特許第6147716号(P6147716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6147716診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147716
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   A61B5/05 380
   A61B5/05 383
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-226211(P2014-226211)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-87161(P2016-87161A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】399085912
【氏名又は名称】株式会社ジェイマックシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100103056
【弁理士】
【氏名又は名称】境 正寿
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】森 祐生
(72)【発明者】
【氏名】海谷 佳孝
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−522005(JP,A)
【文献】 特開平09−098961(JP,A)
【文献】 特開2005−237825(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/126684(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/154204(WO,A1)
【文献】 特表2000−504411(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0077839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/00 − 6/14
A61B 8/00 − 8/15
G01R 33/20 −33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1時相特性のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第1カラーマップを第1時相に対応しかつ患部の断層を表す第1断層画像に基づいて作成する第1カラーマップ作成手段、
複数の第2時相特性のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第2カラーマップを第2時相に対応しかつ前記患部の断層を表す第2断層画像に基づいて作成する第2カラーマップ作成手段、
前記複数の第1時相特性の中から可視化を制限すべき第1時相特性を選択する第1選択操作を繰り返し受け付ける第1受け付け手段、
前記第1選択操作によって選択された第1時相特性に対応する色が排除された第1修正カラーマップを前記第1カラーマップ作成手段によって作成された第1カラーマップに基づいて表示する第1修正カラーマップ表示手段、および
前記第1修正カラーマップ表示手段によって表示された第1修正カラーマップ上で色が現れた第1領域と共通する第2領域の外側の色が排除された第2修正カラーマップを前記第2カラーマップ作成手段によって作成された第2カラーマップに基づいて表示する第2修正カラーマップ表示手段を備える、診断支援装置。
【請求項2】
前記第1修正カラーマップ表示手段および第2修正カラーマップ表示手段は互いに並列して処理を実行し、
前記第1受け付け手段は前記第1修正カラーマップ表示手段および前記第2修正カラーマップ表示手段の処理と並列して前記第1選択操作を受け付ける、請求項1記載の診断支援装置。
【請求項3】
前記複数の第2時相特性の中から可視化を制限すべき第2時相特性を選択する第2選択操作を受け付ける第2受け付け手段、および
前記第2選択操作によって選択された第2時相特性に対応する色を前記第2修正カラーマップ表示手段によって表示すべき第2修正カラーマップから排除する色排除手段をさらに備える、請求項1または2記載の診断支援装置。
【請求項4】
前記断層上の所望の位置における画素値の時間的変化を表すグラフを前記第1断層画像および前記第2断層画像に基づいて表示するグラフ表示手段をさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の診断支援装置。
【請求項5】
ポインタ移動操作に従って前記所望の位置を共通的に指向する第1ポインタおよび第2ポインタを前記第1修正カラーマップ表示手段および前記第2修正カラーマップ表示手段によってそれぞれ表示された第1修正カラーマップおよび第2修正カラーマップにそれぞれ多重するポインタ多重手段をさらに備える、請求項4記載の診断支援装置。
【請求項6】
前記所望の位置が前記第2領域の外側の位置に相当するとき前記グラフ表示手段の処理を制限するグラフ表示制限手段をさらに備える、請求項4または5記載の診断支援装置。
【請求項7】
前記グラフの横軸および縦軸には時間および前記画素値がそれぞれ割り当てられ、
前記複数の第1時相特性にそれぞれ対応する複数の色を示すカラーバーを前記グラフの縦軸に沿って表示するカラーバー表示手段をさらに備える、請求項4ないし6のいずれかに記載の診断画像処理装置。
【請求項8】
前記第1時相を代表する第1代表画像を前記第1断層画像に基づいて表示する第1代表画像表示手段、および
前記第2時相を代表する第2代表画像を前記第2断層画像に基づいて表示する第2代表画像表示手段をさらに備え、
前記第1修正カラーマップ表示手段は前記第1代表画像表示手段によって表示された第1代表画像に前記第1修正カラーマップを多重し、
前記第2修正カラーマップ表示手段は前記第2代表画像表示手段によって表示された第2代表画像に前記第2修正カラーマップを多重する、請求項1ないし7のいずれかに記載の診断支援装置。
【請求項9】
診断支援装置のプロセッサによって実行される診断支援方法であって、
複数の第1時相特性のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第1カラーマップを第1時相に対応しかつ患部の断層を表す第1断層画像に基づいて作成する第1カラーマップ作成ステップ、
複数の第2時相特性のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第2カラーマップを第2時相に対応しかつ前記患部の断層を表す第2断層画像に基づいて作成する第2カラーマップ作成ステップ、
前記複数の第1時相特性の中から可視化を制限すべき第1時相特性を選択する第1選択操作を繰り返し受け付ける第1受け付けステップ、
前記第1選択操作によって選択された第1時相特性に対応する色が排除された第1修正カラーマップを前記第1カラーマップ作成ステップによって作成された第1カラーマップに基づいて表示する第1修正カラーマップ表示ステップ、および
前記第1修正カラーマップ表示ステップによって表示された第1修正カラーマップ上で色が現れた第1領域と共通する第2領域の外側の色が排除された第2修正カラーマップを前記第2カラーマップ作成ステップによって作成された第2カラーマップに基づいて表示する第2修正カラーマップ表示ステップを備える、診断支援方法。
【請求項10】
診断支援装置のプロセッサに、
複数の第1時相特性のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第1カラーマップを第1時相に対応しかつ患部の断層を表す第1断層画像に基づいて作成する第1カラーマップ作成ステップ、
複数の第2時相特性のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第2カラーマップを第2時相に対応しかつ前記患部の断層を表す第2断層画像に基づいて作成する第2カラーマップ作成ステップ、
前記複数の第1時相特性の中から可視化を制限すべき第1時相特性を選択する第1選択操作を繰り返し受け付ける第1受け付けステップ、
前記第1選択操作によって選択された第1時相特性に対応する色が排除された第1修正カラーマップを前記第1カラーマップ作成ステップによって作成された第1カラーマップに基づいて表示する第1修正カラーマップ表示ステップ、および
前記第1修正カラーマップ表示ステップによって表示された第1修正カラーマップ上で色が現れた第1領域と共通する第2領域の外側の色が排除された第2修正カラーマップを前記第2カラーマップ作成ステップによって作成された第2カラーマップに基づいて表示する第2修正カラーマップ表示ステップを実行させるための、診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムに関し、特に、乳房の断層を撮像する乳房MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置のような断層撮像装置からMRI画像(断層画像)を取得して乳房などの患部を診断する、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんの画像診断方式には、マンモグラフィ方式、超音波方式、MRI方式がある。このうち、マンモグラフィ方式および超音波方式は、視触診とともに乳がん検診に用いられている。これに対して、MRI方式に関しては、検査に造影剤が使用されることもあり、乳がん検診に用いることは推奨されていない(「乳がん発症ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングに関するガイドラインVer.1.0」日本乳癌検診学会 2012)。
【0003】
しかし、がんの進行度や広がりなどを調べる診断目的としては、海外では乳房MRIの有用性は広く認識されており、日本でもエビデンス不足からその有用性が認められていなかった経緯はあるものの、2013年に日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインで推奨グレードB(「エビデンス(有効な根拠・証拠)があり、推奨内容を日常診療で実践するように推奨する」)とされ、現在はその有用性が認識されるようになった。
【0004】
また、有用性の認識が広まるとともに、米国で生まれた乳房MRI検査のガイドライン「BI-RADS-MRI」が注目されるようになり、現在は日本版BI-RADS-MRIに則った検査方法、読影方法、レポート記述方法が多くの施設で採用されるようになってきた。
【0005】
このBI-RADS-MRIが推奨する診断レポートに記載する内容の1つに「Kinetic curve assessment , Signal intensity / time curve description」という項目があり、「Initial phase(初期相)」と「Delayed phase(遅延相)」の評価を行うことが推奨されている。この評価のための検査をダイナミックMRマンモグラフィという。
【0006】
なお、造影剤の注入開始時刻を“T0”とし、時刻T0から60秒〜120秒が経過した時刻を“T1”とし、時刻T1から300秒〜420秒が経過した時刻を“Tn”とすると、時刻T0から時刻T1までの時相が“初期相”に相当し、時刻T1から時刻Tnまでの時相が“遅延相”に相当する。また、初期相における信号強度の変化特性は“Slow”、“Medium”、“Fast”の3つに分類され、遅延相における信号強度の変化特性は“Persistent”、“Plateau”、“Washout”の3つに分類される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】中原浩著,「CAEを用いた乳房MRI診断」,乳癌BOOK2014,RadFan2014年7月臨時増刊,p.79−p.81
【非特許文献2】株式会社AZE著,「灌流から診るMRI乳がん解析ソフトウェア」,月刊インナービジョン2014年8月号,p.77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
乳房MRI検査においてBI-RADS-MRIに沿った読影を行うには、Kinetic curve assessmentにおいて、初期相および遅延相の各々における信号強度の変化特性を簡便かつ同時に評価できることが理想的である。
【0009】
しかし、現状ではKinetic curve assessmentは従来のTime Intensity Curve計測で行われているため、計測に時間がかかり簡便ではない。また、断層画像を形成する画素毎の信号強度(画素値)の変化量または変化率を用いてカラーマップ化し、Time Intensity Curve計測を簡便にするアプリケーションはあるが、初期相および遅延相を同時に評価することは難しい。この結果、現状では、患部を診断する際の利便性の限界がある。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、患部を診断する際の利便性を高めることができる、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従う診断支援装置(10:実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、複数の第1時相特性(Fast, Medium, Slow)のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第1カラーマップを第1時相に対応しかつ患部の断層を表す第1断層画像に基づいて作成する第1カラーマップ作成手段(S7)、複数の第2時相特性(Persistent, Plateau, Washout)のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第2カラーマップを第2時相に対応しかつ患部の断層を表す第2断層画像に基づいて作成する第2カラーマップ作成手段(S9)、複数の第1時相特性の中から可視化を制限すべき第1時相特性を選択する第1選択操作を繰り返し受け付ける第1受け付け手段(S65)、第1選択操作によって選択された第1時相特性に対応する色が排除された第1修正カラーマップ(MP01)を第1カラーマップ作成手段によって作成された第1カラーマップに基づいて表示する第1修正カラーマップ表示手段(S67, S39, S49)、および第1修正カラーマップ表示手段によって表示された第1修正カラーマップ上で色が現れた第1領域(R1)と共通する第2領域(R2)の外側の色が排除された第2修正カラーマップを第2カラーマップ作成手段によって作成された第2カラーマップに基づいて表示する第2修正カラーマップ表示手段(S41~S49)を備える。
【0012】
好ましくは、第1修正カラーマップ表示手段および第2修正カラーマップ表示手段は互いに並列して処理を実行し、第1受け付け手段は第1修正カラーマップ表示手段および第2修正カラーマップ表示手段の処理と並列して第1選択操作を受け付ける。
【0013】
好ましくは、複数の第2時相特性の中から可視化を制限すべき第2時相特性を選択する第2選択操作を受け付ける第2受け付け手段(S71)、および第2選択操作によって選択された第2時相特性に対応する色を第2修正カラーマップ表示手段によって表示すべき第2修正カラーマップから排除する色排除手段(S73, S75)がさらに備えられる。
【0014】
好ましくは、断層上の所望の位置における画素値の時間的変化を表すグラフを第1断層画像および第2断層画像に基づいて表示するグラフ表示手段(S55)がさらに備えられる。
【0015】
或る局面では、ポインタ移動操作に従って所望の位置を共通的に指向する第1ポインタおよび第2ポインタを第1修正カラーマップ表示手段および第2修正カラーマップ表示手段によってそれぞれ表示された第1修正カラーマップおよび第2修正カラーマップにそれぞれ多重するポインタ多重手段(S51, S59, S61)がさらに備えられる。
【0016】
他の局面では、所望の位置が第2領域の外側の位置に相当するときグラフ表示手段の処理を制限するグラフ表示制限手段(S53, S57)がさらに備えられる。
【0017】
その他の局面では、グラフの横軸および縦軸には時間および画素値がそれぞれ割り当てられ、複数の第1時相特性にそれぞれ対応する複数の色を示すカラーバーをグラフの縦軸に沿って表示するカラーバー表示手段(S17)がさらに備えられる。
【0018】
好ましくは、第1時相を代表する第1代表画像を第1断層画像に基づいて表示する第1代表画像表示手段(S3, S21, S37)、および第2時相を代表する第2代表画像を第2断層画像に基づいて表示する第2代表画像表示手段(S5, S21, S37)がさらに備えられ、第1修正カラーマップ表示手段は第1代表画像表示手段によって表示された第1代表画像に第1修正カラーマップを多重し、第2修正カラーマップ表示手段は第2代表画像表示手段によって表示された第2代表画像に第2修正カラーマップを多重する。
【0019】
この発明に従う診断支援方法は、診断支援装置(10)のプロセッサ(14)によって実行される診断支援方法であって、複数の第1時相特性(Fast, Medium, Slow)のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第1カラーマップを第1時相に対応しかつ患部の断層を表す第1断層画像に基づいて作成する第1カラーマップ作成ステップ(S7)、複数の第2時相特性(Persistent, Plateau, Washout)のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第2カラーマップを第2時相に対応しかつ患部の断層を表す第2断層画像に基づいて作成する第2カラーマップ作成ステップ(S9)、複数の第1時相特性の中から可視化を制限すべき第1時相特性を選択する第1選択操作を繰り返し受け付ける第1受け付けステップ(S65)、第1選択操作によって選択された第1時相特性に対応する色が排除された第1修正カラーマップ(MP01)を第1カラーマップ作成ステップによって作成された第1カラーマップに基づいて表示する第1修正カラーマップ表示ステップ(S67, S39, S49)、および第1修正カラーマップ表示ステップによって表示された第1修正カラーマップ上で色が現れた第1領域(R1)と共通する第2領域(R2)の外側の色が排除された第2修正カラーマップを第2カラーマップ作成ステップによって作成された第2カラーマップに基づいて表示する第2修正カラーマップ表示ステップ(S41~S49)を備える。
【0020】
この発明に従う診断支援プログラムは、診断支援装置(10)のプロセッサ(14)に、複数の第1時相特性(Fast, Medium, Slow)のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第1カラーマップを第1時相に対応しかつ患部の断層を表す第1断層画像に基づいて作成する第1カラーマップ作成ステップ(S7)、複数の第2時相特性(Persistent, Plateau, Washout)のいずれか1つに対応する色を各画素が表す第2カラーマップを第2時相に対応しかつ患部の断層を表す第2断層画像に基づいて作成する第2カラーマップ作成ステップ(S9)、複数の第1時相特性の中から可視化を制限すべき第1時相特性を選択する第1選択操作を繰り返し受け付ける第1受け付けステップ(S65)、第1選択操作によって選択された第1時相特性に対応する色が排除された第1修正カラーマップ(MP01)を第1カラーマップ作成ステップによって作成された第1カラーマップに基づいて表示する第1修正カラーマップ表示ステップ(S67, S39, S49)、および第1修正カラーマップ表示ステップによって表示された第1修正カラーマップ上で色が現れた第1領域(R1)と共通する第2領域(R2)の外側の色が排除された第2修正カラーマップを第2カラーマップ作成ステップによって作成された第2カラーマップに基づいて表示する第2修正カラーマップ表示ステップ(S41~S49)を実行させるための、診断支援プログラムである。
【発明の効果】
【0021】
第1カラーマップは各画素が複数の第1時相特性のいずれか1つに対応する色を表すマップであり、第2カラーマップも各画素が複数の第2時相特性のいずれか1つに対応する色を表すマップである。
【0022】
可視化を制限したい第1時相特性が第1選択操作によって選択されると、選択された第1時相特性に対応する色が排除された第1修正カラーマップが第1カラーマップに基づいて表示され、第1修正カラーマップ上で色が現れた第1領域と共通する第2領域の外側の色が排除された第2修正カラーマップが第2カラーマップに基づいて表示される。
【0023】
したがって、可視化を制限したい第1時相特性が第1選択操作によって変更されると、第1修正カラーマップの表現態様が変化し、さらには第2修正カラーマップの表現態様が変化する。これによって、患部を診断する際の利便性が向上する。
【0024】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この実施例に適用される医療診断支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】(A)は時刻T0に収集された200スライスのMRI画像をそれぞれ収めた200個のDICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)ファイルの構造の一例を示す図解図であり、(B)は時刻T1に収集された200スライスのMRI画像をそれぞれ収めた200個のDICOMファイルの構造の一例を示す図解図であり、(C)は時刻T2に収集された200スライスのMRI画像をそれぞれ収めた200個のDICOMファイルの構造の一例を示す図解図であり、(D)は時刻T3に収集された200スライスのMRI画像をそれぞれ収めた200個のDICOMファイルの構造の一例を示す図解図であり、(E)は時刻Tnに収集された200スライスのMRI画像をそれぞれ収めた200個のDICOMファイルの構造の一例を示す図解図である。
図3】(A)は先頭スライス位置のMRI画像に補完処理を施して作成された初期相を代表する補完画像の一例を示す図解図であり、(B)は先頭スライス位置のMRI画像に補完処理を施して作成された遅延相を代表する補完画像の一例を示す図解図である。
図4】(A)は所望のスライス位置のMRI画像に補完処理を施して作成された初期相を代表する補完画像の一例を示す図解図であり、(B)は所望のスライス位置のMRI画像に補完処理を施して作成された遅延相を代表する補完画像の一例を示す図解図である。
図5】(A)は図3(A)に示す補完画像に基づきかつ“Fast”の時相特性に対応する初期相カラーマップの一例を示す図解図であり、(B)は図3(A)に示す補完画像に基づきかつ“Medium”の時相特性に対応する初期相カラーマップの一例を示す図解図であり、(C)は図3(A)に示す補完画像に基づきかつ“Slow”の時相特性に対応する初期相カラーマップの一例を示す図解図であり、(D)は図3(B)に示す補完画像に基づきかつ“Persistent”の時相特性に対応する遅延相カラーマップの一例を示す図解図であり、(E)は図3(B)に示す補完画像に基づきかつ“Plateau”の時相特性に対応する遅延相カラーマップの一例を示す図解図であり、(F)は図3(B)に示す補完画像に基づきかつ“Washout”の時相特性に対応する遅延相カラーマップの一例を示す図解図である。
図6】(A)は図4(A)に示す補完画像に基づきかつ“Fast”の時相特性に対応する初期相カラーマップの一例を示す図解図であり、(B)は図4(A)に示す補完画像に基づきかつ“Medium”の時相特性に対応する初期相カラーマップの一例を示す図解図であり、(C)は図4(A)に示す補完画像に基づきかつ“Slow”の時相特性に対応する初期相カラーマップの一例を示す図解図であり、(D)は図4(B)に示す補完画像に基づきかつ“Persistent”の時相特性に対応する遅延相カラーマップの一例を示す図解図であり、(E)は図4(B)に示す補完画像に基づきかつ“Plateau”の時相特性に対応する遅延相カラーマップの一例を示す図解図であり、(F)は図4(B)に示す補完画像に基づきかつ“Washout”の時相特性に対応する遅延相カラーマップの一例を示す図解図である。
図7】この実施例の診断支援装置に設けられたディスプレイ装置に表示される診断画像の一例を示す図解図である。
図8】この実施例の診断支援装置に設けられたディスプレイ装置に表示される診断画像の他の一例を示す図解図である。
図9】ポインタによって指定された画素の値の初期相における時間的変化の一例を示すグラフである。
図10】ポインタによって指定された画素の値の初期相および遅延相における時間的変化の一例を示すグラフである。
図11】ポインタによって指定された画素の値の初期相および遅延相における時間的変化の他の一例を示すグラフである。
図12】ポインタによって指定された画素の値の初期相および遅延相における時間的変化のその他の一例を示すグラフである。
図13】初期相および遅延相にそれぞれ対応する2つのMRI画像と、これに多重された初期相カラーマップおよび遅延相カラーマップと、現時点の初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードを表すカラーモード情報の一例を示す図解図である。
図14】初期相および遅延相にそれぞれ対応する2つのMRI画像と、これに多重された初期相カラーマップおよび遅延相カラーマップと、現時点の初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードを表すカラーモード情報の他の一例を示す図解図である。
図15】(A)は初期相カラーマップにおける領域R1の割り当て状態の一例を示す図解図であり、(B)は遅延相カラーマップにおける領域R2の割り当て状態の一例を示す図解図である。
図16】変更後の遅延相カラーモードに従ってMRI画像に多重表示された遅延相カラーマップの一例を示す図解図である。
図17】初期相および遅延相にそれぞれ対応する2つのMRI画像と、これに多重された初期相カラーマップおよび遅延相カラーマップと、現時点の初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードを表すカラーモード情報のその他の一例を示す図解図である。
図18】初期相および遅延相にそれぞれ対応する2つのMRI画像と、これに多重された初期相カラーマップおよび遅延相カラーマップと、現時点の初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードを表すカラーモード情報のさらにその他の一例を示す図解図である。
図19】この実施例の診断支援装置に設けられたCPUの動作の一部を示すフロー図である。
図20】この実施例の診断支援装置に設けられたCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
図21】この実施例の診断支援装置に設けられたCPUの動作のその他の一部を示すフロー図である。
図22】この実施例の診断支援装置に設けられたCPUの動作のさらにその他の一部を示すフロー図である。
図23】この実施例の診断支援装置に設けられたCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、この実施例の医療診断支援システムは、通信ネットワーク40を介して互いに接続された診断支援装置10およびMRI装置30によって構成される。診断支援装置10において、バスBS1には、通信I/F12,CPU14,キーボード16,マウス18,ディスプレイ装置20,DRAM22,および主記憶装置24が接続される。ディスプレイ装置20には、画面SCRが設けられる。
【0027】
MRI装置30は、核磁気共鳴現象を利用して患者の乳房のMRI画像を作成する装置である。撮像は、造影剤を乳房に注入する前に1回実行され(これを“プレーン撮像”と呼ぶ)、造影剤の注入が開始された後は60秒に1回の割合で合計4回実行される。造影剤の注入開始時刻を“T0”と定義すると、その後に60秒毎に到来する4つの撮像時刻はそれぞれ“T1”,“T2”,“T3”,“Tn”と定義される。
【0028】
なお、各回の撮像は数秒を要し、時刻T0〜Tnの各々は厳密には撮像開始時刻を示す。また、この実施例では、造影剤の注入開始時刻がプレーン撮像時刻と一致することを前提としており、時刻T0はプレーン撮像時刻でもある。さらに、時刻T0から時刻T1までの時相は“初期相”と呼ばれ、時刻T1から時刻Tnまでの時相は“遅延相”と呼ばれる。
【0029】
MRI装置30では、互いに異なる200個のスライス位置P0〜P199にそれぞれ対応する200フレームのMRI画像F0〜F199が、時刻T0〜Tnの各々で作成される。作成されたMRI画像をなす各画素の値(=信号強度)は、撮像時にスライス位置の断層を流れる造影剤の濃度つまりは血液濃度を反映する。
【0030】
MRI装置30は、こうして作成されたMRI画像をファイルサイズ,患者情報,撮像時刻,スライス位置とともにDICOMファイルに収める。なお、撮像時刻は、DICOM規格で規定されている収集時刻(0008,0032)のタグで管理される。
【0031】
この結果、時刻T0では図2(A)に示す200個のDICOMファイルが作成され、時刻T1では図2(B)に示す200個のDICOMファイルが作成され、時刻T2では図2(C)に示す200個のDICOMファイルが作成される。また、時刻T3では図2(D)に示す200個のDICOMファイルが作成され、時刻Tnでは図2(E)に示す200個のDICOMファイルが作成される。
【0032】
診断支援装置10に設けられた通信I/F12は、こうして作成された合計1000個のDICOMファイルを通信ネットワーク40を通して診断支援装置10から取得する。取得されたDICOMファイルは、バスBS1を介して主記憶装置24に保存される。
【0033】
なお、DICOMファイルは、図示しない外部サーバによって管理するようにしてもよい。この場合、診断支援装置10は、所望のDICOMファイルを所望のタイミングで外部サーバから取得する。
【0034】
CPU14は、主記憶装置24に保存されたDICOMファイルに基づいて診断画像をディスプレイ装置20の画面SCRに表示するべく、図19図23に示すフロー図に従う処理を実行する。なお、このフロー図に相当するプログラムは、診断支援プログラムとして主記憶装置24に記憶される。
【0035】
まず、スライス位置を識別する変数KをステップS1で“0”に設定する。ステップS3では、時刻T0およびT1の各々におけるスライス位置PKの断層を表すMRI画像を主記憶装置24からDRAM22に転送し、転送された2フレームのMRI画像に補完処理を施して補完画像IM01を作成する。作成された補完画像IM01は、初期相を代表する代表画像に相当する。
【0036】
ステップS5では、時刻T1〜Tnの各々におけるスライス位置PKの断層を表すMRI画像を主記憶装置24からDRAM22に転送し、転送された4フレームのMRI画像に補完処理を施して補完画像IM1nを作成する。作成された補完画像IM1nは遅延相を代表する代表画像に相当する。
【0037】
ステップS7では、ステップS3でDRAM22に転送された2フレームのMRI画像に基づいて、スライス位置PKに対応する初期相カラーマップMP01fst,MP01mdおよびMP01slwを作成する。ステップS9では、ステップS7でDRAM22に転送された4フレームのMRI画像に基づいて、スライス位置PKに対応する遅延相カラーマップMP1npst,MP1npltおよびMP1nwshを作成する。
【0038】
BI-RADS-MRIによれば、初期相における画素値の時間的変化の態様つまり初期相特性は“Fast”,“Medium”および“Slow”の3つに分類され、遅延相における画素値の時間的変化の態様つまり遅延相特性は“Persistent”,“Plateau”および“Washout”の3つに分類される。
【0039】
初期相カラーマップMP01fstは“Fast”を示す画素に色付けをしたマップに相当し、初期相カラーマップMP01mdは“Medium”を示す画素に色付けをしたマップに相当し、初期相カラーマップMP01slwは“Slow”を示す画素に色付けをしたマップに相当する。
【0040】
また、遅延相カラーマップMP1npstは“Persistent”を示す画素に色付けをしたマップに相当し、遅延相カラーマップMP1npltは“Plateau”を示す画素に色付けをしたマップに相当し、遅延相カラーマップMP1nwshは“Washout”を示す画素に色付けをしたマップに相当する。
【0041】
なお、初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwおよび遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshのいずれにおいても、対象画素に付される色は、対象画素の値に応じて異なる。
【0042】
ステップS11では変数Kが“199”に達したか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS13で変数KをインクリメントしてからステップS3に戻る一方、判別結果がYESであればステップS15に進む。したがって、ステップS3〜S9の処理は200回繰り返される。
【0043】
この結果、補完画像IM01およびIM1nがスライス位置P0〜P199の各々に対応して作成され、さらに初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwおよび遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshがスライス位置P0〜P199の各々に対応して作成される。
【0044】
ステップS15では、グラフの枠をDRAM22に描画し、この枠の表示をディスプレイ装置20に要求する。また、ステップS17では、カラーバーをDRAM22に描画し、このカラーバーの表示をディスプレイ装置20に要求する。
【0045】
ディスプレイ装置20は、グラフの枠およびカラーバーをDRAM22から読み出し、読み出された枠およびカラーバーを図7に示す要領で画面SCRの上段に表示する。図7によれば、グラフの枠は画面SCRの上段中央に表示され、カラーバーはグラフの枠の左側に縦軸に沿って表示される。
【0046】
グラフの枠の横軸および縦軸には、時間および画素値がそれぞれ割り当てられる。詳しくは、横軸には、上述した時刻T0を起点として時刻Tnまでの時間が割り当てられる。また、縦軸には、時刻T0における対象スライス位置のMRI画像をなす対象画素の値を初期値として、250%までの値が割り当てられる。また、縦軸に沿って表示されるカラーバーは、画素値に応じて異なる色を示す。
【0047】
ステップS19では、初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードを初期化する。初期相カラーモードは、初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwのいずれを表示するかを定義するモードであり、全てを表示するモードからいずれが1つだけを表示するモードまで合計7モードが用意される。同様に、遅延相カラーモードは、遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshのいずれを表示するかを定義するモードであり、全てを表示するモードからいずれが1つだけを表示するモードまで合計7モードが用意される。
【0048】
初期状態において、初期相カラーモードは初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwの全てを表示するモードに設定され、遅延相カラーモードは遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshの全てを表示するモードに設定される。
【0049】
ステップS21では、先頭スライス位置(=スライス位置P0)に対応する補完画像IM01およびIM1nの表示をディスプレイ装置20に要求する。ディスプレイ装置20は、対象の補完画像IM01およびIM1nをDRAM22から読み出し、読み出された補完画像IM01およびIM1nを画面SCRに表示する。
【0050】
ステップS23では、先頭スライス位置に対応する初期相カラーマップMP01をステップS19で設定された初期相カラーモードに従って作成する。また、ステップS25では、先頭スライス位置に対応する遅延相カラーマップMP1nをステップS19で設定された遅延相カラーモードに従って作成する。
【0051】
初期化された初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードは上述のとおりであるため、ステップS23では、初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwの合成によって初期相カラーマップMP01が作成され、遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshの合成によって遅延相カラーマップMP1nが作成される。
【0052】
ステップS27では、こうして作成された初期相カラーマップMP01およびMP1nの多重表示をディスプレイ装置20に要求する。ディスプレイ装置20は、初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nをDRAM22から読み出し、読み出された初期相カラーマップMP01およびMP1nを画面SCRに表示された補完画像IM01およびIM1nにそれぞれ多重する。
【0053】
先頭スライス位置の補完画像IM01およびIM1nが図3(A)および図3(B)に示す画像をなし、先頭スライス位置の初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwが図5(A)〜図5(C)に示すマップをなし、先頭スライス位置の遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshが図5(D)〜図5(F)に示すマップをなす場合、補完画像IM01〜IM1n,初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nは、図7に示す要領で画面SCRに表示される。つまり、補完画像IM01およびIM1nは画面SCRの下段の位置に左右並んで表示され、初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nは補完画像IM01およびIM1nにそれぞれ多重される。
【0054】
なお、初期相カラーマップMP01の色は、カラーバーの色と同期する。この結果、初期相カラーマップMP01をカラーバーと照らし合わせることで、各画素の初期相特性が“Fast”,“Medium”および“Slow”のいずれであるかを容易に把握することができる。
【0055】
ステップS29では、ステップS19で初期化された初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードを示すカラーモード情報を表すグラフィック画像(以下、単に「カラーモード情報」と呼ぶ。)をDRAM22上で作成し、カラーモード情報の表示をディスプレイ装置20に要求する。ディスプレイ装置20は、対象のカラーモード情報をDRAM22から読み出し、読み出されたカラーモード情報を画面SCRの最下段の位置に左右に並べて表示する。
【0056】
図7に示すように、カラーモード情報は、初期相に対応して“FAST”,“MEDIUM”および“SLOW”の3つの項目を有し、遅延相に対応して“PERSISTENT”,“PLATEAU”および“WASHOUT”の3つの項目を有する。初期化された初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードは上述のとおりであるため、初期相に対応する3つの項目および遅延相に対応する3つの項目の全てが高輝度で表示される。
【0057】
ステップS31では、キーボード16および/またはマウス18によってスライス位置変更操作が行われたか否かを繰り返し判別する。判別結果がNOからYESに更新されると、ステップS33でポインタPT01およびPT1nの表示位置を初期化する。初期化によって、ポインタPT01およびPT1nは断層上の初期位置を指向する。
【0058】
ステップS35では、変数Kの値をスライス位置変更操作に従う値に変更し、ステップS37では、スライス位置PKに対応する補完画像IM01およびIM1nの表示をディスプレイ装置20に要求する。ディスプレイ装置20は、対象の補完画像IM01およびIM1nをDRAM22から読み出し、読み出された補完画像IM01およびIM1nを画面SCRに代替表示する。
【0059】
ステップS39では、スライス位置PKに対応する初期相カラーマップMP01を現時点の初期相カラーモードに従って作成する。また、ステップS41では、スライス位置PKに対応する遅延相カラーマップMP1nを現時点の遅延相カラーモードに従って作成する。
【0060】
ステップS43では現時点の初期相カラーモードが初期状態にあるか否かを判別し、判別結果がYESであればそのままステップS49に進む一方、判別結果がNOであればステップS45およびS47の処理を経てステップS49に進む。なお、ステップS45およびS47の処理は後述する。
【0061】
ステップS49では、初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nの多重表示をディスプレイ装置20に要求する。ディスプレイ装置20は、初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nをDRAM22から読み出し、読み出された初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nを画面SCRに表示された補完画像IM01およびIM1nにそれぞれ多重する。
【0062】
スライス位置PKの補完画像IM01およびIM1nが図4(A)および図4(B)に示す画像をなし、スライス位置PKの初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwが図6(A)〜図6(C)に示すマップをなし、スライス位置PKの遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshが図6(D)〜図6(F)に示すマップをなす場合において、初期相カラーモードおよび遅延相カラーモードが初期状態であれば、補完画像IM01〜IM1n,初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nは、図8に示す要領で画面SCRに代替表示される。
【0063】
ステップS51では、ポインタPT01およびPT1nの各々を表すキャラクタ画像(以下、単に「ポインタPT01」または「ポインタPT1n」と呼ぶ。)をDRAM22に展開し、ポインタPT01およびPT1nの表示をディスプレイ装置20に要求する。ディスプレイ装置20は、ポインタPT01およびPT1nをDRAM22から読み出し、読み出されたポインタPT01およびPT1nを画面SCR上の初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nに多重表示する。
【0064】
ポインタPT01およびPT1nは断層上の共通の位置を指向し、かつ指向位置はステップS33または後述するステップS61の処理に従う。したがって、初期相カラーマップMP01および遅延相カラーマップMP1nに共通の座標を割り当てた場合、ポインタPT01の多重位置を示す座標値は、ポインタPT1nの多重位置を示す座標値と一致する。ポインタPT01およびPT1nは、断層上の共通の位置を表す画素を指向する。
【0065】
ステップS53では、ポインタPT1nが指向する画素が色付けされているか否かを判別し、判別結果がYESであればステップS55に進む。
【0066】
ステップS55では、時刻T0〜Tnの各々におけるスライス位置PKの断層を表すMRI画像を主記憶装置24からDRAM22に転送し、転送された5フレームのMRI画像の各々からポインタPT01またはPT1nが指向する画素の値を抽出する。ステップS55ではまた、時刻T0およびT1にそれぞれ対応する2つの画素値に基づいてグラフG01を作成するとともに、時刻T1〜Tnにそれぞれ対応する4つの画素値に基づいてグラフG1nを作成する。
【0067】
グラフG01は、ポインタPT01が指向する画素値の初期相における時間的変化を表す。また、グラフG1nは、ポインタPT1nが指向する画素値の遅延相における時間的変化を表す。また、作成されたグラフG01およびG1nは、DRAM22に描画される。
【0068】
ステップS55ではさらに、DRAM22に描画されたグラフG01およびG1nの表示をディスプレイ装置20に要求する。ディスプレイ装置20は、グラフG01およびG1nをDRAM22から読み出し、読み出されたグラフG01およびG1nをステップS15で表示された枠に合わせて画面SCRに表示する。グラフG01およびG1nは、たとえば図8に示す要領で表示される。
【0069】
図9図12を参照して、グラフG01およびG1nについてより詳しく説明する。ここでは、説明の便宜上、初期相特性が“Fast”のグラフを“G01fst”と定義し、初期相特性が“Medium”のグラフを“G01md”と定義し、初期相特性が“Slow”のグラフを“G01slw”と定義する。また、遅延相特性が“Persistent”のグラフを“G1npst”と定義し、遅延相特性が“Plateau”のグラフを“G1nplt”と定義し、遅延相特性が“Washout ”のグラフを“G1nwsh”と定義する。
【0070】
初期相において、グラフG01fst,G01mdまたはG01slwは、図9に示すように描画される。グラフG01fst,G01mdおよびG01slwのいずれも、時刻T0における対象画素の値を初期値とし、この初期値からの増加率を示す。
【0071】
初期相においてグラフG01fstが描画された場合、グラフG1npst,G1npltまたはG1nwshは、図10に示すように、グラフG01fstに連続して描画される。初期相においてグラフG01mdが描画された場合、グラフG1npst,G1npltまたはG1nwshは、図11に示すように、グラフG01mdに連続して描画される。初期相においてグラフG01slwが描画された場合、グラフG1npst,G1npltまたはG1nwshは、図12に示すように、グラフG01slwに連続して描画される。図10図12のいずれにおいても、グラフG1npst,G1npltおよびG1nwshは、初期値からの画素値の増減率を示す。
【0072】
ステップS55では、このようにしてグラフG01およびG1nが描画される。ステップS55の処理が完了すると、ステップS59に進む。なお、ステップS53の判別結果がNOであれば、ステップS57でグラフG01およびG1nを非表示とし、その後にステップS59に進む。
【0073】
ステップS59ではマウス18によってポインタ移動操作が行われたか否かを判別し、ステップS63ではキーボード16および/またはマウス18によってスライス位置変更操作が行われたか否かを判別する。ステップS59の判別結果がYESであれば、ステップS61でポインタPT01およびPT1nの位置を共通的に変更し、その後にステップS51に戻る。また、ステップS63の判別結果がYESであれば、ステップS35に戻る。
【0074】
したがって、ポインタPT01〜PT1nおよびグラフG01〜G1nの表示態様はポインタ移動操作に従って動的に変化し、補完画像IM01〜IM1n,初期相カラーマップMP01,遅延相カラーマップMP1nの表示態様はスライス位置変更操作に従って動的に変化する。
【0075】
ステップS59の判別結果およびステップS63の判別結果のいずれもがNOであれば、キーボード16および/またはマウス18によって初期相カラーモード変更操作が行われたか否かをステップS65で判別し、キーボード16および/またはマウス18によって遅延相カラーモード変更操作が行われたか否かをステップS71で判別する。
【0076】
ステップS65で受け付ける初期相カラーモード変更操作は、可視化を制限すべき初期相特性を“Fast”,“Medium”および“Slow”の中から選択する操作に相当する。ステップS65の判別結果がYESであれば、ステップS67で初期相カラーモードを変更し、ステップS69でカラーモード情報を変更し、その後にステップS39に戻る。
【0077】
ステップS39では、スライス位置PKに対応する初期相カラーマップMP01を変更後の初期相カラーモードに従って作成する。続くステップS41では、スライス位置PKに対応する遅延相カラーマップMP1nを変更後の遅延相カラーモードに従って作成する。
【0078】
変更後の初期相カラーモードが初期状態の初期相カラーモードと異なれば、ステップS43の判別結果がNOと判断され、ステップS45に進む。ステップS45では、ステップS39で作成された初期相カラーマップMP01において色が現れた領域R1を特定し、さらに領域R1と共通の領域R2をステップS41で作成された遅延相カラーマップMP1n上で特定する。ステップS45では、ステップS43で特定された領域R2の外側の色が排除されるように、ステップS41で作成された遅延相カラーマップMP1nを修正する。
【0079】
初期相カラーモード変更操作の結果、可視化を制限すべき初期相特性として“Slow”が選択されると、初期相カラーマップMP01,遅延相カラーマップMP1nおよびカラーモード情報は、図13に示すように更新される。このときの処理を図15(A)および図15(B)を参照して詳しく説明する。
【0080】
まず、初期相カラーマップMP01slwが初期相カラーマップMP01から消失する。続いて、初期相カラーマップMP01において色が現れた領域R1が特定され(図15(A)参照)、この領域R1と共通する遅延相カラーマップMP1n上の領域R2が特定される(図15(B)参照)。領域R2の外側の色は、遅延相カラーマップMP1nから排除される。また、カラーモード情報をなす“SLOW”の項目は、低輝度で表示される。
【0081】
図23のステップS71で受け付ける遅延相カラーモード変更操作は、可視化を制限すべき遅延相特性を“Persistent”,“Plateau”および“Washout”の中から選択する操作に相当する。ステップS71の判別結果がYESであれば、ステップS73で遅延相カラーモードを変更する。ステップS75では、DRAM22上の遅延相カラーマップMP1nを変更後の遅延相カラーモードに従って修正する。修正が完了すると、ステップS75でカラーモード情報を変更し、その後にステップS49に戻る。
【0082】
図13に示す表示状態で遅延相カラーモード変更操作が行われ、可視化を制限すべき遅延相特性として“Persistent”が選択されると、初期相カラーマップMP01,遅延相カラーマップMP1nおよびカラーモード情報は図14に示す要領で表示される。図14によれば、遅延相カラーマップMP1npstが遅延相カラーマップMP1nから消失し、カラーモード情報をなす“PERSISTENT”の項目が低輝度で表示される。遅延相カラーマップMP1nおよび遅延相のカラーモード情報を拡大した図16から分かるように、遅延相カラーモード変更操作が行われた場合は、領域R2の内側に現れた色の一部が変更後の遅延相カラーモードに合わせて排除される。
【0083】
ここからさらに初期相カラーモード変更操作が行われ、可視化を制限すべき初期相特性として“Medium”が追加的に選択されると、初期相カラーマップMP01,遅延相カラーマップMP1nおよびカラーモード情報は、図17に示す要領で表示される。図17によれば、初期相カラーマップMP01mdが初期相カラーマップMP01から消失し、初期相カラーマップMP01mdと共通する領域の色が遅延相カラーマップMP1nから消失する。さらに、カラーモード情報をなす“MEDIUM”の項目が低輝度で表示される。
【0084】
この状態でさらに遅延相カラーモード変更操作が行われ、可視化を制限すべき遅延相特性として“Plateau”が選択されると、初期相カラーマップMP01,遅延相カラーマップMP1nおよびカラーモード情報は、図18に示す要領で表示される。図18によれば、遅延相カラーマップMP1npltが遅延相カラーマップMP1nから消失し、カラーモード情報をなす“PLATEAU”の項目が低輝度で表示される。
【0085】
BI-RADS-MRIによれば、初期相特性が“Fast”でかつ遅延相特性が“Washout”を示す部位が最も悪性度が高いとされているところ、図18に示す表示状態を選択することで最も悪性度が互い部位に限定した可視化が可能となる。
【0086】
以上の説明から分かるように、CPU14は、“Fast”,“Medium”,“Slow”の初期相特性にそれぞれ対応する初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwを初期相のMRI画像に基づいて作成し(S7)、“Persistent”,“Plateau”,“Washout”の遅延相特性にそれぞれ対応する遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshを遅延相のMRI画像に基づいて作成する(S9)。
【0087】
3つの初期相特性の中から可視化を制限すべき初期相特性を選択する初期相カラーモード変更操作を受け付けると、CPU14は、選択された初期相特性に対応する色が排除された初期相カラーマップMP01を初期相カラーマップMP01fst,MP01md,MP01slwに基づいて表示し(S67, S39, S49)、初期相カラーマップMP01上で色が現れた領域R1と共通する領域R2の外側の色が排除された遅延相カラーマップMP1nを遅延相カラーマップMP1npst,MP1nplt,MP1nwshに基づいて表示する(S41~S49)。
【0088】
したがって、可視化を制限したい初期相特性が初期相カラーモード変更操作によって変更されると、初期相カラーマップMP01の表現態様が変化し、さらには遅延相カラーマップMP1nの表現態様が変化する。これによって、患部を診断する際の利便性が向上する。
【符号の説明】
【0089】
10 …診断支援装置
14 …CPU
20 …ディスプレイ装置
24 …主記憶装置
30 …MRI装置
40 …通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
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図23