(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147212
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ワイヤー吊り下げ式LED集魚灯
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20170607BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20170607BHJP
F21V 29/56 20150101ALI20170607BHJP
F21V 21/30 20060101ALI20170607BHJP
F21V 21/008 20060101ALI20170607BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20170607BHJP
A01K 79/00 20060101ALI20170607BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20170607BHJP
【FI】
F21S2/00 642
H05K7/20 M
F21V29/56
F21V21/30 100
F21V21/008
H01L33/00 L
A01K79/00 H
F21Y115:10
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-58962(P2014-58962)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-170590(P2015-170590A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】511078473
【氏名又は名称】宮本電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090088
【弁理士】
【氏名又は名称】原崎 正
(72)【発明者】
【氏名】大河原 政則
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3180035(JP,U)
【文献】
国際公開第2013/183693(WO,A1)
【文献】
実開平06−037095(JP,U)
【文献】
特開2009−045061(JP,A)
【文献】
特開平09−196120(JP,A)
【文献】
特開2014−063642(JP,A)
【文献】
特開2011−175770(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0096539(US,A1)
【文献】
特開2010−135747(JP,A)
【文献】
特開2002−120033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00−19/00
F21V 1/00−15/04
F21V21/00−99/00
A01K65/00
A01K73/06−73/10
A01K79/00−81/06
A01K91/18−91/18
H01L23/34−23/46
B63B 1/00−69/00
B63J 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を発光源とするLED集魚灯で、発光部のサイズが概略150mm×150mmを超えないと共に、集魚灯本体のCOB発光モジュールに接触して配置された放熱部材に屈曲した状態で埋め込まれた銅管を備え、該銅管に冷媒を循環させて放熱を行い、発光部全体を覆うように少なくとも一枚のレンズが組み合わされ、発光部からの光を集光、反射する傘型のリフレクタが発光部を包み込む様に配置され、発熱部近傍を、海中から汲み上げた海水で熱交換器を介して冷却した冷媒をフレキシブルなパイプを通して循環させ、冷却する構造を備え、上下に平行に張られた少なくとも2本のワイヤーで吊り下げる構造を備え、十字ヒンジを介して光照射部とワイヤー取り付け部とが結合していることを特徴とするワイヤー吊り上げ式LED集魚灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED集魚灯の発光素子に写真1ならびに写真3で示すCOBタイプのLED発光モジュール1(COB:Chip On Board、以後COB発光モジュールと表記)を使用し、操業域の海水を用いて
図2の熱交換器9を介して冷却した冷媒(水、不凍液など)でCOB発光モジュール1近傍の放熱を行い、COB発光モジュール1の温度上昇に伴う発光効率と寿命の低下を抑える強制冷却システムを備え、船の振動や揺れを吸収するワイヤー吊り下げ式のLED集魚灯を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
LED素子近傍の放熱については特許文献1にあるような強制水冷式あるいは特許文献2にあるような強制水冷と強制空冷を組合せる方式などが既に提案されている。また、LED集魚灯については非特許文献1にみられるように自然空冷の例がある。これは写真2に示すように砲弾型LED素子のような低出力の素子を疎に実装してあるため発熱量も少なく強制冷却手段を必要としないからである。しかし、COB光モジュール1を搭載したLED集魚灯では発熱量が大きく、強制冷却手段は必須であるが、本発明が提案するように操業域の海水を汲み上げて
図2の熱交換器8を介して不凍液を冷却し、それを発熱部近傍に配した
図2および
図4の放熱部材3等に埋め込まれた
図4の銅管15などに循環させて放熱を行う方式については未だに提案されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】平成19年度 省エネルギー技術導入促進事業実験成績および評価「中型イカ釣り漁船(138トン型)におけるLED集魚灯導入実証化試験(P3)」(海洋水産システム協会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、イカ釣り船等の集魚灯は発光素子としてメタルハライドランプを用いるのが一般的である。しかし、中型船になると、それらの光源の消費電力は200KWを上回り、そのための専用の発電機(補機)を装備しなければならず、年間の燃料代も1000万円を超すなど操業採算性を著しく圧迫しているのが実状である。そのためにメタルハライドランプに替えてLED素子を用いることが検討されてきたが、
図1に示すように発光効率がメタルハライドランプの大よそ半分の青色LED素子を使用したり、写真2のように低輝度の砲弾型のLED素子を低い密度でパネル上に並べるなどの単純な構造であったために、全体的に暗かったり、遠くまで光が届かなかったりと課題も多く実用化に至っていないのが現状である。
近年LEDは高密度集積化が驚異的な速さで進んでいて、なかでもCOB発光モジュールと称するものは発光面積72mm×72mmで1.1KW、170,000ルーメンというような仕様のものも実用化の段階に入っている。高密度集積化されたCOB発光モジュールを使用するメリットは、小面積で高輝度の発光面が得られるために
図2および写真3のように一個のリフレクター2あるいは一個のレンズなどを用いるなどして比較的単純な構造で容易に集光ならびに遠距離照射が可能になることである。
しかし、半導体チップの高密度集積化にともないCOB光モジュールからの発熱量が大幅に増加し、強制冷却手段を講じないと半導体チップの特性を劣化させるという課題がある。現在高出力COB光モジュールの冷却方法として一般的に用いられているのがAlなどの加工性ならびに放熱性が良好な金属ブロックを加工して放熱面積を大きくしたヒートシンク或いはヒートシンクの内部にヒートパイプを内蔵させるなどの方式があるが、これらの方式では外形寸法ならびに重量が大きくなり、かつコストも高いなど、他の冷却方式の開発が求められている。写真3にヒートパイプ方式の試作器の一例を示す。600Wのもので総重量が15kgほどになる。
また、既存のメタルハライドランプ製の集魚灯は集まった魚群を船の揺れによる光のゆらぎで散らさないように、かつ船の振動を緩衝するためにワイヤー吊り下げ式になっているが、大きくて重いヒートパイプ式の集魚灯をワイヤー吊り下げ方式にして設置するのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワイヤー吊り下げ式のCOB光モジュール搭載集魚灯を実現するために放熱構造が単純で軽量化が可能な強制冷却システムを備えたLED集魚灯を提供するものである。
本発明の強制冷却システムの概念図を
図2に示す。通常漁船には海水を循環させる設備、配管が装備されている。その配管から分岐して海水を熱交換器8(ラインクーラー若しくはオイルクーラー。船舶用品として一般に売られている)に通し、冷媒(不凍液)を冷却、循環させてCOB光モジュール1に接触して配置された放熱部材3を冷却する。また、エンジンを冷却し船外へ放出されている海水(エンジン冷却用海水の取水・放出側の水温の差は約+2℃)を本システムの熱交換器8に通しCOB光モジュール1を冷却するようにすると新たに海水の取水の為の設備機材が必要とせずコスト低減が図れる。上記の二つの方式とも、小さくて軽い放熱部材3で十分な放熱が可能となり、吊り下げ式のCOB光モジュール搭載した低コストLED集魚灯が実現可能となる。なお
図2に示すように、
配管5のループ内には、リザーブタンク7ならびに循環ポンプ6が接続して配置される。
不凍液はフレキシブルな樹脂あるいはゴムのチューブ内を循環させ、
図3に示すように集魚灯は船上の作業の障害にならない高さに上下平行に張られた2本のワイヤー11、12を介して吊り下げる。
図3にロープ吊り下げ構造を示す。船の揺れなどの前後左右の動きを吸収して集魚灯本体4を定位置に保持する役割を果たす十字ヒンジ13に接続した取付板10の上部折り曲げ部を、上下に平行に張られた2本のワイヤー11、12のうちの上の方のワイヤー12に引っかけ、下の方のワイヤー12には取付板10の十字ヒンジ13に近い位置を二組のUボールト9で固定する構造になっている。
【発明の効果】
【0007】
図3に示すワイヤー吊り下げ式構造にすることで集魚灯本体4は船の振動をまともに受けることがなくなり、かつ船が揺れても常に定位置に保持される。また、
図4に本発明の放熱部材の構造の概略を示す。放熱部材3は外形寸法が180mm×180mm×60tのAlブロックで、内部には
銅管15(内径φ14、外径φ16)が屈曲した状態で埋め込まれている。
放熱部材熱解析シミュレーションによると600WのCOB光モジュールを4基冷却する時、流入水温度25℃、流入水量12.5L/minの条件で、COB光モジュールの表面温度は1基目 42.5℃、4基目 44.9℃となり、60℃以下に抑えることが可能であることが分かる。COB光モジュールのジャンクション温度の上限は100〜110℃とされているので、表面温度に直すと80〜90℃となる。本シミュレーション結果は十分な冷却効果を示すことが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2ならびに
図5に本発明のLED集魚灯システムの構成ならびに艤装概念図を示す。
〔実施例〕
船下の水中から汲み上げた海水を熱交換器8に導き、そこで熱交換された冷媒(水、不凍液など)を
集魚灯本体4のCOB発光モジュール1に接触して配置された
放熱部材3に埋め込まれた銅管15に循環させることで十分な放熱を行い、かつ船体への艤装は
図5に示すようにメタルハライドランプ200KW級相当船では600WのLED集魚灯を片舷3基、全船では6基を大よそ10m間隔で配置する。尚集魚灯本体4は船の振動ならびに揺れを吸収するために
図3に示すようにワイヤー吊り下げ式とする。
【実施例】
船下の水中から汲み上げた海水を熱交換器8に導き、そこで熱交換された冷媒(水、不凍液など)を集魚灯本体5のCOB発光モジュール1に接触して配置された放熱部材4に埋め込まれた銅管15に循環させることで十分な放熱を行い、かつ船体への艤装は
図5に示すようにメタルハライドランプ200KW級相当船では600WのLED集魚灯を片舷3基、全船では6基を大よそ10m間隔で配置する。尚集魚灯本体4は船の振動ならびに揺れを吸収するために
図3に示すようにワイヤー吊り下げ式とする。
【符号の説明】
【0010】
1 COB光モジュール
2 リフレクター
3 放熱部材
4 集魚灯本体
5 配管
6 循環ポンプ
7 リザーブタンク
8 熱交換器
9 Uボルト
10取付板
11ワイヤー上
12ワイヤー下
13十字ヒンジ
14流入口
15銅管
16Cu基板
17船体