(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の伝達手段は、前記タレット駆動軸に設けられる駆動歯車と、該駆動歯車に噛み合うアイドラ歯車と、前記タレットに設けられ前記アイドラ歯車に噛み合う内歯車とを備え、
前記溝は、前記タレットに設けられた前記内歯車に備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のタレット装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
[洗浄機の全体構成]
図1に示すように、洗浄機100の架台1上に、数値制御される直交3軸方向の移動を実現する直交型の移動装置3を内設した機械室2を後方に配設する。なお、説明を明確にするため、
図1に示すように前後左右上下の方向を設定する。架台1の前方に洗浄室4が配設されており、移動装置3にタレット装置10が設置されている。洗浄室4は、その前方に開口部(図示せず)を有し、開口部を密閉できるシャッタ4bを備え、洗浄室4の後方にはタレット装置10が機械室2との間を通過する開口部(図示せず)が設けられる。開口部はジャバラ、テレスコカバーその他のカバー4aにより、機械室2と遮断される。タレット装置10のクイル18はカバー4aを貫通し、タレット27は洗浄室4に、タレット駆動手段12とスピンドル駆動手段11は機械室2に収められる。
【0021】
洗浄機100の後方には洗浄液タンクユニット101が配設される。洗浄液タンクユニット101は、洗浄液タンク5、高圧ポンプ6、バルブ装置8、及びろ過装置9を備える。バルブ装置8は、配管7aを通過する高圧ポンプ6の吐出した高圧の洗浄液を洗浄液タンク5内へ戻す配管7bとタレット27へ供給する配管7cのいずれかに分配する。
【0022】
高圧ポンプ6により、吐出された洗浄液は配管7a、バルブ装置8、配管7cを通じてタレット装置10に送出される。この洗浄液はタレット装置10内を通り、タレット装置10に設けられている回転可能なノズル36から噴射される。なお、ノズル36は、ノズル36A、36B(
図2参照)等の総称とする。
【0023】
バリ取り又は洗浄の対象物であるワークWは、シャッタ4bを開けて洗浄室4内に投入される。その後、シャッタ4bを閉める。
洗浄液は高圧ポンプ6により昇圧され、配管7、タレット装置10を通りノズル36から吐出する。ノズル36から吐出した洗浄水は、ワークWに噴射され、ワークWに付着している汚れ、バリを取り除く。ノズル36は、タレット装置10と共に移動装置3により精密に移動し、ワークWの内、汚れの付着している箇所若しくはバリが付着している箇所に噴流を当てる。噴流の動圧が汚れやバリに作用し、ワークWから汚れやバリが除去される。
洗浄液は汚れ、バリと共に、洗浄液タンク5に回収される。回収された洗浄液は、ろ過装置9によりろ過される。ろ過された洗浄液は、再び高圧ポンプ6により揚圧され、洗浄に供される。
洗浄完了後、シャッタ4bが開けられて、ワークWは取り出される。
【0024】
[第1実施形態]
主に
図2に従って、本発明の第1実施形態として、クイル18と、サーボモータであるスピンドル駆動手段11と、サーボモータであるタレット駆動手段12と、タレット駆動軸21と、複数のタレット面27aを有するタレット27と、駆動歯車25a、アイドラ歯車25b、及び内歯車25cを備える第1の伝達手段25と、傘歯車29a、29b、及びセンターシャフト29cを備える第2の伝達手段29と、スピンドル35と、スピンドル35の係止片312、及びセンターシャフト29cの受容部311を備える係合手段31と、回転マニホールド41と、流路52、53とを備えるタレット装置10を説明する。なお、スピンドル35はスピンドル35A、35B等の総称、係止片312は係止片312A、312B等の総称、流路52は流路52A、52B等の総称、流路53は流路53A、53B等の総称とする。
【0025】
<駆動装置>
クイル18は、ここでは円筒形状を呈している。
なお、クイル18の断面形状は、タレット駆動軸21、ドライブシャフト22を内設できる中空形状(筒形状)であれば良く、断面の外形は、四角形、六角形など自由な形状を選択できる。クイルを中空の多角形柱とするときは、その断面の重心付近にタレット駆動軸21を設ける。
【0026】
スピンドル駆動手段11は、その出力軸がクイル18の中心軸と同軸となるようにクイル18後端に配設される。スピンドル駆動手段11は、ここではサーボモータであるため、スピンドルの回転角度割出し機能、すなわち回転角度位置決め機能を備える。
なお、スピンドル駆動手段11は、サーボモータに替えてレゾルバ若しくはエンコーダを備えたステッピングモータを用いても良い。
【0027】
タレット駆動手段12はスピンドル駆動手段11に隣接して配設される。歯車16はタレット駆動用モータの出力軸に固定される。
なお、タレット駆動手段12は、サーボモータに替えてレゾルバ若しくはエンコーダを備えたステッピングモータその他のモータ、又はローラギアカム方式、パラレルカム方式、バレルカム方式による角度割出装置、又は回転シリンダを用いても良い。回転シリンダを用いる場合、非圧縮性流体である油圧シリンダや、圧縮性流体である空気圧シリンダを用いることができる。
【0028】
タレット駆動軸21は、クイル18の両端に内設された軸受19、20により、クイル18と同軸に、かつ、回転自在に軸支される。歯車17は、タレット駆動軸21の後端に嵌挿されて固定されており、歯車16と噛み合うことで、タレット駆動手段12の出力がタレット駆動軸21に伝達される。
なお、歯車16、17を備える歯車機構に替えて歯付ベルト伝動機構を利用することができる。
【0029】
ドライブシャフト22は、タレット駆動軸21の両端に内設された軸受15、23により、タレット駆動軸21と同軸に回転自在に軸支される。ドライブシャフト22は、カップリング14を介してスピンドル駆動手段11と接続される。
【0030】
タレット27は、複数のタレット面27a(
図1も参照)を有する。タレット27はタレットベース24に内設された軸受26により、回転自在に軸支される。タレット27の後方には内歯車25cが例えばねじ締結等により固定される。タレット面27aには、支持部材33が取り付けられる。なお、支持部材33は、支持部材33A、33B等の総称とする。使用するノズル36、又は回転工具37の本数がタレット面数より少ない場合、支持部材33に替えて、フタ38を取付ける(
図4参照)。
なお、タレット面27aの面数は自由に変更できる。タレット面27aはクイル18、タレット駆動軸21と平行に配置したが、タレット27前方に向けて傾斜した平面(多角錐面)上に設けても良い。
【0031】
第1の伝達手段25はタレット駆動軸21の回転をタレット27に伝達する。タレット駆動軸21の前端には駆動歯車25aが設けられる。タレットベース24に回転可能に軸支される複数のアイドラ歯車25bが駆動歯車25aと噛み合い、タレット27に設けられた内歯車25cがアイドラ歯車25bと噛み合い、タレット駆動軸21の回転がタレット27に伝達される。アイドラ歯車25bを複数設けることで、歯車の歯にかかる力を分散でき、伝達可能なトルクを増加することができる(
図3参照)。駆動歯車25aは、ここではタレット駆動軸21に一体として設けられているが、別体として設けられてタレット駆動軸21に固定されていてもよい。また、内歯車25cは、ここでは別体として設けられてタレット27に固定されているが、タレット27に一体として設けられていてもよい。
アイドラ歯車25bは複数設ける事が望ましいが、1つに変更することができる。本実施例では3つ設けたが、設計条件により、その個数を自由に変更できる。
【0032】
なお、第1の伝達手段25として、歯車機構に替えて、サイクロイド減速機(特開2010−32038号公報参照)、偏心作動式ギアボックス(特願2011−531352号公報参照)、偏心揺動型歯車装置(特開2010−91073号公報参照)等、入力軸と出力軸が同軸上で伝達可能な伝達機構を利用することができる。
【0033】
第2の伝達手段29は傘歯車29a、29b及び出力軸であるセンターシャフト29cで構成する。ここで、傘歯車29a、29bは歯車機構を構成する。ドライブシャフト22の前端にはスプライン22aが設けられる。スプライン22aに駆動用の傘歯車29aがスプライン嵌合される。
センターシャフト29cは、タレット面27aに垂直に、タレット27内部に回転自在に軸支される。センターシャフト29cには従動用の傘歯車29bを嵌挿する。傘歯車29bは、キー、セレーション等によりセンターシャフト29cと固定する。
傘歯車29aと傘歯車29bとが噛み合うことにより、ドライブシャフト22の回転がセンターシャフト29cに伝達される。
【0034】
なお、スプライン22aは、セレーション、テーパリング、キー及びキー溝その他の軸締結要素に替えても良い。また、第2の伝達手段29は、傘歯車機構に替えて、ねじ歯車機構若しくはウォーム歯車機構、オルダム継手、又は、自在継手を選択できる。
【0035】
スピンドル35は、その内部に洗浄液の流路を有し、タレット面27aに配設された支持部材33に回転自在に、かつ、センターシャフト29cと同軸に軸支される。
【0036】
係合手段31は、センターシャフト29cに備えたスリ割溝である受容部311と、スピンドル35に備えた略平行な2面を有する係止片312と、を備える。ここで、受容部311は、センターシャフト29cの端部に設けられ直線状に延在する凹溝であり、係止片312は、スピンドル35の端部に設けられ受容部311に回転伝達可能に係合し得る凸部である。
係止片312は、ここでは略平板形状を呈しており、受容部311より若干面幅が狭く製作される。タレット面27aが割り出されたときには、係止片312は、受容部311と係合してセンターシャフト29cの回転をスピンドル35に伝達できる。
スピンドル駆動手段11が割出し機能を有するサーボモータであり、その回転がドライブシャフト22、第2の伝達手段29を介してセンターシャフト29c、スピンドル35に伝達されることにより、スピンドル35の回転方向の角度をスピンドル駆動手段11により任意に割り出すことができる。
【0037】
係止片312Aは、受容部311の溝方向がタレット27の円周方向を向くときに、タレット27の旋回に伴い、受容部311を通過する。それまでセンターシャフト29cと噛み合っていたスピンドル35はタレット27の旋回に伴い、センターシャフト29cと切り離される。
センターシャフト29cと切り離されたスピンドル35はタレット27周上を旋回する。このとき、係止片312がガイド39に摺動し、スピンドル35は回転しない。そのため、タレット27の旋回に伴って、係止片312は受容部311をスムーズに通過できる。
【0038】
なお、係合手段31は受容部311と係止片312の組合せに替えて、例えば以下のクラッチ機構を選択できる。このクラッチ機構は、互いに接続可能な一対のクラッチと、支点で回動するアームとを備え、アームの作動により、一方のクラッチを支持する支持部材を退避位置に移動させることでクラッチを離して係合を解除し、支持部材を接続位置に移動することでクラッチを接続し、係合させるものである。
【0039】
<洗浄液流路>
回転マニホールド41は、タレット27の旋回中心軸と同軸にタレット27に配設される。回転マニホールド41の軸心には、ブラケット44で固定されたスイベル軸41aが挿嵌される。スイベル軸41aには洗浄液の流入口が設けられる。流入口へは、配管7cが連通する。高圧ポンプ6(
図1参照)により揚圧された洗浄液は、配管7を通り、スイベル軸41aの流入口から回転マニホールド41に流入する。回転マニホールド41には、タレット割出数(タレット面数)と同数(4つ)の流出口が設けられる。
【0040】
タレット面数と同数の洗浄液の流路52A、52B等は、回転マニホールド41の流出口の各々から、各タレット面27aに配設された支持部材33A、33B等を通り、スピンドル35へ連通する。高圧ポンプ6から供給される洗浄液は、回転マニホールド41を通じて、各タレット面27aに設けられた全てのスピンドル35A、35B等に流通する。
【0041】
支持部材33の内部には円筒溝331が設けられ、円筒溝331には流路53が接続される。スピンドル35には、円筒溝331に対応する軸方向位置に半径方向孔が設けられる。スピンドル35の半径方向孔からスピンドル35の内部の軸方向孔を通り、スピンドル35先端のフランジ面に洗浄液の流路53が連通する。
なお、流路52、53等はタレット内に設けることを必ずしも要さない。
【0042】
望ましくは、ポペット弁42A、42B等が、回転マニホールド41から支持部材33へ流通する流路52、53の中間に、設けられる。ポペット弁42は、弁体421、弁座423、及びコイルばね422を備える。なお、ポペット弁42は、ポペット弁42A、42B等の総称とする。カムフォロアに接しないポペット弁(42B参照)においては、弁体421は、弁座423に向かう方向に、コイルばね422により付勢されながら弁座423に当接し、流路を閉じる。
【0043】
カムフォロア43がスイベル軸41aに配設されたブラケット45に固定される。
カムフォロア43は、タレット27が旋回し、タレット面27aが割り出されたときに、センターシャフト29cと接続するスピンドル35に連通するポペット弁42の弁体421をコイルばね422の弾性力に抗して押し上げる。そして、弁体421が弁座423から離れ、洗浄液が流路52Aから流路53Aへ流通する。
【0044】
洗浄液の流路52、53がカムフォロア43とポペット弁42を備える構成を有することにより、センターシャフト29cと接続し、回転可能になったスピンドル35Aにのみ、洗浄液を供給し、その他のスピンドル35B等へは洗浄液の供給を遮断することができる。スピンドル35Aへ供給された洗浄液はスピンドル35Aに固定されるノズル36Aから噴射されるため、センターシャフト29cとスピンドル35Aを介して接続しているノズル36Aのみから高圧水を噴射し、その他のノズル36B等からの高圧水の噴射を停止することができる。
【0045】
<ノズル>
スピンドル35には各種ノズル36が設けられ、ノズル36の先端から洗浄液を噴射することができる。ノズル36又は回転工具37(
図4参照)は、スピンドル35と共に回転又は位置決めされ、移動装置3によりプログラムされた動作を行い、洗浄又はバリ取りを行う。
【0046】
ノズル36は、回転軸の先端に回転軸と同軸の噴射口を有する直射ノズル、回転軸と同軸の延長軸を有し、延長軸先端部から回転軸と垂直方向に1つの噴射口を有するL形ノズル、回転軸と同軸の延長軸を有し、延長軸の先端部から2つの180°向きが反対向きの噴射口を有するランスノズルその他のノズルから選択され得る。センターシャフト29cの回転と回転方向位置決めをする機能を有することで、使用するノズル36に応じてノズル36の回転や噴射口の回転方向位置決めができる効果を奏し、多種多様な高圧洗浄、又はバリ取りが可能となる。
【0047】
<回転工具>
図4に従って、ノズル36に替えてブラシその他の回転工具37を使用する場合を説明する。
タレット面27aには洗浄液の流路を設けない支持部材33Cが配設される。流路52、53の中間にはポペット弁42に替えてプラグ54を固定する。プラグ54により、洗浄液の流路53への流入が遮断される。
【0048】
回転工具用のスピンドル35Cは、支持部材33Cの内部に軸受により回転自在に軸支される。スピンドル35Cは、センターシャフト29c側の端面に係止片312Cと、他方の端にコレット40とを備え、内部に洗浄液通路を備えない。回転工具37は、コレット40によりスピンドル35Cに固定される。
【0049】
回転工具37としては、カップブラシ、ねじりブラシ、ドリル、エンドミル等が利用され得る。回転工具37を利用することで高圧水では取りきれない強いバリを除去することができる。
【0050】
前記したように、第1実施形態に係るタレット装置10は、ノズル36又は回転工具37を取り付けるスピンドル35と、スピンドル35を取り付けるタレット面27aを複数有するタレット27と、スピンドル35の回転角度割出し機能を有するスピンドル駆動手段11と、タレット27を旋回して割り出すタレット駆動手段12と、タレット27の旋回中心軸と同軸に配置され、タレット駆動手段12の動力を伝達する、クイル18に回転自在に軸支される中空軸であるタレット駆動軸21と、スピンドル駆動手段11の回転を伝達する、タレット駆動軸21の内側に同軸に軸支されるドライブシャフト22と、タレット駆動軸21の回転をタレット27に伝達する第1の伝達手段25と、センターシャフト29cを有し、タレット27の割出しにより特定されるスピンドル35にドライブシャフト22の回転をセンターシャフト29cを介して伝達する第2の伝達手段29と、タレット27の割出し状態においてセンターシャフト29cとスピンドル35との係合を実現し、タレット27の旋回状態において前記係合を解除する係合手段31と、を備える。
【0051】
第1実施形態に係るタレット装置10は、前記のように構成したことで、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、クイル18、タレット駆動軸21、ドライブシャフト22、タレット27の回転中心が同一軸を中心に回転するため、各軸の組立て後の同軸精度を容易に向上させることが可能となる。また、各部品が回転体の形状となり、高精度の加工が容易となる。その結果、タレット装置の製造コストを低下する効果が生ずる。併せて、タレット27の旋回及び角度割出、並びにスピンドル35の回転及び角度割出の信頼性が向上する効果を奏する。
すなわち、タレット駆動軸21、ドライブシャフト22、及びタレット27の旋回中心軸の組付け精度を向上させることができる、タレット式の洗浄機100に用いられるタレット装置10を提供できる。
また、第2の伝達手段29、及び係合手段31を備えることにより、タレット27に複数配置されるスピンドル35の内、タレット27の割出しにより特定されるスピンドル35にのみ、ドライブシャフト22を通じて、スピンドル駆動手段11の回転を伝達する。このため、必要な動力のみを利用することができ、また、駆動部分を限定することにより動作確認を容易にする効果が生ずる。
【0052】
また、第1実施形態では、センターシャフト29cがスピンドル35と同軸に回転自在に軸支されており、第2の伝達手段29は、センターシャフト29cにドライブシャフト22の回転を伝達する歯車機構をさらに備え、係合手段31は、センターシャフト29cの端部に設けられ直線状に延在する凹溝である受容部311と、スピンドル35の端部に設けられ受容部311に回転伝達可能に係合し得る凸部である係止片312と、を備え、スピンドル35がタレット27の旋回により描く軌跡と平行に受容部311の延在方向が位置決めされた状態でタレット27が旋回することにより係止片312と受容部311との係合が解除され、タレット27が割り出されたときに係止片312と受容部311とが係合する。
【0053】
このような構成によれば、第2の伝達手段29と係合手段31を簡易に構成することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、タレット27の旋回中心軸と同軸にタレット27に配設される回転マニホールド41と、該回転マニホールド41からスピンドル35へ連通する流路52、53とを備える。
【0055】
このような構成によれば、タレット面27aに回転自在に取り付けられるスピンドル35への洗浄液の供給を簡単な構成で実現することができる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、
図5及び
図6を参照して、本発明の第2実施形態について、前記した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を適宜省略する。
【0057】
主に
図5に従って、本発明の第2実施形態として、4面のタレット面27aを有する、第1実施形態のタレット装置10に、クランプ部材としてのプランジャ63と、クランプ部材移動手段としての空気圧式のシリンダ61と、ここでは空気圧式着座スイッチである検知手段65とを設け、内歯車25cの外周面上に、略V字型断面の溝としてのV溝64を備えた場合を示す。
【0058】
<クランプ手段>
プランジャ63は、タレット27の旋回中心軸を通る鉛直面上に設けられ、シリンダ61により上下に移動する。プランジャ63は、先端部に、V溝64に対応する形状の略V字型断面の突起としてのV面63aを有する(
図6参照)。V面63aを構成する2つの面は、鉛直面に対して対称をなす。
【0059】
シリンダ61は、タレットベース24に、タレットの旋回中心軸を通る鉛直面上に配設される。シリンダ本体61bの下端部にブッシュ61aが内設される。シリンダ本体61b内にはピストン61eが上下に摺動可能に配置される。ピストン61eの下方にはフランジ面61d1を有するピストン軸61dが固定される。弾性体であるコイルばね61cは、ピストン軸61dをガイドとして、シリンダ本体61bの下方、かつフランジ面61d1の上方に設けられる。コイルばね61cの弾性力により、ピストン軸61dを下方へ付勢する。ピストン軸61dはプランジャ63と一体に形成される。
なお、コイルばねに替えて皿バネを用いることができる。また、ピストン軸61dとプランジャ63を別体で構成して、これらを嵌合して接合しても良い。
【0060】
シリンダ本体61bとピストン61eにより区画されて構成される、ピストン61eの下方の空気室67へ圧縮空気を送るための空気配管66が設けられる。この空気配管66には切換弁(不図示)が設けられ、この切換弁は空気室67への圧縮空気の導入と排気を切替える。
【0061】
シリンダ本体61bの上端にはエンドプレート61fが配設される。エンドプレート61fには、シリンダ本体61b、ピストン61e、及びエンドプレート61fで区画されて構成される、ピストン61の上方の空気室68から空気を排気するための配管69が設けられる。
【0062】
ブッシュ61aは、プランジャ63と摺動し、プランジャ63が傾くことを防止する。ブッシュ61aの存在により、プランジャ63がシリンダ本体61bと摺動せず、シリンダ本体61bが摩耗することを防ぐ。
【0063】
内歯車25cの外周面にタレット27の割出数と同数のV溝64A、64B、64C、64Dが円周方向に均等間隔に設けられる。V溝64を構成する2面(側面)は、半径方向に対称に設けられる。なお、V溝64は、V溝64A、64B、64C、64Dの総称とする。その面間角度はプランジャ先端のV面63aと同一の角度をなす。
内歯車25cは、タレット面27aが割り出されたときにV溝64が鉛直方向、上向きとなり、かつ、内歯車25cの中心軸がタレット27の旋回中心軸と一致するようにタレット27に配設される。
【0064】
空気室67の圧縮空気を切替え弁(不図示)により排気すると、コイルばね61cの復元力によりピストン61eが下方へ移動する。同時に、ピストン軸61dの先端に配設されたプランジャ63が内歯車25cに設けられたV溝64に挿入される。
【0065】
このとき、プランジャ63のV面63aが、内歯車25cのV溝64に当接する。さらに、コイルばね61cの復元力Fにより、プランジャ63は内歯車25cに向かって付勢される(
図6参照)。V面63aは、復元力FのV面63aに垂直な方向への円周方向に互いに均等かつ反対方向を向く2つの分力F1、F2を、内歯車25cに与える。また、プランジャ63はブッシュ61aによりその姿勢が鉛直方向に維持されている。これらの相乗効果により、プランジャ63は内歯車25cをその回転方向にクランプする。内歯車25cはタレット27に固定されているため、プランジャ63のV溝64への挿入により、タレット27の旋回が抑止される。
【0066】
空気室67へ圧縮空気を導入すると、ピストン61eは、圧縮空気の圧力を受け、コイルばね61cの弾性力に抗して上昇する。このとき、空気室68からは、配管69を通じて空気が排気される。
ピストン61eが上方へ移動すると、ピストン軸61dの先端に配設されたプランジャ63がV溝64から抜きとられ、内歯車25cと固定されたタレット27が旋回できる。
【0067】
なお、本実施形態では、クランプ部材移動手段としてのシリンダ61として、コイルばねを用いた単動シリンダを用いたが、複動シリンダに替えても良い。また、プランジャ63に替えてV字型断面を有するクランプ部材を利用し、クランプ部材移動手段としてトグル機構その他のリンク機構を利用しても良い。
【0068】
<検知手段>
ノズル65aはエンドプレート61fに設けられる。配管70はノズル65aに接続する。配管70内の圧力を監視する圧力スイッチ65b、及び配管70内を一定圧に保つためのレギュレータ65cが、配管70に設けられる。ノズル65aに導入する空気の圧力は、空気室67内の圧力よりも十分に低く設定する。
【0069】
ピストン61eが上方へ移動し、エンドプレート61fに達すると、プランジャ63はV溝64から抜けきり、ピストン61eはノズル65aを閉じる。すると、配管70内の圧力が上昇する。そして、圧力がレギュレータ65cの設定圧力まで到達すると、圧力スイッチ65bが設定圧力到達の信号を発する。その結果、検知手段65は、ピストン61eが上方端へ到達したことを確認できる。
【0070】
他方、ピストン61eがエンドプレート61fまで到達しない場合、ピストン61eがノズル65aを塞ぐことが無く、配管70に流通する空気が配管69から排気される。この場合、配管70内の圧力が増加しないため、圧力スイッチ65bが設定圧力到達の信号を発しない。その結果、検知手段65は、ピストン61eが上方端へ到達していないことを確認できる。
【0071】
検知手段65は、プランジャ63がタレット27の旋回を許容する退避位置にあることを検知すれば良い。例えば、プランジャ63またはピストン61eにドグを設け、ドグを検知する検知手段を設け、プランジャ63が旋回するタレット27と干渉する範囲に存在しないことを検知することができればよい。
【0072】
前記したように、第2実施形態では、タレット27をクランプするプランジャ63と、タレット27をクランプした状態にするクランプ位置とタレット27を解放した状態にするアンクランプ位置との2位置間で、プランジャ63を移動させるシリンダ61と、プランジャ63がタレット27の旋回領域から退避した状態にあることを検知する検知手段65と、を備える。
【0073】
第2実施形態に係るタレット装置10は、前記のように構成したことで、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、角度を割り出されたタレット27、すなわち回転角度位置決めが行われたタレット27は、プランジャ63により固定されるため、タレット27が円周方向に偏位することが防止される。
【0074】
ここで、プランジャ63がV溝64から完全に抜けきらないままタレット27が旋回すると、タレット27とプランジャ63が干渉し、タレット駆動手段12に過大なトルクが伝達する。これにより、タレット駆動手段12及び駆動系に重大なトラブルが発生する恐れがある。
【0075】
しかし、本実施形態によれば、検知手段65は、ピストン61eが上方端へ到達しプランジャ63が完全にV溝64から抜けたか否かを確認できるため、プランジャ63がタレット27の旋回領域から退避した状態にないときにタレット27を旋回させて、タレット27とプランジャ63が干渉することが防止され、タレット装置10を破損することが無い。
また、電気部品を高湿度の洗浄室4内に配置しないため、蒸気による電気部品の破損を防止することができる。そのため、装置の信頼性を向上することができる。
【0076】
また、第2実施形態は、タレット27と連動する略V字型断面のV溝64を備え、プランジャ63は、V溝64に対応する形状の略V字型断面の突起としてのV面63aを備えており、プランジャ63は、クランプ位置においてV面63aがV溝64に当接して付勢することにより、タレット27をクランプする。
【0077】
このような構成によれば、プランジャ63のV面63aの略V字型断面が、タレット27と連動する略V字型断面のV溝64に当接して付勢することにより、V溝64の2つの側面に垂直な方向に付勢力の分力が働き、タレットの確実なクランプが可能になる。
【0078】
また、第2実施形態では、第1の伝達手段25は、タレット駆動軸21に設けられる駆動歯車25aと、該駆動歯車25aに噛み合うアイドラ歯車25bと、タレット27に設けられアイドラ歯車25bに噛み合う内歯車25cとを備え、前記V溝64は、タレット27に設けられた内歯車25cに備えられている。
【0079】
このような構成によれば、アイドラ歯車25bを介してタレット駆動軸21の回転をタレット27に伝達することにより、確実な動力の伝達を行うことができる。
また、タレット27に設けられタレット駆動軸21からの回転が直接伝えられる内歯車25cに備えられたV溝64へプランジャ63が挿入されることにより、タレット27の旋回が確実に抑止される。
【0080】
プランジャ63のアンクランプ位置の検知手段65として、本実施形態ではエア式着座スイッチを利用したが、近接スイッチ、接触スイッチ、リミットスイッチ、オートスイッチその他の位置検知センサで代替可能である。
その余りについては第1実施形態と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0081】
以上の通り、本発明を2つの実施形態に従って説明したが、前記した実施形態の構成に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0082】
例えば、前記実施形態では、受容部311がセンターシャフト29cの端部に設けられ、係止片312がスピンドル35の端部に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、受容部311がスピンドル35の端部に設けられ、係止片312がセンターシャフト29cの端部に設けられる構成を採用することも可能である。この場合、スピンドル35の回転を抑えるために、スピンドル35の側面の適当な部位にガイド39が摺動する平坦面を形成するか、又は、ガイド39が受容部311に係合して摺動する構成とする必要がある。
【0083】
また、前記実施形態では、係止片312は略平板形状を呈しているが、本発明はこれに限定されるものではない。係止片312は、例えば、複数本の略円柱状のピンが直線上に並んで立設されるものであってもよいし、複数の平板がその表面を略面一に位置させて直線上に並んで立設されるものであってもよい。
【0084】
また、前記実施形態では、V溝64は、内歯車25cに設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。V溝64は、例えば、内歯車25c以外のタレット27の適宜の箇所に設けられていてもよい。