(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱筒及び/又は射出ノズルの外周面に付設することにより前記加熱筒及び/又は前記射出ノズルを加熱する一又は二以上のヒータを備える射出成形機の加熱装置において、一又は二以上の前記ヒータにおける一部又は全部のヒータを、このヒータと前記加熱筒及び/又は前記射出ノズルの外周面との間に、伝熱性を有する素材により形成し、かつスリットを打抜き形成した二枚以上のパネルメンバを重ね合わせたパネル部材を介在させて空冷用のエア通路を形成するとともに、このエア通路にエア供給部からエアを流通可能にするエア出入口部を設けることにより、空冷付ヒータとして構成してなることを特徴とする射出成形機の加熱装置。
前記ヒータは、内部に発熱体を内蔵し、かつ前記加熱筒及び/又は射出ノズルの外周面に巻付けて装着するバンドヒータであることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱装置。
前記空冷付ヒータは、前記加熱筒における、少なくとも、メータリングゾーン,コンプレッションゾーン,フィードゾーンを加熱するヒータの一又は二以上に適用することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機は溶融樹脂を金型に射出充填する射出装置を備えている。この場合、射出装置は、前端に射出ノズルを有し、かつ後部にホッパーを有する加熱筒を備えており、この加熱筒の内部にはスクリュを挿通させるとともに、加熱筒の外周面には加熱装置(ヒータ)を付設している。これにより、ホッパーから加熱筒の内部に供給された固形状のペレットは、スクリュの回転による剪断及び加熱筒による加熱により可塑化混練され、金型に射出充填するための溶融樹脂が生成される。一方、加熱装置の多機能化の観点から通常の加熱機能に加えて強制冷却機能を付加した加熱装置も提案されている。
【0003】
従来、このような冷却機能を付加した射出成形機の加熱装置としては、特許文献1で開示される射出成形機の加熱筒後部の温調構造及び特許文献2で開示される保温カバー付きヒータを有する加熱シリンダにおける温度制御装置が知られている。特許文献1で開示される射出成形機の加熱筒後部の温調構造は、加熱筒後部の温調を冷却可能にすることによって、加熱筒を短くしたのと同じ効果を得て、原料樹脂の熱履歴時間を短くし、物性の低下を防止すると共に、原料の喰込み不良やスクリュの回転トルク不足を回避することを目的としたものであり、具体的には、加熱筒後部の加熱用ヒータと加熱筒との間に、冷却パイプを巻いて設け、冷却水を流すようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2で開示される保温カバー付きヒータを有する加熱シリンダにおける温度制御装置は、ヒータからの放熱量を低減するとともに、加熱シリンダの温度を迅速に降下させることを目的としたものであり、具体的には、加熱シリンダに取り付けられたヒータの外壁面に、通気性を有する保温材が内張りされた保温カバーが取り付けられ、この保温カバーに、保温材が内張りされた半体がヒンジ部により開閉自在に連結されるとともに、ヒータの外壁面に取り付ける際に、ボス部に螺合された締付けボルトを締め付けると、両半体が合わせ面において連通されて通風路か形成されるように構成され、そして、一方の半体に給気口を設けるとともに、他方の半体に排気口を設け、排気口に配設したファンを回転させて排気口より排気するとともに給気口より外気を吸引することにより空冷するようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1及び2における冷却機能を付加した従来の加熱装置は、次のような問題点があった。
【0007】
まず、特許文献1のように、加熱用ヒータと加熱筒との間に、冷却パイプを巻いて設け、冷却水を流すようにした構成は、基本的に加熱構造を犠牲する難点がある。即ち、加熱構造は、加熱用ヒータの熱が加熱筒に伝達されることにより加熱筒が加熱されるため、加熱用ヒータと加熱筒との間に伝熱を阻害する部材(冷却パイプ)が介在することは、熱損失の増加、更には加熱効率を大きく低下させる要因になるとともに、温度制御の応答性低下及び制御性の低下を招く。したがって、熱可塑性樹脂のような積極的に溶かす必要のある材料への用途としては不向きである。
【0008】
一方、特許文献2のように、加熱筒の外周面に付設したヒータに対して、このヒータの外部からファンにより送風する構成は、反対に、ファンと加熱筒の間にヒータが介在するため、空冷作用を阻害することになり、空冷効率の大きな低下を招く。しかも、ファンを加熱筒の近傍に配置する必要があるなど、成形設備の無用な大型化とスペース効率の低下を招く。
【0009】
結局、加熱筒の外周面にヒータを付設することによりヒータの発熱を加熱筒に直接伝達して加熱を行う構造の場合、冷却構造を追加し、加熱機能及び冷却機能の双方の機能を十分に発揮させるのは容易でなく、一方を犠牲にせざるを得ないのが実情である。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の加熱装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る射出成形機Mの加熱装置1は、上述した課題を解決するため、加熱筒2及び/又は射出ノズル3の外周面2f,3fに付設することにより加熱筒2及び/又は射出ノズル3を加熱する一又は二以上のヒータ4n,4a,4b,4c,4dを備える加熱装置を構成するに際して、一又は二以上のヒータ4n,4a…における一部又は全部のヒータ4a,4b,4c…を、このヒータ4a,4b,4c…と加熱筒2(及び/又は射出ノズル3)の外周面2f(3f)との間に、伝熱性を有する素材Rにより形成し、かつスリット61…,62i,62eを打抜き形成した二枚以上のパネルメンバ5a…,5b…の重ね合わせたパネル部材5…を介在させて空冷用のエア通路6…を形成するとともに、このエア通路6…にエア供給部7からエアA…を流通可能にするエア出入口部8…を設けることにより、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…として構成してなることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、ヒータ4n,4a…には、内部に発熱体12…を内蔵し、かつ加熱筒2及び/又は射出ノズル3の外周面2f,3fに巻付けて装着するバンドヒータ11…を用いることができる。なお、伝熱性を有する素材Rには、伝熱性金属素材Rmを用いることが望ましい。また、パネルメンバ5a,5b…の、厚さは、0.5〜2〔mm〕の範囲に選定することが望ましい。一方、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…は、加熱筒2における、少なくとも、メータリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを加熱するヒータ4a,4b,4cの一又は二以上に適用することが最適である。他方、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…の外周面には、断熱素材Rsを用いた保温カバー13…を付設することができる。
【発明の効果】
【0013】
このような構成を有する本発明に係る射出成形機Mの加熱装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 一部又は全部のヒータ4n,4a…を、ヒータ4a…と加熱筒2の間に伝熱性を有する素材Rにより形成したパネル部材5…を介在させ、かつこのパネル部材5…に空冷用のエア通路6…を形成するとともに、このエア通路6…にエア供給部7からエアA…を流通可能にするエア出入口部8…を設けた空冷付ヒータ4as…により構成してなるため、ヒータ4a…による加熱構造をほとんど犠牲にすることがない。したがって、熱損失(加熱効率)の低下、更には温度制御の応答性低下及び制御性の低下を最小限に抑制することができ、加熱機能及び冷却(空冷)機能の双方の機能を十分に発揮させることができる。
【0015】
(2) 加熱筒2の外周面2fに付設するヒータ4a…に対して冷却構造を追加する場合であってもヒータ4a…の外径をほとんど変更する必要がないため、加熱筒2、更には、射出成形機Mの大型化を招く不具合を回避できる。即ち既設の加熱構造に対して、冷却構造を追加する場合であっても、成形設備の無用な大型化やスペース効率の低下を招く不具合を回避できる。
【0016】
(3) パネル部材5…は、二枚以上のパネルメンバ5a,5b…を重ね合わせて構成したため、特に、異なる通路部分を形成した複数のパネルメンバ5a,5b…の組合わせが可能になり、設計自由度を高め、様々なエア通路6…を容易に形成できる。これにより、加熱筒2のディメンションに応じたエア通路6…の最適化も容易に行うことができる。
【0017】
(4) パネルメンバ5a,5b…を打抜き形成してエア通路6…を形成したため、工数の少ない単純な製造工程によりエア通路6…を設けることができ、目的のパネル部材5…を容易かつ低コストに得ることができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、ヒータ4n,4a…に、内部に発熱体12…を内蔵し、かつ加熱筒2及び/又は射出ノズル3の外周面2f,3fに巻付けて装着するバンドヒータ11…を用いれば、加熱筒2及び/又は射出ノズル3の外周面2f,3fに対して面接触により伝熱するバンドヒータ11…の取付構造(加熱構造)と組合わせた最適な形態として実施できる。
【0019】
(6) 好適な態様により、伝熱性を有する素材Rとして、伝熱性金属素材Rmを用いれば、伝熱性,フレキシブル性及び加工性の良好なステンレス板等を利用できるため、素材面から必要な空冷作用及び加熱作用を確保するとともに、良好な製造性及び装着性を確保する観点から最適な形態として実施できる。
【0020】
(7) 好適な態様により、パネルメンバ5a,5b…の厚さを、0.5〜2〔mm〕の範囲に選定すれば、素材選定等と併せ、層厚面から、必要とする伝熱性,フレキシブル性及び加工性を有効に確保できる。
【0021】
(8) 好適な態様により、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…を、加熱筒2における、少なくとも、メータリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを加熱するヒータ4a,4b,4cの一又は二以上に適用すれば、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…の空冷機能により、特に、スクリュの回転により樹脂材料が剪断される際の剪断熱の発生部位における無用な温度上昇を抑制できる。これにより、良好な温度制御を実現し、成形品質の更なる向上に寄与できる。
【0022】
(9) 好適な態様により、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…の外周面に、断熱素材Rsを用いた保温カバー13…を付設すれば、本来の保温カバー13…の目的を十分に達成することができる。即ち、通常、保温カバー13…は加熱筒2を保温し、省エネルギ性を高めるために、例えば、オプション等により用意しているが、反面、冷却方向の制御性を低下させるなどのマイナス作用を生じるため、採用しないユーザ或いは装着した後に取り外してしまうユーザも少なくない。しかし、本発明における空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…を採用することにより、保温カバー13…によるマイナス作用を排除できるため、保温カバー13…の有効性を発揮させ、結果的に省エネルギ性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
まず、本実施形態に係る射出成形機Mの加熱装置1の構成について、
図1〜
図7を参照して説明する。
【0026】
図2中、Miは射出装置であり、この射出装置Miと不図示の型締装置により射出成形機Mが構成される。射出装置Miは、加熱筒2を備え、この加熱筒2は、前端に射出ノズル3を有するとともに、加熱筒2の後端は、加熱筒2の内部に成形材料を供給するホッパー21hを有する材料供給部21に結合する。また、加熱筒2の内部にはスクリュ22を挿入し、このスクリュ22の後端は、材料供給部21の後方へ延出することにより、当該スクリュ22を回転駆動及び進退駆動する詳細図を省略したスクリュ駆動部23に接続する。
【0027】
そして、加熱筒2の外周面2f及び射出ノズル3の外周面3fに、本実施形態に係る加熱装置1を付設する。加熱装置1は、軸方向Fsに沿って順次配設したヒータ4n,4a,4b,4c,4dを備える。即ち、射出ノズル3(ノズルゾーン)の外周面に装着したヒータ4n,加熱筒2の前部(メータリングゾーンZm)に装着したヒータ4a,加熱筒2の中間部(コンプレッションゾーンZc)に装着したヒータ4b,加熱筒2の後部(フィードゾーンZf)に装着したヒータ4c,加熱筒2の最後部に装着したヒータ4dを備える。
【0028】
この場合、射出ノズル3の外周面3fに装着したヒータ4nは、内部に発熱体12を内蔵し、かつ射出ノズル3の外周面3fに巻付けて装着するバンドヒータ11(
図1参照)をそのまま使用する。即ち、バンドヒータ11による通常の加熱部として構成する。加熱筒2の最後部に装着したヒータ4dも同様であり、内部に発熱体12を内蔵し、かつ加熱筒2の外周面2fに巻付けて装着するバンドヒータ11(
図1参照)をそのまま使用し、通常の加熱部として構成する。
【0029】
これに対して、加熱筒2における、メータリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを加熱するヒータ4a,4b,4cは、それぞれ本発明の要部となる空冷付ヒータ4as,4bs及び4csとして構成する。このように、加熱筒2における、少なくとも、メータリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを加熱するヒータ4a,4b,4cの一又は二以上に、空冷付ヒータ4as,4bs,4csを適用するようにすれば、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…の空冷機能により、特に、スクリュの回転により樹脂材料が剪断される際の剪断熱の発生部位における無用な温度上昇を抑制できる。これにより、良好な温度制御を実現し、成形品質の更なる向上に寄与できる利点がある。
【0030】
以下、空冷付ヒータ4asの構成について具体的に説明する。空冷付ヒータ4asは、基本的な構成として、ヒータ4aと加熱筒2の外周面2fとの間に伝熱性を有する素材Rにより形成したパネル部材5を介在させ、かつこのパネル部材5に空冷用のエア通路6を形成するとともに、このエア通路6に外部のエア供給部7からエアAを流通可能にするエア出入口部8を設けたものである。
【0031】
この場合、ヒータ4aには、上述したヒータ4n及び4dと同様に、内部に発熱体12を内蔵し、かつ加熱筒2の外周面2fに巻付けて装着するバンドヒータ11を用いる。このバンドヒータ11は、
図4に示すように、矩形状のアウタパネル部51と矩形状のインナパネル部52の間に発熱体12を挟んで全体をフレキシブル性のあるバンド状体53として構成したものであり、このバンド状体53の長手方向(周方向)両端同士を結合部54により結合することができる。結合部54は、複数の結合ネジ54n…を備え、
図4に示すように、バンド状体53の長手方向一端に設けた挿通孔部に、結合ネジ54n…を挿通した後、長手方向他端に設けたナット部にそれぞれ螺合すればよい。この結合部54は、複数の結合ネジ54n…を用いて結合するため、バンド状体53の長手方向両端を結合する結合機能のみならず、取外し可能な着脱機能、更には締付強度の大きさ(絶対的大きさ及び軸方向位置の相対的大きさ)の調整機能を備えている。このように、ヒータ4aとして、バンドヒータ11を用いれば、加熱筒2及び/又は射出ノズル3の外周面2f,3fに対して面接触により伝熱するバンドヒータ11…の取付構造(加熱構造)と組合わせた最適な形態として実施できる利点がある。なお、55はバンド状体53に設けたセンサ挿通孔を示す。
【0032】
一方、パネル部材5は、伝熱性を有する素材Rとして伝熱性金属素材Rmを用いる。伝熱性金属素材Rmとしてはステンレス素材が望ましい。このように、素材Rとして、伝熱性金属素材Rmを用いれば、伝熱性,フレキシブル性及び加工性の良好なステンレス板等を利用できるため、素材面から必要な空冷作用及び加熱作用を確保するとともに、良好な製造性及び装着性を確保する観点から最適な形態として実施できる利点がある。
【0033】
また、パネル部材5は、
図4,
図5及び
図7に示すように、二枚のパネルメンバ5a,5b、即ち、第一パネルメンバ5aと第二パネルメンバ5bを用意し、この二枚のパネルメンバ5a,5bの重ね合わせにより構成する。このように、二枚のパネルメンバ5a,5bの重ね合わせることにより構成すれば、特に、異なる通路部分を形成した二枚(一般的には複数枚)のパネルメンバ5a,5bの組合わせが可能になるため、設計自由度を高め、様々なエア通路6を容易に形成できる。これにより、加熱筒2のディメンションに応じたエア通路6の最適化も容易に行える利点がある。第一パネルメンバ5aと第二パネルメンバ5bの大きさは、共に、前述したバンドヒータ11のインナパネル部52の大きさにほぼ一致させ、厚さを、0.5〜2〔mm〕の範囲(例示は、1〔mm〕)に選定することが望ましい。これにより、素材選定等と併せ、層厚面から、必要とする伝熱性,フレキシブル性及び加工性を有効に確保できる。
【0034】
そして、
図4及び
図7に示すように、第二パネルメンバ5bには、短辺方向(軸方向Fs)に沿った、通路部分となる複数(例示は、八つ)のスリット61…を、長手方向へ所定間隔置きに打抜き形成するとともに、第一パネルメンバ5aには、長手方向に沿った、通路部分となる二つのスリット62i,62eを、短辺方向両側にそれぞれ打抜き形成する。これにより、
図7に示すように、第一パネルメンバ5aと第二パネルメンバ5bを重ね合わせた際には、一方のスリット62iがエアの入口側となり、各スリット61…の一端側に連通するとともに、他方のスリット62eがエアの出口側となり、各スリット61…の他端側に連通する目的のエア通路6が構成される。このように、パネルメンバ5a,5bを打抜き形成することにより、エア通路6を形成するようにすれば、工数の少ない単純な製造工程によりエア通路6…を設けることができるため、目的のパネル部材5…を容易かつ低コストに得ることができる。なお、各スリット61…,62i,62eの幅,間隔,形状等は、冷却目標等に応じて任意に選択できる。その他、図中、63,64は各パネルメンバ5a,5bに形成したセンサ挿通孔を示す。このセンサ挿通孔63,64は、バンドヒータ11に設けたセンサ挿通孔55の位置に一致する。
【0035】
さらに、エア出入口部8は、エア入口部8iとエア出口部8eにより構成する。エア入口部8iとエア出口部8eは、
図6に示すように、パイプ形継手であり、
図1に示すように、バンド状体53のアウタパネル部51或いはインナパネル部52に固定することにより、内端をインナパネル部52の内周面に対して同一面上に臨ませる。この際、
図7に示すように、第一パネルメンバ5aと第二パネルメンバ5bの組付位置に対して、エア入口部8iは一方のスリット62iに連通し、エア出口部8eは、他方のスリット62eに連通するように位置の選定を行う。
【0036】
したがって、このような構造を有する本実施形態に係る加熱装置1は、次のように容易に組付けることができる。
【0037】
まず、結合部54における結合ネジ54n…を外した状態のバンドヒータ11を用意する。そして、このバンドヒータ11におけるバンド状体53のインナパネル部52を上に向け、このインナパネル部52の上面に、第一パネルメンバ5aを載置して重ね合わせるとともに、さらに、この第一パネルメンバ5aの上面に、第二パネルメンバ5bを載置して重ね合わせる。
【0038】
次いで、この状態のバンド状体53を、第二パネルメンバ5bが加熱筒2の外周面2fに当接するように、当該加熱筒2の前部における外周面2f上に巻付けるとともに、巻付けたバンド状体53の長手方向の両端を結合ネジ54n…により結合する。この場合の取付けは、通常のバンドヒータ11の取付けとほぼ同じとなるため、取付けは容易に行うことができる。この際、各結合ネジ54n…の回動量を可変し、締付強度の大きさ(絶対的大きさ及び軸方向位置の相対的大きさ)を調整するとともに、バンドヒータ11に対する第一パネルメンバ5a及び第二パネルメンバ5bの相対位置を調整する。
【0039】
これにより、加熱筒2の外周面2fに対して、第一パネルメンバ5a及び第二パネルメンバ5bからなるパネル部材5を介在させたバンドヒータ11の取付けが終了し、
図6に示す加熱装置1が構成される。そして、
図3に示すように、エア入口部8iには、エア供給部7からエアAを供給可能に接続するとともに、エア出口部8eは、そのまま開放状態にする。なお、エア出口部8eは、排気位置及び排気方向を変更するため、排気用の配管を接続してもよい。この場合、エア供給部7は、エアポンプ71及びバルブ72を備えるため、エアポンプ71のエア吐出口を、中途にバルブ72を接続した配管を介してエア入口部8iに接続する。エアポンプ71は工場設備に備える共有のエアポンプを用いることができる。
【0040】
以上、空冷付ヒータ4asの取付方法についてのみ説明したが、他の空冷付ヒータ、即ち、加熱筒2の中間部に取付ける空冷付ヒータ4bs、加熱筒2の後部に取付ける空冷付ヒータ4csも、上述した空冷付ヒータ4asの取付方法と同様に取付けを行うことができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る加熱装置1に係わる駆動制御系の構成について、
図1〜
図7を参照して説明する。
【0042】
射出成形機Mは、
図2に示す成形機コントローラ31を備える。成形機コントローラ31は、
図3に示すように、基本的に、CPU等のハードウェアを内蔵するコントローラ本体32を備えるとともに、このコントローラ本体32に管理されるハードディスク等の内部メモリ33を備える。したがって、成形機コントローラ31は、コンピュータシステムとして構成し、射出成形機Mにおける全体の制御を司る機能を備える。
【0043】
この場合、内部メモリ33は、各種データを書込み可能なデータエリア33dを有するとともに、各種プログラムを格納可能なプログラムエリア33pを有する。このプログラムエリア33pには、PLCプログラムとHMIプログラムを格納するとともに、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するための各種処理プログラムを格納する。したがって、格納する処理プログラムには、本実施形態に係る加熱装置1を機能させるための温度制御に係わるシーケンス制御プログラムが含まれる。なお、PLCプログラムは、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等を実現するためのソフトウェアであり、HMIプログラムは、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等を実現するためのソフトウェアである。一方、成形機コントローラ31にはディスプレイ35を接続する。ディスプレイ35は、各種表示を行うディスプレイ本体部35dとこのディスプレイ本体部35dに付設して各種入力等を行うタッチパネル部35tにより構成する。
【0044】
他方、
図3に示すように、空冷付ヒータ4asのバンドヒータ11は給電部36に接続する。なお、
図1中、36pはバンドヒータ11の給電部36に対する接続端子を示している。そして、この給電部36に対しては、成形機コントローラ31から加熱制御信号が付与される。また、前述したエアポンプ71及びバルブ72には、成形機コントローラ31から冷却制御信号が付与される。さらに、加熱筒2には、バンドヒータ11を取付けたメータリングゾーンZmの温度を検出する熱電対を用いた温度センサ37aを付設する。この場合、温度センサ37aは、加熱筒2の外周面2fに形成した装着孔に差込んで装着する。そして、この温度センサ37aの検出結果は、成形機コントローラ31に付与される。
【0045】
以上、空冷付ヒータ4asの駆動制御系について説明したが、他の空冷付ヒータ4bs及び4csも同様に構成(接続)する。なお、ヒータ4n及び4dは、いずれもバンドヒータ11のみを使用するため、それぞれ給電部36に接続する。
図2に、射出成形機M(射出装置Mi)における全体の接続系統を示す。
図2中、37nはノズルゾーン(射出ノズル3)の温度を検出する温度センサ、37bは加熱筒2におけるコンプレッションゾーンZcの温度を検出する温度センサ、37cは加熱筒2のフィードゾーンZfの温度を検出する温度センサ,37dは加熱筒2の最後部の温度を検出する温度センサをそれぞれ示す。
【0046】
次に、本実施形態に係る加熱装置1に係わる駆動制御系の動作を含む加熱装置1の全体の機能(作用)について、
図1〜
図7を参照して説明する。
【0047】
例示は、空冷付ヒータ4asについての動作を説明するが、他の空冷付ヒータ4bs及び4csも設定温度が異なる点を除いて同様の動作を行う。なお、ヒータ4n及び4dは加熱時のみの動作となり、設定温度が異なる点を除いて通常の加熱動作を行う。
【0048】
まず、加熱モードでは、成形機コントローラ31から加熱制御信号が給電部36に付与される。なお、バルブ72はOFF(閉)になっている。これにより、空冷付ヒータ4asのバンドヒータ11が発熱する。そして、この発熱は、第一パネルメンバ5aと第二パネルメンバ5bを重ね合わせたパネル部材5を介して加熱筒2に伝達され、加熱筒2の前部(メータリングゾーンZm)が加熱される。この場合、バンドヒータ11と加熱筒2間には、パネル部材5が介在するが、例示の場合、厚さが2〔mm〕程度となる伝熱性を有する二枚のステンレス板が介在するとともに、このステンレス板には一部を打抜き形成したエア通路6が存在するのみとなるため、熱損失はほとんど発生しない。
【0049】
一方、加熱筒2の温度が上昇し、設定温度に近付いた場合には、成形機コントローラ31におけるシーケンス制御プログラムに従って、給電部36に対する加熱制御信号の供給が解除(OFF)され、同時に、成形機コントローラ31から冷却制御信号がバルブ72に付与される。これにより、バルブ72はOFFからON(開)に切換えられ、冷却モードに移行する。
【0050】
冷却モードでは、エアポンプ71からエアAが供給され、このエアAはエア入口部8iからエア通路6に流入する。そして、エアAは、エア通路6を流通し、エア出口部8eから外部(大気)に流出する。この場合、エア入口部8iからのエアAは、第一パネルメンバ5aに形成したスリット62iに流入するとともに、第二パネルメンバ5bに形成した八つのスリット61…の一端から当該スリット61…内に流入する。そして、各スリット61…を流通したエアAは、当該スリット61…の他端に至り、第二パネルメンバ5bに形成したスリット62eに流入するとともに、スリット62e内のエアAはエア出口部8eから外部に流出する。このときのエアAの流れを、
図3に点線矢印で示すとともに、
図7に二点鎖線矢印で示した。これにより、エア通路6、特に、各スリット61…を流通するエアA…は、加熱筒2の外周面2fに接触するため、加熱された外周面2fとの熱交換が行われ、外周面2fが強制的に冷却(空冷)される。
【0051】
ところで、空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…は、加熱筒2における、少なくとも、メータリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを加熱するヒータ4a,4b,4cの一又は二以上に適用している。これらのゾーンZm,Zc,Zfは、スクリュ22の回転による樹脂材料の剪断時に、剪断熱による無用な温度上昇を発生するゾーンとなる。したがって、強制冷却を行うことなく、バンドヒータ11に対する給電を解除し、自然冷却に頼った場合、オーバシュート等により加熱温度が不安定になりやすい。このため、空冷付ヒータ4as,4bs,4csにおけるバンドヒータ11…の給電を解除するとともに、空冷方式による強制空冷を行うようにした。これにより、前述したように、良好な温度制御を実現し、成形品質の更なる向上に寄与できる。
【0052】
よって、このような本実施形態に係る射出成形機Mの加熱装置1によれば、ヒータ4a…と加熱筒2の間に伝熱性を有する素材R(伝熱性金属素材Rm)により形成したパネル部材5…を介在させ、かつこのパネル部材5…に空冷用のエア通路6…を形成するとともに、このエア通路6…に外部のエア供給部7からエアA…を流通可能にするエア出入口部8…を設けた空冷付ヒータ4as…を備えるため、ヒータ4a…による加熱構造をほとんど犠牲にすることがない。したがって、熱損失(加熱効率)の低下、更には温度制御の応答性低下及び制御性の低下を最小限に抑制することができ、加熱機能及び冷却(空冷)機能の双方の機能を十分に発揮させることができる。また、加熱筒2の外周面2fに付設するヒータ4a…に対して冷却構造を追加する場合であってもヒータ4a…の外径をほとんど変更する必要がないため、加熱筒2、更には、射出成形機Mの大型化を招く不具合を回避できる。即ち既設の加熱構造に対して、冷却構造を追加する場合であっても、成形設備の無用な大型化やスペース効率の低下を招く不具合を回避できる。
【0053】
また、本実施形態におけるパネル部材5は、必要により三枚を重ねた構造であってもよく、二枚以上を条件として使用するパネルメンバ5a…の数量は問わない。他方、
図8には、パネル部材5を一枚のパネルメンバ5sにより形成した参考例を示す。この参考例では、一枚のパネルメンバ5sに、二系統のスリット65p,65qを形成し、スリット65p,65qのそれぞれ反対側の端部からエアAを流入させることができるエア通路6,6を設けたものである。なお、
図8中、
図7と同一部分には同一符号を付し、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0054】
次に、本発明の変更実施形態に係る加熱装置1について、
図9を参照して説明する。
【0055】
図9に示す変更実施形態は、空冷付ヒータ4asの外周面に、断熱素材Rsを用いた保温カバー13を付設した形態を示す。断熱素材Rsとしては、発泡ウレタン樹脂等の断熱性の高い素材を使用し、全体を円筒状に形成することにより、空冷付ヒータ4asの外周面のほぼ全体を覆うようにした。
【0056】
これにより、本来の保温カバー13…の目的を十分に達成することができる。即ち、通常、保温カバー13…は加熱筒2を保温し、省エネルギ性を高めるために、例えば、オプション等により用意しているが、反面、冷却方向の制御性を低下させるなどのマイナス作用を生じるため、採用しないユーザ或いは装着した後に取り外してしまうユーザも少なくない。しかし、本発明における空冷付ヒータ4as,4bs,4cs…を採用することにより、保温カバー13…によるマイナス作用を排除できるため、保温カバー13…の有効性を発揮させ、結果的に省エネルギ性を高めることができる。
【0057】
なお、空冷付ヒータ4asについて、説明したが、他の空冷付ヒータ4bs,4cs、更にはヒータ4n,4dについても同様の保温カバー13を付加することができる。なお、13a,13b,13cは空冷付ヒータ4asの外周面における突起部分を収容するための保温カバー13における開口部分を示す。
【0058】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0059】
例えば、実施形態では、五つのヒータ4n,4a,4b,4c,4dを備える加熱装置1を例示したが、四つ以下のヒータを備えている形態であってもよいし、六つ以上のヒータを備えた形態であってもよい。また、実施形態では、三つの空冷付ヒータ4as,4bs,4csを例示したが、このうち、特に冷却の必要性の高い一つ又は二つにのみ適用してもよいし、他のヒータ4n,4dであっても同様の空冷付ヒータとして構成してもよい。一方、各ヒータ4n,4a…には、内部に発熱体12…を内蔵し、かつ加熱筒2及び/又は射出ノズル3の外周面2f,3fに巻付けて装着するバンドヒータ11…を用いることが望ましいが、必ずしもバンドヒータ11…に限定されるものではない。しかし、ヒータタイプとしては、加熱筒2に対して伝熱方式により加熱する発熱タイプが望ましい。また、インナパネル部52を備えるバンドヒータ11の場合、このインナパネル部52と他のパネルメンバの二枚(一般的には複数枚)を組合わせたパネル部材5を構成してもよいし、他方、インナパネル部52を設けていないバンドヒータ11(ヒータ4a…)にも本発明は適用可能である。