(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147613
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ゴム成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 47/12 20060101AFI20170607BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
B29C47/12
B29K21:00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-181476(P2013-181476)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-47791(P2015-47791A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】市川 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】荻田 勝利
(72)【発明者】
【氏名】一柳 友洋
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−255801(JP,A)
【文献】
特開平03−284926(JP,A)
【文献】
特開2011−025408(JP,A)
【文献】
特開2004−243732(JP,A)
【文献】
特開2012−187712(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0334722(US,A1)
【文献】
特開平02−098431(JP,A)
【文献】
米国特許第04944666(US,A)
【文献】
国際公開第2008/117823(WO,A1)
【文献】
特表2002−516195(JP,A)
【文献】
米国特許第05830391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料を混練して送り出す押出機と、前記押出機のダイヘッド部に取り付けられる口金とを備え、前記押出機から送り出されたゴムを前記口金に設けられた開口部から押し出してゴム部材を成形するゴム成形装置において、
前記口金は、第1口金部材と第2口金部材とを組み合わせて前記開口部が形成され、前記開口部の両側部において前記第1口金部材と前記第2口金部材の合わせ面を跨ぐ堰板が、前記口金の押出方向下流側に設けられ、
前記堰板が、前記合わせ面と前記開口部との境界部分からゴム材料がはみ出るのを防ぐことを特徴とするゴム成形装置。
【請求項2】
前記第2口金部材は、前記ダイヘッド部に対して取り外し可能に設けられ、前記第1口金部材との合わせ面に前記開口部を区画する凹部が形成され、
前記堰板が前記第2口金部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のゴム成形装置。
【請求項3】
前記第1口金部材は、前記第2口金部材との合わせ面が平面形状をなしており、前記第1口金部材の合わせ面と前記第2口金部材に設けられた前記凹部との間に前記開口部を区画することを特徴とする請求項2に記載のゴム成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材料を混練して送り出す押出機と、押出機のダイヘッド部に取り付けられる口金とを備えたゴム成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリーンタイヤの製造において、シート状あるいはリボン状のゴム部材を成形するゴム成形装置が用いられている。このゴム成形装置は、ゴム材料を混練して送り出す押出機と、押出機のダイヘッド部に取り付けられる口金とを備え、押出機から送り出されたゴムを口金に設けられた開口部から押し出して、口金の開口部に対応した断面形状をなした長尺のゴム部材を成形し、成形されたゴム部材を成形ドラムなどに巻き付けてグリーンタイヤを製造する。
【0003】
このようなゴム成形装置では、成形するゴム部材の断面形状を変更したり、あるいは、品質を管理したりするため、押出機のダイヘッド部から口金を取り外して交換することがある。その際に、交換作業を容易にするため、第1口金部材と第2口金部材とを組み合わせて開口部を形成する分割式の口金を採用することがある。
【0004】
しかしながら、分割式の口金では、第1口金部材と第2口金部材との合わせ面が、ゴム材料の押出方向と平行に設けられているため、ゴムの押出圧力を受けて第1口金部材と第2口金部材とが押出方向下流側に向けて広がるように変形して、開口部の両側部において第1口金部材と第2口金部材の合わせ面からゴムがはみ出しやすいという問題がある。
【0005】
はみ出したゴムは、ある程度の大きさになると口金の開口部から押し出されたゴム部材に付着して次行程に流れてしまい、次行程において部材詰まりなどの異常を引き起こしたり、最終製品に異物として取り込まれタイヤ特性や外観品質を損なう問題がある。
【0006】
これに対して、一枚のプレートにこれを貫通する開口部を設けた一体式の口金を押出機のダイヘッド部に採用することで上記のようなゴムのはみ出しを防ぐことができるが、分割式の口金に比べて交換作業が繁雑となったり、開口部の形状を調整しにくくなり、交換作業が長くなるという問題がある。
【0007】
そこで、下記特許文献1には、分割式の口金において、第1口金部材と第2口金部材との合わせ面をゴムの押出方向に対して傾斜させたものが提案されているが、このような口金では、口金の製造時に開口部に加えて合わせ面も加工する必要があり、口金の製造が煩雑となる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−25408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、口金の製造や交換作業を容易に行うことができるとともに、ゴムのはみ出しが発生しにくいゴム成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るゴム成形装置は、ゴム材料を混練して送り出す押出機と、前記押出機のダイヘッド部に取り付けられる口金とを備え、前記押出機から送り出されたゴムを前記口金に設けられた開口部から押し出してゴム部材を成形するゴム成形装置において、前記口金は、第1口金部材と第2口金部材とを組み合わせて前記開口部が形成され、前記開口部の両側部において前記第1口金部材と前記第2口金部材の合わせ面を跨ぐ堰板が、前記口金の押出方向下流側に設けられ
、前記堰板が、前記合わせ面と前記開口部との境界部分からゴム材料がはみ出るのを防ぐものである。
【0011】
本発明の好ましい態様として、前記第2口金部材は、前記ダイヘッド部に対して取り外し可能に設けられ、前記第1口金部材との合わせ面から離れる方向に陥没して前記開口部を区画する凹部が形成され、前記堰板が前記第2口金部材に取り付けられてもよく、この場合において、前記第1口金部材は、前記第2口金部材との合わせ面が平面形状をなしており、前記第1口金部材の合わせ面と前記第2口金部材に設けられた前記凹部との間に前記開口部を区画してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、口金の開口部の両側部において第1口金部材と前記第2口金部材の合わせ面を跨ぐ堰板が、合わせ面からはみ出るゴムを堰き止めることができ、ゴムのはみ出しを防ぐことができる。しかも、口金の押出方向下流側に堰板を設けるため、容易に口金を製造することができるとともに、既存の口金にも容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るゴム成形装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示す本実施形態に係るゴム成形装置10は、押出機12と、押出機12の下流側に設けられたダイヘッド部14と、ダイヘッド部14に取り付けられる口金16とを備える。
【0016】
押出機12は、ホッパー18から投入されたゴムを混錬するためのスクリュー20と、このスクリュー20を回転駆動するためのスクリュー駆動部22を備えている。スクリュー20により混錬されたゴムは、押出機12の下流側に設けられたダイヘッド部14へ送り込まれる。
【0017】
ダイヘッド部14は、内部にゴムの押出方向下流側に行くほど先細になる流路23が設けられており、押出機12から押し出されたゴムを先端側に取り付けられた口金16へと導く。
【0018】
口金16は、第1口金部材24と第2口金部材26とを備えた分割式の口金である。第1口金部材24と第2口金部材26は、いずれも厚みの厚い板状の部材で側面を上下に組み合わせてダイヘッド部14に取り付けられており、この例では、ダイヘッド部14先端側の下側に第1口金部材24が、上側に第2口金部材26が、それぞれ設けられている。
【0019】
第1口金部材24は、ダイヘッド部14に固定され、第2口金部材24との合わせ面30aが平面形状をなしている。
【0020】
第2口金部材26は、ボルトなどにより取り外し可能にダイヘッド部14に設けられ、第1口金部材24との合わせ面30bに上方に陥没する凹部32が形成されており、第1口金部材24と第2口金部材26とを組み合わせた状態で、第1口金部材24の合わせ面30aと第2口金部材26の合わせ面30bに設けられた凹部32とで、所定の断面形状を有する開口部28が形成されている。
【0021】
第1口金部材24と第2口金部材26との間に形成される開口部28は、成形対象のゴム部材の断面形状を規定しており、本実施形態では、ダイヘッド部14先端側から見ると上辺より下辺の長さが長い台形状に形成されている。
【0022】
このような口金16には、第1口金部材24と第2口金部材26との合わせ面30a,30bとを跨ぐ矩形平板状の堰板36が設けられている。
【0023】
堰板36は、第1口金部材24と第2口金部材26との合わせ面30a,30bの間に形成された開口部28の両側部(第1口金部材24と第2口金部材26との合わせ面30a,30bに平行であってゴムの押出方向に垂直な方向の両端部)にそれぞれ設けられている。この堰板36は、第1口金部材24に対して固定されておらず、第2口金部材26に溶接などによって固定されている。
【0024】
以上のような本実施形態のゴム成形装置10では、ゴム部材が押し出される口金16の開口部28の両側部に第1口金部材24と第2口金部材26の合わせ面30a、30bを跨ぐ堰板36が、口金16の押出方向下流側に設けられているため、合わせ面30a、30bと開口部28との境界部分からはゴム材料がはみ出るのを防ぐことができる。
【0025】
しかも、堰板36は口金16の押出方向下流側に設けられているため、口金16を容易に製造することができるとともに、既存の口金16に対しても堰板36を取り付けることで、合わせ面30a、30bと開口部28との境界部分からのゴムのはみ出しを防ぐことができる。
【0026】
また、新しく口金16を製作した場合、口金16の開口部28から押し出されるゴム部材を採取し、採取したゴム部材の形状を見て開口部28の形状を微調節することがあるが、本実施形態では口金16が第1口金部材24と第2口金部材26とを備えた分割式であるため、一枚のプレートに開口部を設けた一体式の口金に比べて開口部28の形状の微調節がしやすく短時間で調整を完了することができる。
【0027】
更にまた、本実施形態では、堰板36が設けられた第1口金部材24が、ダイヘッド部14に対して取り外し可能に設けられるとともに開口部28を区画する凹部32を備えており、第1口金部材24に堰板36が固定されていないため、第2口金部材26を交換するだけで異なる断面形状のゴム部材を成形することができ、口金16の交換時間を短縮することができる。
【0028】
なお、堰板36の大きさや材質は、ゴム部材の成形時に合わせ面30a、30bからはみ出るゴムを堰き止めることができる程度の大きさ及び強度を有していれば特に限定されないが、口金16と同等以上の強度を備え、かつ、口金16と同程度の熱膨張率を備えることが好ましい。一例を挙げると、堰板36の厚み(ゴム押出方向の大きさ)が第1口金部材24と第2口金部材26の厚さの1/4以上で、合わせ面30a、30bから重ね合わせ方向(上下方向)に第1口金部材24及び第2口金部材26と重なる量B1,B2がそれぞれ5mm以上とすることができ、口金16を構成する口金部材24と第2口金部材26と同じ材質、例えば、SS400などの鋼材から堰板36を構成することが好ましい。
【0029】
また、本実施形態では、ダイヘッド部14に対して取り外し可能に設けられた第2口金部材26に堰板36を設ける場合について説明したが、第1口金部材24に設けてもよい。
【0030】
<第2実施形態>
上記した第1実施形態では、堰板36を口金16に溶接で固定する場合について説明したが、例えば、ボルトなどにより口金16に対して堰板36を固定してもよく、その場合に、堰板36に設けられたボルトを挿通する穴を開口部28の幅方向に延びる長穴状に設けるなどにより、堰板36が口金16に固定される位置を開口部28の幅方向に移動可能としてもよい。
【0031】
このような実施形態では、口金16に対して切削研磨などの加工を施すことなく、口金16の開口部28から押し出されるゴム部材の幅寸法を簡便に微調節することができる。第2実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【符号の説明】
【0032】
10…ゴム押出装置
12…押出機
14…ダイヘッド部
16…口金
24…第1口金部材
26…第2口金部材
28…開口部
30a…合わせ面
30b…合わせ面
32…凹部
36…堰板