(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147560
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】燃焼機関用の点火プラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20170607BHJP
H01T 13/32 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/32
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-99104(P2013-99104)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-239438(P2013-239438A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】10 2012 208 085.6
(32)【優先日】2012年5月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ディルムダム
【審査官】
段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−257585(JP,A)
【文献】
実開昭63−035284(JP,U)
【文献】
特開2002−141154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
H01T 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極(11)および接地電極(12)を備えており、前記中心電極(11)と前記接地電極(12)の間に発生させる電気点火火花による燃料混合気の点火のために、前記中心電極と前記接地電極の間に点火ギャップ(13)が形成されている燃焼機関用の点火プラグにおいて、点火火花発生時の磨滅により生じる前記点火ギャップ(13)の拡大を最小限に抑えられるよう、中心電極(11)および接地電極(12)の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との比が大きくなるように、前記中心電極(11)および前記接地電極(12)が輪郭づけられており、前記中心電極(11)の径方向の周囲に少なくとも1つの径方向に環状の点火ギャップ(13)が形成されるように、前記接地電極(12)が配置されており、前記中心電極(11)が複数のセグメント(14)を、同一平面内に有しており、前記セグメント(14)のそれぞれの径方向の周囲にそれぞれ1つの点火ギャップ(13)が形成されるように、前記接地電極(12)が配置されていることを特徴とする点火プラグ。
【請求項2】
前記セグメント(14)が、断面が長方形または長円形の薄片として形成されており、それぞれの点火ギャップが長方形または長円形に輪郭づけられていることを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ。
【請求項3】
前記セグメント(14)が断面の丸い突出部として形成されており、それぞれの点火ギャップ(13)が円環状に輪郭づけられていることを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ。
【請求項4】
1つまたはそれぞれの前記点火ギャップ(13)を画定している中心電極(11)および接地電極(12)の表面(15、16)が、波形に輪郭づけられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の点火プラグ。
【請求項5】
ガス状の燃料と空気から成る燃料混合気を燃焼させるための燃焼機関において、請求項1から4のいずれか一項に記載の少なくとも1つの点火プラグを特徴とする燃焼機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく燃焼機関用の点火プラグに関する。さらに本発明は燃焼機関に関する。
【背景技術】
【0002】
点火プラグは、燃焼機関内で燃焼させるべき燃料混合気に電気点火するために用いられる。点火プラグのいわゆる中心電極といわゆる接地電極の間には点火ギャップが形成されており、この点火ギャップ内では、燃料混合気に点火するために電気点火火花を発生させることができる。点火プラグに関しては、原理的に、フック状接地電極を備えた点火プラグと環状接地電極を備えた点火プラグとを区別する。特許文献1は接地電極がフック状に形成された点火プラグを備えた燃焼機関を示しており、この場合の点火ギャップは、中心電極の軸方向に見た中心電極の端部とフック状接地電極の端部との間に軸方向に広がっている。環状接地電極を備えた点火プラグは特許文献2から知られており、この場合、中心電極と接地電極の間の点火ギャップは、中心電極の径方向の周囲に広がっている。
【0003】
点火プラグの接地電極および中心電極の表面は、その間で、燃料混合気に点火するために電気点火火花を発生させることができ、貴金属から成るかまたは貴金属でコーティングされており、この貴金属は点火火花発生時に磨滅する。
【0004】
この磨滅により中心電極と接地電極の間の点火ギャップが拡大し、これに関しては点火ギャップが次第に大きくなるにつれ、点火火花を発生させるためにより多くの点火エネルギーを供給しなければならなくなる。点火ギャップの寸法がクリティカルな大きさを超えたら点火プラグを交換しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008061242号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10145944号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに基づき本発明の課題は、燃焼機関用の新規の点火プラグおよびそのような点火プラグを備えた燃焼機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の燃焼機関用の点火プラグによって解決される。
【0008】
本発明に従い中心電極および接地電極は、点火火花発生時の磨滅により生じる点火ギャップの拡大を最小限に抑えられるよう、中心電極および接地電極の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との比が大きくなるように輪郭づけられている。
【0009】
本発明により、中心電極および接地電極の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との比が大きくなるように、中心電極および接地電極が輪郭づけられており、これにより点火火花発生時の磨滅による点火ギャップの拡大を最小限に抑えられる点火プラグを提案する。これで一方では点火火花の生成に必要なエネルギーを少なく保つことができ、他方では点火用電極の耐用期間を延長させることができる。
【0010】
本発明の有利な一変形形態によれば、中心電極が複数のセグメントを有しており、接地電極は、これらセグメントのそれぞれの径方向の周囲に、それぞれ1つの点火ギャップが形成されるように配置されている。点火用電極のこの形態は特に有利であり、中心電極および接地電極の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との特に有利な比を提供する。このような点火プラグは、磨滅した場合も点火エネルギーが少なくてすみ、また耐用期間が長い。
【0011】
1つまたはそれぞれの点火ギャップを画定している中心電極および接地電極の表面が波形に輪郭づけられることが好ましい。1つまたはそれぞれの点火ギャップを画定している中心電極および接地電極の表面を波形に輪郭づけることにより、中心電極および接地電極の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との比をさらに改善することができる。
【0012】
本発明による燃焼機関は請求項10で定義されている。
【0013】
本発明の好ましい変形形態は、従属請求項および以下の説明から明らかである。本発明の例示的実施形態を図面に基づいて詳しく説明するが、これに制限されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】第1の本発明による点火プラグの概略図である。
【
図1b】第1の本発明による点火プラグの概略図である。
【
図2】第2の本発明による点火プラグの
図1bに倣った概略図である。
【
図3a】第3の本発明による点火プラグの概略図である。
【
図3b】第3の本発明による点火プラグの概略図である。
【
図4】第4の本発明による点火プラグの
図3bに倣った概略図である。
【
図5】第5の本発明による点火プラグの
図3aに倣った概略図である。
【
図6a】第6の本発明による点火プラグの概略図である。
【
図6b】第6の本発明による点火プラグの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、燃焼機関用の、特に火花点火ガス機関用の、燃焼機関内で燃焼させるべき燃料混合気に点火するために用いられる点火プラグに関する。
【0016】
図1aおよび
図1bは、本発明による点火プラグ10の第1の好ましい例示的実施形態を示しており、この点火プラグ10は中心電極11および接地電極12を含んでいる。中心電極11と接地電極12の間には、燃料混合気に点火するための少なくとも1つの点火ギャップ13が形成されており、この場合の中心電極11と接地電極12の間では、それぞれの点火ギャップ13をまたいで1つの電気点火火花を発生させることができる。
【0017】
本発明による点火プラグ10では、点火火花発生時の磨滅により生じる点火ギャップ13の拡大を最小限に抑えられるよう、中心電極11および接地電極12の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との比が大きくなるように、中心電極11および接地電極12が輪郭づけられている。
【0018】
図1aおよび
図1bの例示的実施形態では、中心電極11の径方向に見た中心電極11の周囲に複数の環状の点火ギャップ13が形成されるように、接地電極12が配置されている。
【0019】
図1aおよび
図1bの例示的実施形態では、このような環状の、中心電極11の径方向の周囲に配置された点火ギャップ13が全部で5つ存在している。
【0020】
図1aおよび
図1bでは中心電極11が複数のセグメント14を有しており、これらセグメントは
図1aおよび
図1bでは長方形または長円形のランド部または薄片として実施されており、中心電極11の径方向に見たこれらセグメント14のそれぞれの周囲には、長方形または長円形に輪郭づけられた点火ギャップ13が形成されている。
【0021】
複数の点火ギャップ13を有する点火プラグ10のこのような形態により、中心電極11および接地電極12の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との特に有利な比を提供することができ、これにより点火火花の発生により点火プラグ10が磨滅してもなお、点火火花の発生に必要な点火エネルギーを少ししか増やす必要がなく、したがって点火用電極の長い耐用期間を保証することができる。
【0022】
図2は、
図1aおよび
図1bの例示的実施形態の本発明による点火プラグの一変形形態を示しており、この場合も、径方向に見た中心電極11、より詳しくは中心電極のセグメント14と接地電極12との間に複数の点火ギャップ13が形成されており、ただし
図1aおよび
図1bの例示的実施形態とは違い
図2の例示的実施形態では、中心電極11のセグメント14が断面の丸い突出部として形成されており、この場合、それぞれの点火ギャップ13は円環状に輪郭づけられている。
【0023】
図3aおよび
図3bは点火プラグ20の1つの例示的実施形態を示しており、この点火プラグも中心電極21および接地電極22を備えており、この接地電極22は、中心電極21の径方向の周囲に、環状で径方向の点火ギャップ23が1つだけ形成されるように位置決めされている。
【0024】
図3aおよび
図3bの例示的実施形態では、点火火花の発生による点火ギャップ23の拡大を最小限に抑えるための、中心電極21および接地電極22の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との本発明による比を提供するために、中心電極21の断面が長方形に輪郭づけまたは形成されており、接地電極22は、中心電極21の径方向の周囲に、長方形に輪郭づけられた点火ギャップ23が1つだけ形成されるように配置されている。
【0025】
図4は、
図3aおよび
図3bの点火用電極20の一変形形態を示しており、この場合の中心電極21の断面は長円形に形成されており、この場合、中心電極21と接地電極22の間には、中心電極21の径方向の周囲に、長円形の点火ギャップ23が1つだけ形成または位置決めされている。
【0026】
図6aおよび
図6bは、
図3aおよび
図3bの例示的実施形態に対するさらなる一変形形態を示しており、この場合も、点火ギャップ23が1つだけ、径方向に見た中心電極21の周囲に形成されており、
図6aおよび
図6bの例示的実施形態では、こうして中心電極21と接地電極22の間の環状の点火ギャップ23の半径が拡大することにより、中心電極21および接地電極22の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積と間の所望の比を提供するために、中心電極21および接地電極22の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との本発明による比は、中心電極21が、点火ギャップ23を画定しているその端部で、径方向にトーラス状に拡張または形成されることによって提供される。
【0027】
図5は、中心電極31と、フック状に形成された接地電極32とを備えた本発明によるさらなる点火用電極30の一実施形態を示しており、
図5では点火ギャップ33は、中心電極31と接地電極32の軸方向の間で、電極31と32の間に形成されており、つまり接地電極32が、中心電極31から軸方向に、軸方向の点火ギャップ33が形成されるように離隔することによって形成されている。
【0028】
これに関し、点火ギャップ33を画定している電極31および32の表面34または35は、電極31および32の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との本発明による比を提供するため、波形に輪郭づけられている。
【0029】
図1a〜
図4および
図6a〜
図6bの例示的実施形態でも、電極の、点火火花を発生させるために供されている表面積と、点火火花発生時の磨滅体積との比をさらに大きくするため、中心電極11および接地電極12の対応する表面15、16または中心電極21および接地電極22の表面24および25を、波形に輪郭づけ得ることを指摘しておく。
【符号の説明】
【0030】
10 点火プラグ
11 中心電極
12 接地電極
13 点火ギャップ
14 セグメント
15 表面
16 表面
20 点火プラグ
21 中心電極
22 接地電極
23 点火ギャップ
24 表面
25 表面
30 点火プラグ
31 中心電極
32 接地電極
33 点火ギャップ
34 表面
35 表面