【実施例】
【0088】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
【0089】
実施例1.
A.マスクブランク用ガラス基板の製造
1.基板準備工程
先ず、6025サイズ(152mm×152mm×6.35mm)のTiO
2−SiO
2ガラス基板に対して、以下の粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程を行った。
【0090】
(1)粗研磨加工工程
端面面取加工および研削加工を終えたガラス基板を両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で粗研磨を行った。10枚セットを5回行い合計50枚のガラス基板の粗研磨を行った。なお、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:酸化セリウム(平均粒径2〜3μm)を含有する水溶液
研磨パッド:硬質ポリシャ(ウレタンパッド)
粗研磨後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0091】
(2)精密研磨加工工程
粗研磨を終えたガラス基板を両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で精密研磨を行った。10枚セットを5回行い合計50枚のガラス基板の精密研磨を行った。なお、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:酸化セリウム(平均粒径1μm)を含有する水溶液
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
精密研磨後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0092】
(3)超精密研磨加工工程
精密研磨を終えたガラス基板を再び両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で超精密研磨を行った。10枚セットを5回行い合計50枚のガラス基板の超精密研磨を行った。なお、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:コロイダルシリカを含有するアルカリ性水溶液(pH10.2)
(コロイダルシリカ含有量50wt%)
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
超精密研磨後、ガラス基板を水酸化ナトリウムのアルカリ洗浄液が入った洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0093】
2.表面情報取得工程
次に、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程後のガラス基板の主表面に対する表面情報を取得する表面情報取得工程を行った。
【0094】
この表面情報取得工程は、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、ガラス基板の主表面を欠陥検査することにより行った。欠陥検査は、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
【0095】
3.特定部位特定工程
次に、表面情報取得工程後のガラス基板に対して、後工程の局所加工工程で局所加工を行う欠陥の位置を特定する特定部位特定工程を行った。なお、局所加工を行う欠陥については、原子間力顕微鏡(AFM)により欠陥状態を測定した。
【0096】
この特定部位特定工程は、欠陥検査結果を参照して、上述した欠陥の基準値(132mm×132mmの領域について、SEVDが23nm以上の欠陥数30個以下)を満たすためには、どの欠陥を修正(除去)すればよいかを決め、修正(除去)する欠陥の位置を特定することにより行った。
【0097】
4.局所加工工程
次に、
図1および
図2に示す局所的触媒基準エッチング加工装置を用いて、特定部位特定工程で修正(除去)することに決めた欠陥に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程を行った。
【0098】
この実施例では、ステンレス鋼(SUS)製の直径35mmの円盤形状の定盤本体と、定盤本体を覆うように定盤本体の表面全面に形成されるフッ素ゴム(バイトン(登録商標))と、マスクブランク用基板と対向する側のフッ素ゴムの表面全面にコーティングにより形成される触媒面とから構成される触媒定盤41を使用した。
加工条件は以下の通りである。
触媒:白金
処理液:純水
基板支持手段3の回転数(ガラス基板の回転数):0回転/分
運動体4の回転数(触媒定盤41の回転数):10回転/分
加工圧:150hPa
加工取り代:10nm
【0099】
先ず、ガラス基板を、主表面を上側に向けて支持部31に載置して固定した。
その後、アーム部51の長手方向移動(両矢印C)、アーム部51のスイング移動(両矢印E)、アーム部51の第1方向移動(両矢印F)、アーム部51の第2方向移動(両矢印G)により、触媒定盤41の触媒面がガラス基板の主表面に対向して配置された状態で、特定部位特定工程で特定された、欠陥の位置に触媒定盤41を配置した。
その後、ガラス基板を回転させずに、触媒定盤41を10回転/分の回転速度で回転させながら、触媒定盤41の中央に形成された処理液供給孔からガラス基板の主表面上に純水を供給し、ガラス基板の主表面と触媒面との間に純水を介在させた。その状態で、触媒定盤41の触媒面を、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、ガラス基板の主表面に接触又は接近させた。その際、触媒定盤41に加えられる荷重が150hPaに制御され、150hPaの加工圧がガラス基板に加えられた。
その後、加工取代が10nmになった時点で、触媒定盤41の回転および純水の供給を止めた。そして、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、触媒定盤41を、ガラス基板の主表面から所定の距離だけ離した。
特定部位特定工程で修正(除去)することに決めたすべての欠陥に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を行った後、支持部からガラス基板を取り外した。
【0100】
その後、支持部31から取り外したガラス基板の端面をスクラブ洗浄した。
その後、このガラス基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させた。
その後、純水によるリンス、乾燥を行った。
このようにしてマスクブランク用基板を作製した。
【0101】
B.局所加工工程による30nm級欠陥(SEVDが23nm以上の欠陥)低減効果の検証
図3および
図4は原子間力顕微鏡(AFM)によって測定した、マスクブランク用基板の主表面の局所加工前後の欠陥の状態を示す。
図3は凸欠陥の状態を示し、
図4は凹欠陥の状態を示す。
【0102】
図3(A)は局所加工前のSEVDが26nmの凸欠陥を示す。
図3(B)はこの凸欠陥の局所加工後の状態を示す。
図3(B)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが26nmの凸欠陥が消滅した。
図3(C)は局所加工前のSEVDが33nmの凸欠陥を示す。
図3(D)はこの凸欠陥の局所加工後の状態を示す。
図3(D)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが33nmの凸欠陥が消滅した。
図3(E)は局所加工前のSEVDが50nmの凸欠陥を示す。
図3(F)はこの凸欠陥の局所加工後の状態を示す。
図3(F)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが50nmの凸欠陥が消滅した。
図4(A)は局所加工前のSEVDが34nmの凹欠陥を示す。
図4(B)はこの凹欠陥の局所加工後の状態を示す。
図4(B)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが34nmの凹欠陥が、SEVDが25nmの大きさに修正された。
図4(C)は局所加工前のSEVDが28nmの凹欠陥を示す。
図4(D)はこの凹欠陥の局所加工後の状態を示す。
図4(D)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが28nmの凹欠陥が、SEVDが21nmの大きさに修正された。
図4(E)は局所加工前のSEVDが40nmの凹欠陥を示す。
図4(F)はこの凹欠陥の局所加工後の状態を示す。
図4(F)に示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが40nmの凹欠陥が、SEVDが25nmの大きさに修正された。
上述の結果が示すように、触媒基準エッチングによる局所加工により、30nm級の欠陥を含むSEVDが23nm以上の欠陥数、および大きさが低減できた。
【0103】
実施例2.
A.マスクブランク用ガラス基板の製造
1.基板準備工程
先ず、6025サイズのTiO
2−SiO
2ガラス基板に対して、実施例1と同様に、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程を行った。
【0104】
その後、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程後のガラス基板の主表面および裏面の平坦度を、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて測定した。平坦度測定は、ガラス基板の周縁領域を除外した148mm×148mmの領域に対して行った。その結果、主表面および裏面の平坦度は、290nm(凸形状)であった。
また、ガラス基板の主表面および裏面の平坦度の測定結果を、測定点ごとに仮想絶対平面に対する高さの情報としてコンピュータに保存し、ガラス基板に必要な主表面の平坦度の基準値40nm(凹形状)、裏面の平坦度の基準値70nm(凹形状)と比較し、その差分を、ガラス基板の主表面および裏面の所定領域ごとにコンピュータで算出した。この差分が、後述する局所的な表面加工における各所定領域の必要除去量(加工取り代)となる。
その後、ガラス基板の主表面および裏面の所定領域ごとに、必要除去量に応じた局所的な表面加工の加工条件を設定した。設定方法は以下の通りである。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板移動させずにある地点(スポット)で加工し、その形状を平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットでの加工体積を算出した。そして、単位時間当たりにおけるスポットでの加工体積と上述したように算出した各所定領域の必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
その後、ガラス基板の主表面および裏面を、基板仕上げ装置(QED Technologies社製)を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing:MRF)により、平坦度が上述の基準値以下となるように、所定領域ごとに設定した加工条件に従い、局所的に表面加工した。なお、このとき使用した磁性研磨スラリーは、鉄を含む磁性流体に、アルカリ水溶液と研磨剤である酸化セリウム(約2wt%)とからなる研磨スラリーを混ぜたものである。
その後、ガラス基板を、濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬させた。
その後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)による乾燥を行った。
その後、ガラス基板の主表面および裏面の両面に対して、コロイダルシリカ砥粒を用いてタッチ研磨を行った。
その後、ガラス基板を、水酸化ナトリウムのアルカリ洗浄液に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0105】
2.表面情報取得工程
次に、基板準備工程後のガラス基板の主表面に対する表面情報を取得する表面情報取得工程を行った。
表面情報取得工程は、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、ガラス基板の主表面を欠陥検査することにより行った。欠陥検査は、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
【0106】
図5は欠陥検査装置によって測定された局所加工前の欠陥検査結果を示す。
図5には、欠陥検査装置によって取得された表面情報に基づいて定められる、SEVDが23nm以上の欠陥が示されている。
欠陥検査の結果、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル49個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は44個であった。
【0107】
3.特定部位特定工程
次に、表面情報取得工程後のガラス基板に対して、後工程の局所加工工程で局所加工を行う欠陥の位置を特定する特定部位特定工程を行った。
【0108】
この特定部位特定工程は、欠陥検査結果を参照して、上述した欠陥の基準値(132mm×132mmの領域について、SEVDが23nm以上の欠陥数30個以下)を満たすためには、どの欠陥を修正(除去)すればよいかを決め、修正(除去)する欠陥の位置を特定することにより行った。この実施例2では、
図5に示す欠陥検査結果を参照して、欠陥の存在密度が相対的に高い複数の領域の欠陥を修正(除去)することに決め、それらの領域の欠陥の位置を特定した。例えば、
図5中のS、Tの領域の欠陥を修正(除去)することに決めた。
【0109】
4.局所加工工程
局所加工は、実施例1と同様の条件で行った。まず、修正(除去)することに決めた1つ目の領域(例えば、
図5中のS)の欠陥位置に触媒定盤41を配置し、欠陥の修正(除去)を行い、次に、2つめの領域(例えば、
図5中のT)の欠陥位置に触媒定盤41を配置し、同様の処理を行った。
特定部位特定工程で修正(除去)することに決めたすべての領域の欠陥に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を行った後、支持部からガラス基板を取り出した。
その後、支持部31から取り外したガラス基板の端面をスクラブ洗浄した。
その後、このガラス基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させた。
その後、純水によるリンス、乾燥を行った。
このようにしてマスクブランク用基板を作製した。
【0110】
5.評価
半導体デザインルール1x世代で使用されるEUV露光用の反射型マスクブランクの製造に用いられるマスクブランク用基板の主表面は、以下の平滑性、平坦性を有することが好ましい。
平滑性:二乗平均平方根粗さ(RMS)で表面粗さ0.15nm以下、好ましくは、0.10nm以下、より好ましくは、0.08nm以下。
平坦性:ガラス基板が6025サイズの場合、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域について平坦度30nm以下。
【0111】
局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、表面粗さ、平坦度を測定した。また、欠陥検査を行った。
表面粗さは、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。その結果、表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.06nmと良好であった。
平坦度は、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)により測定した。その結果、平坦度は29nmと良好であった。
欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)により行った。
図6は欠陥検査装置によって取得された局所加工後の欠陥検査結果を示す。
図6には、SEVDが23nm以上の欠陥が示されている。欠陥検査の結果、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル8個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は5個であった。触媒基準エッチングによる局所加工により、SEVDが23nm以上の欠陥数が49個から8個に減り、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数も44個から5個に減り、上述した欠陥の基準値を満たすガラス基板が得られた。
【0112】
B.多層反射膜付き基板の製造
次に、局所加工工程後のガラス基板の主表面上に、イオンビームスパッタリング法により、シリコン膜(Si)からなる高屈折率層(膜厚4.2nm)とモリブデン膜(Mo)からなる低屈折率層(2.8nm)とを交互に、高屈折率層と低屈折率層とを1ペアとし、40ペア積層して、多層反射膜(膜厚280nm)を形成した。
その後、この多層反射膜上に、イオンビームスパッタリング法により、ルテニウム(Ru)からなる保護膜(膜厚2.5nm)を形成した。
【0113】
このようにして、多層反射膜付き基板を作製した。
この得られた多層反射膜付き基板を、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、保護膜表面の欠陥検査を行った。欠陥検査は、132mm×132mmの領域に対して行った。その結果、SEVDが23nm以上の欠陥数が19個、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数が12個となり、上述した基準値を満たす多層反射膜付き基板を得た。
【0114】
C.反射型マスクブランクの製造
次に、このようにして作製された多層反射膜付き基板の保護膜上に、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、タンタルホウ素窒化膜(TaBN)からなる吸収体膜(膜厚70nm)を形成した。スパッタリング条件は以下の通りである。反応性スパッタリング(DCスパッタリング)は、ホウ化タンタル(TaB)ターゲットを多層反射膜付き基板の保護膜に対向させて、キセノン(Xe)と窒素(N
2)との混合ガス雰囲気で行った。
【0115】
その後、多層反射膜付き基板の多層反射膜を形成していない裏面上に、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、クロム窒化膜(CrN)からなる裏面導電膜(膜厚20nm)を形成した。スパッタリング条件は以下の通りである。反応性スパッタリング(DCスパッタリング)は、クロム(Cr)ターゲットを多層反射膜付き基板の裏面に対向させて、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)との混合ガス雰囲気で行った。
【0116】
このようにして、EUV露光用の反射型マスクブランクを作製した。
【0117】
D.反射型マスクの製造
次に、このようにして作製された反射型マスクブラン
ク上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジレジストをスピンコート法により塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚が150nmのレジスト膜を形成した。
その後、形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
その後、このレジストパターンをマスクにして、吸収体膜のドライエッチングを行って、保護膜上に吸収体膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとしては、Cl
2ガスを用いた。
その後、レジストパターンを除去し、洗浄を行なった。
【0118】
このようにして、EUV露光用の反射型マスクを作製した。
【0119】
実施例3.
A.マスクブランク用ガラス基板の製造
《うねり修正》
1.基板準備工程
先ず、6025サイズのTiO
2−SiO
2ガラス基板に対して、実施例2と同様に、基板準備工程を行った。
【0120】
2.表面情報取得工程
次に、基板準備工程後のガラス基板の主表面に対する表面情報を取得する表面情報取得工程を行った。
この表面情報取得工程は、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて行った。平坦度測定装置による測定は、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
図7は平坦度測定装置により測定された局所加工前の脈理に起因するうねりの状態を示す。
図7には、平坦度測定装置によって取得された表面情報に基づいたガラス基板の主表面の凹凸形状が示されている。
図7には、1波長1〜20mmの範囲の脈理に起因するうねりのみが抽出されて示されている。
図7(A)はガラス基板の主表面全体の凹凸形状の平面図を示し、
図7(B)は
図7(A)中のA点からB点に向かう位置における主表面の凹凸形状の断面図を示す。
図7(B)の横軸はA点からの距離を示し、縦軸はA−B間の最も高さの低い地点を基準とした高さを示している。
図7(A)中の右側のバーは、
図7(B)中の破線の位置を0としたときの+30nmの高さと−30nmの高さのグラデーションを示している。この破線の位置は、仮想絶対平面(基準面)の位置である。なお、脈理に起因するうねりの凸部の高さおよび凹部の深さは、この仮想絶対平面(基準面)からの距離で表される。
図7に示すように、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、脈理に起因するうねりのPV値が22nmであった。
また、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて、表面情報を取得するとともに、基板準備工程後のガラス基板の主表面に対して、平坦度を測定した。その結果、平坦度は、42nmであった。
【0121】
3.特定部位特定工程
次に、表面情報取得工程後のガラス基板に対して、後工程の局所加工工程で局所加工を行う脈理に起因するうねりの位置を特定する特定部位特定工程を行った。
【0122】
この特定部位特定工程は、
図7に示す凹凸形状を参照して、PV値が5nmより大きい脈理に起因するうねりを複数検出し、それらのうねりの凸部の位置を特定することにより行った。例えば、
図7(B)中のU、Vのうねりを検出し、それらのうねりの凸部の位置を特定する。
【0123】
4.局所加工工程
次に、
図1および
図2に示す局所的触媒基準エッチング加工装置を用いて、特定部位特定工程で検出した複数のうねりに対して、触媒基準エッチングによる局所加工を施す局所加工工程を行った。
【0124】
この実施例では、円盤形状の定盤本体の直径が5mmである以外は、実施例1と同じ構成の触媒定盤を用いた。加工条件は実施例1と同じである。
【0125】
先ず、ガラス基板を、主表面を上側に向けて支持部31に載置して固定した。
その後、アーム部51の長手方向移動(両矢印C)、アーム部51のスイング移動(両矢印E)、アーム部51の第1方向移動(両矢印F)、アーム部51の第2方向移動(両矢印G)により、触媒定盤41の触媒面がガラス基板の主表面に対向して配置された状態で、特定部位特定工程によって特定された、1つ目の脈理に起因するうねり(例えば、
図7(B)中のU)の凸部の位置に触媒定盤41を配置した。
その後、ガラス基板を回転させずに、触媒定盤41を10回転/分の回転速度で回転させながら、触媒定盤41の中央に形成された処理液供給孔からガラス基板の主表面上に純水を供給し、ガラス基板の主表面と触媒面との間に純水を介在させた。その状態で、触媒定盤41の触媒面を、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、ガラス基板の主表面に接触又は接近させた。その際、触媒定盤41に加えられる荷重が150hPaに制御され、150hPaの加工圧がガラス基板に加えられた。
その後、うねりの凸部の位置に沿って触媒定盤41を走査し、加工取り代が5nmになった時点で、触媒定盤41の回転および純水の供給を止めた。そして、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、触媒定盤41を、ガラス基板の主表面から所定の距離だけ離した。
その後、特定部位特定工程によって特定された、2つ目の脈理に起因するうねり(例えば、
図7(B)中のV)の凸部の位置に触媒定盤41を配置し、同様の処理を行った。
特定部位特定工程で特定されたすべての脈理に起因するうねりの凸部に対して、触媒基準エッチングによる局所加工を行った後、支持部31からガラス基板を取り外した。
【0126】
その後、支持部31から取り外したガラス基板の端面をスクラブ洗浄した。
その後、このガラス基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させた。
その後、純水によるリンス、乾燥を行った。
【0127】
5.評価
局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて、凹凸形状を測定した。
図8は平坦度測定装置により測定された局所加工後の脈理に起因するうねりの状態を示す。
図8には、平坦度測定装置によって取得された表面情報に基づいたガラス基板の主表面の凹凸形状が示されている。
図8には、1波長1〜20mmの範囲の脈理に起因するうねりのみが抽出されて示されている。
図8(A)はガラス基板の主表面全体の凹凸形状の平面図を示し、
図8(B)は
図8(A)中のC点からD点に向かう位置における主表面の凹凸形状の断面図を示す。
図8(B)の横軸はC点からの距離を示し、縦軸はC−D間の最も高さの低い地点を基準とした高さを示している。
図8(A)中の右側のバーは、
図8(B)中の破線の位置を0としたときの+30nmの高さと−30nmの高さのグラデーションを示している。この破線の位置は、仮想絶対平面(基準面)の位置である。
図8に示すように、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、脈理に起因するうねりのPV値が5nmと良好であった。触媒基準エッチングによる局所加工により、PV値が22nmから5nmに低下し、上述した脈理に起因するうねりの基準値を満たすガラス基板が得られた。
また、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて、凹凸形状を測定するとともに、局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、平坦度を測定した。その結果、平坦度は、27nmと良好であった。うねり修正の触媒基準エッチングによる局所加工によって、平坦度が42nmから27nmに改善した。
【0128】
《欠陥修正》
1.基板準備工程
上述した《うねり修正》が、欠陥修正における基板準備工程に該当する。
【0129】
2.表面情報取得工程、特定部位特定工程、局所加工工程
次に、うねり修正後のガラス基板に対して、実施例1と同様に、表面情報取得工程、特定部位特定工程、および局所加工工程を行った。
表面情報取得工程は、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、ガラス基板の主表面を欠陥検査することにより行った。欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して行った。
欠陥検査の結果、ガラス基板の主表面の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル38個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は34個であった。
【0130】
3.評価
局所加工工程後のガラス基板の主表面に対して、表面粗さ、平坦度を測定した。また、欠陥検査を行った。
【0131】
表面粗さは、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。その結果、表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.06nmと良好であった。
平坦度は、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)により測定した。その結果、平坦度は、27nmと良好であった。欠陥修正の触媒基準エッチングによる局所加工によって、平坦度は悪化しなかった。
欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)により行った。欠陥検査の結果、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル7個に減り、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数も4個と良好であった。
【0132】
B.多層反射膜付き基板の製造
次に、局所加工工程後のガラス基板の主表面上に、実施例2と同様に、多層反射膜および保護膜を形成して、多層反射膜付き基板を作製した。
【0133】
この得られた多層反射膜付き基板を、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、保護膜表面の欠陥検査を行った。欠陥検査は、132mm×132mmの領域に対して行った。その結果、SEVDが23nm以上の欠陥数が17個、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数が11個となり、上述で示した基準値を満たす多層反射膜付き基板を得た。
【0134】
C.反射型マスクブランクの製造
次に、このようにして作製された多層反射膜付き基板の保護膜上に、実施例2と同様に、吸収体膜を形成し、その後、多層反射膜付き基板の多層反射膜を形成していない裏面上に、実施例2と同様に、裏面導電膜を形成し、EUV露光用の反射型マスクブランクを作製した。
【0135】
D.反射型マスクの製造
次に、このようにして作製された反射型マスクブラン
ク上に、実施例2と同様に、吸収体膜パターンを形成して、EUV露光用の反射型マスクを作製した。
【0136】
比較例1.
表面情報取得工程以降の工程を実施しなかった以外は実施例2と同様の方法により、マスクブランク用基板、多層反射膜付き基板を作製した。
【0137】
得られたガラス基板の主表面に対して、表面粗さ、平坦度を測定した。また、欠陥検査を行った。
表面粗さは、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。その結果、表面粗さは、実施例2とほぼ同等であった。
平坦度は、基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)により測定した。その結果、平坦度は、実施例2とほぼ同等であった。
欠陥検査は、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)により行った。欠陥検査の結果、ガラス基板の周縁領域を除外した132mm×132mmの領域において、SEVDが23nm以上の欠陥数はトータル63個であった。尚、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数は52個となり、上述した欠陥の基準値を満たさなかった。
【0138】
また、実施例2と同様にガラス基板の主表面上に、イオンビームスパッタリング法により多層反射膜、保護膜を形成して多層反射膜付き基板を作製した。
【0139】
この得られた多層反射膜付き基板を、欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 Teron600シリーズ)を用いて、保護膜表面の欠陥検査を行った。欠陥検査は、132mm×132mmの領域に対して行った。その結果、SEVDが23nm以上の欠陥数が87個、また、SEVDが23nm以上34nm以下の30nm級の欠陥数が55個となり、上述した基準値を満たさなかった。
【0140】
上述の実施例では、EUV露光用の反射型マスクブランクに使用されるマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク及び反射型マスクを例に挙げて説明したが、これに限らない。ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランク(バイナリーマスクブランク、位相シフトマスクブランク等)に使用されるマスクブランク用基板、透過型マスクブランクについても、本発明を適用できる。これらの用途に応じて、マスクブランク用基板、透過型マスクブランクの表面の基準値を決定することができる。