特許第6147178号(P6147178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147178
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】軸受試験機
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   G01M13/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-257148(P2013-257148)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-114231(P2015-114231A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】寺本 武司
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−162541(JP,U)
【文献】 特開2007−192679(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/87849(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第3081915(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/282225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平なY軸方向に向けて配置された回転軸であり、軸受の供試体が取り付けられる試験機軸と、
前記試験機軸を回転可能に支持する軸受部と、
前記試験機軸を回転駆動する回転駆動部と、
前記供試体を保持する軸箱と、
前記軸箱に鉛直方向の荷重を与える弾性部材と、
前記軸受部を、前記Y軸方向に垂直な水平方向であるX軸方向と、鉛直方向とに駆動する軸受駆動部と、
を備えた軸受試験機。
【請求項2】
前記軸受駆動部が、
駆動テーブルと、
前記駆動テーブルを鉛直方向に駆動するZ軸駆動部と、
前記駆動テーブルと前記Z軸駆動部とを前記X軸方向及び前記Y軸方向にスライド自在に連結するXY軸スライド機構と、
前記駆動テーブルを前記X方向に駆動するX軸駆動部と、
前記駆動テーブルと前記X軸駆動部とを鉛直方向にスライド自在に連結するZ軸スライド機構と、
前記駆動テーブルと前記軸受部とを鉛直軸周りに回転自在に連結するZ軸回転機構と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の軸受試験機。
【請求項3】
前記軸受駆動部が、
前記駆動テーブルを前記Y軸方向に駆動するY軸駆動部と、
前記駆動テーブルと前記Y軸駆動部とを鉛直方向及び前記X軸方向にスライド自在に連結するZX軸スライド機構と、を備え、
前記Z軸スライド機構が、前記駆動テーブルと前記X軸駆動部とを鉛直方向及び前記Y軸方向にスライド自在に連結するYZ軸スライド機構である、
ことを特徴とする請求項2に記載の軸受試験機。
【請求項4】
前記供試体が第1供試体と第2供試体とを含み、前記第1供試体及び前記第2供試体が、前記試験機軸の一端部及び他端部にそれぞれ取り付けられるように構成され、
前記軸箱が、
前記第1供試体を保持する第1軸箱と、
前記第2供試体を保持する第2軸箱と、を含み、
前記軸受部が、
前記第1軸箱に隣接して配置された第1軸受部と、
前記第2軸箱に隣接して配置された第2軸受部と、を含み、
前記弾性部材が、
前記第1軸箱に鉛直方向の荷重を与える第1弾性部材と、
前記第2軸箱に鉛直方向の荷重を与える第2弾性部材と、を含み、
前記軸受駆動部が、
前記第1軸受部を駆動する第1駆動部と、
前記第2軸受部を駆動する第2駆動部と、を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の軸受試験機。
【請求項5】
前記弾性部材の上端を支持するフレーム部を更に備え、
前記弾性部材の下端が前記軸箱に取り付けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の軸受試験機。
【請求項6】
前記弾性部材がコイルばねである
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の軸受試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の耐久性能を試験するための軸受試験機に関連し、特にトレーラーや鉄道台車の車軸を支持する車軸軸受の試験を行うための軸受試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両やトレーラー等の車軸は、複数(例えば一対)の車軸軸受を介して、車枠に支持されている。車軸軸受には車両走行時にラジアル荷重やアキシアル荷重(スラスト荷重)等の様々な荷重が作用する。
【0003】
引用文献1には、試験対象である車軸軸受に試験用車軸(以下「試験機軸」という。)を取り付け、車軸軸受にラジアル荷重及びアキシアルモーメント荷重を作用させながら試験用車軸を回転させることで、実車で使用される車軸軸受の性能を模擬的に評価する軸受試験機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−82720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際の車両の車軸や車枠は、走行中に、ヨーイング(上下方向をZ軸方向としたときの、Z軸周りの車軸の揺動)やローリング(車両の前後方向をX軸方向としたときの、X軸周りの車軸の揺動)、ピッチング(車軸と平行なY軸周りの揺動)等の様々な運動を行う。そのため、走行中の車軸軸受には、動的なラジアル荷重、アキシアル荷重及びモーメント荷重(Z軸周り、X軸周り)が作用する。
【0006】
しかしながら、特許文献1の試験機は、定常走行状態(ヨーイング、ローリング、ピッチング等の運動を伴わない走行状態)を模擬した試験を行うことはできるが、車軸軸受に動的な荷重が作用する通常の走行状態を正確に模擬した試験を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る軸受試験機は、
水平なY軸方向に向けて配置された回転軸であり、軸受の供試体が取り付けられる試験機軸と、
前記試験機軸を回転可能に支持する軸受部と、
前記試験機軸を回転駆動する回転駆動部と、
前記供試体を保持する軸箱と、
前記軸箱に鉛直方向の静荷重を与える弾性部材と、
前記軸受部を、前記Y軸方向に垂直な水平方向であるX軸方向と、鉛直方向とに駆動する軸受駆動部と、
を備える。
【0009】
また、上記の軸受試験機において、
前記軸受駆動部が、
駆動テーブルと、
前記駆動テーブルを鉛直方向に駆動するZ軸駆動部と、
前記駆動テーブルと前記Z軸駆動部とを前記X軸方向及び前記Y軸方向にスライド自在に連結するXY軸スライド機構と、
前記駆動テーブルを前記X方向に駆動するX軸駆動部と、
前記駆動テーブルと前記X軸駆動部とを鉛直方向にスライド自在に連結するZ軸スライド機構と、
前記駆動テーブルと前記軸受部とを鉛直軸周りに回転自在に連結するZ軸回転機構と、
を備えた構成としてもよい。
【0010】
また、上記の軸受試験機において、
前記軸受駆動部が、
前記駆動テーブルを前記Y軸方向に駆動するY軸駆動部と、
前記駆動テーブルと前記Y軸駆動部とを鉛直方向及び前記X軸方向にスライド自在に連結するZX軸スライド機構と、を備え、
前記Z軸スライド機構が、前記駆動テーブルと前記X軸駆動部とを鉛直方向及び前記Y軸方向にスライド自在に連結するYZ軸スライド機構である構成としてもよい。
【0011】
また、上記の軸受試験機において、
前記供試体が第1供試体と第2供試体とを含み、前記第1供試体及び前記第2供試体が、前記試験機軸の一端部及び他端部にそれぞれ取り付けられるように構成され、
前記軸箱が、
前記第1供試体を保持する第1軸箱と、
前記第2供試体を保持する第2軸箱と、を含み、
前記軸受部が、
前記第1軸箱に隣接して配置された第1軸受部と、
前記第2軸箱に隣接して配置された第2軸受部と、を含み、
前記弾性部材が、
前記第1軸箱に鉛直方向の荷重を与える第1弾性部材と、
前記第2軸箱に鉛直方向の荷重を与える第2弾性部材と、を含み、
前記軸受駆動部が、
前記第1軸受部を駆動する第1駆動部と、
前記第2軸受部を駆動する第2駆動部と、を含む構成としてもよい。
【0012】
また、上記の軸受試験機において、
前記弾性部材の上端を支持するフレーム部を更に備え、
前記弾性部材の下端が前記軸箱に取り付けられた構成としてもよい。
【0013】
また、上記の軸受試験機において、前記弾性部材がコイルばねである構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る軸受試験機は、軸受駆動部によって供試体が取り付けられる試験機軸にZ軸方向又はX軸方向の振動、ヨーイング、ローリング等の運動を与えることができ、これにより、車軸軸受に様々な動的荷重が作用する通常の走行状態を正確に模擬した試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る軸受試験機の概略平面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る軸受試験機の概略正面図である。
図3図3は、車軸が車両に対してZ軸周りに傾斜した状態を模擬した耐久試験を行う場合の軸受試験機1の概略平面図である。
図4図4は、車軸が車両に対してX軸周りに傾斜した状態を模擬した耐久試験を行う場合の軸受試験機1の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る軸受試験機1の概略平面図である。
図2は、軸受試験機1の概略側面図である。
以下の説明において、図1における上下方向をX軸方向(上方向をX軸正方向)、左右方向をY軸方向(左方向をY軸正方向)、紙面に垂直な方向をZ軸方向(紙面の裏側から表側に向かう方向をZ軸正方向)とする。X軸及びY軸は互いに直交する水平軸であり、Z軸は鉛直軸である。
【0018】
本実施形態の軸受試験機1は、トレーラーや鉄道台車の車軸を回転自在に支持する軸受(車軸軸受)の耐久性能を評価するための試験装置である。軸受試験機1による試験では、実際の使用状態と同様に、車軸軸受である一対の供試体T1、T2を軸受試験機1の試験機軸300に装着し、供試体T1、T2(及び試験機軸300)にモーメント荷重M(動荷重又は静荷重)を掛け、更に、供試体T1、T2をX軸、Y軸及びZ軸方向の少なくとも一方向に加振しながら、試験機軸300を回転させる。これにより、実際の使用状態(走行する車両に取り付けた状態)における車軸軸受の耐久性能を正確に評価することができる。また、2つの供試体T1、T2の試験を同時に行うことができる。
【0019】
軸受試験機1は、右車軸駆動部100、左車軸駆動部200、試験機軸300、一対の重量付与部400(400R、400L)、右軸箱500R、左軸箱500L、車軸回転駆動部(不図示)及び制御部(不図示)を備えている。
【0020】
試験機軸300は、Y軸と略平行に配置され、右車軸駆動部100及び左車軸駆動部200によって回転自在に支持されている。供試体T1は、図1における試験機軸300の右端(Y軸負方向端)近傍に取り付けられ、供試体T2は試験機軸300の左端(Y軸正方向端)近傍に取り付けられる。供試体T1及びT2は、右軸箱500R及び左軸箱500Lにそれぞれ収容されて、保持される。試験機軸300は、実際に車軸軸受が使用される車両の車軸と同じ外径及び略同じ長さを有していて、一対の供試体T1、T2の配置間隔も使用時の車軸軸受の配置間隔と同じ値に設定されている。また、右車軸駆動部100及び左車軸駆動部200(具体的には、後述する軸受151及び軸受251)の配置間隔は、車軸軸受が使用される車両における左右の車輪の間隔と同じ値に設定されている。これらの配置設定により、車両に装着して走行させたときに実際に車軸軸受が受ける荷重を供試体T1、T2に正確に与えることが可能になっている。
【0021】
右車軸駆動部100及び左車軸駆動部200は、それぞれ試験機軸300を回転自在に支持すると共に、直交3軸方向(X軸、Y軸、Z軸方向)に駆動する機構部である。右車軸駆動部100は、試験機軸300を回転自在に支持する軸受部150と、軸受部150を介して試験機軸300をZ軸方向、Y軸方向及びX軸方向にそれぞれ駆動するZ軸駆動部110、Y軸駆動部120及びX軸駆動部130を備えている。
【0022】
図2に示すように、Z軸駆動部110は、Z軸アクチュエータ111と、上下に並べて配置された3枚の可動テーブル(下段可動テーブル112、中段可動テーブル114及び上段可動テーブル116)と、XY軸スライド機構113と、Z軸回転機構115を備えている。
【0023】
Z軸アクチュエータ111は、並列に接続された図示されていない電動アクチュエータ及び空圧アクチュエータ(空気ばね又は空圧シリンダ)を備えたハイブリッド型の直動アクチュエータである。Z軸アクチュエータ111は、これに加わる静荷重が空圧アクチュエータによって担われ、動荷重が電動アクチュエータによって担われるように構成されている。空圧アクチュエータは、定荷重を保持する際には殆どエネルギーを消費しない。また、電動アクチュエータは、応答が速い(応答周波数が高い)。そのため、空圧アクチュエータと電動アクチュエータとで静荷重と動荷重とを分担することにより、少ないエネルギー消費量でも大荷重を鉛直方向に高い周波数(大加速度)で駆動することが可能になる。なお、Z軸アクチュエータ111に加わる静荷重の一部を電動アクチュエータが担うように設定することもできる。
【0024】
また、本実施形態では、Z軸アクチュエータ111に内蔵される電動アクチュエータとして、ボールねじ機構をサーボモータ(回転モータ)によって駆動する方式の直動アクチュエータが使用されているが、導電型アクチュエータ等の他の方式の電動アクチュエータを使用することもできる。また、電動アクチュエータに替えて、油圧アクチュエータを使用することもできる。
【0025】
Z軸アクチュエータ111は、ベースBに固定された固定部111aと、固定部111aに対してZ軸方向に駆動される移動部111bを備えている。
【0026】
下段可動テーブル112は、その下面がZ軸アクチュエータ111の移動部111bの上端に固定されていて、移動部111bと一体にZ軸方向に移動可能となっている。また、中段可動テーブル114は、XY軸スライド機構113を介して、水平2方向(X軸方向及びY軸方向)にスライド自在に、下段可動テーブル112に連結されている。更に、上段可動テーブル116は、Z軸回転機構115を介して、Z軸周りに回転自在に、中段可動テーブル114に連結されている。また、軸受部150は、上段可動テーブル116の上面に取り付けられている。この構成により、軸受部150に支持された試験機軸300を、Z軸アクチュエータ111により鉛直方向に駆動可能となっている。
【0027】
軸受部150は、軸受151と、軸受151を支持する二組のヒンジ軸152及び支持壁153を備えている。2つの支持壁153は、軸受151を挟んでX軸方向に向かい合わせて配置されて、下端が上段可動テーブル116の上面に固定されている。各支持壁153には、X軸方向に貫通する丸穴が同軸上に形成されている。また、軸受151の各支持壁153と対向する側壁にも、X軸方向に貫通する丸穴(不図示)が同軸上に形成されている。軸受151の側壁に形成された丸穴には、ヒンジ軸受(不図示)が取り付けられている。各ヒンジ軸152は、一端が対応する支持壁153の丸穴に差し込まれて固定され、他端が軸受151に取り付けられたヒンジ軸受に差し込まれている。その結果、軸受151は、2組の支持壁153、ヒンジ軸152及びヒンジ軸受により、X軸周りに回転自在に支持されている。
【0028】
Z軸駆動部110のY軸負方向側に隣接してY軸駆動部120が配置されている。Y軸駆動部120は、Y軸アクチュエータ121と、2枚の可動テーブル122及び124と、ZX軸スライド機構123と、連結部材126を備えている。
【0029】
Y軸アクチュエータ121は、ベースBに固定された台座121aと、台座121aに載置されて固定された固定部121bと、固定部121bに対してY軸方向に駆動される移動部121cを備えている。本実施形態のY軸アクチュエータ121は、Z軸アクチュエータ111で使用されているものと同様の、サーボモータとボールねじ機構を使用した電動アクチュエータである。Y軸アクチュエータ121にも、導電型アクチュエータ等の他の方式の電動アクチュエータや油圧アクチュエータを使用することができる。なお、Y軸アクチュエータ121は、大きな静荷重を担う必要がないため、空圧アクチュエータは備えていない。
【0030】
2枚の可動テーブル122及び124は、Z軸駆動部110とY軸アクチュエータ121の間で、ZX平面と平行に、向かい合わせて配置されている。Y軸アクチュエータ121側の可動テーブル122は、その一面がY軸アクチュエータ121の移動部121cの先端に固定されていて、移動部121cと一体にY軸方向に移動可能となっている。また、可動テーブル124は、ZX軸スライド機構123を介して、直交2方向(Z軸方向及びX軸方向)にスライド自在に、可動テーブル122に連結されている。また、連結部材126は、可動テーブル124とZ軸駆動部110の中段可動テーブル114の側面とを連結している。この構成により、Y軸アクチュエータ121を使用して、Z軸駆動部110の中段可動テーブル114をY軸方向に駆動可能となっている。
【0031】
また、図1に示すように、Z軸駆動部110のX軸正方向側に隣接してX軸駆動部130が配置されている。X軸駆動部130は、X軸アクチュエータ131と、2枚の可動テーブル132及び134と、YZ軸スライド機構133と、連結部材136を備えている。
【0032】
X軸アクチュエータ131は、ベースBに固定された台座131aと、台座131aに載置されて固定された固定部131bと、固定部131bに対してY軸方向に駆動される移動部131cを備えている。本実施形態のX軸アクチュエータ131は、Y軸アクチュエータ121と同一構成の電動アクチュエータである。
【0033】
2枚の可動テーブル132及び134は、Z軸駆動部110とX軸アクチュエータ131の間で、YZ平面と平行に、向かい合わせて配置されている。X軸アクチュエータ131側の可動テーブル132は、その一面がX軸アクチュエータ131の移動部131cの先端に固定されていて、移動部131cと一体にX軸方向に移動可能となっている。また、可動テーブル134は、YZ軸スライド機構133を介して、直交2方向(Y軸方向及びZ軸方向)にスライド自在に、可動テーブル132に連結されている。また、連結部材136は、可動テーブル134とZ軸駆動部110の中段可動テーブル114の側面とを連結している。この構成により、X軸アクチュエータ131を使用して、Z軸駆動部110の中段可動テーブル114をX軸方向に駆動可能となっている。
【0034】
上記の右車軸駆動部100では、Z軸駆動部110と中段可動テーブル114とをXY軸スライド機構113を介して連結し、Y軸駆動部120と中段可動テーブル114とをZX軸スライド機構123を介して連結し、更に、X軸駆動部130と中段可動テーブル114とをYZ軸スライド機構133を介して連結する構成を採用したことにより、Z軸駆動部110、Y軸駆動部120及びX軸駆動部130による直交3軸方向の駆動を相互に干渉せずに行う低クロストークの駆動が可能になっている。
【0035】
左車軸駆動部200は、右車軸駆動部100と同様に構成されているが、Y軸駆動部120に相当する構成部を備えていない点で右車軸駆動部100と異なる。具体的には、左車軸駆動部200は、Z軸駆動部210及びX軸駆動部230を備えている。Z軸駆動部210及びX軸駆動部230は、右車軸駆動部100のZ軸駆動部110及びX軸駆動部130と同一の構成を有している。具体的には、Z軸駆動部210は、3枚の可動テーブルを介してZ軸方向に連結されたZ軸アクチュエータ211、XY軸スライド機構213、Z軸回転機構215及び軸受部250を備えている。また、X軸駆動部230は、2枚の可動テーブルを介してX軸方向に連結されたX軸アクチュエータ231、YZ軸スライド機構233及び連結部材236を備えている。
【0036】
重量付与部400Rは、Z軸駆動部110(右車軸駆動部100)の右側(Y軸負方向側)に隣接して配置されている。また、重量付与部400Lは、Z軸駆動部210(左車軸駆動部200)の左側(Y軸正方向側)に隣接して配置されている。
【0037】
重量付与部400R(400L)は、門形(逆U字形)のフレーム部410とコイルスプリング420を備えている。コイルスプリング420は、上端がフレーム部410の梁411の中央下面に固定され、下端が右軸箱500R(左軸箱500L)の上面に固定されている。
【0038】
コイルスプリング420は、圧縮ばねであり、右軸箱500R(左軸箱500L)及び供試体T1(T2)を介して試験機軸300の一端に下向きの静荷重を与える。この静荷重は、実際の車両において車軸に加えられる車体の重量を模擬するものである。
【0039】
次に、軸受試験機1を使用して行う供試体T1、T2の耐久試験について説明する。供試体T1、T2には、重量付与部400R、400Lより、車両の重量を模擬した下向きの静荷重が加えられる。この静荷重は、供試体T1、T2を介して、車両の車軸を模擬した試験機軸300に伝えられる。試験機軸300に加えられた静荷重は、更に、試験機軸300を支持する右車軸駆動部100及び左車軸駆動部200に伝えられる。また、右車軸駆動部100及び左車軸駆動部200は、静荷重の反力及びZ軸駆動部110及び210が発生するZ軸方向の加振力を、試験機軸300を介して供試体T1、T2に与える。また、右車軸駆動部100は、Y軸駆動部120が発生するY軸方向の加振力を、試験機軸300を介して供試体T1、T2に与える。更に、右車軸駆動部100及び左車軸駆動部200は、X軸駆動部130及び230が発生するX軸方向の加振力を、試験機軸300を介して供試体T1、T2に与える。なお、Z軸、Y軸及びX軸方向の加振力は、路面の起伏等により、路面から車輪を介して車軸に与えられる振動を模擬したものである。また、供試体T1(T2)からの荷重と、右車軸駆動部100(左車軸駆動部200)からの荷重とでは、試験機軸300に作用する点が異なる。そのため、試験機軸300を介して供試体T1(T2)に与えられる荷重には、車両に実装された車軸軸受が受ける荷重と同様に、Z軸方向の荷重の他にX軸周りのモーメント荷重が含まれる。このように、供試体T1、T2及び試験機軸300に複雑な荷重が加えられた状態で、車軸回転駆動部により試験機軸300が所定の回転数で回転駆動される。これにより、車両に装着された車軸軸受が車両走行中に受ける荷重と略同じ荷重を供試体T1、T2に与えながら、供試体T1、T2を取り付けた試験機軸300を回転駆動することで、実際の使用条件に近い負荷の下で耐久試験を行うことが可能になる。
【0040】
また、本実施形態の軸受試験機1は、車軸が車両に対してZ軸周り又はX軸周りに傾斜した状態を模擬した耐久試験を行うこともできるように構成されている。
【0041】
図3は、車軸が車両に対してZ軸周りに傾斜した状態を模擬して耐久試験を行う場合を説明する軸受試験機1の概略平面図である。上述のように、軸受試験機1は、Z軸回転機構115及び215を設けることにより、試験機軸300と共に軸受部150及び250がZ軸周りに傾斜自在に構成されている。そのため、X軸駆動部130、230によって軸受部150及び250をX軸方向に異なる距離移動させることで、軸受部150、250に歪みを与えることなく、試験機軸300をZ軸周りに傾斜させることができる。また、X軸駆動部130、230のみを駆動して試験機軸300をZ軸周りに傾斜させる場合、試験機軸300に過大な張力が発生しないように、軸受部150と250のY軸方向における配置間隔を傾斜角に応じて短くする必要がある。本実施形態では、XY軸スライド機構213を設けることにより、軸受部250がZ軸駆動部210に対してY軸方向にスライド自在となっている。そのため、試験機軸300をZ軸周りに傾斜させたときに、軸受部250がY軸負方向にスライドして、軸受部150と250のY軸方向における配置間隔が自動的に調整されるようになっている。
【0042】
このとき、コイルスプリング420にはX軸方向のずり変形が発生し、供試体T1及びT2には、車両に実装された車軸軸受と同様に、コイルスプリング420からX軸方向の剪断力が加えられる。そのため、軸受試験機1は、実際の車両において車軸がZ軸周りに傾斜したときに車軸軸受が受ける荷重と略同じ荷重を供試体T1、T2に与えることが可能となっている。
【0043】
図4は、車軸が車両に対してX軸周りに傾斜した状態を模擬して耐久試験を行う場合を説明する軸受試験機1の概略平面図である。上述のように、軸受151(251)は、ヒンジ軸152(252)によりX軸周りに傾斜自在に構成されている。そのため、Z軸駆動部110、210によって軸受部150、250をZ軸方向に異なる距離移動させることで、軸受部150、250に歪みを与えることなく、試験機軸300をX軸周りに傾斜させることができる。このときにも、XY軸スライド機構213により、軸受部250がY軸負方向にスライドして、軸受部150と250のY軸方向における配置間隔が自動的に調整されて、試験機軸300に過大な張力が発生しないようになっている。
【0044】
このとき、コイルスプリング420はZ軸方向に伸縮し、車両に実装された車軸軸受と同様に、コイルスプリング420から供試体T1及びT2に加わるZ軸方向の静荷重の大きさが変化する。そのため、軸受試験機1は、実際の車両において車軸がX軸周りに傾斜したときに車軸軸受が受ける荷重と略同じ荷重を供試体T1、T2に与えることが可能となっている。
【0045】
なお、上記の実施形態は、車両用の車軸軸受の耐久試験に本発明を適用した例であるが、本発明は車軸軸受に限らず、あらゆる回転軸受(ころがり軸受及び滑り軸受)の耐久試験に適用することが可能である。
【0046】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0047】
例えば、フレーム部410に、コイルスプリング420が発生する静荷重を調整する静荷重調整手段を設け、静荷重を所定の大きさに調整可能に構成してもよい。静荷重調整手段には、例えば、コイルスプリング420の上端の固定位置の高さを変化させることにより、静荷重の大きさを調整する油圧シリンダが使用される。また、コイルスプリング420に替えて空気ばねを使用してもよい。この場合、空気ばねに供給する空圧を調整することにより、静荷重を調整することができる。静荷重調整手段を設けることにより、様々な重量の車体を想定した試験が可能になる。
【符号の説明】
【0048】
1 軸受試験機
100 右車軸駆動部
200 左車軸駆動部
300 試験機軸
400 重量付与部
500R 右軸箱
500L 左軸箱
図1
図2
図3
図4