(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コリメータを有するガンマ線検出部により得られた投影データにもとづいてOS−EM3次元再構成を行って再構成画像を生成するコンピュータに用いられる画像再構成プログラムであって、コンピュータを、
前記再構成画像を生成するにあたり、前記ガンマ線検出部の有効視野領域のうち、体軸方向に沿った方向の両端に位置する所定の外周領域と、前記所定の外周領域を除く内部領域とで異なる応答関数を用いて、前記コリメータによる前記有効視野領域のガンマ線放射位置分解能の劣化を補正する再構成部、
として機能させるための画像再構成プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る核医学診断装置、画像処理装置および画像再構成プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施形態に係る核医学診断装置および画像処理装置は、OS−EM3次元再構成法を用いるSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置に適用することが可能である。以下の説明では、本発明に係る核医学診断装置として2検出器型のガンマ線検出器回転型のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置を用いる場合の一例について示す。なお、ガンマ線検出器回転型SPECT装置としては、検出器が1つまたは3以上の複数のものであってもよい。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る核医学診断装置1の一例を示すブロック図である。
【0012】
核医学診断装置1は、スキャナ装置2および画像処理装置3を有する。なお、画像処理装置3はスキャナ装置2とデータ送受信可能に接続されていればよく、同一の部屋や建屋に設けられずともよい。
【0013】
スキャナ装置2は、ガンマ線検出部11および12、回転部13を有するガントリ14、回転駆動装置15、データ収集部16を有する。
【0014】
ガンマ線検出部11は、被検体Pに対して薬品に含まれて投与されたテクネシウムなどのRI(放射性同位元素)から放射されるガンマ線を検出する検出部である。なお、ガンマ線検出部12はガンマ線検出部11と同様の構成および作用を有するため、説明を省略する。
【0015】
ガンマ線検出部11としては、シンチレータ型検出器を用いてもよいし、半導体型検出器を用いてもよい。
【0016】
シンチレータ型検出器を用いてガンマ線検出部11を構成する場合は、ガンマ線検出部11は、ガンマ線の入射角度を規定するためのコリメータ、コリメートされたガンマ線が入射すると瞬間的な閃光を発するシンチレータ、ライトガイド、シンチレータから射出された光を検出するための2次元に配列された複数の光電子増倍管、およびシンチレータ用電子回路などを有する。シンチレータは、たとえばタリウム活性化ヨウ化ナトリウムNaI(Tl)により構成される。
【0017】
シンチレータ用電子回路は、ガンマ線が入射する事象(イベント)が発生するごとに、複数の光電子増倍管の出力にもとづいて複数の光電子増倍管により構成される検出面内におけるガンマ線の入射位置情報(位置情報)、入射強度情報および入射時刻情報を生成しデータ収集部16に出力する。この位置情報は、検出面内の2次元座標の情報であってもよいし、あらかじめ検出面を複数の分割領域(1次セル)に仮想的に分割しておき(たとえば1024×1024個に分割しておき)、どの1次セルに入射があったかを示す情報であってもよい。
【0018】
一方、半導体型検出器を用いてガンマ線検出部11を構成する場合は、ガンマ線検出部11は、コリメータ、コリメートされたガンマ線を検出するための2次元に配列された複数のガンマ線検出用半導体素子(以下、半導体素子という)および半導体用電子回路などを有する。半導体素子は、たとえばCdTeやCdZnTe(CZT)により構成される。
【0019】
半導体用電子回路は、ガンマ線が入射する事象(イベント)が発生するごとに、半導体素子の出力にもとづいて入射位置情報、入射強度情報および入射時刻情報を生成しデータ収集部16に出力する。この位置情報は、複数の半導体素子(たとえば1024×1024個)のうちのどの半導体素子に入射したかを示す情報である。
【0020】
すなわち、ガンマ線検出部11は、イベントごとに入射位置情報、入射強度情報および入射時刻情報を出力する。また、位置情報は、1次セルのどの位置にガンマ線が入射したかを示す情報および検出面内の2次元座標の情報の少なくとも一方である。以下の説明では、ガンマ線検出部11が位置情報として検出面内のどの位置にガンマ線が入射したかを示す情報を出力する場合の例について示す。
【0021】
ガンマ線検出部11および12は、データ収集部16により撮像タイミングを制御される。
【0022】
回転部13はガントリ14に支持され、ガンマ線検出部11および12を保持する。回転部13が回転駆動装置15を介してデータ収集部16に制御されて所定の回転軸r周り(z軸(体軸)周り)に回転することにより、ガンマ線検出部11および12は回転軸rの周りを回転する。
【0023】
回転駆動装置15は、データ収集部16に制御されて、回転部13を所定の回転軸r(z軸)の周りに回転させる。
【0024】
被検体Pは、天板17に載置される。天板駆動装置18は、データ収集部16に制御されて、天板17をy軸方向に昇降動させる。また、天板駆動装置18は、データ収集部16に制御されて、回転部13の中央部分の開口部の撮影領域へ天板17をz軸方向に沿って移送する。
【0025】
データ収集部16は、画像処理装置3により制御されて、ガンマ線検出部11および12、回転駆動装置15および天板駆動装置18を制御することにより、被検体Pのスキャンを実行する。
【0026】
データ収集部16は、ガンマ線検出部11および12のそれぞれの出力をたとえばリストモードで収集する。リストモードでは、ガンマ線の検出位置情報、強度情報、ガンマ線検出部11および12と被検体Pとの相対位置を示す情報(ガンマ線検出部11および12の位置や角度など)、およびガンマ線の検出時刻がガンマ線の入射イベントごとに収集される。
【0027】
一方、画像処理装置3は、
図1に示すように、制御部21、表示部22、入力部23および記憶部24を有する。
【0028】
制御部21は、CPUまたはGPU等の高速演算装置、RAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などにより構成され、この記憶媒体に記憶されたプログラムに従って画像処理装置3の処理動作を制御する。
【0029】
制御部21のCPUまたはGPU等の高速演算装置は、ROMをはじめとする記憶媒体に記憶された画像再構成プログラムおよびこのプログラムの実行のために必要なデータをRAMへロードし、このプログラムに従って、有効視野付近や画像境界付近におけるデータ不在を起因とする画像歪みを補正することができるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法を実行する。
【0030】
制御部21のRAMは、CPUまたはGPU等の高速演算装置が実行するプログラムおよびデータを一時的に格納するワークエリアを提供する。制御部21のROMをはじめとする記憶媒体は、画像処理装置3の起動プログラム、画像再構成プログラムや、これらのプログラムを実行するために必要な各種データを記憶する。
【0031】
なお、ROMをはじめとする記憶媒体は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUまたはGPU等の高速演算装置により読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0032】
表示部22は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、制御部21の制御に従って核医学診断画像などの各種情報を表示する。
【0033】
入力部23は、たとえばキーボード、タッチパネル、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を制御部21に出力する。
【0034】
記憶部24は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。記憶部24は、制御部21により制御されて表示画素ごとの計数値や核医学画像などを記憶する。
【0035】
図2は、制御部21のCPUによる機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図である。なお、この機能実現部は、CPUを用いることなく回路などのハードウエアロジックによって構成してもよい。
【0036】
図2に示すように、制御部21のCPUは、画像再構成プログラムによって、少なくともスキャン制御部31、条件設定部32、前処理部33、再構成部34および減弱マップ生成部35として機能する。この各部31〜35は、RAMの所要のワークエリアをデータの一時的な格納場所として利用する。
【0037】
スキャン制御部31は、ユーザから入力部23を介してスキャン計画の実行指示を受けて、スキャン計画にもとづいてスキャナ装置2を制御することにより、スキャンを実行する。この結果、被検体Pから放出されたガンマ線の投影データがスキャナ装置2からデータ収集部16を介して画像処理装置3の記憶部24に記憶される。
【0038】
条件設定部32は、入力部23を介してユーザにより指定された処理条件情報を取得して各種処理条件を設定する。この処理条件には、再構成の処理範囲や、前処理フィルタ等の前処理要素のパラメータ、コリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法における繰り返し回数やサブセット数などが含まれる。
【0039】
また、条件設定部32は、入力部23を介してユーザにより設定されて、またはあらかじめ記憶部24に記憶された条件にもとづいて、コリメータ開口補正を適用する領域(以下、補正対象領域という)を設定する。補正対象領域としては、たとえばガンマ線検出部11および12の有効視野領域が設定される。
【0040】
図3は、コリメータと有効視野領域との関係の一例を示す説明図である。
【0041】
ガンマ線検出部11の有効視野は、ガンマ線検出部11の本体11aの検出面に取り付けられたコリメータ11bによって規定される。なお、ガンマ線検出部11の周辺部は精度が保証できないためマスキングされる場合があり、この場合はマスキング後の視野を有効視野とするとよい。
図3に示すように、有効視野内にあるガンマ線の放出位置41については投影データを得ることができる一方、有効視野端の外側の領域には、投影データが存在しない。
【0042】
前処理部33は、条件設定部32により設定された前処理条件情報を取得するとともに、記憶部24に記憶された投影データを取得する。前処理部33は、取得した前処理条件情報に従って、投影データに対して均一性補正、回転中心補正、前処理用のフィルタリング処理などの前処理を実行する。
【0043】
再構成部34は、ガンマ線検出部11および12により得られた投影データにもとづいてコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成を行って再構成画像を生成する。
【0044】
ここで、OS−EM3次元再構成に対してコリメータ開口補正処理を組み込む従来の方法について2つの方法を簡単に説明する。
【0045】
図4は、OS−EM3次元再構成に対してコリメータ開口補正処理を組み込む従来の方法により生成された再構成画像の一例を示す説明図である。
図4には、心筋SPECT画像のコロナル像の一例を示した。
図4の紙面上下方向は被検体Pの体軸方向に一致する。
【0046】
図4に再構成画像例を示した方法は、有効視野外の投影データが存在しない位置のデータを、有効視野境界の投影データを拡張することにより補完する方法である。この方法により、有効視野外にも投影データを仮想的に拡張することによって有効視野外の投影データがない部分によるコリメータ開口補正への影響を低減することができる。しかし、
図4に示すように、この方法では有効視野境界付近における画像歪み(アーティファクト)42が視認可能なほどに残存してしまう場合がある。
【0047】
第2の従来の方法は、数式を用いてできるだけ正確に位置分解能補正を行う方法である。3次元コリメータ開口補正の計算式は、次のように書ける。
【0049】
式(1)において、Cは存在確率を、bkはガンマ線検出部11の位置分解能に応じた点線源の広がりがガウス分布と仮定した線広がり関数を、それぞれ示す。線広がり関数bkは、対象ピクセルとガンマ線検出部11との距離に依存する関数である。
【0050】
この第2の従来の方法では、3次元コリメータ開口補正の計算式を用いて、有効視野境界や画像上端、下端を加味して存在確率C
(i+rx+ry)を計算する。しかし、有効視野や画像境界の場合分けや、個々のピクセルの寄与の計算は複雑であり、多大な時間を要してしまう。
【0051】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置3の再構成部34は、位置分解能の劣化を補正する対象である補正対象領域内(たとえば有効視野内)の所定の外周領域と、この所定の外周領域を除く内部領域と、で異なる応答関数を用いて補正対象領域の位置分解能の劣化を補正する。なお、以下の説明では、所定の応答関数を用いた前記位置分解能の劣化の補正処理として、所定形状を有するフィルタを用いたコンボリューション方式のフィルタ処理を行う場合の例について示す。
【0052】
図5(a)は、補正対象領域43の内部の角の画素が元フィルタ44の対象画素45(斜線部参照)である場合の様子を示す説明図であり、(b)は(a)に示す場合において補正対象領域43の外部に位置する領域外フィルタ46(ドット部参照)を説明するための図であり、(c)は(a)に示す場合において元フィルタ44のうち補正対象領域43の内部に位置する部分のみで正規化を行った修正フィルタ47について説明するための図である。
図5には、元フィルタ44が5×5の正方形の形状を有する場合の例について示したが、元フィルタ44の形状は正方形に限られず、円形や楕円形や長方形などであってもよい。
【0053】
図5(a)に示すように、補正対象領域43の内部であっても外周に近い画素に対してコンボリューションフィルタ処理を行う場合、元フィルタ44の一部が補正対象領域43の外部に位置する場合がある。このため、補正対象領域43の外部に投影データが存在しない場合には、領域外フィルタ46(
図5(b)のドット部参照)については掛け合わせ処理を行わないようにするとよい。しかし、単に領域外フィルタ46について掛け合わせ処理を行わないだけでは、領域外フィルタ46が存在しない対象画素45との整合性が取れず、補正対象領域43の領域周辺で画像歪みが生じる原因となってしまう(
図4参照)。
【0054】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置3の再構成部34は、
図5(c)に示すように、領域外フィルタ46が存在する対象画素45については、元フィルタ44のうち補正対象領域43の内部に位置する部分のみで正規化を行った修正フィルタ47を用いる。すなわち、再構成部34は、画素の場所に応じてコリメータ開口補正方法を分ける。具体的には、再構成部34は、画素の場所に応じてコンボリューション時の演算の重みを分ける。
【0055】
図6は、画素の場所に応じてコリメータ開口補正方法を分ける場合の一例について示す説明図である。
【0056】
補正対象領域43は、所定の外周領域としての修正フィルタ領域51と、内部領域としての元フィルタ領域52とにより構成される。修正フィルタ領域51の領域端53は補正対象領域43の外周に一致する。たとえば補正対象領域43が有効視野領域である場合は有効視野端に一致する。修正フィルタ領域51は、領域端53と元フィルタ領域52の境界である修正フィルタ境界54とに囲まれた領域である。
【0057】
また、補正対象領域43は、減弱補正を行わない場合には有効視野内のデータ領域、減弱補正を
行なう場合には減弱係数マップに一致する領域としてもよい。減弱マップ生成部35は、使用する核種のガンマ線エネルギーの減弱係数の分布を示す減弱計数マップ(以下、減弱マップという)を生成する。再構成部34は、この減弱マップにもとづいてガンマ線の検出結果を補正することによりガンマ線の生体内での減弱の影響を補正する(以下、減弱補正するという)ことができる。このため、減弱の補正を行わない場合にくらべ、核医学画像をより高精度に生成することができる。再構成部34が減弱補正を行う場合には、補正対象領域43は減弱マップに一致する領域としてもよい。
【0058】
所定の外周領域としての修正フィルタ領域51は、元フィルタ44を適用すると元フィルタ44の一部が補正対象領域43の外部に位置することになる対象画素45により構成される。修正フィルタ領域51に属する画素に対してコリメータ開口補正を行う場合は、修正フィルタ47を用いる。
【0059】
一方、内部領域としての元フィルタ領域52は、元フィルタ44を適用すると元フィルタ44の全てが補正対象領域43の内部に位置することになる対象画素45により構成される。元フィルタ領域52に属する画素に対してコリメータ開口補正を行う場合は、元フィルタ44を用いる。
【0060】
図7(a)は対象画素45が元フィルタ領域52に属する場合の一例について示す説明図であり、(b)は対象画素45が修正フィルタ領域51に属する場合の一例について示す説明図である。
【0061】
元フィルタ44がn×nの正方形であり、かつnが奇数である場合、領域端53と修正フィルタ境界54との幅は(n−1)/2画素となる。たとえば、n=5である場合は、この幅は2画素となる。したがって、再構成部34は、補正対象領域43の情報にもとづいて容易に修正フィルタ領域51を設定することができ、対象画素45が元フィルタ領域52に属する場合には元フィルタ44を用い(
図7(b)参照)、修正フィルタ領域51に属する場合には修正フィルタ47を用いればよい(
図7(a)参照)。
【0062】
再構成部34が画素の場所に応じてコリメータ開口補正方法を分けることにより、式(1)を正確に計算する場合に比べて計算に要する時間を大幅に低減しつつ、補正対象領域43の周辺部における画像歪みを低減することができる。
【0063】
なお、元フィルタ44が正方形でない場合であっても同様の方法により容易に修正フィルタ領域51を設定することができる。たとえば、元フィルタ44の形状が長辺na、短辺nbの長方形であり対象画素45が元フィルタ44の中心である場合には、補正対象領域43内の長辺方向に沿った両端の修正フィルタ領域51の幅を(na−1)/2画素とし、短辺方向に対応する修正フィルタ領域51の幅を(nb−1)/2画素とすればよい。また、元フィルタ44の形状が円形である場合には、この円に外接する正方形にもとづいて修正フィルタ領域51を設定すればよい。
【0064】
図8は、補正対象領域43のうち体軸方向に直交する方向の両端には投影データが存在しない領域が無い場合の一例について示す説明図である。
【0065】
図1に示すように、ガンマ線検出部11および12が回転部13により回転軸r周り(体軸周り)に回転して投影データを収集する場合、体軸方向の両端には投影データが存在しない領域が生じるものの、体軸方向に直交する方向には有効視野外であるため投影データが存在しない領域が生じない場合がある。これは体躯部を収集した場合である。この場合、
図8に示すように、補正対象領域43のうち、体軸方向に沿った方向の両端にのみ修正フィルタ領域51を設ければよく、
図6に示す場合に比べ演算に要する時間を削減することができる。
【0066】
次に、本実施形態に係る核医学診断装置、画像処理装置および画像再構成プログラムの動作の一例について説明する。
【0067】
図9は、
図1に示す画像処理装置3のCPUまたはGPU等の高速演算装置により、補正対象領域43としてガンマ線検出部11および12の有効視野領域が設定される場合において、補正対象領域43の領域境界近辺におけるデータ不在を起因とする画像歪みを補正することができるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法を実行する際の手順を示すフローチャートである。
図9において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
【0068】
まず、ステップS1において、条件設定部32は、入力部23を介してユーザにより指定された処理条件情報を取得して各種処理条件を設定する。また、条件設定部32は、入力部23を介してユーザにより設定されて、またはあらかじめ記憶部24に記憶された条件にもとづいて、コリメータ開口補正を適用する領域(補正対象領域43)を有効視野領域に設定する。有効視野領域の情報は、たとえばスキャン制御部31による投影データの取得時に条件設定部32に与えられる。
【0069】
次に、ステップS2において、前処理部33は記憶部24から、スキャン制御部31により記憶部24に記憶された投影データを取得する。
【0070】
次に、ステップS3において、前処理部33は、条件設定部32により設定された前処理条件情報に従って、投影データに対して均一性補正、回転中心補正、前処理用のフィルタリング処理などの前処理を実行する。
【0071】
次に、ステップS4において、再構成部34は、応答関数を計算する。具体的には、再構成部34は、コリメータ開口の応答関数である元フィルタ44を設定する。
【0072】
次に、ステップS5において、再構成部34は、OS−EM3次元再構成に対して補正対象領域43を考慮したコリメータ開口補正処理を組み込んで、投影データにもとづいて再構成画像を生成する。
【0073】
OS−EM3次元再構成法は、投影データを複数のグループに分けて、サブセットごとに逐次近似処理を行なっていく手法である。サブセットの分け方は任意であるが、三次元の収集位置にあっては、互いに最も疎の(関連が薄い)関係となる90度の角度をなすデータ群を1つのサブセットとすることが良好な画像を再構成する上で好ましい条件となっている。
【0074】
再構成部34は、このOS−EM3次元再構成において、修正フィルタ領域51に属する画素に対しては修正フィルタ47を用いる一方、元フィルタ領域52に属する画素に対しては元フィルタ44を用いるコリメータ開口補正処理を実行し、再構成画像を生成する。
【0075】
次に、ステップS6において、再構成部34は、生成した再構成画像を表示部22に表示させる。
【0076】
以上の手順により、補正対象領域43としてガンマ線検出部11および12の有効視野領域が設定される場合において、補正対象領域43の領域境界近辺におけるデータ不在を起因とする画像歪みを軽減することができるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法を実行することができる。
【0077】
図10は、
図1に示す画像処理装置3のCPUまたはGPU等の高速演算装置により、補正対象領域43として減弱マップが設定される場合において、補正対象領域43の領域境界近辺におけるデータ不在を起因とする画像歪みを補正することができるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法を実行する際の手順を示すフローチャートである。
図10において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
図9と同等のステップには同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0078】
ステップS11において、減弱マップ生成部35は、使用する核種のガンマ線エネルギーの減弱係数の分布を示す減弱マップを生成する。
【0079】
ステップS12において、再構成部34は、OS−EM3次元再構成に対して補正対象領域43を考慮したコリメータ開口補正処理を組み込むとともに減弱補正処理を組み込んで、投影データにもとづいて再構成画像を生成し、再構成画像と減弱マップとを重畳したマップ重畳画像を生成する。
【0080】
そして、ステップS13において、再構成部34は、再構成画像と減弱マップとを重畳したマップ重畳画像を表示部22に表示させる。
【0081】
以上の手順により、補正対象領域43として減弱マップが設定される場合において、補正対象領域43の領域境界近辺におけるデータ不在を起因とする画像歪みを補正することができるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法を実行することができる。
【0082】
なお、減弱補正を行う場合は、補正対象領域43を有効視野と減弱マップの狭い方に合わせることで、減弱補正なしの場合の処理と同様にあつかうことが可能となる。
【0083】
本実施形態に係る画像処理装置3を含む核医学診断装置1は、画素の場所に応じてコリメータ開口補正方法を分けるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法を実行することができる。具体的には、核医学診断装置1は、コリメータ開口の影響を補正するためにコンボリューションフィルタ法を用い、コンボリューションフィルタ法の処理の中に応答関数の広がりや有効視野の情報を組み込み、応答関数のコンボリューション計算時に画素の場所に応じて演算の重みを分ける。このため、式(1)を厳格に適用する方法に比べ、処理時間を大幅に低減しつつ、補正対象領域43の周辺部における画像歪みを低減することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る画像処理装置3を含む核医学診断装置1によるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法は、補正対象領域43の外側の投影データが存在しない領域にデータを補完する従来のコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法に比べ、処理時間をほぼ変わらせることなく、より有効視野付近や画像周辺に繰り返し計算によるアーティファクトを低減することができる。また、本実施形態に係る画像処理装置3を含む核医学診断装置1によるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法では、投影データが存在しない領域にデータを補完する必要がなく、いわゆる虚偽のデータである補完データを用いる必要がない。
【0085】
以下に、本実施形態に係る画像処理装置3を含む核医学診断装置1によるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法と、補正対象領域43の外側の投影データが存在しない領域にデータを補完する従来のコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法(以下、補完法という)とを比較した結果について、
図11〜15を参照して説明する。
【0086】
図11は、比較のために用いた数値ファントムを示す説明図である。
【0087】
本実施形態に係るコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法と従来の補完法とを比較するにあたり、
図11に示すような台形状に大きさが変わる円錐状の数値ファントムを用い、128マトリクス、HRコリメータ、R130mmを想定してコリメータによる画像劣化の影響を付加した仮想投影データを作成した。
【0088】
図12(a)は、減弱補正を行わない場合における従来の補完法により生成されたコロナル断面の再構成画像であり、(b)は、減弱補正を行わない場合における本実施形態に係るコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法により生成されたコロナル断面の再構成画像である。
【0089】
また、
図13(a)は、減弱補正を行う場合における従来の補完法により生成されたコロナル断面の再構成画像であり、(b)は、減弱補正を行う場合における本実施形態に係るコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法により生成されたコロナル断面の再構成画像である。
【0090】
図12(a)と(b)、および
図13(a)と(b)を比較して明らかなように、従来の補完法に比べ、本実施形態に係るコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法のほうが、体軸方向両端に生じるアーティファクト(
図12および
図13の横方向に沿ったすじ状の画像歪み)が低減されていることがわかる。
【0091】
また、
図12と
図13とを比較して明らかなように、本実施形態に係るコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法は、減弱補正を行う場合においても問題なく適用可能であることがわかる。
【0092】
図14は、SPECT臨床データに対して本実施形態に係るコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法と従来の補完法とをそれぞれ適用した場合における補正対象領域43の上端付近のアキシャル断面のスライス画像を比較するための説明図である。A1〜A16はコリメータ開口補正を行わない例であり、A1が最も上端に位置するスライス画像である。同様に、B1〜B16は従来の補完法によるコリメータ開口補正を行った例、C1〜C16は本実施形態に係るコリメータ開口補正を行った例を示す。
【0093】
図14に示すように、従来の補完法では上端付近のスライス画像B1〜B4において大きな画像歪みが確認できるのに対し、本実施形態に係るコリメータ開口補正ではC1〜C4においても画像歪みが無いことがわかる。
【0094】
図15は、
図14と同一の投影データに対して本実施形態に係るコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法と従来の補完法とをそれぞれ適用した場合におけるコロナル断面画像を比較するための説明図である。A1〜A4はコリメータ開口補正を行わない例を、B1〜B4は従来の補完法によるコリメータ開口補正を行った例を、C1〜C4は本実施形態に係るコリメータ開口補正を行った例を、それぞれ示す。
【0095】
図15に示すように、従来の補完法では体軸方向上下端付近にすじ状の画像歪みが確認できるのに対し、本実施形態に係るコリメータ開口補正ではこの種の画像歪みが無いことがわかる。
【0096】
また、従来の補完法と本実施形態に係るコリメータ開口補正方法との処理時間にはほとんど差はなく、処理条件によっては本実施形態に係るコリメータ開口補正方法のほうが、処理時間が短い場合もあった。これは、本実施形態に係るコリメータ開口補正方法ではデータの補完処理が不要となるとともに、補正対象領域43の外部にデータを拡張する必要がなく補正対象領域43の内部の投影データのみを処理対象とするためであると考えられる。
【0097】
したがって、本実施形態に係る画像処理装置3を含む核医学診断装置1によるコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法は、補正対象領域43の外側の投影データが存在しない領域にデータを補完する従来のコリメータ開口補正OS−EM3次元再構成法に比べ、より有効視野付近や画像周辺に繰り返し計算によるアーティファクトを低減できる優れた方法であるといえる。
【0098】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。