【実施例1】
【0027】
図1は、船舶用の冷水生成システムを搭載した船舶の模式図であり、
図2は、実施例1に係る船舶用の冷水生成システムの概略構成図であり、
図3は、吸着式冷凍機の動作を説明する説明図である。
図1に示すように、冷水生成システム10は、船舶1に搭載される吸着式冷凍機11を備え、吸着式冷凍機11によって冷水を生成するシステムとなっている。冷水生成システム10が配設される船舶1は、いずれの船舶であってもよく、例えば、貨物船に適用してもよい。船舶1は、主機であるエンジン5が配設される機関室6と、船舶1に搭乗する搭乗者が居住する居住区7とを有している。機関室6は、複数の階層から構成され、各階層を昇降装置9により接続している。また、船舶1は、機関室6及び居住区7以外に設けられ、エンジン5からの排ガスを排出する煙突4を有している。そして、冷水生成システム10は、機関室6、居住区7または機関室6及び居住区7以外の区画に亘って適宜設けられている。つまり、冷水生成システム10は、冷水生成システム10を構成する各種機器が、船舶1の船種または型式等に応じて適宜配置される。なお、冷水生成システム10の配置の例示について説明は後述する。
【0028】
次に、
図2を参照し、冷水生成システム10について説明する。この冷水生成システム10は、船舶1に設けられる冷水利用設備に、冷水を生成して供給するものである。冷水利用設備としては、例えば、居住区7の環境温度を調整する空調装置の他、船舶に設けられる冷凍庫、またはマリンガスオイル(MGO:Marine Gas Oil)を運搬するタンカーに設けられるMGOを冷却するためのMGOクーラ等がある。なお、以下の説明では、冷水利用設備として空調装置8に適用した場合について説明する。
【0029】
図2に示すように、冷水生成システム10は、吸着式冷凍機11と、冷却設備としてのセントラルクーリングシステム(CCS:Central Cooling System)12と、加熱設備としてのエンジン5のエンジンジャケット13と、冷却水循環ライン(冷却水循環流路)L1と、温水循環ライン(温水循環流路)L2とを備えている。
【0030】
ここで、下記では、冷水、冷媒、冷却水、温水が説明されるが、それぞれ異なる目的で使用されている。上記したように、冷水は、吸着式冷凍機11によって生成される冷えた水(いわゆる、チラー水)であり、空調装置8等の冷水利用設備で使用されるものである。冷媒は、吸着式冷凍機11の内部を循環するものであり、冷水の冷却に使用されるものである。冷却水は、詳細は後述するが、吸着器22に供給されるものであり、吸着器22の内部に設けられる吸着熱交換器31aを冷却するために使用されるものである。温水は、詳細は後述するが、脱着器23に供給されるものであり、脱着器23の内部に設けられる吸着熱交換器31bを加熱するために使用されるものである。
【0031】
図3に示すように、吸着式冷凍機11は、蒸発器21、吸着器22、脱着器23及び凝縮器24を有しており、その内部は真空状態となっている。また、蒸発器21は、その内部が、吸着器22及び脱着器23の内部とそれぞれ連通し、凝縮器24は、その内部が、吸着器22及び脱着器23の内部とそれぞれ連通している。そして、吸着式冷凍機11の内部には、冷媒が設けられ、冷媒は、蒸発器21、吸着器22、脱着器23、凝縮器24、蒸発器21、・・・の順で循環している。なお、冷媒としては、水が用いられる。また、吸着式冷凍機11は、吸着器22の機能と脱着器23の機能とを、所定の時間ごとに切り替えている。
【0032】
蒸発器21は、鉛直方向の下方側に設けられている。蒸発器21は、その内部が、ダンパ26を介して吸着器22の内部に連通可能となっている。また、蒸発器21は、その内部が、ダンパ27を介して脱着器23の内部に連通可能となっている。蒸発器21の内部には、冷水が流通する冷水ライン(冷水流路)L3の一部と、凝縮器24から蒸発器21へ冷媒を供給する冷媒ラインL4の流出側の一部とが設けられている。冷水ラインL3には、冷媒ラインL4の流出側から液相の冷媒(液化冷媒)がかけられる。このため、冷水ラインL3は、冷水ラインL3に接触した液化冷媒が気化する潜熱によって冷却され、これにより、冷水ラインL3を流れる冷水が冷却される。気化した冷媒(気化冷媒)は、ダンパ26を介して吸着器22に流入する。
【0033】
吸着器22は、蒸発器21と凝縮器24との間に設けられており、脱着器23に隣接して配置されている。吸着器22は、その内部が、ダンパ26を介して蒸発器21の内部に連通可能となっている。また、吸着器22は、その内部がダンパ28を介して凝縮器24の内部に連通可能となっている。吸着器22の内部には、蒸発器21において気化した冷媒が流入する。吸着器22の内部には、流入した冷媒が吸着する吸着熱交換器31aが設けられている。吸着熱交換器31aには、吸着熱交換器31aとCCS12との間で冷却水を循環させる冷却水循環ラインL1の一部が設けられている。冷却水循環ラインL1は、蒸発器21において蒸発した冷媒の吸着よって発熱する吸着熱交換器31aを冷却しており、吸着熱交換器31aを冷却させることで、冷媒の吸着効率を高めている。
【0034】
脱着器23は、蒸発器21と凝縮器24との間に設けられており、吸着器22に隣接して配置されている。脱着器23は、その内部が、ダンパ27を介して蒸発器21の内部に連通可能となっている。また、脱着器23は、その内部がダンパ29を介して凝縮器24の内部に連通可能となっている。脱着器23の内部には、冷媒が吸着した吸着熱交換器31bが設けられている。吸着熱交換器31bには、吸着熱交換器31bとエンジンジャケット13との間で温水を循環させる温水循環ラインL2の一部が設けられている。温水循環ラインL2は、吸着熱交換器31bに吸着した冷媒を加熱しており、吸着熱交換器31bを加熱することで、冷媒を脱着(気化)させている。気化した冷媒は、ダンパ29を介して凝縮器24に流入する。
【0035】
ここで、上記したように、吸着器22の機能と脱着器23の機能とは、所定の時間ごとに切り替えられている。具体的に、吸着式冷凍機11は、その内部において、吸着器22の冷却水循環ラインL1と、脱着器23の温水循環ラインL2とを、図示しない流路切替弁により流路を切り替えることで、吸着器22の機能と脱着器23の機能とを切り替えている。
【0036】
凝縮器24は、鉛直方向の上方側に設けられている。凝縮器24は、その内部がダンパ28を介して吸着器22の内部に連通可能となっている。また、凝縮器24は、その内部が、ダンパ29を介して脱着器23の内部に連通可能となっている。凝縮器24の内部には、脱着器23において気化した冷媒が流入する。凝縮器24の内部には、冷却水が流通する冷却水循環ラインL1の一部と、凝縮器24から蒸発器21へ冷媒を供給する冷媒ラインL4の流入側の一部とが設けられている。冷却水循環ラインL1は、凝縮器24の内部に流入した冷媒を冷却しており、冷媒を冷却することで、気相の冷媒を液相にする。液相となった冷媒は、冷媒ラインL4の流入側から流入し、冷媒ラインL4を通過して、蒸発器21に供給される。
【0037】
このように構成された吸着式冷凍機11では、蒸発器21において、冷媒ラインL4から流出する液相の冷媒が冷水ラインL3にかけられると、冷媒は、気化する潜熱により冷水ラインL3を流通する冷水を冷却する。蒸発した冷媒は、吸着器22に流入する。吸着器22において、流入した冷媒は、吸着熱交換器31aに吸着する。このとき、吸着熱交換器31aは、冷却水によって冷却されている。所定の時間が経過すると、吸着熱交換器31aに供給されている冷却水が、図示しない流路切替弁によって温水に切り替えられることにより、吸着器22が脱着器23として機能する。脱着器23において、吸着熱交換器31bに吸着した冷媒は、吸着熱交換器31bが加熱され蒸発することで脱着する。脱着した冷媒は、凝縮器24に流入する。凝縮器24において、流入した冷媒は、冷却水循環ラインL1により冷却されることで凝縮し、凝縮した冷媒は、冷媒ラインL4を流通して、蒸発器21に流入する。
【0038】
図2に示すように、CCS12は、船舶1に設けられる冷却水系統35へ向けて冷却水を供給すると共に、冷却水系統35から還流した冷却水を冷却している。CCS12は、冷却水と海水とを間接的に熱交換させることで冷却水を冷却する間接冷却方式となっている。CCS12は、冷却水ライン(冷却水流路)L5と、冷却水クーラ41と、温度調整機構42と、冷却水ポンプ43とを有している。
【0039】
冷却水ラインL5は、冷却水クーラ41と冷却水系統35との間で冷却水を循環させる閉流路の循環ラインとなっている。この冷却水ラインL5の一部は、冷却水循環ラインL1の一部を兼ねている。冷却水クーラ41は、冷却水ラインL5に介設されている。冷却水クーラ41は、冷却水と海水との間で間接的に熱交換を行う熱交換器となっている。冷却水ポンプ43は、冷却水クーラ41の流入側の冷却水ラインL5に介設されている。冷却水ポンプ43は、冷却水系統35から還流した冷却水を、冷却水クーラ41へ向けて供給する。
【0040】
温度調整機構42は、冷却水系統35へ供給する冷却水を一定の温度に調整しており、例えば、調整後の冷却水の温度を38℃程度としている。温度調整機構42は、冷却水バイパスラインL6と、三方弁(調整弁)52と、水温計53とを有しており、三方弁52と水温計53とは、信号ラインS1により接続されている。
【0041】
冷却水バイパスラインL6は、その流入側が、冷却水ポンプ43と冷却水クーラ41との間の冷却水ラインL5に接続され、その流出側が、冷却水クーラ41と冷却水系統35との間の冷却水ラインL5に接続されている。
【0042】
三方弁52は、例えば、混合型の三方弁であり、冷却水クーラ41と冷却水系統35との間に設けられている。つまり、この三方弁52は、冷却水ラインL5と冷却水バイパスラインL6とが合流する合流部分、換言すれば、冷却水ラインL5と冷却水バイパスラインL6の流出側とが接続する接続部分に設けられている。このため、三方弁52は、その流入側の一つのポートに冷却水ラインL5の上流側が接続され、その他の一つのポートに冷却水バイパスラインL6が接続され、残りの一つのポートに冷却水ラインL5の下流側が接続されている。そして、三方弁52は、上流側の冷却水ラインL5から流入する冷却水と、冷却水バイパスラインL6から流入する冷却水とを混合し、混合した冷却水を下流側の冷却水ラインL5へ流出させている。
【0043】
水温計53は、三方弁52と冷却水系統35との間の冷却水ラインL5、つまり、三方弁52の流出側の冷却水ラインL5に設けられている。水温計53は、冷却水ラインL5を流通する冷却水の温度を計測しており、計測結果は、信号ラインS1を介して三方弁52へ向けて出力される。三方弁52は、水温計53により検出された検出温度に基づいて、開度(混合割合)を調整可能な自律制御式の弁であり、検出温度が一定の温度となるように、開度を自律調整している。
【0044】
従って、温度調整機構42において、水温計53が、冷却水ラインL5の温度を測定して、信号ラインS1を介して三方弁52に温度に関する信号を送ると、三方弁52は、水温計53により検出された検出温度に基づいて、冷却水バイパスラインL6の冷却水ラインL5への冷却水の流量を変化させることで、三方弁52の下流側における冷却水ラインL5の冷却水の温度が、所定の温度(38℃)となるように調整される。
【0045】
このように構成されたCCS12において、冷却水クーラ41で冷却された冷却水は、三方弁52へ向かって流通する。ここで、CCS12において、冷却水の温度が最も低くなる部分は、冷却水クーラ41の流出側となっており、例えば、冷却水の温度が32℃〜38℃となっている。そして、詳細は後述するが、冷却水クーラ41から流出した冷却水の一部は、冷却水循環ラインL1に流入する。三方弁52に流入した冷却水は、冷却水バイパスラインL6から流入する冷却水と混合され、所定の温度に調整された後、冷却水系統35に流入する。冷却水系統35に流入した冷却水は、冷却水系統35で利用されることで温度が上昇する。冷却水系統35を通過し、温度が上昇した冷却水は、冷却水ポンプ43へ向かって流通する。このとき、冷却水系統35を通過した後の冷却水の一部は、高温冷却水ラインL7へ向かって流入する。冷却水ポンプ43に流入した冷却水は、冷却水クーラ41へ向かって供給される。冷却水ポンプ43から排出された冷却水は、冷却水クーラ41に流入する。このとき、冷却水ポンプ43から排出された冷却水の一部は、冷却水バイパスラインL6に流入する。ここで、冷却水クーラ41に流入する冷却水の温度は、例えば、45℃〜50℃となっている。
【0046】
図2に示すように、エンジンジャケット13は、エンジン5の周囲に形成されており、冷却水が流通する高温冷却水ラインL7の一部となっている。このため、エンジン5は、エンジンジャケット13に冷却水が流通することで冷却される。
【0047】
高温冷却水ラインL7は、エンジンジャケット13を流れる冷却水を循環させる閉流路の循環ラインとなっており、冷却水ラインL5よりも高温となっている。また、高温冷却水ラインL7と冷却水ラインL5との間には、冷却水ラインL5から高温冷却水ラインL7へ向かって冷却水が流入する冷却水流入ラインL8と、高温冷却水ラインL7から冷却水ラインL5へ向かって冷却水が流出する冷却水流出ラインL9とが設けられている。また、この高温冷却水ラインL7には、高温冷却水ポンプ61と、温度調整機構62と、造水装置63とが設けられている。
【0048】
高温冷却水ポンプ61は、エンジンジャケット13の流入側の高温冷却水ラインL7に介設されている。高温冷却水ポンプ61は、エンジンジャケット13へ向けて冷却水を供給する。
【0049】
温度調整機構62は、エンジンジャケット13から流出する冷却水を一定の温度に調整しており、例えば、調整後の冷却水の温度を60℃〜85℃としている。なお、エンジンジャケット13から流出した冷却水は、温水として、温水循環ラインL2に供給される。温度調整機構62は、温度調整機構42とほぼ同様の構成となっており、上記の冷却水流入ラインL8と、三方弁71と、水温計72とを有しており、三方弁71と水温計72とは、信号ラインS2により接続されている。
【0050】
冷却水流入ラインL8は、その流入側が、冷却水ポンプ43の流入側の冷却水ラインL5に接続され、その流出側が、高温冷却水ポンプ61の流入側の高温冷却水ラインL7に接続されている。
【0051】
三方弁71は、例えば、混合型の三方弁であり、高温冷却水ポンプ61の流入側に設けられている。つまり、この三方弁71は、高温冷却水ラインL7と冷却水流入ラインL8とが合流する合流部分、換言すれば、高温冷却水ラインL7と冷却水流入ラインL8の流出側とが接続する接続部分に設けられている。このため、三方弁71は、その一つのポートに高温冷却水ラインL7の上流側が接続され、その他の一つのポートに冷却水流入ラインL8が接続され、残りの一つのポートに高温冷却水ラインL7の下流側が接続されている。そして、三方弁71は、上流側の高温冷却水ラインL7から流入する冷却水と、冷却水流入ラインL8から流入する冷却水とを混合し、混合した冷却水を下流側の高温冷却水ラインL7へ流出させている。
【0052】
水温計72は、エンジンジャケット13の流出側の高温冷却水ラインL7に設けられている。水温計72は、エンジンジャケット13から流出する冷却水の温度を計測しており、計測結果は、信号ラインS2を介して三方弁71へ向けて出力される。三方弁71は、水温計72により検出された検出温度に基づいて、開度(混合割合)を調整可能な自律制御式の弁であり、検出温度が一定の温度となるように、開度を自律調整している。
【0053】
従って、温度調整機構62において、水温計72が、高温冷却水ラインL7の温度を測定して、信号ラインS2を介して三方弁71に温度に関する信号を送ると、三方弁71は、水温計72により検出された検出温度に基づいて、冷却水流入ラインL8の高温冷却水ラインL7への冷却水の流量を変化させることで、エンジンジャケット13の流出側における高温冷却水ラインL7の冷却水の温度が、所定の温度(85℃程度)となるように調整される。
【0054】
造水装置63は、エンジンジャケット13で加熱された冷却水である温水を利用して、海水から清水を造り出す装置である。造水装置63は、エンジンジャケット13の流出側の高温冷却水ラインL7に設けられている。造水装置63は、高温冷却水ラインL7から一部の冷却水を抽水し、抽水した冷却水を利用し、利用後の冷却水を高温冷却水ラインL7へ返流している。
【0055】
続いて、冷却水循環ラインL1について説明する。冷却水循環ラインL1は、吸着器22の吸着熱交換器31aと、凝縮器24の内部と、冷却設備としてのCCS12との間で、冷却水を循環させる閉流路の循環ラインとなっている。冷却水循環ラインL1は、冷却水供給ライン(冷却水供給流路)L1aと、冷却水排出ライン(冷却水排出流路)L1bと、冷却水ラインL5の一部とを含んで構成されている。
【0056】
冷却水供給ラインL1aは、冷却水ラインL5から吸着器22の吸着熱交換器31aに冷却水を供給するラインとなっている。冷却水供給ラインL1aは、その流入側が、冷却水クーラ41と三方弁52との間の冷却水ラインL5に接続され、その流出側が、吸着熱交換器31aに接続されている。このため、冷却水供給ラインL1aは、温度が最も低くなる冷却水を、吸着熱交換器31aへ供給することができる。なお、冷却水クーラ41から流出する冷却水の温度はばらつくため、冷却水の温度を一定にするために、冷却水供給ラインL1aにバッファタンク等を設けてもよい。
【0057】
冷却水排出ラインL1bは、吸着熱交換器31aから凝縮器24の内部を通過して冷却水ラインL5に冷却水を還流するラインとなっている。冷却水排出ラインL1bは、その流入側が、吸着熱交換器31aに接続され、その流出側が、冷却水系統35の流出側の冷却水ラインL5、つまり、冷却水系統35と冷却水ポンプ43との間の冷却水ラインL5に接続されている。
【0058】
冷却水ラインL5の一部は、冷却水排出ラインL1bの流出側の接続部分から、冷却水供給ラインL1aの流入側の接続部分までの部位となっている。
【0059】
この冷却水循環ラインL1において、冷却水クーラ41から流出した冷却水の一部は、冷却水供給ラインL1aに流入し、冷却水供給ラインL1aを通過して、吸着器22の吸着熱交換器31aに流入する。吸着熱交換器31aに流入した冷却水は、吸着熱交換器31aを冷却することで、吸着熱交換器31aによる冷媒の吸着効率を高める。吸着熱交換器31aから流出した冷却水は、凝縮器24の内部に流入し、冷媒を冷却することで、冷媒を凝縮させる。凝縮器24から流出した冷却水は、冷却水排出ラインL1bを通過して、冷却水ラインL5に還流される。
【0060】
続いて、温水循環ラインL2について説明する。温水循環ラインL2は、脱着器23の吸着熱交換器31bと、加熱設備としてのエンジンジャケット13との間で、温水を循環させる閉流路の循環ラインとなっている。温水循環ラインL2は、温水供給ラインL2aと、温水排出ラインL2bと、高温冷却水ラインL7の一部とを含んで構成されている。
【0061】
温水供給ラインL2aは、高温冷却水ラインL7から脱着器23の吸着熱交換器31bに温水を供給するラインとなっている。温水供給ラインL2aは、その流入側が、エンジンジャケット13の流出側の高温冷却水ラインL7に接続され、その流出側が、吸着熱交換器31bに接続されている。このため、温水供給ラインL2aは、温度の高い温水を、吸着熱交換器31bへ供給することができる。なお、エンジンジャケット13から流出する温水の温度はばらつくため、温水の温度を一定にするために、温水供給ラインL2aにバッファタンク等を設けてもよい。また、この温水供給ラインL2aには、温水ポンプ75が設けられており、温水ポンプ75は、吸着熱交換器31bに温水を供給している。
【0062】
温水排出ラインL2bは、吸着熱交換器31bから排出された温水を高温冷却水ラインL7に還流するラインとなっている。温水排出ラインL2bは、その流入側が、吸着熱交換器31bに接続され、その流出側が、造水装置63の流出側の高温冷却水ラインL7、つまり、造水装置63と三方弁71との間の高温冷却水ラインL7に接続されている。
【0063】
高温冷却水ラインL7の一部は、温水排出ラインL2bの流出側の接続部分から、温水供給ラインL2aの流入側の接続部分までの部位となっている。
【0064】
この温水循環ラインL2において、エンジンジャケット13から流出した冷却水の一部は、温水として温水供給ラインL2aに流入し、温水供給ラインL2aを通過して、脱着器23の吸着熱交換器31bに流入する。吸着熱交換器31bに流入した温水は、吸着熱交換器31bを加熱することで、吸着熱交換器31bに吸着した冷媒を脱着させる。吸着熱交換器31bから流出した温水は、温水排出ラインL2bを通過して、高温冷却水ラインL7に還流される。
【0065】
このような冷水生成システム10で生成された冷水は、冷水ラインL3により空調装置8へ供給される。
図6は、空調装置の概略構成図である。
図6に示すように、空調装置8は、居住区7の室内環境が所定の温度となるように冷房を行っている。空調装置8は、冷水ラインL3の一部が内部に設けられる空調ダクト81と、空調ダクト81内の空気流れ方向において冷水ラインL3の上流側に設けられるファン82とを有している。空調装置8は、供給される冷水の温度に応じて、ファン82による風量を適宜制御している。なお、空調装置8は、居住区7の個別の室内に設けられ、吸着式冷凍機11から供給される冷水によって室内を調温する個別空調装置であってもよいし、吸着式冷凍機11から供給される冷水によって調温した空気を、空調ダクト81を介して居住区7の個別の室内に供給する統括空調装置であってもよい。
【0066】
ここで、
図2に示す点線で囲まれた部位が冷水生成システム10を構築するにあたって、追加される設備となる。換言すれば、
図2に示す点線で囲まれていない部位が、既存の船舶1に設けられる設備であり、既存の設備に、点線で囲まれた設備を追設することで、実施例1の冷水生成システム10を構築することができる。
【0067】
次に、再び、
図1を参照して、上記のように構成された冷水生成システム10の配置の一例について説明する。
図1に示すように、冷水生成システム10は、冷水生成システム10の一部を構成するCCS12が、機関室6の内部に配置されている。一方で、吸着式冷凍機11は、
図1の(a)に示すように、機関室6の内部に設けてもよいし、機関室6の外部、例えば、
図1の(b)に示すように、居住区7の内部に設けてもよい。
【0068】
図1の(a)に示すように、吸着式冷凍機11を機関室6の内部に設ける場合、吸着式冷凍機11は、CCS12の近傍となるため、吸着式冷凍機11とCCS12との間で、冷却水を循環させる冷却水循環ラインL1の配管長を短くすることができる。同様に、吸着式冷凍機11は、エンジン5の近傍となるため、吸着式冷凍機11とエンジン5のエンジンジャケット13との間で、温水を循環させる温水循環ラインL2(つまり、エンジンジャケット冷却水配管)の配管長を短くすることができる。このため、冷却水循環ラインL1における冷却水の温度ロス、及び温水循環ラインL2における温水の温度ロスを低減することができる。なお、空調装置8が個別空調装置である場合、吸着式冷凍機11から居住区7の各居室までのラインは、冷水ラインL3となっており、空調装置8が統括空調装置である場合、吸着式冷凍機11から居住区7の各居室までのラインは、空調ダクト81となる。
【0069】
一方で、
図1の(b)に示すように、吸着式冷凍機11を居住区7の内部に設ける場合、吸着式冷凍機11は、居住区7の近傍となる。このため、空調装置8が個別空調装置である場合には、吸着式冷凍機11と空調装置8との間の冷水ラインL3を短くすることができ、空調装置8が統括空調装置である場合には、空調装置8と居住区7の室内との間の空調ダクト81を短くすることができる。
【0070】
以上のように、実施例1の構成によれば、冷却水循環ラインL1及び温水循環ラインL2をそれぞれ閉流路にすることができるため、海水等が、冷却水循環ラインL1及び温水循環ラインL2に混入することを抑制することができる。特に、吸着式冷凍機11では、冷却水と温水との流路切替が行われることから、冷却水循環ラインL1を流通する冷却水が温水循環ラインL2に流入したり、温水循環ラインL2を流通する温水が冷却水循環ラインL1に流入したりしても、海水等が混入することを抑制することができる。以上から、吸着式冷凍機11の海水等によるコンタミネーションを抑制することができるため、例えば、吸着式冷凍機11の海水による腐食等を抑制することができ、これにより、吸着式冷凍機11を劣化し難い構成にすることができる。
【0071】
また、実施例1の構成によれば、冷却水供給ラインL1aの流入側を、冷却水クーラ41と三方弁52との間の冷却水ラインL5に接続することができる。このため、冷却水クーラ41によって冷却されたより温度の低い冷却水を、吸着式冷凍機11の吸着器22に供給することができる。このため、脱着器23に供給される温水の温度が低い場合であっても、温水と冷却水との温度差を、吸着式冷凍機11を作動可能な温度差にすることができる。また、脱着器23に供給される温水の温度が変わらなければ、冷却水の温度が低くなることで、温水と冷却水との温度差を大きくすることができるため、吸着式冷凍機11の冷却性能を向上させることができる。
【0072】
また、実施例1の構成によれば、温水供給ラインL2aの流入側を、エンジンジャケット13の流出側の高温冷却水ラインL7に接続することができる。このため、エンジンジャケット13において加熱されたより温度の高い温水を、吸着式冷凍機11の脱着器23に供給することができる。このため、吸着器22に供給される冷却水の温度が高い場合であっても、温水と冷却水との温度差を、吸着式冷凍機11を作動可能な温度差にすることができる。また、吸着器22に供給される冷却水の温度が変わらなければ、温水の温度が高くなることで、温水と冷却水との温度差を大きくすることができ、吸着式冷凍機11の冷却性能を向上させることができる。
【0073】
また、実施例1の構成によれば、冷却設備としてCCS12を適用することにより、冷却水と海水と間接的に熱交換して、冷却水を冷却することができるため、冷却水に海水が混入することを抑制することができる。
【0074】
また、実施例1の構成によれば、吸着式冷凍機11によって生成した冷水を、空調装置8に供給することができるため、空調装置8は、冷水を利用して、居住区7の室内を冷房することができる。
【実施例2】
【0075】
次に、
図4を参照して、実施例2に係る船舶用の冷水生成システム100について説明する。
図4は、実施例2に係る船舶用の冷水生成システムの概略構成図である。なお、実施例2では、実施例1と重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分についてのみ説明し、実施例1と同様のものについては、同じ符号を付して説明する。実施例1では、加熱設備としてエンジン5のエンジンジャケット13を利用したが、実施例2では、加熱設備として低圧蒸気ライン(蒸気流路)L10を利用している。
【0076】
図4に示すように、冷水生成システム100は、吸着式冷凍機11と、CCS12と、加熱設備としての蒸気ラインL10と、冷却水循環ラインL1と、温水循環ラインL2とを備えている。なお、吸着式冷凍機11、CCS12、冷却水循環ラインL1は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0077】
低圧蒸気ラインL10は、船舶1内で発生させた低圧蒸気が流通するラインである。なお、低圧蒸気は、エンジン5の排熱により生成される低圧の蒸気となっている。エンジン5には、エンジン5から排出される排ガスを流入させると共に、排ガスの排熱によって水等の循環水を加熱するエコノマイザ110が接続されている。
【0078】
エコノマイザ110には、低圧蒸気セパレータ111との間で循環水を循環させる第1ボイラ循環ラインL11の一部が、その内部に設けられている。このため、第1ボイラ循環ラインL11を流通する循環水は、エコノマイザ110により加熱され、加熱された循環水が低圧蒸気セパレータ111に供給される。低圧蒸気セパレータ111に供給された循環水は、低圧蒸気に分離される。そして、低圧蒸気セパレータ111は、分離した低圧蒸気を、蒸気及び蒸気ドレンを利用する蒸気・ドレン系統115に、低圧蒸気ラインL10を介して供給する。この低圧蒸気ラインL10には、温水循環ラインL2の温水を加熱するための温水ヒータ118が設けられている。
【0079】
また、エコノマイザ110には、補助ボイラ112との間で循環水を循環させる第2ボイラ循環ラインL12の一部が、その内部に設けられている。このため、第2ボイラ循環ラインL12を流通する循環水は、エコノマイザ110により加熱され、加熱された循環水が補助ボイラ112に供給される。補助ボイラ112に供給された循環水は、さらに加熱されることで、高圧蒸気が生成される。そして、補助ボイラ112は、生成した高圧蒸気を、蒸気・ドレン系統115に、高圧蒸気ラインL13を介して供給する。
【0080】
蒸気・ドレン系統115に供給された低圧蒸気及び高圧蒸気は、蒸気・ドレン系統115で利用されることで、蒸気ドレンとなる。蒸気ドレンは、ドレンライン(ドレン流路)L14を流通して、ドレンタンク116に流入する。ドレンラインL14には、ドレンクーラ117が設けられており、ドレンクーラ117は、蒸気ドレンを冷却する。
【0081】
続いて、温水循環ラインL2について説明する。温水循環ラインL2は、脱着器23の吸着熱交換器31bと、加熱設備としての低圧蒸気ラインL10の一部が内部に設けられる温水ヒータ118との間で、温水を循環させる閉流路の循環ラインとなっている。温水ヒータ118は、低圧蒸気ラインL10と温水循環ラインL2との間で熱交換を行うことで、温水循環ラインL2の温水を、蒸気ラインL10により加熱している。温水循環ラインL2は、温水供給ラインL2aと、温水排出ラインL2bとを含んで構成されている。
【0082】
温水供給ラインL2aは、その流入側が、温水ヒータ118に接続され、その流出側が、吸着熱交換器31bに接続されている。温水排出ラインL2bは、その流入側が、吸着熱交換器31bに接続され、その流出側が、温水ヒータ118に接続されている。
【0083】
この温水循環ラインL2において、温水ヒータ118から流出する加熱された温水は、温水供給ラインL2aを通過して、脱着器23の吸着熱交換器31bに流入する。吸着熱交換器31bに流入した温水は、吸着熱交換器31bを加熱することで、吸着熱交換器31bに吸着した冷媒を脱着させる。吸着熱交換器31bから流出した温水は、温水排出ラインL2bを通過して、温水ヒータ118に流入する。
【0084】
以上のように、実施例2の構成によれば、低圧蒸気ラインL10によって加熱された温度の高い温水を、脱着器23に供給することができるため、吸着式冷凍機11の冷却性能を向上させることができる。
【0085】
なお、実施例2では、低圧蒸気ラインL10により温水を加熱したが、高圧蒸気ラインL13により温水を加熱してもよい。