(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147598
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】リーフスプリングの撓み抑制構造及び撓み抑制部材
(51)【国際特許分類】
B60G 7/04 20060101AFI20170607BHJP
B60G 11/10 20060101ALI20170607BHJP
B60G 5/04 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
B60G7/04
B60G11/10
B60G5/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-151581(P2013-151581)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-20654(P2015-20654A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石原 寛之
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−203131(JP,A)
【文献】
実開昭58−079410(JP,U)
【文献】
実開昭54−155210(JP,U)
【文献】
仏国特許出願公開第2791609(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラニオン式サスペンションのリーフスプリングと、
前記リーフスプリングと車両のサイドフレームとの間の隙間に位置して前記サイドフレームに取付けられるように構成され、前記リーフスプリングのうち前記サイドフレームと対向する側面である当接面が、前記サイドフレームに向かって撓むことを、前記当接面との当接によって抑制するリーフスプリングの撓み抑制部材と、
を備え、
前記撓み抑制部材は、
平板形状を有する平板部であって、前記平板部の厚み方向で対向する一対の板面の一方が前記当接面と対向する対向面に設定される前記平板部と、
前記平板部の縁端面から前記平板部の板面方向に沿って突出して前記対向面側に前記平板部の厚さ方向に沿った段差を形成する突部とを備える
ことを特徴とするリーフスプリングの撓み抑制構造。
【請求項2】
前記トラニオン式サスペンションは、
車両の前後方向に沿って並ぶ一対の車軸の間に配置されたトラニオンシャフトを備え、
前記平板部は、
前記トラニオンシャフトよりも前記車軸に近い第1縁端面と、
前記車軸よりも前記トラニオンシャフトに近い第2縁端面と、
を備え、
前記第1縁端面と前記第2縁端面とが車両の前後方向に沿って並び、
前記第1縁端面が前記縁端面である
請求項1に記載のリーフスプリングの撓み抑制構造。
【請求項3】
前記撓み抑制部材は、
前記平板部の厚み方向に直交する平面に対して面対称である
請求項1または2に記載のリーフスプリングの撓み抑制構造。
【請求項4】
前記撓み抑制部材は、
前記平板部の厚さ方向を含む平面に対して面対称である
請求項1〜3のいずれか1つに記載のリーフスプリングの撓み抑制構造。
【請求項5】
トラニオン式サスペンションのリーフスプリングと、車両のサイドフレームとの間の隙間に位置して前記サイドフレームに取付けられるように構成され、前記リーフスプリングのうち前記サイドフレームと対向する側面である当接面が、前記サイドフレームに向かって撓むことを、前記当接面との当接によって抑制するリーフスプリングの撓み抑制部材であって、
平板形状を有する平板部であって、前記平板部の厚み方向で対向する一対の板面の一方が前記当接面と対向する対向面に設定される前記平板部と、
前記平板部の縁端面から前記平板部の板面方向に沿って突出して前記対向面側に前記平板部の厚さ方向に沿った段差を形成する突部とを備える
ことを特徴とするリーフスプリングの撓み抑制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、トラニオン式サスペンションを搭載した車両に適用され、サイドフレームに向かって撓むリーフスプリングの撓みを抑制するリーフスプリングの撓み抑制構造及び撓み抑制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1のように、タンデムアクスルのサスペンションとしてトラニオン式サスペンションが知られている。トラニオン式サスペンションは、車両の前後方向に沿って延びるリーフスプリングを備え、車両の前後方向に沿って延びるサイドフレームと、このリーフスプリングとは、車幅方向に沿って並んでいる。トラニオン式サスペンションは、車幅方向に沿って延びるトラニオンシャフトを備え、トラニオンシャフトは、トラニオンシャフトを軸として回動自在な回動ベースを支持している。リーフスプリングは、回動ベースを介してトラニオンシャフトに連結し、トラニオンシャフトは、サイドフレームに連結している。
【0003】
トラニオンシャフトは、車両の前後方向に沿って並ぶ一対の車軸の間に位置している。リーフスプリングにおいて、車両の前後方向における中央部分は、回動ベースに連結し、車両の前後方向における前端部は、前側の車軸を支持し、車両の前後方向における後端部は、後側の車軸を支持している。ここで、車軸とサイドフレームとが車幅方向に沿って相対移動するとき、リーフスプリングでは、車軸を支持する端部と、回転ベースに連結する中央部分とが車幅方向に沿って相対移動する。結果として、リーフスプリングとサイドフレームとの間隔が狭くなるように、リーフスプリングは、中央部分を支点として、サイドフレームに向かって撓む。そこで、サイドフレームとリーフスプリングとの接触を抑えるため、サイドフレームとリーフスプリングとの間には、こうした撓みを抑える平板形状の撓み抑制部材がサイドフレームに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−173529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、撓み抑制部材は、撓み抑制部材とリーフスプリングとの当接によって、リーフスプリングとサイドフレームとの接触を抑えている。そのため、リーフスプリングと撓み抑制部材との接触によって撓み抑制部材が摩耗すると、リーフスプリングに許容される撓みの精度を保つために、撓み抑制部材の交換が必要となる。
【0006】
一方で、撓み抑制部材の摩耗の度合いは、車両の走行履歴に応じて大きく異なるため、撓み抑制部材の交換の要否は、撓み抑制部材の板厚に基づいて判断されることが好ましい。しかし、撓み抑制部材の摩耗の度合いは、撓み抑制部材において必ずしも均一ではないため、板厚の測定部位に応じて、摩耗の度合いの評価結果にばらつきが発生してしまう。
【0007】
本開示の技術は、摩耗の度合いの評価結果にばらつきが発生することが抑えられるリーフスプリングの撓み抑制構造及び撓み抑制部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するリーフスプリングの撓み抑制構造は、トラニオン式サスペンションのリーフスプリングと、前記リーフスプリングと車両のサイドフレームとの間の隙間に位置して前記サイドフレームに取付けられるように構成され、前記リーフスプリングのうち前記サイドフレームと対向する側面である当接面が、前記サイドフレームに向かって撓むことを、前記当接面との当接によって抑制するリーフスプリングの撓み抑制部材と、を備え、前記撓み抑制部材は
、平板形状を有する平板部
であって、前記平板部の厚み方向で対向する一対の板面の一方が前記当接面と対向する対向面に設定される前記平板部と、前記平板部の縁端面から前記平板部の板面方向に沿って突出して前記対向面側に前記平板部の厚さ方向に沿った段差を形成する突部とを備える。
【0009】
上記課題を解決するリーフスプリングの撓み抑制部材は、トラニオン式サスペンションのリーフスプリングと、車両のサイドフレームとの間の隙間に位置して前記サイドフレームに取付けられるように構成され、前記リーフスプリングのうち前記サイドフレームと対向する側面である当接面が、前記サイドフレームに向かって撓むことを、前記当接面との当接によって抑制するリーフスプリングの撓み抑制部材であって、平板形状を有
する平板部であって、前記平板部の厚み方向で対向する一対の板面の一方が前記当接面と対向する対向面に設定される前記平板部と、前記平板部の縁端面から前記平板部の板面方向に沿って突出して前記対向面側に前記平板部の厚さ方向に沿った段差を形成する突部とを備える。
【0010】
これらの構成によれば、平板部の縁端面が平板部の厚さ方向に沿った段差を有する。この段差は、平板部が摩耗すると形状が変化する、そのため、段差の形状を目視により確認することで撓み抑制部材の摩耗の度合いが把握され、摩耗の度合いの評価結果にばらつきが生じにくくなるとともに、撓み抑制部材の交換の要否が判断可能である。
【0011】
上記リーフスプリングの撓み抑制構造において、前記トラニオン式サスペンションは、車両の前後方向に沿って並ぶ一対の車軸の間に配置されたトラニオンシャフトを備え、前記平板部は、前記トラニオンシャフトよりも前記車軸に近い第1縁端面と、前記車軸よりも前記トラニオンシャフトに近い第2縁端面と、を備え、前記第1縁端面と前記第2縁端面とが車両の前後方向に沿って並び、前記第1縁端面が前記縁端面であることが好ましい。
【0012】
リーフスプリングの撓み量は、トラニオンシャフト寄りの部位よりも車軸寄りの部位ほど大きくなる。上記構成によれば、リーフスプリングにおいて撓み量が大きい部位に対応する第1縁端面に段差が設けられている。その結果、段差の形状が目視にて確認されることによって、撓み抑制部材のうちで最も薄い部分の板厚が高い精度の下で把握される。その結果、摩耗の度合いの評価結果にばらつきが生じにくくなるとともに、段差の形状に基づいて撓み抑制部材の交換の要否が判断されることについての信頼性が高められる。
【0013】
上記リーフスプリングの撓み抑制構造において、前記撓み抑制部材は、前記平板部の厚み方向に直交する平面に対して面対称であることが好ましい。
トラニオンシャフトよりも前記車両の前方に配置される撓み抑制部材を前側撓み抑制部材とし、後方に配置される撓み抑制部材を後側撓み抑制部材とすると、上記構成の撓み抑制部材は、互いに異なる板面をリーフスプリングに対向させることにより、前側撓み抑制部材あるいは後側撓み抑制部材として適用可能である。すなわち、前側撓み抑制部材及び後側撓み抑制部材の形状が共通化されることから、撓み抑制部材の生産性の向上やコストの削減が図られる。
【0014】
上記リーフスプリングの撓み抑制構造において、前記撓み抑制部材は、前記平板部の厚さ方向を含む平面に対して面対称であることが好ましい。
この構成によれば、撓み抑制部材は、段差の形成されている部位をリーフスプリング側に配置した状態でサイドフレームに取り付けられるだけで、前側撓み抑制部材及び後側撓み抑制部材の双方に適用可能である。すなわち、撓み抑制部材の交換作業に関する作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の技術におけるリーフスプリングの撓み抑制部材の一実施形態が適用されたトラニオン式サスペンションの側面図。
【
図3】
図2の3−3線における撓み抑制部材の断面構造を示す断面図。
【
図4】(a)摩耗前の撓み抑制部材がサイドフレームに取り付けられた状態を模式的に示す図、(b)摩耗により段差が消失した状態の撓み抑制部材を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1〜
図4を参照して、本開示におけるリーフスプリングの撓み抑制構造及び撓み抑制部材の一実施形態について説明する。
図1に示されるように、トラニオン式サスペンション10は、車両の前後方向に並ぶ一対の車軸11,12の間に、車幅方向に延びるトラニオンシャフト13が配設されている。トラニオンシャフト13は、トラニオンブラケット14を介してサイドフレーム15に連結されている。トラニオンシャフト13には、そのトラニオンシャフト13を軸として回動自在に回動ベース16が連結されている。回動ベース16には、車両の前後方向に延びてリーフスプリング17の中央部分が一対のUボルト18によって連結されている。リーフスプリング17は、複数の板ばねを積層させて束ねたものであって、一方の端部で前側の車軸11を支持し、他方の端部で車軸12を支持する。一対の車軸11,12は、複数のトルクロッド19によって車両の前後方向における位置決めがなされる。リーフスプリング17のうちでサイドフレーム15に対向する側面が当接面17aである(
図4(b)参照。)。
【0017】
サイドフレーム15には、サイドフレーム15側へのリーフスプリング17の撓みを抑制する一対の撓み抑制部材20が図示されないボルトによって取り付けられている。一対の撓み抑制部材20は、同じ形状をなしている。本実施形態において、一対の撓み抑制部材20のうちで車軸11側に配置される撓み抑制部材20は、トラニオンシャフト13よりも車両の前側に配置される前側撓み抑制部材である。また、一対の撓み抑制部材20のうちで車軸12側に配置される撓み抑制部材20は、トラニオンシャフト13よりも車両の後側に配置される後側撓み抑制部材である。
【0018】
次に、
図2及び
図3を参照して撓み抑制部材20の構造について後側撓み抑制部材を用いて説明する。
図2に示されるように、撓み抑制部材20は、ダクタイル鋳鉄等の金属からなる。撓み抑制部材20の平板部21は、互いに対向する一対の板面21a,21b(板面21bは
図3を参照のこと。)を有し、一対の板面21a,21bの一方がリーフスプリング17に対向する対向面として設定され、一対の板面21a,21bの他方がサイドフレーム15に取り付けられる取付面として設定される。平板部21は、厚み方向を含む平面22に対して面対称の形状に形成される。平板部21は、サイドフレーム15に撓み抑制部材20が取り付けられた状態(以下、単に「取付状態」という。)にて車両の前後方向で並ぶ縁部である一対の縁端部23,24を備える。また、平板部21は、下縁部25に近づくほど板幅が狭くなっており、縁端部23では下縁部25に遠い部位ほど車軸12側に配置され、縁端部24では下縁部25から近い部位ほど車軸12側に配置される。
【0019】
平板部21には、サイドフレーム15に撓み抑制部材20を取り付けるためのボルトが螺合する4つの取付部26,27,28,29が形成されている。これらの取付部26〜29は、平板部21を厚み方向に貫通しており、車両の上下方向におけるリーフスプリング17の可動範囲を考慮したうえでリーフスプリング17に対向しない位置に形成されている。また、取付部26の形成位置と取付部28の形成位置は平面22に対して対称であり、取付部27の形成位置と取付部29の形成位置も平面22に対して対称である。
【0020】
撓み抑制部材20は、平板部21の縁端面21cに平板部21の板面方向に沿って突出する突部31と、平板部21の縁端面21dから平板部21の板面方向に沿って突出する突部32と、を備える。突部31,32は、取付状態にてリーフスプリング17に対向する平板部21の縁に倣うように形成されている。突部31,32は、平板部21と同様、平面22に対して面対称な形状に形成されている。
【0021】
図3に示されるように、撓み抑制部材20は、平板部21の厚み方向に直交する面であって突部31,32を通る平面33に対して面対称の形状を有する。撓み抑制部材20には、平板部21と突部31とによって、厚み方向における段差として板面21a側の段差34と板面21b側の段差35とが形成される。また、撓み抑制部材20には、平板部21と突部32とによって、板面21a側の段差36と板面21b側の段差37とが形成される。すなわち、平板部21の縁端面21cは、突部31によって段差34,35が形成された段差面であり、平板部21の縁端面21dは、突部32によって段差36,37が形成された段差面である。
【0022】
また、撓み抑制部材20が平面33に対して面対称な形状を有するうえで、突部31は、板面21bを基準にした面間距離がL1となる位置に突部31の面31aが設定され、また、板面21aを基準にした面間距離がL1となる位置に突部31の面31bが設定される。また、突部31,32の突出量は、リーフスプリング17と各部材との位置関係、回動ベース16に対するリーフスプリング17の連結位置、これらを含む車両の設計事項に基づいて、サイドフレーム15側へのリーフスプリング17の撓みが平板部21によって抑制される突出量に設定される。
【0023】
次に、
図4を参照して、上述した構成の撓み抑制部材20の作用について説明する。なお、
図4における撓み抑制部材20は、リーフスプリング17に対向する対向面として板面21aが設定された後側撓み抑制部材である。
【0024】
図4(a)に示されるように、撓み抑制部材20は、板面21aが対向面として設定された後側撓み抑制部材であるため、縁端部23が車軸12側に配設され、縁端部24がトラニオンシャフト13側に配置される。そのため、縁端面21cが第1縁端面に設定され、縁端面21dが第2縁端面に設定されている。
【0025】
リーフスプリング17は、車軸12とサイドフレーム15との相対移動によってサイドフレーム15側へ撓むとき、回動ベース16に対して連結された部分を支点として撓む。つまり、リーフスプリング17の撓み量は、
図4(a)において二点鎖線で示されるように、車軸12側の部位ほど大きくなる。そのため、撓み抑制部材20は、リーフスプリング17の当接面17aとの当接により段差34が優先的に摩耗する。
【0026】
図4(b)に示されるように、段差34の摩耗が進行すると、やがて段差34は消失する。すなわち、段差34の形状が目視で確認されることで撓み抑制部材20の摩耗の度合いが把握され、撓み抑制部材20の交換の要否が判断可能である。そして、段差34が確認される限り、平板部21の板厚は、面間距離L1が確保される。
【0027】
上記のように、撓み抑制部材20の交換の要否は、対向面である板面21aによって形成される段差34と段差36とのうち、摩耗量の大きい段差34の形状に基づいて判断される。すなわち、撓み抑制部材20の交換の要否を判断する材料となる段差は、トラニオンシャフト13よりも車軸12側でリーフスプリング17に対向する段差である。そして、段差34の形状を目視にて確認することによって、撓み抑制部材20の平板部21のうちで摩耗量の大きい部位の板厚が高い精度の下で把握される。その結果、段差34の形状に基づいて撓み抑制部材20の交換の要否が判断されることについての信頼性が高められる。また、突部31は、
図3に示したように板面21a,21bからの面間距離L1を基準として形成位置が定められる。そのため、段差34の形状を確認することにより、サイドフレーム15に対するリーフスプリング17の撓みの抑制位置が容易に把握される。
【0028】
また、撓み抑制部材20が平面33に対して面対称な形状を有する。そのため、1つの撓み抑制部材20は、対向面に板面21aが設定されることで後側撓み抑制部材として適用可能であり、また、対向面に板面21bが設定されることで前側撓み抑制部材としても適用可能である。すなわち、前側撓み抑制部材及び後側撓み抑制部材の形状が共通化される。その結果、撓み抑制部材20の生産性の向上やコストの削減が図られる。
【0029】
また、撓み抑制部材20は、平面33に対して面対称な形状、且つ平面22に対して面対称な形状を有しており、これにより段差34〜37を備えている。そのため、前側撓み抑制部材として使用される場合であれ、後側撓み抑制部材として使用される場合であれ、対向面に設定される板面は、板面21a,21bのどちらであってもよい。すなわち、撓み抑制部材20の取付時、作業者は、対向面に設定される板面について考慮することなく、撓み抑制部材20をサイドフレーム15に取り付けるだけでよい。その結果、撓み抑制部材20の交換作業に関する作業性が向上する。
【0030】
以上説明したように、上記実施形態のリーフスプリングの撓み抑制部材及び撓み抑制構造によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)段差34の形状が目視で確認されることで撓み抑制部材20の摩耗の度合いの評価にばらつきが生じることが抑えられる。そして、段差34の形状により撓み抑制部材20の摩耗の度合いが把握され、撓み抑制部材20の交換の要否が判断可能である。
【0031】
(2)撓み抑制部材20の交換の要否を判断する材料となる段差34は、トラニオンシャフト13よりも車軸12側でリーフスプリング17に対向する段差である。そのため、段差34の形状を目視にて確認することにより撓み抑制部材20の平板部21のうちで摩耗量の大きい部位の板厚が高い精度の下で把握される。その結果、段差34の形状に基づいて撓み抑制部材20の交換の要否が判断されることについての信頼性が高められる。
【0032】
(3)撓み抑制部材20が平面33に対して面対称な形状を有することから、撓み抑制部材20の生産性の向上やコストの削減が図られる。
(4)撓み抑制部材20が平面33に対して面対称な形状を有し、且つ平面22に対して面対称な形状を有する。その結果、撓み抑制部材20の交換作業に関する作業性が向上する。
【0033】
(5)平板部21は、下縁部25に近づくほど板幅が狭くなっており、取付状態において縁端部23のうちで下縁部25から遠い部位ほど車軸12側に配置される。これにより、平板部21のうちで摩耗量が大きい部分が下縁部25寄りの部位に形成されにくくなるため、当該部分が特定されやすくなる。
【0034】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・撓み抑制部材は、厚み方向を含む平面22に対して面対称の形状でなくてもよい。例えば、撓み抑制部材は、撓み抑制部材20において突部32が割愛された構成であってもよい。こうした構成であっても、平板部21の縁端面21cに突部31が含まれることで前側撓み抑制部材及び後側撓み抑制部材の双方に適用可能である。
【0035】
また、撓み抑制部材20は、厚み方向に直交する平面33に対して面対称でなくともよい。例えば、撓み抑制部材は、撓み抑制部材20において突部31,32の少なくとも一方が取付面である板面と面一な面を有していてもよい。
【0036】
これらのことから、撓み抑制部材は、撓み抑制部材20において段差34〜37のうちの少なくとも1つが形成されていればよい。つまり、撓み抑制部材は、平板部21の縁端面21c,21dの少なくとも一方に板面方向に突出する突部が含まれていればよく、また、取付面として設定される板面と面一な面を有していてもよい。
【0037】
・撓み抑制部材20では、
図4においてトラニオンシャフト13側に配置される段差36の形状に基づいて摩耗の度合いが判断されてもよい。
・また、撓み抑制部材20では、4つの取付部26〜29付近では平板部21が摩耗しない。そのため、撓み抑制部材20は、リーフスプリング17との接触により対向面側の一対の段差のうちで車軸12側に配置される段差34の周辺のみが摩耗するように設計することによって、以下の(a)〜(d)に示す4つの用途で使用可能である。
【0038】
(a)板面21aが対向面に設定される後側撓み抑制部材。
(b)板面21bが対向面に設定される後側撓み抑制部材。
(c)板面21aが対向面に設定される前側撓み抑制部材。
(d)板面21bが対向面に設定される前側撓み抑制部材。
しかも、上記(a)(b)においてリーフスプリング17の撓みの抑制位置が変化することはなく、同様に、上記(c)(d)においてリーフスプリング17の撓み抑制位置が変化することもない。
【0039】
・突部は、車幅方向にてリーフスプリング17に対向する部分を含んでいればよく、平板部21の周側面の全周にわたって形成されていてもよい。
・取付状態において平板部21の縁端部23,24は、鉛直方向に沿うように配設される形状であってもよいし、下縁部25に近い部位ほど車軸側に配設される形状であってもよい。
【0040】
・取付部は、ボルトが挿通する挿通孔であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…トラニオン式サスペンション、11,12…車軸、13…トラニオンシャフト、14…トラニオンブラケット、15…サイドフレーム、16…回動ベース、17…リーフスプリング、17a…当接面、18…Uボルト、19…トルクロッド、20…撓み抑制部材、21…平板部、21a,21b…板面、21c,21d…縁端面、22…平面、23,24…縁端部、25…下縁部、26,27,28,29…取付部、31…突部、31a,31b…面、32…突部、33…平面、34,35,36,37…段差。