【実施例】
【0018】
図1に示すように、電動ポンプ装置10は、油圧を発生するポンプ20と、このポンプ20を駆動するモータ30と、ポンプ軸21とモータ軸31を機械的に連結する軸継手40と、ポンプ20及びモータ30を支えるブラケット50とを備え、水平な取付け面61を有する機台60に取付けられている。機台60は鋼製台の他、コンクリート製の基礎や床であってもよく、種類は問わない。
【0019】
電動ポンプ装置10は、油圧式射出成形機に好適である。すなわち、型締シリンダ、射出シリンダ、射出機移動シリンダへ高圧の油を供給する装置である。1基で多数のシリンダへ油圧を供給する。多数のシリンダの作動タイミングに差があり、ポンプの吐出量が大きく変化する。ポンプの回転数を変更して対応させるため、モータ30はサーボモータ30が用いられる。サーボモータ30の内部構造は、後述の
図2で説明する。
【0020】
ポンプ20は油圧ポンプであり、ベーンポンプ、ギヤポンプ、ルーツポンプなど回転式ポンプが適用できる。回転式であれば、ポンプ軸21の軸方向への振動は小さい。
【0021】
モータ30は、サーボモータであって、ブラケット50にボルト32で連結されるモータフランジ33を前面に備え、このモータフランジ33を貫通すると共に水平に配置されるモータ軸31を備える。
【0022】
汎用モータは、起動と停止の間は一定速度で連続的して運転する。一方、サーボモータ30は制御モータとも呼ばれ、起動、停止、速度変更が頻繁に繰り返される。回転体を加速するには加速エネルギーが必要となり、この加速エネルギーの大部分が軸受での摩擦抵抗で消費される。減速においても同様である。したがって、ハイ・デューティ(高頻度、高負荷)で使用されるサーボモータ30は、冷却性能を高めることが望まれる。
そこで、ファンカバー34を取付け、このファンカバー34にファン35を収納し、このファン35で強制冷却する構造が採用される。
【0023】
ファン35は、各種の構造が知られているが、全長を小さくするために、ファンモータフレーム35aにインペラー35bを取付け、ファンモータ軸35cをステー36に取付ける構造のファンモータが好んで採用される。
すなわち、ファンカバー34にステー36を立て、このステー36にファンモータ軸35cを固定する。ファンモータ軸35cを中心にファンモータフレーム35a及びインペラー35bが回転する。
ファンモータフレーム35aには、ファンモータ軸35cを回転自在に相対的に支える一対のベアリングが内蔵されている。
【0024】
ブラケット50は、機台60にボルト51で固定されるベース52と、このベース52に立てる支持板53とからなる。ただし、この支持板53は、ポンプ20及びモータ30と取付け面61との間に高さHp、Hmの大きさの隙間が確保できるように、高さ寸法が設定される。
隙間Hpに、油吸込み管63や油吐出管64を
通す。また、隙間Hmに、空気配管65、電気配線68を
通す。
【0025】
次に、
本発明に係る実施例を図面に基づいて説明する。
図2に示すように、冷却ファン付きサーボモータ30は、モータ軸31に取付けられるロータ37、及びこのロータ37を囲うステータ38を、一括収納するモータフレーム39を備え、モータ軸31の後端に連結されるセンサ69を備え、少なくともこのセンサ69を囲うファンカバー34を備え、このファンカバー34に収納されモータフレーム39を空冷するファン35を備える。
【0026】
また、ポンプ20は、ブラケット50にボルト22で連結されるポンプフランジ23を前面に備え、このポンプフランジ23を貫通すると共に水平に配置されるポンプ軸21を備え、このポンプ軸21に平行に移動するアキシアルピストン24、24を備え、アキシアルピストン24、24を作動させる斜板25を備え、これらを一括して収納するポンプケース26とを備えているフランジ付きアキシアルピストン式ポンプである。
【0027】
アキシアルピストン24、24は、ポンプロータ27に設けられており、ポンプ軸21で回される。すると、アキシアルピストン24、24が斜板25により、軸方向に移動し、油圧を発生する。レシプロ(往復運動)ポンプであるため、回転ポンプより高圧の油圧が得られる。よって、用途によっては、アキシアルピストン式ポンプが採用される。
【0028】
レシプロ(往復運動)ポンプは、回転ポンプに比較して、ポンプ軸21方向の振動が格段に大きくなる。この振動が、モータ軸31に伝わると、モータフレーム39が振動し、このモータフレーム39に止められているファンカバー34が振動し、ステー36を介してファンモータ軸35cが振動する。
【0029】
図から明らかなように、サーボモータ30がブラケット50に片持ち支持されているため、モータフランジ33での振幅は僅かであるが、ブラケット50から離れているファンモータ軸35cでの振幅は大きくなる。ファンモータ軸35cを支える一対のベアリングは小さなサイズであるため、耐久性が劣り、大きな振幅を受けると比較的短時間で寿命を迎える。
寿命を延ばすためにベアリングのサイズを大きくすると、ファン35が全体的に大きくなり、電動ポンプ装置10のコンパクト化が難しくなると共に製造コストが上昇する。
【0030】
電動ポンプ装置10のコンパクト化及び製造コストの低減が求められるため、本発明では、次に述べる工夫を施した。
第1に、ブラケット50の構造を改良し、ポンプ20側の振動がモータ30側へ伝わりにくくした。
第2に、ブラケット50とポンプ20の間に、吸振リング70を介在させ、ポンプ20側の振動が、一層モータ30側へ伝わりにくくした。
第3に、軸継手40の構造を改良した。
【0031】
これら第1〜第3の改良点を、順に説明する。
[第1の改良点]:
図2に示すように、支持板53は、1つのブロックではなく、ポンプ側支持板53Pと、このポンプ支持板53から所定の距離Lだけ離して配置されるモータ側支持板53Mとで構成する。ポンプ20側の振動は、ポンプ側支持板53Pに伝わり、次にベース52に伝わる。ベース52は機台60に固定されているため、殆ど振動しない。すなわち、ベース52は減衰作用を発揮する。次に、減衰された振動がモータ側支持板53Mに伝わる。よって、ファン35に伝わる振動、振幅は小さくなる。
【0032】
[第2の改良点]:
図2の3部拡大図である
図3に示すように、ポンプ側支持板53Pとポンプフランジ23の間に、振動を吸収するラバーを構成主体とする吸振リング70を介在させる。この吸振リング70にポンプフランジ23をボルト22で連結する。また、吸振リング70にポンプ側支持板53Pを別のボルト71で連結する。ポンプ側の振動はボルト22を振動させるが、この振動は吸振リング70で吸収される。吸振リング70で減衰されるため、ボルト71の振動は僅かとなる。
【0033】
吸振リング70を設けることにより、
図2に想像線で示すブリッジ55、56を設けることが許される。ブリッジ55、56を設けることで、ブラケット50の剛性を高めることができる。また、
図1においても、ブラケット50とポンプフランジ23の間に、吸振リング70を介在させることは好ましい。
【0034】
[第3の改良点]:
軸継手40として、
図4に示すようなフレキシブル軸継手40を採用する。
図5に示すように、このフレキシブル軸継手40は、第1のボス41と、この第1のボス41に一体形成される第1のフランジ42と、第2のボス43と、この第2のボス43に一体形成される第2のフランジ44と、第1・第2のフランジ42、44で挟まれるばね板45(この例では3枚)と、これらのばね板45を第1のフランジ42に止める第1のボルト46(この例では3本)と、ばね板45を第2のフランジ44に止める第2のボルト47(この例では3本)とからなる。
【0035】
第1のボス41には、軸に直交するように切られた割り48が入っており、第1ロックボルト49を締めると軸穴の径が小さくなる。第2のボス43も同様である。
【0036】
組立後の断面を、
図6に示す。
図6に示すように、第1のフランジ42に、第1のボルト46、ワッシャ73、74で、板ばね45が止められる。一方、第2のフランジ44に、第2のボルト47、ワッシャ73、74で、板ばね45が止められる。なお、第2のボルト47は、第1のフランジ42に設けた穴75に通された六角レンチで、最後に締められる。
【0037】
モータトルクは、モータ軸31から第1のフランジ42、第1のボルト46、板ばね45、第2のボルト47、第2のフランジ44を介してポンプ軸21に伝えられる(矢印(1))。一方、ポンプ軸21の振動は、矢印(1)の逆順でモータ軸31に向かう。可撓性の板ばね45が減衰性能を有するため、ポンプ軸21の振動は、減衰されてモータ軸31に伝わる。
【0038】
以上に述べた第1〜第3の改良点の少なくとも1つを実施することで、
図2に示すファン35の振動対策を講じることができ、ファン35の長寿命化を図ることができる。
【0039】
また、
図2において、フレキシブル軸継手40の2本のロックボルト49、76のうち、一方のロックボルト49が距離Lの間にあって、このロックボルト49を外から回転させることができれば、他方のロックボルト76がポンプ側支持板53Pで隠されても問題はない。よって、距離Lの設定はかなり自由に行える。
【0040】
尚、本発明の電動ポンプ装置10は、油圧式射出成形機に好適であるが、その他の油圧回路に配置することは差し支えない。
また、フレキシブル軸継手40は、板ばねをラバーに代えたラバーカップリグであってもよく、種類は任意である。