【文献】
Volker Diedrichs, Alfred Beekmann, Stephan Adloff,Loss of (Angle) Stability of Wind Power Plants- The Underestimated Phenomenon in Case ofVery Low Short Circuit Ratio -,Proceedings the 10th International Workshop on Large-Scale Integration of Wind Power into Power Systems as well as on Transmission Networks for Offshore Wind Farms,ドイツ,energynautics Gmbh,2011年10月25日
【文献】
Volker Diedrichs, Alfred Beekmann, Kai Busker, Swantje Nikolai, Stephan Adolff,Control of Wind Power Plants Ulizing Voltage Source Converter in High Inpedace Grids,Power and Energy Society General Meeting,米国,IEEE,2012年 7月22日,2012, IEEE,Pages.1-9
【文献】
W. Kuehn,Control and Stability of Power InvertersFeeding Renewable Power to Weak AC Gridswith No or Low Mechanical Inertia,Power Systems Conference and Exposition,米国,IEEE,2009年 3月15日,PSCE 2009,pages.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によると請求項1に記載された方法が提案される。かかる方法によると、グリッド接続点において電気供給グリッドに接続された電気エネルギーの
生成装置が制御される。電気エネルギーの
生成装置は既存のエネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、ここではこれを単に生成と呼ぶことに注意する。提案された制御方法によると、グリッド接続点に関して、電気供給グリッドの少なくとも1つのグリッド特性が組み込まれる。ここで、組み込まれるグリッド特性は、例えば、グリッドの異なる運転状態、および/または、エネルギー供給についての異なる状態やエネルギー供給についての異なる境界条件の下での、安定性に関するグリッドの振る舞いである。特に、公称動作点から外れた場合における供給グリッドの動作を表すグリッド特性が組み込まれる。
【0023】
さらに、この組み込まれたグリッド特性に基いて、電気供給グリッドに電力を供給することが提案される。これにより、電力供給の制御は、予め規定されたグリッド特性に依存することになる。この点は、グリッド特性を考慮しないで制御が行われる
生成装置の技術的設計とはまったく異なる。また、組み込まれたグリッド特性に応じた電力供給の制御は、実際のグリッド状態に応じた制御とも異なる。同様に、組み込まれたグリッド特性に応じて電力供給を制御することに加えて、本願の主題ではないものの、組み込まれたグリッド特性に応じて
生成装置を設計すること、および、グリッド状態に応じて制御を行うことも、同様に有利な効果を奏する。
【0024】
本発明によると、接続された
生成装置または接続すべき
生成装置を設計する際に特にグリッド特性を考慮するだけでは不十分である可能性があることが分かる。このことは、分散型発電ユニットまたは新しい状態に動的に適応可能な分散型
生成装置に対して、特に当てはまる。しかし、供給グリッドにおける新しい状態、すなわち、変化した状態に適応することは、供給グリッドにおいて現在起きている問題が完全には解消されないおそれがあるというリスクを伴う。電気供給グリッドへの電力供給に対する予測的(ないし、プロアクティブ、vorausschauend、proactive)制御は、すでに組み込まれた少なくとも1つのグリッド特性を考慮することによってはじめて可能となる。このようなプロアクティブ制御は、供給グリッドにおける安定性の問題、特に、安定性喪失を初期段階で回避すること、または、少なくとも検出することを目的としている。
【0025】
好ましくは、いわゆる分散型
生成装置、および/または、風力発電装置、もしくは、複数の風力発電所を含むウィンドパークに対して、この制御方法を適用することが提案される。通常、風力発電装置は風の状態に依存する複数の離れた場所に設置される分散型の
生成装置であり、接続電力に関して、大規模発電所とは異なり中心的なエネルギー源とみなすことはできない。複数の風力発電装置を備えたウィンドパークにも、通常、同じことが言える。また、風力発電装置および小規模ウィンドパークは、基本的に、既存の供給グリッドに接続される。供給グリッドへの接続のために、1または複数の接続線が設けられることもある。しかし、供給グリッドの基本的な構造が変わるわけではない。
【0026】
これまでは、このような分散型
生成装置を接続したとしても、各供給グリッドの基本特性や基本構造に対して大きな影響を及ぼすものではないことが前提とされてきた。また、分散型の電力サプライヤの接続に対して各グリッドが十分な容量を有しているか否か、すなわち、分散型
生成装置から供給されると予測される追加の電力を輸送する容量を各グリッドが十分に有しているか否かが検討されてきた。特に、
生成装置の電力供給によるグリッド安定性という側面は、まったく考慮されてこなかった。特に、かかる分散型
生成装置に関して、電気エネルギーの供給量がどの程度になると、供給グリッドの安定性喪失が生じるかという点は、まったく考慮されてこなかった。すなわち、本発明の方法は、このような分散型サプライヤ、特に、風力発電装置およびウィンドパークに向けられたものである。
【0027】
分散型
生成装置による電力供給は、電圧インバータを用いて行うことが好ましい。電圧インバータを用いた電力供給によると、インバータは供給すべきエネルギーの供給先、例えば、直流中間回路上で使用され、さらに、電圧インバータは可能な限り正弦波に近い電圧変化信号を生成する。この電圧変化信号は、ラインチョークを用いることで、供給グリッドに供給される電力に反映される。1または複数の変圧器を用いて、さらに電圧変換を行うようにしてもよい。
【0028】
ここで、供給対象の全電力をこの電圧インバータを用いて供給する、いわゆる完全電力変換コンセプトを提案する。ここでは、電力損失を考慮しない。風力発電装置について、例えば、ダブルフィード非同期発電機等の発電機の制御を介して、電圧インバータが電力供給を間接的に制御するような、電圧インバータに関する他のコンセプトも考慮することができる。
【0029】
供給グリッドの電力供給のために、完全電力変換コンセプトに従って電圧インバータを使用することと、大規模発電所を用いて電力を供給することは、根本的に異なる。電圧インバータは、供給する電圧振幅および周波数をグリッド状態に応じてつねに適合させることができ、かつ/または、適合させなければならない。結果として、電圧インバータによると、グリッドでの変化に対して迅速に反応することができる。ただし、これによると、迅速な反応が不適切になされた場合、グリッドが急速に不安定化するリスクを伴う。特に、この問題は、本発明によって対処する問題である。
【0030】
一実施形態によると、
生成装置(ないし発電機、Erzeuger)は、組み込まれたグリッド特性に依存する動作点において
生成装置の制御が行われるように、
生成装置を制御することが提案される。動作点は、組み込まれたこれらの特性に依存するのみならず、供給グリッド(すなわち、グリッド接続点またはその近傍)における電圧振幅と周波数にも依存してもよい。さらに、動作点は、現在供給中の有効電力、および/または、現在供給中の無効電力に依存してもよい。これにより、組み込まれたグリッド特性を有するグリッド接続点に対して設計された公称動作点であって、特定の
生成装置用の動作点が得られる。グリッドまたは電力供給の状態の変化に伴い、すでに組み込んだグリッド特性を考慮した他の動作点を選択してもよい。グリッド接続点における
生成装置の動作点を、
生成装置が供給グリッドに供給する有効電力、および/または、無効電力を用いて指定してもよい。
【0031】
一実施形態によると、組み込まれたグリッド特性に依存する少なくとも1つの制御特性曲線を、動作点を設定するために適用することが提案される。この制御特性曲線も多次元であってもよい。すなわち、制御特性曲線は複数の入力パラメータに依存してもよく、かつ/または、同時に設定する複数のパラメータを含んでいてもよい。一例として、制御特性曲線はグリッド接続点におけるグリッド電圧に依存し、供給すべき無効電力、および/または、有効電力を決定するものであってもよい。制御特性曲線は、少なくとも1つの組み込まれたグリッド特性に基いて生成される。一例として、動作特性曲線は、
生成装置の動作により供給グリッドの安定性喪失が生じることがないように選択される。
【0032】
一提案によると、例えば、非線形、かつ/または、不定のコントローラ特性を有するコントローラのような、非線形コントローラを使用することが提案される。一例として、排他コントローラとしてのPIDコントローラの使用を避けることが提案される。PIDコントローラは、多くの要件に対して不十分であり、最適なパラメータ化の要件を満たさないと考えられているからである。非線形コントローラは、制御対象のシステムにより良く適応することができる。非線形コントローラとしては、ファジーコントローラ、ニューラルグリッドに基くコントローラ、乗算コントローラ、ヒステリシス機能を備えたコントローラ、および/または、デッドタイム特性を用いるコントローラであってもよい。
【0033】
一実施形態によると、コントローラを使用することで、結果として、動作点は制御特性曲線に応じて調整される。例えば、供給無効電力Qは、供給有効電力Pとグリッド電圧Uに依存し、式Q=f(P,U)で表される制御特性曲線としてもよい。
【0034】
少なくとも1つのグリッド特性の組み込み(グリッド特性を求めることにより組み込んでもよい)は、供給無効電力とグリッド接続点におけるグリッド電圧との関係の組み込みであってよい。また、これに加えて、または、この代わりに、グリッド特性の組み込みは、供給される有効電力とグリッド接続点におけるグリッド電圧の関係の組み込みであってもよい。さらに、グリッド特性の組み込みは、供給される有効電力と、供給無効電力と、グリッド接続点におけるグリッド電圧との関係の組み込みであってもよい。この場合、3次元の関係が組み込まれることになる。このようにして、無効電力と有効電力とグリッド電圧の関係が組み込まれる。この関係によると、グリッド接続点に関する供給グリッドの挙動が導出され、さらに、この関係は供給グリッドへの電力供給を行う際に発電機を制御するための基礎となる。
【0035】
一実施形態によると、グリッド特性の組み込みは安定性境界の組み込みを含むことが提案される。安定性境界はグリッド接続点におけるグリッド電圧の関数として与えられ、供給無効電力と供給有効電力に依存する。安定性境界は3つのパラメータによって規定され、3次元的に表示することができる。安定性境界は、3次元表示において、湾曲面またはアーチ面、すなわち境界面を有する。したがって、各動作点、すなわち、動作点によって与えられる特性は、安定性境界の安定側で選択される。供給グリッド、および/または、
生成装置、ならびに、風力発電装置の場合には風のダイナミクスについての予測に従って、安定境界から小の(近い)、または、大の(遠い)距離だけ離れた動作点が選択される。
【0036】
一実施形態によると、組み込まれた少なくとも1つのグリッド特性をモデルに従って求めることが提案される。このため、例えば、送電線システム、供給グリッドに含まれる変圧器、切替機、(電力)消費装置(負荷)、および、
生成装置(ないし発電機)を考慮して、まず、供給グリッドのグリッド解析を実施する。以下では、変圧器を単にトランスとも呼ぶ。一例として、変圧器の値を、計算またはシミュレーションプログラムに入力する。既存のグリッド接続点または計画中のグリッド接続点に対して、グリッド解析を実施する。グリッド接続点に対して明らかに重要でないような個別の要素は、グリッド解析において無視することができる。例えば、代替インピーダンスを用いる等、等価モデルの使用により、各グリッド区画を考慮することができる。また、グリッド解析に基いて供給グリッドのモデルを作成するとともに、グリッド解析モデル用の各ソフトウェアによって、作成したモデルを編集ないしテストすることができる。次に、このような解析ソフトウェアを使用するとともに、具体的なグリッド接続点に対するグリッドモデルに基いて、異なる動作点のシミュレーションを実行して、シミュレーション結果を記録する。シミュレーション結果は、前記組み込まれた少なくとも1つのグリッド特性である。一例として、シミュレートされた複数の個別の動作点は、この目的で決定され、または、基礎とされる。
【0037】
なお、「供給系統(グリッドないしネット)」という用語を、単に「系統(グリッドないしネット)」とも略記することに留意されたい。
【0038】
生じた、または、例えば上記シミュレーションによって得られた安定性境界を、テーブルに格納してもよい。これに加えて、または、この代わりに、得られた安定性境界を解析関数で近似してもよい。記録されなかった中間値については、補間することで求めてもよい。
【0039】
一実施形態によると、前記少なくとも1つのグリッド特性を組み込む際、
生成装置の複数の特性または少なくとも1つの特性も考慮し、短絡電流比を組み込むことが提案される。
生成装置の特性をも考慮することで、電力供給における接続ノードのグリッド特性が組み込まれる。また、6未満の短絡電流比で
生成装置を制御することが好ましい。さらに、短絡電流比を4未満とし、特に2未満とすることが好ましい。すなわち、通常よりも小さい短絡電流比に対する制御方法が提案される。このため、しばしば、上記の特定の設計を実装するか、または、少なくとも受け入れることが前提となる。すなわち、発電機を使用して意図的に弱いグリッドに対して電力を供給することが提案される。ここで、特に、発電機の接続電力は意識的にこの接続点に関するグリッドの短絡電力と比較して大きく、例えば、接続点に対するグリッドの短絡電力の1/6よりも大きく、または、1/4よりも大きく、さらには1/2よりも大きい。いずれにしても、電圧源変換器を備えた風力発電装置の使用を、略して(特に、フルコンバータ構造を備えた)電圧変換器と呼ぶ。電圧変換器の作動は、弱いグリッドにおいて可能とされる。小さい短絡電流比を選択または受け入れることにより、安定性境界近傍での作動が意識的に得られる。電圧変換器を用いた制御によると、対応する制御、特に、電力供給の対応する高速かつ正確な制御を確実に行うことができる。結果として、従来は不適当と考えられていたグリッド接続点にも、
生成装置を接続することが可能となる。
【0040】
一実施形態によると、安定性境界に対して所定の安定性予備力を設けた箇所に
生成装置の動作点を選択することが好ましい。すなわち、安定性を確保するために、動作点を特定の箇所に選択することが好ましい。このことは、非常に大きい短絡電流比を用いた設計を見込んで、具体的な動作点の選択を行わない従来のコンセプトとはまったく異なるものである。言い換えると、過度に慎重な設計を避けることができる。動作点は所定の安定性予備力の内部において選択され、制御中に安定性予備力に追随する。例えば、一時的に安定性予備力が減少するよう、グリッド状態またはグリッド中の境界条件が変化すると、動作点をこれに応じて適合させることで、動作点は再び安定性予備力に追随する。
【0041】
一実施形態によると、動作点および安定性境界が規格化されている場合、安定性予備力は動作点の安定性境界に対する最小許容距離である。例えば、安定性境界および動作点は、それぞれ、供給無効電力、供給有効電力、および、グリッド接続点での電圧によって規定することができる。ここで、有効電力は
生成装置の公称出力(容量)に基いて規格化することができ、無効電力も
生成装置の公称出力(容量)に基いて規格化することができる。また、電圧は公称電圧に基いて規格化することが好ましい。結果として、これらの値はいずれも無次元量となり、互いに比較することが可能となる。これは、異なる単位を用いたときには、通常は容易でない。
【0042】
上述の例において、無効電力と有効電力と電圧から成るデカルト座標の空間において、安定性境界は曲面となる。この例において、安定性予備力は、例えば、0.1の距離を有する別の曲面となる。すなわち、視覚的に説明すると、安定性予備力はバッファ層と同様のものを形成する。
【0043】
数学的には、そのような最小許容距離は、例えば、それぞれ規格化された値の差の2乗の和の平方根として求めることができる。
【0044】
異なる安定性予備力に対して、異なる動作点を与えることが好ましい。かくて、例えば、定格有効電力が供給され、無効電力が供給されず、公称電圧を有する最適動作点の安定性予備力を小さく選択することができる。他の動作点については、安全のためにより大きな距離をとることが好ましい。バッファ層(説明を分かりやすくするためにこのように呼んだにすぎない)の厚みは、一定ではない。この可変または一定の距離を、少なくとも0.05もしくは0.1、特に、少なくとも、0.2とすることが好ましい。
【0045】
実際の動作点の安定性予備力を運転中に絶えず観測し、安定性予備力との距離が短くなった場合、特に、安定性予備力の値を下回った場合には、動作点を変更することが好ましい。観測時刻の間隔が短く、かつ/または、わずかな時間のシフトないし遅れを伴うダイナミックな観測装置によるオンラインまたは準オンラインの方式で、この観測を行ってもよい。安定性に関連する変化に対して迅速かつ非常に短い時間で応答し、結果として、安定性境界の近傍においても安定した運転を確保する目的で、このような観測を行うことができる。
【0046】
さらに、風から電気エネルギーを生成する空力ロータに連結された発電機であって、電気エネルギーを供給グリッドに供給する周波数変換器を有する発電機を備えた風力発電装置が提案される。ここで、風力発電装置は、上述の実施形態のうちの少なくとも1つの方法に従って制御される。また、風力発電装置は
生成装置であり、供給グリッドに電力を供給するように制御される。さらに、周波数変換器は、発電機からの交流電圧を整流する整流器と、直流電圧を交流電圧に変換して供給グリッドに供給するインバータを備えていることが好ましい。かかる周波数変換器においては、損失を無視すると、生成した全電気エネルギーが整流器およびインバータを介して完全に供給されることになる。これを完全電力変換コンセプトまたは完全電力変換トポロジーともいう。1つの整流器の代わりに複数の整流器の組み合わせを設けてもよく、かつ/または、1つのインバータの代わりに、個別にエネルギーの一部のみを変換する複数のインバータを設けてもよい。
【0047】
風力発電装置をグリッド接続点に接続し、生成した電気エネルギーをこの接続点において供給グリッドに供給し、10未満、好ましくは6未満、さらに好ましくは4未満、特に2未満の短絡電流比を選択することが好ましい。電力供給に際して、
生成装置、すなわち、風力発電装置を相応して制御することによって、このように非常に小さい短絡電流比を選択することが可能となる。したがって、大きい接続電力、特に、大きい公称出力(容量)を有する電力発電装置の比較的弱いグリッドへの接続が可能となり、すなわち、遠隔地への設置が可能となる。結果として、これまでは、そうでなければ供給グリッドの大幅な適合を伴って初めて接続でき、不適当とされていた設置箇所を使用することが可能となる。
【0048】
グリッド接続点における安定性喪失のおそれを検出し、および/または、表示することが好ましい。これは、万一安定性喪失の際、電力供給の中断を回避し、または、
生成装置を電力供給の迅速な再開に備えさせるためである。
【0049】
グリッド電圧の偏微分量が供給有効電力に応じた予め所定の有効電力限界を上回った場合、安定性喪失のおそれを検出または表示することが好ましい。
【0050】
有効電力に応じたグリッド電圧の偏微分量を考慮することによってグリッド感度(敏感性)を検出することができ、さらに、より安定な動作点を選択する指標として偏微分の結果を利用することが可能となる。
【0051】
グリッド電圧の偏微分量に基いて、また、この偏微分量が所定の無効電力限界を上回った場合には供給有効電力に従って、安定性喪失のおそれを検出または表示することが好ましい。この場合にも、グリッド感度を考慮し、または、決定してもよい。
【0052】
対称成分法に従って供給グリッドの3相電圧を解析することにより、安定性喪失のおそれを検出または表示することが好ましい。ここで、一共電圧成分が一共電圧限界よりも大きい場合に安定性喪失のおそれがあるものとみなしてもよい。これに加え、または、これに代えて、一カウンタ電圧成分が一カウンタ電圧限界よりも大きい場合、安定性喪失のおそれがあるものとみなしてもよい。公知の対称成分法によると、特に非対称性が考慮される。共電圧成分量を監視する場合、簡単に言うと、3相電圧系の対称部分がある値を超えるか、または、下回ることを監視することになる。カウンタ電圧成分を考慮することにより、非対称度が過大であり、結果的に安定性喪失に至るようなグリッド内障害の発生を示唆していないかどうかを把握することが可能となる。
【0053】
基準周波数と公称周波数の差も考慮に入れてもよい。この差が予め所定の周波数限界を超え、または、下回った場合、ないしは、差がある値(絶対値)だけ所定の周波数限界値を超えた場合、安定性喪失のおそれがあるものとみなしてもよい。
【0054】
同様に、複数の風力発電装置を備えたウィンドパークが提供される。ここで、各風力発電装置は、上記のように、空力ロータ、発電機、および、周波数変換器を備えている。さらに、上記の実施形態の1つの方法に基いてウィンドパークを運転することが好ましい。このとき、上述の方法においてウィンドパーク全体を1つの
生成装置とみなして運転する。特に、この場合、短絡電流比は、ウィンドパークの接続電力(ないし負荷、Anschlussleistung、load)について、接続点における供給グリッドの短絡電流比と関係し、特に、対象とするウィンドパーク内の全風力発電装置の公称出力(容量)の合計に関係する。一実施形態によると、10未満、6未満、4未満、好ましくは2未満といった小さな短絡電流比を有するウィンドパークを設計することが好ましい。複数の風力発電装置を1つのウィンドパークに結合することにより、個々の風力発電装置とは対照的に、大きな接続電力がもたらされる。このため、接続点に関して、比較的弱いグリッドへの接続を可能とする手段が提供される。
【0055】
グリッドに電気エネルギーを供給する際、本願によって提供される
生成装置の制御に対して、グリッド感度(Netzsensitivitat)は重要な情報である。グリッド感度は、特にグリッド接続点に関する特性である。グリッド感度は、グリッドトポロジー、実際のグリッド状態等のグリッド特性に依存する。グリッド感度は、グリッド接続点に与えられた影響に対して電圧がどのように反応するかの感度を示す。
生成装置が風力発電装置または複数の風力発電装置を備えたウィンドパークである場合、風速の揺らぎは風力発電装置を介してグリッドに影響を及ぼし、結果的に接続点における電圧にも影響を及ぼす外部要因となる。風速の揺らぎ(変動)は接続点の電圧に対して大きな影響を及ぼす場合もあれば、わずかな影響を及ぼすにすぎない場合もある。したがって、風への感度に関して、グリッド感度は高いことも低いこともあり得る。
【0056】
さらに、実際のグリッド状態は、グリッド接続点における電圧の感度に影響を及ぼす可能性がある。例えば、外部要因に対するグリッドの感度がより鈍い場合において、グリッドがグリッド接続点に関して安定動作点で動作するとき、グリッド接続点における電圧はより安定する。逆に、例えば、風力発電装置の場合において、グリッドが風力発電装置によってすでにサポートされているような安定度のより低い動作点でグリッドが動作するとき、グリッド接続点における電圧はより影響を受けやすい。
【0057】
例えば、風力発電装置は無効電力を供給することによって、グリッドをサポートすることができる。したがって、グリッド接続点における供給無効電力による電圧の偏微分に従って、グリッド感度を決定(形成)することが好ましい。供給無効電圧の変化に伴ってグリッド接続点における電圧が大きく変化した場合、結果的にグリッド感度が高くなり、電圧はより影響を受けやすくなる。
【0058】
これに代えて、または、これに加えて、風力発電装置により生成される電力(すなわち、有効電力)のグリッド接続点における電圧の偏微分に基いて、グリッド感度を決定(形成)してもよい。風力発電装置が生成して供給する有効電力は、実際の風速を測るものである。供給電力の変化によりグリッド接続点の電圧が大きく変動する場合、この供給電力、かくて、風速の変化に関する高い感度が得られる。
【0059】
グリッド感度を、双方の偏微分の和としてもよい。ここで、異なった強度の影響を考慮または取り込むために、重み付けをして和を求めてもよい。
【0060】
さらに、かかるグリッド感度に基いて
生成装置を制御することが好ましい。特に、感度が高く、外部からの干渉により迅速な応答が求められる場合、高速な制御、または、増幅を伴った制御が可能であり、また、そのような制御を行うべきである。一方、感度が弱い場合、低速のコントローラまたは小さな強度(ないし出力振幅、Starke)のコントローラでも十分である。
【0061】
以下に述べる負荷潮流計算は、エネルギー供給グリッド(システム)の定常運転状態を解析するのに用いられる。
図9に示すように、各グリッドをグリッドのインピーダンスZまたはグリッドのアドミタンスY(複素コンダクタンス、Leitwerte)とする。
【0062】
古典的なグリッド解析によると、オームの法則に基いて、n個の結び目の相関を表す以下の行列表示の線形方程式系を用いてグリッドが規定される。
【0064】
すなわち、次の線形方程式系のとおりである。
【0066】
グリッドのn個の結び目のそれぞれにおける電圧を決定することが求められる(→電圧維持)。
【0067】
グリッドにおける電流は不明であるが、(想定された)電流供給と電圧降下は既知であるため、電流を出力によって表すことができる。
【0069】
出力を介してグリッド方程式を表すことで、次の非線形方程式系が得られる。
【0071】
この非線形方程式系は、(通常、ニュートン法を用いて)数値的に解くことができる。この方程式系を数値的に解く際には、方程式系を線形化する必要がある。行列要素を未知数によって、すなわち、ここでは、結び目における電圧の振幅(U
2…U
n)と位相(δ
2…δ
n)によって偏微分することによって、線形化を行う。
【0072】
偏微分した行列は、ヤコビ行列(ヤコビアン)と呼ばれる。方程式系を解くためには、以下のヤコビ行列は可逆、すなわち、正則でなければならない。
【0074】
以下では、添付図面を参照しつつ、実施形態を例として発明をより詳細に説明する。
【0075】
以下では、類似するものの同一でない要素に対しても、同一の参照符号を付すことがある。また、単に概略的または象徴的に示したにすぎず、個々の説明には関係しない細かい点では異なる要素についても、同一の参照符号を付すこともある。
【0076】
図1は、タワー102とナセル104を備えた風力発電装置100を示す。3枚のロータブレード108とスピナ110を備えたロータ106は、ナセル104に配置されている。ロータ106は、動作中において風により回転運動を行い、ナセル104内の発電機を駆動する。
【0077】
図2は、グリッド接続点2において電気供給グリッド4に接続された風力発電装置を概略的に示す図である。電気供給グリッド4を単にグリッド4とも呼び、これらを同義の用語として用いる。
【0078】
風力発電装置1は、風により駆動され電気エネルギーを生成する発電機6を備えている。実施形態の1つにおいて、発電機6は、
図2の発電機内に2つの星印で示すように、相互に接続された2つの星形の3相システムを備えた、電気励磁型の多相の同期発電機6である。生成された交流電流(すなわち、上記の例では6相交流電流)は整流器8で整流された後、直流電流線10(複数のラインを含んでいてもよい)を介して、ナセル12からタワー14を下ってインバータ16へと直流電流として伝送される。インバータ16は直流電流から交流電流(本例においては、グリッド4に供給される3相交流電流)を生成する。インバータ16によって生成された交流電流は変圧器18によって昇圧され、グリッド接続点2においてグリッド4に供給される。図示した変圧器18は、1次側をスター接続とし、2次側をデルタ接続としたスターデルタ接続を使用する。ただし、かかる構成は一実施形態の例示にすぎない。グリッド4への電力供給は、矢印20で示すように、有効電力Pの供給に加えて、無効電力Qの供給を含んでいてもよい。具体的には、電力供給のために、インバータ16を制御部(ユニット)22によって制御する。ここで、制御部22は構造上インバータ16と組み合わされていてもよい。
図2は基本的な構造を示すためのものにすぎず、各要素の特定の配置を図示した配置とは異なるものとしてもよい。例えば、変圧器18を、タワー14の外部に設けてもよい。
【0079】
特に、制御部22は、グリッド4への電力供給の仕方が制御されるように、インバータ16を制御する。ここで、グリッド4の状態(Situation)、特に、グリッドにおける周波数と、電圧の位相および振幅に対して、供給すべき電流(電力)を適合する等のタスクを実施する。さらに、グリッド4に実際に供給される電力のうちの有効電力Pと無効電力Qの成分(比)を調整するように、制御部22を設計する。ここで、グリッド4内、特にグリッド接続点2において測定を行い、これに応じて評価が行われる。特に、グリッド4における実際の電圧を電圧の実効値として測定し、測定した電圧を電圧の(所定の)規定値V
SETと比較する。
【0080】
図示したシステムは、特にインバータ16は制御部22とともに、電圧制御システム(「VCS」と略記する)を構成する。
【0081】
風力発電装置の発電機を制御するために、電力制御ブロック24および電力評価ブロック26がナセルの領域に設けられている。図に例示した実施形態では、電力制御ブロック24は、特に、励磁電流、すなわち、他励式同期発電機の励磁電流を制御する。電力評価ブロック26は整流器8に導入される電力を評価し、この電力を整流器8から直流電流線10を経由してインバータ16に放出される出力電力と比較する。評価結果は、電力制御ブロック24に転送される。
【0082】
図2は、特に安定性境界の近傍において、風力発電装置を可能な限り安定に運転するために、図示したシステムがインテリジェントな電力供給用の電圧制御システムを有することを示す。
【0083】
図3は風力発電装置1’の「弱いグリッド4」に対する接続を示す。
図3では、直列インピーダンス5’によって、この接続を示している。さらに、
図3に示す構造に相当するこのような直列インピーダンス5’を試験構造に設置し、これを弱いグリッド4における風力発電装置1’の動作の検証のために使用する。
【0084】
図3の構成は、風によって駆動される同期発電機を備える発電機6’を想定している。発電機6’により生成された電力は整流器8’により整流され、中間回路キャパシタ28’を備えた直流リンクの側からインバータ16’に供給される。図示の構造において、図示の簡略化のため、DCライン10’は、インバータ16’の入力側の直流中間回路に相当する。実際には、入力側のDCラインは中間回路と電気的に等価であってもよく、また、ここでは詳細な説明を省略するが、さらに、昇圧コンバータを入力側に設けてもよい。整流器8とインバータ16についてすでに
図2で説明したように、整流器1’とインバータ16’も空間的に分離されていてもよい。
【0085】
最後に、中間回路キャパシタ28’によって代表される直流リンクからのエネルギーが供給される励磁機制御部24’が設けられている。励磁機制御部24’は他励式発電機6’の励磁電流を制御するものであり、基本的に
図2の電力制御ブロック24に相当する。
【0086】
インバータ(直交変換機)16’は有効電力P、および/または、無効電力Qを供給することができる。
図3では、インバータ16’の出力側の電圧を、風力発電装置電圧V
WECとしている。電力供給に際して、この電圧は変圧器18’によって昇圧され、グリッド接続点2’においてグリッド4’に供給される。ここで、グリッド4’も、グリッド変圧器30’を備えている。グリッド変圧器30’の後段に位置する実際のグリッドは、符号4”で表わされる。グリッド接続点2’における電圧をグリッド電圧V
Gridと呼ぶ。
【0087】
弱いグリッドを表すために、グリッド接続点2’の前段に直列インピーダンス5’が表示されている。この直列インピーダンス5’はグリッドインピーダンスを表し、試験構造または説明用の構成にのみ存在する。したがって、変圧器18’に隣接する箇所も、グリッド接続点2”と呼ぶことができる。2つのグリッド接続点2’と2”の区別は、専ら直列インピーダンス5’を用いたことによるものであり、実際のグリッドにおいてこのような区別が存在するわけではない。
【0088】
図4は2つの風力発電装置1が供給グリッド4に接続されたさらに他の例を概略的に示す。各風力発電装置1は
図2を参照して説明したのと同様にデザインされており、発電機6、整流器8およびDCライン10を備えている。ここで、DCライン10は、実際には正負の電流用の少なくとも2本のラインを備えている(
図2のDCライン10についても同様)。さらに、風力発電装置1は、インバータ16と変圧器18を備えている。接続線32は、2つの風力発電装置1から風力発電装置側のグリッド接続点2’へと至る。したがって、例示した2つの風力発電装置1は、はるかに多くの風力発電装置を備えたウィンドパークを代表するものであり、風力発電装置側のグリッド接続点2’において生成した電力をまとめて供給する。供給電力Pと供給無効電力Q(存在する場合)はグリッド側の接続点2”に導入され、電気供給グリッド4に供給される。
【0089】
風力発電装置側のグリッド接続点2’とグリッド側の接続点2”との間の接続線は、無視することができない。したがって、風力発電装置側のグリッド接続点2’においては風力発電装置側の電圧V
WPが生じ、一方、グリッド側の接続点2”においては電圧V
Gridが生じる。
【0090】
制御に際して、風力発電装置側の電圧V
WPが検出され、そして、制御用の評価ブロック34によってさらに評価される。評価の際、まず、測定ブロック36を用いて測定値の記録が行われる。測定値は、安定性制御ブロック38(安定性電圧制御システム、SVCS(Stability Voltage Control System)ともいう。)に転送される。安定性制御ブロック38は、供給すべき無効電力Q
Setに対する規定値を算出する。この達成すべき無効電力は規定値として両風力発電装置1に送出され、したがって、すべての風力発電装置(複数)に同一の値が送出される。特に、風力発電装置が同一のサイズを有し、同一の風の条件下にある場合、この規定値を絶対値として送出してもよい。一方、対象とする風力発電装置の公称出力等の各風力発電装置の特性に対する規定値、例えばパーセント値として、この規定値を提供してもよい。
【0091】
さらに、測定ブロック36は監視ブロック40に値を送信する。監視ブロック40は、求められた観測値に基いて、供給有効電力、供給無効電力等のさらなる条件を算出して、算出結果をシステムモデルブロック42に送信する。監視ブロック40は、必要に応じて、電力需要に関する情報をも取得または導出することができる。
【0092】
システムモデルブロック42のシステムモデルを用いて、供給すべき最大有効電力P
maxを決定し、決定した最大有効電力P
maxを風力発電装置1に送出する。供給すべき最大有効電力は、絶対値または相対値として提供してもよい。評価ブロック34の図示は、構成を説明するためのものであることに留意されたい。一般に、評価ブロック34を独立した装置として物理的に設計する必要はない。
【0093】
次に、所定の無効電力Q
Setおよび最大有効電力P
maxを、各風力発電装置1のFACTS制御ブロック44に送信する。「FACTS」はドイツ語としても用いられる用語であり、フレキシブルAC伝送システム(Flexible AC Transmission System)の略である。FACTS制御ブロック44は、与えられた値を変換して(直交)インバータ16を制御する。ここで、FACTS制御ブロック44は、風力発電装置から得られた状態(複数)の測定値を考慮してもよい。
【0094】
また、特に限定されないが、評価ブロック34は、グリッド4への安定な電力供給のための安定性に関する規定値を提供するようにしてもよい。例えば、供給すべきエネルギー量について好ましい動作点、ないしは、電力量および安定性について好ましい動作点を設定してもよい。また、特に、この際、安定性予備力(Stabilitatsreserve)を伴う動作点を決定してもよい。ここで、安定性制御ブロック38は、供給すべき無効電力に関して、無効電力Q
Setの規定値によって安定性予備力を実現してもよい。
【0095】
図5は、グリッドに接続された風力発電装置の感度および対応する影響を与える因子(複数)を示す図である。
図5のグリッドブロック50は、グリッド接続点におけるグリッドの動作(挙動)を代表する。グリッドブロック50は、グリッドが電圧の変動による影響に対して反応することを示す。ここでは、影響として、有効電力の変動ΔPおよび無効電力の変動ΔQを示す。有効電力ブロック52は電力変動の影響を考慮する。一方、無効電力ブロック54は無効電力の変動の影響を考慮する。有効電力ブロック52は、有効電力に基く電圧の偏微分(δV/δP)を表す。一方、無効電力ブロック54は、無効電力に基く電圧の偏微分(δV/δQ)を表す。これにより、偏微分に基いてグリッド動作のダイナミクス、すなわち、有効電力および無効電力の変動に対する反応であるグリッド感度を考慮することが可能となる。ここで、偏微分は集計ブロック56で足し合わされる。したがって、グリッドブロック50および集計ブロック56は、グリッド接続点におけるグリッド電圧が有効電力および無効電力という2つの変数に依存することを考慮する。ここでは、双方の偏微分を用いて依存性を考慮する。
【0096】
例えば、風速変動ΔVWに起因して有効電力が変動し、これが風力発電装置ブロック58に影響を及ぼす。風力発電装置ブロック58は、風速変動ΔVWが有効電力変動ΔPに及ぼす影響を明らかにするが、ここで、風力発電装置の制御についても考慮されねばならず、風力発電装置ブロック58によって考慮する。
【0097】
無効電力変動ΔQも、風力発電装置、少なくも、風力発電装置の制御に依存し得る。しかし、無効電力変動ΔQは、本質上風速に依らない他の状態(関連因子)に依存する。無効電力の変動を制御ブロック60によって示す。説明のために、制御ブロック60は、無効電力予設定(VCS)ブロック62とFACTSブロック64に分割されている。制御ブロック60および無効電力予設定ブロック62は、まず、グリッド接続点における電圧変動ΔVから所定の電圧変動ΔV
SETを差し引いたものに依存する。得られた電圧変動に基いて、無効電力予設定ブロック62は、供給すべき無効電力を決定するか、または、供給すべき無効電力の所定の変動を電圧変動に従って決定する。決定した値はFACTSブロック64に転送され、FACTSブロック64はこれに応じて無効電力を供給し、または、無効電力の供給を変更する。
【0098】
風力発電装置ブロック58および制御ブロック60を、各入力値の伝送機能として理解することができる。また、無効電力予設定ブロック62およびFACTSブロック64を制御ブロック60において結びついた個々の伝送機能として理解することができる。
【0099】
図6は、一実施形態におけるグリッド接続点における電圧の供給無効電力Qおよび供給有効電力Pに対する依存性を示す図である。無効電力Qを対象とするグリッド接続点におけるグリッドの短絡電力S
SCによって規格化したものを横軸とした。電力Pを同一のグリッド接続点における短絡電力S
SCによって規格化したものを縦軸とした。電圧V
PCC(PCC:Point of Common Connection、共通接続点)はグリッド接続点における電圧を公称電圧(Nennspannung)V
Nで規格したものである。グリッド接続点における規格された電圧の依存性をさまざまな電圧についてプロットしたものであり、規格化された無効電圧Qおよび規格された有効電力Pに対する依存性を示す。例えば、値「1」におけるグラフないし特性は、公称電圧を実現するための無効電力および有効電力を表す。
【0100】
例えば、短絡電力S
SCの10%の無効電力Qと短絡電力S
SCの50%の有効電力Pを供給することで、公称電圧(Nennspanunng)が得られる。
【0101】
図6のグラフは、少なくともグリッド接続点に関して高いインピーダンスを有するグリッドのグリッド接続点での特性を示す。
【0102】
通常、ここでのグリッドの例における図示したグリッド接続点に対して、標準運転領域200内の電力供給が実現される。この電力供給は、短絡電力S
SCの10%程度の有効電力Pと短絡電力S
SCの5%程度の無効電力を供給することで実現される。供給有効電力Pが発電機またはグリッド接続点に接続された複数の発電機の合計の公称電力または接続電力に相当するという理想的な状況下で、短絡電圧S
SCの10%を供給することは、接続電力P
Genが短絡電力S
SCの10%であることを意味する。すなわち、短絡電流比Scr=S
SC/P
Genは10程度である。これは、図示した標準運転領域200のほぼ中心に相当する。
図6は、10、6、4、2、1.5のScr値に対する短絡電流比Scrを短い線分で示す。
【0103】
本発明によると、さらに大きい有効電力、すなわち、短絡電流SSCの60%から70%の範囲内の有効電力を供給することが提案される。このとき、グリッド接続点における電圧を公称電圧の100%から110%に維持するために、短絡電流SSCに対して20%から30%の無効電力Qを供給すればよい。なお、念のために指摘すると、グリッド接続点に公称電圧の110%の電圧を供給したからといって、消費者サイドで110%への電圧上昇が観測されるわけではない。第1に、グリッド接続点と最初の消費者との間には、通常、相当なグリッド区間が存在する。第2に、グリッド内には、ある程度のバランスを図るために変圧器を設けることができる。ここで採用すべき手段については、消費者、
生成装置、その他の様々な基本構造等を含む個々のグリッドに依存するものであり、本願では扱わない。専門家は、通常、これらの必要な手段について熟知している。
【0104】
図6において、本願で提案する部分を増大(ないし上昇)運転領域210として示す。増大運転領域210は、1.5程度の短絡電流比を有する。従来は、かかる短絡電流比で有意の
生成装置がグリッドに接続されることはなかった。
【0105】
図6は、注目するグリッド接続点に関して、グリッドをグリッド解析した結果を示すものである。このため、上述のように、ヤコビ行列を解くことにより、グリッドにおいて関係する要素を解析して決定する。結果は
図6に示すとおりである。
図6に従って簡単に説明するならば、右側の特性、すなわち、より大きい供給無効電力Qの特性は、グリッド接続点におけるより高い電圧を反映している。無効電力Qを削減するに従って、すなわち、左側へ移動するにつれて、グリッド接続点における電圧は低下する。しかし、無効電力Qを任意の値に削減することはできず、無効電力Qが小さすぎる(すでに負の値である)場合、ヤコビ行列は特異となり、対応する有効電力Pに関して、数学的に求解不能となる。特異なヤコビ行列は、不安定状態の存在を意味する。これは、
図6の左側に示す安定性境界202となる。安定性境界202の左側における相対的に大きい有効電力P、および/または、相対的に小さい無効電力Qを有する領域は、不安定領域204である。安定性境界202はグリッド接続点における電圧値の単一の特性曲線に一致するものではなく、むしろ、これらの特性曲線を横切っているように見える。しかし、安定性境界202を超えた領域には、値も特性曲線も存在しないため、これらの特性曲線を横切ることはできない。
【0106】
好ましい運転領域、すなわち、増大運転領域210は、標準運転領域200よりも安定性境界202に近い。しかし、従来は、
図6に示すようなグリッド特性に関する特別な考慮や解析が行われてこなかった点に留意されたい。
図6において安定性境界202と示したような安定性境界との距離は、少なくとも
図6に示すように定性的かつ定量的に知られていたわけではない。むしろ、大規模発電所の導入の際には短絡電流比が基準とされており、短絡電流比の値は可能な限り大きい値、好ましくは10を超えるか、または、大幅に10を超える値とされてきた。従来、風量発電装置等の小規模
生成装置は、主に風力発電装置の接続に容易に対応可能な強いグリッドに接続されてきた。その結果、意図したか否かにかかわらず、高い短絡電流比Scrでの接続が行われていた。
【0107】
本発明の解決主題によると、
図6(特に、後述する
図7および
図8)に示した状態を定量的に組み込むことにより、提供されたグリッド接続点に関してグリッドの正確な解析が行われる。そのような解析は、例えば、多数の点についてヤコビ行列を繰り返し定式化して解くことによって行われる。そのようなグリッド解析に基いて、安定性境界202に応じた安定性境界を決定することができ、
図6の増大運転領域210に応じた望ましい運転領域の選択が可能となる。
【0108】
さらに、風力発電装置を、例えば
図2および
図4に示すような閉じた制御ループを用いて制御することが好ましい。
図2において、制御ループは、インバータ16、変圧器18、および、制御部22を備え、グリッド接続点2における測定値を考慮し、矢印20で示す供給有効電力Pおよび無効電力Qが得られるようにインバータ16を制御する。かかる制御は、発電機6の領域において風力発電装置の制御にも影響を及ぼす。しかし、インバータ16、変圧器18、および、制御部22を備えた上記の制御ループは機械的な要素を必要とせず、非常に迅速な反応を可能とする。このため、グリッド接続点、すなわち、
図2のグリッド接続点2におけるグリッド特性に関する知識を、例えば、制御部22において考慮してもよい。これにより、グリッド接続点におけるグリッド動作、特に、安定性境界を認識した迅速な制御を実現することができる。これによると、風力発電装置またはウィンドパーク、さらには可能であれば他の
生成装置を、
図6の増大運転領域210のような所望の動作領域内で運転すると同時に、高い安定性と安全性を確保することが可能となる。
【0109】
図7および
図8は、無効電力Qおよび有効電力Pに対する電圧感度の依存性を示す。
図7と
図8は、縦軸と横軸上に同じ値を示している。すなわち、規格化した無効電力を横軸とし、規格化した有効電力を縦軸としている。
【0110】
図7によると、有効電力の変化に応じた電圧の変化として電圧感度が示される。一方、
図8によると、無効電力に応じた電圧の変化として電圧感度が示される。言い換えると、
図7は有効電力に応じたグリッド接続点における電圧の偏微分を示し、一方、
図8は無効電力に応じた電圧の偏微分を示す。すなわち、
図7は、
図5の有効電力ブロック52の動作を示す。一方、
図8は、
図5の無効電力ブロック54の動作を示す。ここで、いずれの場合においても、実際の供給無効電力Qおよび供給有効電力Pによって決まる動作点に対する依存性が示される。各特性曲線の値は、短絡電力S
SC=3.73MVAを有するグリッド接続点に対するものである。また、グリッド接続点には、一例として、それぞれ公称(定格)電力2MWを有する2つの風力発電装置が接続されているとする。すなわち、この試験装置によると、1よりも少し小さい短絡電流比についての試験を実施することが可能となるであろう。しかし、実施したテストに関して、試験用ウィンドパークのそれぞれの実際の電力を基礎として使用し、対象とするウィンドパーク、すなわち、検証すべき(架空の)ウィンドパークの接続電力(ないし、出力)として決定した。
【0111】
本実施形態、すなわち、構成例に関して、MW単位の電力Pの変化またはMVAr単位の無効電力Qの変化に対する、規格化した電圧の変化について説明する。
図7および
図8にも、望ましい、すなわち、増大動作領域210を示す。それによれば、
図7によると、有効電力の変化に対する電圧感度は−0.2〜−0.4程度である。一方、
図8によると、無効電力の変化に対する増大動作領域210における電圧感度は、0.3〜0.5程度である。したがって、グリッド接続点に接続すべき風力発電装置を設計する際に、
図7に例示する有効電力の変化に対する電圧感度、および/または、
図8に例示する無効電力の変化に対する電圧感度を、制御に組み込んで考慮することが好ましい。特に、これらの値を制御において考慮し、さらに、制御を設計する際にも考慮することが好ましい。また、コントローラの増幅を、感度(特に、電圧感度)に応じて選択することが好ましい。
【0112】
また、
図2に示した要素、すなわち、インバータ16、変圧器18および制御部22を用いて実現されるように、これらの値を閉ループにおいて考慮することが好ましい。ここで、変圧器18は、重要性が低いものの、多くの場合に設置されており、しかるべき高電圧をグリッド接続点2に供給するために必要となる。特に、電圧感度に関する知見が制御部22において考慮される。このようにして、これらの値を把握することで、具体的なグリッド接続点に対してカスタマイズした制御を設計して実装することが可能となる。これにより、従来用いられてきた10またはさらに大きい短絡電流比を削減して、短絡電流比として例えば1.5といった小さい値を用いることができる。結果として、
図6ないし
図8に示した増大運転領域210において、風力発電装置を運転することが可能となる。
【0113】
本発明よると、グリッド容量が十分であるとの仮定の下でのグリッド並列運転という古い原理に従って風力発電所やウィンドパークを接続するのではなく、むしろ、接続点を解析し、予め解析結果を十分に考慮し、カスタマイズした風力発電装置または風力発電装置パークをそこ(グリッド接続点)に接続することが提案される。供給すべき無効電力Qおよび有効電力Pについて制御および運転領域をカスタマイズするとともに、従来専門家によって選ばれた箇所よりも安定性境界に近い箇所に配置することが好ましい。このようにすることで、グリッド状態の変動等の変化に対して迅速かつ狙い通りに応答可能な風力発電装置の長所を生かすことができる。これにより、グリッド接続点、少なくとも、風力発電装置のグリッドへの接続に関して、グリッドの過大な設定(Uberdimensionierung)を避けることができる。それにもかかわらず、制御部やレギュレータがグリッド接続点の特性を把握している場合、または、グリッド接続点についてグリッドを非常に正確に認識し、かつグリッド状態を観測(監視)している場合には、安定を維持し、さらには向上させることすら可能となる。
【0114】
レギュレーション(Regelung)は基本的にはフィードバックを有する閉ループとして理解され、一方、制御(Steuerung)は基本的には開いた「制御ループ(Regelkreis)」、すなわち、フィードバックを有しないものを指すことに留意されたい。ただし、制御方法を実現する制御ブロックを、制御ループ内で使用することができる。
図2の例に関して、このことは、制御部22が制御機能または伝送機能を備えた制御部であればよいことを意味し、制御機能または伝送機能は非線形、および/または、飛躍的(sprunghaft)でよく、かつ/または、様々な大きさないし強さ(Grosen)であってもよい。制御部22は、制御部22以外に、インバータ16と、変圧器18と、比較部23を有するグリッド接続点2上の測定部とを備えた
図2に示すループ内で使用される。かくて、制御部22はインバータを制御するものであり、そのため閉ループ内に統合されており、制御(Regelung)の一部を成す。