特許第6147514号(P6147514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6147514マスクブランク用基板の製造方法、多層反射膜付き基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147514
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】マスクブランク用基板の製造方法、多層反射膜付き基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20170607BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20170607BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20170607BHJP
   G03F 1/60 20120101ALI20170607BHJP
【FI】
   G03F1/24
   C03C15/00 D
   C03C19/00 Z
   G03F1/60
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-17130(P2013-17130)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-150124(P2014-150124A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】折原 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛之
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4508779(JP,B2)
【文献】 国際公開第2012/003780(WO,A1)
【文献】 再公表特許第2008/129914(JP,A1)
【文献】 特開2010−194705(JP,A)
【文献】 特開2011−146695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面が研磨されたマスクブランク用基板と、該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報とを準備する準備工程と、
前記表面形態情報の中から所定の基準値を超える前記主表面の特定部位を検出し、検出された前記特定部位の位置を前記位置情報によって特定する特定部位特定工程と、
前記マスクブランク用基板の前記主表面に対向して配置される触媒面を有する運動体を、前記特定部位特定工程によって特定された前記特定部位の位置に配置し、前記触媒面と前記特定部位との間に処理液を介在させた状態で、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程と、
を有し、
前記処理液は、純水、オゾン水、炭酸水又は水素水であることを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項2】
前記特定部位が、凸部もしくは凹部からなる欠陥、または、凸部および凹部からなるうねりであることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項3】
前記特定部位が、凸部または凹部からなる欠陥である場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記主表面における前記欠陥の存在密度を特定し、
前記局所加工工程は、前記存在密度の高い領域の前記特定部位に対して優先的に局所加工を施すことを特徴とする請求項記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項4】
前記特定部位が、凸部または凹部からなる欠陥である場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の高さまたは前記凹部の深さを特定し、
前記局所加工工程は、前記高さまたは深さに基づいて、前記局所加工の加工取り代を決定することを特徴とする請求項記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項5】
前記特定部位が、凸部および凹部からなるうねりである場合、
前記局所加工工程は、前記凸部に対して局所加工を施すことを特徴とする請求項記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項6】
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の幅と前記凹部の幅との合計の長さである前記うねりの一波長の長さを特定し、
前記局所加工工程は、前記うねりの一波長の長さより小さい径の前記触媒面を有する前記運動体を使用することを特徴とする請求項記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項7】
前記特定部位が、凸部および凹部からなるうねりである場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の高さと前記凹部の深さを特定し、
前記局所加工工程は、前記高さと前記深さの和に基づいて、前記局所加工の加工取り代を決定することを特徴とする請求項記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項8】
主表面が研磨されたマスクブランク用基板と、該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報とを準備する準備工程と、
前記表面形態情報の中から所定の基準値を超える前記主表面の特定部位を検出し、検出された前記特定部位の位置を前記位置情報によって特定する特定部位特定工程と、
前記マスクブランク用基板の前記主表面に対向して配置される触媒面を有する運動体を、前記特定部位特定工程によって特定された前記特定部位の位置に配置し、前記触媒面と前記特定部位との間に処理液を介在させた状態で、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程と、
を有し、
前記特定部位が、凸部もしくは凹部からなる欠陥、または、凸部および凹部からなるうねりであり、
前記特定部位が、凸部または凹部からなる欠陥である場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記主表面における前記欠陥の存在密度を特定し、
前記局所加工工程は、前記存在密度の高い領域の前記特定部位に対して優先的に局所加工を施すことを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項9】
主表面が研磨されたマスクブランク用基板と、該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報とを準備する準備工程と、
前記表面形態情報の中から所定の基準値を超える前記主表面の特定部位を検出し、検出された前記特定部位の位置を前記位置情報によって特定する特定部位特定工程と、
前記マスクブランク用基板の前記主表面に対向して配置される触媒面を有する運動体を、前記特定部位特定工程によって特定された前記特定部位の位置に配置し、前記触媒面と前記特定部位との間に処理液を介在させた状態で、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程と、
を有し、
前記特定部位が、凸部もしくは凹部からなる欠陥、または、凸部および凹部からなるうねりであり、
前記特定部位が、凸部または凹部からなる欠陥である場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の高さまたは前記凹部の深さを特定し、
前記局所加工工程は、前記高さまたは深さに基づいて、前記局所加工の加工取り代を決定することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項10】
主表面が研磨されたマスクブランク用基板と、該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報とを準備する準備工程と、
前記表面形態情報の中から所定の基準値を超える前記主表面の特定部位を検出し、検出された前記特定部位の位置を前記位置情報によって特定する特定部位特定工程と、
前記マスクブランク用基板の前記主表面に対向して配置される触媒面を有する運動体を、前記特定部位特定工程によって特定された前記特定部位の位置に配置し、前記触媒面と前記特定部位との間に処理液を介在させた状態で、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程と、
を有し、
前記特定部位が、凸部もしくは凹部からなる欠陥、または、凸部および凹部からなるうねりであり、
前記特定部位が、凸部および凹部からなるうねりである場合、
前記局所加工工程は、前記凸部に対して局所加工を施すことを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項11】
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の幅と前記凹部の幅との合計の長さである前記うねりの一波長の長さを特定し、
前記局所加工工程は、前記うねりの一波長の長さより小さい径の前記触媒面を有する前記運動体を使用することを特徴とする請求項10記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項12】
主表面が研磨されたマスクブランク用基板と、該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報とを準備する準備工程と、
前記表面形態情報の中から所定の基準値を超える前記主表面の特定部位を検出し、検出された前記特定部位の位置を前記位置情報によって特定する特定部位特定工程と、
前記マスクブランク用基板の前記主表面に対向して配置される触媒面を有する運動体を、前記特定部位特定工程によって特定された前記特定部位の位置に配置し、前記触媒面と前記特定部位との間に処理液を介在させた状態で、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程と、
を有し、
前記特定部位が、凸部もしくは凹部からなる欠陥、または、凸部および凹部からなるうねりであり、
前記特定部位が、凸部および凹部からなるうねりである場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の高さと前記凹部の深さを特定し、
前記局所加工工程は、前記高さと前記深さの和に基づいて、前記局所加工の加工取り代を決定することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項13】
前記準備工程は、主表面が研磨されたマスクブランク用基板の該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報を取得する表面情報取得工程によって、前記表面情報を準備することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項14】
前記局所加工工程は、前記触媒面を前記特定部位に接触又は接近させ、前記触媒面と前記特定部位とを相対運動させることにより、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施すことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項15】
前記触媒面は、前記マスクブランク用基板の前記主表面より小さい面積を有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項16】
前記触媒は、白金、金、遷移金属及びこれらのうちの少なくとも一つを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項17】
前記マスクブランク用基板は、ガラス材料からなることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法によって得られたマスクブランク用基板の主表面上に、多層反射膜を形成することを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項19】
請求項1乃至17のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法によって得られたマスクブランク用基板の主表面上、または、請求項18記載の多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板の多層反射膜上に、転写パターン用薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載のマスクブランクの製造方法によって得られたマスクブランクの転写パターン用薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク用基板の製造方法、このマスクブランク用基板を用いた多層反射膜付き基板の製造方法、このマスクブランク用基板または多層反射膜付き基板を用いたマスクブランクの製造方法、およびこのマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デザインルール1x世代(ハーフピッチ(hp)14nm、10nm等)で使用されるマスクブランクとして、ArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクおよび位相シフトマスクブランク、EUV露光用の反射型マスクブランク、並びにナノインプリント用マスクブランクがある。
【0003】
半導体デザインルール1x世代で使用されるこれらのマスクブランクでは、30nm級の欠陥が問題となる。このため、マスクブランクに使用されるマスクブランク用基板の主表面(すなわち、転写パターンを形成する側の表面)は、30nm級の欠陥(SEVDが18nm以上34nm以下の欠陥)が、0(ゼロ)または極力少ない方が好ましい。
【0004】
マスクブランク用基板の表面の加工方法が、特許文献1および2に記載されている。
特許文献1では、研磨剤を含む研磨液を凍結させた凍結体または超純水を凍結させた凍結体を、欠陥に対して接触および相対運動させることで、欠陥を局所的に加工し、欠陥を修正する。
特許文献2では、回転型小型加工ツールの研磨加工部を、研磨剤を介在させた状態でガラス基板表面に接触させ、研磨加工部を回転させながらガラス基板表面上を走査することで、ガラス基板表面を研磨し、平坦度を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4508779号公報
【特許文献2】特開2010−194705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された加工方法では、研磨剤を含む研磨液を凍結させた凍結体を用いる場合、加工後にマスクブランク用基板上に研磨剤が残る。研磨剤がマスクブランク用基板に残ると、加工後の洗浄時に、研磨剤がマスクとして働き、研磨剤が残っている部分の周囲のマスクブランク用基板がエッチングされる。これにより、マスクブランク用基板に高さの低い微小な欠陥が生じる可能性がある。平均粒径が30nm以下の研磨剤を使用することにより、30nm級の欠陥を生じないようにすることも考えられるが、その場合には加工速度が遅くなり、実用的ではない。また、研磨剤を用いて加工するため、ピット等の欠陥をマスクブランク用基板に新たに形成する場合がある。また、超純水を凍結させた凍結体を用いる場合、凍結体が溶けることによる凍結体の消耗が激しく、凍結体の頻繁な交換を必要とする。また、研磨剤を使用しないため、加工速度が遅く、実用的ではない。
【0007】
また、特許文献2に記載された加工方法では、加工後にマスクブランク用基板上に研磨剤が残る。このため、上述したように、マスクブランク用基板に高さの低い微小な欠陥が生じる可能性がある。平均粒径が30nm以下の研磨剤を使用することにより、30nm級の欠陥を生じないようにすることも考えられるが、その場合には加工速度が遅くなり、実用的ではない。また、研磨剤を用いて加工するため、ピット等の欠陥をマスクブランク用基板に新たに形成する場合がある。
【0008】
このため、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、半導体デザインルール1x世代で問題となる主表面上の超微小欠陥や、うねりを低減できる実用的なマスクブランク用基板の製造方法、このマスクブランク用基板を用いた多層反射膜付き基板の製造方法、このマスクブランク用基板または多層反射膜付き基板を用いたマスクブランクの製造方法、およびこのマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
(構成1)主表面が研磨されたマスクブランク用基板と、該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報とを準備する準備工程と、
前記表面形態情報の中から所定の基準値を超える前記主表面の特定部位を検出し、検出された前記特定部位の位置を前記位置情報によって特定する特定部位特定工程と、
前記マスクブランク用基板の前記主表面に対向して配置される触媒面を有する運動体を、前記特定部位特定工程によって特定された前記特定部位の位置に配置し、前記触媒面と前記特定部位との間に処理液を介在させた状態で、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程と、
を有することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【0011】
(構成2)前記準備工程は、主表面が研磨されたマスクブランク用基板の該主表面に対する表面形態情報と位置情報とを含む表面情報を取得する表面情報取得工程によって、前記表面情報を準備することを特徴とする構成1記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0012】
(構成3)前記局所加工工程は、前記触媒面を前記特定部位に接触又は接近させ、前記触媒面と前記特定部位とを相対運動させることにより、前記特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施すことを特徴とする構成1または2記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0013】
(構成4)前記触媒面は、前記マスクブランク用基板の前記主表面より小さい面積を有することを特徴とする構成1乃至3のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0014】
(構成5)前記特定部位が、凸部もしくは凹部からなる欠陥、または、凸部および凹部からなるうねりであることを特徴とする構成1乃至4のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0015】
(構成6)前記特定部位が、凸部または凹部からなる欠陥である場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記主表面における前記欠陥の存在密度を特定し、
前記局所加工工程は、前記存在密度の高い領域の前記特定部位に対して優先的に局所加工を施すことを特徴とする構成5記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0016】
(構成7)前記特定部位が、凸部または凹部からなる欠陥である場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の高さまたは前記凹部の深さを特定し、
前記局所加工工程は、前記高さまたは深さに基づいて、前記局所加工の加工取り代を決定することを特徴とする構成5記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0017】
(構成8)前記特定部位が、凸部および凹部からなるうねりである場合、
前記局所加工工程は、前記凸部に対して局所加工を施すことを特徴とする構成5記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0018】
(構成9)前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の幅と前記凹部の幅との合計の長さである前記うねりの一波長の長さを特定し、
前記局所加工工程は、前記うねりの一波長の長さより小さい径の前記触媒面を有する前記運動体を使用することを特徴とする構成8記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0019】
(構成10)前記特定部位が、凸部および凹部からなるうねりである場合、
前記特定部位特定工程は、さらに、前記凸部の高さと前記凹部の深さを特定し、
前記局所加工工程は、前記高さと前記深さの和に基づいて、前記局所加工の加工取り代を決定することを特徴とする構成5記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0020】
(構成11)前記触媒は、白金、金、遷移金属及びこれらのうちの少なくとも一つを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料からなることを特徴とする構成1乃至10のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0021】
(構成12)前記マスクブランク用基板は、ガラス材料からなることを特徴とする構成1乃至11のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0022】
(構成13)前記処理液は、前記マスクブランク用基板に対して常態では溶解性を示さない溶媒からなることを特徴とする構成1乃至12のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0023】
(構成14)前記処理液は、純水からなることを特徴とする構成13記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0024】
(構成15)構成1乃至14のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法によって得られたマスクブランク用基板の主表面上に、多層反射膜を形成することを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法。
【0025】
(構成16)構成1乃至14のいずれか一に記載のマスクブランク用基板の製造方法によって得られたマスクブランク用基板の主表面上、または、構成15記載の多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板の多層反射膜上に、転写パターン用薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0026】
(構成17)構成16に記載のマスクブランクの製造方法によって得られたマスクブランクの転写パターン用薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
上述したように、本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法によれば、表面形態情報の中から所定の基準値を超える主表面の特定部位を検出し、検出された主表面の特定部位の位置を位置情報によって特定し、特定された特定部位の位置に、処理液を介在させた状態で触媒面を配置し、その特定部位を触媒基準エッチングにより加工する。触媒基準エッチングによる加工では、触媒面上に吸着している処理液中の分子から生成した活性種と特定部位とが反応して、特定部位が加工される。活性種は触媒面上にのみ生成し、触媒面付近から離れると失活する。このため、所定の基準値を満たさない主表面の特定部位を局所的に加工することができる。また、所定の基準値を満たさない主表面の特定部位だけを局所的に加工するため、加工時間を短くすることができる。また、触媒基準エッチングによる加工では、研磨剤を用いないため、マスクブランク用基板に対するダメージが極めて少なく、新たな欠陥の生成を防止することができる。したがって、所定の基準値を満たすマスクブランク用基板を短時間で製造することができる。
【0028】
また、本発明に係る多層反射膜付き基板の製造方法によれば、上述したマスクブランク用基板の製造方法により得られたマスクブランク用基板を用いて多層反射膜付き基板を製造するので、基板要因による所定の基準値を満たさない部位の生成を防止することができ、所定の基準値を満たす多層反射膜付き基板を製造することができる。
【0029】
また、本発明に係るマスクブランクの製造方法によれば、上述したマスクブランク用基板の製造方法により得られたマスクブランク用基板または上述した多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板を用いてマスクブランクを製造するので、基板要因による所定の基準値を満たさない部位の生成を防止することができ、所定の基準値を満たすマスクブランクを製造することができる。
【0030】
また、本発明に係る転写用マスクの製造方法によれば、上述したマスクブランクの製造方法により得られたマスクブランクを用いて転写用マスクを製造するので、被転写体における転写パターン欠陥の発生を防止することができ、所定の基準値を満たす転写用マスクを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】マスクブランク用基板に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所的触媒基準エッチング加工装置の構成を示す部分断面図である。
図2】マスクブランク用基板に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所的触媒基準エッチング加工装置の構成を示す平面図である。
図3】本発明の実施例1における、マスクブランク用基板の主表面の局所加工前後における凸欠陥の状態を示す写真である。
図4】本発明の実施例1における、マスクブランク用基板の主表面の局所加工前後における凹欠陥の状態を示す写真である。
図5】本発明の実施例2における、マスクブランク用基板の主表面の局所加工前の欠陥検査結果を示す図である。
図6】本発明の実施例2における、マスクブランク用基板の主表面の局所加工後の欠陥検査結果を示す図である。
図7】本発明の実施例3における、マスクブランク用基板の主表面の局所加工前のうねりの状態を示す図である。
図8】本発明の実施例3における、マスクブランク用基板の主表面の局所加工後のうねりの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係るマスクブランク用基板の製造方法、このマスクブランク用基板を用いた多層反射膜付き基板の製造方法、このマスクブランク用基板または多層反射膜付き基板を用いたマスクブランクの製造方法、およびこのマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を詳細に説明する。
【0033】
実施の形態1.
実施の形態1では、マスクブランク用基板の製造方法を説明する。
【0034】
この実施の形態1では、マスクブランク用基板とマスクブランク用基板の主表面に対する表面情報とを準備する準備工程と、後工程の局所加工工程で局所加工を行う特定部位を検出し、その位置を特定する特定部位特定工程と、特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程とにより、マスクブランク用基板を製造する。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0035】
1.準備工程
マスクブランク用基板の製造方法では、先ず、主表面が研磨されたマスクブランク用基板と、この主表面に対する表面情報とを準備する準備工程を行う。尚、必要に応じて、マスクブランク用基板の主表面と反対側の裏面に対する表面情報を準備してもよい。その場合、主表面に対して行う準備工程、表面情報取得工程、特定部位特定工程、局所加工工程を裏面に対して行うことができる。
【0036】
この準備工程では、所定の平滑性、平坦性を有するように、以下のような加工方法を用いて主表面が研磨されたマスクブランク用基板を準備する。ただし、以下の加工方法はすべて行う必要はなく、所定の平滑性、平坦性を有するように、適宜選択して行う。
表面粗さを低減するための加工方法として、例えば、酸化セリウムやコロイダルシリカなどの研磨砥粒を用いたポリッシングやラッピングがある。
平坦度を改善するための加工方法として、例えば、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing:MRF)、局所化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)、ガスクラスターイオンビームエッチング(Gas Cluster Ion Beam etching:GCIB)、局所プラズマエッチングを用いたドライケミカル平坦化法(Dry Chemical Planarization:DCP)がある。
MRFは、磁性流体に研磨スラリーを混合させた磁性研磨スラリーを、被加工物(マスクブランク用基板)に高速で接触させるとともに、接触部分の滞留時間をコントロールすることにより、局所的に研磨を行う局所加工方法である。
CMPは、小径研磨パッド及びコロイダルシリカなどの研磨砥粒を含有する研磨スラリーを用い、小径研磨パッドと被加工物(マスクブランク用基板)との接触部分の滞留時間をコントロールすることにより、主に被加工物表面の凸部分を研磨加工する局所加工方法である。
GCIBは、常温常圧で気体の反応性物質(ソースガス)を、真空装置内に断熱膨張させつつ噴出させてガスクラスタイオンを生成し、これにより電子照射してイオン化させることにより生成したガスクラスタイオンを、高電界で加速してガスクラスターイオンビームとし、これを被加工物に照射してエッチング加工する局所加工方法である。
DCPは、局所的にプラズマエッチングし、凸度に応じてプラズマエッチング量をコントロールすることにより、局所的にドライエッチングを行う局所加工方法である。
上述した平坦度を改善するための加工方法によって損なわれた表面粗さを改善するために、平坦度を極力維持しつつ、表面粗さを改善する加工方法として、例えば、フロートポリッシング、EEM(Elastic Emission Machining)、ハイドロプレーンポリッシングがある。
【0037】
準備したマスクブランク用基板は、主表面に対する表面情報を既に取得済みのものであっても、主表面に対する表面情報を未取得のものであってもよい。主表面に対する表面情報を既に取得済みのものである場合には、取得済みの表面情報を準備する。主表面に対する表面情報を未取得のものである場合には、この主表面に対する表面情報を取得する表面情報取得工程によって、表面情報を準備する。
【0038】
表面情報は、ArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクおよび位相シフトマスクブランクに使用されるマスクブランク用基板では、マスクブランク用基板が6025サイズ(152mm×152mm×6.35mm)の場合、基板の周縁領域を除外した少なくとも132mm×132mmの領域で取得し、EUV露光用の反射型マスクブランクに使用されるマスクブランク用基板でも、マスクブランク用基板が6025サイズの場合、基板の周縁領域を除外した少なくとも132mm×132mmの領域で取得する。
【0039】
表面情報には、表面形態情報と位置情報とが含まれる。
表面形態情報は、半導体デザインルールにおける各世代で要求される表面品質(例えば、欠陥、うねりを含む平坦度等)を満たす上で必要な情報を取得・準備する。そして、その表面形態情報は、現存する測定装置や検査装置の検出感度や測定精度等に応じて設定し、取得した情報とすることができる。例えば、30nm級の欠陥を含むSEVDが23nm以上の欠陥や一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりを検出できる情報とすることができる。30nm級の欠陥を含むSEVDが23nm以上の欠陥を検出できる情報として、例えば、主表面に対してレーザーをスキャンさせたときに得られる信号強度情報がある。また、一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりを検出できる情報として、例えば、主表面上の多数の地点(例えば、1024×1024の地点)における、ある基準面からの高さ情報である。
位置情報は、マスクブランク用基板の主表面上での位置が特定できる情報であればよい。例えば、ある点を基準とした座標情報である。
表面形態情報が主表面に対してレーザーをスキャンさせたときに得られる信号強度情報であり、位置情報がその信号強度情報が得られた地点における座標情報であれば、表面情報は、主表面に対してレーザーをスキャンさせたときに得られる信号強度情報とその信号強度情報が得られた地点における座標情報との集合である。この場合、その表面情報をコンピュータなどに保存し、その表面情報に基づいて、信号強度が所定のしきい値を超えた箇所をモニターなどの表示装置に出力することができる(図5,6を参照)。
表面形態情報が主表面上の多数の地点における高さ情報であり、位置情報がその多数の地点における座標情報であれば、表面情報は、主表面上の多数の地点における高さ情報と座標情報との集合である。この場合、その表面情報をコンピュータなどに保存し、その表面情報に基づいた主表面の凹凸形状を、モニターなどの表示装置に出力することができる(図7,8を参照)。
【0040】
表面情報取得工程は、以下のような装置を用いて行う。この装置を用いることにより、マスクブランク用基板の主表面に対する表面情報を容易に取得することができる。
【0041】
欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ、レーザーテック社製 MAGICS M7360)。欠陥検査装置により、30nm級の、すなわちSEVDが23nm以上の凸部からなる凸欠陥(バンプ、パーティクルなど)および凹部からなる凹欠陥(キズ、ピットなど)を検出することができる。また、欠陥検査装置により、凸欠陥であるか凹欠陥であるかの区別、凸欠陥および凹欠陥のサイズ、凸欠陥および凹欠陥の位置がわかる。
原子間力顕微鏡(AFM)。原子間力顕微鏡により、30nm級の、すなわちSEVDが23nm以上の凸部からなる凸欠陥(バンプ、パーティクルなど)および凹部からなる凹欠陥(キズ、ピットなど)を検出することができる。また、原子間力顕微鏡により、凸欠陥であるか凹欠陥であるかの区別、凸欠陥および凹欠陥の種類、凸欠陥および凹欠陥のサイズ、凸欠陥および凹欠陥の位置がわかる。
平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)。平坦度測定装置により、一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりを検出することができる。
非接触表面形状測定装置(Zygo社製 Newview6300)。非接触表面形状測定装置により、一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりを検出することができる。
【0042】
6025サイズのマスクブランク用基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域全体の表面情報を取得する場合には、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ、レーザーテック社製 MAGICS M7360)および平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)が好ましい。
【0043】
マスクブランク用基板の材料は、特に制限されない。例えば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、SiO−TiO系ガラス等のガラスや、ガラスセラミックスを使用することができる。その他、シリコンや金属なども使用することができる。ただし、透過型マスクブランクに使用する基板材料は、使用する露光波長に対して透光性を有する材料である必要がある。例えば、ArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクおよび位相シフトマスクブランクに使用する基板材料は、合成石英ガラスが好ましい。また、反射型マスクブランクに使用する基板材料は、低熱膨張性を有する材料である必要がある。例えば、EUV露光用の反射型マスクブランクに使用する基板材料は、SiO−TiO系ガラスが好ましい。
【0044】
2.特定部位特定工程
次に、表面形態情報の中から所定の基準値を超える主表面の特定部位を検出し、検出された特定部位の位置を位置情報によって特定する特定部位特定工程を行う。
【0045】
マスクブランク用基板の主表面が満たすべき基準値は、半導体デザインルール1x世代で要求される表面品質と、現存する測定装置や検査装置の検出感度や検出精度を考慮し、例えば、以下の通りとすることができる。
(1)欠陥の基準値
EUV露光用の反射型マスクブランクに使用されるマスクブランク用基板の場合、6025サイズの基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域について、SEVDが23nm以上の欠陥数30個以下。
なお、欠陥は、バンプ、パーティクルなどの凸部からなる凸欠陥や、キズ、ピットなどの凹部からなる凹欠陥である。SEVDは、欠陥を半球状のものと仮定したときの直径の長さである。
(2)脈理に起因するうねりの基準値
EUV露光用の反射型マスクブランクに使用されるマスクブランク用基板の場合、6025サイズの基板の周縁領域を除外した少なくとも132mm×132mmの領域について、一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりの基準面に対する凸部の最大高さと凹部の最大深さの和(以下、PV値という)が5nm以下。
なお、脈理に起因するうねりは、凸部および凹部が波打つように繰り返されるものである。脈理に起因するうねりの一波長は、一組の凸部および凹部における凸部の幅と凹部の幅との合計の長さである。
【0046】
後述する局所加工工程において、上述した欠陥の基準値を満たすように触媒基準エッチングによる局所加工を行う場合(すなわち、特定部位が欠陥である場合)、この特定部位特定工程では、先ず、マスクブランク用基板の表面形態情報から、30nm級の欠陥を含むSEVDが23nm以上の欠陥を検出する。そして、欠陥の存在密度を特定する。そして、欠陥の基準値を満たすためには、どの欠陥を修正(除去)すればよいかを決める。その際、欠陥の存在密度が相対的に高い領域の欠陥を、優先的に、修正(除去)する欠陥に決める。その後、マスクブランク用基板の位置情報から修正(除去)する欠陥の位置を特定する。
例えば、表面情報が、主表面に対してレーザーをスキャンさせたときに得られる信号強度情報とその信号強度情報が得られた地点における座標情報との集合である場合、その表面情報に基づいて、信号強度が23nm以上の欠陥と認められるしきい値を超えた箇所をモニターなどの表示装置に表示する(図5,6を参照)。そして、モニターなどの表示を参照して、欠陥の存在密度を決める。そして、欠陥の基準値を満たすためには、どの欠陥を修正(除去)すればよいかを決める。その際、欠陥の存在密度が相対的に高い領域の欠陥を、優先的に、修正(除去)する欠陥に決める。その後、マスクブランク用基板の位置情報から修正(除去)する欠陥の位置を特定する。
欠陥の存在密度は、モニターなどの表示を参照して決めるだけでなく、主表面を複数の領域に分割し、各領域内の欠陥の個数を数えることにより、決めることもできる。
【0047】
また、後述する局所加工工程において、上述した脈理に起因するうねりの基準値を満たすように触媒基準エッチングによる局所加工を行う場合(すなわち、特定部位が脈理に起因するうねりである場合)、この特定部位特定工程では、先ず、マスクブランク用基板の表面形態情報から、PV値が5nmより大きい一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりを検出する。その後、マスクブランク用基板の位置情報からそのうねりの凸部の位置を特定する。
例えば、表面情報が、主表面の多数の地点における高さ情報と座標情報との集合である場合、その表面情報に基づいた主表面の凹凸形状をモニターなどの表示装置に表示する(図7,8を参照)。そして、モニターなどの表示を参照して、PV値が5nmより大きい一波長1〜20mmのうねりを検出する。その後、マスクブランク用基板の位置情報からそのうねりの凸部の位置を特定する。
【0048】
また、この特定部位特定工程では、特定部位が欠陥である場合、さらに、凸欠陥の高さまたは凹欠陥の深さを特定してもよい。この場合、先ず、マスクブランク用基板の表面形態情報から、30nm級の欠陥を含むSEVDが23nm以上の欠陥を検出する。そして、欠陥の基準値を満たすためには、どの欠陥を修正(除去)すればよいかを決める。その後、マスクブランク用基板の位置情報から修正(除去)する欠陥の位置を特定し、マスクブランク用基板の表面形態情報から修正(除去)する凸欠陥の高さまたは凹欠陥の深さを特定する。
【0049】
また、特定部位が脈理に起因するうねりである場合、さらに、うねりの一波長の長さを特定してもよい。この場合、先ず、マスクブランク用基板の表面形態情報から、PV値が5nmより大きい一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりを検出する。その後、マスクブランク用基板の位置情報からそのうねりの凸部の位置を特定し、マスクブランク用基板の表面形態情報および位置情報からそのうねりの一波長の長さを特定する。
【0050】
また、特定部位が脈理に起因するうねりである場合、さらに、基準面に対するうねりの凸部の高さと凹部の深さの和を特定してもよい。この場合、先ず、マスクブランク用基板の表面形態情報から、PV値が5nmより大きい一波長1〜20mmの脈理に起因するうねりを検出する。その後、マスクブランク用基板の位置情報からそのうねりの凸部の位置を特定し、マスクブランク用基板の表面形態情報から基準面に対するそのうねりの凸部の高さと凹部の深さの和を特定する。
【0051】
3.局所加工工程
次に、マスクブランク用基板の主表面に対向して配置される触媒面を有する運動体を、特定部位特定工程によって特定された特定部位の位置に配置し、触媒面と特定部位との間に処理液を介在させた状態で、特定部位に対して触媒基準エッチング(Catalyst-Referred Etching:CARE)による局所加工を施す局所加工工程を行う。
【0052】
この局所加工工程では、先ず、触媒面を有する運動体を、触媒面がマスクブランク用基板の主表面に対向して配置された状態で、上述した特定部位特定工程によって特定された特定部位の位置に配置する。そして、触媒面と特定部位との間に処理液を供給し、触媒面と特定部位との間に処理液を介在させた状態で、運動体の触媒面を、その特定部位に接触又は接近させ、マスクブランク用基板に所定の荷重(加工圧)を加えながら、触媒面と特定部位とを相対運動させる。触媒面と特定部位との間に処理液を介在させた状態で、触媒面と特定部位とを相対運動させると、触媒面上に吸着している処理液中の分子から生成した活性種と特定部位が反応して、特定部位が加工される。活性種は触媒面上にのみ生成し、触媒面付近から離れると失活することから、触媒面が接触又は接近する特定部位以外ではほとんど活性種との反応が起こらない。このようにして、特定部位に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す。特定部位が複数個所ある場合、すべての特定部位に対して、同様に、触媒基準エッチングによる局所加工を施す。これにより、特定部位を修正(除去)し、基準値を満たすマスクブランク用基板を得ることができる。
【0053】
特定部位が欠陥である場合、欠陥の存在密度の相対的に高い領域の欠陥に対して優先的に局所加工を施す。これにより、欠陥を効率的に修正(除去)することができる。
特定部位が脈理に起因するうねりである場合、うねりの凸部に対して局所加工を施す。これにより、脈理に起因するうねりを効率的に修正(除去)することができる。
【0054】
触媒面と特定部位との相対運動は、触媒面と特定部位とが相対的に移動する運動であれば、特に制限されない。マスクブランク用基板を固定し運動体を移動する場合、運動体を固定しマスクブランク用基板を移動する場合、運動体とマスクブランク用基板の両方を移動する場合のいずれであってもよい。運動体が移動する場合、その運動は、マスクブランク用基板の主表面に垂直な方向の軸を中心として回転する場合や、マスクブランク用基板の主表面と平行な方向に往復運動する場合などである。同様に、マスクブランク用基板が移動する場合、その運動は、マスクブランク用基板の主表面に垂直な方向の軸を中心として回転する場合や、マスクブランク用基板の主表面と平行な方向に往復運動する場合などである。
【0055】
マスクブランク用基板に加える荷重(加工圧)は、例えば、1〜200hPaである。
【0056】
触媒面を形成する触媒は、活性種を生成できるものであれば、特に制限されない。例えば、水素を酸化し、水素イオンと原子とを取り出す反応を促進する白金、金、遷移金属(例えば、モリブデン、鉄、銀、銅)、及びこれらのうちの少なくとも一つを含む合金(例えば、ステンレス鋼(SUS))からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料を使用することができる。また、セラミックス系固体触媒を使用することもできる。
【0057】
処理液は、マスクブランク用基板に対して常態では溶解性を示さない溶媒であれば、特に制限されない。このような処理液を使用することにより、マスクブランク用基板が処理液によって溶解せず、不必要なマスクブランク用基板の変形を防止することができる。例えば、純水、オゾン水、炭酸水、水素水を使用することができる。また、マスクブランク用基板が、常態ではハロゲンを含む分子が溶けた処理液によって溶解しない場合には、ハロゲンを含む分子が溶けた処理液を使用することもできる。ここで、ハロゲンを含む分子としては、ハロゲン化水素が好ましいが、C−F、S−F、N−F、C−Cl、S−Cl、N−Cl等の結合を有する分子を用いることもできる。ハロゲンとしては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられるが、化学的な反応は原子番号が大きくなるにしたがって小さくなるので、処理液として実際に使用できるのは、フッ化水素酸(HF水溶液)である。しかし、フッ化水素酸(HF水溶液)ではガラス中のSiO成分を溶解させてしまい、塩酸(HCl水溶液)では、低熱膨張性を有するSiO−TiO系ガラスに含まれるTiを選択的に溶出させてしまう。これらの要因や加工時間を考慮し、適切な濃度に調整したハロゲン化水素酸を用いることが好ましい。
【0058】
マスクブランク用基板がガラス材料からなる場合、触媒として白金を使用し、処理液として純水を使用することにより、触媒基準エッチングによる局所加工を行うことができる。触媒として白金を使用し、処理液として純水を使用することにより、加水分解反応が進行すると考えられる。このため、マスクブランク用基板がガラス材料からなる場合、コストや加工特性の観点から、触媒として白金を使用し、処理液として純水を使用することが好ましい。
【0059】
運動体は、触媒面が形成される触媒定盤を備えている。触媒面が形成される触媒定盤の部分の材料は、特に制限されない。例えば、ゴム、光透過性の樹脂、発泡性の樹脂、不織布を使用することができる。触媒面は、マスクブランク用基板の主表面と対向する触媒定盤の表面に触媒をコーティングすることにより形成される。
触媒定盤の全体形状は、特に制限されない。例えば、円盤、球、円柱、円錐、角錐の外形のものを使用することができる。触媒面が形成される触媒定盤の部分の表面形状も、特に制限されない。例えば、平面、半球、丸みを帯びた形状のものを使用することができる。
【0060】
触媒定盤に形成される触媒面は、マスクブランク用基板の主表面の表面情報を取得する領域より小さい面積を有している。これにより、特定部位を局所的に加工しやすくなる。また、大型の触媒面の場合に生じ得る撓みやへたり等を抑制することができる。例えば、触媒面の面積は、特定部位が欠陥である場合、1mm〜1000mmであり、特定部位が脈理に起因するうねりである場合、例えば、1mm〜30mmである。
【0061】
特定部位が脈理に起因するうねりである場合、上述した特定部位特定工程においてうねりの一波長の長さを特定し、うねりの一波長の長さより小さい径の触媒面を有する運動体を使用することが好ましい。これにより、脈理に起因するうねりを局所的に加工しやすくなる。ここで、径とは、触媒面の長さが最大となる箇所を意味し、例えば、触媒面が円形の場合には直径であり、触媒面が長方形の場合には対角線である。
【0062】
触媒基準エッチングによる局所加工における加工取り代は、例えば、0.5nm〜50nmである。
特定部位が欠陥である場合、上述した特定部位特定工程において凸欠陥の高さまたは凹欠陥の深さを特定し、凸欠陥の高さまたは凹欠陥の深さに基づいて、局所加工における加工取り代を決定することが好ましい。これにより、凸欠陥または凹欠陥を確実に修正(除去)することができる。
特定部位が、脈理に起因するうねりである場合、上述した特定部位特定工程において基準面に対するうねりの凸部の高さと凹部の深さの和を特定し、基準面に対するうねりの凸部の高さと凹部の深さの和に基づいて、局所加工における加工取り代を決定することが好ましい。これにより、脈理に起因するうねりを確実に修正(除去)することができる。
【0063】
図1および図2はマスクブランク用基板に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所的触媒基準エッチング加工装置の一例を示す。図1は局所的触媒基準エッチング加工装置の部分断面図であり、図2は局所的触媒基準エッチング加工装置の平面図である。
【0064】
局所的触媒基準エッチング加工装置1は、円筒形のチャンバー2と、チャンバー2内に配置され、マスクブランク用基板Mを支持する基板支持手段3と、マスクブランク用基板Mに対向して配置される運動体4と、運動体4を所定の位置に移動させる運動体移動手段5と、マスクブランク用基板Mの主表面M1上に処理液を供給する処理液供給手段6とを備えている。
【0065】
チャンバー2は、後述する基板支持手段3の軸部33をチャンバー2内に配置するために、チャンバー2の底部23の中央に形成された開口部21と、処理液供給手段6から供給された処理液を排出するために、チャンバー2の底部23の、開口部21より外周寄りに形成された排出口22とを備えている。図1では、排出口22から処理液が排出される様子が矢印で示されている。
基板支持手段3は、マスクブランク用基板Mを支える支持部31と、支持部31を固定する平面部32と、平面部32を支え、開口部21を通ってチャンバー2の外部まで延在する軸部33とを備えている。支持部31は、局所的触媒基準エッチング加工装置1を上から見たとき、矩形状であり、マスクブランク用基板Mの裏面M2周縁の四辺を支える収容部31aを備えている。平面部32は、局所的触媒基準エッチング加工装置1を上から見たとき、円形状である。軸部33は、支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mの主表面M1と垂直な方向に延在し、駆動手段(図示せず)により、支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mの主表面M1と垂直な方向の軸を回転中心として回転することができる(図1中の矢印Aを参照)。軸部33の回転中心の延長方向に、平面部32の中心と支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mの中心とが位置する。軸部33が回転することにより、軸部33に支えられている平面部32がその中心を回転中心として回転し、さらに、平面部32に固定されている支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mがその中心を回転中心として回転する。
運動体4は、触媒定盤41と、触媒定盤41を取り付ける触媒定盤取付部42とを備えている。触媒定盤41は、定盤本体と、定盤本体を覆うように定盤本体の表面全面に形成される被覆部材と、マスクブランク用基板と対向する側の被覆部材の表面全面にコーティングにより形成される触媒面とから構成される。触媒定盤取付部42には、触媒定盤41に荷重を加えるエアシリンダ42aと、エアシリンダ42aにより触媒定盤41に加えられる荷重を測定し、所定の荷重を超えないようにエアバルブをオン・オフして、エアシリンダ42aによって触媒定盤41に加えられる荷重を制御するロードセル42bとが設けられている。触媒基準エッチングによる局所加工を行うとき、エアシリンダ42aによって触媒定盤41に加えられる荷重(加工圧)が、マスクブランク用基板Mにかかる。運動体4は、後述する運動体移動手段5のアーム部51に設けられた駆動手段(図示せず)により、支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mの主表面M1と垂直な軸を回転中心として回転することができる(図1,2中の矢印Bを参照)。
【0066】
運動体移動手段5は、運動体4の上端に接続され、チャンバー2の周囲まで、支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mの主表面M1と平行な方向に延びるアーム部51と、アーム部51のチャンバー2の周囲まで延びた端部を支え、支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mの主表面M1と垂直な方向に延びる軸部52と、軸部52の下端を支持する土台部53と、チャンバー2の周囲に配置され、土台部53の移動経路を定めるガイド54とを備えている。アーム部51は、その長手方向に移動することができる(図1,2中の両矢印Cを参照)。軸部52は、その長手方向に移動することにより、アーム部51を上下動させることができる(図1中の両矢印Dを参照)。土台部53は、支持部31に載置されたマスクブランク用基板Mの主表面M1と垂直な方向の軸を回転中心として所定の角度だけ回転することにより、アーム部51を旋回させることができる(図1,2中の両矢印Eを参照)。ガイド54は、支持部31に載置されるマスクブランク用基板Mの隣り合う二辺と平行な方向(第1の方向と第2の方向)に配置され、土台部53のL字形の移動経路を形成する。土台部53は、第1の方向のガイド54に沿って移動することにより、アーム部51を第1の方向に移動させ(図2中の両矢印Fを参照)、第2の方向のガイド54に沿って移動することにより、アーム部51を第2の方向に移動させることができる(図2中の両矢印Gを参照)。このようなアーム部51の移動により、支持部31に載置されたマスクブランク用基板Mの主表面M1の所定の位置に触媒定盤41を配置することができる。
【0067】
処理液供給手段6は、触媒定盤41の中央に形成された処理液供給孔(図示せず)と、触媒定盤取付部42内に配置され、処理液供給孔に処理液を供給する処理液供給ノズル61と、アーム部51内に配置され、処理液供給ノズル61に処理液を供給する配管(図示せず)とを備えている。処理液は、アーム部51内の配管を通って触媒定盤取付部42内の処理液供給ノズル61に供給され、触媒定盤41の中央に形成された処理液供給孔からマスクブランク用基板Mの主表面M1上に供給される。なお、処理液の供給方法としては、これに限定されるものではなく、運動体4の外部に処理液を供給する処理液供給ノズルを設けて処理液を供給してもよい。
【0068】
加工取り代を設定どおりに確保するための制御方法としては、例えば、予め別に用意したマスクブランク用基板Mに対して、種々の局所加工条件(加工圧力、回転数(触媒定盤)、処理液の流量)、加工時間と加工取り代との関係を求めておき、所望の加工取り代となる局所加工条件と加工時間を決定し、上記加工時間を管理することで、加工取り代を制御することができる。これに限定されるものではなく、加工取り代を設定どおりに確保できる方法であれば、種々の方法を選択してもよい。
【0069】
図1および図2に示す局所的触媒基準エッチング加工装置を用いて、触媒基準エッチングによる局所加工を行う場合、先ず、マスクブランク用基板Mを、主表面M1を上側に向けて支持部31に載置して固定する。
その後、アーム部51の長手方向移動(両矢印C)、アーム部51の旋回移動(両矢印E)、アーム部51の第1方向移動(両矢印F)、アーム部51の第2方向移動(両矢印G)により、触媒定盤41の触媒面がマスクブランク用基板Mの主表面M1に対向して配置された状態で、特定部位特定工程によって特定された特定部位の位置に触媒定盤41を配置する。
その後、運動体4を所定の回転速度で回転させながら、触媒定盤41の中央に形成された処理液供給孔からマスクブランク用基板Mの主表面M1上に処理液を供給し、マスクブランク用基板Mの主表面M1と触媒面との間に処理液を介在させる。その状態で、触媒定盤41の触媒面を、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、マスクブランク用基板Mの主表面M1に接触又は接近させる。その際、触媒定盤41に加えられる荷重が所定の値に制御され、マスクブランク用基板Mには、所定の荷重(加工圧)がかかる。
その後、所定の加工取り代になった時点で、運動体4の回転および処理液の供給を止める。そして、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、触媒定盤41を、マスクブランク用基板Mの主表面M1から所定の距離だけ離す。
その後、特定部位特定工程によって特定された他の特定部位の位置に触媒定盤41を配置し、同様の処理を行う。
特定部位特定工程によって検出された、すべての特定部位に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を行った後、支持部31からマスクブランク用基板Mを取り外す。
【0070】
このような準備工程と、特定部位特定工程と、局所加工工程とにより、マスクブランク用基板Mが製造される。
【0071】
この実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法によれば、表面形態情報の中から所定の基準値を超える主表面M1の特定部位を検出し、検出された主表面M1の特定部位の位置を位置情報によって特定し、特定された特定部位の位置に、処理液を介在させた状態で触媒面を配置し、その特定部位を触媒基準エッチングにより加工する。触媒基準エッチングによる加工では、触媒面上に吸着している処理液中の分子から生成した活性種と特定部位とが反応して、特定部位が加工される。活性種は触媒面上にのみ生成し、触媒面付近から離れると失活する。このため、所定の基準値を満たさない主表面M1の特定部位を局所的に加工することができ、30nm級の欠陥を含むSEVDが23nm以上の欠陥やPV値が5nmより大きい一波長1〜20nmの脈理に起因するうねりを局所的に修正(除去)することができる。また、所定の基準値を満たさない主表面M1の特定部位だけを局所的に加工するため、加工時間を短くすることができる。また、触媒基準エッチングによる加工では、研磨剤を用いないため、マスクブランク用基板Mに対するダメージが極めて少なく、新たな欠陥の生成を防止することができる。したがって、所定の基準値を満たすマスクブランク用基板を短時間で製造することができる。
【0072】
また、この実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法によれば、特定部位が欠陥である場合、超微小欠陥が低減された高品質の主表面を有するマスクブランク用基板Mを製造することができ、特定部位が脈理に起因するうねりである場合、極限まで脈理に起因するうねりが低減された高平坦度の主表面を有するマスクブランク用基板Mを製造することができる。
【0073】
また、この実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法では、欠陥の修正(除去)と脈理に起因するうねりの修正(除去)とを単独で行う場合だけでなく、先に、脈理に起因するうねりの修正(除去)を行い、その後に、欠陥の修正(除去)を行ってもよい。
【0074】
また、この実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法では、触媒基準エッチングを用いて主表面M1が研磨されたマスクブランク用基板Mに対して、欠陥の修正(除去)と脈理に起因するうねりの修正(除去)を行ってもよい。
【0075】
なお、この実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法で説明した方法により製造したマスクブランク用基板Mは、バイナリーマスクブランク、位相シフトマスクブランク、ナノインプリント用マスクブランクの製造に使用することができる。バイナリーマスクランクは、MoSi系、Ta系、Cr系のいずれであってもよい。位相シフトマスクブランクは、ハーフトーン型位相シフトマスクブランク、レベンソン型位相シフトマスクブランク、クロムレス型位相シフトマスクブランクのいずれであってもよい。
【0076】
実施の形態2.
実施の形態2では、多層反射膜付き基板の製造方法を説明する。
【0077】
この実施の形態2では、実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法で説明した方法により製造したマスクブランク用基板Mの主表面M1上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を形成し、多層反射膜付き基板を製造するか、さらに、この多層反射膜上に保護膜を形成して、多層反射膜付き基板を製造する。
作製された多層反射膜付き基板の多層反射膜表面又は保護膜表面については、マスクブランク用基板と同様に、表面情報を取得する。表面情報には、表面形態情報と位置情報とが含まれる。表面情報の取得は、以下のような装置を用いて行う。この装置を用いることにより、多層反射膜付き基板の多層反射膜表面や保護膜表面に対する表面情報を容易に取得することができる。
欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ、レーザーテック社製 MAGICS M7360)。欠陥検査装置により、30nm級の、すなわちSEVDが23nm以上の凸部からなる凸欠陥(パーティクル、バンプ等)および凹部からなる凹欠陥(ピット等)を検出することができる。また、欠陥検査装置により、凸欠陥であるか凹欠陥であるかの区別、凸欠陥および凹欠陥のサイズ、凸欠陥および凹欠陥の位置がわかる。
多層反射膜付き基板の多層反射膜表面又は保護膜表面が満たすべき欠陥の基準値は、例えば、以下の通りとする。
6025サイズの基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域について、SEVDが23nm以上の欠陥数30個以下。
次に、表面情報と多層反射膜表面又は保護膜表面の欠陥の基準値とを比較し、基準値を満たす場合、後述する実施の形態3で説明する反射型マスクブランクの製造を行う。基準値を満たさない場合には、公知の欠陥修復方法により欠陥部分を修復するか、若しくは、多層反射膜、保護膜を剥離し、上述の実施の形態1の準備工程から行う。
【0078】
この実施の形態2による多層反射膜付き基板の製造方法によれば、実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法により得られたマスクブランク用基板Mを用いて多層反射膜付き基板を製造するので、基板要因による所定の基準値を満たさない部位の生成を防止することができ、所定の基準値を満たす多層反射膜付き基板を製造することができる。
【0079】
なお、この実施の形態2の多層反射膜付き基板の製造方法で説明した方法により製造した多層反射膜付き基板は、反射型マスクブランクの製造に使用することができる。
【0080】
実施の形態3.
実施の形態3では、マスクブランクの製造方法を説明する。
【0081】
この実施の形態3では、実施の形態2の多層反射膜付き基板の製造方法で説明した方法により製造した多層反射膜付き基板の保護膜上に転写パターン用薄膜としての吸収体膜を形成し、または多層反射膜付き基板の多層反射膜上に保護膜および転写パターン用薄膜としての吸収体膜を形成し、さらに多層反射膜を形成していない裏面に裏面導電膜を形成して、反射型マスクブランクを製造する。
【0082】
また、この実施の形態3では、実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法で説明した方法により製造したマスクブランク用基板Mの主表面M1上に、転写パターン用薄膜としての遮光膜を形成してバイナリーフォトマスクブランクを製造し、または転写パターン用薄膜としてのハーフトーン膜を形成してハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造し、または転写パターン用薄膜としてハーフトーン膜、遮光膜を順次形成してハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造する。これらのバイナリーフォトマスクブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクブランクは、透過型マスクブランクである。
【0083】
作製されたマスクブランクについては、マスクブランク用基板と同様に、表面情報を取得してもよい。表面情報には、表面形態情報と位置情報とが含まれる。表面情報の取得は、以下のような装置を用いて行う。この装置を用いることにより、マスクブランク表面に対する表面情報を容易に取得することができる。
欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ、レーザーテック社製 MAGICS M7360)。欠陥検査装置により、30nm級の、すなわちSEVDが23nm以上の凸部からなる凸欠陥(パーティクル、バンプ等)および凹部からなる凹欠陥(ピンホール、ハーフピンホール、ピット等)を検出することができる。また、欠陥検査装置により、凸欠陥であるか凹欠陥であるかの区別、凸欠陥および凹欠陥のサイズ、凸欠陥および凹欠陥の位置がわかる。
マスクブランク表面が満たすべき基準値は、適宜、設定することができる。
【0084】
この実施の形態3によれば、実施の形態1のマスクブランク用基板の製造方法により得られたマスクブランク用基板Mまたは実施の形態2の多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板を用いてマスクブランクを製造するので、基板要因による所定の基準値を満たさない部位の生成を防止することができ、所定の基準値を満たすマスクブランクを製造することができる。
【0085】
実施の形態4.
実施の形態4では、転写用マスクの製造方法を説明する。
【0086】
この実施の形態4では、実施の形態3のマスクブランクの製造方法で説明した方法により製造した反射型マスクブランクまたは透過型マスクブランクの転写パターン用薄膜上に、露光・現像処理を行ってレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして転写パターン用薄膜をエッチング処理して、転写パターンを形成して転写用マスクを製造する。
【0087】
この実施の形態4によれば、実施の形態3のマスクブランクの製造方法により得られたマスクブランクを用いて転写用マスクを製造するので、被転写体における転写パターン欠陥の発生を防止することができ、所定の基準値を満たす転写用マスクを製造することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
【0089】
実施例1.
A.マスクブランク用ガラス基板の製造
1.基板準備工程
先ず、6025サイズ(152mm×152mm×6.35mm)のTiO−SiOガラス基板に対して、以下の粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程を行った。
【0090】
(1)粗研磨加工工程
端面面取加工および研削加工を終えたガラス基板を両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で粗研磨を行った。10枚セットを5回行い合計50枚のガラス基板の粗研磨を行った。なお、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:酸化セリウム(平均粒径2〜3μm)を含有する水溶液
研磨パッド:硬質ポリシャ(ウレタンパッド)
粗研磨後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0091】
(2)精密研磨加工工程
粗研磨を終えたガラス基板を両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で精密研磨を行った。10枚セットを5回行い合計50枚のガラス基板の精密研磨を行った。なお、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:酸化セリウム(平均粒径1μm)を含有する水溶液
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
精密研磨後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0092】
(3)超精密研磨加工工程
精密研磨を終えたガラス基板を再び両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で超精密研磨を行った。10枚セットを5回行い合計50枚のガラス基板の超精密研磨を行った。なお、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:コロイダルシリカを含有するアルカリ性水溶液(pH10.2)
(コロイダルシリカ含有量50wt%)
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
超精密研磨後、ガラス基板を水酸化ナトリウムのアルカリ洗浄液が入った洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0093】
2.表面情報取得工程
次に、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程後のガラス基板の主表面に対する表面情報を取得する表面情報取得工程を行った。
【0094】
この表面情報取得工程は、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、ガラス基板の主表面を欠陥検査することにより行った。欠陥検査は、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
【0095】
3.特定部位特定工程
次に、表面情報取得工程後のガラス基板に対して、後工程の局所加工工程で局所加工を行う欠陥の位置を特定する特定部位特定工程を行った。なお、局所加工を行う欠陥については、原子間力顕微鏡(AFM)により欠陥状態を測定した。
【0096】
この特定部位特定工程は、欠陥検査結果を参照して、上述した欠陥の基準値(132mm×132mmの領域について、SEVDが23nm以上の欠陥数30個以下)を満たすためには、どの欠陥を修正(除去)すればよいかを決め、修正(除去)する欠陥の位置を特定することにより行った。
【0097】
4.局所加工工程
次に、図1および図2に示す局所的触媒基準エッチング加工装置を用いて、特定部位特定工程で修正(除去)することに決めた欠陥に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程を行った。
【0098】
この実施例では、ステンレス鋼(SUS)製の直径35mmの円盤形状の定盤本体と、定盤本体を覆うように定盤本体の表面全面に形成されるフッ素ゴム(バイトン(登録商標))と、マスクブランク用基板と対向する側のフッ素ゴムの表面全面にコーティングにより形成される触媒面とから構成される触媒定盤41を使用した。
加工条件は以下の通りである。
触媒:白金
処理液:純水
基板支持手段3の回転数(ガラス基板の回転数):0回転/分
運動体4の回転数(触媒定盤41の回転数):10回転/分
加工圧:150hPa
加工取り代:10nm
【0099】
先ず、ガラス基板を、主表面を上側に向けて支持部31に載置して固定した。
その後、アーム部51の長手方向移動(両矢印C)、アーム部51のスイング移動(両矢印E)、アーム部51の第1方向移動(両矢印F)、アーム部51の第2方向移動(両矢印G)により、触媒定盤41の触媒面がガラス基板の主表面に対向して配置された状態で、特定部位特定工程で特定された、欠陥の位置に触媒定盤41を配置した。
その後、ガラス基板を回転させずに、触媒定盤41を10回転/分の回転速度で回転させながら、触媒定盤41の中央に形成された処理液供給孔からガラス基板の主表面上に純水を供給し、ガラス基板の主表面と触媒面との間に純水を介在させた。その状態で、触媒定盤41の触媒面を、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、ガラス基板の主表面に接触又は接近させた。その際、触媒定盤41に加えられる荷重が150hPaに制御され、150hPaの加工圧がガラス基板に加えられた。
その後、加工取代が10nmになった時点で、触媒定盤41の回転および純水の供給を止めた。そして、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、触媒定盤41を、ガラス基板の主表面から所定の距離だけ離した。
特定部位特定工程で修正(除去)することに決めたすべての欠陥に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を行った後、支持部からガラス基板を取り外した。
【0100】
その後、支持部31から取り外したガラス基板の端面をスクラブ洗浄した。
その後、このガラス基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させた。
その後、純水によるリンス、乾燥を行った。
このようにしてマスクブランク用基板を作製した。
【0101】
B.局所加工工程による30nm級欠陥(SEVDが23nm以上の欠陥)低減効果の検証
図3および図4は原子間力顕微鏡(AFM)によって測定した、マスクブランク用基板の主表面の局所加工前後の欠陥の状態を示す。図3は凸欠陥の状態を示し、図4は凹欠陥の状態を示す。
【0102】
図3(A)は局所加工前のSEVDが26nmの凸欠陥を示す。図3(B)はこの凸欠陥の局所加工後の状態を示す。図3(B)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが26nmの凸欠陥が消滅した。
図3(C)は局所加工前のSEVDが33nmの凸欠陥を示す。図3(D)はこの凸欠陥の局所加工後の状態を示す。図3(D)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが33nmの凸欠陥が消滅した。
図3(E)は局所加工前のSEVDが50nmの凸欠陥を示す。図3(F)はこの凸欠陥の局所加工後の状態を示す。図3(F)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが50nmの凸欠陥が消滅した。
図4(A)は局所加工前のSEVDが34nmの凹欠陥を示す。図4(B)はこの凹欠陥の局所加工後の状態を示す。図4(B)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが34nmの凹欠陥が、SEVDが25nmの大きさに修正された。
図4(C)は局所加工前のSEVDが28nmの凹欠陥を示す。図4(D)はこの凹欠陥の局所加工後の状態を示す。図4(D)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが28nmの凹欠陥が、SEVDが21nmの大きさに修正された。
図4(E)は局所加工前のSEVDが40nmの凹欠陥を示す。図4(F)はこの凹欠陥の局所加工後の状態を示す。図4(F)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが40nmの凹欠陥が、SEVDが25nmの大きさに修正された。
上述の結果が示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、30nm級の欠陥を含むSEVDが23nm以上の欠陥数、および大きさが低減できた。
【0103】
実施例2.
A.マスクブランク用ガラス基板の製造
1.基板準備工程
先ず、6025サイズのTiO−SiOガラス基板に対して、実施例1と同様に、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程を行った。
【0104】
その後、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程後のガラス基板の主表面および裏面の平坦度を、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて測定した。平坦度測定は、ガラス基板の周縁領域を除外した148mm×148mmの領域に対して行った。その結果、主表面および裏面の平坦度は、290nm(凸形状)であった。
また、ガラス基板の主表面および裏面の平坦度の測定結果を、測定点ごとに仮想絶対平面に対する高さの情報としてコンピュータに保存し、ガラス基板に必要な主表面の平坦度の基準値40nm(凹形状)、裏面の平坦度の基準値70nm(凹形状)と比較し、その差分を、ガラス基板の主表面および裏面の所定領域ごとにコンピュータで算出した。この差分が、後述する局所的な表面加工における各所定領域の必要除去量(加工取り代)となる。
その後、ガラス基板の主表面および裏面の所定領域ごとに、必要除去量に応じた局所的な表面加工の加工条件を設定した。設定方法は以下の通りである。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板移動させずにある地点(スポット)で加工し、その形状を平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットでの加工体積を算出した。そして、単位時間当たりにおけるスポットでの加工体積と上述したように算出した各所定領域の必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
その後、ガラス基板の主表面および裏面を、基板仕上げ装置(QED Technologies社製)を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing:MRF)により、平坦度が上述の基準値以下となるように、所定領域ごとに設定した加工条件に従い、局所的に表面加工した。なお、このとき使用した磁性研磨スラリーは、鉄を含む磁性流体に、アルカリ水溶液と研磨剤である酸化セリウム(約2wt%)とからなる研磨スラリーを混ぜたものである。
その後、ガラス基板を、濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬させた。
その後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)による乾燥を行った。
その後、ガラス基板の主表面および裏面の両面に対して、コロイダルシリカ砥粒を用いてタッチ研磨を行った。
その後、ガラス基板を、水酸化ナトリウムのアルカリ洗浄液に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0105】
2.表面情報取得工程
次に、基板準備工程後のガラス基板の主表面に対する表面情報を取得する表面情報取得工程を行った。
表面情報取得工程は、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、ガラス基板の主表面を欠陥検査することにより行った。欠陥検査は、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
【0106】
図5は欠陥検査装置によって測定された局所加工前の欠陥検査結果を示す。図5には、欠陥検査装置によって取得された表面情報に基づいて定められる、SEVDが23nm以上の欠陥が示されている。
欠陥検査の結果、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル49個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は44個であった。
【0107】
3.特定部位特定工程
次に、表面情報取得工程後のガラス基板に対して、後工程の局所加工工程で局所加工を行う欠陥の位置を特定する特定部位特定工程を行った。
【0108】
この特定部位特定工程は、欠陥検査結果を参照して、上述した欠陥の基準値(132mm×132mmの領域について、SEVDが23nm以上の欠陥数30個以下)を満たすためには、どの欠陥を修正(除去)すればよいかを決め、修正(除去)する欠陥の位置を特定することにより行った。この実施例2では、図5に示す欠陥検査結果を参照して、欠陥の存在密度が相対的に高い複数の領域の欠陥を修正(除去)することに決め、それらの領域の欠陥の位置を特定した。例えば、図5中のS、Tの領域の欠陥を修正(除去)することに決めた。
【0109】
4.局所加工工程
局所加工は、実施例1と同様の条件で行った。まず、修正(除去)することに決めた1つ目の領域(例えば、図5中のS)の欠陥位置に触媒定盤41を配置し、欠陥の修正(除去)を行い、次に、2つめの領域(例えば、図5中のT)の欠陥位置に触媒定盤41を配置し、同様の処理を行った。
特定部位特定工程で修正(除去)することに決めたすべての領域の欠陥に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を行った後、支持部からガラス基板を取り出した。
その後、支持部31から取り外したガラス基板の端面をスクラブ洗浄した。
その後、このガラス基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させた。
その後、純水によるリンス、乾燥を行った。
このようにしてマスクブランク用基板を作製した。
【0110】
5.評価
半導体デザインルール1x世代で使用されるEUV露光用の反射型マスクブランクの製造に用いられるマスクブランク用基板の主表面は、以下の平滑性、平坦性を有することが好ましい。
平滑性:二乗平均平方根粗さ(RMS)で表面粗さ0.15nm以下、好ましくは、0.10nm以下、より好ましくは、0.08nm以下。
平坦性:ガラス基板が6025サイズの場合、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域について平坦度30nm以下。
【0111】
局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、表面粗さ、平坦度を測定した。また、欠陥検査を行った。
表面粗さは、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。その結果、表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.06nmと良好であった。
平坦度は、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)により測定した。その結果、平坦度は29nmと良好であった。
欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)により行った。図6は欠陥検査装置によって取得された局所加工後の欠陥検査結果を示す。図6には、SEVDが23nm以上の欠陥が示されている。欠陥検査の結果、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル8個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は5個であった。触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが23nm以上の欠陥数が49個から8個に減り、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数も44個から5個に減り、上述した欠陥の基準値を満たすガラス基板が得られた。
【0112】
B.多層反射膜付き基板の製造
次に、局所加工工程後のガラス基板の主表面上に、イオンビームスパッタリング法により、シリコン膜(Si)からなる高屈折率層(膜厚4.2nm)とモリブデン膜(Mo)からなる低屈折率層(2.8nm)とを交互に、高屈折率層と低屈折率層とを1ペアとし、40ペア積層して、多層反射膜(膜厚280nm)を形成した。
その後、この多層反射膜上に、イオンビームスパッタリング法により、ルテニウム(Ru)からなる保護膜(膜厚2.5nm)を形成した。
【0113】
このようにして、多層反射膜付き基板を作製した。
この得られた多層反射膜付き基板を、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、保護膜表面の欠陥検査を行った。欠陥検査は、132mm×132mmの領域に対して行った。その結果、SEVDが23nm以上の欠陥数が19個、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数が12個となり、上述した基準値を満たす多層反射膜付き基板を得た。
【0114】
C.反射型マスクブランクの製造
次に、このようにして作製された多層反射膜付き基板の保護膜上に、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、タンタルホウ素窒化膜(TaBN)からなる吸収体膜(膜厚70nm)を形成した。スパッタリング条件は以下の通りである。反応性スパッタリング(DCスパッタリング)は、ホウ化タンタル(TaB)ターゲットを多層反射膜付き基板の保護膜に対向させて、キセノン(Xe)と窒素(N)との混合ガス雰囲気で行った。
【0115】
その後、多層反射膜付き基板の多層反射膜を形成していない裏面上に、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、クロム窒化膜(CrN)からなる裏面導電膜(膜厚20nm)を形成した。スパッタリング条件は以下の通りである。反応性スパッタリング(DCスパッタリング)は、クロム(Cr)ターゲットを多層反射膜付き基板の裏面に対向させて、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気で行った。
【0116】
このようにして、EUV露光用の反射型マスクブランクを作製した。
【0117】
D.反射型マスクの製造
次に、このようにして作製された反射型マスクブラン上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジレジストをスピンコート法により塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚が150nmのレジスト膜を形成した。
その後、形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
その後、このレジストパターンをマスクにして、吸収体膜のドライエッチングを行って、保護膜上に吸収体膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとしては、Clガスを用いた。
その後、レジストパターンを除去し、洗浄を行なった。
【0118】
このようにして、EUV露光用の反射型マスクを作製した。
【0119】
実施例3.
A.マスクブランク用ガラス基板の製造
《うねり修正》
1.基板準備工程
先ず、6025サイズのTiO−SiOガラス基板に対して、実施例2と同様に、基板準備工程を行った。
【0120】
2.表面情報取得工程
次に、基板準備工程後のガラス基板の主表面に対する表面情報を取得する表面情報取得工程を行った。
この表面情報取得工程は、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて行った。平坦度測定装置による測定は、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
図7は平坦度測定装置により測定された局所加工前の脈理に起因するうねりの状態を示す。図7には、平坦度測定装置によって取得された表面情報に基づいたガラス基板の主表面の凹凸形状が示されている。図7には、1波長1〜20mmの範囲の脈理に起因するうねりのみが抽出されて示されている。図7(A)はガラス基板の主表面全体の凹凸形状の平面図を示し、図7(B)は図7(A)中のA点からB点に向かう位置における主表面の凹凸形状の断面図を示す。図7(B)の横軸はA点からの距離を示し、縦軸はA−B間の最も高さの低い地点を基準とした高さを示している。図7(A)中の右側のバーは、図7(B)中の破線の位置を0としたときの+30nmの高さと−30nmの高さのグラデーションを示している。この破線の位置は、仮想絶対平面(基準面)の位置である。なお、脈理に起因するうねりの凸部の高さおよび凹部の深さは、この仮想絶対平面(基準面)からの距離で表される。
図7に示すように、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、脈理に起因するうねりのPV値が22nmであった。
また、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて、表面情報を取得するとともに、基板準備工程後のガラス基板の主表面に対して、平坦度を測定した。その結果、平坦度は、42nmであった。
【0121】
3.特定部位特定工程
次に、表面情報取得工程後のガラス基板に対して、後工程の局所加工工程で局所加工を行う脈理に起因するうねりの位置を特定する特定部位特定工程を行った。
【0122】
この特定部位特定工程は、図7に示す凹凸形状を参照して、PV値が5nmより大きい脈理に起因するうねりを複数検出し、それらのうねりの凸部の位置を特定することにより行った。例えば、図7(B)中のU、Vのうねりを検出し、それらのうねりの凸部の位置を特定する。
【0123】
4.局所加工工程
次に、図1および図2に示す局所的触媒基準エッチング加工装置を用いて、特定部位特定工程で検出した複数のうねりに対して、触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程を行った。
【0124】
この実施例では、円盤形状の定盤本体の直径が5mmである以外は、実施例1と同じ構成の触媒定盤を用いた。加工条件は実施例1と同じである。
【0125】
先ず、ガラス基板を、主表面を上側に向けて支持部31に載置して固定した。
その後、アーム部51の長手方向移動(両矢印C)、アーム部51のスイング移動(両矢印E)、アーム部51の第1方向移動(両矢印F)、アーム部51の第2方向移動(両矢印G)により、触媒定盤41の触媒面がガラス基板の主表面に対向して配置された状態で、特定部位特定工程によって特定された、1つ目の脈理に起因するうねり(例えば、図7(B)中のU)の凸部の位置に触媒定盤41を配置した。
その後、ガラス基板を回転させずに、触媒定盤41を10回転/分の回転速度で回転させながら、触媒定盤41の中央に形成された処理液供給孔からガラス基板の主表面上に純水を供給し、ガラス基板の主表面と触媒面との間に純水を介在させた。その状態で、触媒定盤41の触媒面を、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、ガラス基板の主表面に接触又は接近させた。その際、触媒定盤41に加えられる荷重が150hPaに制御され、150hPaの加工圧がガラス基板に加えられた。
その後、うねりの凸部の位置に沿って触媒定盤41を走査し、加工取り代が5nmになった時点で、触媒定盤41の回転および純水の供給を止めた。そして、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、触媒定盤41を、ガラス基板の主表面から所定の距離だけ離した。
その後、特定部位特定工程によって特定された、2つ目の脈理に起因するうねり(例えば、図7(B)中のV)の凸部の位置に触媒定盤41を配置し、同様の処理を行った。
特定部位特定工程で特定されたすべての脈理に起因するうねりの凸部に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を行った後、支持部31からガラス基板を取り外した。
【0126】
その後、支持部31から取り外したガラス基板の端面をスクラブ洗浄した。
その後、このガラス基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させた。
その後、純水によるリンス、乾燥を行った。
【0127】
5.評価
局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて、凹凸形状を測定した。
図8は平坦度測定装置により測定された局所加工後の脈理に起因するうねりの状態を示す。図8には、平坦度測定装置によって取得された表面情報に基づいたガラス基板の主表面の凹凸形状が示されている。図8には、1波長1〜20mmの範囲の脈理に起因するうねりのみが抽出されて示されている。図8(A)はガラス基板の主表面全体の凹凸形状の平面図を示し、図8(B)は図8(A)中のC点からD点に向かう位置における主表面の凹凸形状の断面図を示す。図8(B)の横軸はC点からの距離を示し、縦軸はC−D間の最も高さの低い地点を基準とした高さを示している。図8(A)中の右側のバーは、図8(B)中の破線の位置を0としたときの+30nmの高さと−30nmの高さのグラデーションを示している。この破線の位置は、仮想絶対平面(基準面)の位置である。
図8に示すように、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、脈理に起因するうねりのPV値が5nmと良好であった。触媒基準エッチングによる局所加工により、PV値が22nmから5nmに低下し、上述した脈理に起因するうねりの基準値を満たすガラス基板が得られた。
また、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて、凹凸形状を測定するとともに、局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、平坦度を測定した。その結果、平坦度は、27nmと良好であった。うねり修正の触媒基準エッチングによる局所加工によって、平坦度が42nmから27nmに改善した。
【0128】
《欠陥修正》
1.基板準備工程
上述した《うねり修正》が、欠陥修正における基板準備工程に該当する。
【0129】
2.表面情報取得工程、特定部位特定工程、局所加工工程
次に、うねり修正後のガラス基板に対して、実施例1と同様に、表面情報取得工程、特定部位特定工程、および局所加工工程を行った。
表面情報取得工程は、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、ガラス基板の主表面を欠陥検査することにより行った。欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
欠陥検査の結果、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル38個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は34個であった。
【0130】
3.評価
局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、表面粗さ、平坦度を測定した。また、欠陥検査を行った。
【0131】
表面粗さは、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。その結果、表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.06nmと良好であった。
平坦度は、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)により測定した。その結果、平坦度は、27nmと良好であった。欠陥修正の触媒基準エッチングによる局所加工によって、平坦度は悪化しなかった。
欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)により行った。欠陥検査の結果、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル7個に減り、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数も4個と良好であった。
【0132】
B.多層反射膜付き基板の製造
次に、局所加工工程後のガラス基板の主表面上に、実施例2と同様に、多層反射膜および保護膜を形成して、多層反射膜付き基板を作製した。
【0133】
この得られた多層反射膜付き基板を、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、保護膜表面の欠陥検査を行った。欠陥検査は、132mm×132mmの領域に対して行った。その結果、SEVDが23nm以上の欠陥数が17個、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数が11個となり、上述で示した基準値を満たす多層反射膜付き基板を得た。
【0134】
C.反射型マスクブランクの製造
次に、このようにして作製された多層反射膜付き基板の保護膜上に、実施例2と同様に、吸収体膜を形成し、その後、多層反射膜付き基板の多層反射膜を形成していない裏面上に、実施例2と同様に、裏面導電膜を形成し、EUV露光用の反射型マスクブランクを作製した。
【0135】
D.反射型マスクの製造
次に、このようにして作製された反射型マスクブラン上に、実施例2と同様に、吸収体膜パターンを形成して、EUV露光用の反射型マスクを作製した。
【0136】
比較例1.
表面情報取得工程以降の工程を実施しなかった以外は実施例2と同様の方法により、マスクブランク用基板、多層反射膜付き基板を作製した。
【0137】
得られたガラス基板の主表面に対して、表面粗さ、平坦度を測定した。また、欠陥検査を行った。
表面粗さは、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。その結果、表面粗さは、実施例2とほぼ同等であった。
平坦度は、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)により測定した。その結果、平坦度は、実施例2とほぼ同等であった。
欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)により行った。欠陥検査の結果、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル63個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は52個となり、上述した欠陥の基準値を満たさなかった。
【0138】
また、実施例2と同様にガラス基板の主表面上に、イオンビームスパッタリング法により多層反射膜、保護膜を形成して多層反射膜付き基板を作製した。
【0139】
この得られた多層反射膜付き基板を、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、保護膜表面の欠陥検査を行った。欠陥検査は、132mm×132mmの領域に対して行った。その結果、SEVDが23nm以上の欠陥数が87個、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数が55個となり、上述した基準値を満たさなかった。
【0140】
上述の実施例では、EUV露光用の反射型マスクブランクに使用されるマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク及び反射型マスクを例に挙げて説明したが、これに限らない。ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランク(バイナリーマスクブランク、位相シフトマスクブランク等)に使用されるマスクブランク用基板、透過型マスクブランクについても、本発明を適用できる。これらの用途に応じて、マスクブランク用基板、透過型マスクブランクの表面の基準値を決定することができる。
【符号の説明】
【0141】
1 局所的触媒基準エッチング加工装置、 2 チャンバー、 3 基板支持手段、 4 運動体、 5 運動体移動手段、 6 処理液供給手段、 21 開口部、 22 排出口、 23 底部、 31 支持部、 31a 収容部、 32 平面部、 33 軸部、 41 触媒定盤、 42 触媒定盤取付部、 42a エアシリンダ、 42b ロードセル、 51 アーム部、 52 軸部、 53 土台部、 54 ガイド、 61 処理液供給ノズル、 M マスクブランク用基板、 M1 主表面、 M2 裏面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8