【実施例1】
【0038】
本発明の第1の実施例に係る石炭乾留装置について
図4に基づいて説明する。
本実施例は、上述した第1の参考例に係る石炭乾留装置が具備する排気管の代わりに前段に予熱乾燥装置を追加した構成となっている。本実施例では、上述の第1の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0039】
本実施例に係る石炭乾留装置は、
図4に示すように、乾留装置本体111を具備すると共に、乾留装置本体111の前段に設けられた予熱乾燥手段である予熱乾燥装置131を具備する。
【0040】
予熱乾燥装置131は、ロータリキルンであって、内筒132と、内筒132を覆って設けられた外筒133と、内筒132を回転可能に支持する支持具134とを備える。外筒133は、予熱用加熱ガス6を受入するガス受入口(図示せず)と、内筒132を加熱した予熱用加熱ガス7を排気するガス排気口(図示せず)とを備える。内筒132における外筒133で囲まれる領域が石炭加熱部をなしている。予熱乾燥装置131は、内筒132へ乾燥炭11を供給するフィーダ135と、内筒132の開口端部に設けられた分離槽136と、分離槽136に設けられたホッパ137とを備える。分離槽136の上部にガス排気口138が設けられる。ガス排気口138にガス排気管139が連絡している。
【0041】
乾留装置本体111は、上述の内筒112、上述の外筒113、上述の支持具114、上述のフィーダ115、上述の分離槽116、および上述のホッパ117を備える。分離槽116は、上部に設けられたガス排気口118を介してガス排気管119と連絡している。乾留装置本体111のフィーダ115は、予熱乾燥装置131のホッパ137の石炭排出口に連絡しており、予熱乾燥炭15が乾留装置本体111のフィーダ115に供給される。
【0042】
このような本実施例においては、前記予熱乾燥装置131などにより前記低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。
【0043】
このようにして構成された石炭乾留装置の作動について以下に説明する。
【0044】
まず、褐炭や瀝青炭等の低品位炭(図示せず)などの原料石炭を乾燥装置(図示せず)により乾燥処理して乾燥炭11となり、乾燥炭11を予熱乾燥装置131のフィーダ135に供給する。フィーダ135は、乾燥炭11を予熱乾燥装置131の内筒132に所定量ずつ供給する。
【0045】
他方、燃焼炉(図示せず)などで生成した予熱用加熱ガス6を予熱乾燥装置131の外筒133内に供給する。予熱用加熱ガス6が内筒132を加熱し、内筒132内の乾燥炭11を間接加熱することになる。予熱用加熱ガス6は、石炭加熱部出口132cでの乾燥炭11が280〜350℃となるように調整される。これにより、予熱乾燥炭15が生成すると共に、予熱ガス22が生成する。ここで、乾燥炭11を350℃まで加熱すると石炭中の水銀を8割程度放出することから、予熱ガス22は水銀濃度の高いガスとなっている。このような予熱ガス22は、分離槽136、ガス排気口138、ガス排気管139を介して系外へ排気される。予熱乾燥炭15は、内筒132内を順次分離槽136側へ移動していき、ホッパ137へ排出される。
【0046】
続いて、上述のホッパ137内の予熱乾燥炭15は、乾留装置本体111のフィーダ115に送給される。
【0047】
乾留装置本体111のフィーダ115は、予熱乾燥炭15を当該乾留装置本体111の内筒112に所定量ずつ供給する。他方、燃焼炉(図示せず)などで生成した加熱ガス1を装置本体111の外筒113内に供給する。加熱ガス1が内筒112を加熱し、内筒112内の予熱乾燥炭15を間接加熱することになる。加熱ガス1は、石炭加熱部出口112cでの予熱乾燥炭15が400〜450℃となるように調整される。これにより、乾留炭16が生成すると共に、乾留ガス23が生成する。乾留炭16は、内筒112内を順次分離槽116側へ移動していき、分離槽116からホッパ117へ排出される。乾留ガス23は、分離槽116のガス排気口118、ガス排気管119を介して系外へ排気される。
【0048】
上述の予熱乾燥炭15は、予熱乾燥装置131で水銀濃度の高い予熱ガス22を排出したものであることから、乾留ガス23は、予熱ガス22と比べて水銀濃度の低いガスとなる。そのため、乾留装置本体111の内筒112内の石炭がホッパ117側へ移動していくときに乾留ガス23と接触し乾留ガス23中の水銀を吸着したとしても、乾留ガス23中の水銀濃度が低いことから、乾留装置本体111のホッパ117へ排出される乾留炭16は、水銀含有量の少ないものとなる。
【0049】
以下、上述した作動を繰り返すことにより、水銀含有量の少ない乾留炭16を連続的に製造することができる。
【0050】
したがって、本実施例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と、乾留装置本体111の前段に設けられた予熱乾燥装置131とを具備し、予熱乾燥装置131により乾燥炭11を水銀放出率が80%程度となる温度(280〜350℃)で加熱して、乾燥炭11から水銀を放出して予熱乾燥炭15とし、乾留装置本体111により予熱乾燥炭15を間接加熱して乾留炭16となるようにしたことで、予熱乾燥装置131での予熱乾燥炭15の温度低下が従来の1基のロータリキルンで乾留炭を製造する場合と比べて小さく、水銀の石炭への吸着を抑制することができるため、水銀含有量の少ない乾留炭16を得ることができる。
【0051】
[参考例4]
本発明の第4の参考例に係る石炭乾留装置について
図5および
図6に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第1の参考例に係る石炭乾留装置が具備する排気管の代わりに分級装置を追加した構成となっている。本参考例では、上述の第1の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0052】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図5に示すように、上述の乾留装置本体111を具備すると共に、ホッパ117から排出される後述の乾留炭12aを分級する分級手段である分級装置141を具備する。
【0053】
分級装置141は、分級槽142と、分級槽142内に設けられた目皿板(分級板)143とを備える。分級槽142は、目皿板143により主分級室142aと副分級室142bに区画される。目皿板143は分級槽142の乾留炭受入口の下方に配置される。目皿板143は、粗粉乾留炭排出口側に向けて傾斜して配置される。目皿板143は貫通孔を複数有する。前記貫通孔の直径は所定の大きさ、例えば0.42mm〜2.0mmに設定される。
【0054】
上述の分級装置141は、微粉乾留炭排出管144とガス送給ブロア145とガス送給管146とをさらに備える。微粉乾留炭排出管144は、分級槽142の副分級室142bの底部の微粉乾留炭排出口に連絡すると共に、ガス送給管146に連絡している。ガス送給管146は、ガス送給ブロア145のガス送給口と連絡すると共に、ガス排気管119に連絡している。
【0055】
このような本参考例においては、前記分級装置141などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。前記微粉乾留炭排出管144、前記ガス送給ブロア145、前記ガス送給管146などにより微粉乾留炭排出手段をなしている。
【0056】
このようにして構成された石炭乾留装置の作動について以下に説明する。なお、本参考例では、上述の第1の参考例に係る石炭乾留装置と同様に、フィーダ115により内筒112内に乾燥炭11を所定量ずつ供給する。
【0057】
外筒113に加熱ガス1を供給する。これにより、内筒112内の乾燥炭11を間接加熱することになり、乾留炭12が生成すると共に、乾留ガス21が生成する。乾留炭12は、内筒112内を順次分離槽116側に移動していく。乾留ガス21は、内筒112内を順次分離槽116側へ乾留炭12と接触しながら移動していく。乾留炭12は、内筒112の石炭加熱部出口112cを通過してから分離槽116に至るまで冷えていくため、それに応じて乾留ガス21中の水銀の一部を吸着して、水銀吸着乾留炭12aとなり、水銀吸着乾留炭12aがホッパ117へ排出される。乾留ガス21は、当該ガス21中の水銀が乾留炭12に吸着していくため低水銀含有乾留ガス21aとなり、低水銀含有乾留ガス21aはガス排気口118を介してガス排気管119へ流通する。
【0058】
ここで、乾留炭への水銀の吸着量について、石炭(乾留炭)の粒子径と水銀含有量(mg/kg)の関係を示す
図6を参照して説明する。この
図6に示すように、石炭の粒子径が0.42mm以下では、水銀含有量が0.028mg/kgとなり、0.42mm〜2.0mmでは水銀含有量が0.024mg/kgとなり、2.0mm〜3.0mmでは水銀含有量が0.008mg/kgとなることが確認される。すなわち、比表面積の広い、粒子径の小さい微粉炭に優先的に乾留ガス中の水銀が吸着していくことが確認される。
【0059】
続いて、ホッパ117内の水銀吸着乾留炭12a(微粉乾留炭12aa、粗粉乾留炭12ab)を分級装置141の分級槽142内に移送して目皿板143上に供給する。ガス送給ブロア145が、水銀吸着乾留炭12aの分級が生じ得るガス流速で不活性ガス32をガス送給管146に送給する。これにより、分級槽142の副分級室142bに負圧が生じることになり、目皿板143により乾留炭12aの分級が行われる。つまり、目皿板143の貫通孔よりも小さい微粉乾留炭12aaが副分級室142b内に落下し、目皿板143の貫通孔よりも大きい粗粉乾留炭12abが主分級室142a内に残ることになる。よって、目皿板143の貫通孔の直径を0.42mmに設定することで、粒子径が0.42mm以下の大きさの水銀吸着量の多いものを微粉乾留炭12aaとして副分級室142b内に落下させることができる。好適には、目皿板143の貫通孔の直径を2.0mmに設定することで、粒子径が2.0mm以下の大きさの水銀吸着量の多いものを微粉乾留炭12aaとして副分級室142b内に落下させることができる。なお、不活性ガス32は、微粉乾留炭12aaとの反応性が無いガスであって、例えば、窒素などが挙げられる。
【0060】
副分級室142b内の微粉乾留炭12aaは、微粉乾留炭排出管144、ガス送給管146を介して、不活性ガス32と一緒にガス排気管119へ送給される。そして、微粉乾留炭12aaは、不活性ガス32、低水銀含有乾留ガス21aと一緒に系外に排出される。
【0061】
他方、主分級室142a内の粗粉乾留炭12abは、主分級室142aの底部の粗粉乾留炭排出口から系外に排出される。
【0062】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と分級装置141とを備えたことで、乾留装置本体111で得られた乾留炭12aを分級装置141に移送し、分級装置141で水銀吸着乾留炭12aから水銀吸着量が多い微粉乾留炭12aaを分級して取り除くことができる。これにより、水銀吸着量が少ない粗粉乾留炭12abを水銀含有量の少ない乾留炭として得ることができる。
【0063】
[参考例5]
本発明の第5の参考例に係る石炭乾留装置について
図7に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第4の参考例に係る石炭乾留装置が具備する分級装置の配置を変更した構成となっている。本参考例では、上述の第4の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0064】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図7に示すように、上述の乾留装置本体111を具備すると共に、内筒112とホッパ117との間に配置される分級手段である分級装置151を具備する。
【0065】
上述の分級装置151は、分級槽152と、分級槽152内に設けられた目皿板153とを備える。分級槽152は、目皿板153により主分級室152aと副分級室152bに区画される。目皿板153は分級槽152の乾留炭受入口(内筒112の開口端部)の下方に配置される。目皿板153は、乾留炭受入口側から、分級槽152内の後述する粗粉乾留炭12adを排出する粗粉乾留炭排出口側に向け傾斜して配置される。目皿板153は貫通孔を複数有する。前記貫通孔の直径は所定の大きさ、例えば2.0mmに設定される。
【0066】
上述の分級装置151は、ガス送給管154と、ガス送給ブロア155と、分級槽152のガス排気口156に連絡するガス排気管157とをさらに備える。ガス送給管154は、分級槽152の副分級室152bの底部の不活性ガス受入口に連絡すると共に、ガス送給ブロア155のガス送給口に連絡する。
【0067】
このような本参考例においては、前記分級装置151などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。前記ガス送給ブロア155、前記ガス送給管154、前記目皿板153、ガス排気口156、ガス排気管157などにより、微粉乾留炭排出手段をなしている。
【0068】
このようにして構成された石炭乾留装置の作動について以下に説明する。なお、本参考例では、上述の第4の参考例に係る石炭乾留装置と同様に、フィーダ115により内筒112内に乾燥炭11を所定量ずつ供給する。
【0069】
外筒113に加熱ガス1を供給する。これにより、内筒112内の乾燥炭11を間接加熱することになり、乾留炭12が生成すると共に、乾留ガス21が生成する。乾留炭12は、内筒112内を順次分級槽152側に移動していく。乾留ガス21は、内筒112内を順次分級槽152側へ乾留炭12と接触しながら移動していく。乾留炭12は、内筒112の石炭加熱部出口112cを通過してから分級槽152に至るまで冷えていくため、それに応じて乾留ガス21中の水銀の一部を吸着して、水銀吸着乾留炭12aとなり、水銀吸着乾留炭12aが分級槽152の目皿板153上へ送られる。乾留ガス21は、当該ガス21中の水銀が乾留炭12に吸着していくため低水銀含有乾留ガス21aとなり、低水銀含有乾留ガス21aはガス排気口156を介してガス排気管157へ流通する。
【0070】
ここで、乾留炭への水銀の吸着量は、上述の参考例4で説明したように、乾留炭の粒子径に依存し、乾留ガス中の水銀は、粒子径が2.0mm以下の微粉乾留炭12acにその大半が吸着されることになる。なお、粒子径が2.0mmより大きい粗粉乾留炭12adへの水銀吸着量は、微粉乾留炭12acの場合と比べて少なくなっている。
【0071】
続いて、ガス送給ブロア155が、水銀吸着乾留炭12aの分級が生じ得るガス流速で約400℃の不活性ガス33を、ガス送給管154を通じて分級槽152内へ送給する。これにより、水銀吸着乾留炭12aのうちの微粉乾留炭12acのみが浮上することになる。例えば、ガス送給ブロア155が送給する不活性ガス33のガス流速を7m/sに調整することで、粒子径が2.0mm以下の大きさの水銀吸着量の多いものが微粉乾留炭12acとして浮上することになる。そして、微粉乾留炭12acは、乾留ガス21aおよび不活性ガス33と一緒に、前記ガス排気口156からガス排気管157を通じて系外に排出される。
【0072】
他方、目皿板153上の粗粉乾留炭12adは、ホッパ117に送られて系外に排出される。
【0073】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、内筒112とホッパ117との間に分級装置151を設けたことで、乾留装置本体111で得られた乾留炭12aを分級装置151に送り、分級装置151で水銀吸着乾留炭12aから水銀吸着量が多い微粉乾留炭12acを分級して取り除くことができる。これにより、水銀吸着量が少ない粗粉乾留炭12adを水銀含有量の少ない乾留炭として得ることができる。
【0074】
[参考例6]
本発明の第6の参考例に係る石炭乾留装置について
図8に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第1の参考例に係る石炭乾留装置が具備する排気管の代わりに乾留炭排出促進装置を追加した構成となっている。本参考例では、上述の第1の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0075】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図8に示すように、上述の乾留装置本体111を具備すると共に、乾留炭流通促進装置181を具備する。なお、ホッパ117が乾留炭排出手段をなしている。
【0076】
乾留炭流通促進装置181は、内筒112内の乾留炭12をホッパ117側へ迅速に流通させる装置であって、例えば、スクリュフィーダなどである。装置181の先端部181aは、内筒112の石炭加熱部出口112cに位置づけられる。これにより、加熱ガス1により加熱されない領域にあっては、乾留炭流通促進装置181により当該領域での滞在時間を短くすることができ、これによって乾留炭12の冷却自体を抑制することができると共に、乾留炭12と乾留ガス21との接触時間を短くすることができる。その結果、分離槽116からホッパ117へ排出される乾留炭12への乾留ガス21中の水銀の吸着を抑制することができる。
【0077】
このような本参考例においては、前記乾留炭流通促進装置181などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。
【0078】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と乾留炭流通促進装置181とを具備し、内筒112の石炭加熱部出口112cから分離槽116へ乾留炭12を迅速に流通してホッパ117に排出することができる。これにより、乾留炭の冷却に起因する乾留炭への水銀の吸着を抑制することができることから、水銀含有量の少ない乾留炭12を得ることができる。
【0079】
[参考例7]
本発明の第7の参考例に係る石炭乾留装置について
図9(a)および
図9(b)に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第1の参考例に係る石炭乾留装置が具備する排気管の代わりに乾留ガス接触抑制板体を追加した構成となっている。本参考例では、上述の第1の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0080】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図9(a)および
図9(b)に示すように、上述の乾留装置本体111を具備すると共に、乾留ガス接触抑制板体191を具備する。
【0081】
乾留ガス接触抑制板体191は、分離槽116の側壁部に基端部側が固定され、内筒112の延在方向に沿って延在する。板体191の先端部191a側は、斜め上方に向け傾斜して延在する形状をなしている。板体191は、内筒112内に生成した乾留炭12が積層してなる乾留炭層の上面部12cに接触するように配置される。これにより、乾留炭12は、加熱ガス1による石炭加熱部を通過し、分離槽116、ホッパ117へ排出されるまでに冷えていくことになるが、板体191により乾留ガス21との接触が抑制されることになる。乾留炭12は、分離槽116からホッパ117に排出される。
【0082】
このような本参考例においては、前記乾留ガス接触抑制板体191などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。
【0083】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と乾留ガス接触抑制板体191とを具備し、当該板体191により冷えていく乾留炭12と乾留ガス21との接触を抑制して、冷えた乾留炭12との接触による乾留ガス21中の水銀の吸着を抑制することができることから、水銀含有量の少ない乾留炭12を得ることができる。
【0084】
[参考例8]
本発明の第8の参考例に係る石炭乾留装置について
図10(a)および
図10(b)に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第7の参考例に係る石炭乾留装置に不活性ガス供給装置を追加した構成となっている。本参考例では、上述の第7の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0085】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図10(a)および
図10(b)に示すように、上述の乾留装置本体111、および上述の乾留ガス接触抑制板体191を具備すると共に、不活性ガス供給装置201を具備する。
【0086】
不活性ガス供給装置201は、ホッパ117のガス送出口に連絡して設けられる。不活性ガス供給装置201は、ホッパ117内に約400℃の不活性ガス34を供給する装置である。不活性ガス34としては、乾留炭12との反応性が無いガスであって、例えば、窒素などが挙げられる。ホッパ117内に不活性ガス34を供給することで、当該不活性ガス34が板体191と内筒112との間を通りフィーダ115側へ流通することになる。これにより、乾留ガス21が内筒112と板体191との間に入り込むことを抑制することができる。乾留炭12は、分離槽116からホッパ117に排出される。なお、不活性ガス34は、乾留ガス21と一緒にガス排気口118およびガス排出管119を介して系外に排出される。
【0087】
このような本参考例においては、前記乾留ガス接触抑制板体191および前記不活性ガス供給装置201などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。
【0088】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と乾留ガス接触抑制板体191と不活性ガス供給装置201とを具備し、不活性ガス34をホッパ117に供給し当該不活性ガス34が板体191と内筒112との間を流通することで、上述の第7の参考例に係る石炭乾留装置と同様な作用効果を奏すると共に、板体191と内筒112の間への乾留ガス21の流入を抑制しつつ、板体191と内筒112の間に乾留ガス21があっても当該乾留ガス21を不活性ガス34によりフィーダ115側へ排出することができることから、水銀含有量の少ない乾留炭12をより確実に得ることができる。
【0089】
[参考例9]
本発明の第9の参考例に係る石炭乾留装置について
図11に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第1の参考例に係る石炭乾留装置が具備する排気管の代わりに加熱装置を追加した構成となっている。本参考例では、上述の第1の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0090】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図11に示すように、上述の乾留装置本体111を具備すると共に、加熱装置211を具備する。
【0091】
加熱装置211は、石炭加熱部出口112c近傍の乾留炭12および内筒112を直接加熱することができる装置であって、バーナ212を備える。バーナ212の温度は1200〜1300℃であり、乾留炭12は400〜450℃程度に加熱されて保温されることになる。乾留炭12は、分離槽116からホッパ117に排出される。
【0092】
このような本参考例においては、前記加熱装置211などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。
【0093】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と加熱装置211とを具備し、加熱装置211が具備するバーナ212により分離槽116近傍の乾留炭12および内筒112を加熱するようにしたことで、乾留炭12が分離槽116に排出されるまでの間にて冷えることがなくなり、冷えた乾留炭との接触による乾留ガス中の水銀の吸着を抑制することができることから、水銀含有量の少ない乾留炭12を得ることができる。
【0094】
[参考例10]
本発明の第10の参考例に係る石炭乾留装置について
図12(a)および
図12(b)に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第9の参考例に係る石炭乾留装置が具備する加熱装置を変更した構成となっている。本参考例では、上述の第9の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0095】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図12(a)および
図12(b)に示すように、上述の乾留装置本体111を具備すると共に、加熱装置221を具備する。
【0096】
加熱装置221は、内筒112の石炭加熱部出口112c近傍の乾留炭12を直接加熱することができる装置であって、例えば回転式の間接熱交換チューブ222で構成される。熱交換チューブ222は、内筒112内に複数配置され、内筒112の軸心を中心にその周方向に回転可能に設けられる。熱交換チューブ222の先端部222aは、前記石炭加熱部出口112cよりも分離槽116側に配置される。熱交換チューブ222には、例えば、燃焼排ガス、乾留炉加熱ガス排ガスなどの所定の温度に調整された加熱ガス8が供給される。よって、熱交換チューブ222内に前記加熱ガス8を供給すると共に、当該熱交換チューブ222を回転することにより、内筒112内の分離槽116近傍の乾留炭12は、前記加熱ガス8により加熱された状態の熱交換チューブ222と接触することになり、熱交換チューブ222に接触する乾留炭12が直接加熱される。これにより、乾留炭12が400〜450℃程度に保持される。乾留炭12は、分離槽116からホッパ117に排出される。なお、熱交換チューブ222を加熱した加熱ガス9は系外に排出される。
【0097】
このような本参考例においては、前記加熱装置221などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。
【0098】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と加熱装置221とを具備し、加熱装置221が具備する熱交換チューブ222により分離槽116近傍の乾留炭12を加熱するようにしたことで、上述した第9の参考例に係る石炭乾留装置と同様、乾留炭12が分離槽116に排出されるまでの間にて冷えることがなくなり、冷えた乾留炭との接触による乾留ガス中の水銀の吸着を抑制することができることから、水銀含有量の少ない乾留炭12を得ることができる。
【0099】
[参考例11]
本発明の第11の参考例に係る石炭乾留装置について
図13に基づいて説明する。
本参考例は、上述した第10の参考例に係る石炭乾留装置が具備する加熱装置の代わりに酸化剤供給装置を追加した構成となっている。本参考例では、上述の第10の参考例に係る石炭乾留装置と同一の機器には同一の符号を付記している。
【0100】
本参考例に係る石炭乾留装置は、
図13に示すように、上述の乾留装置本体111を具備すると共に、酸化剤供給装置231を具備する。
【0101】
酸化剤供給装置231は、内筒112の石炭加熱部出口112c近傍の乾留炭12に対して酸化剤42を供給する装置である。酸化剤供給装置231は、酸化剤供給源をなす装置本体232と酸化剤供給管233とを備える。酸化剤供給管233は、装置本体232の酸化剤排出口に連絡している。酸化剤供給管233は、内筒112の軸心に沿って延在して配置される。酸化剤供給管233の先端部近傍には、酸化剤噴射ノズル234がその長手方向に沿って複数設けられる。酸化剤は、例えば、燃焼排ガスや混合ガス(空気、窒素ガス)など酸素含有ガス(酸素濃度:5%以下)である。酸化剤は、例えば、400〜450℃程度であり、乾留炭12を冷却せず、また乾留炭12との反応可能な温度に調整される。よって、酸化剤供給装置231が酸化剤供給管233、酸化剤噴射ノズル234を介して内筒112内の石炭加熱部出口112c近傍の乾留炭12に対し酸化剤42を供給すると、乾留炭12の一部や生成したタールなどの揮発成分が燃焼発熱して、石炭加熱部出口112c近傍の乾留炭12を加熱することになる。加熱された乾留炭12bは分離槽116からホッパ117に排出される。
【0102】
このような本参考例においては、前記酸化剤供給装置231などにより、低水銀含有乾留炭生成手段をなしている。
【0103】
したがって、本参考例に係る石炭乾留装置によれば、乾留装置本体111と酸化剤供給装置231とを具備し、石炭加熱部出口112c近傍の乾留炭12に対し酸化剤42を供給するようにしたことで、当該箇所で燃焼発熱し、加熱された乾留炭12bが分離槽116に排出されるまでの間にて冷えることがなくなり、冷えた乾留炭との接触による乾留ガス中の水銀の吸着を抑制することができることから、水銀含有量の少ない乾留炭12bを得ることができる。
【0104】
[他の参考例]
なお、上述の第1,第2の参考例においては、排気管101を具備する石炭乾留装置について説明したが、先端部近傍の周面に複数の孔を設けた排気管を具備する石炭乾留装置とすることも可能である。