特許第6147112号(P6147112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6147112-ワイヤレス送電装置およびその制御方法 図000002
  • 特許6147112-ワイヤレス送電装置およびその制御方法 図000003
  • 特許6147112-ワイヤレス送電装置およびその制御方法 図000004
  • 特許6147112-ワイヤレス送電装置およびその制御方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147112
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ワイヤレス送電装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20170607BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20170607BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20170607BHJP
【FI】
   H02J50/60
   H02J50/10
   H02J50/90
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-133088(P2013-133088)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-8605(P2015-8605A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政考
(72)【発明者】
【氏名】森永 智也
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/132471(WO,A1)
【文献】 特開2009−022126(JP,A)
【文献】 特開2013−005682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信コイルを含み、電力信号を送信する送信アンテナと、
前記送信アンテナに駆動信号を印加するドライバと、
前記送信コイルの温度を測定し、第1温度信号を生成する第1温度センサと、
ワイヤレス受電装置を搭載する電子機器が載せられるインタフェース台の温度を測定し、第2温度信号を生成する第2温度センサと、
前記ドライバを制御する制御回路であって、前記第1温度信号と前記第2温度信号の差分に応じて前記電力信号を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とするワイヤレス送電装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記差分が第1しきい値より大きいとき、送電を制限することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス送電装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記インタフェース台上の異物を検出可能に構成され、前記異物が有ると判定され、かつ前記差分が第2しきい値より大きいとき、送電を制限し、前記差分が第2しきい値より小さいとき、送電を実質的に継続することを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス送電装置。
【請求項4】
前記制御回路はさらに、前記第1温度信号および前記第2温度信号の少なくとも一方が、サーマルシャットダウン用のしきい値より大きいとき、送電を制限することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項5】
ワイヤレス送電装置の制御方法であって、
ドライバが、パルス信号にもとづいて送信コイルを含む送信アンテナに駆動信号を印加するステップと、
前記送信アンテナが、前記パルス信号に応じて電力信号を送信するステップと、
前記送信コイルの温度を測定し、第1温度信号を生成するステップと、
ワイヤレス受電装置を搭載する電子機器が載せられるインタフェース台の温度を測定し、第2温度信号を生成するステップと、
前記第1温度信号と前記第2温度信号の差分を検出するステップと、
前記差分に応じて前記ドライバを制御するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記ドライバを制御するステップは、
前記差分を第1しきい値と比較するステップと、
前記差分が前記第1しきい値より大きいとき、送電を制限するステップと、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ドライバを制御するステップは、
異物を検出するステップと、
前記異物が有ると判定され、かつ前記差分が第2しきい値より大きいとき送電を制限し、前記差分が第2しきい値より小さいとき、送電を実質的に継続するステップと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ドライバを制御するステップは、
前記第1温度信号および前記第2温度信号の少なくとも一方をサーマルシャットダウン用の第3しきい値と比較するステップと、
前記第1温度信号および前記第2温度信号の少なくとも一方が前記第3しきい値より大きいとき、送電を制限するステップと、
を含むことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に電力を供給するために、無接点電力伝送(非接触給電、ワイヤレス給電ともいう)が普及し始めている。異なるメーカーの製品間の相互利用を促進するために、WPC(Wireless Power Consortium)が組織され、WPCにより国際標準規格であるQi(チー)規格が策定された。
【0003】
図1は、Qi規格にもとづいたワイヤレス給電システム100の構成を示す図である。給電システム100は、送電装置200(TX)と受電装置300(RX)と、を備える。受電装置300は、携帯電話端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器、タブレット端末などの電子機器に搭載される。
【0004】
送電装置200は、送信コイル202(1次コイル)、ドライバ204、コントローラ206、復調器208を備える。ドライバ204は、Hブリッジ回路(フルブリッジ回路)、あるいはハーフブリッジ回路を含み、送信コイル202に駆動信号S1、たとえば駆動電流あるいは駆動電圧を印加し、送信コイル202に電磁界の電力信号S2を発生させる。コントローラ206は、送電装置200全体を統括的に制御する。具体的には、ドライバ204のスイッチング周波数、あるいはスイッチングのデューティ比を制御することにより、送信電力を変化させる。
【0005】
Qi規格では、送電装置200と受電装置300の間で通信プロトコルが定められており、受電装置300から送電装置200に対して、制御信号S3による情報の伝達が可能となっている。この制御信号S3は、後方散乱変調(Backscatter modulation)を利用して、AM(Amplitude Modulation)変調された形で、受信コイル302(2次コイル)から送信コイル202に送信される。この制御信号S3には、たとえば、受電装置300に対する電力供給量を指示する電力制御データ(パケットともいう)、受電装置300の固有の情報を示すデータなどが含まれる。復調器208は、送信コイル202の電流あるいは電圧に含まれる制御信号S3を復調する。コントローラ206は、復調された制御信号S3に含まれる電力制御データにもとづいて、ドライバ204を制御する。
【0006】
受電装置300は、受信コイル302、整流回路304、コンデンサ306、変調器308、負荷回路310、コントローラ312、電源回路314を備える。受信コイル302は、送信コイル202からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。整流回路304およびコンデンサ306は、電力信号S2に応じて受信コイル302に誘起される電流S4を整流・平滑化し、直流電圧に変換する。
【0007】
電源回路314は、送電装置200から供給された電力を利用して図示しない2次電池を充電し、あるいは直流電圧Vdcを昇圧あるいは降圧し、コントローラ312やその他の負荷回路310に供給する。
【0008】
コントローラ312は、受電装置300が受けている電力供給量をモニタし、それに応じて、電力供給量を指示する電力制御データを生成する。変調器308は、電力制御データを含む制御信号S3を変調し、受信コイル302のコイル電流を変調することにより、送信コイル202のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−38854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
送信コイル202と受信コイル302の間、あるいはその近傍に、金属片などの導電性の異物が置かれる状況が生じうる。この状態でワイヤレス給電が行われると、異物に電流が流れ、電力損失が発生してしまう。また異物が発熱するという問題がある。かかる状況に鑑みて、WPC1.1((System Description Wireless Power Transfer Volume I: Low Power Part 1: Interface Definition Version 1.1)仕様おいて、異物検出(FOD:Foreign Object Detection)が策定された。
【0011】
このFODでは、送電装置200が送出した電力と、受電装置300が受信した電力と、が比較され、それらの間に許容値を超える不一致が発生した場合に、異物が存在するものと判定される。
【0012】
しかしながら本発明者らが検討したところ、FOD機能によって、異物が存在しない状況においても、異物が存在するものと誤判定される得ることが分かった。これは、送信電力は実測値が用いられる一方、受信電力は、コイル間の結合係数をある典型値に仮定した状況における推定値であり、(i)現実的には結合係数がばらつくこと、(ii)送電装置200および受電装置300において測定される電力が誤差を有することに起因している。
【0013】
かかる事情から、FOD機能を単独で採用すると、コイルの位置ずれと異物検出を区別できず、コイルのわずかな位置ずれにより、存在しない異物が誤判定される。
【0014】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、コイルの位置ずれを検出可能な送電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある態様は、ワイヤレス送電装置に関する。ワイヤレス送電装置は、送信コイルを含み、電力信号を送信する送信アンテナと、送信アンテナに駆動信号を印加するドライバと、送信コイルの温度を測定し、第1温度信号を生成する第1温度センサと、ワイヤレス受電装置を搭載する電子機器が載せられるインタフェース台の温度を測定し、第2温度信号を生成する第2温度センサと、ドライバを制御する制御回路であって、第1温度信号と第2温度信号の差分に応じて電力信号を制御する制御回路と、を備える。
【0016】
インタフェース台の上に金属片等の異物が存在するとき、異物が発熱することにより、インタフェース台の温度が上昇する。一方、異物が存在せず、位置ずれが生じている場合には、インタフェース台の温度はそれほど上昇しない。この態様によれば、インタフェース台と送信コイルの温度差を検出することにより、位置ずれを検出できる。
【0017】
制御回路は、差分が第1しきい値より大きいとき、送電を制限してもよい。
「送電を制限する」とは、送信電力をゼロとすること、あるいは送信電力を減少させること、などを含む。
【0018】
制御回路は、異物を検出可能に構成され、異物が有ると判定され、かつ差分が第2しきい値より大きいとき、送電を制限し、差分が第2しきい値より小さいとき、送電を実質的に継続してもよい。
つまり、FOD機能により異物が判定された場合であっても、送信コイルとインタフェース台の温度差が小さい場合には位置ずれに起因する誤判定である可能性が高い。そこで、温度差と第2しきい値を比較することにより、位置ずれと異物検出を区別することができる。
【0019】
第1しきい値と第2しきい値は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0020】
制御回路はさらに、第1温度信号および第2温度信号の少なくとも一方が、サーマルシャットダウン用のしきい値より大きいとき、送電を制限してもよい。
これにより、その原因にかかわらず、送電装置200が過熱状態となった場合には、送電装置200および受電装置300を保護することができる。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、コイルの位置ずれを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】Qi規格にもとづいたワイヤレス給電システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態に係るワイヤレス送電装置の構成を示す回路図である。
図3図2の送電装置の異物・位置ずれ検出にもとづく電力制御のフローチャートである。
図4図4(a)〜(c)は、インタフェース台と電子機器の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図2は、実施の形態に係るワイヤレス送電装置(以下、単に送電装置と称する)200の構成を示す回路図である。送電装置200は、図1の給電システム100に使用され、電子機器320に内蔵される受電装置300に電力信号S2を供給する。
【0027】
送電装置200は、送信アンテナ201、ドライバ204、制御回路220、インタフェース台240、第1温度センサ242、第2温度センサ244を備える。
【0028】
送信アンテナ201は、直列に接続された送信コイル(1次コイル)202および共振コンデンサ203を含み、所定の共振周波数frを有する。
【0029】
ドライバ204は、トランジスタM1〜M4を含むHブリッジ回路であり、送信アンテナ201の両端間に共振周波数fr近傍の周波数を有するパルス状の駆動信号S1を印加する。ドライバ204は、ハーフブリッジ回路であってもよい。
【0030】
インタフェース台240の上には、ワイヤレス受電装置300を搭載する電子機器320が載せられる。
【0031】
第1温度センサ242は、送信コイル202の温度T1を測定し、第1温度信号S11を生成する。第2温度センサ244は、インタフェース台240の温度T2を測定し、第2温度信号S12を生成する。温度センサの種類は特に限定されず、熱電対素子やサーミスタなどが利用できる。
【0032】
制御回路220は、ひとつの半導体基板上に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)であり、ドライバ204を制御する。
【0033】
制御回路220は、パルス信号生成部222、プリドライバ224、復調器226、送信電力測定部228、異物検出部230、A/Dコンバータ232、A/Dコンバータ234、減算器236、判定部238を備える。
【0034】
復調器226は、送信コイル202に流れるコイル電流ICOILあるいはその両端間のコイル電圧VCOILに含まれる制御信号S3を復調する。制御信号S3には、送信電力を指示する電力制御データS5、受電装置300が現在受信している電力量を示す受電量データS7、受電装置300の固有の情報を示すデータ、などが含まれる。受電量データS7は、異物検出部230に入力される。
【0035】
パルス信号生成部222は、電力制御データS5にもとづいて、トランジスタM1〜M4のオン、オフを指示するパルス信号S6を生成する。プリドライバ224は、パルス信号S6にもとづいてドライバ204のトランジスタM1〜M4をスイッチングする。
【0036】
送信電力は、ドライバ204が送信コイル202に印加する駆動信号S1の周波数、つまりパルス信号S6の周波数にもとづいて調節される。具体的には、パルス信号S6の周波数を、送信コイル202を含むアンテナの共振周波数に近づけると、送信電力が増加し、遠ざかるにしたがって送信電力は低下する。つまりパルス信号生成部222は、電力制御データS5にもとづいてパルス信号S6の周波数を調節する。
【0037】
送信電力測定部228は、送信アンテナ201から受電装置300に送信される送信電力量を計算し、送電量データS8を生成する。たとえば送信電力測定部228は、コイル電流ICOILとコイル電圧VCOILの積にもとづいて送電量データS8を生成する。異物検出部230は、受電量データS7と送電量データS8の関係にもとづいて異物の有無を判定し、異物を検出すると異物検出信号S9をアサート(たとえばハイレベル)する。これをFOD機能という。
【0038】
A/Dコンバータ232、A/Dコンバータ234はそれぞれ、第1温度信号S11、第2温度信号S12をデジタル値に変換する。判定部238は、第1温度信号S11が示す第1温度T1、第2温度信号S12が示す第2温度T2および異物検出信号S9にもとづいて、異物の有無、電子機器320の位置ずれを検出する。
【0039】
具体的には、判定部238は、第1温度信号S11と第2温度信号S12から得られる温度差ΔT=T1−T2にもとづいて、電力信号S2を制御する。判定部238は、温度差ΔTを第1しきい値TTH1と比較し、温度差ΔTの方が大きいとき、電力信号S2を停止または減少させるようパルス信号生成部222(および/またはプリドライバ224)に指示し、送電を制限する。
【0040】
また判定部238は、異物検出信号S9がアサートされ、差分ΔTが第2しきい値TTH2より大きいとき、電力信号S2を停止または減少させるようパルス信号生成部222(および/またはプリドライバ224)に指示し、送電を制限する。反対に、異物検出信号S9がアサートされた場合であっても、差分ΔTが第2しきい値TTH2より小さいとき、もとの電力のまま、あるいはわずかに電力を低下させた状態にて、送電を実質的に継続する。
【0041】
また判定部238はサーマルシャットダウン機能を備える。異物検出部230は、温度T1が第3しきい値TSD1より大きく、あるいは温度T2が第4しきい値TSD2より大きいとき、異物の有無、位置ずれの有無にかかわらず、電力信号S2を停止または減少させるようパルス信号生成部222(および/またはプリドライバ224)に指示し、送電を制限する。
【0042】
以上が送電装置200の構成である。続いてその動作を説明する。
図3は、図2の送電装置200の異物・位置ずれ検出にもとづく電力制御のフローチャートである。
【0043】
所定のサンプリング周期で、判定部238は、送信コイル202およびインタフェース台240それぞれの温度T1、T2を取得し、温度差ΔT=T1−T2を演算する(S100)。
【0044】
そして判定部238は、T1>TSD1またはT2>TSD2が成り立つとき(S102のY)、送電装置200をサーマルシャットダウンし、送電を停止する(S104)。
【0045】
温度T1、T2がいずれもサーマルシャットダウンのしきい値TSD1、TSD2に達していない場合(S102のN)、温度差ΔTがしきい値TTH1と比較される。その結果、ΔT>TTH1が成り立つとき(S106のY)、インタフェース台240上に異物が存在する可能性が高いため、送電を制限する(S110)。
【0046】
ΔT<TTH1が成り立つとき(S106のN)、FOD機能にもとづく異物検出が実行される(S108)。具体的には、異物検出信号S9がアサートされていなければ(S108のN)、ステップS100に戻る。
異物検出信号S9がアサートされている場合(S108のY)、ΔTとTTH2が比較される(S112)。そして、ΔT>TTH2のとき(S112のY)、インタフェース台240上に異物が存在する可能性が高いため、送電を制限する(S110)。異物検出信号S9がアサートされた場合であっても、ΔT<TTH2が成り立つ場合(S112のN)、異物は存在しておらず、コイルの位置ずれの可能性が高いため、ステップS100に戻り、監視を継続する。
【0047】
図4(a)〜(c)は、インタフェース台240と電子機器320の位置関係を示す図である。図4(a)では、電子機器320がインタフェース台240上に正しく配置される様子を示す。この場合、送信コイル202の温度T1とインタフェース台240の温度T2の差ΔTは小さく、また異物検出信号S9もアサートされない。したがって通常のフィードバック制御により、電子機器320が充電される。
【0048】
図4(b)では、インタフェース台240の上に、電子機器320の他に、導電性の異物400が載っている。異物400と送信コイル202が結合し、電磁誘導により異物400に電流が流れ、異物400が発熱する。この状態では、異物400で消費される電力と、電子機器320が受信した電力の和が、送電装置200の送信電力となる。したがって、送電装置200において取得される受電量データS7と送電量データS8の誤差が大きくなり、異物検出信号S9がアサートされる。また異物400の発熱がインタフェース台240に伝導し、インタフェース台240の温度T2が上昇し、やがて温度差ΔTがしきい値TTH2を超え、送電が制限される。
【0049】
図4(c)では、インタフェース台240の上に、異物400は存在しないが、電子機器320が送信コイル202に対して位置ずれしている。この場合、送信コイル202と受信コイル302の結合係数が、図4(a)の状態において期待される値よりも小さくなるため、送電装置200において取得される受電量データS7と、実際に電子機器320が受信する電力量の誤差が大きくなる。これにより、判定部238により異物検出信号S9がアサートされる。しかしながらこの状態では、温度差ΔTは第2しきい値TTH2より小さいため、送電は制限されず、継続される。
【0050】
図4(a)に戻る。受電装置300に搭載される回路部品のバラツキが大きいと、受電量データS7あるいは送電量データS8それぞれの誤差が大きくなる。これにより、図4(a)の状態であっても、FOD機能により異物が誤検出され、異物検出信号S9がアサートされてしまう可能性がある。ただし、このときに温度差ΔTは第2しきい値TTH2より小さいため、通常の送電を継続することができる。
【0051】
以上が送電装置200の動作である。
【0052】
実施の形態に係る送電装置200によれば、インタフェース台240と送信コイル202の温度差ΔTを検出することにより、位置ずれを検出できる。
【0053】
たとえば、FOD機能により異物が判定された場合であっても、位置ずれに起因する誤判定である可能性がある。実施の形態に係る送電装置200によれば、温度差ΔTと第2しきい値TTH2を比較することにより、位置ずれと異物検出を区別することができる。
【0054】
また温度T1、T2をサーマルシャットダウン用のしきい値TSD1、TSD2と比較することにより、その原因にかかわらず、送電装置200が過熱状態となった場合には、送電装置200および受電装置300を保護することができる。
【0055】
またしきい値TTH1、TTH2、TSD1、TSD2は、独立に設定可能とすることにより、各状態を適切に判別することができる。
【0056】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0057】
実施の形態では、A/Dコンバータ232、A/Dコンバータ234により、アナログの温度信号をデジタル値に変換する場合を説明したが本発明はそれに限定されない。判定部238は、アナログ回路、より具体的にはアナログ減算器および電圧コンパレータの組み合わせで構成されてもよい。
【0058】
実施の形態では、Qi規格に準拠するワイヤレス送電装置について説明したが、本発明はそれに限定されず、Qi規格と類似するシステムに使用されるワイヤレス送電装置や、将来策定されるであろう規格に準拠する送電装置200にも適用しうる。
【0059】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0060】
100…給電システム、200,TX…送電装置、201…送信アンテナ、202…送信コイル、203…共振コンデンサ、204…ドライバ、206…コントローラ、208…復調器、300,RX…受電装置、302…受信コイル、304…整流回路、306…コンデンサ、308…変調器、310…負荷回路、312…コントローラ、314…電源回路、320…電子機器、220…制御回路、222…パルス信号生成部、224…プリドライバ、226…復調器、228…送信電力測定部、230…異物検出部、232,234…A/Dコンバータ、236…減算器、238…判定部、240…インタフェース台、242…第1温度センサ、244…第2温度センサ、S1…駆動信号、S2…電力信号、S3…制御信号、S5…電力制御データ、S6…パルス信号、S7…受電量データ、S8…送電量データ、S9…異物検出信号、S11…第1温度信号、S12…第2温度信号。
図1
図2
図3
図4