特許第6147527号(P6147527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147527
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20170607BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   A61F13/534 100
   A61F13/536 100
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-45138(P2013-45138)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-171573(P2014-171573A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−112590(JP,A)
【文献】 特開2008−173247(JP,A)
【文献】 特開2012−179242(JP,A)
【文献】 特開2011−200612(JP,A)
【文献】 特開2008−168079(JP,A)
【文献】 特表2006−521167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 −13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収層と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収層は、前記トップシート側の上層と、前記バックシート側の下層とを有し、前記上層は前記下層よりも狭幅であり、
前記上層の厚さは、前記上層と前記下層の合計厚さの30%以上70%以下であり、
前記上層側から見て、前記上層から前記下層に達する凹状の第1エンボスと、前記上層から幅方向にはみ出した前記下層のみに形成されて前記第1エンボスよりも浅い凹状の第2エンボスが形成され、
前記第1エンボス及び前記第2エンボスは連続した複数の線状であり、
前記上層の幅方向側縁部から外側に0〜10mmの位置で長手方向に折られている吸収性物品。
【請求項2】
前記上層の幅は、前記下層の幅の30〜80%である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品の最大幅に対し、前記上層の幅が20〜70%である請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上層及び前記下層はフラッフパルプと高吸収性樹脂とを含み、前記上層中の前記高吸収性樹脂の重量割合が前記下層中の前記吸収性樹脂の重量割合より大きい請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートと前記上層との間に、液体の拡散性を向上させる親水性不織布が設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿とりパッド、使い捨ておむつ、軽失禁パッド及びライナーなどの吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進行に伴い、大人用の使い捨て吸収性物品の需要がますます高くなっている。特に、排泄が自分でコントロールできず、自立できない高齢者を対象とする吸収性物品としては漏れやかぶれのないものが望まれており、このため、尿などの液体の排泄物に対する吸収性能(吸収量、吸収速度、液戻り量)が向上したものが種々開発されている。
また、吸収性物品は使い捨てとなるため、資源の節約や使用後の廃棄物の減量といったエコロジー的観点から、軽量化が要望されている。
このようなことから、縦長の使い捨ておむつにおいて、吸収層の中央部分よりも幅方向両側の吸収量を大きくし、製造コストを抑制すると共に、漏れ防止性及びフィット性を改善した技術が開発されている(特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-164477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収層の中央部分に排尿があった場合、従来の吸収性物品では同心円状に尿が吸収、拡散するため、吸収層の幅方向の吸収性が飽和するのに対し、縦(長手)方向の吸収層の吸収能力が十分に利用されないという問題がある。又、従来の吸収性物品は、着用時の身体へのフィット性が十分とはいえず、漏れが生じやすいという問題がある。
さらに、尿とりパッド等の吸収性物品は、長手方向及びこれに直角な方向にそれぞれ3つ折りされ包装された状態で販売されるが、比較的厚い吸収層を折り畳むと、折り目部分が圧縮されて硬い感触になり易い。
従って本発明は、軽量化および低コストを実現しつつ、吸収性能やフィット性を向上させた吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが検討したところ、吸収層が上層と下層とを有し、上層を下層よりも狭幅とすることで、上層側から吸収された尿等の液体の幅方向への拡散が規制され、長手方向に長い楕円状に拡散して広がることが判明した。又、吸収層に凹状のエンボスを設けることで、エンボスに沿って液体の長手方向への拡散がさらに進行する。
上記課題を解決するため、本発明の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収層と、を有する吸収性物品であって、前記吸収層は、前記トップシート側の上層と、前記バックシート側の下層とを有し、前記上層は前記下層よりも狭幅であり、前記上層の厚さは、前記上層と前記下層の合計厚さの30%以上70%以下であり、前記上層側から見て、前記上層から前記下層に達する凹状の第1エンボスと、前記上層から幅方向にはみ出した前記下層のみに形成されて前記第1エンボスよりも浅い凹状の第2エンボスが形成され、前記第1エンボス及び前記第2エンボスは連続した複数の線状であり、前記上層の幅方向側縁部から外側に0〜10mmの位置で長手方向に折られている
この吸収性物品によれば、上層を下層よりも狭幅とすることで、上層側から吸収された尿等の液体の幅方向への拡散が規制され、長手方向への拡散が促進されるので、長手方向に長い楕円状に拡散して広がる。これにより吸収層の吸収能力を無駄なく利用することができ、その分吸収層の全体の量を少なくできるので、吸収性能を損なわずに軽量化および低コストを実現することができる。
又、上層を下層よりも狭幅としているので、吸収層の幅方向中央が厚く両端部が薄い形状となるので、着用時の身体へのフィット性に優れ、漏れが生じ難くなる。
又、幅方向側縁部に近接した部分を折り畳むので、折りを拡げた時に折り目が目立たず、角張らずに滑らかな形状となる。特に、通常、吸収性物品は長手方向に3つ折りされた後、長手方向に直角な方向に3つ折りし、包装された状態で販売されるので、折り目が目立たないことは有利である。


【0006】
前記上層の幅が前記下層の幅の30〜80%であると、尿等の液体が長手方向にさらに拡散し易い。
【0008】
前記吸収性物品の最大幅に対し、前記上層の幅が20〜70%であることが好ましい。
前記上層及び前記下層はフラッフパルプと高吸収性樹脂とを含み、前記上層中の前記高吸収性樹脂の重量割合が前記下層中の前記吸収性樹脂の重量割合より大きいことが好ましい。
前記トップシートと前記上層との間に、液体の拡散性を向上させる親水性不織布が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、軽量化および低コストを実現しつつ、吸収性能やフィット性を向上させた吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る吸収性物品の外観を示す斜視図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】吸収層の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る吸収性物品200の外観を示す斜視図、図2図1のA−A線に沿う断面図、図3は吸収層210の上面図である。
図1図2に示すように、本発明の実施形態に係る吸収性物品200は細長い片状をなし、身体接触側表面(図2の上面)を形成する液透過性のトップシート202と、液不透過性のバックシート204と、トップシート202とバックシート204の間に配置された吸収層210とを含んで構成されている。吸収層210は、トップシート202側の上層211と、バックシート204側の下層212とを積層してなり、上層211の幅W1は下層の幅W2よりも狭くなっている。又、トップシート202と上層211との間には、液体の拡散性を向上させる親水性不織布208が配置されている。
吸収性物品200は、長手方向を使用者の股部の前後に渡され、トップシート202が使用者の肌(股部)に触れるようにして装着され、吸収性物品200の両側部が立体ギャザー206として立ち上がって尿等の横漏れを防止する。又、吸収性物品200は、トップシート202の中央部付近がやや幅狭になっていて、股部に装着し易いようになっている。
【0012】
吸収層210が上層211と下層212とを有し、上層211を下層212よりも狭幅とすることで、上層211側から吸収された尿等の液体の幅方向への拡散が規制され、長手方向への拡散が促進されるので、長手方向に長い楕円状に拡散して広がる。これにより吸収層210の吸収能力を無駄なく利用することができ、その分吸収層210の全体の量を少なくできるので、吸収性能を損なわずに軽量化および低コストを実現することができる。
又、上層211を下層212よりも狭幅としているので、吸収層210の幅方向中央が厚く両端部が薄い形状となるので、着用時の身体へのフィット性に優れ、漏れが生じ難くなる。
なお、上層211の厚さをt1、下層212の厚さをt2としたとき、厚さt1が合計厚さ(t1+t2)の30%以上70%以下であると好ましく、30〜50%がさらに好ましい。これにより、上層211と下層212の一方のみが過度に吸収能力を発揮することなく、尿等の液体が長手方向に長い楕円状に拡散し易くなる。
【0013】
上記した効果を十分に発揮させるため、上層211の幅W1は、下層212の幅W2の30〜80%であることが好ましく、40〜70%であることがより好ましく、45〜65%であることが最も好ましい。W1がW2の30%未満であると、上層211の吸収能力が低下し、尿等の液体が長手方向に拡散し難くなる傾向にある。W1がW2の80%を超えると、上層211と下層212の幅方向の寸法差が小さくなり、やはり尿等の液体が長手方向に拡散し難くなる傾向にある。
【0014】
又、吸収性物品200の最大幅W3に対し、上層211の幅W1が20〜70%であることが好ましく、30〜60%であることがより好ましい。
吸収層210全体の厚さは2〜8mmであることが好ましい。
【0015】
図2図3に示すように、上層211側から見て、上層211から下層212に達する凹状の第1エンボス211eと、上層211から幅方向にはみ出した下層212のみに形成されて第1エンボス211eよりも浅い凹状の第2エンボス212eが形成されている。
吸収層210に第1エンボス211e及び第2エンボス212eを設け、第1エンボス211eが強く深いエンボスとなることで、第1エンボス211eに沿って液体の長手方向への拡散がさらに進行する。
なお、第1エンボス211e及び第2エンボス212eの平面パターンは、例えば連続した複数の線状、複数の線の組み合わせとすることができ、具体的には直線や曲線、格子状、網目状等、公知の任意のものとすることができる。
【0016】
上層211及び下層212は、いずれもフラッフパルプと高吸収性樹脂(高吸水性ポリマー;SAP)とを含むことが好ましい。又、上層211中の高吸収性樹脂の重量割合S1が、下層212中の高吸収性樹脂の重量割合S2より大きいことが好ましい。S1>S2とすることで、上層211の吸収性能を高くして、尿等の液体を上層211内で長手方向へ拡散させ易くなる。
SAPとしては、破砕タイプと、パールタイプ(逆相懸濁重合法により得られるもの)のどちらでも選択できる。
フラッフパルプとしては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ等の木材パルプが主に使用できる。また、コットンリンターなどの非木材パルプや熱融着性の合成繊維などを適宜フラッフパルプと混合することもできる。
高吸水性樹脂(SAP)は網目状の分子構造を有し、自重の数百倍の水を吸収してゲル状に膨潤し、その水を保持する機能を有するポリマーである。SAPには、合成ポリマー系と天然物由来系とがあり、合成ポリマー系としては、ポリアクリル酸系、ポリスルホン酸系、アクリルアミド系、ポリビニルアルコール系等が利用でき、天然物由来系としては、デンプン系、セルロース系等が利用できるが、特に限定されずにこれらを適宜用いることができる。
【0017】
吸収性物品200が、上層211の幅方向側縁部211sの外側の位置(折り目)Fで長手方向に折られている(3つ折りされている)ことが好ましい。一般に比較的厚い吸収層を折り畳むと、折り目部分が圧縮されて硬い感触になり易いが、吸収層210のうち上層211が形成されていない位置Fで長手方向に折り畳むことにより、折り目が硬い感触になることを防止する。
位置Fは、側縁部211sから外側に0〜10mmとすることが好ましい(図3の距離Gに相当)。このようにすると、幅方向側縁部211sに近接した部分を折り畳むので、折りを拡げた時に折り目が目立たず、角張らずに滑らかな形状となる。
なお、通常、吸収性物品200は長手方向に3つ折りされた後、長手方向に直角な方向に3つ折りし、包装された状態で販売される。
【0018】
次に、吸収性物品200のその他の構成部分について説明する。
トップシート202は、液透過性の親水性不織布であればよく、使用者の肌に接するため、感触が柔らかで、皮膚に刺激を与えない繊維材料から形成されている。トップシート202の坪量は20g/m以上が好ましい。トップシート202の坪量が20g/m未満であると、液戻り量が多くなり、着用者に不快感を与え、さらにはかぶれの原因になる。トップシート202は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維による、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布などが使用できる。特に液戻り量の少ないエアースルー不織布が好適である。
バックシート204は、吸収層210内において保持している液体などが下着に漏れないような防水性を有する液不透過性の材料から形成されていればよく、通気性のポリエチレンフィルムなどの薄いプラスチックフィルムとすることができるが、着用中にカサカサした音がしにくく、柔らかさを付与するよう、バックシート204にマイクロエンボスを施したり、プラスチックフィルムの外側に不織布を貼合わせたクロスライクバックシートを用いることもできる。
又、通気性のフィルムを用いてムレを低減することが好ましい。
【0019】
親水性不織布208は、トップシート202の下側に配置されて尿や汚物の拡散を促し、液体を広範囲に吸収層210に移動させて効率よく吸収させることができる。親水性不織布208は、厚さ0.2mm以上で、目付けが20g/m以上のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維による、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布などが使用できる。特に液戻り量の少ないエアースルー不織布が好適である。
立体ギャザー206は、スパンボンド不織布、スパンボンド/メルトブローの複合素材等の撥水性不織布から構成することができ、その目付けは特に限定されない。
【0020】
そして、トップシート202とバックシート204との間に吸収層210を挟持し、さらに適宜親水性不織布208や立体ギャザー206を配置した後、トップシート202とバックシート204とを全周にわたってホットメルト接着剤を用いて固定することで、吸収性物品200を製造することができる。接着剤としては、融点が100〜180℃程度の、スチレンーブタジエン−スチレン系共重合体、スチレンーイソプレン−スチレン系共重合体などの合成ゴム系;又はエチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤を使用できる。ホットメルト接着剤の塗布方法には、ノズルから溶融状態の接着剤を糸状に非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法などがあり、公知のあらゆる方法が利用できる。
又、上層211及び下層212が積層された吸収層210を同時にエンボス加工することで、厚みが大きい幅方向中央部(上層211)の第1エンボス211eが強くかつ深く形成され、厚みが小さい両端部(下層212)の第2エンボス212eが弱くかつ浅く形成される。
【0021】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0022】
<吸収性物品の製造>
図1図3に示す吸収性物品200を製造した。トップシート202は、20g/m2のエアースルー不織布とし、バックシート204は20g/m2 の非通気性ポリエチレンシートとし、親水性不織布(実施例2、比較例3、4のみ)は20g/m2 のエアースルー不織布とした。
吸収性物品200の長手方向の最大長さ480mm、上層211及び下層212の長手方向の長さ420mmとした。又、その他の寸法等の特性を表1に示す値とした。
なお、上層211のSAP重量を1.5gとし、下層212のSAP重量を2.0gとしたものを「通常品」とした。上層211のSAP重量を2.0gに増やし、下層212のSAP重量を5.0gに増やしたものを「高吸収品」とした。又、上層211と下層212を積層後の吸収層210に凹状のエンボス加工を施した。
得られた吸収性物品200、及びその各構成部分につき、以下の評価を行った。
【0023】
坪量:JIS P8124に基づいて測定した。
厚さ:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm 以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。
比容積:厚さを坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表した。
なお、坪量、厚さ、比容積の測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0024】
吸収性物品の吸収速度:重さ755.6gで中央に内径19mmの穴が開いている底面積16.8cmの円筒状の測定冶具を、吸収性物品200の中央の上に置き、測定冶具上部の穴から生理食塩水40mlを注入した。生理食塩水が吸水性物品200に接触した時から治具中央穴の縁に生理食塩水が完全に吸い込まれるまでの時間を計測した(1回目)。そして、3分経過後に再度40mlの生理食塩水を注入し、同様に吸収するまでの時間を計測し(2回目)、さらに3分経過後に再度40mlの生理食塩水を注入し、同様に吸収するまでの時間を計測した(3回目)。なお、上記した1回目、2回目、3回目の各吸収速度の測定は、いずれもN=3サンプルについて行ったものの平均値とした。又、1回目〜3回目の各吸収速度の合計値も算出した。上記合計値は、「通常品」の場合は好ましくは90〜210秒で、「高吸収品」の場合は好ましくは60〜150秒である。
液戻り量:吸収性物品200の中央に生理食塩水(「通常品」の場合は300ml、「高吸収品」の場合は450ml)を注入し、10分経過後に、予め重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製No.2ろ紙、直径55mm)を注入部の中心に置き、ろ紙の上に687gの錘を載せた(圧力;35g/cm)。錘を載せてから1分経過後に、ろ紙の重量を測り、試験前後のろ紙の重量差(g)を液戻り量とした。液戻り量は、N=3サンプルについて行ったものの平均値とした。液戻り量は、「通常品」の場合は好ましくは0〜0.6gで、「高吸収品」の場合は好ましくは0〜0.3gである。
【0025】
製品コスト:実施例1の吸収性物品200の1枚当たり、SAP、フラッフ、及び吸収性物品全体のコストを1.00としたときの比率とした。
吸水時の拡散距離:吸収層210の上層211側を上にして、平面上に伸ばして固定した後、上層211の長手方向及び幅方向の中央に36℃の生理食塩水150mlを漏斗を用いて注入した。そして、中央から長手方向、幅方向への食塩水の拡散距離をそれぞれ経時で測定した。
得られた結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1から明らかなように、吸収層の上層を下層よりも狭幅とし、上層の厚さを上層と下層の合計厚さの30%以上70%以下とし、上層及び下層に凹状の第1エンボス及び第2エンボスを形成した各実施例の場合、得られた吸収性物品の吸収速度(1〜3回目までの合計値が小さいことを意味する)が高く、さらに液戻り量が少なく、吸収性能に優れたものとなった。
又、各実施例の場合、吸水時に吸収層の長手方向への拡散が促進され、長手方向に長い楕円状に拡散して広がった。
【0028】
一方、吸収層の上層を下層と同幅とし、上層の厚さを上層と下層の合計厚さの30%未満とした比較例1、3の場合、吸水時に吸収層の長手方向への拡散性に劣るため、得られた吸収性物品の吸収速度及び液戻り量がそれぞれ実施例1,2よりも劣った。なお、比較例1、3の場合、それぞれ実施例1,2の吸収層の上層と下層を同幅にしただけであるので、製品コストは対応する実施例と同一となった。
吸収層の上層を下層と同幅とし、第2エンボスを形成しなかった比較例2,4の場合も、吸水時に吸収層の長手方向への拡散性に劣るため、得られた吸収性物品の吸収速度及び液戻り量がそれぞれ実施例1,2よりも劣った。なお、比較例2,4の場合、吸収性物品の吸収速度を高めるべく、比較例1、3よりも上層の坪量(フラッフ重量)を増やした。このため、対応する実施例と比べ、1回目〜3回目の各吸収速度の合計値は同等となったが製品コストは高くなった。
【符号の説明】
【0029】
200 吸収性物品
202 トップシート
204 バックシート
208 親水性不織布
210 吸収層
211 上層
211e 第1エンボス
211s 上層の幅方向の側縁部
212 下層
212e 第2エンボス
t1 上層の厚さ
t2 下層の厚さ
W1 上層の幅
W2 下層の幅
W3 吸収性物品の最大幅
F 長手方向の折り目
図1
図2
図3