特許第6147616号(P6147616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6147616X線診断装置、および長尺撮影用検出器移動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147616
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】X線診断装置、および長尺撮影用検出器移動装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-185586(P2013-185586)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-51154(P2015-51154A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】西塚 誠一
(72)【発明者】
【氏名】吉江 翔太郎
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−172574(JP,A)
【文献】 特開2004−242928(JP,A)
【文献】 特開2008−220(JP,A)
【文献】 特開2010−29288(JP,A)
【文献】 特開2009−233158(JP,A)
【文献】 特開2008−148836(JP,A)
【文献】 特表2005−501631(JP,A)
【文献】 特開2011−67509(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/020929(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/080921(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/051902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記被検体が載置可能であって、所定の設置面に設置された寝台と、
前記X線検出器を、前記寝台の第1長軸方向に沿って移動可能に支持する移動支持機構と、
前記第1長軸方向に沿って前記被検体を複数回に亘って撮影する長尺撮影の撮影範囲に応じて、前記移動支持機構を制御する移動制御部と、
前記移動支持機構と前記移動制御部とを覆う外装と、
前記設置面に前記外装を設置し、前記第1長軸方向に前記外装の第2長軸方向を平行させて前記外装を前記寝台に固定する設置固定部と、
を具備することを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記撮影範囲に応じて、前記第2長軸方向に沿って前記被検体に対する照射範囲を限定するX線可動絞り部をさらに具備すること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記移動支持機構は、
前記寝台に設けられた前記X線検出器を取り外し可能に支持すること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記X線検出器からの出力に基づいて、医用画像を発生する画像発生部と、
前記撮影範囲に応じて、前記X線検出器を移動させる制御信号を、前記移動制御部に送信する第1送信部とをさらに具備し、
前記移動制御部は、
前記制御信号に従って前記X線検出器を移動させるために前記移動支持機構を制御し、
前記外装は、
前記長尺撮影における複数の撮影各々に応じて、前記X線検出器からの出力を前記画像発生部に送信する第2送信部をさらに覆うこと、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記寝台と前記移動制御部とは電気的に分離可能であって、
前記外装は、
前記移動制御部に電力を供給する電源部をさらに覆うこと、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記設置固定部は、
前記外装を立位スタンドにマウントし、前記立位スタンドの長軸方向に前記第2長軸方向を平行させて前記外装を前記立位スタンドに固定すること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項7】
被検体が載置される天板と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を、前記天板の長軸方向に沿って移動可能に支持する移動支持機構と、
前記長軸方向に沿って前記被検体を複数回に亘って撮影する長尺撮影の撮影各々に応じて、前記移動支持機構を制御する移動制御部と、
前記移動支持機構と前記移動制御部とを覆う外装と、
前記長軸方向に沿って前記外装を寝台に固定し、前記寝台が設置された所定の設置面に前記外装を設置する設置固定部と、
を具備する長尺撮影用検出器移動装置を有するX線診断装置。
【請求項8】
被検体が載置される天板と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を、前記天板の長軸方向に沿って移動可能に支持する移動支持機構と、
前記長軸方向に沿って前記被検体を複数回に亘って撮影する長尺撮影の撮影各々に応じて、前記移動支持機構を制御する移動制御部と、
前記移動支持機構と前記移動制御部とを覆う外装と、
前記長軸方向に沿って前記外装を寝台に固定し、前記寝台が設置された所定の設置面に前記外装を設置する設置固定部と、
を具備する長尺撮影用検出器移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、長尺撮影に関するX線診断装置、および長尺撮影用検出器移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線平面検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)を有するX線診断装置は、被検体の下肢および全脊柱を撮影する長尺撮影を実行する場合がある。長尺撮影には、例えば、3種の撮影方式がある。
【0003】
X線管固定方式では、長尺撮影の実行期間に亘ってX線管は固定される。X線管固定方式において、寝台内に配置されたFPDは、長尺撮影の対象部位の範囲に亘って移動される。このとき、X線可動絞りにおける絞り開度は、移動されたFPDの領域がX線照射範囲に一致するように、制御される。すなわち、X線管固定方式では、X線管は固定され、FPDの位置と絞り開度とが制御される。
【0004】
図11に示すように、X線管固定方式の臥位長尺撮影では、FPDの移動ストロークの制限、および長尺撮影にとって十分な長さの線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、SIDと呼ぶ)の確保が難しいことのため、従来、FPD2枚分の長尺撮影しかできない問題がある。すなわち、X線管固定方式による長尺撮影において、臥位寝台におけるFPDの移動可能なストロークは、14インチ×17インチ(半切)FPD2枚分しかない。加えて、天井に設置されたX線管保持装置を用いてX線を鉛直方向に照射する臥位撮影においては、SIDを十分に確保できないため、FPD3枚分の長尺撮影に対応する照射範囲をカバーすることができない問題がある。
【0005】
X線管移動方式では、長軸方向に沿ったX線管の移動に伴って、FPDは移動される。X線管移動方式では、細分化して任意の枚数で長尺撮影を実行することできる。
【0006】
しかしながら、X線管移動方式では、X線管の焦点位置が移動するため、長尺撮影により撮影された複数の医用画像において、貼り合わせ精度が低い問題がある。貼り合わせ精度の低下は、被検体とFPDとの間の距離(Patiant Image Distance:以下、PIDと呼ぶ)において、それぞれの貼り合わせ面で被写体を透過するX線の方向が異なることに起因する。
【0007】
X線管回転方式では、X線管の回転に応じたX線照射範囲の回転に伴って、FPDを移動させて長尺撮影が実行される。X線管回転方式は、X線管移動方式における貼り合わせ精度より高く、かつX線管固定方式と同程度の貼り合わせ精度を有する。
【0008】
しかしながら、重量物であるX線管を、X線管の焦点を中心として、長尺撮影の撮影範囲およびFPDの移動に応じて回転させるX線管回転機構が必要となる。X線診断装置において、X線管回転機構のさらなる搭載は、製造コストが上昇する問題がある。加えて、X線管の精密な回転を制御する必要がある。
【0009】
また、長尺撮影は、コンピューテッドラジオグラフィ(Computted Radiography:以下、CRと呼ぶ)装置で実行されてもよい。このとき、長尺撮影の実行後、輝尽性蛍光体を有するイメージングプレート(カセッテ)などのX線検出器に記憶されたX線画像情報は、読み取り機で読み出される。カセッテ方式では、被検体に対する撮影時間が短く、かつ貼り合わせ精度のよい長尺画像を得ることができる。
【0010】
しかしながら、CR装置による長尺撮影においては、FPDを有するX線診断装置に比べて、リアルタイム性が劣る問題がある。また、CR装置で長尺撮影を実行する場合、図12に示すように複数枚のカセッテが必要となる。加えて、複数枚のカセッテ各々に対して、専用グリッド、読み取り装置が必要となり、コストが高くなる問題がある。さらに、被検体は、カセッテの上に横になる必要があり、長尺撮影における位置合わせは難しく、被検体に対する負担が大きい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
目的は、低コストでかつ貼り合わせ精度の良い長尺画像を発生可能なX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態に係るX線診断装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記被検体が載置可能であって、所定の設置面に設置された寝台と、前記X線検出器を、前記寝台の第1長軸方向に沿って移動可能に支持する移動支持機構と、前記第1長軸方向に沿って前記被検体を複数回に亘って撮影する長尺撮影の撮影範囲に応じて、前記移動支持機構を制御する移動制御部と、前記移動支持機構と前記移動制御部とを覆う外装と、前記設置面に前記外装を設置し、前記第1長軸方向に前記外装の第2長軸方向を平行させて前記外装を前記寝台に固定する設置固定部と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係り、寝台に隣接して設置された長尺撮影用検出器移動装置を、寝台15および立位スタンドとともに示す図である。
図3図3は、本実施形態に係り、長尺撮影用検出器移動装置31の外観の一例を示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係り、本X線診断装置1の寝台15に隣接して設置された長尺撮影用検出器移動装置31の概要を示す概要図である。
図5図5は、本実施形態に係り、長尺撮影用検出器移動装置31の一部分の断面の一例を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態に係り、長尺撮影において、寝台に隣接して設置された長尺撮影用検出器移動装置を上面から示した上面図である。
図7図7は、本実施形態に係り、長尺撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、本実施形態に係り、長尺撮影の第1撮影において、X線の照射範囲を、寝台および寝台に並列させて固定した長尺撮影用検出器移動装置とともに示す側面図である。
図9図9は、本実施形態に係り、長尺撮影の第2撮影において、X線の照射範囲を、寝台および寝台に並列させて固定した長尺撮影用検出器移動装置とともに示す側面図である。
図10図10は、本実施形態に係り、長尺撮影の第3撮影において、X線の照射範囲を、寝台および寝台に並列させて固定した長尺撮影用検出器移動装置とともに示す側面図である。
図11図11は、従来技術に係り、長尺撮影におけるX線診断装置の一例を示す図である。
図12図12は、従来技術に係り、長尺撮影におけるコンピューテッドラジオグラフィ装置の一部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1の構成を示している。本X線診断装置1は、高電圧発生部11と、X線管131とX線可動絞り部133と図示していない絞り羽根配置部および開度情報表示部とを支持する支持機構13と、所定の設置面に設置された寝台15と、位置決定部17と、寝台15または長尺撮影用検出器移動装置31におけるX線検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)43からの出力に基づいて医用画像を発生する画像発生部19と、記憶部21と、表示部23と、入力部25と、システム制御部27と、第1送信部29と、寝台15の長軸方向(以下、第1長軸方向と呼ぶ)に平行に寝台15に隣接して設置面に設置される長尺撮影用検出器移動装置31とを有する。
【0016】
高電圧発生部11は、後述するX線管131に供給する管電流と、X線管131に印加する管電圧とを発生する。高電圧発生部11は、X線撮影に適した管電流をX線管131に供給し、X線撮影に適した管電圧をX線管131に印加する。具体的には、高電圧発生部11は、後述するシステム制御部27による制御のもとで、X線撮影条件に応じた管電圧と管電流とを発生する。例えば、被検体Pの下肢および脊柱を撮影する長尺撮影において、後述する入力部25における撮影スイッチが操作者により押下されると、長尺撮影の条件に応じた管電圧をX線管131に印加し、X線撮影条件に応じた管電流をX線管131に供給する。
【0017】
支持機構13は、後述するX線管131、X線可動絞り部133、図示していない絞り羽根配置部および開度情報表示部を、後述する直交3軸に移動可能に支持する。支持機構13は、天井に設置される天井式X線管保持装置とも称される。具体的には、支持機構13は、X線管131におけるX線発生の焦点と後述するFPD43との間の距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、SIDと呼ぶ))を変更可能に、X線管131とX線可動絞り部133などとを支持する。支持機構13は、後述する位置決定部17により決定された管球位置に、X線管131を配置させる。支持機構13は、後述する長尺撮影において、管球位置に配置されたX線管131を固定する。
【0018】
X線管131は、高電圧発生部11から供給された管電流と、高電圧発生部11により印加された管電圧とに基づいて、X線発生の焦点(以下、管球焦点と呼ぶ)でX線を発生する。管球焦点近傍では、管球焦点で発生された2次電子に由来するX線(以下、焦点外X線と呼ぶ)が発生する。以下、管球焦点と焦点外X線の発生に起因する点(以下、焦点外X線発生点と呼ぶ)とを合わせてX線焦点と呼ぶ。発生されたX線は、X線管131におけるX線放射窓から放射される。以下、管球焦点を通り、後述するFPD43に垂直な軸をZ軸とする。Z軸に垂直であって、後述する寝台15または臥位テーブルの長軸方向(以下、第1方向と呼ぶ)をX軸とする。Z軸とX軸とに垂直な軸(臥位テーブルの短軸方向:以下、第2方向と呼ぶ)をY軸とする。
【0019】
X線可動絞り部133は、X線管131と後述する臥位テーブルに設けられたFPD43との間に設けられる。具体的には、X線可動絞り部133は、X線管131におけるX線放射窓の前面に設けられる。X線可動絞り部133は、照射野限定器とも称される。X線可動絞り部133は、X線管131で発生されたX線を、操作者が所望する撮影部位以外に不要な被曝をさせないために、最大口径の照射範囲(以下、最大照射範囲と呼ぶ)を所定の照射範囲に絞る。
【0020】
X線可動絞り部133は、第1方向に移動可能な複数の第1絞り羽根と、第2方向に移動可能な複数の第2絞り羽根と、焦点外X線を遮蔽する遮蔽部とを有する。第1、第2絞り羽根各々は、X線管131により発生されたX線を遮蔽する鉛により構成される。複数の第1絞り羽根は、最大照射範囲において第1方向に沿った長さの中点(以下、第1中点と呼ぶ)を超えて第1方向に移動可能である。なお、複数の第2絞り羽根は、最大照射範囲において第2方向に沿った長さの中点(以下、第2中点と呼ぶ)を超えて第2方向に移動可能であってもよい。
【0021】
図示していない遮蔽部は、第1絞り羽根の動きと連動して第1方向に移動可能な第1遮蔽羽根と、第2絞り羽根の動きと連動して第2方向に移動可能な第2遮蔽羽根とを有する。遮蔽部は、第1、第2絞り羽根に対してX線焦点側の位置に設けられる。具体的には、遮蔽部は、X線焦点と、第1絞り羽根との間に設けられる。遮蔽部は、複数の第1遮蔽羽根と、複数の第2遮蔽羽根と、複数の第1移動機構と、複数の第2移動機構とを有する。第1、第2遮蔽羽根各々は、焦点外X線を遮蔽する鉛により構成される。
【0022】
複数の第1遮蔽羽根と、複数の第2遮蔽羽根とは、最大照射範囲のうち所定の照射範囲を除く範囲における焦点外X線を遮蔽するサイズと構造とを有する。第1移動機構は、第1絞り羽根の移動に連動して、第1遮蔽羽根を移動させる。第2移動機構は、第2絞り羽根の移動に連動して、第2遮蔽羽根を移動させる。第1移動機構と第2移動機構とは、例えば、X線焦点を中心として回転する回転部分を有する。なお、第1移動機構と第2移動機構とは、それぞれ対応する遮蔽羽根を、例えば、モータ駆動により移動させてもよい。
【0023】
なお、第1遮蔽羽根は、第1遮蔽羽根を含む平面において、第1中点を通り第2方向に沿った軸(以下、第1中心軸と呼ぶ)を超えて、第1方向に沿って移動可能であってもよい。また、第2遮蔽羽根は、第2遮蔽羽根を含む平面において、第2中点を通り第1方向に沿った軸(以下、第2中心軸と呼ぶ)を超えて、第2方向に沿って移動可能であってもよい。加えて、遮蔽部は、第1遮蔽羽根と第1絞り羽根との間に、焦点外X線を遮蔽する図示していない第3遮蔽羽根をさらに有していてもよい。
【0024】
X線可動絞り部133は、被検体Pへの被曝線量の低減および画質の向上を目的として、利用X線錐内に挿入される複数のフィルタ(以下、付加フィルタと呼ぶ)を有する。付加フィルタは、X線フィルタ、濾過板、ビームフィルタ、線質フィルタ、またはビームスペクトグラムフィルタとも呼ばれる。
【0025】
図示していない絞り羽根配置部は、長尺撮影における複数の撮影各々に応じて、後述する位置決定部17により決定された第1、第2羽根位置に、複数の第1絞り羽根、複数の第2絞り羽根をそれぞれ配置する。具体的には、絞り羽根配置部は、位置決定部17により決定された第1羽根位置に複数の第1絞り羽根を配置させるための図示していない第1絞り羽根移動機構を有する。第1絞り羽根移動機構は、複数の第1絞り羽根各々を、第1中心軸を超えてスライド移動可能に支持する。
【0026】
絞り羽根配置部は、位置決定部17により決定された第2羽根位置に複数の第2絞り羽根を配置させるための図示していない第2絞り羽根移動機構を有する。第2絞り羽根移動機構は、複数の第2絞り羽根各々を、第2方向に沿ってスライド移動可能に支持する。なお、第2絞り羽根移動機構は、複数の第2絞り羽根各々を、第2中心軸を超えてスライド移動可能に支持してもよい。
【0027】
絞り羽根配置部は、後述する入力部25を介した所定の操作(長尺撮影の入力)を契機として、第1中心軸に対して非対称的に配置された複数の第1絞り羽根を、第1中心軸に対して対称的な位置に配置する。なお、絞り羽根配置部は、後述する長尺撮影の終了を契機として、第1中心軸に対して非対称的に配置された複数の第1絞り羽根を、第1中心軸に対して対称的な位置に配置してもよい。また、絞り羽根配置部は、最大照射範囲を移動限界として、第1絞り羽根および第2絞り羽根の配置を制限する機能を有する。
【0028】
第1遮蔽羽根は、第1移動機構を介して、第1絞り羽根の移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。第2遮蔽羽根は、第2移動機構を介して、第2絞り羽根の移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。
【0029】
図示していない開度情報表示部は、図示していない開度情報発生部により発生された開度情報を表示する。開度情報とは、限定された照射範囲に対応する視野サイズである。開度情報表示部は、例えば、視野サイズに関する縦横のサイズを表示する。この時、表示されるサイズの単位は、センチメートル、インチなどいずれの単位であってもよい。
【0030】
寝台15は、被検体Pを載置可能な臥位テーブルと、FPD43を移動可能に支持する図示していない移動機構とを有する。なお、寝台15は、透視寝台であってもよい。寝台15は、所定の設置面151に設置される。所定の設置面とは、例えば床面である。移動機構は、FPD43を取り外し可能に支持する。長尺撮影において、FPD43は、寝台15の移動機構から取り外される。取り外されたFPD43は、後述する長尺撮影用検出器移動装置31における移動支持機構41に取り付けられる。以下、被検体Pに対する長尺撮影において、FPD43は、後述する移動支持機構41に取り付けられているものとして説明する。
【0031】
位置決定部17は、後述する長尺撮影用検出器移動装置31に搭載されたFPD43と管球焦点とにより定まるSIDと長尺撮影における撮影長とに基づいて、長尺撮影における複数回の撮影各々に応じた第1羽根位置と、第2羽根位置と、検出器位置とを決定する。位置決定部17は、後述する入力部25を介した入力された撮影長とFPD43の第1方向の長さとに基づいて、長尺撮影に関する撮影回数を決定してもよい。
【0032】
以下、説明を簡単にするため、撮影回数は、3回であるものとする。位置決定部17は、長尺撮影における撮影回数に基づいて、複数の撮影各々に対応するFPD43の検出器位置を決定する。具体的には、位置決定部17は、第1方向に沿った所定の重畳幅を有するように、3回の撮影回数にそれぞれ対応する3か所の検出器位置を決定する。所定の重畳幅とは、例えば、長尺撮影により発生された複数の医用画像を第1方向に沿って連結するために用いられる幅(のりしろに対応する幅)である。位置決定部17は、決定した複数の検出器位置を、後述する第1送信部29、システム制御部27に出力する。
【0033】
位置決定部17は、例えば、長尺撮影における2回目の撮影におけるFPD43の中心位置(以下、FPD中心位置と呼ぶ)と、Z軸とに基づいて、X線管131の位置(以下、管球位置と呼ぶ)を決定する。管球位置は、FPD中心位置を通りZ軸に平行な線分上に管球焦点が配置される位置である。位置決定部17は、管球位置を支持機構13に出力する。位置決定部17は、管球位置とFPD中心位置とに基づいて、SIDを決定する。
【0034】
なお、撮影回数が偶数(例えば、2n:nは自然数)である場合、位置決定部17は、n回目の撮影に対応する配置位置とn+1回目の撮影に対応する配置位置との間の中点の位置を、FPD中心位置として決定する。また、撮影回数が奇数(例えば、2n+1:nは自然数)である場合、位置決定部17は、(n+1)回目の撮影における検出器位置の中心位置を、FPD中心位置として決定する。
【0035】
位置決定部17は、長尺撮影における1回目の撮影(以下、第1撮影と呼ぶ)に対応する検出器位置(以下、第1検出器位置と呼ぶ)とSIDとに基づいて、第1撮影における第1羽根位置、第2羽根位置を決定する。位置決定部17は、長尺撮影における2回目の撮影(以下、第2撮影と呼ぶ)に対応する検出器位置(以下、第2検出器位置と呼ぶ)とSIDとに基づいて、第2撮影における第1羽根位置、第2羽根位置を決定する。位置決定部17は、長尺撮影における3回目の撮影(以下、第3撮影と呼ぶ)に対応する検出器位置(以下、第3検出器位置と呼ぶ)とSIDとに基づいて、第3撮影における第1羽根位置、第2羽根位置を決定する。位置決定部17は、複数の撮影各々に応じた第1羽根位置と第2羽根位置とを、絞り羽根配置部と図示していない開度情報発生部とに出力する。位置決定部17は、第1乃至第3検出器位置を後述する第1送信部29を介して、後述する移動制御部39に出力してもよい。なお、位置決定部17は、第1乃至第3検出器位置と、第1、第2羽根位置とを、後述する記憶部21に出力してもよい。
【0036】
図示していない開度情報発生部は、第1羽根位置と第2羽根位置とに基づいて、第1乃至第3撮影各々に対応する開度情報を発生する。開度情報発生部は、発生した開度情報を、開度情報表示部に出力する。
【0037】
図示していない前処理部は、後述する第2送信部45を介してFPD43から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。前処理とは、FPD43におけるチャンネル間の感度不均一の補正、およびデータの脱落に関する補正等である。前処理されたディジタルデータは、後述する画像発生部19に出力される。
【0038】
画像発生部19は、図示していない前処理部から出力されたディジタルデータに基づいて、医用画像を発生する。具体的には、画像発生部19は、長尺撮影における複数回の撮影にそれぞれ対応する複数の医用画像を発生する。画像発生部19は、長尺撮影に関する複数の医用画像を、第1方向に連結した長尺画像を発生する。画像発生部19は、発生した長尺画像を後述する表示部23に出力する。
【0039】
記憶部21は、画像発生部19により発生された種々の医用画像、長尺画像、本X線診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、後述する入力部25から送られてくる操作者の指示、撮影条件などの各種データ群、長尺撮影における複数の撮影回数に応じた複数の検出器位置および複数の羽根位置、SIDなどを記憶する。また、記憶部21は、第1乃至第3検出器位置各々とSIDとに対する第1、第2羽根位置各々の対応表を記憶してもよい。この場合、位置決定部17は、第1乃至第3検出器位置各々とSIDと対応表とに基づいて、第1、第2羽根位置が決定される。
【0040】
なお、記憶部21は、X線長尺撮影プログラムを記憶してもよい。X線長尺撮影プログラムとは、本X線診断装置1に搭載されたコンピュータに、SIDと長尺撮影の撮影長とに基づいて第1、第2羽根位置と第1乃至第3検出器位置とを決定させ、決定された第1、第2羽根位置に第1、第2絞り羽根を、長尺撮影の撮影ごとにそれぞれ配置させ、決定された第1乃至第3検出器位置にFPD43を、長尺撮影の撮影ごとに移動させるプログラムである。
【0041】
表示部23は、画像発生部19により発生された医用画像および長尺画像を表示する。表示部23は、長尺撮影における撮影範囲、撮影長、撮影枚数などの長尺撮影条件、SID、X線撮影の撮影条件等を入力するための入力画面を表示する。
【0042】
入力部25は、長尺撮影における撮影範囲、撮影長、撮影枚数などの長尺撮影条件、SID、X線撮影の撮影条件等を入力する。具体的には、入力部25は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線診断装置1に取り込む。入力部25は、図示しないが、関心領域の設定などを行うためのトラックボール、長尺撮影の実行および撮影開始の契機となるスイッチボタン、マウス、キーボード等を有する。入力部25は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を後述するシステム制御部27に出力する。なお、入力部25は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部25は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標をシステム制御部27に出力する。
【0043】
また、入力部25は、第1中心軸に対して非対称的に配置された第1絞り羽根を、第1中心軸に対して対称的に配置させるためのボタン(以下、対称配置ボタンと呼ぶ)を有する。対称配置ボタンが押下されると、入力部25は、第1絞り羽根を第1中心軸に対して対称的に配置させるための信号を、図示していない絞り羽根配置部に出力する。
【0044】
システム制御部27は、図示していないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える。制御部27は、入力部25から送られてくる操作者の指示、撮影条件などに従って、X線撮影を実行するために、本X線診断装置1における各部を制御する。制御部27は、入力部25から送られてくる操作者の指示、長尺撮影条件に従って、長尺撮影を実行するために、本X線診断装置1における各部を制御する。
【0045】
具体的には、例えば、入力部25における長尺撮影の実行に関するスイッチボタンが操作者により押下され、長尺撮影の撮影範囲(撮影長)、SIDなどの長尺撮影条件が入力されると、システム制御部27は、第1、第2羽根位置および第1乃至第3検出器位置を長尺撮影における複数の撮影に応じて決定するために、位置決定部17を制御する。システム制御部27は、長尺撮影の開始前に、管球位置にX線管131を配置させるために支持機構13を制御する。システム制御部27は、長尺撮影における撮影ごとに、第1乃至第3検出器位置にFPD153を移動させるための制御信号を、移動制御部39に出力するために、第1送信部29を制御する。システム制御部27は、長尺撮影における撮影ごとに、第1、第2羽根位置に第1、第2絞り羽根をそれぞれ配置させるために、絞り羽根配置部を制御する。
【0046】
第1送信部29は、後述するシステム制御部27から出力された制御信号を、後述する長尺撮影用検出器移動装置31における移動制御部39に出力する。制御信号とは、例えば、被検体に対する長尺撮影において、FPD43を第1長軸方向に沿って移動させるために、長尺撮影用検出器移動装置31における移動支持機構41を制御するための制御信号である。
【0047】
寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とが電気的に分離しているとき、第1送信部29は、無線通信により、制御信号を移動制御部39に送信する。なお、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とは、例えば有線により電気的に接続されてもよい。このとき、第1送信部29は、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とを電気的に接続する有線などを介して、制御信号を移動制御部39に送信する。
【0048】
図2は、本X線診断装置1において、寝台15に隣接して設置された長尺撮影用検出器移動装置31を、寝台15とともに示す図である。長尺撮影用検出器移動装置31は、電源部37と移動制御部39と移動支持機構41と第2送信部45とを覆う外装33と、設置固定部35と、図示していない天板を有する。設置固定部35は、長尺撮影用検出器移動装置31の外装33の下面側と、側面側とに設けられる。外装33の上面側には、図示していない天板が設けられる。なお、長尺撮影用検出器移動装置31は、寝台15に隣接して設置されることに限定されず、例えば、立位スタンド50にマウントされてもよい。なお、本長尺撮影用検出器移動装置31は、持ち運び可能である。図示していない天板には、長尺撮影される被検体Pが載置される。
【0049】
なお、外装33および寝台15には、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とを電気的に接続するコネクタが設けられてもよい。このとき、寝台15に隣接して長尺撮影用検出器移動装置31が設置されると、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とは、コネクタを介して、例えば有線により電気的に接続される。
【0050】
長尺撮影の実行前に、設置固定部35は、長尺撮影用検出器移動装置31の外装33を、寝台15に隣接して所定の設置面(床面)に設置する。具体的には、設置固定部35は、第1長軸方向に外装33の長軸方向(以下、第2長軸方向と呼ぶ)を平行にさせて、寝台15に外装33を固定する。外装33の下面における設置固定部35は、例えば、床面上において長尺撮影用検出器移動装置31を移動可能なキャスタおよびキャスタを固定するストッパを有する。なお、外装33の下面における設置固定部35は、外装33を設置面に固定させる固定部材であってもよい。また、外装33の側面のうち寝台15に隣接される隣接面における設置固定部35は、寝台15と外装33とを固定する留め具である。長尺撮影において、長尺撮影用検出器移動装置31は、留め具により寝台15に固定される。留め具による寝台15への固定により、第1長軸方向と第2長軸方向とは互いに略平行になる。
【0051】
電源部37は、移動支持機構41に搭載されたFPD43に電力を供給する。電源部37は、移動制御部39および第2送信部45に電力を供給する。
【0052】
移動制御部39は、被検体に対する長尺撮影において、システム制御部27または位置決定部17から第1送信部29を介して送信された制御信号を受信する。移動制御部39は、受信した制御信号に基づいて、第1乃至第3撮影にそれぞれ対応する第1乃至第3検出器位置に、FPD43を移動させるために、移動支持機構41を制御する。
【0053】
移動支持機構41は、操作者により、FPD43を取り外し可能に支持する。すなわち、移動支持機構41には、操作者により寝台15の臥位テーブル51から取り外されたFPD43が取り付けられる。長尺撮影が終了すると、FPD43は移動支持機構41から取り外され、臥位テーブル51の内に取り付けられる。移動支持機構41は、寝台15から移送されたFPD43を、第2長軸方向に沿って、移動可能に支持する。移動支持機構41は、位置決定部17により決定された検出器位置に、FPD43を移動させる。
【0054】
具体的には、移動支持機構41は、長尺撮影における撮影回数に応じた複数の検出器位置に、撮影ごとにFPD43を移動させる。移動支持機構41は、長尺撮影における撮影回数に応じた複数の検出器位置に、撮影ごとにFPD43を移動させる。すなわち、移動支持機構41は、第1乃至第3撮影にそれぞれ対応する第1乃至第3検出器位置に、長尺撮影の撮影に応じて、FPD43を移動させる。これらのことから、移動支持機構41は、X線可動絞り部133における複数の絞り羽根による絞りの開度に連動して、FPD43を移動させることができる。移動支持機構41は、第2長軸方向に沿って、最大で14インチ×17インチ(半切)サイズのFPD3枚分の長さに亘って、FPD43を移動させることができる。
【0055】
FPD43は、X線管131に対向して、臥位テーブル51または移動支持機構41に、取り外し可能に設けられる。FPD43は、長尺撮影用検出器移動装置における天板に載置された被検体Pを透過したX線を検出する。FPD43は、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子には、直接変換形と間接変換形とがある。直接変換形とは、入射X線を直接的に電気信号に変換する形式である。間接変換形とは、入射X線を蛍光体で変換された光を電気信号に変換する形式である。X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、図示していない前処理部に出力する。
【0056】
第2送信部45は、長尺撮影における複数回の撮影ごとに、FPD43から出力されたディジタルデータを、図示していない前処理部に送信する。なお、第2送信部45は、FPD43から出力されたディジタルデータを、記憶部21に送信してもよい。
【0057】
寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とが電気的に分離しているとき、第2送信部45は、無線通信により、FPD43から出力されたディジタルデータを前処理部に送信する。なお、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とは、例えば有線により電気的に接続されてもよい。このとき、第2送信部45は、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31とを電気的に接続する有線などを介して、FPD43から出力されたディジタルデータを前処理部に送信する。
【0058】
図3は、長尺撮影用検出器移動装置31の外観の一例を示す斜視図である。図3に示すように、長尺撮影用検出器移動装置31には、フットレスト47およびハンドグリップ49が設けられてもよい。図3における矢印は、長尺撮影において、FPD43の移動方向の一例を示している。
【0059】
図4は、本X線診断装置1の寝台15に隣接して設置された長尺撮影用検出器移動装置31の概要を示す概要図である。図4に示すように、長尺撮影用検出器移動装置31は、寝台15に並列して、床面に設置される。図4に示すように、寝台15におけるFPD43と管球焦点とで規定されるSIDに比べて、長尺撮影用検出器移動装置31におけるFPD43と管球焦点とで規定されるSIDは、長くなる。
【0060】
図5は、長尺撮影用検出器移動装置31の一部分の断面の一例を示す断面図である。図5に示すように、カーボン製の天板(カーボン天板53)の下方には、第2長軸方向に沿って移動可能なFPD43が、グリッド55と共に移動支持機構41により支持される。図5における矢印は、長尺撮影におけるFPD43の移動方向を示している。グリッド55はグリッドの格子方向が長軸方向と平行になるように配置される。
【0061】
図6は、長尺撮影において、本X線診断装置1の寝台15に隣接して設置された長尺撮影用検出器移動装置31を上面から示した上面図である。図6に示すように、長尺撮影において、X線管131およびX線可動絞り部133は、支持機構13により、位置決定部17により決定された管球位置に移動される。
【0062】
(長尺撮影機能)
長尺撮影機能とは、X線管131を移動させることなく、第1、第2絞り羽根の配置とFPD43の移動とにより、長尺撮影を実行する機能である。具体的には、まず、長尺撮影における撮影長とSIDとに基づいて、長尺撮影における複数の撮影各々における第1、第2羽根位置と、第1乃至第3検出器位置とが決定される。次いで、長尺撮影における複数の撮影ごとに、第1、第2羽根位置に第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される。第1遮蔽羽根は、第1移動機構を介して、第1絞り羽根の移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。第2遮蔽羽根は、第2移動機構を介して、第2絞り羽根の移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。長尺撮影における複数の撮影ごとに、第1乃至第3検出器位置にFPD43が移動される。FPD43の移動、第1、第2絞り羽根の配置、第1、第2遮蔽羽根の移動が完了すると、被検体Pに対する撮影が繰り返される。
【0063】
以下、長尺撮影機能に関する処理(以下、長尺撮影処理と呼ぶ)について説明する。長尺撮影処理は、検査の目的に応じて、例えば、被検体Pの脊柱または下肢を撮影対象として実行される。
【0064】
図7は、長尺撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。
寝台15の設置面(床面)に、長尺撮影用検出器移動装置31が設置される(ステップSa1)。第1長軸方向に第2長軸方向を平行にさせて、外装33が寝台15に固定される(ステップSa2)。寝台15から移動支持機構41へ、FPD43が移送される(ステップSa3)。
【0065】
入力部25を介して長尺撮影が入力される。長尺撮影の入力とは、例えば、入力部25における長尺撮影ボタンの押下である。入力部25を介して、長尺撮影条件(例えば、長尺撮影の撮影長、SIDなど)が入力される。入力された長尺撮影条件に基づいて、長尺撮影における撮影回数が決定される。以下、上述したように、撮影回数は3回として説明する。SIDと撮影回数とに基づいて、FPD43に関する第1乃至第3検出器位置と、第1、第2羽根位置とを、撮影回数にそれぞれ対応付けて決定される。なお、第1、第2羽根位置、すなわち絞りの開度は、FPD43の移動後に決定されてもよい。
【0066】
第1乃至第3撮影にそれぞれ対応する第1乃至第3検出器位置にFPD43を移動させるための制御信号が、第1送信部29を介して移動制御部39に送信される(ステップSa4)。長尺撮影用検出器移動装置31の天板に被検体Pが載置される(ステップSa5)。
【0067】
第1、第2羽根位置と第1乃至第3検出器位置との決定後、長尺撮影が開始される(ステップSa6)。長尺撮影の開始は、例えば、入力部25における撮影開始ボタンの押下である。撮影開始ボタンの押下を契機として、支持機構13により、X線管131が管球位置に移動される。なお、X線管131の管球位置への移動は、操作者により実行されてもよい。
【0068】
撮影開始ボタンの押下を契機として、第1撮影に関する第1、第2羽根位置に、第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される(ステップSa7)。この時、2枚の第1絞り羽根のうち一方の第1絞り羽根は、第1羽根位置に移動される。なお、2枚の第1絞り羽根のうち他方の第1絞り羽根は、第1中心軸を超えて、第1羽根位置に移動される。
【0069】
第1羽根位置への第1絞り羽根の移動に連動して、第1遮蔽羽根が移動される。第2羽根位置への第2絞り羽根の移動に連動して、第2遮蔽羽根が移動される。上記移動により、第1、第2遮蔽羽根は、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。制御信号に従って、長尺撮影のうち、第1検出器位置に、X線検出器FPD43が移動される(ステップSa8)。
【0070】
図8は、長尺撮影の第1撮影において、X線の照射範囲を、寝台15および寝台15に並列させて固定した長尺撮影用検出器移動装置31とともに示す側面図である。図8に示すように、長尺撮影の第1撮影においてX線の照射範囲は、FPD43の大きさおよび位置に合わせて、X線可動絞り部133における複数の絞り羽根により限定される。
【0071】
第1、第2絞り羽根の配置とFPD153の移動とが完了すると、高電圧発生部11から管電圧の印加および管電流の供給を受けたX線管131により、X線が発生される。これにより、第1撮影が実行される(ステップSa9)。決定された撮影回数に等しい回数の撮影が終了するまで、ステップSa6乃至ステップSa10の処理が繰り返される(ステップSa11)。
【0072】
具体的には、第1撮影が終了すると、第2撮影に関する第1、第2羽根位置に、第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される(ステップSa7)。この時、第1羽根位置は、第1中心軸に対して対称的な位置となる。第1羽根位置への第1絞り羽根の移動に連動して、第1遮蔽羽根が移動される。第2羽根位置への第2絞り羽根の移動に連動して、第2遮蔽羽根が移動される。第2撮影に関する第2検出器位置にFPD153が移動される(ステップSa8)。第1、第2絞り羽根の配置とFPD153の移動とが完了すると、第2撮影が実行される(ステップSa9)。
【0073】
図9は、長尺撮影の第2撮影において、X線の照射範囲を、寝台15および寝台15に並列させて固定した長尺撮影用検出器移動装置31とともに示す側面図である。図9に示すように、長尺撮影の第2撮影においてX線の照射範囲は、FPD43の大きさおよび位置に合わせて、X線可動絞り部133における複数の絞り羽根により限定される。
【0074】
第2撮影が終了すると、第3撮影に関する第1、第2羽根位置に、第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される(ステップSa7)。この時、2枚の第1絞り羽根のうち一方の第1絞り羽根は、第1中心軸を超えて、第1羽根位置に移動される。なお、2枚の第1絞り羽根のうち他方の第1絞り羽根は、第1羽根位置に移動される。第1羽根位置への第1絞り羽根の移動に連動して、第1遮蔽羽根が移動される。第2羽根位置への第2絞り羽根の移動に連動して、第2遮蔽羽根が移動される。第3撮影に関する第3検出器位置に、FPD43が移動される(ステップSa8)。第1、第2絞り羽根の移動とFPD43の移動とが完了すると、第3撮影が実行される(ステップSa9)。
【0075】
図10は、長尺撮影の第3撮影において、X線の照射範囲を、寝台15および寝台15に並列させて固定した長尺撮影用検出器移動装置31とともに示す図である。図10に示すように、長尺撮影の第3撮影においてX線の照射範囲は、FPD43の大きさおよび位置に合わせて、X線可動絞り部133における複数の絞り羽根により限定される。
【0076】
X線管131は、第1撮影から第3撮影に亘って、管球位置に固定されたままである。第3撮影の完了を契機として、第1絞り羽根は、第1中心軸に対して対称的な位置に移動される。第1乃至第3撮影にそれぞれ対応する第1乃至第3医用画像が発生される。第1乃至第3医用画像を、第1方向に沿って所定の重畳幅で結合した長尺画像が発生される(ステップSa12)。発生された長尺画像が、表示部23に表示される(ステップSa13)。なお、長尺撮影における撮影回数が2回である場合、ステップSa5乃至ステップSa9に関する繰り返しは、2回となる。
【0077】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態におけるX線診断装置1によれば、長尺撮影において、寝台15に並列させて、床面151に長尺撮影用検出器移動装置31を設置することができる。具体的には、本X線診断装置1によれば、寝台15の長軸方向(第1長軸方向)と外装33の長軸方向(第2長軸方向)とを平行にして、寝台15に長尺撮影用検出器移動装置31を固定することができる。また、寝台15の臥位テーブル51内に設けられたFPD43を、移動支持機構41に移送させて設置させることができる。加えて、本X線診断装置1によれば、長尺撮影における複数の撮影各々において、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31との電気的な接続なしに、無線によりFPD43を移動支持機構41により移動させることができる。
【0078】
以上のことから、本X線診断装置1によれば、可搬型の長尺撮影用検出器移動装置31を寝台15に並列させて床面に設置することで、X線管固定方式における臥位での長尺撮影において、FPD3枚分のSIDを確保することができる。これにより、X線可動絞り部133における複数の絞りの羽根と連動しながらFPD43を移動して、長尺撮影を実施することができる。すなわち、本X線診断装置1によれば、可搬型の長尺撮影用検出器移動装置31を用いることで、FPD3枚分に関する長尺撮影を実行することができる。これらのことから、本X線診断装置1によれば、最大で3枚の長尺構成画像を収集することができ、幾何学的ずれのない貼り合わせ精度の良い長尺画像を得ることができる。
【0079】
加えて、本X線診断装置1によれば、可搬型の無線FPD43を使用することで、寝台15の臥位テーブル51と長尺撮影用検出器移動装置31とにおいてFPD43を共用することができる。これにより、長尺撮影用検出器移動装置31を用いた長尺撮影において、コストを低減させることができる。また、長尺撮影用検出器移動装置31に電源部37と第2送信部45とを搭載させることにより、寝台15に長尺撮影用検出器移動装置31を固定することが容易になる。すなわち、寝台15と長尺撮影用検出器移動装置31との電気的接続(ケーブル接続)が不要となる。これにより、長尺撮影の診断効率が向上する。また、長尺撮影用検出器移動装置31を立位スタンド50に搭載させることが可能となり、長尺撮影用検出器移動装置31の使用頻度を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の変形例として、本X線診断装置1の技術的思想を長尺撮影用検出器移動装置31で実現する場合には、例えば図1の構成図における長尺撮影用検出器移動装置31の構成要素を有するものとなる。長尺撮影用検出器移動装置31における長尺撮影処理は、以下のようになる。
【0081】
寝台15の設置面(床面)151に、長尺撮影用検出器移動装置31が設置される。第1長軸方向に第2長軸方向を平行にさせて、外装33が寝台15に固定される。寝台15から移動支持機構41へ、FPD43が移送される。
【0082】
長尺撮影における第1乃至第3撮影にそれぞれ対応する第1乃至第3検出器位置にFPD43を移動させるための制御信号が、第1送信部29を介して移動制御部39に送信される。長尺撮影用検出器移動装置31の天板に被検体Pが載置される。
【0083】
撮影開始ボタンの押下を契機として、制御信号に従って、長尺撮影のうち、第1検出器位置に、FPD43が移動される。FPD43の移動とが完了すると、高電圧発生部11から管電圧の印加および管電流の供給を受けたX線管131により、X線が発生される。これにより、第1撮影が実行される。
【0084】
第1撮影が終了すると、第2撮影に関する第2検出器位置にFPD43が移動される。FPD43の移動が完了すると、第2撮影が実行される。第2撮影が終了すると、第3撮影に関する第3検出器位置に、FPD43が移動される。FPD43の移動が完了すると、第3撮影が実行される。
【0085】
以上のことから、本実施形態の変形例に係る長尺撮影用検出器移動装置31によれば、長尺撮影用検出器移動装置31を寝台15に並列させて床面151に設置することで、X線管固定方式における臥位での長尺撮影において、FPD3枚分のSIDを確保することができる。これにより、可搬型の長尺撮影用検出器移動装置31によれば、FPD3枚分に関する長尺撮影を実行することができる。
【0086】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…X線診断装置、11…高電圧発生部、13…支持機構、15…寝台、17…位置決定部、19…画像発生部、21…記憶部、23…表示部、25…入力部、27…システム制御部、29…第1送信部、31…長尺撮影用検出器移動装置、33…外装、35…設置固定部、37…電源部、39…移動制御部、41…移動支持機構、43…X線検出器(FPD)、45…第2送信部、47…フットレスト、49…ハンドグリップ、50…立位スタンド、51…臥位テーブル、53…カーボン天板、55…グリッド、131…X線管、133…X線稼動絞り部、151…設置面(床面)
図1
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図12