(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された太陽熱集熱器においても以下のような問題が生じる。
【0008】
上記特許文献1の太陽熱集熱器では、集熱パネルを木ネジ等を用いて屋根の垂木に固定する方法がとられている。このような固定方法では、十分な固定強度を得るための一枚のパネルに対して多くのネジを必要とする。このため、固定されているパネルを取り外す際に多くの木ネジを外す必要があり、メンテナンス性が悪いといった問題がある。
【0009】
また、瓦と集熱器本体とが瓦重ねされているため、取り外しを必要とするパネル上に瓦または他のパネルが重ねられている場合には、その重ねられている瓦または他のパネルをも取り外す必要が生じる。
【0010】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、平板瓦型の集熱パネルであって、特にメンテナンス性を向上させた集熱パネル及び集熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る集熱パネルは、上記の課題を解決するために、平板瓦型の集熱パネルであって、その内部に熱媒体の流路となる流路管を有するパネル本体と、前記パネル本体を支持することが可能なパネル支持部と、を有しており、
前記パネル本体および前記パネル支持部の長手方向は、該集熱パネルが屋根面に葺かれた時に屋根面の流れ方向と直交する方向であり、かつ、前記パネル本体の長手方向の長さは、前記パネル支持部の前記長手方向の長さよりも短くされており、前記パネル本体は前記パネル支持部に対してスライド係合機構によって取付可能であり、前記スライド係合機構は、
前記パネル本体に設けられるパネル本体側係合部と、前記パネル支持部に設けられるパネル支持部側係合部とからなり、前記パネル本体を前記パネル支持部に対して
前記長手方向にスライド移動させることで、
前記パネル本体側係合部と前記パネル支持部側係合部とが係合して前記パネル本体が前記パネル支持部に連結され
た状態である係合状態と、
前記パネル本体側係合部と前記パネル支持部側係合部との係合が外れて前記パネル本体と前記パネル支持部とが分離可能となる
状態である非係合状態とを、取り得る
ものであり、前記係合状態では、前記パネル支持部に対して屋根の軒側に前記パネル本体が支持され、前記非係合状態では、前記パネル支持部に対して前記パネル本体を屋根の軒側にずらすことで前記パネル本体を前記パネル支持部から分離可能であることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、パネル本体はパネル支持部に対してスライド係合機構によって取付可能であり、集熱パネルのメンテナンス時には、スライド係合機構を非係合状態とすることによってパネル本体のみを取り外すことができる。すなわち、パネル支持部は屋根に取り付けたままとすることができるため、パネル支持部が固定用ビスを用いて屋根下地材に固定されていても、この固定用ビスを外す必要がなく、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0013】
また、パネル本体がパネル支持部に対してスライド係合機構によって取り付けられることで、パネル本体の前面(軒側から見える見付け面)に脱着用のビス等を設ける必要がなく、デザイン性も優れたものとなる。
【0014】
また、上記集熱パネルでは、当該集熱パネルを固定用ビスを用いて屋根下地材に固定するための固定用ビス穴を有しており、前記固定用ビス穴は、前記パネル支持部にのみ設けられていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、集熱パネルのメンテナンス時に、集熱パネルを屋根下地材に固定するための固定用ビスを外す必要がなく、メンテナンス作業が大幅に簡略化される。
【0016】
また、上記集熱パネルでは、前記スライド係合機構を前記係合状態で固定することが可能なロック機構を有していることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、ロック機構によってパネル本体をパネル支持部に対して係合状態で固定することが可能なため、特に、集熱パネルを屋根に組み付ける際の施工が容易となる。
【0018】
本発明に係る太陽熱集熱器は、上記の課題を解決するために、上記記載の集熱パネルを、複数枚接続して構成されることを特徴としている。これにより、上記記載の集熱パネルと同様の効果を得ることができる。
【0019】
また、上記太陽熱集熱器では、屋根の流れ方向に沿って隣接する集熱パネルの間では、棟側の集熱パネルの一部が、軒側の集熱パネルのパネル支持部にのみ重なるように瓦重ねされていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、集熱パネルのメンテナンス時において、棟側の集熱パネルが邪魔になることなく、軒側の集熱パネルのパネル本体を取り外すことができる。
【0021】
また、上記太陽熱集熱器では、屋根の流れ方向と直交する方向に沿って隣接する集熱パネルの間では、パネル本体の隙間を覆うカバー部材が配置されていることが好ましい。
【0022】
集熱パネルにおいては、隣接するパネル間で流路管の接続作業が容易に行えるように、パネル本体の長手方向(屋根面の流れ方向と直交する方向)の長さは、パネル支持の長さよりも短くされている。このため、隣接するパネル本体の間には隙間が生じる。上記の構成によれば、この隙間がカバー部材によって覆われることで、太陽熱集熱器の美観を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の集熱パネルおよび太陽熱集熱器は、集熱パネルのメンテナンス時に、パネル本体のみを取り外すことができ、パネル支持部で使用される固定用ビスを外す必要がないため、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施の形態に係る集熱パネルの外観を示す斜視図であり、パネル本体とパネル支持部とが係合状態にある場合を示す。
【
図2】本実施の形態に係る集熱パネルの外観を示す斜視図であり、パネル本体とパネル支持部とが非係合状態にある場合を示す。
【
図3】本実施の形態に係る集熱パネルの外観を示す斜視図であり、パネル本体とパネル支持部とが分離状態にある場合を棟側から見た図である。
【
図4】本実施の形態に係る集熱パネルの外観を示す斜視図であり、パネル本体とパネル支持部とが分離状態にある場合を軒側から見た図である。
【
図5】本実施の形態に係る集熱パネルのスライド係合機構を示す拡大斜視図である。
【
図6】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図7】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図8】本実施の形態に係る太陽熱集熱器で使用される第1のアンダーラップ材を示す投影図である。
【
図9】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図10】本実施の形態に係る太陽熱集熱器で使用される軒側取付金具を示す投影図である。
【
図11】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図12】本実施の形態に係る集熱パネルであって、右端用パネルの外観を示す斜視図である。
【
図13】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図14】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図15】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図16】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図17】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図18】本実施の形態に係る太陽熱集熱器で使用される第2のアンダーラップ材を示す投影図である。
【
図19】本実施の形態に係る太陽熱集熱器で使用される第3のアンダーラップ材を示す投影図である。
【
図20】はぜ組みされた第2のアンダーラップ材及び第3のアンダーラップ材の状態を示す断面図である。
【
図21】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図22】本実施の形態に係る集熱パネルであって、標準型パネルの外観を示す斜視図である。
【
図23】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図24】(a)〜(c)は、集熱パネルの流路管の接続手順を示す斜視図である。
【
図25】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図26】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図27】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図28】本実施の形態に係る太陽熱集熱器で使用される第4のアンダーラップ材を示す投影図である。
【
図29】(a)〜(b)は、集熱パネルの流路管に集熱配管を接続する手順を示す斜視図である。
【
図30】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図31】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図32】本実施の形態に係る太陽熱集熱器で使用される棟側取付金具を示す投影図である。
【
図33】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図34】本実施の形態に係る太陽熱集熱器の施工手順の一状態を示す斜視図である。
【
図35】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図36】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図37】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図38】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図39】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図40】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図41】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図42】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す斜視図である。
【
図43】本実施の形態に係る太陽熱集熱器のメンテナンス時のパネル取外し手順の一状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
本発明の実施の形態に係る集熱パネルは、平板瓦型の集熱パネルであって、屋根上に瓦重ねして配列させることができるものである。
図1は、本実施の形態に係る集熱パネル100の外観を示す斜視図である。
【0027】
集熱パネル100は、大略的には、パネル本体110とパネル支持部120とを備えて構成されている。パネル本体110は、その内部に流路管111および集熱部(図示せず)を備えており、これらを覆うようにその上面に光透過部112を備えている。流路管111は、熱媒体の流路となるための部材であり、パネル本体110内部に2本設けられている。また、流路管111の端部は、パネル本体110の側面から外部に突出して配置されている。集熱部は太陽熱を熱媒体に集熱するための部材である。流路管111および集熱部からなる集熱機構は、従来の集熱パネルにおいても公知の構成であるため、ここでは詳細な説明を省略する。光透過部112は、太陽光を透過するとともに、パネル本体110の内部を保温する機能を有するように、強化ガラスによって形成されている。
【0028】
パネル支持部120は、集熱パネル100を屋根に固定支持するための部分であるとともに、パネル本体110を連結して支持することが可能である。また、集熱パネル100においては、隣接するパネル間で流路管111の接続作業が容易に行えるように、パネル本体110の長手方向(屋根面の流れ方向と直交する方向)の長さは、パネル支持部120の長さよりも短くされている。パネル本体110は、パネル支持部120に対してスライド係合機構によって取付可能である。このスライド係合機構により、パネル本体110はパネル支持部120に対してスライド移動させることができ、
図1に示す係合状態と
図2に示す非係合状態との2つの状態を取りうる。非係合状態からは、さらにパネル本体110をパネル支持部120から分離することが可能である(
図3,
図4参照)。また、スライド係合機構は、ロック機構によって上記係合状態でロックすることも可能である。
【0029】
スライド係合機構は、パネル本体110の係合突起部113(
図3参照)と、パネル支持部120の嵌合突起部121(
図4参照)とからなる。係合突起部113は、
図5に示すようにパネル本体110の背面(棟側を向いた面)に設けられた断面T字形状の突起部であり、パネル本体110の背面から立設して設けられた脚部113Aと、脚部113Aの棟側先端に設けられたフランジ部113Bとを有している。
【0030】
また、嵌合突起部121は、パネル支持部120の前面(軒側を向いた面)に設けられている。嵌合突起部121は、2つのL状突起からなり左右が開いた溝部を形成している。嵌合突起部121は、この溝部にパネル本体110の係合突起部113を挟み込んで支持する。スライド係合機構において、パネル本体110とパネル支持部120とを係合状態とするときには、係合突起部113のフランジ部113Bをパネル支持部120の前面の嵌合突起部121に重ならない位置で押し当てた状態(非係合状態)から、パネル本体110をスライドさせる。これにより、係合突起部113を嵌合突起部121にて挟持する状態、すなわち係合状態となる。係合突起部113と嵌合突起部121とは、同個数及び同ピッチにて複数形成されている。尚、本実施の形態中の説明において、右側および左側とは常に屋根の軒側から見ての方向であるとする。
【0031】
また、パネル本体110の背面(棟側を向いた面)下部とパネル支持部120の前面(軒側を向いた面)上部にはヒレがあり、嵌合時にパネル本体110を安定させる役目を担っている。
【0032】
パネル支持部120の前面には、雄ネジ部を有する係止ピン147(
図40参照)を挿入するためのネジ穴122(
図4参照)が2箇所(左右両端)に形成されており、上記ロック機構は、ネジ穴122及び係止ピン147によって構成される。パネル本体110およびパネル支持部120が係合状態にあり、かつ、ネジ穴122に係止ピン147が挿入されている場合には、パネル本体110のスライド移動が係止ピン147によって阻害され、非係合状態への移行が防止できるようになっている。
【0033】
これより、本実施の形態に係る太陽熱集熱器を屋根に組み付ける際の施工手順について
図6〜
図34を参照して説明する。太陽熱集熱器は、複数枚の集熱パネル100を屋根上に瓦重ねして配列させて形成される。また、隣接する集熱パネル100の間は、流路管111同士が配管継手等を介して接続される。
【0034】
以下の説明では、棟側の2列に集熱パネル100を配列し、棟側から3列目以降は太陽光発電パネル200を配列する例を示す。また、上記2列の集熱パネル100については、軒側の列を一列目、棟側の列を二列目とする。
図6は、屋根上に太陽光発電パネル200のみが設置され、集熱パネル100が配列されていない状態を示す斜視図である。また、
図6に示す状態では、屋根下地材の上に防火材と葺き材とを兼ねた鋼板130が敷かれ、その上に瓦桟131が設置されている。
【0035】
尚、
図6に示す鋼板130は、一列目の集熱パネル列に対応する箇所では、軒側の一部が屋根下地材より浮き上がり、太陽光発電パネル200の上にかぶさる傾斜面130aを形成している。これは、集熱パネル100間の隙間や、集熱パネル100と瓦210との間の隙間、およびその下に敷設されたアンダーラップ材の隙間より浸入した雨水を、傾斜面130aに沿って外部に排水させるためである。
【0036】
続いて、
図7に示すように、第1のアンダーラップ材132が設置される。
図8は、第1のアンダーラップ材132を示す投影図である。本実施の形態では、集熱パネル100は、屋根の軒側から見て右側から順に並べられるものとするが、最右端の集熱パネル100のさらに右側には、通常の瓦210が配置される。この瓦210を設置する際に、第1のアンダーラップ材132の一部を瓦210の下に配置する。この時、第1のアンダーラップ材132の曲げ立ち上げ面132A,132Bを瓦210および瓦桟131に当てて位置出しし、第1のアンダーラップ材132をビスで屋根下地材に固定する。
【0037】
続いて、
図9に示すように、鋼板130の上に軒側取付金具133の位置を所定のピッチでマーキングし、鋼板130の上に載置した軒側取付金具133を屋根下地材にビス止め固定する。
図10は、軒側取付金具133を示す投影図であり、軒側取付金具133は、主板133Aと、側板133Bと、フランジ部133Cとを有している。主板133Aは、集熱パネル100を載置し、支持する部分であり、平板形状を有する。側板133Bは、主板133Aの両側から下方に折り曲げれて形成されている。フランジ部133Cは、側板133Bの下端からさらに外側に折り曲げられて形成されており、軒側取付金具133をビス止めするためのビス穴を有している。また、軒側取付金具133は、一列目の集熱パネル列を取り付けるために使用される取付金具であり、フランジ部133Cは、当該列の鋼板130に対応した形状を有している。すなわち、鋼板130は、一列目の集熱パネル列に対応する箇所では、軒側の一部が屋根下地材より浮き上がるように屈曲した形状を有しており、フランジ部133Cは、鋼板130におけるこの屈曲面に沿うような形状とされている。
【0038】
続いて、
図11に示すように、集熱パネル100を屋根に仮置きする。この時の集熱パネル100は、パネル本体110とパネル支持部120とが係合状態(
図1参照)にあり、かつ、スライド係合機構がロックされている状態である。また、集熱パネル100の各列において、最も右側に配置される集熱パネル100は、
図12に示されるような右端用パネルとされる。右端用パネルでは、パネル本体110の右端から突出した2本の流路管111の端部がリターンホース134にて接続され、流路管111がU字型の流路を形成している。また、右端用パネルにおけるパネル本体110の左端から突出した2本の流路管111のそれぞれの先端は、集熱配管継手(オス)139Bとされている。
【0039】
集熱パネル100の仮置きでは、集熱パネル100の裏面を軒側取付金具133の主板133A上に載置し、集熱パネル100の裏面に取り付けられた止め金具(図示せず)を主板133Aの下縁部133A1(
図10参照)に係合させて、浮き上がりを防止する。その後、
図13に示すように、パネル本体110とパネル支持部120とが一体のままで、集熱パネル100の裏面の止め金具を軒側取付金具133の主板133Aに対して棟側に押さえつけた状態で右側にスライドさせて第1のアンダーラップ材132および瓦210に押し当てて位置決めする。そして、
図14に示すように、集熱パネル100を固定用ビス135にて瓦桟131と屋根下地材に固定する。尚、本実施の形態では、集熱パネル100を固定用ビス135にて屋根に固定するための固定用ビス穴は、パネル支持部120のみに設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、パネル本体110にも上記固定用ビス穴が設けられていても良い。但し、本発明においては、上記固定用ビス穴は、その全てがパネル支持部120に設けられることによって、メンテナンス時におけるパネル本体110の取り外しが容易となる。
【0040】
さらに、
図15に示すように、集熱パネル100と第1のアンダーラップ材132とがビス固定される。また、前述したように、集熱パネル100においては、パネル本体110の長手方向(屋根面の流れ方向と直交する方向)の長さがパネル支持部120の長さよりも短くされている(
図1,2参照)。このため、パネル本体110の右端とその右側に配置される瓦210との間には隙間が生じる。この隙間には、
図16に示すように、パネル端カバー136がかぶせられ、パネル端カバー136がパネル本体110に対してビス固定される。尚、パネル端カバー136は、パネル本体110およびパネル支持部120のそれぞれにビス固定されていてもよい。
【0041】
続いて、
図17に示すように、集熱パネル100の左側において、第2のアンダーラップ材137と第3のアンダーラップ材138とを、集熱パネル100および瓦桟131に押し当てて位置決めし、ビス固定する。
図18および
図19はそれぞれ、第2のアンダーラップ材137および第3のアンダーラップ材138を示す投影図である。この時、第2のアンダーラップ材137および第3のアンダーラップ材138は、
図20に示すように、ハゼ組みによって一体化されている。
【0042】
続いて、
図21に示すように、既に設置されている集熱パネル100のさらに左側に、次の集熱パネル100を屋根に仮置きする。この時の集熱パネル100は、パネル本体110とパネル支持部120とが係合状態(
図1参照)にあり、かつ、スライド係合機構がロックされている状態である。また、集熱パネル100の各列において、他の集熱パネル100の左側に隣接して配置される集熱パネル100は、
図22に示されるような標準型パネルとされる。標準型パネルでは、パネル本体110の右端から突出した2本の流路管111の端部同士は接続されていない。さらに、標準型パネルでは、パネル本体110の右端から突出した2本の流路管111のそれぞれに、集熱配管継手(メス)139Aが接続されている。集熱配管継手139Aは、流路管111に対して取り外し可能であるが、集熱パネル100の出荷時において既に取り付けられているものであってもよい。また、標準型パネルにおけるパネル本体110の左端から突出した2本の流路管111のそれぞれの先端は、集熱配管継手(オス)139Bとされている。
【0043】
標準型パネルの仮置きでも、右端用パネルの場合と同様に、集熱パネル100の裏面を軒側取付金具133の主板133A上に載置し、集熱パネル100の裏面に取り付けられた止め金具(図示せず)を主板133Aの下縁部133A1に係合させて、浮き上がりを防止する。その後、
図23に示すように、集熱パネル100を右側にスライドさせ、集熱配管継手(オス、メス)を嵌め込んで、隣接するパネル間で流路管111を接続するとともに、集熱パネル100を第2のアンダーラップ材137および第3のアンダーラップ材138に押し当てて位置決めする。
【0044】
この時、流路管111の接続は、
図24(a)〜
図24(b)に示すように、左側の集熱パネル100の集熱配管継手(メス)139Aを右側の集熱パネル100の集熱配管継手(オス)139Bに差し込む。さらに、
図24(c)に示すように、クイックファスナー139Cにて継手を固定する。また、集熱配管継手(オス、メス)139A,139Bの少なくとも一方は、流路管111に対して取り外し可能とする。ここでは、集熱配管継手(メス)139Aを取り外し可能とする。尚、
図24(a)〜
図24(c)に示す集熱配管継手は、流路管111を接続する方法の一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
隣接するパネル間で流路管111が接続され、さらに、新たに配置される左側の集熱パネル100が位置決めされると、
図25に示すように、左側の集熱パネル100を固定用ビス135にて瓦桟131と屋根下地材に固定する。尚、標準型パネルにおいても、集熱パネル100を固定用ビス135にて屋根に固定するためのビス穴は、パネル支持部120のみに設けられている。
【0046】
上述したように、パネル本体110の長手方向(屋根面の流れ方向と直交する方向)の長さは、パネル支持部120の長さよりも短くされている。このため、隣接して配置される2枚の集熱パネル100において、パネル本体110の間には隙間が生じる。この隙間には、
図26に示すように、パネルジョイントカバー140がかぶせられ、パネルジョイントカバー140がパネル本体110に対してビス固定される。尚、パネルジョイントカバー140は、パネル本体110およびパネル支持部120のそれぞれにビス固定されていてもよい。
【0047】
屋根面の流れ方向と直交する方向に3枚以上の集熱パネル100が配列される場合には、
図17〜
図26の処理を繰り返すことによって、3枚目以降の集熱パネル100が順次配列される。また、3枚目以降の集熱パネル100には、上述した標準型パネルが用いられる。
【0048】
こうして、最も左端の集熱パネル100までの配列が終了した後、一番左端のアンダーラップ材やカバー類の取付けを行う。すなわち、
図27に示すように、第4のアンダーラップ材141を最左端の集熱パネル100および瓦桟131に押し当てて位置決めし、棟側及び軒側の2か所をビス固定する。
図28は、第4のアンダーラップ材141を示す投影図である。
【0049】
その後、
図29(a),
図29(b)に示すように、最左端の集熱パネル100の左側側面から突出する流路管111に集熱配管142を接続し、クイックファスナー143にて固定する。集熱配管142は、例えば、図示しないポンプや熱交換器と接続される。これにより、本実施の形態に係る太陽熱集熱器では、ポンプにて流路管111内の熱媒体を強制循環させることができ、さらに熱交換器にて熱媒体から熱を取り出して給湯や暖房に用いることができる。
【0050】
最後に、
図30に示すように、最左端の集熱パネル100におけるパネル本体110の左側にパネル端カバー136がかぶせられ、パネル端カバー136がパネル本体110に対してビス固定される。
【0051】
上記手順にて一列目の集熱パネル100が配列されると、同様の手順を繰り返すことによって二列目の集熱パネル100が配列される。但し、二列目の集熱パネル100では、
図9に示した軒側取付金具133に代えて、
図31に示す棟側取付金具144が用いられる。
【0052】
図32は、棟側取付金具144を示す投影図であり、棟側取付金具144は、主板144Aと、側板144Bと、フランジ部144Cとを有している。主板144Aは、集熱パネル100を載置し、支持する部分であり、平板形状を有する。側板144Bは、主板144Aの両側から下方に折り曲げれて形成されている。フランジ部144Cは、側板144Bの下端からさらに外側に折り曲げられて形成されており、棟側取付金具144をビス止めするためのビス穴を有している。また、棟側取付金具144は、二列目の集熱パネル列を取り付けるために使用される取付金具であり、フランジ部144Cは当該列の鋼板130に対応して平坦な形状を有している。また、フランジ部144Cは、軒側の先端が、主板144Aの軒側端部よりも軒側に突出している。棟側取付金具144を屋根板に取り付ける場合には、フランジ部144Cの軒側先端を瓦桟131に接触させることで流れ方向の位置決めがなされる。
【0053】
棟側取付金具144が設置されると、
図33および
図34に示すように、集熱パネル100を右側から順に配置していくことによって、二列目の集熱パネル100が配列される。このとき、二列目の集熱パネル100は、一列目の集熱パネル100に対して一部が重なるように瓦重ねされる。また、二列目の集熱パネル100は、一列目の集熱パネル100のパネル支持部120にのみ重なり、パネル本体110には重ならない構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、後述する集熱パネル100のメンテナンス時において、二列目の集熱パネル100が邪魔になることなく、一列目の集熱パネル100のパネル本体110を取り外すことができる。
【0054】
本実施の形態に係る集熱パネル100を
図6に示す太陽光発電パネル200と併用する場合、集熱パネル100の流れ方向の幅は、太陽光発電パネル200の流れ方向の幅と同じにすることが好ましい。また、集熱パネル100の長手方向(流れ方向と直交する方向)における配列ピッチも、太陽光発電パネル200の配列ピッチと同じにすることが好ましい。このため、集熱パネル100では、パネル支持部120および前板カバー145の長手方向の長さは、太陽光発電パネル200の長手方向の長さと等しくされる。これにより、集熱パネル100と太陽光発電パネルとが、同じサイズで瓦重ねして設置でき、屋根の美観を向上させた太陽熱集熱器を実現できる。尚、前板カバー145は、パネル本体110の軒側の縁部を覆っているカバー部材であり、集熱パネル100の出荷時において既に取り付けられているものとする。このため、上述した太陽熱集熱器の組付け施工時において、前板カバー145の取り付け工程は存在しない。
【0055】
上記説明においては、棟側の2列に集熱パネル100を配列した例を示したが、軒側に集熱パネル100を配列する場合も、同様の施工手順となる。
【0056】
続いては、集熱パネル100のメンテナンス時の手順について説明する。
【0057】
本実施の形態に係る集熱パネル100では、パネルのメンテナンスを行う時、メンテナンス対象の集熱パネル100(以下、対象パネル)におけるパネル本体110のみを取り外してメンテナンスを行うことができる。パネル本体110の取り外し手順を以下に説明する。また、以下の説明は、対象パネルが、最も左側の集熱パネル100である場合を例示する。
【0058】
対象パネルのパネル本体110を取り外す場合、先ずは、
図35に示すように、対象パネルの右側のパネルジョイントカバー140、左側のパネル端カバー136、前方の前板カバー145(
図12,
図22参照)を固定しているビスを外し、これらのカバーを取り外す。さらに、対象パネルの右隣にある集熱パネルの前板カバー145も取り外す。
【0059】
続いて、
図36に示すように、対象パネルの左右にあるアンダーラップ材の軒側の固定ビスを外す。
【0060】
続いて、対象パネルに連結されている集熱配管の接続を外す。この時、対象パネルの右側で連結されている集熱配管については、
図37に示すように、2か所のクイックファスナーを外した後、集熱配管の4つのワンタッチバンド146を右側に移動させる(ウォータープライヤー等を使用)。また、対象パネルの左側で連結されている集熱配管については、
図38に示すように、集熱配管のクイックファスナーを2か所外す。そして、対象パネルの右側の集熱配管継手139Aを対象パネルの流路管111より外し、この集熱配管継手139Aを対象パネルの右側パネルの集熱配管継手139Bとの連結を外す。これにより、
図39に示すように、対象パネルの右側の集熱配管継手139Aが取り外される。
【0061】
続いて、
図40に示すように、第2のアンダーラップ材137(
図39参照)を取り外す。この時、第2のアンダーラップ材137を棟側に押し込み、第2のアンダーラップ材137と第3のアンダーラップ材138とのハゼ組みを解除してから、第2のアンダーラップ材137を前方に抜き外す。また、第3のアンダーラップ材138は設置したままとされる。
【0062】
続いて、
図41及び
図42に示すように、対象パネルの左右両端の係止ピン147(
図40参照)を外す。これにより、対象パネルにおけるパネル本体110とパネル支持部120とのスライド係合機構におけるロック状態が解除される。尚、係止ピン147は、スライド係合機構のロック状態では、パネル支持部120との間にスペーサ148および固定金具149を介して、パネル支持部120にネジ止めされている。すなわち、パネル本体110は左右両端から固定金具149に挟まれてロックされるようになっている。
【0063】
係止ピン147、スペーサ148および固定金具149を外してロック状態を解除した状態から、対象パネルのパネル本体110をパネル支持部120に対して右側に所定量(50mm程度)スライドさせる。これにより、パネル本体110とパネル支持部120とが
図2に示す非係合状態となり、パネル本体110をパネル支持部120から分離することが可能となる。
【0064】
最後に、
図43に示すように、対象パネルのパネル本体110を前方(軒側)にずらし、パネル本体110の止め金具と、取付金具(軒側取付金具133または棟側取付金具144)との引っ掛けを外すことで、パネル本体110のみを取り外すことができる。
【0065】
このように、本実施の形態に係る集熱パネル100では、パネル本体110がパネル支持部120に対してスライド係合機構によって取付可能となっている。このため、集熱パネル100のメンテナンス時において、流路管111、集熱部、光透過部112等を含むパネル本体110のみを取り外すことができる。すなわち、パネル支持部120を取り外す必要がないため、集熱パネル100を屋根下地材に固定支持するための多くの固定用ビス135を外す必要がなく、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0066】
また、パネル本体110がパネル支持部120に対してスライド係合機構によって取り付けられることで、パネル本体110の前面(軒側から見える見付け面)に脱着用のビス等を設ける必要がなく、デザイン性も優れたものとなる。
【0067】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。