特許第6147189号(P6147189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147189
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ブレーキ制御に関する改良
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-528696(P2013-528696)
(86)(22)【出願日】2011年9月19日
(65)【公表番号】特表2013-537144(P2013-537144A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】EP2011066180
(87)【国際公開番号】WO2012038365
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年2月26日
【審判番号】不服2016-4363(P2016-4363/J1)
【審判請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】1015727.9
(32)【優先日】2010年9月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ビーバー
(72)【発明者】
【氏名】セオドア・カッセル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・クック
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・レイノルズ
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 阿部 利英
【審判官】 内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平7−40331(JP,U)
【文献】 特開2003−137080(JP,A)
【文献】 特開2009−113712(JP,A)
【文献】 特表平11−508516(JP,A)
【文献】 特開2010−116160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪と、
1以上の車輪に制動力を付与するためのブレーキと、
車両の意図する方向への動きにそれぞれ連動する1以上の選択可能なギアと、
制動力を付与するために前記ブレーキを駆動するためのブレーキ駆動手段と、
前記ブレーキ駆動手段を制御するためのブレーキ制御手段と、
を備え、
前記ブレーキ制御手段は、ブレーキをかけて車両を停止させた後、予め決められた制限時間の間、選択された駆動ギアに基づいて前記ブレーキ駆動手段を駆動制御して前記ブレーキにより前記車輪に制動力を付与することにより、意図する方向への動きとは反対方向への車両の動きを阻止し、付与される駆動トルクが予め決められたレベル以下であれば、選択されたギアによって駆動トルクを検出し、予め決められた制限時間を延長するように設けられていることを特徴とするブレーキ制御システム。
【請求項2】
前記ブレーキ制御手段は、ハンドブレーキが使用されているとき、又は、ドアが開放されているとき、制動力を終了するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御システム。
【請求項3】
前記ブレーキ制御手段は、車両が選択したギアと連動する、意図する方向の動きとは反対方向に、予め決められた制限速度を超える速度で移動するとき、制動力を付与することを保証するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ制御システム。
【請求項4】
前記ブレーキ制御手段は、車両が選択されたギアと連動する、意図する方向への動きとは反対方向に、予め決められた加速度で移動するとき、制動力を付与することを保証するように設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のブレーキ制御システム。
【請求項5】
前記ブレーキ制御手段は、車両の傾斜を検出するように設けられ、選択された傾斜が進行方向に対して下り坂となるような傾斜であれば、速度又は加速度の上昇を制限し、上り坂となるような傾斜であれば、許容するように、力学的に予め決められていることを特徴とする請求項3又は4に記載のブレーキ制御システム。
【請求項6】
前記ブレーキ制御手段は、選択されたギアによって駆動トルクを検出し、検出された駆動トルクが予め決められたレベルを超えるとき、ブレーキ駆動手段によって付与される制動力を解放するように設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のブレーキ制御システム。
【請求項7】
エンジンの駆動状態から独立した駆動及び非駆動状態を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のブレーキ制御システム。
【請求項8】
前記駆動状態は、車両の駆動エンジンの駆動状態から独立していることを特徴とする請求項7に記載のブレーキ制御システム。
【請求項9】
前記ブレーキ制御手段は、車両の傾きを検出し、ブレーキ駆動手段により、下り方向の車両の動きを制限するように制動力を付与するように設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のブレーキ制御システム。
【請求項10】
意図する方向への車両の動きに連動する、選択された駆動ギアを検出し、ドライバーのブレーキ入力を検出し、ドライバーのブレーキ入力を追加するために制動力を付与することにより選択された駆動ギアに連動する、意図する方向の動きとは反対方向に車両の動きを制限し、
ブレーキをかけて車両を停止させた後、予め決められた制限時間の間、選択された駆動ギアに基づいてブレーキ駆動手段を制御してブレーキにより車輪に制動力を付与することにより、意図する方向への動きとは反対方向への車両の動きを阻止し、付与される駆動トルクが予め決められたレベル以下であれば、選択されたギアによって駆動トルクを検出し、予め決められた制限時間を延長することを特徴とする自動車用ブレーキ制御方法。
【請求項11】
前記車両が、選択されたギアに連動する、意図する方向への動きとは反対方向に、予め決められた速度又は加速度の制限値を超えた速度又は加速度で移動するとき、制動力を付与することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記請求項1からのいずれか1項に記載のシステム、又は、前記請求項10又は11に記載の方法を使用するように構成された車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のためのブレーキ制御システムに関する。特に、限定はされないが、坂道での自動車の制御を容易にするためのブレーキ制御システムに関する。本発明の態様は、システム、方法、及び、自動車に関係する。
【背景技術】
【0002】
坂道で自動車の制御を容易にするための多くのブレーキ制御システムがある。
【0003】
ヨーロッパ特許0784551号公報には、ヒルディセントモード (Hill Descent mode)、特に、オフロード環境で使用する自動車のブレーキ制御システムが開示されている。ブレーキ制御システムは、自動車の各車輪のブレーキを制御するための電子制御ユニットとブレーキ制御システムとを備える。スイッチ形式のドライバーインターフェイスは、自動車のギアが入ったことが検出されたとき、制御ユニットをヒルディセントモードとするために使用される。このモードでは、制御ユニットは、検出された自動車のスピードが現在の目標スピードを超えているとき、自動車を低速とするためにブレーキによって意図する方向での自動車のスピードを制御する。
【0004】
自動車がオフロードを走行するとき、坂道で停止することになるかもしれない。これに関連して、ヨーロッパ特許第1777133号公報には、ブレーキ制御手段がブレーキ命令手段(例えば、ブレーキペダル)の操作に従ってブレーキにより提供される制動力によって坂道で自動車が停止したときに検出するように配置されたブレーキ制御システムが開示されている。制動力の解除は、ブレーキを解除するためのブレーキ命令手段を操作する、急勾配の坂道での機能として制御される。
【0005】
ヨーロッパ特許第1777133号公報のブレーキ制御システムは、意図した方向へと坂を下るために、静止状態からのスムーズな移動を補助するが、坂道でのモータの駆動に関する他の課題には対処していない。
【0006】
自動車を運転するとき、坂道で停車した後、再び、上方向へと移動を再開することが必要となるかもしれない。例えば、前進ギアから後退ギアに切り替えることによって、坂を下る動作から坂を上る動作へと切り替えたり、あるいは、その逆の動作を行ったりすることが必要とされるときがあるかもしれない。急な坂道では、この動作は、一般には「坂道発進」と言われているが、経験の浅いドライバーにとって特に難しい操作となる。ドライバーが判断ミスする恐れがあり、それは、例えば、下り坂での車両の意図しない回転という形で、制御不能となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ヨーロッパ特許0784551号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許第1777133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題を解決あるいは最小限とする、改良されたブレーキ制御システムを提供することが、本発明の目的である。本発明の他の目的及び利点は、後述する詳細な説明、特許請求の範囲、及び、図面によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、貼付した特許請求の範囲に記載されるシステム、方法、及び、車両を提供する。
【0010】
保護を求める本発明の他の態様では、複数の車輪と、1以上の車輪に制動力を作用させるためのブレーキと、車両の動きを検出するための検出手段と、意図する方向に車両を移動させる1以上の選択可能な駆動ギアと、を設けられ、制動力を付与するためにブレーキを駆動させるブレーキ制御手段を備え、前記ブレーキ制御手段は、選択された駆動ギアを検出し、かつ、前記駆動ギアが選択されるとき、ブレーキ駆動手段が制動力を作用させることを保証することにより、選択された駆動ギアに関する意図する方向への動きとは反対方向への車両の動きを制限するように配置された、自動車のためのブレーキ制御システムを提供する。前記ブレーキ制御手段は、ドライバーによってブレーキをかけられて停車するとき、ブレーキ駆動手段が選択されたギアに連動する、意図する方向への動きとは反対方向への車両の動きを打ち消す(理想としては妨げる)制動力を付与する。ブレーキ制御手段は、ブレーキをかけられて停車した後、予め決められた制限時間で(例えば、0.5〜5秒、好ましくは、1〜3秒までに)制動力を保証するように設ければよい。
【0011】
意図する方向への動きとは反対方向(すなわち、意図しない方向、主として下り方向)への車両の動きを制限することにより、本発明の第1実施形態に係るブレーキ制御システムは、車両全体の駆動制御、特に、坂道、例えば、オフロードでの運転で威力を発揮する
【0012】
このように、意図しない方向への動きは、通常、完全に阻止することが可能である。しかしながら、急な坂道では、ブレーキによって付与可能な最大の制動力であっても、動きを阻止するには十分でないかもしれないことが理解される。
【0013】
前記システムは、ブレーキ駆動手段に連動する、ブレーキペダルと、ブレーキペダル位置検出センサとを備えていてもよい。一部の例では、ドライバーの入力は、ブレーキ制御手段が制動力を単にモニターする場合に、付加的な制動力のために必要なことを予め取り除く。したがって、ブレーキ制御手段は、適切な制動力がドライバーからの入力、例えば、ブレーキペダルによって、既に付与されているとき、供給される制動力に追加するだけであるのが好ましい。本発明では、制動力は、追加のドライバーの入力に必要とされるように供給される利点がある。制動力は、全ての車輪に付与されるのが好ましい。
【0014】
レーキ制御手段は、(モニターされたアクセル/スロットルペダルの位置に基づいて)選択されたギアに付与される駆動トルクを検出し、かつ、付与された駆動トルクが予め決められたレベル以下であれば、予め決められた制限時間(例えば、0.5〜5秒、好ましくは、1〜3秒までに)を延長するために設けられている。予め決められたレベルは、いかなる制動力もなしに車両を停止状態に維持することが必要とされる駆動トルクのレベルに一致していればよく、検出された車両の傾き、又は、選択されたギアに基づいて、適宜、力学的に計算すればよい。
【0015】
また、前記システムは、ハンドブレーキの状態に対応していればよく、そのために、ハンドブレーキと、ブレーキ制御手段に接続されるハンドブレーキ位置検出センサとを備え、それらに連動して動作すればよい。ブレーキ制御手段は、ハンドブレーキに対応して制動力を終了させるように設ければよい。同様に、付加的な安全のために、ブレーキ制御手段は、ドアの開放に対応して制動力を終了させるように設ければよい。ブレーキ制御手段は、単一の電子制御ユニットであってもよいし、あるいは、これに代えて、複数のユニット又はモジュールであってもよい。
【0016】
ブレーキ制御手段は、車両が、選択されたギアに連動する、意図する方向への動きとは反対方向(すなわち、意図しない方向、一般的には坂道の下り方向)に、予め決められた制限速度を超えた速度で移動するとき、ブレーキ駆動手段が制動力を作用させることを保証するように、付加的に、あるいは、代わりに設ければよい。このように、意図しない方向への過度な動きを防止することができ、例えば、車両のエンストを防止することにより、ドライバーにとってより扱いやすくなる。5km/h以下に速度を制限することは、エンストを防止するのに好ましい。
【0017】
同様な理由のため、ブレーキ制御手段は、車両が、選択されたギアに連動する、意図する方向への動きとは反対方向に、予め決められた加速度の制限を超えて加速して移動したとき、ブレーキ駆動手段が制動力を付与することを保証するように設けるようにしてもよい。1ms−2以下の加速度が好ましい。
【0018】
便宜上、ブレーキ制御手段は、車両の傾きを決定するために設けるようにしてもよい。このため、前記システムは、ブレーキ制御手段に接続される傾斜センサを備えてもよいし、又、これに連動して動作するようにしてもよい。速度の制限、又は、加速度の制限は、検出された傾きとは逆の関係で、例えば、ルックアップ表に基づいて、力学的に決定されるのが都合がよい。
【0019】
前記システムは、ドライバーのアクセル(又はスロットル)ペダルと、ブレーキ制御手段が、選択されたギアに対する駆動トルクを検出できるようにブレーキ制御手段に接続されたアクセルペダル位置検出センサとを備えてもよいし、あるいは、これらと連動して駆動してもよい。したがって、ブレーキ制御手段は、(モニターされたアクセルペダルの位置に基づいて)選択されたギアに対する駆動トルクを検出し、かつ、検出された駆動トルクが予め決められたレベルを超えているとき、ブレーキ駆動手段によって付与される制動力を解除するために設けられている。前記レベルは、どのような制動力もなく、車両が停止状態を維持するのに必要とされる駆動トルクのレベルに一致していればよいし、検出される車両の傾き、又は、選択されたギアに基づいて、随時、力学的に計算されてもよい。
【0020】
ブレーキ制御システムは、駆動及び非駆動状態を有していてもよく、駆動及び非駆動状態の間で切り替えるためのユーザインターフェイスを備えていてもよい。安全性を高めるため、前記システムの駆動状態は車両エンジンの駆動状態から独立していてもよい。これにより、エンジンのエンストが前記システムを危険にさらすことがない。
【0021】
ブレーキ制御手段によって保証される制動力は、車両の傾き、すなわち、車両が位置する坂道の傾斜に基づいて、付加的にあるいは代わりに決定するようにしてもよい。例えば、ブレーキ制御手段は、車両の傾きを検出し、かつ、(意図する、又は、意図しない)下り方向への車両の動きを制限するために、ブレーキ駆動手段に制動力を作用させるように設けられていてもよい。この意味で、制限は、前述の停止状態の維持、又は、速度内での動作の制限、又は、前述の加速度の制限に言及してもよい。
【0022】
前記ブレーキ制御システムは、ヨーロッパ特許第0784551号公報、又は、ヨーロッパ特許第177133A1公報等の、他のブレーキ制御手段に一体化されてもよいし、これらに関連した機能を有していてもよい。
【0023】
保護を求める本発明の他の態様は、自動車のブレーキを制御する方法であって、車両を、関連した意図する方向へと移動させ、(必要であれば)ドライバーのブレーキ入力を検出し、ドライバーのブレーキ入力を追加するために、制動力を付与することにより選択された駆動ギアに連動する意図する方向の動きとは反対方向への車両の動きを制限する方法である。前記方法は、さらに、車両がブレーキを踏まれて止まるとき、選択されたギアに関連して意図する方向の動きとは反対方向への車両の動きを阻止するために制動力を付与するものである。前記方法は、さらに、車両がブレーキを踏まれて止まった後、予め決められた制限時間の間、制動力を保証するものである。
【0024】
保護を求める本発明のさらに他の態様は、本発明の第1態様に係るブレーキ制御システムを備えた自動車である。
【0025】
本出願の範囲内で、前述の段落、又は、後述する明細書及び図面に記載された、種々の態様、実施例、特徴、例、及び、代替物は、独立していてもよいし、どのように組み合わされてもよい。
【0026】
本発明の一態様について記載された特徴及び利点は、特徴の矛盾があるものを除いて、変更すべきところは変更して、本発明のいずれの他の態様にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1形式を具現化した自動車のためのブレーキ制御システムの斜視図である。
図2図1のブレーキ制御システムの動作を要約したフローチャートである。
図3】一例としての図1及び図2ブレーキ制御システムの動作を図示する時系列プロットのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1において、点線で囲まれた、本発明の第1実施形態に係る、ヒルディセントモードを有するブレーキ制御システムを備えた自動車10が示されている。
【0029】
ヒルディセントモードが動作しているとき、ブレーキ制御システムは、本発明の目的のために駆動状態となっている。一方、ヒルディセントモードが動作していないとき、ブレーキ制御システムは本発明の目的のために駆動していない。ブレーキ制御システムは、付加的に、ヨーロッパ特許第0784551やヨーロッパ特許第1777133号公報等の発明とは関係しない他のブレーキ機能を発揮するようにしてもよい。
【0030】
ブレーキ制御システムは、従来と同様な手法で、4つの車輪14のそれぞれにディスクブレーキ11を備えたブレーキ配列を備える。各ディスクブレーキ11は、ブレーキ駆動手段として機能する液圧制御(HC)ユニット14によって液圧ライン13を介して液圧駆動する。前記HCユニット14は、ブレーキ制御手段として機能する電子制御(EC)ユニット15によって制御される。図1は、本発明に合致するブレーキ制御システムの最も重要な機能部品の単なる略図である。前記ブレーキ制御システムの詳細は、ヨーロッパ特許第0784551号公報に記載され、参考として明細書に含まれているので、これ以上は記載しない。
【0031】
ECユニット15は、検出手段すなわち車両速度センサ16から車両速度信号を受信し、各車輪12の車輪速度センサ17から個々の車輪速度信号を受信し、アクセルペダル位置検出センサ19を一体化したアクセル(又はスロットル)ペダル18からドライバー命令信号を受信する。また、ECユニット15は、ドライバーのヒル制御スイッチ20からヒルディセント信号を受信し、駆動ギアセンサ21からギア信号を受信し、傾斜検出手段、ここでの例では傾斜計22から傾斜角度信号を受信する。ECユニット15は、ブレーキペダル24のブレーキ光スイッチ9からペダルブレーキ信号を受信する。
【0032】
また、ブレーキペダル24は、HCユニット14の一部を形成するブレーキ圧力センサ23に接続されるマスターシリンダ8に連動する。ブレーキ圧力センサ23は、ECユニット15にドライバーブレーキ信号を送信するために設けられている。
【0033】
ECユニット15は、ヒル制御スイッチ20がヒルディセントモードを選択するためにドライバーによってスイッチが切り替えられるときはいつでも、HCユニット14を制御するために駆動する。ECユニットは、ブレーキ及びアクセルペダル24、18から動作信号に連動して(すなわち、追加して)駆動可能である。
【0034】
自動車を運転しているとき、坂道で停止し、再び上り方向へと移動を再開することが必要とされるかもしれない。これにより、例えば、前進ギアから後退ギアに切り替えることにより下方移動から上方移動、あるいは、その逆へと駆動方向を変更することが必要とされるときがあるかもしれない。特に、この操作は、急な坂道では、一般に「坂道発進」と言われるが、経験の浅いドライバーが行うのは困難である。
【0035】
「坂道発進」の操作でドライバーを助け、車両を制御するため、ヒルディセントモードが実行されると、ECユニット15が、まず、ギアセンサ21により選択された駆動ギアを検出し、意図する運動方向(すなわち、前方又は後方)を決定するように設定(配置)されている。ギアが選択されれば、次いでECユニット15は、HCユニット14が制動力を付与することを保証することにより選択された駆動ギアに連動する、意図する方向の動きとは反対方向(すなわち、意図しない方向、一般には下り方向)への車両の移動を制限する。
【0036】
特に、図2において、ECユニット15は、車両速度センサ16及びブレーキ圧力センサ23を利用して車両の動作状態をモニターし、次のように車両の動きを制限するように構成されている。
【0037】
i)車両がブレーキを踏まれて止まれば、意図しない方向への動きが予め決められた時間で阻止される。そして、
ii)車両が意図しない方向に移動していれば、車両の移動速度及び加速度は予め決められた限度で制限される。
【0038】
前記ブレーキ制御システムの操作モードは図2のフローチャートに従ってさらに詳細に記載される。
【0039】
フローチャートの左側に図示された第1操作モードに入るのは、ECユニット15が、車両速度センサ16とブレーキ圧力センサ23から、車両がブレーキを踏まれて止まることが決定されるときである。そのとき、ECユニット15は、ギアセンサ21の補助によって既に決定されている、意図する方向への移動が上りであるか否かを、傾斜計22で確認する。
【0040】
意図する方向の移動が上りであれば、ECユニット15は、それ以上駆動せず、車両の動作状態のモニターへと復帰する。前述のように、ヨーロッパ特許第0784551号公報又はヨーロッパ特許第1777133号公報等に記載されるような他のヒルディセントの特徴は、そのうちに実施されるかもしれない。
【0041】
一方、意図する方向の移動が下りであれば、ECユニット15はアクセルペダル位置検出センサ19に基づいて、ドライバーが予め決められたレベル以上に駆動トルクを付与しているか否かをモニターし続ける。予め決められたレベルが力学的に決定され、それは、ブレーキの利用なしに、選択されたギアで車両を停止状態に保持することが要求される駆動トルクにほぼ近い値を示す。
【0042】
選択されたギアによって付与される駆動トルクが予め決められたレベルを超えることが分かれば、ECユニット15は位置を維持するか、あるいは、駆動トルクのみによって移動することが想定される。そして、ECユニット15は、それ移動動作せず、車両の動作状態のモニタ−に復帰する。
【0043】
一方、選択されたギアによって付与される駆動トルクが予め決められたレベル以下であると分かれば、ECユニット15は付与された駆動トルクをモニターし続け、同時に十分な制動力が車両を停止状態に保持するために付与されているか否かを確認する。付与された制動力が不十分(僅か)であれば、ECユニット15はHCユニット14に必須の付加的な制動力を付与し、それは予め決められた制限時間、例えば、2秒間保持される。制限時間が経過すると、ECユニット15によって生成された制動力は解除される(すなわち、一般的には無効となる)。
【0044】
図2に点線で部分的に示す)変形例では、制限時間が経過すれば、制動力を解除する代わりに、ECユニットは、トルクが付与されるか否かをモニターするために切り替えられ、付与された駆動トルクが予め決められた最小値を超えるが、予め決められた制限値以下を維持するならば、予め決められた制限時間を、例えば、さらに3秒まで延長する。この変形例では、ECユニット15によって生成される制動力は、一旦、選択されたギアによって付与された駆動トルクが予め決められたレベルを超えるか、あるいは、予め決められた最小値以下となれば、解除される。
【0045】
第1操作モードでECユニット15によって付与された制動力は、ハンドブレーキ(図示せず)によっていつでも無効にされ、その場合、ECユニット15によって生成される制動力は解除される。同時に、付加的な安全のために、第1操作モードはドアの開放によって無効とされ、ECユニットはドアセンサ(図示せず)によって検出する。
【0046】
図2のフローチャートの右側に図示される第2操作モードに入るのは、ECユニットが車両速度センサ16から車両が意図しない方向に移動していると決定するときである。一般に、そのような動作が起こるのは、車両が坂道を下っているとき、例えば、ブレーキが第1操作モードで解放されたり、あるいは、ドライバーがブレーキペダルを使用せずに上方移動中に駆動トルクを除去又は抑制されたりした(すなわち、停止するためにブレーキが踏まれていない)場合である。
【0047】
第2操作モードでは、ECユニット15は、車両が予め決められた制限値を超える、ある速度又は加速度で意図しない方向へと移動しているか否かを連続して確認する。速度又は加速度(あるいはその両方)が予め決められた制限値を超えていれば、ECユニット15はHCユニット14に、速度又は加速度を予め決められた制限値内とするために適切な制動力を付与して維持するように命令を送信する。
【0048】
第2操作モードは、車両が意図しない方向に移動するのを停止するときに終了する。
【0049】
図3は、ブレーキ制御システムの第1操作モードを図示する時系列プロットを示す。これらのプロットでは、時間(t)に対してプロットされた種々の値が示されており、ライン「圧力」は車輪での液圧ブレーキの圧力を示し、ライン「速度」は車両速度を示し、ライン「BLS pressed」はブレーキ圧力センサ23によって測定されるドライバーのブレーキ結果を示し、ライン「Throttle pressed」は、加速ペダル位置検出センサ19によって検出されるドライバーの加速度結果を示す。
【0050】
図3は、(1)でドライバーが自動車を上り坂で運転し、(2)で停止させるためにブレーキをかけ始めたシナリオを図示する。ドライバーは坂道で車両を停止させるために、ブレーキペダルを踏み続ける。(3)で、ドライバーはブレーキペダルを離す。ブレーキ制御システムは、車両を坂道で停止させるために十分な制動力に制御されて維持される(制動力を制御するシステムは、図面では点線で追加されている。)。(4)では、ドライバーがブレーキを離し始め、ブレーキ制御システムが、十分にドライバーの制御下(5)になるまで、その維持された圧力を低下させる。
【0051】
さらに、以下の操作例は、本発明の第1実施形態を説明するために提供されている。
【0052】
・坂道での車両の停止では、ドライバーがブレーキペダルを踏んでおり、その後、坂道発進で上り続ける。車両は前進ギアで上り坂を移動し、後退ギアで下り坂を移動する。ドライバーがブレーキペダルを離し、スロットルペダルに足を移動させる。ブレーキ制御システムは、ドライバーが足をブレーキからスロットルペダルに移動させるときには静止状態を維持する。ドライバーがスロットルペダルに十分な力を付与すると上ることが可能となり、車両は前進する。ブレーキ制御システムは駆動トルクを増大させ、保持期間を終了させて、ブレーキ圧を解放し、車両を後退させることなく坂道発進を可能とする。
【0053】
・車両の坂道の上りでは、ドライバーがブレーキを使用することなく停止している。車両は、前進ギアで前進して、あるいは、後退ギアで後退して、坂道を上りへと駆動されている。ドライバーはスロットルペダルを離し、他のどのペダルにも力を付与したり、あるいは、制御したりしない。車両は停止し(クリープトルクは車両を動作状態に維持するのには十分でない)、直ぐに選択されたギアに反して坂道を後退し始める。車両速度は5km/hに制限され、ドライバーがスロットルやブレーキに力を付与する機会のある、20〜30秒間でこの速度を超えるが、加速度0ms−2に制限される。
【0054】
・坂道での車両の停止では、ドライバーはブレーキペダルを踏んだ状態を維持し、その後、全てのペダルを離す。車両は前進ギアで上り、後退ギアで下る。ドライバーがブレーキペダルを使用することにより坂道に留まる。ドライバーは、足をブレーキペダルから離すが、スロットルペダルには接近させない。ブレーキ制御システムは、圧力が減少し、車両が坂道を転がり降り始める2秒間、車両を停止状態に保持する。車両速度は5km/hに制限され、ドライバーがスロットルやブレーキに力を付与する機会のある、20〜30秒間でこの速度を超えるが加速度0ms−2に制限される。
【0055】
・車両は坂道で停止し、ドライバーはブレーキペダルを踏み続け、ブレーキ制御システムは駆動する。車両は前進ギアで上り、後退ギアで下る。そして、ドライバーがブレーキペダルを離し、車両がブレーキ制御システムによって保持される。その後、ドライバーはギア位置をニュートラルに変更する。ブレーキ制御システムは、保持圧を解放(減少)させる。
【0056】
・車両が坂道で停止し、ドライバーがブレーキペダルを踏むと、ブレーキ制御システムは駆動する。車両は上下動する。そして、ドライバーがブレーキペダルを解放し、車両がブレーキ制御システムによって保持される。ブレーキ制御システムが駆動している間に、ドライバーはハンドブレーキを動作させる。ブレーキ制御システムは保持圧を解放(減少)させる。
【符号の説明】
【0057】
9…ブレーキ光スイッチ
10…自動車
11…ディスクブレーキ
13…液圧ライン
14…液圧制御ユニット(HCユニット)
15…電子制御ユニット(ECユニット)
16…車両速度センサ
17…車輪速度センサ
18…アクセルペダル
20…ヒル制御スイッチ
21…駆動ギアセンサ
22…傾斜計
23…ブレーキ圧力センサ
24…ブレーキペダル
図1
図2
図3