(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコールと酢酸エチルの中のいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は、1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を0.2〜1ml加えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
工程(2)で述べられた有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコール、酢酸エチルから選ばれるいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は1gあたりのポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料に有機溶媒を0.5〜2ml加えることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
工程(2)では、薬膜に水を加える使用量は、1gあたりのポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料に水を2〜40ml加えることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【背景技術】
【0002】
ドセタキセル(docetaxel、DTX)は、タキソテールとも呼ばれ、分子式がC
43H
53NO
14であり、分子量が807.88であり、パクリタキセル類の抗腫瘍薬であり、遊離のチューブリンと結合して、チューブリンが安定した微小管に組付けられることを促進できるとともに、その解重合を抑制して、正常な機能がなくなった微小管束の生成と微小管の固定につながることにより、細胞の有糸分裂を抑制し、抗腫瘍効果を発揮する。臨床において乳癌、非小細胞性肺癌、膵癌、軟部組織肉腫、頭頚部癌、胃癌、卵巣癌と前立腺癌等に用いられ、単独で薬剤投与しても組み合わせて薬剤投与しても著しい治療効果がある。
【0003】
しかし、ドセタキセルは同時に水溶性が悪いこと、半減期が短いこと、及び毒性が大きいこと等のディメリットを有するものであり、これにより、臨床での応用が制限される。現在、国内及び国外で市販されているドセタキセル注射液はドセタキセルをTween−80中に溶解し、臨床応用において、専用の注射用溶媒を厳格に使用して、それを希釈しなければならず、操作要求が厳格になり、且つ使用方法が繁雑になる。そして、製剤には多くのTweenが含まれて、溶血及びエネルギー等の不良反応になりやすく、予めデキサメタゾン等の薬物を服用しておき予防及び治療する必要があり、臨床で薬剤投与しにくく、薬剤投与の安全性が低い。今まで、この問題はよく解決されていない。
【0004】
ナノポリマーミセルは近年来開発されてきた、難溶性薬物向けの薬物送達システムであり、コア・シェル状構造を有し、中でもコアは疎水性部分であり、シェルは親水性部分である。ポリマーミセルは難溶性薬物をコア部分に内包してそれを可溶化させることができる。一般的に用いられる可溶化剤と潜伏性溶剤に比べて、ポリマーミセル薬物送達システムは生分解性材料を材料として選択するので、その安全性が高い。このため、難溶性薬物の被包補助材料として、良好な応用展望を有する。いくつかの技術では、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーとドセタキセルをミセルに調製して、この難題の解決を試み、例えば、中国特許出願第201110105540号には、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーとドセタキセルから調製されたミセルが開示されており、ドセタキセルの可溶化問題を解決した。
【0005】
しかしながら、従来のポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーとドセタキセルから調製されたミセルは、水で分散させた後の安定性が悪く、短時間で薬物漏れが発生したことにより、臨床応用時に、その物理的安定性が高くないため、さらなる普及と確実な応用ができない。この問題を解決するために、中国特許出願第201010114289号には、ポリマーミセルにアミノ酸を添加する方法でミセル再溶解後の安定性を向上する技術が開示されているが、添加された物質の工業的生産に対する要求が高い上に、添加された安定剤により製剤工程の繁雑性が高くなるとともに、添加されたアミノ酸等は主薬に対して分解効果があるので、大規模な生産には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に存在する技術問題を解決するために、本発明は、水で分散させた後、封入率が90%よりも大きくなる時間は12時間以上に達することが可能である、ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の解決しようとするもう一つの技術問題は、上記ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の調製方法及びその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術の目的を図るために、本発明は以下の技術方案を採用する。
【0009】
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料とドセタキセルとを含み、ドセタキセルはキャリア材料に内包され、ドセタキセルとキャリア材料との質量比は0.01〜0.15であり、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体はD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルとが開環重合して形成されたブロック共重合体であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドとの質量比は1:0.55〜0.65または1:0.73〜0.89または1:0.91〜0.99である、ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤。前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドとの質量比は、合成後のブロック共重合体がミセルを形成した後で、水で再溶解した後の封入率に大きな影響をもたらすので、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドの使用量を厳格に制御しなければならない。
【0010】
好ましくは、前記ドセタキセルとキャリア材料との質量比は0.02〜0.09である。
【0011】
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分子量は1000〜20000であり、好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分子量は2000または5000である。
【0012】
本発明は、さらに、以下の工程を備える上記ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の調製方法を提供することを目的とする。
(1)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料を合成する工程。
(2)フィルム再水和法を用いて薬物送達ミセル水溶液を調製する工程:配合量のドセタキセルと工程(1)で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料を有機溶媒に溶解させ、混合して均一にし、回転蒸発により有機溶媒を除去し、薬物とキャリア材料のゲル状薬膜が得られた後、薬膜に水を加えて前記薬膜を溶解分散させて、ミセル溶液にする。なかでも、前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコールと酢酸エチルの中のいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は、1gあたりのポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料に有機溶媒を0.5〜2ml加え、好ましくは、前記有機溶媒はジクロロメタン、メタノール、アセトンまたは酢酸エチルの中のいずれか一種類である。
(3)工程(2)で調製されたミセル溶液を濾過除菌し、冷凍結乾燥後ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤が得られる工程。
【0013】
具体的には、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料は下記の方法により調製された。配合量のD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルを秤量しておき、配合量のポリエチレングリコールモノメチルエーテルを60〜130℃で反応器の中で2〜8h真空乾燥させ、窒素置換後、配合量のD,L−ラクチドを入れ、さらに触媒である、質量がD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルの全質量の0.05wt%〜0.5wt%を占めるスタナスオクトエートを投入する。次に、真空引きをし、反応温度を60〜130℃に維持し、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉しまたは窒素で保護した後、125〜150℃まで昇温させ、6〜20h反応させる。反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。前記淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を加えて溶解させ、30〜50min撹拌した後、続いて無水エーテルを入れて20〜40min撹拌し、0〜5℃で12〜24h静置した後、吸引濾過後真空乾燥させることにより、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られた。中でも、前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコールと酢酸エチルの中のいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は、1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を0.2〜1ml加え、好ましくは、前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトンまたは酢酸エチルの中のいずれか一種類である。中でも、無水エーテルの使用量について、1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に無水エーテルを5〜10ml加える。
【0014】
好ましくは、薬膜に水を加える使用量は、1gあたりのポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料に水を2〜40ml加え、より好ましくは1gあたりのポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料に水を5〜25ml加える。
【0015】
好ましくは、工程(2)では、回転蒸発による有機溶媒除去の条件は、回転数10〜150rpm、温度20〜80℃、時間は1〜4hである。
【0016】
(作用効果)
本発明は適当な質量比のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドから調製されたブロック共重合体をキャリア材料に用いることにより、また、適切な薬物とキャリア材料との割合を選択することにより、調製されたドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤は水分散後、封入率が90%よりも大きい時間は12時間以上に達することが可能であり、普通の凍結乾燥製剤に比べて遥かに優れた効果があり、臨床での薬品応用の実状に合致しているため、臨床の要求を満たすものである。ミセルの分子量と薬物送達量を最適化にすることにより、ドセタキセルがより良好にキャリアに内包され、安定性が向上された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、試験例の形により、本発明の上記内容についてさらに詳しく説明するが、本発明の上記主旨の範囲が以下の実施例のみに限定されると理解すべきではなく、本発明の上記内容に基づき実現された技術はいずれも本発明の範囲に属するものである。
【0019】
(実施例1)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)51.07gのD,L−ラクチドと0.57gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で7h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを入れ、触媒であるスタナスオクトエートを0.2g投入し、真空度が0.096Mpaになるまで真空引きをし、密閉して、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させ、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを加え、25mlのジクロロメタンを入れ、30min撹拌した。その後510mlの無水エーテルを入れ、30min撹拌した。その後0℃で12h静置し、吸引濾過して真空乾燥させ、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約75%であった。得られたポリマーは核磁気共鳴とゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより同定を行ったところ、
図1と
図2の通りであった。
図1はポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体における種々な水素の同定であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が合成できたことが裏付けられた。
図2の検出結果は以下の通りであった:Mp:6330、Mn:5887、Mw:6374、Mz:6873、M
z+1:7393、Mv:6301、PDI:1.08272。
【0020】
(比較例1)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)48.77gのD,L−ラクチドと51.27gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を120℃で5h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを投入した後、触媒であるスタナスオクトエートを0.048g投入し、真空度が0.095Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を120℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、窒素で保護した後、140℃まで昇温させ、14h反応させ、反応完了後、淡黄色透明の液体が得られた。
(2)上記淡黄色透明液体に29mlのジクロロメタンを加えて溶解させ、撹拌溶解した。その後586mlの無水エーテルを入れ、30min撹拌した。5℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させた。上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約85%であった。
【0021】
(比較例2)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)47.53gのD,L−ラクチドと52.17gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を130℃で7h真空乾燥させ、窒素置換し、触媒であるスタナスオクトエートを0.3g投入した後、D,L−ラクチドを投入し、真空度が0.093Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を130℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉した後、150℃まで昇温させ、6h反応させ、反応完了後、淡黄色透明の液体が得られた。
(2)工程(1)中の淡黄色透明の液体にジクロロメタンを45ml加え、撹拌溶解した。その後無水エーテルを50ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させた。上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0022】
(比較例3)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)47.11gのD,L−ラクチドと52.85gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を120℃で4h真空乾燥させた後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.4g入れ、真空度が0.093Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を120℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、130℃まで昇温させ、18h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明粘稠液体にジクロロメタンを40ml加えて溶解させ、30min撹拌した。その後無水エーテルを500ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0023】
(比較例4)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)45.91gのD,L−ラクチドと54.06gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を120℃で3h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.25g投入し、真空引きをし、反応温度を120℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い、反応器中が負圧であるように保証し、密閉して、140℃まで昇温させ、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを50ml加え、30min撹拌した。その後無水エーテルを500ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約75%であった。
【0024】
(比較例5)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)44.45gのD,L−ラクチドと55.68gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を110℃で5h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.36g投入し、真空度が0.09Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を110℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させるように制御し、14h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを60ml加え、30min撹拌した。その後無水エーテルを660ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0025】
(比較例6)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)39.51gのD,L−ラクチドと61.77gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で6h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.08g投入し、真空度が0.098Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させるように制御し、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを50ml加え、30min撹拌した。その後無水エーテルを540ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約70%であった。
【0026】
(比較例7)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)42.17gのD,L−ラクチドと57.89gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で8h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.45g投入し、真空度が0.095Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、制御130℃まで昇温させ、10h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを75ml加えて溶解させ、30min撹拌した。その後無水エーテルを720ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0027】
(比較例8)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)37.53gのD,L−ラクチドと62.71gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を110℃で6h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.1g投入し、真空度が0.085Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を110℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させるように制御し、6h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを40ml加えて、30min撹拌した。その後無水エーテルを556ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0028】
(比較例9)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)35.54gのD,L−ラクチドと64.68gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で7h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.08g投入し、真空度が0.098Mpaになるまで真空引きをし、窒素置換し、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、さらに真空引きをし、窒素で保護し、140℃まで昇温させるように制御し、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体に35mlのジクロロメタンを加えて溶解させ、30min撹拌した。その後、無水エーテルの体積と淡黄色の透明、粘稠な液体生成物の重量との比(即ちml/g)が5:1となるように無水エーテルを入れて析出を行い、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約85%であった。
【0029】
(実施例2)
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の調製。
(1)ドセタキセル20g、実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマー400g(mPEG2000:PLA=1:0.99)、水4000ml、有機溶媒のアセトニトリル400mlを取っておいた。
(2)取っておいたドセタキセルに1000mlのアセトニトリルを加え、超音波溶解を行った。その後400gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーを入れ、続いて溶解させ、無菌濾過させた。その後50℃、80r/minの回転数で2h回転蒸発させ、アセトニトリルを留去してドセタキセルポリマーゲルフィルムが得られ、迅速に50℃の水を4000g入れてボルテックス水和を行い、完全に水和された後ミセル溶液の温度を迅速に5℃まで下げ、ミセル溶液が得られた後、無菌濾過し、分割充填し、凍結乾燥させた。
【0030】
(比較例10〜38)
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の調製。
実施例2の調製方法を参照して、表1における使用量によりドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤を調製し、中でも、回転数は10〜150rpmの間に制御され、温度は20〜80℃の間にあり、時間は1〜4hであった。
【0032】
(実施例3)
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の同定。
(1)
図3は
実施例2で調製されたドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤のCDCl
3 1HNMRスペクトルであり、
図4は
実施例2で調製されたドセタキセルポリマーミセルの凍結乾燥製剤のD
2O
1HNMRスペクトルであり、
図5は実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のCDCl
3 1HNMRスペクトルである。その結果から、ドセタキセルがミセルのコアに内包されることが明らかであり、ミセルの
1HNMRスペクトルにおいて、ドセタキセルの特徴的吸収ピークが見られなかった。
(2)僅かな量の
実施例2で調製されたドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤、ドセタキセルと実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸を取り、フーリエ変換赤外スペクトル走査を行った結果、
図6、
図7と
図8に示されるように、ドセタキセルがミセルのコアに内包されることが裏付けられ、ミセルの赤外スペクトルにおいて、ドセタキセルの特徴的吸収ピークが見られなかった。
(3)僅かな量の
実施例2で調製されたドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤、ドセタキセルと実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸を取り、DSC走査を行った結果、
図9、
図10と
図11に示されるように、ドセタキセルがミセルのコアに内包されることが裏付けられ、ミセルのDSCスペクトルにおいて、ドセタキセルの特徴的吸収ピークが見られなかった。
【0033】
(実施例4)
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤再溶解後の異なる時間における封入率の検出結果。
中国特許出願第201110105540.2号に開示されている実施例1中の処方17(ポリエチレングリコールとポリ乳酸との質量比は1:1.2、薬物送達量は6%)に従いコントロール薬を調製した。本発明の
実施例2に従いドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤を調製し、実験群とし、実験群は並列実験を三つ行い、
実施例2−1、実施例2−2と実施例2−3と記された。コントロール群と実験群の製剤をそれぞれ取り、生理食塩水を入れて濃度が1mg/mlとなるまで(ドセタキセルで)溶解させ、室温(25±2℃)で放置し、異なる時間でその封入率を検出した。結果は表2に示される。
【0034】
高速遠心法(10000r/min、10min)によるミセルの封入率について、封入率=(1−遊離薬物/総薬物)×100%であった。HPLCによりドセタキセルポリマーミセルの封入率を測定する際に用いられるクロマトグラフ条件は、ODSを充填剤とし、0.043mol/L醋酸アンモニウム水溶液−アセトニトリル(45:55)を移動相とし、検出波長は230nmであった。理論段数はドセタキセルピークで計算すると、2000よりも低くないものであるべきである。
【0035】
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤再溶解後の異なる時間における封入率の検出結果
【表2】
【0036】
表2に示されるように、実験群薬物は12hの場合、その封入率がまだ90%を超えており、コントロール群薬物は0.5hの場合、バースト放出を発生した。
(付記)
(付記1)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料とドセタキセルとを含み、ドセタキセルはキャリア材料に内包され、ドセタキセルとキャリア材料との質量比は0.01〜0.15であり、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体はD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルとが開環重合して形成されたブロック共重合体であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドとの質量比は1:0.55〜0.65または1:0.73〜0.89または1:0.91〜0.99であることを特徴とする、ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤。
(付記2)
前記ドセタキセルとキャリア材料との質量比は0.02〜0.09であることを特徴とする、付記1に記載のドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤。
(付記3)
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分子量は1000〜20000であることを特徴とする、付記1に記載のドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤。
(付記4)
(1)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料共重合体のキャリア材料を合成する工程と、
(2)配合量のドセタキセルと工程(1)で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料を有機溶媒に溶解させ、混合して均一にし、回転蒸発により有機溶媒を除去し、薬物とキャリア材料のゲル状薬膜が得られた後、薬膜に水を加えて前記薬膜を溶解分散させて、ミセル溶液にする、フィルム再水和法を用いて薬物送達ミセル水溶液を調製する工程と、
(3)工程(2)で調製されたミセル溶液を濾過除菌し、冷凍結乾燥後ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤が得られる工程と、
を備えることを特徴とする、付記1に記載のドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の調製方法。
(付記5)
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料は、配合量のD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルを秤量しておき、配合量のポリエチレングリコールモノメチルエーテルを60〜130℃で反応器の中で2〜8h真空乾燥させ、窒素置換後、配合量のD,L−ラクチドを入れ、さらに触媒である、質量がD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルの全質量の0.05wt%〜0.5wt%を占めるスタナスオクトエートを投入し、次に、真空引きをし、反応温度を60〜130℃に維持し、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉しまたは窒素で保護した後、125〜150℃まで昇温させ、6〜20h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られることと、前記淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を加えて溶解させ、30〜50min撹拌した後、続いて無水エーテルを入れて20〜40min撹拌し、0〜5℃で12〜24h静置した後、吸引濾過後真空乾燥させることにより、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られることとを備える方法により調製されることを特徴とする、付記4に記載の調製方法。
(付記6)
前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコールと酢酸エチルの中のいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は、1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を0.2〜1ml加えることを特徴とする、付記5に記載の方法。
(付記7)
1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に無水エーテルを5〜10ml加えることを特徴とする、付記5に記載の方法。
(付記8)
工程(2)で述べられた有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコール、酢酸エチルから選ばれるいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は1gあたりのポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料に有機溶媒を0.5〜2ml加えることを特徴とする、付記4に記載の調製方法。
(付記9)
工程(2)では、薬膜に水を加える使用量は、1gあたりのポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のキャリア材料に水を2〜40ml加えることを特徴とする、付記4に記載の調製方法。
(付記10)
工程(2)では、回転蒸発による有機溶媒除去の条件は、回転数10〜150rpm、温度20〜80℃、時間1〜4hであることを特徴とする、付記4に記載の調製方法。