(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147039
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】大型鋼板セルの組立工法および大型鋼板セル
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
E02B3/04
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-54476(P2013-54476)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-181440(P2014-181440A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 忠明
(72)【発明者】
【氏名】中西 文雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 成行
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】衣川 美沙
(72)【発明者】
【氏名】平野 辰昇
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−023514(JP,A)
【文献】
特開2011−012475(JP,A)
【文献】
実開昭58−033491(JP,U)
【文献】
特開昭58−035074(JP,A)
【文献】
特開昭59−039477(JP,A)
【文献】
特公昭47−017065(JP,B1)
【文献】
特開2010−184244(JP,A)
【文献】
米国特許第06282863(US,B1)
【文献】
特開平11−036231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04−3/14
E02D 5/00−5/20
B65D 88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板アークにより、外面にセル軸心方向に沿って取り付けられたアーク継手を介して、互いに連結される大型鋼板セルの組立工法であって、
長尺鋼板を略鋼板セル高さに相当する長さでかつ一定幅の複数のブロックプレートを形成する工程と、
所定の前記ブロックプレートの外面に、前記アーク継手をセル軸心方向に沿って溶接して連結部ブロックプレートを形成する工程と、
前記連結部ブロックプレートを含む複数枚の前記ブロックプレート同士、または複数枚の前記ブロックプレート同士を作業定盤上に倒伏姿勢で配置して、長さ方向に沿うセル軸心方向縁部を互いに溶接しセルブロックを形成する工程と、
前記セルブロックを曲台上に載せて湾曲させて湾曲状セルブロックを形成する工程と、
複数枚の湾曲状セルブロックを順次起立させてセル周方向に隣接配置し、隣接するセルブロックのセル軸心方向に沿う縁部を互いに溶接して円筒状の鋼板セルを形成する工程と、を順次行い、
前記セルブロックを形成する工程は、前記セル軸心方向縁部を外面溶接した後、セルブロックを反転して前記セル軸心方向縁部を内面溶接する反転一回法により施工する
ことを特徴とする大型鋼板セルの組立工法。
【請求項2】
鋼板アークにより、外面にセル軸心方向に沿って取り付けられたアーク継手を介して、互いに連結される大型鋼板セルの組立工法であって、
一定幅の長尺鋼板を略鋼板セル高さで切断してブロックプレートを形成する作業と、ブロックプレートのうち、所定のブロックプレートの外面に前記アーク継手をセル軸心方向に取り付けて連結部ブロックプレートに形成する作業を、作業ヤードに隣接する隣接作業ヤードまたは当該作業ヤードから離れた別途工場で行い、
次に前記作業ヤードで、前記連結部ブロックプレートを含む複数枚の前記ブロックプレート同士、または複数枚の前記ブロックプレート同士を作業定盤上に倒伏姿勢で配置して、長さ方向に沿うセル軸心方向縁部を互いに溶接しセルブロックを形成する作業を、前記セル軸心方向縁部を外面溶接した後、当該セルブロックを反転して前記セル軸心方向縁部を内面溶接する反転一回法により施工し、
さらに前記作業ヤードで、曲台上に載せて湾曲された前記セルブロックを、周方向に隣接するように起立配置して、これらセルブロックのセル軸心方向に沿う縁部を溶接して筒状に形成する
ことを特徴とする大型鋼板セルの組立工法。
【請求項3】
請求項1または2記載の鋼板セルの組立工法により製造された大型鋼板セルであって、
円筒状の鋼板セルの外面に、軸心方向の複数の縦溶接線を有し、前記縦溶接線に交差する周方向の横溶接線を有しない
ことを特徴とする大型鋼板セル。
【請求項4】
鋼板ブロックの幅は、
ブロックプレート幅の整数倍から、整数倍−(3/5)×ブロックプレート幅の範囲である
ことを特徴とする請求項3記載の大型鋼板セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底や海岸、岸壁、河川敷などに一定間隔で打設または設置し、連結材(鋼板アーク)により互いに連結されるとともに、中込め材が充填されることにより、護岸や防波堤などの港湾、河川、海洋構造物を構築する大型鋼板セルの組立工法およびこの組立工法により形成された大型鋼板セルに関する。
【背景技術】
【0002】
大型の鋼板セルを組み立てるものとして、たとえば特許文献1に開示されるように、周方向に均等幅で分割された鋼板ブロックを円筒形に組み立てるものが開示されている。この従来の組立工法では、まず鋼板を、鋼板セルの周方向に沿う均等な分割幅に対応する周方向の長さで切断する。これら複数の鋼板を、周方向に沿う横縁部が接するように並べて溶接して、複数のセルブロック(以下、横割り型という)を形成する。そしてセルブロックの内面にセル軸心方向に沿う縦リブを取り付けた後、このセルブロックを、曲台に載せて湾曲させ、さらに周方向に沿う横リブを取り付ける。これら複数の湾曲状セルブロックを起立させて周方向に配置し、セルブロックをセル軸心方向の縁部同士を溶接して円筒状に組み立てる。
【0003】
ここで大型鋼板セルは、直径および高さが10m以上のものをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−35074
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、大型鋼板セルには、厚みが8〜22mm程度の圧延鋼板が使用される。この厚みの鋼板は、溶接する際に十分な溶け込みが要求されるため、突き合わせた鋼板を外面と内面から両面溶接している。また鋼板セルは、現場設置後に、一対の鋼板アークにより隣接する鋼板セルが連結されるため、鋼板セルの外面に、鋼板アークを連結するためのアーク継手がセル軸心方向に溶接される。
【0006】
図7に示すように、鋼板セルSCの組立に際して、溶接歪みの低減は重要な課題であり、アーク継手AJと、セルブロックTBにおける鋼板Tの溶接線Whは、互いに交差することから、この横割り型のセルブロックTBの組立作業では、外面溶接と内面溶接を完了した後、改めてセルブロックTBの外面にアーク継手AJを取り付ける必要がある。したがって、鋼板セルSCの組立に際して、横割り型のセルブロックTBは、
図8に示すように、反転二回法が採用される。
【0007】
すなわち、
図8(a)に示すように、所定長さに切断された鋼板Tを、上下縁部が接するように作業定盤(図示せず)上に配置し、上下縁部同士を
内面溶接Whoして鋼板Tを仮接合する。次いで、
図8(b)に示すように、仮接合されたセルブロックTBを反転
(1回目)させて、作業定盤上に倒伏姿勢で配置し、上下縁部を
外面溶接WhiしてセルブロックTBを形成する。さらに、
図8(c)に示すように、
セルブロックTBの外面に、アーク継手AJをセル軸心方向に溶接する。次いで、
図8(d)に示すように、
セルブロックTBを反転(2回目)させ、セルブロックTBの内面にセル軸心方向に沿って複数本の縦リブVRを溶接する。さらに
図8(e)に示すように、このセルブロックTBを曲台ABに載せて湾曲させ、内面に横リブHRを周方向に沿って溶接する。さらに、
図8(f)(g)に示すように、各セルブロックTBを吊り上げて組台上に起立させ、円筒状に組み立てる。
【0008】
上記従来の鋼板セルの組立方法では、アーク継手AJとブロックプレートTBの接合部が交差状となる。このため、溶接歪みを無くすために、ブロックプレートの接合作業中に、アーク継手AJの接合が実施できない。これを解決するために、セルブロックTBの反転を
2回行っている。このようにセルブロック
の反転回数が多く、溶接作業に要する時間が長いという問題があった。
【0009】
本発明は、セルブロックの接合における反転回数を少なくして工期を短縮でき、コストを低減できる大型鋼板セルの組立工法および大型鋼板セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、
鋼板アークにより、外面にセル軸心方向に沿って取り付けられたアーク継手を介して、互いに連結される大型鋼板セルの組立工法であって、
長尺鋼板を略鋼板セル高さに相当する長さでかつ一定幅の複数のブロックプレートを形成する工程と、
所定の前記ブロックプレートの外面に、前記アーク継手をセル軸心方向に沿って溶接して連結部ブロックプレートを形成する工程と、
前記連結部ブロックプレートを含む複数枚の前記ブロックプレート同士、または複数枚の前記ブロックプレート同士を作業定盤上に倒伏姿勢で配置して、長さ方向に沿うセル軸心方向縁部を互いに溶接しセルブロックを形成する工程と、
前記セルブロックを曲台上に載せて湾曲させて湾曲状セルブロックを形成する工程と、
複数枚の湾曲状セルブロックを順次起立させてセル周方向に隣接配置し、隣接するセルブロックのセル軸心方向に沿う縁部を互いに溶接して円筒状の鋼板セルを形成する工程と、を順次行い、
前記セルブロックを形成する工程は、前記セル軸心方向縁部を外面溶接した後、セルブロックを反転して前記セル軸心方向縁部を内面溶接する反転一回法により施工することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、
鋼板アークにより、外面にセル軸心方向に沿って取り付けられたアーク継手を介して、互いに連結される大型鋼板セルの組立工法であって、
一定幅の長尺鋼板を略鋼板セル高さで切断してブロックプレートを形成する作業と、ブロックプレートのうち、所定のブロックプレートの外面に前記アーク継手をセル軸心方向に取り付けて連結部ブロックプレートに形成する作業を、
作業ヤードに隣接する隣接作業ヤードまたは当該作業ヤードから離れた別途工場で行い、
次に
前記作業ヤードで、前記連結部ブロックプレートを含む複数枚の前記ブロックプレート同士、または複数枚の前記ブロックプレート同士を作業定盤上に倒伏姿勢で配置して、長さ方向に沿うセル軸心方向縁部を互いに溶接しセルブロックを形成する作業を、前記セル軸心方向縁部を外面溶接した後、当該セルブロックを反転して前記セル軸心方向縁部を内面溶接する反転一回法により施工し、
さらに
前記作業ヤードで、曲台上に載せて湾曲された前記セルブロックを、周方向に隣接するように起立配置して、これらセルブロックのセル軸心方向に沿う縁部を溶接して筒状に形成することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、
請求項1または2記載の鋼板セルの組立工法により製造された鋼板セルであって、
円筒状の鋼板セルの外面に、軸心方向の複数の縦溶接線を有し、前記縦溶接線に交差する周方向の横溶接線を有しないことを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の
構成において、
鋼板ブロックの幅は、ブロックプレート幅の整数倍から、整数倍−(3/5)×ブロックプレート幅の範囲であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および3記載の発明によれば、セルブロックを、複数のブロックプレートのセル軸心方向縁部同士を接合する縦割り型とすることにより、ブロックプレートの溶接部となるセル軸心方向縁部と、アーク継手の溶接部とが交差することがないので、ブロックプレートの外面溶接時に、同時にアーク継手の溶接を行うことができる。これにより、縦割り型のセルブロックの接合を、反転一回法で行うことができる。したがって、従来の横割り型のセルブロックに比較して、作業時間を大幅に削減することができ、コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、鋼板の切断と、アーク継手の取付作業を、当該作業ヤードに隣接する隣接ヤードまたは当該作業ヤードから離れた別途工場で行うことで、作業ヤードで行う溶接作業時間を大幅に短縮することができ、コストの低減を図ることができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、セルブロックの幅を、ブロックプレート幅の整数倍から当該整数倍−(3/5)×鋼板幅の範囲とすることにより、ブロックプレートの溶接線の長さを削減することができて作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る鋼板セルの実施例1を示す設置状態の全体斜視図である。
【
図2】(a)および(b)は鋼板セルと鋼板アークの接続部を示し、(a)は鋼板アークの拡大平面図、(b)はアーク継手を示す拡大平面図である。
【
図3】(a)および(b)は本発明に係る縦割り型の鋼板セルを示し、(a)は斜視図、(b)は溶接線およびアーク継手の配置を示す展開図である。
【
図4】(a)〜(f)は本発明に係る鋼板セルの組立工法を示し、(a)は反転一回法によるセルブロックの外面溶接作業(アーク継手溶接作業)を示す斜視図、(b)は反転一回法によるセルブロックの内面溶接作業を示す斜視図、(c)はセルブロック内面への縦リブ溶接作業を示す斜視図、(d)は曲台によるセルブロックの曲げ作業および内面への横リブ溶接作業を示す斜視図、(e)は鋼板セルの組立作業、(f)は鋼板セルの完成状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)および(b)は溶接線を説明するセルブロックの平面図で、(a)は本発明の縦割り型、(b)は従来の横割り型を示す。
【
図6】セルブロックにおける縦割り型と横割り型の溶接線長の差を示す図表で、縦軸は鋼板セルの高さ、横軸はセルブロックの幅を示す。
【
図7】(a)および(b)は従来の横割り型の鋼板セルを示し、(a)は斜視図、(b)は溶接線およびアーク継手の配置を示す展開図である。
【
図8】(a)〜(g)は従来の鋼板セルの組立工法を示し、(a)は反転二回法によるセルブロックの
内面溶接作業を示す斜視図、(b)は反転二回法によるセルブロックの
外面溶接作業を示す斜視図、(c)は反転二回法によるセルブロック内面への縦リブ溶接作業を示す斜視図、(d)は反転二回法によるセルブロック外面へのアーク継手溶接作業を示す斜視図、(e)は曲台によるセルブロックの曲げ作業および内面への横リブ溶接作業を示す斜視図、(f)は鋼板セルの組立作業を示す斜視図、(g)は鋼板セルの完成状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る大型鋼板セルの組立工法および大型鋼板セルを、
図1〜
図6を参照して説明する。
図1および
図2に示すように、鋼板セル11は、海岸や河川敷などに地中に打設したり、基礎を介して設置して、一定間隔ごとに立設配置される。立設設置された鋼板セル11間には、前後一対の弧状鋼板からなる鋼板アーク12がアーク継手13を介して接続される。そして鋼板セル11および鋼板アーク12内に、土砂などの中込め材が充填される。これら鋼板セル11および鋼板アーク12は、たとえば護岸壁や海洋構造物として埋め立てなどに供されるものである。
【0019】
[セルブロック]
図3に示すように、本発明に係る大型鋼板セルの組立工法は、圧延鋼板を略鋼板セル高さ:Hで切断するとともに、一定幅:Wbで切断して、ブロックプレート21,21Aを形成する。そして複数のブロックプレート21,21Aを並べて長尺方向に沿う縦縁部(セル軸心方向縁部)21a同士を溶接し、複数枚のセルブロック(以下、縦割り型という)22を形成する。これらセルブロック22を円弧状に曲げた後、起立させて周方向に並べ、隣接するセルブロック22の側縁部22a(セル軸心方向に沿う縁部)を溶接して円筒形に組み立てる。この鋼板セル11の外面に視認できる溶接線は、縦縁部21aの溶接線と、側縁部22aの溶接線で、すべてセル軸心に平行な溶接線Wvである。
【0020】
[セルブロックの溶接線長の検討]
ここで、従来の
図7に示す横割り型のセルブロックTBを使用して鋼板セルSCを組み立てる場合の溶接線Whの長さと、本発明の縦割り型のセルブロック22を使用して鋼板セル11を組み立てる場合の溶接線Wvの長さとを比較検討する。
【0021】
図3,
図5,
図7に示すように、同一直径:D(D=B×n/π、B:セルブロックの幅、nは分割数)で、同一高さ:Hの鋼板セルSC,11を形成する場合、縦:H・横:Bが同一のセルブロック22,TBを使用すると、セルブロック22,TBをそれぞれ組み立てる時にセルブロック22,TB同士を溶接する溶接線の長さの合計は、互いに同一である。このため、鋼板セル11,SC全体を溶接する時の溶接線の長さを比較する場合、単純に1枚のセルブロック22,TBにおけるブロックプレート(鋼板)21,Tのブロック溶接線WhまたはWvの長さの合計を比較すればよい。
【0022】
図6は、幅:Wb(Wb≦5m、5mは圧延鋼板の幅限界)および高さ:H(H≦25m、25mは圧延鋼板の長さの製造限界)のブロックプレート(鋼板)21,Tにより、幅:B=10〜18mの範囲、高さ:H=8〜25mの範囲で、縦割り型のセルブロック22および横割り型TBをそれぞれ形成した場合、縦割り型のセルブロック22のブロック溶接線:Wvの長さの合計から、横割り型のセルブロックTBのブロック溶接線:Whの長さの合計を減算した表である。
図6において、図5(a)に示す縦割り型では、圧延鋼板の幅Bbを5m以下の均等幅とし、溶接して鋼板セルブロック22を形成したものである。たとえばブロック幅B=10mの場合、幅Bb=5mの圧延鋼板×2枚を溶接して、溶接線の数は1本である。ここで、ブロック幅Bが11〜15mでは、分割数(圧延鋼板の使用枚数)が3枚で、溶接線の数は2本、ブロック幅Bが16〜18mでは、縦分割数(圧延鋼板の使用枚数)が4枚で、溶接線の数は3本である。
また図5(b)に示す横割り型では、圧延鋼板の幅Bbを5m以下の均等幅とし、溶接して鋼板セルブロック22を形成したものである。たとえばセル高さH=10mの場合、幅Bb=5mの圧延鋼板×2枚を溶接して、溶接線の数は1本である。ここで、セル高さH=8〜10mでは、分割数(圧延鋼板の使用枚数)が2枚で、溶接線の数は1本、セル高さH=11〜15mでは、分割数(圧延鋼板の使用枚数)が3枚で、溶接線の数は2本、セル高さH=16〜20mでは、分割数(圧延鋼板の使用枚数)が4枚で、溶接線の数は3本、セル高さH=21〜25mでは、分割数(圧延鋼板の使用枚数)が5枚で、溶接線の数は4本となる。
この表内の数値が高い(+)であるほど、縦割り型のセルブロックTBの溶接線が、横割り型のセルブロックTBの溶接線より短くなる優位性を示している。ここで、右上部分の濃色部分は、セル高さ:H/ブロック幅:Bが0.8以下で、鋼板セルとしての実績がないために、今回の検討から除外している。
【0023】
図6によれば、横割り型から縦割り型に設計変更した場合、ブロックプレート21の幅:Wb(ここでは5m)の整数倍(ブロック幅B=10m,15m)のセルブロック22が、最も効率よく溶接線Wvの長さを削減でき、縦割り型が優位であることがわかる。またセルブロックTB,22の幅が、ブロックプレート21,21A,Tの幅:Wbの整数倍未満で、(3/5×Wb)までの範囲(ここではブロック幅B=13m以上、15m未満)であれば、溶接線Wvの長さが十分に削減されることが認められる。
【0024】
すなわち、本発明に係る縦割り型の鋼板セル11では、ブロックプレート21の寸法に対して、鋼板セル11の直径:Dと高さ:Hから決定されるセルブロック22の縦・横寸法を、従来の横割り型の鋼板セルSCと比較することにより、縦割り型を選択するか、または横割り型を選択するかで、鋼板セル11,SC全体の溶接線Wv,Whの長さを十分に短縮できる。
【0025】
以上のように、本発明の縦割り型の鋼板セル11に関して、セルブロック22の幅Bが、ブロックプレート21の幅:Wbの整数倍か、またはその整数倍未満で、(3/5×Wb)までの範囲において、鋼板セル11全体の溶接線Wvの長さを十分に短縮することができる。
【0026】
[組立工法]
以下、本発明の実施例1を
図4に基づいて説明する。
この鋼板セル11は、長尺鋼板を、鋼板セル11の略高さ:Hで切断して、幅:Wbのブロックプレート21を形成する。作業ヤードにおいて、3枚のブロックプレート21で、1枚のセルブロック22を形成して湾曲させ、4枚のセルブロック22を円筒状に形成して鋼板セル11を組み立てるものである。
【0027】
以下、鋼板セル11の組立方法を、
図4(a)〜(f)を参照して説明する。
(前処理工程)
圧延鋼板をセル高さに略同一の長さ:Hに切断し、所定幅:Wbに形成して、ブロックプレート21を形成する。また3枚のブロックプレート21のうち、1枚のブロックプレート21にアーク継手13を溶接して、接続部ブロックプレート21Aを形成しておく。アーク継手13は、
図2(b)に示すように、L形断面の一対の継手材13aがブロックプレート21の外面に、セル軸心方向に沿って
開先溶接される。この時、一対の継手材13aの溶接部間のブロックプレート21が下方に膨らむ溶接歪みが生じる。このため、溶接前に予めブロックプレート21を上方に膨らませておく逆歪み法を用いて、溶接歪みが生じないようにする。
【0028】
なお、この前処理工程は、ブロックプレート21がトラックなどの輸送手段により輸送可能な大きさの場合には、予め、当該作業ヤードから離れた工場において実施してもよい。また、鋼板セルを組み立てる作業ヤードの周辺部に、隣接して作業可能な隣接作業ヤードがあり、クレーンや台車などの輸送手段を用いて、隣接作業ヤードから当該作業ヤードにブロックプレート21が移送可能である場合には、隣接作業ヤードで前処理工程を実施してもよい。
【0029】
(第1工程、反転一回法)
図4(a)に示すように、作業定盤(図示せず)上に、アーク継手13を取り付けられた外面が上面となるように、1枚の連結部ブロックプレート21Aを配置し、この連結部ブロックプレート21Aを挟んで縦縁部21aが接するように、2枚のブロックプレート21を配置する。そして、これらブロックプレート21,21Aの縦縁部21aを外面溶接Woして、3枚のブロックプレート21,21Aを仮付けする。
【0030】
なお、この第1工程で、前処理工程の一部を行うこともできる。すなわち、作業定盤上に3枚のブロックプレート21を並べ、外面溶接Wvoの前、または外面溶接Wvoの後または手前に、所定のブロックプレート21に、アーク継手13を溶接して、これを連結部ブロックプレート21Aとすることもできる。
【0031】
(第2工程、続反転一回法)
図4(b)に示すように、一体化されたセルブロック22を吊り上げて反転し、作業定盤上に内面を表として倒伏姿勢で配置する。そして先の溶接線Wvoに沿って裏面溶接Wviを行い、セルブロック22を完成させる。さらに
図4(c)に示すように、セルブロック22の内面に、複数の縦リブ23をセル軸心方向に沿って溶接する。
【0032】
(第3工程、曲げ)
クレーンを用いてセルブロック22を吊り上げて曲台AB上に載せ、セルブロック22をセル軸心周りに湾曲させる。そして、セルブロック22の内面に、横リブ24を周方向に取り付けるとともに、吊下具や上部補強鋼板、下部補強鋼板などの必要な部材を取り付ける。
【0033】
(第4工程、組上げ)
クレーンを用いてセルブロック22を吊り上げ、組台(図示せず)上に起立姿勢で配置し、さらに隣接接合するセルブロック22を組台上に起立姿勢で配置する。そして、隣接するセルブロック22の側縁部22aを、セル軸心方向に沿って外面溶接および内面溶接する。残りの2枚のセルブロック22を順次、起立姿勢で組台上に運び、側縁部22aに沿って溶接して、円筒状に組み立てる。
【0034】
上記実施例によれば、セルブロック22を、略鋼板セル高さ:Hで切断して形成された複数のブロックプレート21が、互いに隣接する縦縁部21a同士で接合した縦割り型のセルブロック22としたので、ブロックプレート21を溶接する縦縁部21aと、アーク継手13の溶接部とが交差することがない。したがって、ブロックプレート21の外面溶接時に、同時にアーク継手13の溶接を行うことができる。これにより、セルブロック22の溶接作業を反転一回法で行うことができ、従来の横割り型のセルブロックTBに比較して、作業時間を大幅に削減することができ、コストの低減を図ることができる。
【0035】
また前処理工程の鋼板の切断作業と、ブロックプレート21へのアーク継手13の取付作業とを、隣接作業ヤードや別途工場で行うことにより、セルブロック22の溶接作業を反転一回法で行うことができ、作業ヤードで行う組立作業を大幅に短縮することができる。
【0036】
さらに、セルブロック22の幅Bを、ブロックプレート21の幅Wbの整数倍から当該整数倍−(3/5)×Wbの範囲とすることにより、ブロックプレート21の溶接線長を大幅に削減することができて作業時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0037】
H 鋼板セル高さ
B セルブロック幅
Wb ブロックプレート幅
Wv 溶接線
11 鋼板セル
12 鋼板アーク
13 アーク継手
21 ブロックプレート
21A 連結部ブロックプレート
21a 縦縁部(セル軸心方向縁部)
22 セルブロック
22a 側縁部(セル軸心方向に沿う縁部)
23 縦リブ
24 横リブ