特許第6147488号(P6147488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147488
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】有機発光材料
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20170607BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170607BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C07F15/00 ECSP
   H05B33/14 B
   C09K11/06 690
   C09K11/06 660
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2012-253943(P2012-253943)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2013-107886(P2013-107886A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2015年5月20日
(31)【優先権主張番号】13/301,179
(32)【優先日】2011年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ビン・マー
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ディアンジェリス
(72)【発明者】
【氏名】チュアンジュン・シャ
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0085476(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0104472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
[式中、Mは、Irであり;
ここで、Lは第2の配位子であり;
ここで、dはLの配位座数であり;
ここで、mは金属Mの最大配位数であり;
ここで、nは少なくとも1であり;
ここで、R、RおよびRはそれぞれ、水素、重水素、及びアルキルからなる群から独立して選択され;
ここで、R、RおよびRの少なくとも2つは、アルキルであり
ここで、R、RおよびR中の炭素原子の数の和は、少なくとも4であり;
ここで、、RまたはRで表されるアルキルの、環Aに直接結合した全ての炭素原子は、第一級、第二級または第三級炭素原子であり;
ここで、およびRはアルキルである
を有する化合物。
【請求項2】
式:
【化2】
を有する請求項に記載の化合物。
【請求項3】
nが2である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Lがモノ陰イオン性二座配位子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Lが
【化3】
[式中、R、RおよびRはそれぞれ、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシルカルボン酸ニトリル、イソニトリル、スルファニル、及びホスフィノからなる群から独立して選択される]
である請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
、RおよびRが、アルキル、水素、重水素、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される請求項に記載の化合物。
【請求項7】
が水素または重水素であり、RおよびRが、メチル、CH(CH、およびCHCH(CHからなる群から独立して選択される請求項に記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化4】
を有する請求項に記載の化合物。
【請求項9】
およびRがアルキルである請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
およびRがアルキルである請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
およびRがアルキルである請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
、RおよびRが、CH(CH、CHCH(CH、CHC(CH及び、エチルからなる群から独立して選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
以下のものからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項14】
第1の有機発光素子を含む第一の素子であって、
アノード、
カソード、および
アノードとカソードとの間に配置された、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物を含む有機層をさらに含む素子
【請求項15】
消費者製品である請求項14に記載の第一の素子。
【請求項16】
有機発光素子である請求項14に記載の第一の素子。
【請求項17】
照明パネルを含む請求項14に記載の第一の素子。
【請求項18】
有機層が発光層であり、前記化合物が発光ドーパントである、請求項14に記載の第一の素子。
【請求項19】
前記有機層がホストをさらに含む請求項14に記載の第一の素子。
【請求項20】
前記ホストが金属8−ヒドロキシキノレートである請求項19に記載の第一の素子。
【請求項21】
ホストが
【化13】
である請求項19に記載の第一の素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求する発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つまたは複数の以下の団体:ミシガン大学評議会、プリンストン大学、南カリフォルニア大学、およびユニバーサルディスプレイコーポレーションにより、その団体のために、および/またはその団体と関係して行われた。本契約は、請求する発明がなされた日以前に発効しており、請求する発明は、本契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0002】
本発明は、ヘテロ環式配位子に少なくとも2個の置換基があるヘテロ環式配位子を含む金属錯体に関する。この金属錯体はOLED(Organic light−emitting Diode)に使用するのに適する。
【背景技術】
【0003】
有機材料を用いるオプトエレクトロニクス素子は、いくつかの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのような素子を製造するために用いられる多くの材料は比較的安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクス素子は、無機素子に対してコスト優位性について潜在力を有している。加えて、可撓性などの有機材料固有の特性は、それらをフレキシブル基板での作製などの特定用途に非常に適したものにし得る。有機オプトエレクトロニクス素子の例には、有機発光素子(OLED)、有機フォトトランジスター、有機光電池、および有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機材料は、従来の材料に対して性能上優位性を有し得る。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調製することができる。
【0004】
OLEDは、素子に電圧を印加した場合に光を発する薄い有機フィルムを用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、およびバックライトなどの用途に用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLED材料および構成が、米国特許第5,844,363号、同6,303,238号および同5,707,745号に記載されており、これらはその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0005】
燐光発光分子の1つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発するように適合した画素を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑および青の画素を必要としている。色は、当分野で周知であるCIE座標を用いて測定できる。
【0006】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)で示されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の構造を有する。
【化1】
【0007】
この式および本明細書の後の図において、窒素から金属(ここではIr)への供与結合が直線で表される。
【0008】
本明細書において使用される場合、「有機」という用語は、有機オプトエレクトロニクス素子を作製するために用いることができるポリマー材料ならびに小分子有機材料を包含する。「小分子」とはポリマーではない任意の有機材料を指し、「小分子」は実際には非常に大きくてもよい。小分子は、いくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の種類から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖のペンダント基として、または主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア部分に構築された一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア部分として働くこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性または燐光性小分子発光体であってもよい。デンドリマーは「小分子」であってもよく、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0009】
本明細書において使用される場合、「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第1の層が第2の層の「上に配置される」と記載した場合は、第1の層は基材からより遠くに配置される。第1の層が第2の層と「接触している」と指定されない限り、第1の層と第2の層との間に他の層があってよい。例えば、間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載することができる。
【0010】
本明細書において使用される場合、「溶液加工可能」とは、溶液または懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、もしくは液体媒体中で輸送され、および/または液体媒体から堆積され得ることを意味する。
【0011】
配位子が発光材料の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光材料の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変え得る。
【0012】
本明細書において使用される場合、また当業者によって一般に理解されているように、第1の「最高被占分子軌道」(HOMO)または「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第1のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第2のHOMOまたはLUMOよりも「大きい」または「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値をもつIP(より小さい負のIP)に対応する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値をもつ電子親和力(EA)(より小さい負のEA)に対応する。最上部に真空準位を有する従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位よりも、そのような図の最上部により近く現れる。
【0013】
本明細書において使用される場合、また当業者によって一般に理解されるように、第1の仕事関数は、その第1の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第2の仕事関数よりも「大きい」または「高い」。仕事関数は、通常、真空準位に対して負の数として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数がより負であることを意味する。最上部に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へより離れて図示される。したがって、HOMOおよびLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0014】
OLEDについてのさらなる詳細および上述の定義は、米国特許第7,279,704号に見ることができ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Baldo et al.,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151−154, 1998
【非特許文献2】Baldo et al.,“Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4−6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様において、式:
【化2】
式I
の化合物が提供される。Mは、原子量が40を超える金属であり、Lは第2の配位子であり、mは金属Mの最大配位数であり、dはLの配位座数(denticity)であり、nは少なくとも1である。
【0018】
、RおよびRはそれぞれ、水素、重水素、アルキル、シリル、ゲルミル、シクロアルキル、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。R、RおよびRの少なくとも2つは、水素または重水素ではない。R、RおよびR中の炭素原子の数の和は、少なくとも4であり、環Aに直接結合しているR、RまたはR中の任意の炭素原子は、第一級、第二級または第三級炭素原子である。Rは、モノ、ジ、トリ、またはテトラ置換を表し、Rは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
一態様では、本化合物には、式:
【化3】
[式中、RおよびRはアルキルである]がある。
【0020】
一態様では、化合物には、式:
【化4】
がある。一態様では、MはIrである。
【0021】
一態様では、nは2である。一態様では、Lはモノ陰イオン性二座配位子である。別の態様では、Lは
【化5】
であり、R、RおよびRはそれぞれ、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。
【0022】
一態様では、R、RおよびRは、アルキル、水素、重水素、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。一態様では、Rは、水素または重水素であり、RおよびRは、メチル、CH(CH、およびCHCH(CHからなる群から独立して選択される。一態様では、化合物には、式:
【化6】
がある。
【0023】
一態様では、RおよびRはアルキルである。一態様では、RおよびRはアルキルである。一態様では、RおよびRはアルキルである。一態様では、RおよびRはシリルまたはゲルミルである。一態様では、R、RおよびRは、CH(CH、CHCH(CH、CHC(CH、シクロペンチル、シクロヘキシル、エチル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメチルゲルミル、トリエチルゲルミル、およびトリイソプロピルゲルミルからなる群から独立して選択される。
【0024】
一態様では、本化合物は、化合物1〜化合物60からなる群から選択される。
【0025】
一態様では、第1の素子が提供される。第1の素子は第1の有機発光素子を含み、アノード、カソード、アノードとカソードとの間に配置された、式:
【化7】
の化合物を含む有機層をさらに含む。Mは、原子量が40を超える金属であり、Lは第2の配位子であり、mは、金属Mの最大配位数であり、dはLの配位座数であり、nは少なくとも1である。
【0026】
、RおよびRはそれぞれ、水素、重水素、アルキル、シリル、ゲルミル、シクロアルキル、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。R、RおよびRの少なくとも2つは、水素または重水素ではない。R、RおよびR中の炭素原子の数の和は、少なくとも4であり、環Aに直接結合したR、RまたはR中の任意の炭素原子は、第一級、第二級または第三級炭素原子である。Rは、モノ、ジ、トリ、またはテトラ置換を表し、Rは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
一態様において、第1の素子は消費者製品である。別の態様において、第1の素子は有機発光素子である。
【0028】
一態様では、第1の素子は照明パネルを含む。一態様では、有機層は発光層であり、化合物は非発光ドーパントである。一態様では、有機層はホストをさらに含む。
【0029】
一態様では、ホストは金属8−ヒドロキシキノレートである。一態様では、ホストは、
【化8】
である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】有機発光素子を示す図である。
図2】別個の電子輸送層を有しない倒置型有機発光素子を示す図である。
図3】式Iの化合物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流されると、有機層(複数可)に、アノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ、反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在化すると、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構経由で緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子は、エキシマーまたはエキシプレックス上に局在化され得る。非放射機構、例えば、熱緩和も起こり得るが、一般には好ましくないと考えられる。
【0032】
初期のOLEDは、例えば、その全体が参照によって組み込まれる米国特許第4,769,292号に記載されているように、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いていた。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒未満の時間フレームで起こる。
【0033】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光材料を有するOLEDが実証された。Baldo et al.,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151−154, 1998 (“Baldo−I”); および、Baldo et al.,“Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4−6 (1999) (“Baldo−II”)、これらは参照によってその全体が組み込まれる。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書第5〜6欄により詳細に記載されており、これらは参照によって組み込まれる。
【0034】
図1は有機発光素子100を示す。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。素子100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子遮断層130、発光層135、正孔遮断層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含むことができる。カソード160は、第1の導電層162および第2の導電層164を有する複合カソードである。素子100は、記載された層を順次堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性および機能ならびに例示の材料は、米国特許第7,279,704号明細書第6〜10欄により詳細に記載されており、これらは参照によって組み込まれる。
【0035】
これらの層のそれぞれについてより多くの例が得られている。例えば、可撓性でかつ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号に開示されており、これはその全体が参照によって組み込まれる。p型ドープ正孔輸送層の例は、その全体が参照によって組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号に記載されているように、50:1のモル比で、F4−TCNQでドープしたm−MTDATAである。発光材料およびホスト材料の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号に開示されており、これはその全体が参照によって組み込まれる。n型ドープ電子輸送層の例は、その全体が参照によって組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号に記載されているように、1:1のモル比でLiでドープしたBPhenである。米国特許第5,703,436号および同5,707,745号(これらはその全体が参照によって組み込まれる)は、上に重ねた透明な電気伝電性のスパッタリング堆積したITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。遮断層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号および米国特許出願公開第2003/0230980号に、より詳細に記載されており、これらはその全体が参照により組み込まれる。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号に提供されており、これはその全体が参照によって組み込まれる。保護層の記載は、米国特許出願公開第2004/0174116号に見ることができ、その全体が参照によって組み込まれる。
【0036】
図2は倒置型OLED200を示す。この素子は、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。素子200は、記載された層を順に堆積させることによって作製できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、素子200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、素子200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。素子100に関して記載したものと同様の材料を、素子200の対応する層に使用することができる。図2は、素子100の構造からいくつかの層をどのように省けるかの1つの例を提供している。
【0037】
図1および2に例示されている単純な層構造は非限定的な例として提供され、本発明の実施形態は種々様々な他の構造と関連して使用できることが理解される。記載された具体的な材料および構造は事実上例示であり、その他の材料および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、機能的なOLEDは、異なるやり方で記載された様々な層を組み合わせることによって達成でき、または、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的には記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の材料が使用されてもよい。本明細書に提供される例の多くは単一の材料を含むものとして様々な層を記載しているが、材料の組み合わせ、例えば、ホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物を用いてもよいことが理解される。また、層は、様々な副層(sublayer)を有していてもよい。本明細書において様々な層に与えられた名称は、厳密に限定することを意図するものではない。例えば、素子200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、かつ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、または正孔注入層として記載されてもよい。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして記載できる。この有機層は、単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように、異なる有機材料の複数の層をさらに含むことができる。
【0038】
Friendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体が参照によって組み込まれる)に開示されているようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)などの、具体的に記載されていない構造および材料も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用することができる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体が参照によって組み込まれる)に記載されているように積み重ねてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている単純な層構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取り出し(out−coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体が参照によって組み込まれる)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体が参照によって組み込まれる)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射面を含んでいてもよい。
【0039】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積することができる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および同6,087,196号(これらはその全体が参照によって組み込まれる)に記載されている)、有機気相成長(OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(これはその全体が参照によって組み込まれる)に記載されている)、ならびに有機気相ジェット印刷(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体が参照によって組み込まれる)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液系プロセスが含まれる。溶液系プロセスは、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および同6,468,819号(これらはその全体が参照によって組み込まれる)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される材料は、それらを特定の堆積方法に適合させるために修正されてもよい。例えば、分枝したまた分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基を、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個以上の炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有し得るが、これは、非対称材料がより小さい再結晶化傾向を有し得るからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0040】
本発明の実施形態により作製された素子は、種々様々な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピューターモニター、医療のモニター、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話機、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピューター、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面、劇場または競技場スクリーン、または標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含む様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって作製された素子を制御できる。素子の多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0041】
本明細書に記載される材料および構造は、OLED以外の素子における用途を有し得る。例えば、有機太陽電池および有機光検出器などの他のオプトエレクトロニクス素子は、これらの材料および構造を用いることができる。より一般的には、有機トランジスターなどの有機素子は、これらの物質および構造を用いることができる。
【0042】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル(arylkyl)、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、およびヘテロアリールという用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書第31〜32欄で定義されており、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0043】
一実施形態では、式:
【化9】
の化合物が提供される。Mは、原子量が40を超える金属であり、Lは第2の配位子であり、mは、金属Mの最大配位数であり、dはLの配座数であり、nは少なくとも1である。「配位座数」によって、dは、第2の配位子Lが金属Mと作る結合の数を数的に表すことを意味する。したがって、Lが単座配位子である場合、dは1となり、Lが二座配位子である場合、dは2などとなる。
【0044】
、RおよびRそれぞれは、水素、重水素、アルキル、シリル、ゲルミル、シクロアルキル、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。R、RおよびRの少なくとも2つは、水素または重水素ではない。R、RおよびR中の炭素原子の数の和は、少なくとも4であり、環Aに直接結合したR、RまたはR中の任意の炭素原子は、第一級、第二級または第三級炭素原子である。Rは、モノ、ジ、トリ、またはテトラ置換を表し、Rは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
予想外にも、2つまたは複数のRからR位のアルキル置換が、望ましい特性を持つ式Iの化合物を結果として生じることを発見した。この特性によって、式Iの化合物を組み込んだOLED素子は、効率を高くし寿命が長いというように特性を改善することができる。2つ以上のRからR位のアルキル置換はまた、化合物が、RからRで残らず水素置換した化合物より分子量が高いにもかかわらず、昇華温度が低い化合物を結果として生じる。理論によって束縛されるものではないが、この昇華温度の低下は、固体状態で減少したまたはそれほど効率のよくない分子積層の結果であり、結晶格子を妨害するのに必要とするエネルギーを減少させ、結果として昇華温度が低下し得ると考えられる。昇華温度が低いことにより、有利にも、式Iの化合物の精製がより容易になりおよび製造時に熱的安定性が良好になる。
【0046】
加えて、、RまたはRで表されるアルキルの、環Aに直接結合した全ての炭素原子が、第一級、第二級または第三級炭素原子である場合、化合物は、第四級炭素原子が環Aに直接結合している場合よりOLED素子中で安定であることが意外にも発見された。理論によって束縛されるものではないが、配位子の芳香族部分に直接結合したt−ブチル基などの第四級炭素中心を有するアルキル基は、t−ブチルカルボカチオンの安定性が比較的高く、基が式Iの化合物または同様の化合物に結合している場合、通常のOLEDの動作中に形成すると考えられるため、脱アルキル化しやすい。この容易に脱アルキル化することは、OLEDの動作に不利益に影響し、素子寿命が低下すると考えられる。
【0047】
一実施形態では、化合物には、式:
【化10】
[式中、RおよびRはアルキルである]がある。
【0048】
1つの実施形態では、化合物には、式:
【化11】
がある。一実施形態では、MはIrである。
【0049】
一実施形態では、Lはモノ陰イオン性二座配位子である。別の実施形態では、Lは
【化12】
であり、R、RおよびRはそれぞれ、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル基、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。
【0050】
一実施形態では、R、RおよびRは、アルキル、水素、重水素、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。一実施形態では、Rは水素または重水素であり、RおよびRは、メチル、CH(CH、およびCHCH(CHからなる群から独立して選択される。一実施形態では、化合物には、式:
【化13】
がある。
【0051】
一実施形態では、RおよびRはアルキルである。一態様では、RおよびRはアルキルである。一実施形態では、RおよびRはアルキルである。一実施形態では、RおよびRはシリルまたはゲルミルである。一実施形態では、R、RおよびRは、CH(CH、CHCH(CH、CHC(CH、シクロペンチル、シクロヘキシル、エチル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメチルゲルミル、トリエチルゲルミル、およびトリイソプロピルゲルミルからなる群から独立して選択される。
【0052】
一実施形態において、本化合物は、以下からなる群から選択される。
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
【化17】
【0057】
【化18】
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
【化21】
【0061】
【化22】
【0062】
【化23】
【0063】
【化24】
【0064】
一実施形態では、第1の素子が提供される。第1の素子は、第1の有機発光素子を含み、これは、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された、I:
【化25】
の化合物を含む有機層をさらに含む。Mは、原子量が40を超える金属であり、Lは第2の配位子であり、mは、金属Mの最大配位数であり、nは少なくとも1である。
【0065】
、RおよびRはそれぞれ、水素、重水素、アルキル、シリル、ゲルミル、シクロアルキル、およびその組み合わせからなる群から独立して選択される。R、RおよびRの少なくとも2つは、水素または重水素ではない。R、RおよびR中の炭素原子の数の和は、少なくとも4であり、環Aに直接結合したR、RまたはR中の任意の炭素原子は、第一級、第二級または第三級炭素原子である。Rは、モノ、ジ、トリ、またはテトラ置換を表し、Rは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
一実施形態において、第1の素子は消費者製品である。別の実施形態において、第1の素子は有機発光素子である。
【0067】
一実施形態において、第1の素子は照明パネルを含む。一実施形態では、有機層は発光層であり、化合物は非発光ドーパントである。一実施形態では、有機層はホストをさらに含む。
【0068】
一実施形態では、ホストは、金属8−ヒドロキシキノレートである。一実施形態では、ホストは、
【化26】
である。
【0069】
素子の実施例
【0070】
例示の素子はすべて、高真空(<10−7トール)熱蒸着(VTE)によって作製した。アノード電極は、インジウム錫オキシド(ITO)の1200Åである。カソードは、10ÅのLiF、続いて1000ÅのAlで構成される。素子はすべて、製作直後に窒素グローブボックス(<1ppmのHOおよびO)中でエポキシ樹脂で密封したガラス蓋でカプセル化し、また、水分ゲッターをパッケージ内に組み込んだ。
【0071】
素子の実施例の有機スタックは、連続して、ITO面から、正孔注入層(HIL)である100Åの化合物A、正孔輸送層(HTL)である400Åの4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、発光層(EML)である4,6または8重量%のIr含有燐光性化合物を含むホストであるBAlqでドープされた300Åの式Iの化合物、電子輸送層(ETL)である450または550ÅのAlq(トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなっていた。化合物B、C、D、およびEを含む比較例を、化合物B、C、DおよびEをEMLにおいて発光体として使用した点以外、素子の実施例と同様に作製した。
【0072】
素子の結果およびデータは、これらの素子から表1および2に要約する。本明細書に使用される場合、化合物A、B、C、DおよびEには以下の構造がある。
【化27】
【化28】
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表2は素子データの要約である。発光効率(LE)、外部量子効率(EQE)および出力効率(PE)は、1000ニットで測定されるが、寿命(LT80%)は、素子が40mA/cmの定電流密度下でその初期輝度の80%まで衰えるのに必要な時間として定義された。
【0076】
表2から、式Iの化合物のEQE、LEおよびPEはみな、同じ素子構成の下で、比較化合物より大きく、優れていることがわかる。この比較は、同じ素子の構成の以下の化合物対に基づいており、各事例で例示の化合物(式Iの化合物)は比較化合物より優れている:実施例1対比較例1、実施例2対比較例2、5、6および7、実施例3対比較例3、実施例4対比較例4、実施例5対比較例1、実施例6対比較例2、5、6および7、実施例7対比較例3、および実施例8対比較例4。例えば、ドーピング濃度が4%、6%、8%である正孔遮断層がない比較化合物Bは、いずれのドーピング濃度でも化合物1および化合物2より、EQE、LEおよびPEが低かった。比較化合物BのEQE値は17.4から18.2%の範囲にあり、すべて、同じ素子構造を使用して、EQEが20から22.3%の範囲にある化合物1および化合物2より低い。したがって、ジアルキル置換化合物1および化合物2は、比較化合物Bより効率的である。同様の傾向が、比較化合物Bと比較した場合、正孔遮断層を含む素子の式Iの化合物についても認められた。加えて、この傾向は、化合物1または化合物2のEQEおよびLEを、キノリンにたった一つのアルキル基がある比較化合物C、DおよびEとの比較した場合にも認められ、ジ置換アルキル化が、単一置換の比較化合物C、DおよびEより、意外にも効率的であることを示す。この結果は、多置換アルキル基が、EQEおよびLEなどの素子の性能を改善することができることを示す。
【0077】
【表3】
【0078】
式Iの化合物中のヘテロ芳香環上のジアルキル化は、表3に示されるように錯体の昇華温度を低下させることができることがわかる。意外にも、式Iのジアルキル置換化合物は、非置換化合物より昇華温度が低いことが発見された。例えば、化合物1は、比較化合物Bより分子量が高いが、比較化合物Bより昇華温度がかなり低かった(158℃対193℃)。
【0079】
他の材料との組み合わせ
【0080】
有機発光素子中の特定の層に有用なものとして本明細書に記載される材料は、素子中に存在する種々様々なその他の材料と組み合わせて使用されてもよい。例えば、本明細書に開示される発光ドーパントは、種々様々なホスト、輸送層、遮断層、注入層、電極および存在し得るその他の層と組み合わせて使用されてもよい。以下に記載される、または言及される材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて有用であり得る材料の非限定的な例であり、当業者は、組み合わせて有用であり得る他の材料を特定するために容易に文献を調べることができる。
【0081】
HIL/HTL:
本発明において使用される正孔注入/輸送材料は、特に限定されず、化合物が正孔注入/輸送材料として通常使用される限り、任意の化合物を使用することができる。材料の例は、フタロシアニンまたはポルフィリン*porphryin誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フロオロハイドロカーボン含有ポリマー;伝導性ドーパントを含むポリマー;PEDOT/PSSなどの導電ポリマー;ホスホン酸およびシラン*sliane誘導体などの化合物に由来する自己組織化モノマー;MoOなどの金属酸化物誘導体;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルなどのp型半導体有機化合物;金属錯体、および架橋性化合物を含むが、これらに限定されない。
【0082】
HILまたはHTL中に使用される芳香族アミン誘導体の例は、以下の一般構造を含むが、これらに限定されない。
【化29】
【0083】
ArからArのそれぞれは、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレンなどの芳香族炭化水素環式化合物からなる群;ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジンおよびセレノフェノジピリジンなどの芳香族複素環式化合物からなる群;および芳香族炭化水素環式基および芳香族複素環基から選択される同一型または異なる型の基であり、直接に、または、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、シリコン原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位および脂肪族環式基の少なくとも1つを経由して互いに結合されている、2から10の環式構造単位からなる群から選択される。ここで、各Arは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から選択される置換基によってさらに置換されている。
【0084】
一態様において、ArからArは、
【化30】
からなる群から独立して選択される
【0085】
kは、1から20までの整数であり;XからXは、C(CHを含む)またはNであり;
Arは、上記の定義と同一の基である。
【0086】
HILまたはHTLにおいて使用される金属錯体の例は、下記一般式を含むが、これらに限定されない。
【化31】
【0087】
Mは、40を超える原子量を有する金属であり;(Y−Y)は二座配位子、YおよびYは、C、N、O、PおよびSから独立して選択され;Lは補助配位子であり;mは、金属に結合し得る配位子の1から最大数までの整数値であり;また、m+nは、金属に結合し得る配位子の最大数である。
【0088】
一態様において、(Y−Y)は、2−フェニルピリジン誘導体である。
【0089】
別の態様において、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0090】
別の態様において、Mは、Ir、Pt、OsおよびZnから選択される。
【0091】
さらなる態様において、金属錯体は、溶液中でFc/Fc対に対して約0.6V未満の最小酸化電位を有する。
ホスト:
【0092】
本発明の有機EL素子の発光層は、好ましくは光発光材料としての金属錯体を少なくとも含み、ドーパント材料として金属錯体を使用するホスト材料を含んでもよい。ホスト材料の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントのそれより大きい限り、任意の金属錯体または有機化合物を使用することができる。下表は様々な色を放出する素子に好ましいホスト材料を分類しているが、三重項基準が満たされる限り、任意のホスト材料を任意のドーパントとともに使用することができる。
【0093】
ホストとして使用される金属錯体の例は、下記一般式を有することが好ましい。
【化32】
【0094】
Mは金属であり;(Y−Y)は二座配位子であり、YおよびYは、独立してC、N、O、PおよびSから選択され;Lは補助配位子であり;mは、金属に結合し得る配位子の1から最大数までの整数値であり;また、m+nは、金属に結合し得る配位子の最大数である。
【0095】
一態様において、金属錯体は次の通りである。
【化33】
【0096】
(O−N)は、原子OおよびNに金属を配位させる二座配位子である。
【0097】
別の態様において、Mは、IrおよびPtから選択される。
【0098】
さらなる態様において、(Y−Y)は、カルベン配位子である。
【0099】
ホストとして使用される有機化合物の例は、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレンなどの芳香族炭化水素環式化合物からなる群;ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジンおよびセレノフェノジピリジンなどの芳香族複素環式化合物からなる群;および芳香族炭化水素環式基および芳香族複素環基から選択される同一型または異なる型の基であり、直接に、または、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、シリコン原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位および脂肪族環式基の少なくとも1つを経由して互いに結合されている、2から10の環式構造単位からなる群から選択される。ここで、各基は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から選択される置換基によってさらに置換されている。
【0100】
一態様において、ホスト化合物は、分子中に以下の基の少なくとも1つを含む。
【化34】
【0101】
からRは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から独立して選択され、それがアリールまたはヘテロアリールである場合、上に言及したAr′と同様の定義を有する。
【0102】
kは、0から20までの整数である。
【0103】
からXは、C(CHを含む)またはNから選択される。ZおよびZは、NR、OまたはSから選択される。
【0104】
HBL:
【0105】
正孔遮断層(HBL)は、発光層を離れる正孔および/または励起子の数を減少させるために使用することができる。遮断層を欠く同様の素子と比較して、素子中にそのような遮断層が存在すると、実質的により高い効率をもたらし得る。また、遮断層は、OLEDの所望の領域に放出を閉じ込めるために用いることができる。
【0106】
一態様において、HBLにおいて使用される化合物は、上記のホストとして使用される同じ分子または同じ官能基を含む。
【0107】
別の態様において、HBLにおいて使用される化合物は、分子中に以下の基の少なくとも1つを含む。
【化35】
【0108】
kは、0から20までの整数であり;Lは補助配位子であり、mは、1から3までの整数である。
ETL:
【0109】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送することができる材料を含むことができる。電子輸送層は、固有である(ドープしていない)か、またはドープされていてもよい。ドーピングは伝導性を増強するために使用することができる。ETL材料の例は特に限定されず、それらが電子を輸送するために通常使用される限り、任意の金属錯体または有機化合物が使用されてもよい。
【0110】
一態様において、ETLにおいて使用される化合物は、分子中に以下の基の少なくとも1つを含む。
【化36】
【0111】
は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、およびその組み合わせからなる群から選択され、それがアリールまたはヘテロアリールである場合、上に言及したAr′と同様の定義を有する。
【0112】
ArからArは、上に言及したAr′と同様の定義を有する。
【0113】
kは、0から20までの整数である。
【0114】
からXは、C(CHを含む)またはNから選択される。
【0115】
別の態様において、ETLにおいて使用される金属錯体は、下記一般式を含むが、これらに限定されない。
【化37】
【0116】
(O−N)または(N−N)は、原子O、NまたはN、Nに金属を配位させる二座配位子である。Lは補助配位子であり;mは、金属に結合し得る配位子の1から最大数までの整数値である。
【0117】
OLED素子の各層において使用される任意の上記化合物において、水素原子を部分的にまたは完全に重水素化することができる。
【0118】
本明細書に開示される材料に加えて、および/または、それらと組み合わせて、多くの正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト材料、ドーパント材料、励起子*exiton/正孔遮断層材料、電子輸送および電子注入材料が、OLEDにおいて使用されてもよい。本明細書において開示される材料と組み合わせてOLEDにおいて使用されてもよい材料の非限定的な例は、以下の表4に列挙される。表4は、非限定的な種類の材料、各種類についての非限定的な化合物の例、および材料を開示している参考文献を列挙している。
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
【表13】
【0129】
【表14】
【0130】
【表15】
【0131】
【表16】
【0132】
【表17】
【0133】
【表18】
【0134】
【表19】
【0135】
【表20】
【0136】
【表21】
【0137】
【表22】
【0138】
【表23】
【0139】
【表24】
【0140】
【表25】
【0141】
【表26】
【0142】
【表27】
【0143】
【表28】
【0144】
【表29】
【0145】
【表30】
【0146】
実験
【0147】
文書の全体にわたって使用される化学の短縮形は以下のとおりである。Cyはシクロヘキシルであり、dbaはジベンジリデンアセトンであり、EtOAcは酢酸エチルであり、DMEはジメトキシエタンであり、dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンであり、THFはテトラヒドロフランであり、DCMはジクロロメタンであり、DMFはジメチルホルムアミドであり、S−Phosはジシクロヘキシル(2′,6′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2−イル)ホスフィンである。
【0148】
化合物1の合成
【化38】
【0149】
(2−アミノ−4,6−ジクロロフェニル)メタノールの合成。2−アミノ−4,6−ジクロロ安息香酸(10.0g、48.5mmol)を、250mLの2首丸底フラスコ中で無水THF50mLに溶解した。溶液を氷水浴で冷却した。次いで、リチウムアルミニウム水素化物(LAH)(40mL、2.0M)のTHF中溶液を、滴下添加した。LAHを残らず添加した後、室温まで反応混合物を暖め、室温で終夜撹拌した。反応混合物に、水(5.1mL)、続いて15%のNaOH5.1mL、次いで水をさらに9.2mLを添加した。塩は濾過し、THFで洗浄した。濾液を濃縮し、黄色固体の2−アミノ−4、6−ジクロロフェニル)メタノール(11.1g、含湿)を得、精製をさらにしないで次のステップに用いた。
【0150】
【化39】
【0151】
5,7−ジクロロ−2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリンの合成。(2−アミノ−4,6−ジクロロフェニル)メタノール(11.1g、48.5mmol)、3,5−ジメチルアセトフェノン(11.1g、74.9mmol)、RuCl(PPh(0.25g、0.29mmol)、KOH(2.19g、39mmol)を、トルエン200mL中に18時間還流した。水は、反応の間にディーン・スタークトラップを使用して収集した。反応混合物を室温に冷却し、シリカゲル筒に通して濾過してDCMで溶出させた。溶媒の蒸発後の生成物は、クーゲルロール蒸留およびジクロロメタン/イソプロパノールからの再結晶化によってさらに精製して、5,7−ジクロロ−2−(3,5−ジメチルフェニル)キノロンを得た(8.85g、60.3%の収率)。
【0152】
【化40】
【0153】
2−(3,5−ジメチルフェニル)−5,7−ジイソブチルキノリンの合成。5,7−ジクロロ−2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリン(4.8g、15.9mmol)、イソブチルボロン酸(6.48g、63.5mmol)、ジシクロヘキシル(2′,6′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン(1.04g、2.54mmol)、Pd(dba)(0.582g、0.635mmol)、リン酸カリウム一水和物(36.6g、159mmol)および水2mLをトルエン240mL中に混合した。系は20分間窒素で脱気し、終夜還流した。室温に冷却した後、反応混合物をセライト(登録商標)筒に通して濾過し、ジクロロメタンで溶出させた。生成物をカラムクロマトグラフィー(4:1から1:1ヘキサン/酢酸エチル、v/vに)によって精製し、5.2gの2−(3,5−ジメチルフェニル)−5,7−ジイソブチルキノリン(41%の収率)を得、GCMSによって確認した。
【0154】
【化41】
【0155】
2−(3,5−ジメチルフェニル)−5,7−ジイソブチルキノリンクロロ架橋イリジウムダイマーの合成。2−(3,5−ジメチルフェニル)−5,7−ジイソブチルキノリン(4.38g、12.7mmol)、IrCl.4HO(2.14g、5.76mmol)、2−エトキシエタノール(48mL)および水(16mL)の混合物を、窒素下に終夜還流した。反応混合物を濾過し、メタノールで洗浄した。真空乾燥後、1.66gのダイマーを得た。ダイマーは精製をさらに行わずに次のステップに使用した。
【0156】
【化42】
【0157】
化合物1の合成:2−(3,5−ジメチルフェニル)−5,7−ジイソブチルキノリンイリジウムダイマー(1.66g、0.905mmol)、ペンタン−2,4−ジオン(0.905g、9.05mmol)、KCO(1.25g、9.05mmol)および2−エトキシエタノール(80mL)を室温で24時間撹拌した。沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄した。固形分は、シリカゲル筒(ヘキサン中15%のトリエチルアミンで前処理した)に通すことによりさらに精製して、80:20(v/v)(ヘキサン:ジクロロメタン)で溶出させた。イソプロパノールおよび最小量のDCMをカラムクロマトグラフィー後得られた固形生成物に添加した。DCMが蒸発するまで、透明溶液を濃縮した。2−プロパノールから沈澱後、1.6gの生成物を濾過後に得た。固形分を高真空下に200℃で昇華し、化合物1(0.88g、49%)を得た。
【0158】
化合物2の合成
【化43】
【0159】
化合物2の合成:2−(3,5−ジメチルフェニル)−5,7−ジイソブチルキノリンイリジウムダイマー(1.1g、0.6mmol)、2,8−ジメチルノナン(1.1g、6.0mmol)、KCO(1.1g、6.0mmol)および2−エトキシエタノール(60mL)を室温で24時間撹拌した。沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄した。固形分は、シリカゲル筒(ヘキサン中15%のトリエチルアミンで前処理した)に通すことによりさらに精製して、80:20(v/v)(ヘキサン:ジクロロメタン)で溶出させた。カラムクロマトグラフィー後に得られた固形生成物にイソプロパノールおよび最小量のDCMを添加した。DCMが蒸発するまで透明溶液を濃縮した。2−プロパノールから沈澱後、0.6gの生成物(47%)を濾過後に得た。固形分は220℃で高真空下に昇華して、化合物2(0.5g)を得た。
【0160】
化合物21の合成
【化44】
【0161】
メチル2−アミノ−5−ブロモ−4−クロロベンゾアートの合成。メチル2−アミノ−4−クロロベンゾアート(20.0g、108mmol)のDMF(200mL)中溶液にN−ブロモスクシンイミド(19.2g、108mmol)を一度に添加し、室温で終夜撹拌した。結果として得られた固形分は濾別し、トルエンに溶解し、NaSOで乾燥し、濃縮して、メチル2−アミノ−5−ブロモ−4−クロロベンゾアート(26.47g、93%)を得た。
【0162】
【化45】
【0163】
(2−アミノ−5−ブロモ−4−ジクロロフェニル)メタノールの合成。1Lの2首丸底フラスコ中に、テトラヒドロフラン中の2.0のMリチウムアルミニウム水素化物およびテトラヒドロフラン(180mL)の混合物28.5mLを−78℃に冷却した。メチル2−アミノ−5−ブロモ−4−クロロベンゾアート(13.7g、51.8mmol)のテトラヒドロフラン(140mL)中溶液を速やかに添加し、室温まで温めた。室温で2時間撹拌した後、水性飽和NaSO(16.8mL)、続いて固体NaSO(10.5g)で反応をクエンチした。結果として得られた塩を、セライト(登録商標)の筒に通して濾過し、濾過ケーキはメタノールで洗浄した。濾液を濃縮し、黄色固形分の2−アミノ−5−ブロモ−4−ジクロロフェニル)メタノール(16.4g、99%)を得、精製をさらに行わずに次のステップに用いた。
【0164】
【化46】
【0165】
6−ブロモ−7−クロロ−2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリンの合成。(2−アミノ−5−ブロモ−4−クロロフェニル)メタノール(8.2g、34.7mmol)、3,5−ジメチルアセトフェノン(8.22g、55.5mmol)、RuCl(PPh(0.15g、0.173mmol)、およびKOH(1.31g、23.4mmol)を、トルエン90mL中に18時間還流した。ディーン・スタークトラップを使用して反応物から水を収集した。室温に反応物混合物を冷却し、シリカゲル筒に通して濾過してDCMで溶出させ、カラムクロマトグラフィーによって精製して2:1(v/v)ヘキサン:DCMで溶出し、6−ブロモ−7−クロロ−2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリン(5.2g、43.3%)を得た。
【0166】
【化47】
【0167】
2−(3,5−ジメチルフェニル)−6,7−ジイソブチルキノリンの合成。6−ブロモ−7−クロロ−2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリン(5.2g、15.0mmol)、イソブチルボロン酸(6.12g、60.0mmol)、ジシクロヘキシル(2′,6′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン(0.99g、2.4mmol)、Pd(dba)(0.549g、0.60mmol)、リン酸カリウム一水和物(34.5g、150mmol)および水2mLをトルエン240mL中に混合した。系は20分間窒素で脱気し、終夜還流した。室温に冷却した後、反応混合物をセライト(登録商標)筒に通して濾過し、ジクロロメタンで溶出させた。生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し2:1(v/v)ヘキサン:DCMで溶出して、2−(3,5−ジメチルフェニル)−6,7−ジイソブチルキノリン(3.43g、66%)を得た。
【0168】
【化48】
【0169】
2−(3,5−ジメチルフェニル)−6,7−ジイソブチルキノリンイリジウムダイマーの合成。2−(3,5−ジメチルフェニル)−6,7−ジイソブチルキノリン(3.43g、9.9mmol)、IrCl.4HO(1.60g、4.32mmol)、エトキシエタノール(85mL)および、水(28mL)の混合物を、窒素下に終夜還流した。反応混合物を濾過し、メタノールで洗浄した。2−(3,5−ジメチルフェニル)−6,7−ジイソブチルキノリンイリジウムダイマー(1.4g、35.4%)は真空乾燥後に得た。ダイマーは精製をさらに行わず次のステップに使用した。
【0170】
【化49】
【0171】
化合物21の合成:2−(3,5−ジメチルフェニル)−6,7−ジイソブチルキノリンイリジウムダイマー(1.4g、0.764mmol)、ペンタン−2,4−ジオン(0.764g、7.64mmol)、KCO(1.06g、7.64mmol)および2−エトキシエタノール(100mL)を24時間室温で撹拌した。沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄した。固形分は、シリカゲル筒に通すことによりさらに精製して、80:20(v/v)(ヘキサン:ジクロロメタン)で溶出させた。2−プロパノールを濾液に添加した。濾液を濃縮し(しかし、乾固させない)、次いで濾過し、化合物21を得た(0.93g、62%)。LC−MSによって確認した。
【0172】
化合物11の合成
【0173】
化合物11を化合物21と同様の合成経路によって調製した。
【0174】
本明細書において記載された様々な実施形態は、例としてのみであり、本発明の範囲を限定するようには意図されないことが理解される。例えば、本明細書において記載された材料および構造の多くは、本発明の趣旨を逸脱することなく、他の材料および構造で置換することができる。したがって、請求される本発明は、当業者には明白であるように、本明細書に記載された特定の例および好ましい実施形態からの変形を含み得る。なぜ本発明が作用するかについての様々な理論は、限定するようには意図されないことが理解される。
図1
図2
図3