(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147265
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】航空機ターボエンジンの金属部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 19/00 20060101AFI20170607BHJP
B22D 19/04 20060101ALI20170607BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20170607BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20170607BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
B22D19/00 Y
B22D19/00 Q
B22D19/04
B22F3/105
B22F3/16
F02C7/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-537694(P2014-537694)
(86)(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公表番号】特表2015-502256(P2015-502256A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】FR2012052436
(87)【国際公開番号】WO2013060981
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】1159733
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビラロー,トマ
(72)【発明者】
【氏名】リクス,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ボディモン,シリル
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−025280(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/150805(WO,A1)
【文献】
特開2001−152204(JP,A)
【文献】
特開2008−069449(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/024258(WO,A1)
【文献】
特開2005−171299(JP,A)
【文献】
特開2004−027328(JP,A)
【文献】
特表2005−536353(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0035069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/06
B22D 19/00
B22F 1/00− 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品(200)を製造する方法にして、前記部品(200)が、通常0.3ミリメートルと4ミリメートルとの間で構成される小さな厚さを有する第1の組の要素(203)と、通常4ミリメートルよりも大きい、大きな厚さを有する第2の組の要素(201;202)とを備え、金属部品が、航空機用ターボエンジンの一部である方法であって、
粉末層の表面をレーザビームまたは電子ビームで走査することによって金属粉末を選択的に溶融することによって第2の組の要素のうちの要素(201;202)の周辺部分(301)を形成するステップと、
前記周辺部分(301)によって画定される内部領域(302)を液体金属で充填する作業を行うことによって、第2の組の要素のうちの要素(201;202)の周辺部分(301)をモールドとして使用するステップと、
周辺部分(301)によって画定され、金属で充填される内部領域(302)を凝固させるように金属部品(200)を冷却するステップと
から成るさまざまなステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
粉末層の表面をレーザビームまたは電子ビームで走査することによって粉末を選択的に溶融することによって第1の組の要素のうちの要素(203)を形成するステップから成る追加のステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の組の要素のうちの要素(201;202)の周辺部分(301)を形成するステップから成るステップ、および第1の組の要素のうちの要素(203)を形成するステップから成るステップが、第2の組の要素のうちの要素(201;202)の周辺部分(301)によって画定される内部領域(302)を充填する作業の前に実行されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
粉末を選択的に溶融することによって形成される第2の組の要素のうちの要素(201;202)の周辺部分(301)が、開口容積を画定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
粉末を選択的に溶融することによって形成される第2の組の要素のうちの要素(201;202)の周辺部分(301)が、少なくとも1つのオリフィスを有する閉鎖容積を画定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の組の要素のうちの要素(201;202)の周辺部分(301)によって画定される内部領域(302)を充填する作業の前に、前記粉末を選択的に溶融することによって第2の組の要素のうちの要素(203)の周辺部分(301)を形成するステップ中に、使用されない粉末を除去するステップから成る追加のステップを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の組の要素のうちの要素(201;202)が、航空機のターボ機械の圧縮機タービンのプラットフォームであり、第1の組の要素のうちの要素(203)が、前記プラットフォームの間にブレンド半径を形成するブレードであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機ターボエンジンに使用される金属部品を製造する方法に関する。限定するものではなく、考慮される金属部品は、たとえばターボエンジン高圧タービン、または低圧タービンであることが有利であるが、本発明による方法は、数センチメートルの厚さを有するより厚い部分と結合する、数ミリメートルを超えない厚さを備える薄い部分を有する任意の金属部品に適用され得る。
【0002】
したがって、本発明の技術分野は、一般的に言えば、航空機エンジンの技術分野、より詳細には、同じエンジンを構成する金属部品を製造する技術分野である。
【背景技術】
【0003】
特定の方法が、現在、航空機ターボエンジンのある金属部品を製造するのに有利であり、これは、レーザビームまたは電子ビームタイプのような指向性ビームを用いて粉末を選択的に溶融する方法にある。この種の方法は、Direct Metal Laser Sintering(直接金属レーザ焼結法)、Selective Laser Melting(選択的レーザ溶融)、またはElectron Beam Melting(電子ビーム溶融)という名で知られている。
【0004】
この種の方法は、形成されるべき連続する層の位置の三次元座標が記録されている情報処理システムによって命令されるレーザビームを用いてまたは電子ビームを用いて、粉末の連続する層を溶融することによって金属部品を製造することにある。実際に、容器においては、その底部が並進可動プレートによって形成され、スクレーパまたはローラを使って第1の粉末層が配置される。この場合、層は、プレートの表面に対応する下面と、レーザビームまたは電子ビームが方向付けられ移動させられる上面とを有する。前記ビームによって供給されるエネルギーにより、凝固すると同時に金属部品の第1の層を形成する粉末の局部的な溶融が生じる。この第1の層の形成後に、プレートは、層の厚さに対応する距離だけ下げられ、次いで、第2の粉末層が、先行する層の上にスクレーパによって持ってこられる。前と同じ方法で、金属部品の第2の層がビームを使って形成される。
【0005】
これらの作業が、部品の完全な製造まで繰り返される。
【0006】
この種の製造方法により、それによって製造される金属部品を開発する時間およびコストを著しく少なくすることができる。
【0007】
しかし、比較的大きな厚さの部分を有する金属部品の場合には、この種の製造方法は相変わらず遅く、実際に、異なる連続する層のそれぞれは、20マイクロメートルと100マイクロメートルとの間で構成される厚さを有し、したがって、レーザビームまたは電子ビームタイプのエネルギー源の通過回数が高い。
【0008】
したがって、ある部品、たとえば高圧および/または低圧タービンの部品の製造時間は、ビームの走査速度、そのパワー、重ね合わされた層のそれぞれの厚さ、レーザの通過のカバレッジ率、・・・などのパラメータに依存する。この製造時間は、85時間に達する場合がある。
【0009】
さらに、液体浴が、レーザまたは電子ビームと紛末床との間の相互作用中に生じ、前記液体浴は、製造プロセス中に相対的に撹拌され、粒子または噴出物が前記液体浴から噴出される場合が多い。次いで、前記粒子または噴出物は、次に続くビームの通過を受けなければならない表面上に逆戻りし、これは製造不良の原因となる場合があり、不良は、部品の機械的強度に直接的に強い影響を与え得る。同じ領域上のビームのかなりの通過回数により、このような噴出が促進される。
【0010】
言及している問題の解決策を提供しようとするために、異なる解決策が先行技術において提案されている。
【0011】
第1の解決策は、材料のブロックから機械加工することによって金属部品を製造することにあるが、それらの形状寸法がしばしば変更され得る間に、これらの部品を開発するという観点から、このような解決策は適切ではなく、実際に、この場合、考慮される部品のそれぞれについて、特に加工サイクルおよび部品の位置決め用の工具を適合させることが必要であろう。
【0012】
第2の解決策は、鋳造によって部品を製造することにある。この種の解決策は、使用するモールドが非常に高価であるので、多数で製造される部品については比類なく興味深いことが分かり得る。この種の解決策は、考慮される部品の形状寸法が絶えず進化し得る間にターボエンジンを開発するという文脈の中で、本当に実現性があるわけでなない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主題は、レーザビームによって、または電子ビームによって選択的に溶融する技術が部分的に含まれる金属部品を製造する方法を提案し、同時に、特に非常に時間のかかる部品の製造と、粉末上のビームの通過中に噴出物が存在することにより製造された部品に機械的欠陥が出現する危険とがあり得たという主な欠陥を免れるために、この技術の使用を制限することによって、述べられている問題の解決策を提供するものである。さらに、本発明による方法は、開発プロセス中に形状寸法が比較的頻繁に進化し得る部品の場合を含めて、実施するのに費用がかからない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、本質的に、金属部品を製造する方法にして、前記部品が、通常0.3ミリメートルと4ミリメートルとの間で構成される小さな厚さを有する第1の組の要素と、通常4ミリメートルよりも大きい、大きな厚さを有する第2の組の要素とを備え、金属部品が、航空機用ターボエンジンの一部である方法であって、
粉末層の表面をレーザビームまたは電子ビームで走査することによって金属粉末を選択的に溶融することによって第2の組の要素のうちの要素の周辺部分を形成するステップと、
前記周辺部分によって画定される内部領域を液体金属で充填する作業を行うことによって、第2の組の要素のうちの要素の周辺部分をモールドとして使用するステップと、
周辺部分によって画定され、金属で充填される内部領域を凝固させるように金属部品を冷却するステップと
から成るさまざまなステップを含むことを特徴とする方法に関する。
【0015】
前の段落において述べられている主要な特性は別として、本発明による方法は、個々に考慮される次に述べることの中に、または技術的に可能なそれらの組合せに従って、1つまたは複数の相補特性を有することができ、
本方法は、粉末層の表面をレーザビームまたは電子ビームで走査することによって粉末を選択的に溶融することによって第1の組の要素のうちの要素を形成するステップから成る追加のステップを含み、
第2の組の要素のうちの要素の周辺部分を形成するステップから成るステップ、および第1の組の要素のうちの要素を形成するステップから成るステップが、第2の組の要素のうちの要素の周辺部分によって画定される内部領域を充填する作業の前に実行され、
粉末を選択的に溶融することによって形成される第2の組の要素のうちの要素の周辺部分が、開口容積を画定し、
粉末を選択的に溶融することによって形成される第2の組の要素のうちの要素の周辺部分が、少なくとも1つのオリフィスを有する閉鎖容積を画定し、
本方法は、第2の組の要素のうちの要素の周辺部分によって画定される内部領域を充填する作業の前に、前記粉末を選択的に溶融することによって第2の組の要素のうちの要素の周辺部分を形成するステップ中に、使用されない粉末を除去するステップから成る追加のステップを含み、
第2の組の要素のうちの要素が、航空機のターボ機械の圧縮機タービンのプラットフォームであり、第1の組の要素のうちの要素が、前記プラットフォームの間にブレンド半径を形成するブレードである。
【0016】
本発明およびその異なる適用は、次に来る説明を読むと、および添付の図を点検することによってよりよく理解されるであろう。
【0017】
図は、単に指し示すものとして与えられており、決して本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】粉末を選択的に溶融する作業を行うことができる装置の概略図である。
【
図2】本発明による方法の実施によって製造され得る金属部品の例の図である。
【
図3】本発明による方法によって製造する第1のステップにおける
図2の金属部品の図である。
【
図4】本発明による方法によって製造する第2のステップにおける
図2の金属部品の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
粉末を選択的に溶融することによって金属部品を製造するための装置が、
図1に示されている。この種の装置は、考慮される部品に存在する小さな厚さの要素を製造するために、本発明による方法を実施するために使用されることが有利である。
【0020】
示された装置は、金属粉末2を入れているリザーバ1を備え、その底部3は、可動であり、ジャッキのロッド4によって並進移動可能であり、さらに隣接した容器5を備え、その底部が可動プレート6で構成されているが、同様にジャッキのロッド7によって並進移動可能である。装置はさらに、水平面Aに沿って移動することによって、リザーバ1の粉末を容器5に持ってくることができるスクレーパ8を備え、またデバイス10に連結されるレーザビームまたは電子ビームを発生させる手段9を備え、ビーム11を方向付け、移動させることができる。
【0021】
この装置を使って金属部品を製造するステップは下記のものである。第一に、リザーバ1の底部3は、粉末2のある量が水平面Aの上方に位置しているように上方へ移動させられる5。次いで、スクレーパ8が、リザーバ1から前記粉末層2を掻き出すように、左から右へ移動され、容器5の中に前記粉末層2を持ってくる。粉末2の量およびプレート6の位置は、選択された一定の厚さの粉末の層12を形成するように決定される。次いで、レーザビームまたは電子ビーム11が、走査された領域において粉末2を局部的に溶融するように、容器5に形成される層12の決定された領域を走査する。溶融された領域は、製造する部品の第1の層13を形成するように凝固し、この層13は、たとえば20μmから100μm(マイクロメートル)の厚さを有する。次いで、プレート6が下げられ、次に、第2の粉末層2が、前と同じ方法で第1の粉末層の上に持ってこられる。ビーム11の制御された移動によって、金属部品の第2の層が、第1の層13上に形成される。
【0022】
これらの作業は、部品の完全な製造まで繰り返される。部品がレーザビームによって粉末2を選択的に溶融することによって層ごとに構成される場合は、粉末2は、10μmと50μmとの間に含まれる平均粒子径を有する。部品が電子ビームによって粉末2を選択的に溶融することによって層ごとに構成される場合は、粉末2は、50μmと100μmとの間に含まれる平均粒子径を有する。
【0023】
図2は、本発明による方法を実施することによって製造され得る金属部品200の一例である。
【0024】
示された例においては、金属部品200は、航空機ターボエンジンの低圧タービンの一部を示している。それにもかかわらず、本発明による方法は、小さな厚さの要素および大きな厚さの要素を有する任意の金属部品に適用することができる。
【0025】
一般的に言えば、表現「小さな厚さの部品」とは、通常0.3ミリメートルと4ミリメートルとの間に含まれる数百マイクロメートルの厚さを有する部品を示す。次に、大きな厚さの要素とは、4ミリメートルよりも大きな厚さを有する要素である。
【0026】
したがって、金属部品200は、外側カラーと呼ばれる第1のカラー201、および内側カラーと呼ばれる第2のカラー202を有し、第1のカラー201および第2のカラー202は、プラットフォームの間にブレンド半径を形成するブレード203によって一緒に連結されるプラットフォームを形成する。
【0027】
本発明による方法においては、たとえば
図1に説明される方法によれば、一方では金属部品200のあまり厚くない部分―ここでは、ブレード203―、および他方ではより厚い部分の、示された外板、
図3および
図4で認識できる周辺部分301―ここでは、カラー201および202―を選択的に溶融することによって製造することが提案される。
【0028】
したがって、部品は、レーザビームまたは電子ビームの連続する通過によって全体として製造されるが、これらの通過は、外板301を形成する位置で行われるのみであり、それによって作り出される外板の内側の容積は、ビームの通過によって変容されない粉末で充填される。
【0029】
この場合、外板301は、部品の厚い部分の輪郭に数ミリメートル、通常2ミリメートルから4ミリメートルの厚さを有する。
図3および
図4は、外板301の製造の異なるステップを示しており、これは、
図1に示される方法によってブレード203の製造と同時に実施される。
【0030】
いったん外板が完成すると、ビームの通過によって凝固されない粉末を空にする作業が行われる。この作業は、ビームの通過のあとで凝固された部分によって閉じられない各カラーの外面によって粉末を除去することによって、またはこの場合外板301が閉鎖容積を形成する場合は残置された開口を介して行われる。
【0031】
次いで、外板によって画定された、空のままにされた内部容積302を充填するステップがあとに続く。充填するステップは、これが何なら液体形態であるように十分な温度まで加熱された金属を用いて、または各カラーの閉じられない外面を介して、または外板301が閉鎖容積を形成する場合は残置された開口を介して行われる。次いで、外板301は、モールドまたは滞留タンクとして役立つ。これは、内部容積302が完全に充填されるまで行われる。外板301は、最終部品200の一体的部分を形成することになる。
【0032】
次いで、部品200は、たとえば室温で休ませるように部品200を放置することによって冷却され、次いで液体金属が凝固して結合されたセットを形成する。
【0033】
本発明による方法により、(使用時の優れた柔軟性、および特定の工具の不必要性を有する)レーザビームまたは電子ビームによって選択的に溶融する技術の利点、および(凝固の迅速性、充填の容易さ、および低製造コストを有する)鋳造の利点を利用することができ、同時に、これらの2つの技術の欠点、すなわち選択的に溶融する技術については、大きくて重い厚い部品に対する長すぎる走査時間、および液体浴からの噴出物のため不良を生じる危険、ならびに鋳造については、金属部品の各形態および形状寸法に対するモールドの製造の必要性に直面しない。
【0034】
製造時間およびコストがそれによって低減される。
【0035】
一実施形態の例においては、このタイプの部品に使用される材料は、通常、Rene77、IN100、DS200またはAM1などのニッケル基超合金である。