特許第6147487号(P6147487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147487
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】スプリングブレーキチャンバー
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/28 20060101AFI20170607BHJP
   B60T 13/38 20060101ALN20170607BHJP
   F16J 15/18 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
   F16D65/28
   !B60T13/38
   !F16J15/18 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-243938(P2012-243938)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-92242(P2014-92242A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】下村 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 聡哲
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087870(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0247880(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/28
B60T 13/38
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ばねの付勢力によって付勢される第1ピストンが収容された一次側チャンバーと、
圧縮空気の供給によって移動される第2ピストンが収容された二次側チャンバーと、を備え、前記第1ピストンに設けられたプッシュロッドが前記一次側チャンバーと前記二次側チャンバーとの連結部に形成された連通孔を挿通され、前記圧縮ばねによって付勢された際に、前記第2ピストンを保持するスプリングブレーキチャンバーにおいて、
前記プッシュロッドと前記連通孔の内壁との間に設けられ、前記二次側チャンバーから前記一次側チャンバーへの空気の流れを封止する第1封止部材と、
前記第1封止部材の近傍且つ前記第1封止部材よりも前記一次側チャンバー側に設けられ、前記プッシュロッドの移動をガイドし、前記第1封止部材よりも硬い材質からなる第1ガイド部材と、
前記プッシュロッドに設けられ、前記一次側チャンバー内の圧縮ばねが収納されたばね室の空気を前記二次側チャンバー内に循環させる循環機構と、を備え
前記循環機構は、前記プッシュロッドの内部空間及び先端に貫通してバルブを収容するバルブ収容部と、前記プッシュロッドの先端側部に設けられて前記バルブ収容部に貫通する貫通孔と、を有し、
前記プッシュロッドが前記一次側チャンバー内に位置しているときには、前記貫通孔は前記第1封止部材と第1ガイド部材との間に開口して位置している
ことを特徴とするスプリングブレーキチャンバー。
【請求項2】
請求項1に記載のスプリングブレーキチャンバーにおいて、
前記第1ピストンと前記一次側チャンバーの内壁との間に設けられる第2封止部材と、
前記第2封止部材の近傍に設けられ、前記第1ピストンの移動をガイドし、前記第2封止部材よりも硬い材質からなる第2ガイド部材と、を備えている
ことを特徴とするスプリングブレーキチャンバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスプリングブレーキチャンバーにおいて、
前記ガイド部材の取付部材側には、取付部材に係合させる係合凸部を備える
ことを特徴とするスプリングブレーキチャンバー。
【請求項4】
請求項2〜のいずれか一項に記載のスプリングブレーキチャンバーにおいて、
前記第2ガイド部材は前記第2封止部材よりも前記二次側チャンバー側に設けられる
ことを特徴とするスプリングブレーキチャンバー。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のスプリングブレーキチャンバーにおいて、
前記プッシュロッドと前記連通孔の内壁との間には、第3封止部材が設けられ
前記第3封止部材は、前記第1封止部材と前記第1ガイド部材との間に位置し、
前記プッシュロッドが前記一次側チャンバー内に位置しているときには、前記貫通孔は前記第1封止部材と第3封止部材との間に開口して位置している
ことを特徴とするスプリングブレーキチャンバー。
【請求項6】
請求項に記載のスプリングブレーキチャンバーにおいて、
前記第3封止部材は、Dリングであって、
Dの字の凸部は、前記プッシュロッドに当接する
ことを特徴とするスプリングブレーキチャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングブレーキチャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック、トレーラ等の大型車両の制動装置には、駆動装置としてスプリングブレーキチャンバーが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
スプリングブレーキチャンバーは、有底円筒状の一次側チャンバーと、一次側チャンバーに連結された片側有底円筒状の二次側チャンバーとを備えている。二次側チャンバーの一次側チャンバーが連結される面と反対側には、第2プッシュロッドが挿通される円筒状のロッド挿通部が設けられている。
【0003】
一次側チャンバー内には、片側有底円筒状の第1ピストンが軸方向に摺動可能に収容されている。一次側チャンバーは、第1ピストンによって二室に区画されている。第1ピストンには、一次側チャンバーと二次側チャンバーとの連結部を貫通して、第1ピストンと一体に軸方向に進退可能な第1プッシュロッドが固定されている。一次側チャンバー内には、第1ピストンを二次側チャンバー側に付勢する圧縮ばねが設置されている。二次側チャンバー内には、二次側チャンバー内を二室に区画するダイヤフラムが設置されている。ダイヤフラムの縁部全周は二次側チャンバーの内壁に固定されている。二次側チャンバー内のロッド挿通部側には、ダイヤフラムの移動に伴って一体にロッド挿通部を摺動する第2ピストンが配置されている。第2ピストンは、ダイヤフラムに取り付けられた円板部と、ロッド挿通部を摺動する棒状の第2プッシュロッドとからなる。
【0004】
第2ピストンの先端には、ブレーキドラムのブレーキシューを拡張させるウェッジが接続されている。よって、スプリングブレーキチャンバーは、一次側チャンバー又は二次側チャンバーに圧縮空気を供給してウェッジを駆動することでブレーキを作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−87870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献のスプリングブレーキチャンバーでは、一次側チャンバー内を第1ピストンが密閉状態を維持しながら摺動するので第1ピストンの外周にリング状のピストンカップが装着されている。このピストンカップは、気密性を保持するためにゴム等の弾性素材によって形成されている。また、第1プッシュロッドが貫通する連結部の貫通孔には封止部材が装着されている。この封止部材は、気密性を保持するためにゴム等の弾性素材によって形成されている。そして、圧縮ばねから第1ピストンに付与される付勢力は、圧縮ばねの巻回によって一次側チャンバーの軸方向に一致しないため、一次側チャンバーの軸方向に垂直な横方向の力が働くことがある。この場合、ピストンカップや第1プッシュロッドに横方向の力が働くことで摺動抵抗が大きくなり、ゴム製のピストンカップや封止部材の劣化を早めることとなり、円滑に摺動できなくなるおそれがある。そこで、圧縮ばねの横方向の力が働いたとしても、円滑な摺動が可能なスプリングブレーキチャンバーが求められていた。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮ばねの横方向の力が働いたとしても、第1ピストンが円滑に摺動できるスプリングブレーキチャンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決するスプリングブレーキチャンバーは、圧縮ばねの付勢力によって付勢される第1ピストンが収容された一次側チャンバーと、圧縮空気の供給によって移動される第2ピストンが収容された二次側チャンバーと、を備え、前記第1ピストンに設けられたプッシュロッドが前記一次側チャンバーと前記二次側チャンバーとの連結部に形成された連通孔を挿通され、前記圧縮ばねによって付勢された際に、前記第2ピストンを保持するスプリングブレーキチャンバーであって、前記プッシュロッドと前記連通孔の内壁との間に設けられ、前記二次側チャンバーから前記一次側チャンバーへの空気の流れを封止する第1封止部材と、前記第1封止部材の近傍且つ前記第1封止部材よりも前記一次側チャンバー側に設けられ、前記プッシュロッドの移動をガイドし、前記第1封止部材よりも硬い材質からなる第1ガイド部材と、前記プッシュロッドに設けられ、前記一次側チャンバー内の圧縮ばねが収納されたばね室の空気を前記二次側チャンバー内に循環させる循環機構と、を備え、前記循環機構は、前記プッシュロッドの内部空間及び先端に貫通してバルブを収容するバルブ収容部と、前記プッシュロッドの先端側部に設けられて前記バルブ収容部に貫通する貫通孔と、を有し、前記プッシュロッドが前記一次側チャンバー内に位置しているときには、前記貫通孔は前記第1封止部材と第1ガイド部材との間に開口して位置していることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、プッシュロッドと連通孔の内壁との間に第1封止部材と第1ガイド部材とを備えた。このため、封止機能を持つ第1封止部材と、ガイド機能を持つ第1ガイド部材とを別部材としたので、所望の性能をそれぞれの部材に持たせることができる。そして、第1ガイド部材を第1封止部材よりも硬い材質としたので、圧縮ばねの巻回によって発生する一次側チャンバーの軸方向に対する横方向の力が発生したとしても、耐久性が向上しているので劣化を抑制して、プッシュロッドが円滑に摺動することで第1ピストンを
円滑に摺動させることができる。
また、第1ガイド部材を第1封止部材よりも一次側チャンバー側に設けた。このため、第1ピストンが一次側チャンバーの内壁を摺動する際に、一次側チャンバーの内壁に塗布されたグリスを第1封止部材に拭き取られることを極力抑制できる。
【0010】
上記スプリングブレーキチャンバーについて、前記第1ピストンと前記一次側チャンバーの内壁との間に設けられる第2封止部材と、前記第2封止部材の近傍に設けられ、前記第1ピストンの移動をガイドし、前記第2封止部材よりも硬い材質からなる第2ガイド部材と、を備えていることが好ましい。
【0011】
同構成によれば、第1ピストンと一次側チャンバーの内壁との間に第2封止部材と第2ガイド部材とを備えた。このため、封止機能を持つ第2封止部材と、ガイド機能を持つ第2ガイド部材とを別部材としたので、所望の性能をそれぞれの部材に持たせることができる。そして、第2ガイド部材を第2封止部材よりも硬い材質としたので、圧縮ばねの巻回によって発生する一次側チャンバーの軸方向に対する横方向の力が発生したとしても、耐久性が向上しているので劣化を抑制して、プッシュロッドと第1ピストンとを円滑に摺動させることができる。
【0012】
上記スプリングブレーキチャンバーについて、前記ガイド部材の取付部材側には、取付部材に係合させる係合凸部を備えることが好ましい。
同構成によれば、ガイド部材の取付部材側に係合凸部を備えたので、摺動面側に係合部を設けずに済み、ガイド部材の摺動面を大きく確保することができる。例えば、連通孔の内壁に取り付けられた第1ガイド部材は、連通孔の内壁との摺動面を確保することができる。また、第1ピストンの外周に取り付けられた第2ガイド部材は、一次側チャンバーの内壁との摺動面を確保することができる。
【0014】
上記スプリングブレーキチャンバーについて、前記第2ガイド部材は前記第2封止部材よりも前記二次側チャンバー側に設けられることが好ましい。
同構成によれば、第2ガイド部材を第2封止部材よりも二次側チャンバー側に設けた。このため、プッシュロッドが連通孔の内壁を摺動する際に、連通孔の内壁に塗布されたグリスを第2封止部材に拭き取られることを極力抑制できる。
【0015】
上記スプリングブレーキチャンバーにおいて、前記プッシュロッドと前記連通孔の内壁との間には、第3封止部材が設けられ、前記第3封止部材は、前記第1封止部材と前記第1ガイド部材との間に位置し、前記プッシュロッドが前記一次側チャンバー内に位置しているときには、前記貫通孔は前記第1封止部材と第3封止部材との間に開口して位置していることが好ましい。
同構成によれば、プッシュロッドと連通孔の内壁との間に第3封止部材を設けたので、プッシュロッドと連通孔の内壁との間を確実に密閉することができる。
【0016】
上記スプリングブレーキチャンバーにおいて、前記第3封止部材は、Dリングであって、Dの字の凸部が前記プッシュロッドに当接することが好ましい。
同構成によれば、第3封止部材をDリングとして、Dの字の凸部をプッシュロッドに当接させたので、プッシュロッドと連通孔の内壁との間を確実に密閉できるとともに、当接位置が固定されるので、ねじれを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スプリングブレーキチャンバーにおいて、圧縮ばねの横方向の力が働いたとしても、第1ピストンが円滑に摺動できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】パーキングブレーキ時のスプリングブレーキチャンバーを示す断面図。
図2】フットブレーキ時のスプリングブレーキチャンバーを示す断面図。
図3】ブレーキ解除時のスプリングブレーキチャンバーを示す断面図。
図4】フットブレーキ時のスプリングブレーキチャンバーの連通孔における封止部材とガイド部材とを示す拡大断面図。
図5】ブレーキ解除時のスプリングブレーキチャンバーの連通孔における封止部材とガイド部材とを示す拡大断面図。
図6】スプリングブレーキチャンバーの第1ピストンの外周における封止部材とガイド部材とを示す拡大断面図。
図7】別例のスプリングブレーキチャンバーの連通孔における封止部材とガイド部材とを示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図6を参照して、スプリングブレーキチャンバーの一実施形態を説明する。
図1図3に示されるように、スプリングブレーキチャンバー1は、有底円筒状の一次側チャンバー2(ピギーバック)と、一次側チャンバー2に連結された片側有底円筒状の二次側チャンバー3(サービスチャンバー)とを備えている。一次側チャンバー2及び二次側チャンバー3は、それぞれ密閉されている。二次側チャンバー3の一次側チャンバー2が連結される面と反対側には、第2プッシュロッド33が挿通される円筒状のロッド挿通部7が設けられている。
【0020】
スプリングブレーキチャンバー1は、一次側チャンバー2を構成する片側有底円筒状の第1ケース4と、一次側チャンバー2を構成するとともに、二次側チャンバー3を構成する連結ケース6と、二次側チャンバー3を構成する円筒状の第2ケース5と、を備えている。連結ケース6は、断面I字形状であって、第1ケース4を閉蓋することで一次側チャンバー2を構成するとともに、第2ケース5を閉蓋することで二次側チャンバー3を構成する。第2ケース5は、二次側チャンバー3を構成する大径部5aとロッド挿通部7を構成する小径部5bとを備えている。
【0021】
連結ケース6の第1ケース4側の開口端部の外面には、シール部材としての断面O形状のOリング8を設置する凹部6aが形成されている。この凹部6aは、2つの凸条部6b,6cによって形成される保持部であって、連結ケース6の外面全周に亘って形成されている。第1ケース4の開口端部4a内に連結ケース6の一端部が当接した状態で、第1ケース4の開口端部4aがかしめられて、第1ケース4と連結ケース6とが接続されている。
【0022】
第2ケース5の連結ケース6側の端部にはリブ5cが形成され、連結ケース6の第2ケース5側の端部にはリブ6dが形成されている。第2ケース5のリブ5cと連結ケース6のリブ6dとはクランプリング9によって締付固定されている。
【0023】
一次側チャンバー2には、圧縮空気を出し入れする一次側流出入孔11が連結ケース6に形成されている。この一次側流出入孔11には、圧縮空気の流出流入を制御する図示しない一次側流出入弁が接続されている。一次側チャンバー2には、一次側流出入弁によって圧縮空気が一次側流出入孔11から供給され、一次側流出入弁によって空気が一次側流出入孔11から排出される。
【0024】
二次側チャンバー3には、圧縮空気を出し入れする二次側流出入孔12が連結ケース6に形成されている。この二次側流出入孔12には、圧縮空気の流出流入を制御する図示しない二次側流出入弁が接続されている。二次側チャンバー3には、二次側流出入弁によって圧縮空気が二次側流出入孔12から供給され、二次側流出入弁によって空気が二次側流出入孔12から排出される。
【0025】
一次側チャンバー2内には、片側有底円筒状の第1ピストン21が軸方向に摺動可能に収容されている。一次側チャンバー2は、第1ピストン21によって圧縮ばね23が収納されたばね室15と連結ケース6側の第1制御室13との二室に区画されている。第1ピストン21には、第1ピストン21と一体に軸方向に進退可能な円筒状の第1プッシュロッド22が固定されている。第1プッシュロッド22は、連結ケース6の連通孔41に挿通されている。第1プッシュロッド22は、内部が空洞であって、一次側チャンバー2内の圧縮ばね23が収納されたばね室15の空気を二次側チャンバー3内の第2制御室14に循環させる循環機構50が設けられている。一次側チャンバー2内には、第1ピストン21を二次側チャンバー3側に付勢する圧縮ばね23が設置されている。
【0026】
二次側チャンバー3内には、二次側チャンバー3内を連結ケース6側の第2制御室14と第2ピストン32が配置されているピストン室16との二室に区画するダイヤフラム31が設置されている。ダイヤフラム31の縁部全周は、第2ケース5のリブ5cと連結ケース6のリブ6dとに挟まれて二次側チャンバー3の内壁に固定されている。ダイヤフラム31は、弾性材料で形成された膜であって、二次側チャンバー3内に供給された圧縮空気によって変形を伴い二次側チャンバー3内を移動する。二次側チャンバー3内のロッド挿通部7側には、ダイヤフラム31の移動に伴って一体にロッド挿通部7を移動する第2ピストン32が配置されている。第2ピストン32は、ダイヤフラム31に取り付けられた円板部32aと、ロッド挿通部7を移動する棒状部32bとからなる。棒状部32bの端部には、円筒状の溝穴部が形成されている。溝穴部には、棒状の第2プッシュロッド33が挿入されている。第2ピストン32の先端部には、ロッド挿通部7内を摺動させる円筒状のロッドガイド34が装着されている。第2ピストン32と第2ケース5とには、円筒状のダストカバー35が取り付けられている。第2ピストン32の一方の端部が第2プッシュロッド33の側面に固定されるとともに、ダストカバー35の他方の端部が第2ケース5の内壁に固定されている。
【0027】
第2プッシュロッド33の先端の溝部には、ブレーキドラムのブレーキシューを拡張させるウェッジ10が接続されている。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、一次側チャンバー2の第1制御室13及び二次側チャンバー3の第2制御室14の少なくとも一方に圧縮空気を供給してウェッジ10を駆動することでブレーキを作動させる。
【0028】
図4及び図5に示されるように、連結ケース6の連通孔41の内壁には、一次側チャンバー2側から順に、第1プッシュロッド22の摺動をガイドする樹脂製の第1ガイド部材45と、連通孔41の壁面と第1プッシュロッド22とを密閉するゴム製のDリング46と、二次側チャンバー3の第2制御室14側から一次側チャンバー2の第1制御室13への空気の流れを封止する断面C字形状のゴム製の第1Cリング47とが装着されている。第1Cリング47は、断面C字形状の開口部が二次側チャンバー3に向かって開口する。なお、第1Cリング47が第1封止部材に相当し、Dリング46が第3封止部材に相当する。
【0029】
第1ガイド部材45は、第1Cリング47よりも一次側チャンバー2側に設けられている。このため、第1プッシュロッド22が連結ケース6の連通孔41の内壁を摺動する際に、第1プッシュロッド22の外壁に塗布されたグリスを連結ケース6の連通孔41の内壁端部で拭き取られることを極力抑制できる。さらに、第1ガイド部材45と第1Cリング47の間にはグリスを溜めるための空間があり、摺動する際に溜まったグリスを壁面に満遍なくグリスが再塗布される。
【0030】
第1ガイド部材45の断面は、第1プッシュロッド22の側面に沿って延びる直方体と、直方体の連通孔41の内壁側に凸部45aとを加えた形状である。この凸部45aが取付部材である連通孔41の内壁に係合する係合凸部として機能する。Dリング46は、断面がD形状である。Dリング46は、Dの字の凸部が第1プッシュロッド22に当接することで、一次側チャンバー2を密閉する。Dリング46は、Oリングとは異なり、ねじれを発見することができるので、組み付け時にねじれを防止できる。第1Cリング47は、断面が二次側チャンバー3側へ向かって二股に分岐した形状である。第1Cリング47は、一次側チャンバー2のばね室15から二次側チャンバー3の第2制御室14への空気を流し、二次側チャンバー3の第2制御室14から一次側チャンバー2のばね室15への空気の流れを封止する。なお、第1ガイド部材45は、第1Cリング47よりも硬い材質で形成されている。
【0031】
連結ケース6の連通孔41の内壁には、第1ガイド部材45の凸部45aを収容する第1ガイド収容凹部42が全周に亘って形成されている。また、連通孔41の内壁には、Dリング46を収容するDリング収容凹部43が全周に亘って形成されている。Dリング収容凹部43に収容されたDリング46は、Dの字の凸部46aのみ突出する。さらに、連通孔41の内壁には、第1Cリング47を収容する第1Cリング収容凹部44が全周に亘って形成されている。
【0032】
循環機構50は、第1プッシュロッド22の先端側部に設けられている。すなわち、第1プッシュロッド22の先端側部にバルブを収容するバルブ収容部51が形成されている。このバルブ収容部51は、第1プッシュロッド22の内部空間及び先端に貫通している。また、第1プッシュロッド22の先端側部には、バルブ収容部51に貫通する貫通孔52が形成されている。バルブ収容部51内には、弁となる循環ピストン53を受ける弁座51aが形成されている。バルブ収容部51内には、循環ピストン53を付勢するばね54と、循環ピストン53と、循環ピストン53をバルブ収容部51内に保持するボール55とが収容されている。循環ピストン53は、第1ピストン21を二次側チャンバー3の第2ピストン32から離間させる際には、圧縮ばね23が収容されている室と連通している第1プッシュロッド22内に存在する圧縮空気が循環ピストン53を弁座51aから離してバルブ収容部51内を通過して、貫通孔52から二次側チャンバー3の第2制御室14へ排出される。
【0033】
第1プッシュロッド22が一次側チャンバー2内に位置している、パーキングブレーキ非動作時には、循環機構50の貫通孔52はDリング46と第1Cリング47との間に開口して位置している。この状態で、第1プッシュロッド22内に圧縮空気が存在する場合には、圧縮空気がバルブ収容部51内から貫通孔52を通過して第1Cリング47の二股部分を閉じて二次側チャンバー3側に通過する。
【0034】
図6に示されるように、第1ピストン21の外周面には、二次側チャンバー3側から順に、第1ピストン21の摺動をガイドする樹脂製の第2ガイド部材26と、二次側チャンバー3側から一次側チャンバー2内の圧縮ばね23が収容されたばね室15への空気の流れを封止する断面C字形状のゴム製の第2Cリング27とが装着されている。第2Cリング27は、断面C字形状の開口部が二次側チャンバー3に向かって開口する。なお、第2Cリング27が第2封止部材に相当する。
【0035】
第2ガイド部材26は、第2Cリング27よりも二次側チャンバー3側に設けられている。このため、第1ピストン21が第1ケース4の内壁を摺動する際に、第1ケース4の内壁に塗布されたグリスを第2Cリング27により拭き取られることを極力抑制できる。さらに、第2ガイド部材26と第2Cリング27の間にはグリスを溜めるための空間があり、摺動する際に溜まったグリスを壁面に満遍なくグリスが再塗布される。
【0036】
第2ガイド部材26の断面は、第1ピストン21の側面に沿って延びる直方体と、直方体の第1ピストン21の外周側に凸部26aとを備えた形状である。この凸部26aが取付部材である第1ピストン21の外周に係合する係合凸部として機能する。第2Cリング27は、断面が二次側チャンバー3側へ向かって二股に分岐した形状である。第2Cリング27は、一次側チャンバー2内の圧縮ばね23が収容されたばね室15から一次側チャンバー2内の第1制御室13への空気を流し、一次側チャンバー2内の第1制御室13から圧縮ばね23が収容されたばね室15への空気の流れを封止する。なお、第2ガイド部材26は、第2Cリング27よりも硬い材質で形成されている。
【0037】
第1ピストン21の外周には、第2ガイド部材26の凸部26aを収容する第2ガイド収容凹部24が全周に亘って形成されている。また、第1ピストン21の外周には、第2Cリング27を収容する第2Cリング収容凹部25が全周に亘って形成されている。第2ガイド部材26と第2Cリング27とは第1ピストン21と共に摺動する。
【0038】
次に、前述のように構成されたスプリングブレーキチャンバーの動作について説明する。
図1に示されるように、パーキングブレーキの作動操作が行われた際には、スプリングブレーキチャンバー1は、一次側の圧縮空気が流出するように弁を開くことで、一次側チャンバー2内の第1制御室13に供給された圧縮空気を排出する。また、パーキングブレーキの作動操作が行われた際には、スプリングブレーキチャンバー1は、二次側に空気が流入するように二次側流出入弁を開くことで、二次側チャンバー3内の第2制御室14に空気を供給させる。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、圧縮ばね23の付勢力によって第1ピストン21を二次側チャンバー3側に移動させて、パーキングブレーキ作動位置に固定する。そして、スプリングブレーキチャンバー1は、第1ピストン21に固定された第1プッシュロッド22が二次側チャンバー3内のダイヤフラム31をロッド挿通部7側へ押圧した状態となるので、第2ピストン32がロッド挿通部7側に移動した状態で維持される。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、第2ピストン32を介してウェッジ10をブレーキロック位置にて固定することで、パーキングブレーキの作動状態を維持する。
【0039】
図2に示されるように、パーキングブレーキの作動操作が解除された際には、スプリングブレーキチャンバー1は、第1制御室13に圧縮空気が流入するように一次側流出入弁を開くことで、一次側チャンバー2内の第1制御室13に圧縮空気を供給する。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、供給された圧縮空気によって第1ピストン21を一次側チャンバー2側へ移動させて、パーキングブレーキ非作動位置に移動させる。よって、ダイヤフラム31及び第2ピストン32の固定が解除される。
【0040】
フットブレーキが操作された際には、スプリングブレーキチャンバー1は、二次側チャンバー3の第2制御室14に圧縮空気を供給するように二次側流入弁を開く。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、供給された圧縮空気によってダイヤフラム31をロッド挿通部7側へ移動させる。そして、スプリングブレーキチャンバー1は、ダイヤフラム31がロッド挿通部7側に移動した状態となるので、第2ピストン32がロッド挿通部7側に移動する。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、第2ピストン32を介してウェッジ10をブレーキ作動位置に移動させる。スプリングブレーキチャンバー1は、二次側チャンバー3内への圧縮空気の供給量に応じてブレーキ作動量を変更する。
【0041】
図3に示されるように、フットブレーキの作動操作が解除された際には、スプリングブレーキチャンバー1は、二次側チャンバー3の圧縮空気が流出するように二次側流出入弁を開くことで、二次側チャンバー3内の第2制御室14から圧縮空気を排出する。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、圧縮空気が排出されたことでダイヤフラム31を一次側チャンバー2側へ移動させる。そして、スプリングブレーキチャンバー1は、ダイヤフラム31が一次側チャンバー2に移動した状態となるので、第2ピストン32が一次側チャンバー2側に移動する。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、第2ピストン32を介してウェッジ10をブレーキ作動位置から離間することでブレーキの作動を解除する。
【0042】
さて、本実施形態のスプリングブレーキチャンバー1では、第1プッシュロッド22と連通孔41との間に第1ガイド部材45と、封止部材としての第1Cリング47及びDリング46とを設けた。また、第1ピストン21と第1ケース4との間に第2ガイド部材26と、封止部材としての第2Cリング27とを設けた。ここで、従来のスプリングブレーキチャンバーでは、ガイド部材と封止部材とが一体となった部材を採用していたため、ガイド部材としての性能と、封止部材としての性能とを同時に満たすことが難しかった。そこで、本実施形態では、ガイド部材と封止部材とを別部材としたので、所望の性能をそれぞれの部材に持たせることができる。また、劣化した部材のみを交換することで性能の維持と補修費用を低減することができる。
【0043】
さらに、本実施形態のスプリングブレーキチャンバー1は、第1ガイド部材45を第1Cリング47よりも硬い材質とするとともに、第2ガイド部材26を第2Cリング27よりも硬い材質とした。このため、圧縮ばね23の巻回によって発生する一次側チャンバー2の軸方向に対する横方向の力が発生したとしても、耐久性が向上しているので劣化を抑制して、第1プッシュロッド22と第1ピストン21とを円滑に摺動させることができる。
【0044】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)第1プッシュロッド22と連通孔41の内壁との間に第1Cリング47と第1ガイド部材45とを備えた。このため、封止機能を持つ第1Cリング47と、ガイド機能を持つ第1ガイド部材45とを別部材としたので、所望の性能をそれぞれの部材に持たせることができる。そして、第1ガイド部材45を第1Cリング47よりも硬い材質とした。このため、圧縮ばね23の巻回によって発生する一次側チャンバー2の軸方向に対する横方向の力が発生したとしても、耐久性が向上しているので劣化を抑制して、第1プッシュロッド22が円滑に摺動することで第1ピストン21を円滑に摺動させることができる。
【0045】
(2)第1ピストン21と連通孔41の内壁との間に第2Cリング27と第2ガイド部材26とを備えた。このため、封止機能を持つ第2Cリング27と、ガイド機能を持つ第2ガイド部材26とを別部材としたので、所望の性能をそれぞれの部材に持たせることができる。そして、第2ガイド部材26を第2Cリング27よりも硬い材質とした。このため、圧縮ばね23の巻回によって発生する一次側チャンバー2の軸方向に対する横方向の力が発生したとしても、耐久性が向上しているので劣化を抑制して、第1ピストン21とを円滑に摺動させることができる。
【0046】
(3)第1ガイド部材45の取付部材側である連通孔41の内壁側に凸部45aを備えたので、摺動面側に係合部を設けずに済み、第1ガイド部材45の摺動面を大きく確保することができる。第2ガイド部材26の取付部材側である第1ピストン21の外周面側に凸部26aを備えたので、摺動面側に係合部を設けずに済み、第2ガイド部材26の摺動面を大きく確保することができる。
【0047】
(4)第1ガイド部材45を第1Cリング47よりも一次側チャンバー2側に設け、第2ガイド部材26を第2Cリング27よりも二次側チャンバー3側に設けた。このため、第1ピストン21が一次側チャンバー2の内壁を摺動する際に、一次側チャンバー2の内壁に塗布されたグリスを第1Cリング47に拭き取られることを極力抑制できる。また、第1プッシュロッド22が連通孔41の内壁を摺動する際に、連通孔41の内壁に塗布されたグリスを第2Cリング27に拭き取られることを極力抑制できる。
【0048】
(5)第1プッシュロッド22と連通孔41の内壁との間にDリング46を設けたので、第1プッシュロッド22と連通孔41の内壁との間を確実に密閉することができる。
(6)Dリング46のDの字の凸部46aを第1プッシュロッド22に当接させたので、第1プッシュロッド22と連通孔41の内壁との間を確実に密閉できるとともに、当接位置が固定されるので、ねじれを防止することができる。
【0049】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、第1ピストン21と連通孔41の内壁との間に、第1ガイド部材45と、Dリング46と、第1Cリング47とを備えたが、Dリング46と第1Cリング47とを一体の部材としてもよい。すなわち、図7に示されるように、第1ピストン21と連通孔41の内壁との間に、第1ガイド部材45と、封止部材49とを備える。封止部材49は、Dリング46と第1Cリング47として機能する。よって、所望の性能を第1ガイド部材45と封止部材49とのそれぞれに持たせることができながら部品点数を減らすことができる。
【0050】
・上記実施形態では、第1ピストン21と連通孔41の内壁との間に、第3封止部材としてDリング46を備えたが、第3封止部材としてOリング等の他の形状の封止部材を用いてもよい。
【0051】
・上記構成において、第3封止部材としてのDリング46を省略した構成を採用してもよい。
・上記実施形態では、第2ガイド部材26を第2Cリング27よりも二次側チャンバー3側に設けた。しかしながら、第1ピストン21の摺動への影響が少なければ、第2Cリング27を第2ガイド部材26よりも二次側チャンバー3側に設けてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、第1ガイド部材45及び第2ガイド部材26の取付部材側に係合凸部を形成したが、第1ガイド部材45及び第2ガイド部材26の摺動面積が確保できれば、取付部材に係合させる部分を他の部位に形成してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、第1ピストン21と連通孔41の内壁との間に第2Cリング27と第2ガイド部材26とを備えたが、第1ピストン21がを円滑に摺動するならば、第1ピストン21と連通孔41の内壁との間の封止部材とガイド部材とを簡略化してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…スプリングブレーキチャンバー、2…一次側チャンバー、3…二次側チャンバー、4…第1ケース、4a…開口端部、5…第2ケース、5a…大径部、5b…小径部、5c…リブ、6…連結ケース、6a…凹部、6b,6c…凸条部、6d…リブ、7…ロッド挿通部、8…Oリング、9…クランプリング、10…ウェッジ、11…一次側流出入孔、12…二次側流出入孔、13…第1制御室、14…第2制御室、15…ばね室、16…ピストン室、21…第1ピストン、22…第1プッシュロッド、23…圧縮ばね、24…第2ガイド収容凹部、25…第2Cリング収容凹部、26…第2ガイド部材、26a…凸部、27…第2Cリング、31…ダイヤフラム、32…第2ピストン、32a…円板部、33…第2プッシュロッド、34…ロッドガイド、35…ダストカバー、41…連通孔、42…第1ガイド収容凹部、43…Dリング収容凹部、44…第1Cリング収容凹部、45…第1ガイド部材、45a…凸部、46…Dリング、46a…凸部、47…第1Cリング、49…封止部材、50…循環機構、51…バルブ収容部、51a…弁座、52…貫通孔、53…循環ピストン、54…ばね、55…ボール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7