と他方側空間が、前記吸入側の通気空間から前記一方と他方のフィルタユニットのいずれかを通過することで前記汚染空気が浄化されて排出される浄化排出側の通気空間として設けられ
前記フィルタチャンバーがユニット化されることで構成されたチャンバー単体の複数が、前記汚染空気が前記フィルタチャンバーに吸入される方向である通気方向に、前記吸入側の通気空間として前記中間空間同士が連通するように接続されていると共に、前記浄化排出側の通気空間として、前記一方側空間同士、前記他方側空間同士が連通するように接続されていることを特徴とする光触媒を用いた汚染空気の浄化装置。
【請求項2】
前記フィルタユニットが、光触媒が担持されたパネル状のフィルタカートリッジと、該光触媒を作用させる光源カートリッジとが隣接状態に配置されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の光触媒を用いた汚染空気の浄化装置。
【請求項3】
前記フィルタユニットが、前記フィルタカートリッジと前記光源カートリッジとによって構成されるフィルタセットを複数段に配することで構成されていることを特徴とする請求項2記載の光触媒を用いた汚染空気の浄化装置。
【請求項4】
前記汚染空気が前記フィルタチャンバーに吸入される方向である通気方向を基準として横方向に、前記一方と他方のフィルタユニットのそれぞれが二個組として配され、該二個組のフィルタユニットが前記フィルタチャンバーの横方向の両側から着脱できるように該フィルタチャンバーの両側面に点検口が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒を用いた汚染空気の浄化装置。
【請求項5】
前記チャンバー単体の複数が、水平方向に接続されて構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒を用いた汚染空気の浄化装置。
【請求項6】
前記チャンバー単体の複数が、鉛直方向に接続されて構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒を用いた汚染空気の浄化装置。
【請求項7】
複数の前記チャンバー単体が接続されて構成されたフィルタチャンバーを、拡大された一つの拡大チャンバーユニットとし、該拡大チャンバーユニットが複数配置されて構成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の光触媒を用いた汚染空気の浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒の作用によって汚染空気を浄化させるフィルタユニットと、該フィルタユニットを収納するフィルタチャンバーとを備える光触媒を用いた汚染空気の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている光触媒フィルタは、アルミナセラミック多孔質体を基材として、その基材表面に酸化チタン(二酸化チタン:TiO)からなる紫外線応答型の光触媒層を形成したものが主流を占めている。なお、酸化チタンには、光触媒性能の高いアナターゼ型が主として使用される。酸化チタンは、光触媒活性層の比表面積を拡大させて分解除去能力を高めるために、粒径が小さい微粒子、とりわけ粒径数ナノオーダーのナノ粒子が用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
この光触媒フィルタとしては、例えば、基材が「プラスチックまたは金属またはガラスの単体、あるいはこれらの群から選択された2以上の材料の複合体であって、少なくともアルミナセラミックよりも脆性破壊しにくい」材料で構成されている(特許文献1参照)ものが提案されている。これによれば、少なくともアルミナセラミックを基材とする光触媒フィルタよりも割れにくい光触媒フィルタが得られる。さらに、望ましくは、更に強度的に強く、任意の形状、大きさに形成でき、軽く、薄い光触媒フィルタが得られる。
【0004】
そして、前記の光触媒フィルタを利用できるフィルタユニットとしては、セラミックス骨格の表層に膜厚が1μm以下の酸化チタン膜が形成されている板状の光触媒フィルタが、紫外線ランプを挟み込むように構成されている光触媒脱臭装置が(特許文献2参照)が提案されている。これによれば、紫外線ランプの両面に、光触媒フィルタを配置することにより、フィルタの性能を最大限に引き出し、脱臭を効率的に行うことができる。
なお、この光触媒脱臭装置においては、フィルタユニットの形態例が提案されているが、そのフィルタユニットを、大型の汚染空気の浄化装置に適用する場合のフィルタチャンバーの構造などについては提案がなされていない。例えばゴミ処理場などの比較的大規模に汚染空気を処理すべき場合の適用形態については検討されていない。
【0005】
一方、ゴミ処理場では、燃焼炉とその燃焼炉から排出される煤煙を処理する燃焼煤煙系統ではないが、その建屋内においても空気が汚染されやすく、作業をする者の環境が劣悪になりやすい。また、その汚染空気を、外部へ放出すると周囲の環境を汚染することになる。例えば、ゴミピット(ゴミの一時保管所)からの掃気系統において生じる漏れガスや、煤煙の最終処理場(燃焼棟)内における燃焼煤煙系統の漏れガスには、ダイオキシンやPCB等の有毒ガスが含まれている。そのため、いわゆる作業環境及び周囲環境の改善のため、汚染空気の浄化装置が求められている。
【0006】
これに対して従来からゴミ処理場においては、汚染物質を捕集する吸着フィルタとして活性炭を用いたフィルタによって汚染空気を浄化している。すなわち、ゴミピットから燃焼炉に導かれる掃気系統にインラインで配置した浄化装置や、燃焼棟などの建屋内の空気を清浄化するために配置された空気循環型の浄化装置には、主として活性炭を用いたフィルタが利用されてきた。しかしながら、そのような従来の活性炭を用いたゴミ処理場などの浄化装置においては、処理空気量が大きくなるため装置が大型重量化し、そのメンテナンスには大量のフィルタエレメント(活性炭など)の交換が必要など、多大な労力と費用とが必要とされている。従って、イニシャルコストが高くなるだけでなく、そのランニングコストが多大なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO/2011/114894号公報([0003]、[0013])
【特許文献2】特開2006−26507号公報([0011]、[図1])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光触媒を用いた汚染空気の浄化装置に関して解決しようとする問題点は、従来の活性炭を用いたゴミ処理場などの浄化装置においては、装置が大型重量化し、そのメンテナンスには多大な労力と費用とが必要とされていることにある。そして、そのような汚染空気の処理量が大きな装置について、光触媒の浄化機能を適用するための適切な構成が提案されていないことにある。
【0009】
そこで本発明の目的は、ゴミ処理場などの大型の浄化装置において、光触媒の汚染空気の浄化作用を適切に利用でき、装置を簡易軽量化してその装置のメンテナンスを容易且つ低コストで行うことができる光触媒を用いた汚染空気の浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の一形態によれば、光触媒の作用によって汚染空気を浄化させる光触媒フィルタと光源を備えるフィルタユニットと、該フィルタユニットを収納するフィルタチャンバーとを備える光触媒を用いた汚染空気の浄化装置であって、
前記フィルタチャンバーの空間が、該フィルタチャンバーに収納される一方のフィルタユニットと他方のフィルタユニットによって三分割され、
前記一方と他方のフィルタユニットの間の空間である中間空間が前記汚染空気の吸入側の通気空間として設けられ、
前記三分割された両脇の空間である一方側空間と他方側空間が、前記吸入側の通気空間から前記一方と他方のフィルタユニットのいずれかを通過することで前記汚染空気が浄化されて排出される浄化排出側の通気空間として設けられ
前記フィルタチャンバーがユニット化されることで構成されたチャンバー単体の複数が、前記汚染空気が前記フィルタチャンバーに吸入される方向である通気方向に、前記吸入側の通気空間として前記中間空間同士が連通するように接続されていると共に、前記浄化排出側の通気空間として、前記一方側空間同士、前記他方側空間同士が連通するように接続されている。
【0011】
また、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の一形態によれば、前記フィルタユニットが、光触媒が担持されたパネル状のフィルタカートリッジと、該光触媒を作用させる光源カートリッジとが隣接状態に配置されて構成されていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の一形態によれば、前記フィルタユニットが、前記フィルタカートリッジと前記光源カートリッジとによって構成されるフィルタセットを複数段に配することで構成されていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の一形態によれば、前記汚染空気が前記フィルタチャンバーに吸入される方向である通気方向を基準として横方向に、前記一方と他方のフィルタユニットのそれぞれが二個組として配され、該二個組のフィルタユニットが前記フィルタチャンバーの横方向の両側から着脱できるように該フィルタチャンバーの両側面に点検口が設けられていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の一形態によれば、前記チャンバー単体の複数が、水平方向に接続されて構成されていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の一形態によれば、前記チャンバー単体の複数が、鉛直方向に接続されて構成されていることを特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の一形態によれば、複数の前記チャンバー単体が接続されて構成されたフィルタチャンバーを、拡大された一つの拡大チャンバーユニットとし、該拡大チャンバーユニットが複数配置されて構成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置によれば、ゴミ処理場などの大型の浄化装置において、光触媒の汚染空気の浄化作用を適切に利用でき、装置を簡易軽量化してその装置のメンテナンスを容易且つ低コストで行うことができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の形態例を示す側面側から見た断面図である。
図2図1の形態例の側面図である。
図3図1の形態例の平面図である。
図4図1の形態例の正面図である。
図5図1の形態例のユニット形態を示す斜視図である。
図6図1の形態例のユニット形態を示す組立図である。
図7】本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の他の形態例を示す側面側から見た断面図である。
図8図7の形態例の側面図である。
図9図7の形態例の平面図である。
図10図7の形態例の正面図である。
図11図7の形態例のユニット形態を示す斜視図である。
図12図7の形態例のユニット形態を示す組立図である。
図13】本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の他の形態例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の形態例を、添付図面(図1〜13)に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置は、光触媒の作用によって汚染空気を浄化させる光触媒フィルタと光源を備えるフィルタユニット10と、そのフィルタユニット10を収納するフィルタチャンバー20とを備えるものである。
【0019】
図1及び13に示すように、フィルタチャンバー20の空間が、そのフィルタチャンバー20に収納される一方のフィルタユニット10と他方のフィルタユニット10によって三分割されている。これによれば、後述する空気の流れについて、通気抵抗が可及的にかからない十分な通気空間を適切に確保することができる。
【0020】
フィルタチャンバー20の三分割された空間であって、一方と他方のフィルタユニット10、10の間の空間である中間空間33が、汚染空気の吸入側の通気空間として設けられている。空気入口31、入口通気部32を介して、汚染側の空気が直に流入される空間となっている。
【0021】
そして、フィルタチャンバー20の三分割された両脇の空間である一方側空間35aと他方側空間35bが、吸入側の通気空間33から一方と他方のフィルタユニット10、10のいずれかを通過することで汚染空気が浄化されて排出される浄化排出側の通気空間として設けられている。以上のように、光触媒を用いた汚染空気の浄化装置について空気の流れる空間が設けられることで、通気抵抗を可及的に小さくして送風機によるエネルギー消費を可及的に軽減できる合理的な構成になっている。
【0022】
この本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置によれば、光触媒の作用を利用するため、有害物質を分解し無害化して排出でき、環境汚染を防止できる。そして、汚染物質を分解・浄化するため、汚染物質をフィルタで捕集する方法に比較して圧力損失が上昇することがなく、通気抵抗が小さいため送風によるエネルギー消費を抑制できる。また、汚染物質の分解・浄化によって、フィルタ性能が再生されるため、長期間に渡って浄化性能を適切に維持することができる。
【0023】
また、図1の形態例では、フィルタユニット10が、光触媒が担持されたパネル状のフィルタカートリッジ1と、その光触媒を作用させる光源カートリッジ2とが隣接状態に配置されて構成されている。このように、フィルタユニット10の構成要素である触媒フィルタと光源をカートリッジ化することで、そのフィルタユニット10自体を適切且つ容易に構成できると共に、保守管理を容易に行うことができる。
【0024】
さらに、図1の形態例では、フィルタユニット10が、フィルタカートリッジ1と光源カートリッジ2とによって構成されるフィルタセットを複数段に配することで構成されている。本形態例では、フィルタセット10が二段に配されており、汚染空気を浄化する清浄効率を高めることができる。さらに、フィルタセット10を多数段化することで、空気清浄装置としての清浄効率を可及的に高めることができる。
【0025】
また、汚染空気がフィルタチャンバー20に吸入される方向である通気方向を基準として横方向に、一方と他方のフィルタユニット10、10のそれぞれが二個組として配され、その二個組のフィルタユニット10、10がフィルタチャンバー20の横方向の両側から着脱できるようにそのフィルタチャンバー20の両側面に点検口22が設けられている。これによれば、フィルタユニット10の着脱及び保守管理を適切且つ容易に行うことができる。
【0026】
また、フィルタチャンバー20がユニット化されることで構成されたチャンバー単体20aの複数が、汚染空気60がフィルタチャンバー20に吸入される方向である通気方向に、吸入側の通気空間として中間空間33同士が連通するように接続されていると共に、浄化排出側の通気空間として、一方側空間同士35a、他方側空間35b同士が連通するように接続されている。これによれば、フィルタチャンバー20のサイズを適切且つ容易に拡大・拡張でき、空気清浄装置としての容量を適宜に拡大・拡張できる。
【0027】
また、図13に示す汚染空気の浄化装置の形態によれば、チャンバー単体20aの複数が、鉛直方向に接続されて構成されている。すなわち、図13の形態例は、フィルタユニット10が縦置きなっていると共に、チャンバー単体20aが縦方向に複数重層された形態になっている。
【0028】
これによれば、汚染空気60及び浄化空気70の空気流が、基本的には下降流(ダウンフロー)になる。ダウンフローの場合、汚染物質であるダストが沈降して下部に堆積する方向と同一の方向(下降空気流)となり、ダストが再飛散することを防止しやすく、ダストを効率よく捕集することができる。そして、沈降するダストは、最下端のチャンバー単体20aの中間空間33の下端部に集積し易く、保守管理を行い易い。さらに、フィルタカートリッジ1を水洗する場合に、水流は重力によって下降するため、縦方向に並んだ複数のフィルタカートリッジ1へ連続的に水を流すことができる。従って、フィルタカートリッジ1を水洗するための構成を、より簡単な構造で好適に設けることができる。
【0029】
図13に二点鎖線で記載した矢印90は、汚染物質の排出方向を仮想的に示したものであり、最下端のチャンバー単体20aの中間空間33の下端部から外部へ、汚染物質を排出することを示している。図13のような縦置き構造の場合、最下端のチャンバー単体20aの中間空間33の下端部には、汚染物質であるダストが溜まり易い。また、フィルタカートリッジ1を水洗する場合に生じる汚水(汚染物質)が最終的に溜まる部分でもある。そのように溜まる汚染物質は、最下端のチャンバー単体20aの中間空間33の下端部に連通するダクトなどの通路を設けることで、適切且つ容易に排出することが可能であり、縦置きの構造のメリットになっている。
【0030】
さらに、図7〜12に示す形態例のように、複数のチャンバー単体20aが接続されて構成されたフィルタチャンバー20を、拡大された一つの拡大チャンバーユニットとし、その拡大チャンバーユニットが複数配置されて構成されていることで、光触媒を用いた汚染空気の浄化装置のさらなる大型化を図ることができる。図7〜12に示す形態例では、横置きに構成された装置に関するもので、上下方向二層に重層する形態になっているが、さらに多層に重層することが可能であり、縦置きに構成された装置については、横方向へ重層することができる。
以上に説明してきたユニット化によって、小風量から大風量までの処理能力が異なる様々な仕様に対応して、本発明にかかる光触媒を用いた汚染空気の浄化装置を適切に提供できる。
【0031】
次に、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の横置きに構成された第1の形態例を、添付図面(図1〜6、13)に基づいて詳細に説明する。
本形態例は、図1に示すように、チャンバー単体の複数20aが、水平方向に接続されて構成されている。
【0032】
本形態例のフィルタユニット10とは、図1に示すように光触媒が担持されたフィルタカートリッジ1と光源カートリッジ2とが併設されたもので、フィルタカートリッジ1と光源カートリッジ2とが別体に構成されたものであってもよいし、その両者が一つのケーシングによって一体化されたたものであってもよい。また、フィルタユニット10としては、光触媒フィルタと光源とを一つのケーシング内に固定して一つのカートリッジとして構成してもよいのは勿論である。また、光源カートリッジ2は、複数の紫外線ランプが平行に並べられた状態で一つのケーシング内に保持された構造によって設けることができる。このように、カートリッジ化することで着脱作業を適切且つ容易に行うことができる。なお、光源カートリッジ2の光源としては、上記の紫外線ランプに限らず、LEDなど他の発光装置を利用できるのは勿論である。
【0033】
本形態例では、フィルタユニット10が、上下二ヶ所の取り付け部に平置き状態に保持され、横方向に挿入して装着できると共に横方向に引き出して脱着できるように、フィルタチャンバー20が構成され、そのフィルタチャンバー20において、その上下二ヶ所の取り付け部のフィルタユニット10の間の空間が汚染空気60の吸入側の通気空間33として設けられ、その上下二ヶ所の取り付け部に装着されたフィルタユニット10について両脇の空間となる上部の空間(一方側空間35a)及び下部の空間(他方側空間35b)が、汚染空気60の浄化排出側の通気空間35a、35bとして設けられている。
【0034】
これによれば、図1に示すように、後述するロールフィルタ装置40及びフィルタチャンバー20の前段の入口通気部32を通過した汚染空気60が、フィルタチャンバー20の上下方向の中間の空間(吸入側の通気空間33)へ導入される。そして、フィルタユニット10を通過する間に光触媒の作用によって汚染物質が分解・浄化され、浄化空気70がフィルタチャンバー20の一方側空間35a及び他方側空間35bへ排出される。そして、その一方側空間35aと他方側空間35bとが合流される出口通気部36を通過して外部へ排出される。
【0035】
ここで、吸入側の通気空間33及び浄化排出側の通気空間35a、35bの空間の大きさである通気路としての断面積は、要求される汚染空気の処理風量に対して通気抵抗が極力かからないように十分に大きく設定されている。すなわち、光触媒によって汚染物質を分解するための時間を適切に確保するため、通気空間を流れる空気の流速が十分に低速になるように通気路を十分に大きく設定してある。例えば、流速が0.2m/s〜1.0m/sの範囲となるように設定するとよい。なお、ゴミ処理施設で浄化することを要求されるダイオキシンについては、流速を例えば0.7m/s程度に設定するとよい。PCBについては、その流速をより低速の例えば0.3m/s程度に設定することで十分な分解・浄化を行うことができる。
【0036】
以上に説明したように、本発明によれば、光触媒の作用を利用するため、有害物質を分解し無害化して排出でき、環境汚染を防止できる。そして、汚染物質を分解・浄化するため、汚染物質をフィルタで捕集する方法に比較して圧力損失が上昇することがなく、通気抵抗が小さいため送風によるエネルギー消費を抑制できる。また、汚染物質の分解・浄化によって、フィルタ性能が再生されるため、長期間に渡って浄化性能を適切に維持することができる。なお、フィルタカートリッジ1は、そのフィルタ表面に汚れは付着するが、光触媒の特有な効果として水で洗い流すだけで容易に再生できる。
【0037】
また、本形態例のフィルタチャンバー20では、ボックス状に形成されており、フィルタユニット10が平置き状態に保持される形態になっている。また、フィルタユニット10の両側辺部が、フィルタチャンバー20に設けられた一対の溝に嵌まってスライドされて着脱・保持されるように設けられている。このため、フィルタユニット10の重さをその両側辺部について均等に受けることができ、フィルタチャンバー20で適切に保持されると共に、作業者は両手で持ち易く、着脱するための抜き差し作業を容易に行うことできる。このように作業を行い易いため、作業者が誤って落すことでフィルタカートリッジ1や紫外線ランプ2が破損することを防止できる。また、フィルタユニット10が上下二ヶ所の取り付け部に配されていることで、吸入側の通気空間33を適切に共用できる形態となっており、複数のフィルタユニット10を効率良くコンパクトに配置できる。
【0038】
また、本形態例では、汚染空気60がフィルタチャンバー20に吸入される方向である手前から遠ざかる奥行き方向を基準として左右方向に、上下二ヶ所の取り付け部のフィルタユニット10、10のそれぞれが左右の二個組として配され、その二個組のフィルタユニット10、10が左右の両側から挿入できると共に引き出すことができるように構成されている。このフィルタユニット10、10の着脱作業は、点検扉21を開き、点検口22を通して行うことができる。これによれば、各段でフィルタユニット10を倍に増やすことができるため、汚染空気の処理風量を倍にすることができる。また、フィルタチャンバー20の左右両側からのメンテナンスができる構成であり、作業を行い易い構造になっている。
【0039】
さらに、本形態例では、フィルタチャンバー20がユニット化されることで構成されたチャンバー単体20aの複数が、汚染空気60がフィルタチャンバー20に吸入される方向である手前から遠ざかる奥行き方向(前後方向)に、吸入側の通気空間33が連通するように接続されていると共に、上下の汚染空気60の浄化排出側の通気空間35a、35bのそれぞれが連通するように接続されている。このようにチャンバー単体20aとしてユニット化されているため、汚染空気の処理風量に応じて、フィルタチャンバー20の全体としての大きさを容易に調整・変更することができる。
【0040】
また、40はロールフィルタ装置であり、フィルタチャンバー20に汚染空気60が吸入される前段階で汚染空気60中の浮遊粒子を捕捉するように、フィルタチャンバー20の吸入口の通気の上流側に汚染空気60中の浮遊粒子を捕捉するように配されている。これによれば、光触媒の作用では容易には分解しにくい浮遊粒子(ダスト)を予め除去することができ、有害ガス等の有害物質を光触媒の作用で分解・除去する効率を好適に高めることができる。また、このロールフィルタ装置40では、ロール状のフィルタエレメント41を徐々に繰り出して新鮮な部分を用いることによって通気抵抗の変動が少ない安定的な状態でダストの除去を行うことができるため、浄化効果の安定化に寄与できる。
【0041】
また、32aは入口チャンバーであり、空気入口31から導入されてロールフィルタ装置40を通過した汚染空気をフィルタチャンバー20へ送る入口通気部32を形成するように奥行き方向の前面及び後面に通気開口を備えるボックス状に設けられている。その前面の通気開口がロールフィルタ装置40のチャンバーに連通されるように接続されており、その後面の通気開口が最も手前のチャンバー単体20aの前面の通気開口と接続され、汚染空気が通気するように吸入側の通気空間33へ連通されている。
【0042】
さらに、36aは出口チャンバーであり、フィルタチャンバー20から排出された浄化空気を合流させて空気出口37へ排出させるための出口通気部36を形成するようにボックス状に設けられている。その出口通気部36へ浄化排出側の通気空間35a、35bが連通するように、最後段のチャンバー単体20aの後面の前記通気空間35a、35bにかかる通気開口が、出口チャンバー36aの前面に設けられた通気開口に接続されている。
【0043】
なお、50は制御盤であり、空気出口37に接続される送風機による風量の調整について及び光源カートリッジ2についてなどの本装置運転の制御を行うために設けられている。なお、本形態例は、送風機によって汚染空気を吸引する吸気型になっているが、インラインとして送風ダクトに接続する形態に組み込むなど、取り付け形態は適宜選択的に設定できる。
また、80はメンテナンススペースであり、フィルタユニット10を交換する作業などのための作業空間になっている。
また、82はベース部であり、チャンバー単体20aが載置されることで設置される台座状の基礎になっている。
【0044】
次に、添付図面の図7〜12には、本発明に係る光触媒を用いた汚染空気の浄化装置の第2の形態例を示してある。なお、第1の形態例の構成に相当するものには、同一の符号を付して説明を省略する。
この第2の形態例では、第1の形態例と同様のフィルタチャンバー20がユニット化されることで構成されたチャンバー単体20aの複数が、上下方向にも積み重ねられて構成されている。
【0045】
これによれば、平面スペースを有効に活用でき、汚染空気の処理風量を増大できる。第2の形態例は、第1の形態例に比較して倍の処理風量とすることができる。
なお、81はメンテナンスステップであり、チャンバー単体20aが二階建て形態に上下に重ねられて構築されているため、上段のチャンバー単体20aについて保守管理をするための足場になっている。
【0046】
次に、フィルタユニット10の形態例について、図1などの記載に基づいて詳細に説明する。
本形態例のフィルタユニット10は、光触媒が担持されたパネル状のフィルタカートリッジ1と、その光触媒を作用させる光源カートリッジ2とが交互に配されて複数段(図1では二段)に構成されている。すなわち、一つのフィルタカートリッジ1と一つの光源カートリッジ2とによって一つのフィルタセットが構成され、そのフィルタセットが二段に配された構成になっている。
【0047】
この形態例では、フィルタカートリッジ1が二段に配され、その二段のフィルタカートリッジ1、1の間に第二段目の光源カートリッジ2として複数の紫外線ランプが配されて構成されると共に、汚染空気の吸入側となる第一段目のフィルタカートリッジ1の吸入面に対面するように第一段目の光源カートリッジ2が配されて構成されている。
これによれば、第二段目の光源カートリッジ2の光が、第一段目のフィルタカートリッジ1の裏面側と第二段目のフィルタカートリッジ1の表面側の二面に効率よく照射されることになり、有害ガスなどの汚染物質を効率よく分解することができ、汚染空気を効率よく浄化することができる。
【0048】
さらに、本形態例では、上記の第一段目の光源カートリッジ2の前段に、フィルタカートリッジ1と光源カートリッジ2とから構成されるフィルタセットを増設することができるように、フィルタの増設スペース5が設けられている。このようにフィルタの増設スペース5にフィルタを増設することで、多段のフィルタセットによって汚染空気が繰返し浄化されることになり、汚染空気の浄化性能をより向上できる。
【0049】
以上に説明した光触媒を用いた汚染空気の浄化装置によれば、ゴミ処理場などの廃棄物処理場の汚染空気を清浄化する装置として好適に用いることができる。特に、ゴミ処理場などで発生する悪臭を効率よく除去することができる。そして、従来の活性炭を用いた吸着フィルタに比べて、メンテナンスを格段に容易に行うことができ、ランニングコストを大幅に低減できる。また、変圧器(トランス)の解体する廃棄物処理場で発生するPCBの分解除去についても同様に効果的に行うことができる。なお、汚染物質とは、悪臭、ダイオキシンやPCBに限定されず、浮遊菌、ウィルス、シックハウス、タバコの煙などを含み、本発明によればこれらを適切に浄化できる。
【0050】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0051】
1 フィルタカートリッジ
2 光源カートリッジ
5 フィルタユニットの増設スペース
10 フィルタユニット
20 フィルタチャンバー
20a チャンバー単体
21 点検扉
22 点検口
31 空気入口
32 入口通気部
32a 入口チャンバー
33 中間空間(吸入側の通気空間)
35a 一方側空間(浄化排出側の通気空間)
35b 他方側空間(浄化排出側の通気空間)
36 出口通気部
36a 出口チャンバー
37 空気出口
40 ロールフィルタ装置
41 フィルタエレメント
50 制御盤
60 汚染空気
70 浄化空気
80 メンテナンススペース
81 メンテナンス用ステップ
82 ベース部
90 汚染物質の排出方向
図1
図2
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