特許第6147508号(P6147508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147508
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】クッションクリップ
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20170607BHJP
   B60R 7/06 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
   F16F7/00 B
   !B60R7/06 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-4498(P2013-4498)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2014-137074(P2014-137074A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年10月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 晴久
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岡市 桂治
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健夫
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭39−018651(JP,Y1)
【文献】 特開2011−064292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R3/00−7/14
F16F7/00−7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と該固定部材に接近および離反を繰り返す可動部材とのいずれかに取付けることが可能な係止脚と、固定部材に対して接近する可動部材からの荷重を受けて弾性変形することにより衝撃を吸収するクッションとを備えたクッションクリップであって、
クッションが、係止脚に結合されたベースと、このベースに続く基部と、この基部とは反対側の頂部と、基部と頂部との間において最も外方へ膨出させた中間部とからなり、全体として中空の樽形状に構成され、
クッションの基部が、該クッションの中空の底面から中間部に向けて起立した部分で、かつ、中空の底面寄りに設定され、
クッションの肉厚が、中間部において最大寸法となり、この中間部から基部にかけて寸法が減少し、基部において最小寸法となるように設定されているクッションクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のインストルメントパネル側(固定部材)に開閉可能に組付けられているグラブドア(可動部材)を閉ざすときの動きを受け止め、その衝撃を吸収するためのクッションクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクッションクリップは、特許文献1で開示されているように、例えば固定部材の取付け孔に差込むことで固定部材に結合される係止脚と、可動部材の動きを受け止めて弾性変形するクッションとを備えている。クッションは、中空形状で、かつ係止脚側の基部から反対側の頂部に向けて縮径する円錐状の外形をしている。また、クッションを構成している壁部の肉厚は、基部から頂部に向けて徐々に薄くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−164171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているクッションクリップにおいて、クッションが可動部材からの荷重を受けて圧縮するとき、肉厚の薄い頂部近くの箇所が大きく弾性変形することになり、この箇所に応力が集中する。このため、クッションの圧縮ひずみにおける復元率が低く、必要な反発力を維持することができず、例えば自動車用グラブドアのクッションクリップに使用した場合、閉じた状態のグラブドアにガタが生じる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、クッションが圧縮する方向に弾性変形するとき、全体に均等な変形となって応力の集中箇所をなくし、このクッションの圧縮ひずみにおける復元率を高めて必要な反発力を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
固定部材と該固定部材に接近および離反を繰り返す可動部材とのいずれかに取付けることが可能な係止脚と、固定部材に対して接近する可動部材からの荷重を受けて弾性変形することにより衝撃を吸収するクッションとを備えたクッションクリップであって、
クッションが、係止脚に結合されたベースと、このベースに続く基部と、この基部とは反対側の頂部と、基部と頂部との間において最も外方へ膨出させた中間部とからなり、全体として中空の樽形状に構成されている。そして、クッションの基部が、該クッションの中空の底面から中間部に向けて起立した部分で、かつ、中空の底面寄りに設定され、クッションの肉厚が、中間部において最大寸法となり、この中間部から基部にかけて寸法が減少し、基部において最小寸法となるように設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、クッションが中空の樽形状に構成されていることにより、このクッションが可動部材からの荷重を受けて圧縮する方向に弾性変形するときに、クッションの中間部が丸く膨らんで全体に均等な変形となり、応力が集中する箇所をなくすることができる。このため、クッションの圧縮ひずみにおける復元率が高く、常に所定の反発力を維持することができる。この結果、可動部材が例えば自動車用グラブドアである場合に、このグラブドアのガタによる車内異音の防止効果が高められる。
【0010】
また、クッションの肉厚を、中間部において最大寸法としたことにより、クッションが圧縮されたときに中間部以外の基部寄りあるいは頂部寄りの箇所が中間部よりも先に変形し始めることとなり、結果として中間部が丸く膨らんだ状態で全体に均等な変形となる。
さらに、クッションを、その基部において最小寸法の肉厚としたことにより、クッションの基部側が係止脚との結合による拘束を受けていても、この基部を変形し易くして、基部以外の箇所が局部的に変形するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】クッションクリップを表した外観斜視図。
図2】クッションクリップを表した正面図。
図3】クッションクリップを表した平面図。
図4図2のA−A矢視方向の断面図。
図5】クッションクリップを構成するクッションの一部を拡大して表した断面図。
図6】クッションの断面形状の変更例を図5と対応させて表した断面図。
図7】クッションが圧縮変形するときの初期状態の一部を表した断面図。
図8】クッションが圧縮変形するときの途中状態の一部を表した断面図。
図9】クッションが圧縮変形するときの終期状態の一部を表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図面で示すクッションクリップは、例えば自動車用グラブドアを閉めたときの衝撃を吸収するために使用される。このクッションクリップの構成は、エラストマーなどの軟質の樹脂材で一体成形されたクッション10と、ポリプロピレン(PP)などの硬質の樹脂材で成形された係止脚20とに大別される。
図2および図4に示す固定部材30をインストルメントパネルとし、可動部材34をグラブドアとしたとき、本実施の形態では固定部材30の取付け孔32に係止脚20を挿入して結合することにより、この固定部材30にクッションクリップが取付けられる。そして、固定部材30に取付けられたクッションクリップのクッション10は、グラブドアを閉ざすとき、すなわち固定部材30に接近する可動部材34を受止めて圧縮する方向へ弾性変形し、そのときの衝撃を吸収する。
【0013】
クッション10は、中空の樽形状をしており、その基部10aと頂部10bとの間の中間部10cが最も外方へ膨出した外形になっている。具体的には、図4で示すクッション10の断面形状が、基部10aから頂部10bにかけて中間部10cが膨らんだ弓なりに反った形状になっている。したがって、クッション10の平面形状における円径については、基部10aおよび頂部10bよりも中間部10cの寸法が大きい。なお、基部10aおよび頂部10bの円径は、ほぼ同寸法に設定されている。
クッション10の基部10aに続くベース12は、後述するように係止脚20と一体に結合されている。クッション10の頂部10bには、その中央において円形の開口14が設けられている。また、クッション10の基部10aには、内外に通じる一つのエア抜き孔16が開けられている(図4)。
【0014】
中空の樽形状をしたクッション10は、前述のように可動部材34を受止めて圧縮するとき、その中間部10cが丸く膨らんで全体に均等な変形となり、クッション10の全体において一部に応力が集中するのを防止することができる。したがって、クッション10の肉厚については、基部10aから頂部10bにかけて一定寸法に設定してもよい。しかし、本実施の形態ではクッション10をより均等に圧縮変形させるために、中間部10cの肉厚が最大寸法となるように設定されている。これについては、後で具体的に説明する。
なお、クッション10の頂部10bに設けられている開口14の周縁部は、その断面形状が円弧形状となるように肉盛りされて剛性が高められており、クッション10の圧縮変形によっても開口14の内径がほとんど変化しないようになっている。
【0015】
係止脚20は、円板形状の基板20aから突出した船底形状の係止部20bを有する。係止脚20の基板20aとクッション10のベース12とは、例えば個々の樹脂材による二色成形によって一体的に結合されている(図4)。すなわち、クッション10のベース12が係止脚20の基板20aを包み込んだ状態で相互に結合されている。
係止脚20の係止部20bが、固定部材30の取付け孔32に差し込まれると、この係止部20bの両係止面20cが固定部材30の内側において取付け孔32の縁部に係止する(図2)。これによって、係止脚20が固定部材30に結合され、結果として固定部材30にクッションクリップが取付けられる。
【0016】
つづいて、クッション10の肉厚について説明すると、図5および図6で示す基部10aの肉厚T1あるいは頂部10bの肉厚T2と比べ、中間部10cの肉厚T3が最大寸法に設定されている。そして、基部10aの肉厚T1は、頂部10bの肉厚T2とほぼ同一寸法か、この肉厚T2よりも小さい寸法に設定される。
【0017】
基部10aの肉厚T1を最小寸法に設定するために、図5ではクッション10の肉厚形状が、中間部10cの基部10a寄りの部位から基部10aにかけて肉厚を漸減させた抉り取り形状に設定されている。したがって、この場合は基部10aの肉厚T1のうちでも、ベース12との接合部付近が最も薄くなっている。
また、図6で示すクッション10の肉厚形状は、中間部10cと基部10aとの間が弓形状に削り取られた形になっている。この場合は、基部10aの肉厚T1のうちでも、基部10aと中間部10cとの中間部分が最も薄くなっている。
【0018】
前述のように、固定部材30に取付けられたクッションクリップが可動部材34を受止めたときのクッション10は、可動部材34からの荷重を受けて圧縮する方向へ弾性変形し、そのときの衝撃を吸収する。なお、クッション10が圧縮変形するときに、頂部10bの開口14が可動部材34で塞がれていても、中空内の空気はエア抜き孔16から外部に排出される。
【0019】
クッション10が、可動部材34からの荷重を受けて弾性変形する様子を図7図9によって説明する。既に述べたように、クッション10はその中間部10cが最も外方へ膨出した中空の樽形状をしており、かつ中間部10cの肉厚T3が最大寸法に設定されていることから、図7で示すようにクッション10が可動部材34を受止めて圧縮し始めたとき、基部10aおよび頂部10bに近い箇所が中間部10cよりも先に変形する。そして、図8で示すようにクッション10の圧縮がさらに進むと、その中間部10cが外側へ丸く膨らむように変形し、最終的には図9で示すようにクッション10全体が均等に変形し、一部に応力が集中するのを防止することができる。
【0020】
また、クッション10の基部10a側は、係止脚20の基板20aに結合されているベース12からの拘束を受けて変形しにくい。しかし、図5あるいは図6のいずれで示す肉厚形状のクッション10でも、基部10aの肉厚T1が最小寸法になっていることから、基部10aの弾性変形が容易となり、クッション10全体の均等な変形が維持される。
【0021】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば、クッション10と係止脚20との結合には、二色成形に代えて接着等の手段を採用することもある。また、クッション10と係止脚20とを一種類の樹脂材で一体に成形することも可能である。この場合の樹脂材は、クッション10の弾性特性を優先して選定されることになる。
【符号の説明】
【0022】
10 クッション
10a 基部
10b 頂部
10c 中間部
20 係止脚
30 固定部材
34 可動部材
T1 肉厚
T2 肉厚
T3 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9