(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の融点を有する第1のショ糖カルボン酸エステルと、前記第1の融点よりも高い第2の融点を有する第2のショ糖カルボン酸エステルとを、前記第1の融点以上であり前記第2の融点未満の温度で混合する混合工程を含み、
前記混合工程は、攪拌装置を用いて1分以上攪拌を行う機械攪拌工程を含む、ショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
前記第2のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度は、前記第1のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度の±3.0の範囲内であり、かつ、8.0以下である、請求項1記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
前記混合工程の前に、前記第1のショ糖カルボン酸エステルに、前記第2のショ糖カルボン酸エステルを添加する添加工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
前記添加工程において、前記第2のショ糖カルボン酸エステルは、前記第1のショ糖カルボン酸エステルと前記第2のショ糖カルボン酸エステルとの質量比が50:50〜99.9:0.1となるよう添加される、請求項4記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
前記添加工程において、前記第1のショ糖カルボン酸エステルは、前記第1の融点以上の温度になっている、請求項4または5記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
前記混合工程は、前記機械攪拌工程の前に、前記攪拌装置よりも弱い攪拌力で攪拌する弱攪拌工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、得られるショ糖カルボン酸エステルの融点が45℃程度であり低い。そのため、このようなショ糖カルボン酸エステルは、用途が制限されやすい。また、ショ糖カルボン酸エステル溶液から結晶として析出させることにより、融点が高いショ糖カルボン酸エステルを得ることができることが知られている。しかしながら、ショ糖カルボン酸エステル溶液から溶媒を除去することにより得られるショ糖カルボン酸エステルは、融点が低く、保管時に化合物の一部が溶融してブロッキングするなど流動性が悪い。そのため、このようなショ糖カルボン酸エステルは、工業的に使用する場合において、原料の仕込み時等に取扱性(作業性)が大きく劣るという問題がある。また、結晶として析出させる方法は、製造に長時間を要しやすい。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、高融点で、かつ、使用時の作業性に優れるショ糖カルボン酸エステルを、比較的短時間のうちに簡便な操作で得るためのショ糖カルボン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のショ糖カルボン酸エステルの製造方法には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)第1の融点を有する第1のショ糖カルボン酸エステルを準備する準備工程と、前記第1の融点よりも高い第2の融点を有する第2のショ糖カルボン酸エステルを別途準備し、前記第1のショ糖カルボン酸エステルに、前記第2のショ糖カルボン酸エステルを添加する添加工程と、前記第1のショ糖カルボン酸エステルと、前記第2のショ糖カルボン酸エステルとを、前記第1の融点以上であり前記第2の融点未満の温度で混合する混合工程と、を含み、前記混合工程は、攪拌装置を用いて1分以上攪拌を行う機械攪拌工程を含む、ショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【0009】
このような構成によれば、本発明のショ糖カルボン酸エステルの製造方法は、第1のショ糖カルボン酸エステルに、第2のショ糖カルボン酸エステルを添加する添加工程を含む。また、ショ糖カルボン酸エステルの製造方法は、第1のショ糖カルボン酸エステルと、第2のショ糖カルボン酸エステルとを、第1の融点以上であり第2の融点未満の温度で混合する混合工程を含む。このような温度では、第1のショ糖カルボン酸エステルは溶融され、第2のショ糖カルボン酸エステルは溶融しない。そのため、溶融された第1のショ糖カルボン酸エステル中に、第2のショ糖カルボン酸エステルが適宜分散される。この際、混合工程は、攪拌装置を用いて1分以上攪拌を行う機械攪拌工程を含む。このような機械攪拌工程によれば、溶融された第1のショ糖カルボン酸エステルは、攪拌装置により比較的強い攪拌力を受けて攪拌されることにより、非溶融状態の第2のショ糖カルボン酸エステルを核として短時間のうちに析出されやすい。このような機序により析出されて得られるショ糖カルボン酸エステルの融点は、第1のショ糖カルボン酸エステルの融点(第1の融点)から、第2のショ糖カルボン酸エステルの融点(第2の融点)に近づくよう高められる。その結果、得られるショ糖カルボン酸エステルは、ブロッキングなどによる流動性の低下が抑制されるため、用途が制限されにくい。また、得られるショ糖カルボン酸エステルは、ブロック状の固体として得られ得る。このようなブロック状のショ糖カルボン酸エステルは、流動性がよく、取扱性がよい。また、機械攪拌工程は、1分以上であるが、多くの場合、従来の溶媒からショ糖カルボン酸エステルを析出させる方法の所要時間(たとえば24時間)よりも所要時間がはるかに短い。そのため、ショ糖カルボン酸の製造方法によれば、短時間のうちに簡便な操作(第2のショ糖カルボン酸エステルを添加し、攪拌装置により攪拌する操作)で高融点のショ糖カルボン酸エステルが得られる。
【0010】
(2)前記添加工程において、前記第2のショ糖カルボン酸エステルは、前記第1のショ糖カルボン酸エステルと前記第2のショ糖カルボン酸エステルとの質量比が50:50〜99.9:0.1となるよう添加され、好ましくは質量比が60:40〜97:3となるよう添加される、(1)記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【0011】
このような構成によれば、添加工程において、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとは、質量比が50:50〜99.9:0.1となるよう添加される。このような質量比で添加される場合、続く混合工程を経て得られるショ糖カルボン酸エステルは、融点が第2の融点に近づくよう高められやすい。また、添加される第2のショ糖カルボン酸エステルは、適正量であり、混合工程において第1のショ糖カルボン酸エステルと均一に混合されやすい。
【0012】
(3)前記第2のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度は、前記第1のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度の±3.0の範囲内であり、かつ、8.0以下である、(1)または(2)記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【0013】
このような構成によれば、第2のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度は、第1のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度の±3.0の範囲内である。このように、第1のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度が第2のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度と比較的近い場合、得られるショ糖カルボン酸エステルは、融点が第2の融点に近づくよう高められやすい。
【0014】
(4)前記第2の融点は、70〜150℃である、(1)〜(3)のいずれかに記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【0015】
このような構成によれば、第2の融点は、70〜150℃である。そのため、混合工程において、第2の融点未満である混合温度を比較的高めに設定することができる。その結果、混合工程において溶融状態にある第1のショ糖カルボン酸エステルの粘度を下げることができ、第2のショ糖カルボン酸エステルを均一に混合しやすい。
【0016】
(5)前記添加工程において、前記第1のショ糖カルボン酸エステルは、前記第1の融点以上に加熱される、(1)〜(4)のいずれかに記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【0017】
このような構成によれば、添加工程において、第1のショ糖カルボン酸エステルは、第1の融点以上に加熱される。そのため、混合工程の前に、第1のショ糖カルボン酸エステルは溶融されるため、続く混合工程において、非溶融状態の第2のショ糖カルボン酸エステルは、第1のショ糖カルボン酸エステルに混合されやすい。
【0018】
(6)前記添加工程は、前記攪拌装置を用いて実施される、(1)〜(5)のいずれかに記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【0019】
このような構成によれば、添加工程は、攪拌装置を用いて実施される。すなわち、添加工程において用いられる攪拌装置は、続く混合工程の機械攪拌工程で用いられる攪拌装置と共通である。そのため、添加工程において、たとえば攪拌装置に第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとが投入され、そのまま混合が開始されることにより、添加工程と混合工程(機械攪拌工程)とは、連続的に行われる。その結果、製造に要する時間は、短縮化される。また、たとえば添加工程と混合工程とを別々の装置を用いて行う場合には、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの混合物には、一時的な昇温や降温などの複雑な熱履歴が加わりやすい。しかしながら、共通する攪拌装置を使用して添加工程と混合工程(機械攪拌工程)とを連続的に行うことにより、ショ糖カルボン酸エステルの製造方法は、混合物に加えられる熱履歴を単純化することができる。その結果、得られるショ糖カルボン酸エステルは、品質のばらつきが抑えられやすい。
【0020】
(7)前記混合工程は、前記機械攪拌工程の前に、前記攪拌装置よりも弱い攪拌力で攪拌する弱攪拌工程をさらに含む、(1)〜(6)のいずれかに記載のショ糖カルボン酸エステルの製造方法。
【0021】
このような構成によれば、混合工程は、機械攪拌工程の前に、攪拌装置よりも弱い攪拌力で攪拌する弱攪拌工程をさらに含む。そのため、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとは、機械攪拌工程の前に、あらかじめある程度混合される。その結果、機械攪拌工程において、第2のショ糖カルボン酸エステルが適宜混合された混合物を攪拌装置により攪拌することができ、得られるショ糖カルボン酸エステルの融点が高められやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高融点で、かつ、使用時の作業性に優れるショ糖カルボン酸エステルを、比較的短時間のうちに簡便な操作で得るためのショ糖カルボン酸エステルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<ショ糖カルボン酸エステルの製造方法>
以下、本発明の一実施形態のショ糖カルボン酸エステルの製造方法について説明する。ショ糖カルボン酸エステルの製造方法は、第1のショ糖カルボン酸エステルを準備する準備工程と、第1のショ糖カルボン酸エステルに、第2のショ糖カルボン酸エステルを添加する添加工程と、第1のショ糖カルボン酸エステルと、第2のショ糖カルボン酸エステルとを、混合する混合工程とを含む。すなわち、本実施形態は、第1のショ糖カルボン酸エステルに第2のショ糖カルボン酸エステルを添加、混合することにより、目的物であるショ糖カルボン酸エステル(第3のショ糖カルボン酸エステル)を製造する方法である。なお、本実施形態では、準備工程において準備されるショ糖カルボン酸エステルと、目的物であるショ糖カルボン酸エステルとを区別するために、準備工程において準備されるショ糖カルボン酸エステルを第1のショ糖カルボン酸エステルといい、添加工程において添加されるショ糖カルボン酸エステルを第2のショ糖カルボン酸エステルといい、目的物であるショ糖カルボン酸エステルを第3のショ糖カルボン酸エステルという。得られる第3のショ糖カルボン酸エステルは、第2のショ糖カルボン酸エステルと同程度の高い融点を示し、取扱性の優れたブロック状である。以下、それぞれの工程について説明する。
【0024】
<準備工程>
準備工程は、第1のショ糖カルボン酸エステルを準備する工程である。第1のショ糖カルボン酸エステルは、ショ糖(スクロース)とアシル化剤とを反応させて得られる化合物であり、第1の融点を有する。アシル化剤としては、カルボン酸化合物またはその反応性誘導体が例示される。アシル化剤は、1種または2種以上を使用することができる。
【0025】
カルボン酸化合物は、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物であり、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸が例示される。これらの中でも、カルボキシル基の数が1つである脂肪族モノカルボン酸が好ましい。このような脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等が例示される。これらの中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの炭素数2〜4の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
【0026】
カルボン酸化合物の反応性誘導体としては、対応する酸ハロゲン化物、酸無水物が例示される。中でも、脂肪族モノカルボン酸の酸無水物が好ましい。このような酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸等が例示される。これらの中でも、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの炭素数4〜8の脂肪族モノカルボン酸無水物が好ましい。
【0027】
これらショ糖とアシル化剤とから第1のショ糖カルボン酸エステルを生成する方法は特に限定されず、汎用の合成方法が採用される。一例を挙げると、第1のショ糖カルボン酸エステルは、ショ糖と、上記したアシル化剤と、合成に際して必要とされるその他の化合物(たとえば塩基性有機溶媒、水不混和性溶媒、各種触媒、中和剤等)とを反応系内において所定の範囲内の含有比率のもと、適宜中和、減圧留去、洗浄等を行うことにより生成される。より具体的な一例としては、第1のショ糖カルボン酸エステルは、ショ糖と塩基性有機溶媒(ピリジン等)とアシル化剤(無水酢酸等)とを反応させ、減圧留去して塩基性有機溶媒とアシル化剤および必要に応じて反応副生物とを分離する。次いで、反応生成物に水不混和性溶媒(トルエン等)と中和剤(炭酸水素ナトリウム等)とを混合して中和し、分液して水層を分離する。残った有機層を必要に応じて洗浄し、減圧留去して水不混和性溶媒を除去することにより作成することができる。
【0028】
塩基性有機溶媒としては、モルホリン、アセチルモルホリン、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、ピペリジン、ピロリジン、キノリン、イソキノリン等が例示される。塩基性有機溶媒は、1種または2種以上を使用することができる。
【0029】
水不混和性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、二塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレンなどの塩素化脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの低級脂肪族エーテルが例示される。水不混和性溶媒は、1種または2種以上を使用することができる。
【0030】
触媒としては、塩基触媒または酸触媒が例示される。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が例示される。酸触媒としては、硫酸、塩化水素等が例示される。触媒は、1種または2種以上を使用することができる。なお、本実施形態では、上記した塩基性有機溶媒が、塩基触媒としての作用を併せ持つもの(たとえばピリジン等)である場合には、他の触媒は適宜添加が省略されてもよい。また、本実施形態では、これら触媒のうち、中和剤としての役割を併せ持つものが使用されてもよい。この場合、たとえば反応副生物として酢酸や塩酸が生成される場合であっても、これら反応副生物を、分液操作時に添加された水に溶解された中和剤と適宜反応させることにより中和することができる。このような中和剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが例示される。
【0031】
得られる第1のショ糖カルボン酸エステルの融点(第1の融点)は、後述する第2のショ糖カルボン酸エステルの融点(第2の融点)よりも低ければよく、特に限定されない。一例を挙げると、第1の融点は、20℃以上であり、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは30℃以上である。また、第1の融点は、60℃以下であり、好ましく55℃以下であり、より好ましくは50℃以下である。第1の融点が20℃未満の場合、第2のショ糖カルボン酸エステルを混合しても、融点が上がりにくい傾向がある。一方、第1の融点が60℃を超える場合、第1のショ糖カルボン酸エステルが充分に溶融しにくく、後述する混合工程において取扱性が悪くなる傾向がある。
【0032】
得られる第1のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度(第1の平均エステル化度)としては、特に限定されない。第1の平均エステル化度は、低い場合には親水性基であるヒドロキシ基の数が増えるため、製造過程において水相に存在するショ糖カルボン酸エステルの割合が増加する。この場合、ショ糖カルボン酸エステルを、水不混和性溶媒相(油相)だけでなく、水相からも回収することが必要となる。したがって、第1の平均エステル化度は、所定の値以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましい。また、第1の平均エステル化度の上限は特に限定されず、8.0以下であればよく7.9以下であることが好ましい。
【0033】
なお、本実施形態において、平均エステル化度とは、1分子のショ糖における、エステル化されたアルコールの数の平均値をいう。平均エステル化度(Y)は、以下の式(I)にしたがって算出することができる。なお、上記のとおりショ糖カルボン酸エステルの場合、平均エステル化度の上限は8.0である。しかしながら、以下の式(I)に沿って平均エステル化度を算出した際に、たとえば測定誤差等により算出された値が8.0を超える場合が考えられる。本実施形態では、このような場合、平均エステル化度は8.0として取り扱われてもよい。
【0034】
式(I):Y=(a×56110−Ma×X)/[(Mb−Mc)×X+56110]
(式(I)中、Yは平均エステル化度、aはショ糖の水酸基数である8、Maはショ糖の分子量である342、XはJIS K0070に準じて求められる平均水酸基価、Mbはカルボン酸の分子量、Mcは水の分子量である18を表す。)
【0035】
準備工程を経て得られる第1のショ糖カルボン酸エステルは、続く添加工程において別途準備された第2のショ糖カルボン酸エステルが添加される。
【0036】
<添加工程>
添加工程は、第1のショ糖カルボン酸エステルに第2のショ糖カルボン酸エステルを添加する工程である。第2のショ糖カルボン酸エステルは、上記した準備工程において準備される第1のショ糖カルボン酸エステルとは別に準備される。以下、詳細に説明する。
【0037】
第2のショ糖カルボン酸エステルは、ショ糖(スクロース)と上記したアシル化剤とを反応させて得られる化合物である。
【0038】
第2のショ糖カルボン酸エステルを生成する方法は特に限定されず、汎用の合成方法が採用される。一例を挙げると、ショ糖と、上記したアシル化剤と、合成に際して必要とされるその他の化合物(たとえば塩基性有機溶媒、水混和性溶媒等)を反応系内において所定の範囲内の含有比率のもと、適宜減圧留去、静置等を行うことにより生成される。具体的な一例としては、第2のショ糖カルボン酸エステルは、ショ糖と塩基性有機溶媒(ピリジン等)とアシル化剤(無水酢酸等)とを反応させ、減圧留去して塩基性有機溶媒とアシル化剤とを分離する。次いで、水混和性溶媒(メタノール等)と混合し、静置することにより作成することができる。このような生成方法によれば、第2のショ糖カルボン酸エステルは、結晶の形態で作成されやすい。第2のショ糖カルボン酸エステルの結晶は、混合工程において種結晶として混合され得る。なお、第2のショ糖カルボン酸エステルは、混合工程において溶融されない形態であればよく、結晶でなくてもよい。また、第2のショ糖カルボン酸エステルは、上記生成方法に依らず、後述する混合工程を経て得られた析出物(第3のショ糖カルボン酸エステル)がそのまま使用されてもよい。すなわち、本実施形態のショ糖カルボン酸エステルの製造方法によれば、得られる第3のショ糖カルボン酸エステルは、第2のショ糖カルボン酸エステルと同様に高融点である。そのため、得られる第3のショ糖カルボン酸エステルは、別途行われる製造過程において、第2のショ糖カルボン酸エステルとして使用され得る。
【0039】
水混和性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ等が例示される。水混和性溶媒は、1種または2種以上を使用することができる。
【0040】
得られる第2のショ糖カルボン酸エステルの融点(第2の融点)は、上記した第1の融点よりも高ければよく、特に限定されない。一例を挙げると、第2の融点は、第1の融点にも依るが好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75℃以上である。また、第2の融点は、第1の融点にも依るが好ましく150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。第2の融点が70℃未満である場合、後述する混合工程における混合温度を比較的低めに設定しなければならず、上記した第1のショ糖カルボン酸エステルの粘度が高くなりやすい。この場合、第1のショ糖カルボン酸エステルは、非溶融状態の第2のショ糖カルボン酸エステルと均一に混合されにくい傾向がある。
【0041】
得られる第2のショ糖カルボン酸エステルの平均エステル化度(第2の平均エステル化度)としては、特に限定されない。第2の平均エステル化度は、所定の値以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましい。また、第2の平均エステル化度の上限は特に限定されず、8.0以下であればよく7.9以下であることが好ましい。
【0042】
第2の平均エステル化度は、上記した第1の平均エステル化度との関係からは、第1の平均エステル化度の±3.0の範囲内であることが好ましく、±1.0の範囲内であることがより好ましく、±0.5の範囲内であることがさらに好ましい。第2の平均エステル化度が第1の平均エステル化度の±3.0の範囲内である場合、第1の平均エステル化度と第2の平均エステル化度とが比較的近い値であるため、後述する混合工程を経て得られる第3のショ糖カルボン酸エステルの融点は、第2のショ糖カルボン酸エステルの第2の融点に近づくよう高められやすい。
【0043】
第1のショ糖カルボン酸エステルに第2のショ糖カルボン酸エステルを添加する際の比率としては特に限定されない。一例を挙げると、第2のショ糖カルボン酸エステルは、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの質量比が50:50〜99.9:0.1となるよう添加されることが好ましい。また、第2のショ糖カルボン酸エステルは、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの質量比が60:40〜97:3となるよう添加されることがより好ましい。第2のショ糖カルボン酸エステルが、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの質量比が50:50〜99.9:0.1となるよう添加される場合、後述する混合工程を経て得られる第3のショ糖カルボン酸エステルは、融点(第3の融点)が第2の融点に近づくよう高められやすい。また、添加される第2のショ糖カルボン酸エステルが適正量であり、混合工程において第1のショ糖カルボン酸エステルと均一に混合されやすい。なお、第2のショ糖カルボン酸エステルが50質量%以下となるよう添加されることが好ましい理由は、後述される混合工程において第2のショ糖カルボン酸エステルが溶融状態である第1のショ糖カルボン酸エステルに対して非溶融状態のまま混合される観点から、添加量が50質量%を超えて主成分として添加されることが観念しにくいためである。このような理由に過ぎないため、第2のショ糖カルボン酸エステルは、50質量%を超えて添加されてもよい。
【0044】
第2のショ糖カルボン酸エステルを第1のショ糖カルボン酸エステルに添加する方法としては特に限定されない。一例を挙げると、第2のショ糖カルボン酸エステルは、たとえば後述する混合工程の機械攪拌工程で使用される攪拌装置や、好適に実施される後述の弱攪拌工程で使用される弱攪拌装置にあらかじめ投入された第1のショ糖カルボン酸エステルに対して、添加されてもよい。この場合、あらかじめ投入された第1のショ糖カルボン酸エステルは、攪拌装置内で第1の融点以上であり第2の融点未満の温度で保持されていてもよく、第1の融点未満の温度で保持されていてもよい。第1の融点以上であり第2の融点未満の温度では、第1のショ糖カルボン酸エステルは溶融している。そのため、第2のショ糖カルボン酸エステルは、溶融された第1のショ糖カルボン酸エステルに対して添加される場合、引き続いて行われる混合工程において混合されやすい。また、混合工程が行われる攪拌装置または弱攪拌装置において添加工程が実施される場合、添加工程と混合工程とは、実質的に連続的に行われる。そのため、製造時間が短縮化され、製造管理が簡便化され、夾雑物の混入が防止される等の利点がある。さらに、添加工程と混合工程とが別々の装置を用いて行われる場合、混合物には、一時的な昇温や降温などの複雑な熱履歴が加わりやすい。しかしながら、添加工程と混合工程とにおいて共通する攪拌装置が使用されて添加工程と混合工程とが連続的に行われることにより、混合物に加えられる熱履歴は、単純化される。その結果、得られるショ糖カルボン酸エステルの品質のばらつきが抑えられやすい。
【0045】
一方、第2のショ糖カルボン酸エステルは、攪拌装置以外の装置または場所に準備された第1のショ糖カルボン酸エステルに対して添加されてもよい。この場合、第1のショ糖カルボン酸エステルを第1の融点未満に保持しておけば、第1のショ糖カルボン酸エステルは溶融せず、固形または半固形状となる。したがって、このような第1のショ糖カルボン酸エステルは、計量やその後の運搬等の取扱いが容易であり、適切に第2のショ糖カルボン酸エステルを添加した後、混合工程を行うために他の装置(たとえば攪拌装置)に移動させやすい。
【0046】
添加工程を経て得られた第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの添加物は、続く混合工程において混合される。
【0047】
<混合工程>
混合工程は、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとを、第1の融点以上であり第2の融点未満の温度で混合する工程である。混合工程は、攪拌装置を用いて攪拌を行う機械攪拌工程を含む。また、混合工程は、好適には、機械攪拌工程の前に、攪拌装置よりも弱い攪拌力で攪拌する弱攪拌工程を含む。以下、詳細に説明する。
【0048】
(弱攪拌工程)
弱攪拌工程は、後述する機械攪拌工程の前に行われる工程である。弱攪拌工程は、本実施形態のショ糖カルボン酸エステルの製造方法において好適に行われる工程であり、必須ではない。そのため、上記した添加工程に続き、後述する機械攪拌工程が行われてもよい。
【0049】
弱攪拌工程における混合方法としては特に限定されず、後述する機械攪拌工程で使用される攪拌装置による攪拌力よりも弱い攪拌力で混合する方法であればよい。すなわち、弱攪拌工程における混合は、機械に依らず作業者が手で攪拌する方法(手攪拌)等の簡単な攪拌であってもよく、後述する攪拌工程で行われる攪拌力よりも弱い攪拌力を備える攪拌装置(弱攪拌装置)を用いた攪拌方法であってもよい。なお、弱攪拌装置は、後述する攪拌装置とは別の装置であってもよく、攪拌装置と同様の装置であって攪拌装置よりも攪拌力を弱く設定した装置であってもよい。
【0050】
第2のショ糖カルボン酸エステルを第1のショ糖カルボン酸エステルと混合する際の混合温度としては、上記した第1の融点以上であり前記第2の融点未満であれば特に限定されない。一例を挙げると、混合温度は、上記した第1の融点および第2の融点にも依るが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、混合温度は、上記した第1の融点および第2の融点にも依るが、85℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。このような混合温度で第2のショ糖カルボン酸エステルを第1のショ糖カルボン酸エステルと混合する場合、溶融状態の第1のショ糖カルボン酸エステルに対して、非溶融状態を維持した第2のショ糖カルボン酸エステルを混合することができる。特に、混合温度が60℃以上80℃以下である場合、第1のショ糖カルボン酸エステルを充分に溶融させて第1のショ糖カルボン酸エステルの粘度を適切に下げつつ、第2のショ糖カルボン酸エステルを非溶融状態で維持できるため、第2のショ糖カルボン酸エステルを第1のショ糖カルボン酸エステル中に均一に混合しやすい。なお、第2のショ糖カルボン酸エステルを第1のショ糖カルボン酸エステルと混合する際、上記した添加工程においてあらかじめ第1のショ糖カルボン酸エステルが溶融されている場合には、引き続き混合を開始すればよく、添加工程において第1のショ糖カルボン酸エステルが溶融されてない場合には、混合前または混合しながら第1のショ糖カルボン酸エステルを加熱して溶融させて混合すればよい。
【0051】
第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとを混合する際の混合時間としては特に限定されず、溶融状態の第1のショ糖カルボン酸エステル中に第2のショ糖カルボン酸エステルをある程度均一に混合するために要する時間であればよい。このような混合時間は、混合温度や第1のショ糖カルボン酸エステルの第1の融点、溶融状態にある第1のショ糖カルボン酸エステルの粘度、混合を行う方法(作業者が攪拌するか、ニーダー等の攪拌装置を使用するか)等にも依るため、一義的には決定されにくい。そこで、一例を挙げると混合時間としては、1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上を採用することができる。また、混合時間としては、12時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは1時間以下を挙げることができる。
【0052】
弱攪拌工程を経て得られる第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの混合物(以下、単に混合物という)は、続く機械攪拌工程においてより強い攪拌力で混合される。なお、上記のとおりこの弱攪拌工程は好適に採用される工程に過ぎない。そのため、続く機械攪拌工程は、上記した添加工程を経て未だ充分に混合されていない添加物に対して行われてもよい。
【0053】
(機械攪拌工程)
機械攪拌工程は、上記した添加工程に続いて(弱攪拌工程が行われる場合には弱攪拌工程に続いて)行われる工程であり、攪拌装置を用いて1分以上攪拌を行う工程である。機械攪拌工程において混合物を比較的強い攪拌力で攪拌しながら混合することにより、混合物中の第1のショ糖カルボン酸エステルは、第2のショ糖カルボン酸エステルを核として析出が促される(析出された第1のショ糖カルボン酸エステルは、第3のショ糖カルボン酸エステルと称される)。この際、第1のショ糖カルボン酸エステルの融点(第1の融点)は、高められ、第2のショ糖カルボン酸エステルの融点(第2の融点)に近づけられる。以下、詳細に説明する。
【0054】
機械攪拌工程では、攪拌装置を用いて比較的強い攪拌力により、第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの混合物(添加物)が攪拌される。このような比較的強い攪拌力を有する攪拌装置としては、各種ニーダー、ミキサー、押し出し機が例示される。ニーダーとしては、加圧ニーダー、フラッシングニーダー、ケーエックスニーダー等が例示される。ミキサーとしては、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー等が例示される。押し出し機としては、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、四軸押出機等が例示される。第1のショ糖カルボン酸エステルと第2のショ糖カルボン酸エステルとの混合物は、これらの攪拌装置を用いてバッチ式で混合されてもよく連続式で混合されてもよい。
【0055】
機械攪拌工程では、これら攪拌装置が使用され、混合物が比較的強い攪拌力により攪拌される。このような攪拌力としては、攪拌の際に使用される治具の構成(攪拌羽の形状、数、大きさ、回転数等)に依るため一義的には決定されにくい。そこで、本実施形態では、一例として、攪拌力を、攪拌装置の稼働動力(kW)と処理量(kg)とにより表現することとする。この場合、攪拌力は、バッチ式の場合、攪拌装置の稼働動力(kW)を処理量(kg)で除することにより表現される。この場合、攪拌力は、0.01(kW/kg)以上であることが好ましく、0.05(kW/kg)以上であることがより好ましく、0.1(kW/kg)以上であることがさらに好ましい。また、攪拌力は、100(kW/kg)以下であることが好ましく、10(kW/kg)以下であることがより好ましく、5(kW/kg)以下であることがさらに好ましく、3(単位:kW/kg)であることが特に好ましい。同様に、連続式の場合、攪拌力は、攪拌装置の稼働動力(kW)を単位時間当たりの処理量(kg/hr)で除することにより表現される。この場合、攪拌力は、0.01(kW/(kg/hr))以上であることが好ましく、0.05(kW/(kg/hr))以上であることがより好ましく、0.1(kW/(kg/hr))以上であることがさらに好ましい。また、攪拌力は、100(kW/(kg/hr))以下であることが好ましく、10(kW/(kg/hr))以下であることがより好ましく、5(kW/(kg/hr))以下であることがさらに好ましく、3(単位:kW/(kg/hr))であることが特に好ましい。
【0056】
機械攪拌工程における混合温度としては、上記した第1の融点以上であり前記第2の融点未満であれば特に限定されない。一例を挙げると、混合温度は、上記した第1の融点および第2の融点にも依るが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、混合温度は、上記した第1の融点および第2の融点にも依るが、85℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。このような混合温度で混合物を混合する場合、溶融状態の第1のショ糖カルボン酸エステルが、第2のショ糖カルボン酸エステルを核として析出しやすい。
【0057】
この際、機械攪拌工程における混合温度は、上記した弱攪拌工程における混合温度との比較において、同じであってもよく、弱攪拌工程における混合温度よりも低くてもよい(すなわち、上記した弱攪拌工程における混合温度は、機械攪拌工程における混合温度よりも高くてもよい)。すなわち、機械攪拌工程は、攪拌装置を用いて混合物を比較的強い攪拌力で攪拌する工程である。そのため、混合物の粘度が比較的高くても、充分に混合物を攪拌することができる。その結果、弱攪拌工程のように比較的弱い攪拌力であっても混合物を攪拌し得るように混合物の粘度を低下させる必要がない。したがって、機械攪拌工程における混合温度は、弱攪拌工程における混合温度と同程度に高める必要がない。このように、機械攪拌工程における混合温度は、弱攪拌工程における混合温度よりも低い温度でよいため、温度管理が容易である。
【0058】
混合時間は、1分以上であればよく、3分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましい。また、混合時間は、120分以下であることが好ましい。混合時間が1分未満の場合、溶融状態の第1のショ糖カルボン酸エステルは、充分に析出されず、得られる第3のショ糖カルボン酸エステルの第3の融点が充分に高められにくい。一方、混合時間が120分を超える場合、これ以上の第3の融点の上昇が見込まれず、生産効率が上がりにくい傾向がある。
【0059】
以上の混合工程を経て得られる第3のショ糖カルボン酸エステルは、第3の融点が第2のショ糖カルボン酸エステルの融点(第2の融点)と同程度にまで高められる。このような高融点の第3のショ糖カルボン酸エステルは、ブロッキングなどによる流動性の低下が抑制される。その結果、第3のショ糖カルボン酸エステルは、用途が制限されにくい。また、第3のショ糖カルボン酸エステルは、ブロック状の固体として得られ得る。このようなブロック状の第3のショ糖カルボン酸エステルは、流動性がよく、取扱性がよい。さらに、機械攪拌工程は、1分以上であるが、多くの場合、従来の溶媒から結晶を析出させる方法の所要時間(たとえば24時間)よりも所要時間が極端に短い。そのため、ショ糖カルボン酸の製造方法によれば、短時間のうちに簡便な操作(第2のショ糖カルボン酸エステルを添加し、機械攪拌により混合する操作)で高融点のショ糖カルボン酸エステルが得られる。
【0060】
<ショ糖カルボン酸エステルの用途の一例>
本実施形態のショ糖カルボン酸エステルの製造方法によれば、得られる第3のショ糖カルボン酸エステルは、融点が結晶と同様に高く、かつ、ブロック状であり流動性がよく取扱性がよい。そのため、このような第3のショ糖カルボン酸エステルは、種々の用途に利用される。以下、用途の一例を示す。
【0061】
第3のショ糖カルボン酸エステルは、樹脂改質剤として有用である。ショ糖カルボン酸エステルは、特に、樹脂の光沢性を向上させることができ、また、可塑性を向上させることができるという優れた特長を示すので、これらの性能が要求される樹脂の樹脂改質剤として有用である。このような樹脂改質剤は、化粧品や色材等に使用される。
【0062】
樹脂改質剤としてショ糖カルボン酸エステルを含む樹脂としては、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の非晶性樹脂のほか、結晶性ポリエステル樹脂等の結晶性樹脂が例示される。樹脂は、用途に応じて適宜選択される。樹脂に添加されるショ糖カルボン酸エステルは、樹脂の種類や用途に応じて、低置換体の割合やエステル置換度において、より相応しいものが適宜選択される。
【0063】
ABS樹脂としては特に限定されず、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリル系ゴム(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等)と、アクリロニトリル、スチレン、アクリル酸、アクリル酸アマイド、2−クロロエチルビニルエーテル等との共重合体等ゴム状重合体に、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、メタアクリル酸メチル等をグラフト重合させて得られるもの、アクリロニトリルポリブタジエン−スチレン系のグラフト共重合体等が例示される。ABS樹脂は、1種または2種以上を使用することができる。
【0064】
ポリ塩化ビニル樹脂としては特に限定されず、塩化ビニル単独重合樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル単量体と共重合し得るすべての単量体のうち1つ以上とランダム共重合あるいはブロック共重合して得られる塩化ビニル共重合樹脂(酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等)、または上記の樹脂に水酸基などの官能基をグラフトさせて得られる樹脂や水酸基などの官能基と反応性化合物とを反応させてグラフト結合させたものが例示される。ポリ塩化ビニル樹脂は、1種または2種以上を使用することができる。
【0065】
エポキシ樹脂としては特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキルエポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が例示される。エポキシ樹脂は、1種または2種以上を使用することができる。
【0066】
不飽和ポリエステル樹脂としては特に限定されず、α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸またはその無水物とグリコールの付加反応または脱水縮合反応によって合成されるものが例示される。飽和ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸またはその無水物あるいはカルボン酸と反応するジシクロペンタジエンなどが、併用されてもよい。α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらジカルボン酸の無水物が例示される。これらα,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸と併用されるジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸無水物、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸等が例示される。これらの中でも、α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸としてフマル酸、ジカルボン酸としてイソフタル酸が併用されることが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂は、1種または2種以上を使用することができる。
【0067】
結晶性ポリエステル樹脂としては特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリ−1,4−ブチレンジフェニル−4,4’−ジカルボキシレート、ポリエチレンオキシベンゾエート、ポリ−1,3−プロピレンテレフタレート、ポリ−1,6−ヘキシレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルが例示される。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナノフタレートが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、1種または2種以上を使用することができる。
【0068】
なお、これら樹脂には、必要に応じて、衝撃強度改質剤、安定剤、滑剤、充填剤、顔料、発泡剤、紫外線安定剤等の各種添加剤が添加されてもよい。
【0069】
第3のショ糖カルボン酸エステルの配合量としては、樹脂100質量%に対して、1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。第3のショ糖カルボン酸エステルの配合量が1質量%未満の場合、目的とする性能が得られない傾向がある。一方、第3のショ糖カルボン酸エステルの配合量が40質量%を超える場合、長期保存などによるブリードアウトを起こす可能性がある。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0071】
<製造例1>ショ糖酢酸エステル結晶1の製造
攪拌装置、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を備えた500mLセパラブルフラスコを加熱用オイルバスに装着した。このセパラブルフラスコを用いて、ショ糖50g(0.15モル)、ピリジン570g(7.2モル)および無水酢酸120g(1.18モル)を混合し、窒素ガスを10mL/分の流量でバブリングさせながら70℃で2時間反応させ、ピリジン、未反応の無水酢酸および副生する酢酸を減圧下で留去した。得られた残留物にメタノール220gを加えて混合し、−5℃で18時間静置することにより結晶を析出させた。この溶液をろ過して析出した結晶を取り出して−5℃のメタノール30gで洗浄し、さらに減圧下、45℃で8時間乾燥することにより、ショ糖酢酸エステル結晶1(第2のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点85℃(第2の融点の一例)、平均エステル化度7.9(第2の平均エステル化度の一例))を得た。
【0072】
<製造例2>ショ糖酢酸エステル結晶2の製造
製造例1において、無水酢酸の使用量を107g(1.05モル)とした以外は同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステル結晶2(第2のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点85℃(第2の融点の一例)、平均エステル化度7.0(第2の平均エステル化度の一例))を得た。
【0073】
<製造例3>ショ糖酢酸エステル結晶3の製造
製造例1において、無水酢酸の使用量を77g(0.75モル)とした以外は同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステル結晶3(第2のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点86℃(第2の融点の一例)、平均エステル化度5.0(第2の平均エステル化度の一例))を得た。
【0074】
<製造例4>ショ糖プロピオン酸エステル結晶1の製造
製造例1において、無水酢酸に代えて無水プロピオン酸154g(1.18モル)を用いた以外は同様の操作を行い、ショ糖プロピオン酸エステル結晶1(第2のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点88℃(第2の融点の一例)、平均エステル化度7.9(第2の平均エステル化度の一例))を得た。
【0075】
<製造例5>ショ糖酪酸エステル結晶2の製造
製造例1において、無水酢酸に代えて無水酪酸187g(1.18モル)を用いた以外は同様の操作を行い、ショ糖酪酸エステル結晶1(第2のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点90℃(第2の融点の一例)、平均エステル化度7.9(第2の平均エステル化度の一例))を得た。
【0076】
<実施例1>
攪拌装置、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を備えた5Lセパラブルフラスコを加熱用オイルバスに装着した。このセパラブルフラスコを用いて、ショ糖250g(0.75モル)、ピリジン2850g(36モル)および無水酢酸600g(5.9モル)を混合し、窒素ガスを50mL/分の流量でバブリングさせながら70℃で2時間反応させ、ピリジン、未反応の無水酢酸および副生する酢酸を減圧下で留去した。次に、トルエンを1500g、0.5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液2250gを添加し、50℃で30分間攪拌後、静置してトルエンを分取した。続いて、トルエンを減圧下で留去し、ショ糖酢酸エステル1(第1のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点45℃(第1の融点の一例)、平均エステル化度7.9(第1の平均エステル化度の一例))を得た(準備工程)。450gの得られたショ糖酢酸エステル1をニーダー(バッチ式 卓上型ニーダー PNV−1 (株)入江商会製)に投入し、70℃に加熱して溶融し、ショ糖酢酸エステル結晶1を50g加え(添加工程)、稼動動力0.25kW(攪拌力0.5kW/kg)で15分間混合することにより(混合工程(機械攪拌工程))、ショ糖酢酸エステル(第3のショ糖カルボン酸エステルの一例)を得た。
【0077】
<実施例2〜6、比較例1〜3>
ショ糖酢酸エステル1とショ糖酢酸エステル結晶1との添加条件および混合条件(各成分の配合割合、混合温度および混合時間)を表1または表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜6および比較例1〜3のショ糖酢酸エステルを得た。
【0078】
<実施例7>
実施例1において、無水酢酸の使用量を535g(5.25モル)とした以外は同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステル2(第1のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点45℃(第1の融点の一例)、平均エステル化度7.0(第1の平均エステル化度の一例))を得た。450gの得られたショ糖酢酸エステル2をニーダーに投入し、70℃に加熱して溶融し、ショ糖酢酸エステル結晶2を50g加え(添加工程)、稼動動力0.25kW(攪拌力0.5kW/kg)で15分間混合することにより(混合工程(機械攪拌工程))、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0079】
<実施例8〜11、比較例4〜5>
ショ糖酢酸エステル2とショ糖酢酸エステル結晶2との添加条件および混合条件(各成分の配合割合、混合温度および混合時間)を表1または表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例7と同様の操作を行い、実施例8〜11および比較例4〜5のショ糖酢酸エステルを得た。
【0080】
<実施例12>
実施例1において、450gの得られたショ糖酢酸エステル1をニーダーに投入し、70℃に加熱して溶融し、ショ糖酢酸エステル結晶2を50g加え(添加工程)、稼動動力0.25kW(攪拌力0.5kW/kg)で30分間混合することにより(混合工程(機械攪拌工程))、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0081】
<実施例13>
実施例7において、450gの得られたショ糖酢酸エステル2をニーダーに投入し、70℃に加熱して溶融し、ショ糖酢酸エステル結晶1を50g加え(添加工程)、稼動動力0.25kW(攪拌力0.5kW/kg)で30分間混合することにより(混合工程(機械攪拌工程))、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0082】
<実施例14>
混合時間を10分間、稼動動力を0.15kW(攪拌力0.3kW/kg)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0083】
<実施例15>
混合時間を5分間、ニーダーに代えてプラネタリーミキサー(ハイビスミックス 2P−1型、(株)プライミクス製)を用い、稼動動力を0.44kW(攪拌力0.22kW/kg)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0084】
<実施例16>
混合時間を5分間、ニーダーに代えて二軸押出機(連続式 CMT−25、(株)シーティーイー製)を用い、稼動動力を1.5kW(攪拌力0.25kW・h/kg)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0085】
<実施例17>
稼動動力を3kW(攪拌力0.5kW・h/kg)に変更した以外は、実施例16と同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0086】
<実施例18>
稼動動力を0.9kW(攪拌力0.15kW・h/kg)に変更した以外は、実施例16と同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステルを得た。
【0087】
<実施例19>
実施例1において、無水酢酸の使用量を77g(0.75モル)とした以外は同様の操作を行い、ショ糖酢酸エステル3(第1のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点46℃(第1の融点の一例)、平均エステル化度5.0(第1の平均エステル化度の一例))を得た。450gの得られたショ糖酢酸エステル3をニーダー(バッチ式 卓上型ニーダー PNV−1 (株)入江商会製)に投入し、70℃に加熱して溶融し、ショ糖酢酸エステル結晶3を50g加え(添加工程)、稼動動力0.25kW(攪拌力0.5kW/kg)で 5分間混合することにより(混合工程(機械攪拌工程))、ショ糖酢酸エステル(第3のショ糖カルボン酸エステルの一例)を得た。
【0088】
<実施例20>
実施例1において、無水酢酸に代えて無水プロピオン酸154g(1.18モル)を用いた以外は同様の操作を行い、ショ糖プロピオン酸エステル1(第1のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点48℃(第1の融点の一例)、平均エステル化度7.9(第1の平均エステル化度の一例))を得た。450gの得られたショ糖プロピオン酸エステル1をニーダー(バッチ式 卓上型ニーダー PNV−1 (株)入江商会製)に投入し、70℃に加熱して溶融し、ショ糖プロピオン酸エステル結晶1を50g加え(添加工程)、稼動動力0.25kW(攪拌力0.5kW/kg)で5分間混合することにより(混合工程(機械攪拌工程))、ショ糖プロピオン酸エステル(第3のショ糖カルボン酸エステルの一例)を得た。
【0089】
<実施例21>
実施例1において、無水酢酸に代えて無水酪酸187g(1.18モル)を用いた以外は同様の操作を行い、ショ糖酪酸エステル1(第1のショ糖カルボン酸エステルの一例、融点50℃(第1の融点の一例)、平均エステル化度7.9(第1の平均エステル化度の一例))を得た。450gの得られたショ糖酪酸エステル1をニーダー(バッチ式 卓上型ニーダー PNV−1 (株)入江商会製)に投入し、70℃に加熱して溶融し、ショ糖酪酸エステル結晶1を50g加え(添加工程)、稼動動力0.25kW(攪拌力0.5kW/kg)で5分間混合することにより(混合工程(機械攪拌工程))、ショ糖酪酸エステル(第3のショ糖カルボン酸エステルの一例)を得た。
【0090】
<実施例22〜24>
ショ糖酢酸エステル1とショ糖酢酸エステル結晶1との添加条件および混合条件(各成分の配合割合、混合温度および混合時間)を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例22〜24のショ糖酢酸エステルを得た。
【0091】
<実施例25〜26>
ショ糖酢酸エステル1とショ糖酢酸エステル結晶1との添加条件および混合条件(各成分の配合割合、混合温度および混合時間)を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例16と同様の操作を行い、実施例25〜26のショ糖酢酸エステルを得た。
【0092】
<実施例27>
ショ糖酢酸エステル結晶1に代えてショ糖酢酸エステル結晶3を用い、添加条件および混合条件(各成分の配合割合および混合時間)を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例16と同様の操作を行い、実施例27のショ糖酢酸エステルを得た。
【0093】
<比較例6>
製造例1で得られたショ糖酢酸エステル結晶1を、比較例6のショ糖酢酸エステルとした。
【0094】
<比較例7>
製造例2で得られたショ糖酢酸エステル結晶2を、比較例7のショ糖酢酸エステルとした。
【0095】
実施例1〜27および比較例1〜7において得られたショ糖カルボン酸エステルについて、以下の評価方法に従って融点および流動性を評価した。結果を表1または表2に示す。
【0096】
<評価方法>
(1)融点
JIS−K0064に準じて測定する。
(2)流動性
得られたそれぞれのショ糖カルボン酸エステル1.0kgを、樹脂製のハンマーを用いてステンレス篩(目開き9.5mm、内径200mm×内高60mm、アズワン(株)製)上で、全てのショ糖カルボン酸エステルが篩を通過するまで砕いた。篩過されたショ糖カルボン酸エステルを、50℃環境下に24時間保管したあと、ステンレス篩(目開き16.0mm、内径200mm×内高60mm、アズワン(株)製)上に乗せ、10秒間、手で左右に振とうし、篩上の残留物の有無を確認した。
(評価基準)
○:残留物なし。
×:残留物あり。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表1および表2に示されるように、ショ糖酢酸エステル1〜3、ショ糖プロピオン酸エステル1またはショ糖酪酸エステル1に、ショ糖酢酸エステル結晶1〜3、ショ糖プロピオン酸エステル結晶1またはショ糖酪酸エステル結晶1を添加し、45℃以上85℃未満の混合温度で1分以上機械攪拌した実施例1〜27の製造方法によれば、得られたそれぞれのショ糖カルボン酸エステルは、いずれも融点が80℃〜88℃であり、添加されたそれぞれのショ糖カルボン酸エステル結晶の融点と同じか同程度まで高められた。また、得られたそれぞれのショ糖カルボン酸エステルは、流動性評価において、50℃環境下に置かれた後であっても目開き16.0mmの篩を通過した。すなわち、これらショ糖カルボン酸エステルは、たとえば夏場などの作業環境が高温となる場合においても互いに結着せず、ブロック状のままである。このようなブロック状のショ糖カルボン酸エステルは、たとえば製造工程において原料を投入する場合などに流動性が優れる。
【0100】
中でも、混合工程における配合割合のみを変えた実施例2と実施例5との比較、実施例3と実施例4と実施例6との比較、実施例8と実施例10と実施例11との比較、および実施例25と実施例26との比較において、ショ糖カルボン酸エステル結晶の配合割合のより多い実施例5、実施例6、実施例11および実施例25の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルの方が、実施例2、実施例3や実施例4、実施例10、および実施例26の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルよりも融点が高かった。特に、実施例5や実施例6の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルの融点は、ショ糖酢酸エステル結晶1と同じ融点(85℃)であった。
【0101】
また、混合工程(機械攪拌工程)における混合時間のみを変えた実施例1〜3との比較、実施例4と実施例5との比較、および実施例7〜9との比較において、混合時間のより長い実施例1、実施例5および実施例7の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルの方が、実施例2〜3、実施例4、および実施例8や実施例9の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルよりも融点が高く、ショ糖酢酸エステル結晶1やショ糖酢酸エステル結晶2と同じ融点(85℃)であった。
【0102】
さらに、混合工程(機械攪拌工程)における混合温度のみを変えた実施例1と実施例22との比較において、混合温度の高い実施例1の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルの方が、実施例2の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルよりも融点が高かった。
【0103】
ほかにも、混合工程(機械攪拌工程)における攪拌力のみを変えた実施例3と実施例15との比較、実施例16〜18との比較において、攪拌力の小さな実施例15や実施例18の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルよりも、より攪拌力の大きな実施例3や実施例16〜17の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステルの方が、得られたショ糖カルボン酸エステルの融点が高かった。
【0104】
一方、混合工程(機械攪拌工程)における混合温度を、ショ糖酢酸エステル結晶1やショ糖酢酸エステル結晶2の融点(85℃)を超える95℃とした比較例1や比較例4の製造方法により得られたショ糖酢酸エステルは、融点が充分に高められなかった。また、混合工程(機械攪拌工程)における混合時間を1分未満である0.5分とした比較例2の製造方法により得られたショ糖酢酸エステルは、融点が充分に高められなかった。さらに、混合工程(機械攪拌工程)における混合温度をショ糖酢酸エステルの1やショ糖酢酸エステル2の融点(45℃)未満である30℃や40℃とした比較例3や比較例5の製造方法により得られたショ糖酢酸エステルは、融点が充分に高められなかった。また、比較例6〜7において得られたショ糖酢酸エステルは、実施例1〜26の製造方法により得られたショ糖カルボン酸エステル(ブロック状)と比べて、粒子径が微小であった。しかしながら、このような微小な粒子は、篩の目よりも粒子径が充分に小さいものの、目詰まりを起こし、流動性評価の結果が悪くなった。