【実施例】
【0036】
図1は実施例に係る液晶表示装置の表示領域における構造を示す断面図である。液晶表示装置1はIPS方式の液晶表示装置であり、その構造は、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。以下に
図1の構造を詳しく説明する。なお、本実施例では、
図1の構成を例にとって説明するが、
図1以外の液晶表示装置にも適用することができる。
【0037】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層の金属層で形成されている。ゲート電極101はSiNで形成される絶縁膜102に覆われている。絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103が形成されている。半導体層103はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んで半導体層103上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。ソース電極104は映像信号線が兼用し、ドレイン電極105は画素電極110と接続される。ソース電極104もドレイン電極105も同層の金属層で同時に形成される。
【0038】
TFTはSINで形成される無機パッシベーション膜106に覆われている。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物から保護する。無機パッシベーション膜106の上にはポリイミド樹脂等の有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が形成される。対向電極108はSiNで形成される絶縁膜109に覆われている。絶縁膜109およびスルーホール111を覆うように画素電極110が形成される。スルーホール111において、TFTから延在してきたドレイン電極105と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。対向電極108および画素電極110は透明導電膜であるITOで形成される。
【0039】
図2に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電界によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0040】
図1はこの様子を断面図として説明したものである。櫛歯状の電極と櫛歯状の電極の間は
図1に示すスリット112となっている。対向電極108には一定電圧が印加され、画素電極110には映像信号による電圧が印加される。画素電極110に電圧が印加されると
図1に示すように、電気力線が発生して液晶分子301を電気力線の方向に回転させてバックライトからの光の透過を制御する。画素毎にバックライトからの透過が制御されるので、画像が形成されることになる。
【0041】
図1の例では、有機パッシベーション膜107の上に、面状に形成された対向電極108が配置され、絶縁膜109の上に櫛歯電極110が配置されている。しかしこれとは逆に、有機パッシベーション膜107の上に面状に形成された画素電極110を配置し、絶縁膜109の上に櫛歯状の対向電極108が配置される場合もある。
【0042】
画素電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。本実施例においては、配向膜113は、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層(各基板側)に形成される高膜強度配向膜1132の2層構造となっている。光配向膜1131がポリアミド酸エステルで、高膜強度配向膜1132がポリアミド酸で構成される。尚、1132で示す低抵抗配向膜は、液晶に直接は接しない有機膜であり、液晶の初期配向に直接的に関係するものではないが、本明細書では便宜上配向膜と称する。
【0043】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタ201が形成れており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0044】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。
【0045】
オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。対向基板側の配向膜113もTFT基板側の配向膜113と同様に、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層に形成される低抵抗配向膜1132の2層構造となっている。なお、液晶表示装置1はIPS方式であるから、対向電極108はTFT基板100側に形成されており、対向基板200側には形成されていない。
【0046】
図1に示すように、IPSでは、対向基板200の内側には導電膜が形成されていない。そうすると、対向基板200の電位が不安定になる。また、外部からの電磁ノイズが液晶層300に侵入し、画像に対して影響を与える。このような問題を除去するために、対向基板200の外側に表面導電膜210が形成される。
【0047】
表1に示したポリアミド酸と表2に示したポリアミド酸エステルを50/50の割合でブレンドする。ポリアミド酸とポリアミド酸エステルを有機溶媒でブレンドワニスした配向膜材料を印刷し、乾燥して上下に2層分離、光照射、加熱イミド化を施して配向膜を成膜する。この配向膜を用いて液晶表示装置を作成し、長残像特性を評価した。
【0048】
本実施例による液晶表示装置の画像の焼き付け、残像を定量的に測定するため、ホトダイオードを組合せたオシロスコープを用いて評価した。まず、画面上に最大輝度でウインドウパターンを200時間表示し、その後、残像が最も目立つ中間調表示、ここでは、輝度が最大輝度の10%となるように全面を切り換え、ウインドウパターンのエッジ部のパターンが消えるまでの時間を残像消失時間として評価した。ただし、ここで許容される残像消失時間は5分以下である。その結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
配向膜3、4、8、9、13、14、18、19、23、24において、良好な長残像特性が得られた。残像消失時間が5分以下の長残像特性が得られた配向膜のΔlogPは、1.22〜2.48(尚、1.2〜2.5の範囲であってもほぼ同様な結果は得られる)である。また、残像消失時間が3分以下の長残像特性が得られた配向膜のΔlogPは、1.35〜1.97(尚、1.3〜2.0の範囲であってもほぼ同様な結果は得られる)である。残像消失時間が1分以下の長残像特性が得られた配向膜のΔlogPは、1.47〜1.73(尚、1.4〜1.8の範囲であってもほぼ同様な結果は得られる)である。良好な長残像特性が得られた配向膜は、ポリアミド酸エステルとポリアミド酸の層分離状態が良好で、ポリアミド酸エステルが光配向膜1131を、ポリアミド酸が低抵抗配向膜1132を構成している。
【0051】
なお、1種類のポリアミド酸と1種類のポリアミド酸エステルからなる配向膜組成に対し他の配向膜成分をブレンドした場合の長残像特性は、混合された3種類におけるlogP(A)とlogP(E)の中で最も離れた2成分のΔlogPに依存することも見出された。
【0052】
例えば、配向膜3の配向膜組成(A−3、E−1)に第3の配向膜成分であるE−3をブレンドすると、残像消失時間は1分となった。
【0053】
本実施例ではポリアミド酸とポリアミド酸エステルのブレンド比が50/50について例示したが、その他ブレンド比(10/90〜90/10)においても同様の効果が確認された。また、本実施例では、配向処理方法を光配向処理としたが、本願発明の配向膜材料で形成した配向膜をラビング配向処理した場合であっても同様の効果が確認された。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。