(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離器は、高温炭酸カリウム分離、分子ふるい分離、アミン分離、メンブレン分離、吸着反応速度論的分離、制御凍結ゾーン分離又はこれらの組み合わせから選択された分離プロセスを用いる、
請求項1記載のシステム。
前記ガス状排出物流は、高温炭酸カリウム分離、分子ふるい分離、アミン分離、メンブレン分離、吸着反応速度論的分離、制御凍結ゾーン分離又はこれらの組み合わせから選択されたプロセスを用いて分離される、
請求項13記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明の項において、本発明の特定の実施形態を好ましい実施形態と関連して説明する。しかしながら、以下の説明が本発明の特定の実施形態又は特定の使用に特有である範囲まで、これは、例示目的にのみ行われ、例示の実施形態についての説明を提供するに過ぎない。したがって、本発明は、以下に説明する特定の実施形態には限定されず、それどころか、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるあらゆる変形例、改造例及び均等例を含む。
【0014】
本明細書において用いられる種々の用語について以下に定義する。特許請求の範囲の記載に用いられている用語が以下において定義されていない場合、関連分野における当業者が少なくとも1つの印刷された刊行物又は発行された特許に反映されているようにその用語には最も広い定義が与えられるべきである。
【0015】
本明細書で用いられている「天然ガス」という用語は、原油井(随伴又は付随ガス)又は地下ガス貯留地層(非随伴ガス)から得られた多成分ガスを意味している。天然ガスの組成及び圧力は、千差万別であると言える。典型的な天然ガス流は、主要成分としてメタン(CH
4)を含み、即ち、天然ガス流の50mol%以上がメタンである。天然ガス流は、エタン(C
2H
6)、これよりも分子量の高い炭化水素(例えば、C
3〜C
20炭化水素)、1種類又は2種類以上の酸性ガス(例えば、硫化水素)又はこれらの任意の組み合わせを更に含む場合がある。天然ガスは、微量の汚染物質、例えば水、窒素、硫化鉄、蝋、原油又はこれらの任意の組み合わせを更に含む場合がある。
【0016】
本明細書で用いられる「化学量論的燃焼」という用語は、燃料及び酸化剤を含む所与の量の反応体及び反応体の全体積が生成物を形成するために用いられる場合に反応体を燃焼させることによって生じる所与の量の生成物を含む燃焼反応を意味している。本明細書で用いられる「実質的に化学量論的燃焼」という表現は、約0.9:1〜約1.1:1、より好ましくは約0.95:1〜約1.05:1の等量比を有する燃焼反応を意味している。本明細書において、「化学量論的」という用語は、別段の指定がなければ「化学量論的」条件と「実質的に化学量論的」条件の両方を含むことを意味している。
【0017】
本明細書で用いられる「流(又は流れ)」は、所与の量の流体を意味している。ただし、「流」という用語の使用は、運動中の所与の量の流体(例えば、速度又は質量流量を有する)を意味している。しかしながら、「流」という用語は速度、質量流量又は「流」を包囲する特定形式の導管を必要とするわけではない。
【0018】
本明細書において開示するシステム及びプロセスの実施形態は、超低エミッション電力及び石油・原油の回収増進(EOR)又は隔離用途のためのCO
2を生じさせるために利用できる。EOR用途では、CO
2は、通常超臨界条件下で産出油井中に又はこれに隣接して注入される。CO
2は、加圧剤として働くと共に地下原油中に溶かされると、油の粘度を著しく減少させて油が地中を通って取り出しウェルまで迅速に流れることができるようにする。本明細書において開示する実施形態によれば、圧縮酸化剤(代表的には空気)と燃料の組み合わせを燃焼させ、排ガスを第1の膨張段で膨張させて動力を生じさせる。次に、排ガスを高い圧力でリッチCO
2及びリーンCO
2流に分離する。次に、リーンCO
2流を再び第2の膨張段で膨張させて追加の動力を生じさせる。リッチCO
2流を幾つかの実施形態では再循環させて燃焼チャンバに入る酸化剤に合流させ、これが、次の膨張機に入る燃焼物及び排ガスの温度を制御し又は違ったやり方で加減することができる希釈剤として作用するようにする。燃焼は、化学量論的であっても良く非化学量論的であっても良い。
【0019】
ほぼ化学量論的条件での燃焼(又は、「僅かにリッチ」な燃焼)は、過剰酸素除去のコストをなくす上で有利であると言える。煙道ガスを冷却すると共に凝縮を行うことにより流れから水を除去することによって、比較的高いCO
2含有量の流れを生じさせることができる。再循環排ガスの一部分を閉鎖ブレイトンサイクルにおいて温度加減のために利用することができるが、残りのパージ流をEOR用途に用いることができると共に大気中に放出されるSO
X、NO
X又はCO
2がほとんどなく又は全くない状態で電力を発生させることができる。例えば、非再循環流を処理してリーンCO
2流を発生させるのが良く、次にこのリーンCO
2流をガス膨張機内で膨張させて追加の機械的動力を生じさせるのが良い。本明細書において開示するシステムの結果として、より経済的に効率的なレベルでの動力の発生及び追加のCO
2の発生又は捕捉が行われる。
【0020】
本発明は、燃焼チャンバからの排ガスを高い圧力でリッチCO
2及びリーンCO
2流に分離する分離プロセスを備えている低エミッション動力発生のためのシステム及び方法に関する。幾つかの実施形態では、リッチCO
2及びリーンCO
2流のうちの一方又は両方を石油・原油の回収増進(EOR)のために1つ又は2つ以上の炭化水素貯留層中に注入するのが良い。本明細書で用いられる「リッチ(濃厚)」「リーン(希薄)」は、CO
2分離プロセスに流入するCO
2の全量のうち、そのCO
2の少なくとも約51%がリッチCO
2流を経て分離プロセスを出、残りのCO
2がリーンCO
2流の状態で出ることを意味している。幾つかの実施形態では、分離プロセスに流入する全CO
2のうちの少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%がリッチCO
2流の状態で出る。
【0021】
本明細書において説明するシステム及び方法では、1種類又は2種類以上の酸化剤を圧縮して燃焼チャンバ内で1種類又は2種類以上の燃料と合流させる。酸化剤は、任意の酸素含有流体、例えば周囲空気、酸素富化空気、実質的に純粋な酸素又はこれらの組み合わせを含むのが良い。1種類又は2種類以上の酸化剤を1つ又は2つ以上の圧縮機内で圧縮するのが良い。各圧縮機は、単段のものであっても良く多段のものであっても良い。多段圧縮機では、オプションとして、高い総合圧縮比及び高い総合動力出力を得ることができるよう段間冷却を採用するのが良い。各圧縮機は、本明細書において説明するプロセスに適した任意形式のものであって良く、好ましくは、高信頼性且つ効率的でありしかも高圧縮比を得ることができる。このような圧縮機としては、軸流圧縮機、遠心圧縮機、往復圧縮機又は二軸スクリュー圧縮機及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。1つ又は2つ以上の実施形態では、1つ又は複数の酸化剤圧縮機は、軸流圧縮機である。燃料は、天然ガス、付随(随伴)ガス、ディーゼル、燃料油、ガス化石炭、コークス、ナフサ、ブタン、プロパン、エタン、メタン、合成ガス、ケロシン、航空燃料、生物燃料、酸素添加炭化水素原料油、ビチューメン、任意他の適当な炭化水素含有ガス若しくは液体、水素又はこれらの組み合わせを含むのが良い。更に、燃料は、不活性成分を含むのが良く、このような不活性成分としては、N
2又はCO
2が挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、燃料は、リッチCO
2流若しくはリーンCO
2流又はこれら両方の注入を介して石油・原油回収増進から利益を得ている炭化水素貯留層によって少なくとも部分的に供給可能である。燃焼チャンバ内の燃焼条件は、リーンであっても良く、化学量論的若しくは実質的に化学量論的であっても良く又はリッチであっても良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、燃焼条件は、化学量論的又は実質的に化学量論的である。燃料と酸化剤の燃焼により、代表的には、約2000°F〜3000°F(1093.3℃〜1648.9℃)の温度を生じさせることができる。幾つかの実施形態では、燃焼チャンバは、酸化剤圧縮機の出力圧力状態で又はこれに近い圧力状態で動作する。
【0022】
燃焼チャンバ内における酸化剤と燃料の燃焼により、排出物流が生じ、次にこれを膨張させる。排出物流は、燃焼生成物を含み、その組成は、用いられる燃料及び酸化剤の組成に応じて様々であろう。1つ又は2つ以上の実施形態では、燃焼チャンバからの放出排出物流は、蒸発水、CO
2、一酸化炭素(CO)、酸素、窒素、アルゴン、窒素酸化物(NO
X)、硫黄酸化物(SO
X)、硫化水素(H
2S)、炭化水素又はこれらの組み合わせを含む場合がある。放出排出物流を1つ又は2つ以上の膨張機内で膨張させるのが良い。膨張機(又は、2つ以上の膨張機が用いられる場合、膨張機システム)に流入する放出排出物流は、代表的には、燃焼チャンバの出口温度及び圧力とほぼ同じ温度及び圧力状態にある。
【0023】
1つ又は2つ以上の膨張機の各々は、単段のものであっても良く、多段のものであっても良い。各膨張機は、本明細書において説明するプロセスに適した任意形式の膨張機であって良く、このような膨張機としては、軸流膨張機若しくは遠心膨張機又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。各膨張機は、好ましくは、効率的でありしかも高い膨張比をもたらすことができる。排出物流の膨張により、動力が生じ、このような動力は、1つ又は2つ以上の圧縮機又は発電機を駆動するために使用できる。本発明の1つ又は2つ以上の実施形態では、膨張機は、共通シャフト若しくは他の機械的、電気的又は他の動力カップリングにより酸化剤圧縮機に結合され、酸化剤圧縮機は、膨張機によって少なくとも部分的に駆動されるようになっている。他の実施形態では、酸化剤圧縮機は、速度増大又は減少装置、例えばギアボックスの有無にかかわらず電気モータに機械的に結合され又は蒸気タービンに機械的に結合可能である。酸化剤圧縮機、燃焼チャンバ及び膨張機は、まとめて考慮すると、開放ブレイトンサイクルとして特徴付けできる。
【0024】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態では、少なくとも2つの膨張機段が採用され、CO
2分離プロセスが段のうちの任意の2つ相互間に設けられる。第1段は、燃焼チャンバから放出排ガスを受け取り、同じガスを減少温度及び減少圧力状態でCO
2分離プロセスに出力する高圧膨張機である。高圧膨張機の出口のところの圧力は、減少させてはいるが、周囲条件よりも依然として高い。例えば、高圧膨張機の出口圧力は、約25psiaを超え、約50psiaを超え、約75psiaを超え又は約100psiaを超える場合がある。
【0025】
CO
2分離プロセスは、加圧排ガスをリッチCO
2流及びリーンCO
2流に分離するよう設計された任意適当なプロセスであって良い。排ガスの成分を分離することにより、排出物中の種々の成分を種々の仕方で取り扱うことができる。理想的には、分離プロセスは、排出物中の地球温暖化ガスの全て、例えばリッチCO
2流中のCO
2、CO、NO
X、SO
X等を隔離し、排出物コンポーネントの残部、例えば窒素、酸素、アルゴン等をリーンCO
2中に残す。しかしながら、実際には、分離プロセスは、リーン流から地球温暖化ガスの全てを引き出すことができず、幾つかの非地球温暖化ガスがリッチ流中に残存する場合がある。所望の結果を達成するよう設計された任意適当な分離プロセスを利用することができる。このような分離プロセスの例としては、高温炭酸カリウム(「ホットポット(hot pot)」)分離プロセス、アミン分離、分子ふるい分離、メンブレン分離、吸着反応速度論的分離、制御凍結ゾーン分離及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、ホットポット分離プロセスがCO
2分離のために用いられる。本発明の1つ又は2つ以上の実施形態では、分離プロセスは、高い圧力状態で(即ち、周囲よりも高く且つ高圧膨張機の出口圧力とほぼ同じ圧力状態で)作用し、リーンCO
2流を加圧状態に保つよう構成されている。このようにリーンCO
2流に加わる圧力を維持することにより、小型の分離機器の採用が可能であり、分離効率を向上させることができ、しかもリーンCO
2流からの一層多くのエネルギーの取り出しが可能である。幾つかの実施形態では、CO
2分離プロセスは、リーンCO
2流の出口圧力若しくは出口温度又はこれら両方を最大にするよう選択されると共に構成されている。「CO
2分離器」という用語は、本明細書においては、本発明の或る特定の実施形態を例示し又は説明する上で分かりやすくするために用いられているが、理解されるべきこととして、この用語は、CO
2分離プロセス全体を含み、必ずしも単一の装置又はプロセスステップを意味しているわけではない。
【0026】
1つ又は2つ以上の実施形態では、リーンCO
2流は、高い圧力状態で使用する分離器から出、第2の膨張段に差し向けられ、第2の膨張段は、加圧リーンCO
2流を受け入れて同じガスをほぼ周囲圧力状態で出力するよう構成された低圧膨張機であるのが良い。当業者であれば理解されるように、各膨張段は、動力を発生させ、各膨張機により生じる動力を用いて上述したシステム内に又は外部に位置する任意形態の1つ又は2つ以上の圧縮機又は発電機を少なくとも部分的に駆動するために用いられるのが良い。好都合には、1つ又は2つ以上の実施形態では、第1の(高圧)膨張機は、第1の酸化剤圧縮機を少なくとも部分的に駆動するのが良い。このような実施形態では、第1の圧縮機、燃焼器及び第1の膨張機は、パッケージ形ガスタービンであるのが良い。同じ又は他の実施形態では、第2の酸化剤圧縮機は、第1の圧縮機の前又は後のいずれかで燃焼器具の酸化剤供給物の一段の圧縮を可能にするよう採用されるのが良く、第2の(低圧)膨張機は、第2の酸化剤圧縮機を少なくとも部分的に駆動するのが良い。このような実施形態では、第1及び第2の圧縮機、燃焼器並びに第1及び第2の膨張機は、パッケージ形ガスタービンであるのが良い。変形例として、1つの膨張機は、酸化剤圧縮機を駆動するために用いられても良く、別の圧縮機は貯蔵又はEORのために貯留層中に注入可能にリッチCO
2流(又はリーンCO
2流)を圧縮するようパイプライン又は噴射圧縮機を駆動するために使用されても良い。このような形態では、パイプライン又は噴射圧縮機は、本明細書において説明する動力発生システムの付近に設置されるのが良い。
【0027】
本明細書において説明するCO
2分離プロセスは、好ましくは、膨張段相互間に設けられるが、分離は、変形例として、第1の膨張段に先立って行われても良い。このような形態では、燃焼チャンバからの排ガスは、分離器に直接提供され、分離器は、上述したようにリッチCO
2流及びリーンCO
2流を生じさせる。次に、リーンCO
2流は、1つ又は2つ以上の膨張機又は膨張段に差し向けられ、リッチCO
2流も又、膨張されるのが良く、或いは以下に詳細に説明する種々の仕方で取り扱われるのが良い。
【0028】
1つ又は2つ以上の実施形態では、リーンCO
2流は、オプションとして、低圧膨張段に先立って加熱されるのが良い。このような加熱は、任意適当な加熱装置を用いて達成可能である。例えば、1つ又は2つ以上の熱交換器又は交差型交換器は、リーンCO
2流が低圧膨張機に入る前に熱をリーンCO
2流に伝達するよう構成されているのが良い。1つ又は2つ以上の熱交換器又は交差型交換器は、種々の源から、例えば第1の燃焼器の放出物から又は高圧膨張機の放出物から熱を伝達するよう構成されているのが良い。同じ又は他の実施形態では、リーンCO
2流は、高圧膨張段と低圧膨張段との間に配置された第2の燃焼チャンバ内で加熱されるのが良い。第2の燃焼チャンバの使用には、追加の燃料の供給が必要であり、このような追加の燃料は、第1の燃焼チャンバに供給される燃料と同一であっても良く、これとは異なっていても良い。幾つかの実施形態では、第2の燃焼チャンバに供給されてこの中で燃焼される燃料は、水素を含む。第2の燃焼チャンバによって必要とされる酸化剤は、別個の酸化剤流により供給されるのが良く又は酸化剤の追加の供給が不要であるようにリーンCO
2流中に十分な酸素が存在するのが良い。プロセスの低圧膨張段の前にリーンCO
2流を加熱することによって、低圧膨張機内の動力発生量を増大させるのが良い。
【0029】
1つ又は2つ以上の実施形態では、リーンCO
2流(膨張後)若しくはリッチCO
2流又はこれら両方は、1つ又は2つ以上の排熱回収蒸気発生器(HRSG)を通るのが良い。1つ又は2つ以上のHRSGは、リーンCO
2流及びリッチCO
2流のうちの一方又は両方中の残留熱を利用して蒸気を発生させるよう構成されているのが良い。1つ又は2つ以上のHRSGにより生じる蒸気は、種々の目的に使用でき、例えば、ランキンサイクル中の蒸気タービン発電機を駆動するため、機械的駆動施設中の蒸気タービンを駆動のため又は淡水化のために使用できる。リーンCO
2流及びリッチCO
2流が各々HRSGに差し向けられる場合、各HRSGにより生じる蒸気は、同じ用途又は異なる用途に使用できる。さらに、1つ又は2つ以上のHRSGを出るリーン又はリッチCO
2流のいずれか一方又は両方中に残留熱が残っている場合、システムは、この熱を非蒸気作業流体に伝達するよう構成された1つ又は2つ以上の熱交換器を更に備えているのが良い。このような実施形態では、非蒸気作業流体は、オプションとして、ランキンサイクル中の膨張機を駆動するために使用されるのが良い。
【0030】
リッチCO
2流及びリーンCO
2流のうちのいずれか一方を種々の用途のために全体として又は部分的に使用でき、2つの流は、同じ又は異なる用途に使用できる。例えば、リッチCO
2流の少なくとも一部分を再循環させて燃焼チャンバに入る酸化剤に合流させることができ又は燃焼チャンバに直接加えてこれが次の膨張機に入る燃焼物及び排ガスの温度を制御し又は違ったやり方で加減する希釈剤として働くようにすることができる。このような場合、システムは、閉鎖ブレイトンサイクルを構成するものとして特徴付け可能である。同じ又は他の実施形態では、リッチCO
2流を石油・原油の回収増進(EOR)のために炭化水素貯留層中に注入することができ、又は炭素隔離又は貯蔵のために貯留層に差し向けることができる。リッチCO
2流の販売、逃がし又は焼尽も又可能である。1つ又は2つ以上の実施形態では、リーンCO
2流は、EOR用にも使用できる。同じ又は他の実施形態では、リーンCO
2流の販売、逃がし又は焼尽が可能である。
【0031】
本発明は、本明細書において説明する低エミッション動力発生システム及び方法に加えて別の要素を備えているのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、システムは、1つ又は2つ以上の炭化水素貯留層、注入井及び/又はリッチCO
2流の圧力を増大させて蒸気を炭化水素貯留中への注入を可能にするよう輸送するよう構成された圧縮及びパイプラインシステムを更に備えているのが良い。同じ又は他の実施形態では、システムは、炭化水素貯留層からのガスを燃料のための動力発生システムに運ぶパイプラインシステムを更に備えているのが良い。同じ又は他の実施形態では、システムは、発電機からの電気をシステム内の1つ又は2つ以上の圧縮機に少なくとも部分的に電力供給し又はパイプラインシステムに少なくとも部分的に電力供給するよう構成された電気システム(電気系統)を更に備えているのが良い。
【0032】
次に図を参照すると、
図1は、燃焼後のCO
2の分離及び捕捉を可能にするよう構成された動力発生システム100を示している。少なくとも1つの実施形態では、動力発生システム100は、共通シャフト108又は他の機械的、電気的又は他の動力カップリングを介して第1の膨張機106に結合された第1の圧縮機118を有するのが良く、それにより第1の膨張機106により生じた機械的エネルギーの一部分が第1の圧縮機118を駆動することができるようになっている。第1の膨張機106は、他の用途のためにも、例えば別の圧縮機、発電機等に動力供給するために動力を発生させることができる。第1の圧縮機118及び第1の膨張機106は、それぞれ標準型ガスタービンの圧縮機側端部及び膨張機側端部を形成することができる。しかしながら、他の実施形態では、第1の圧縮機118及び第1の膨張機106は、システム内の個別化されたコンポーネントであっても良い。
【0033】
システム100は、圧縮酸化剤114と混合される第1の燃料流112を燃焼させるよう構成された第1の燃焼チャンバ110を更に備えているのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、第1の燃料流112は、任意適当な炭化水素ガス又は液体であって良く、例えば天然ガス、メタン、エタン、ナフサ、ブタン、プロパン、合成ガス、ディーゼル、ケロシン、航空燃料、石炭由来燃料、生物(バイオ)燃料、ビチューメン、酸素添加炭化水素原料油又はこれらの組み合わせを含む。第1の燃料流112は、水素を更に含むのが良い。圧縮酸化剤114は、第1の燃焼チャンバ110に流体結合されると共に供給物酸化剤120を圧縮するようになった第1の圧縮機118から導き出されたものであるのが良い。本明細書の説明では供給物酸化剤120が周囲空気であることが前提とされているが、酸化剤は、任意適当な酸素含有ガスであって良く、例えば空気、酸素に富む空気、実質的に純粋な酸素又はこれらの組み合わせである。本発明の1つ又は2つ以上の実施形態では、第1の燃焼チャンバ110は、第1の圧縮機118の吐出し圧力とほぼ同じ圧力で動作する。1つ又は2つ以上の実施形態では、第1の圧縮機118、第1の燃焼チャンバ110及び第1の膨張機106は、まとめて考慮すると、開放ブレイトンサイクルとして特徴付けできる。
【0034】
放出排出物流116が第1の燃料流112と圧縮酸化剤114の燃焼の生成物として生じ、そして第1の膨張機106の入口に差し向けられる。少なくとも1つの実施形態では、第1の燃料流112は、主として、天然ガスであるのが良く、それにより、蒸発水、CO
2、CO、酸素、窒素、窒素酸化物(NO
X)及び硫黄酸化物SO
Xの体積部分を含む放出物116が生じる。幾つかの実施形態では、未燃焼燃料112又は他の化合物の僅かな部分も又、燃焼平衡限度に起因して放出物116中に存在する場合がある。放出排出物流116が膨張機106を通って膨張すると、放出物流は、第1の圧縮機118又は他の設備を駆動する機械的動力を発生させると共にガス状排出物流122を生じさせる。1つ又は2つ以上の実施形態では、第1の膨張機106は、第1の燃焼チャンバ出口温度及び圧力と実質的に同じ温度及び圧力状態で放出物流116を受け入れ、そしてこのようなガスを減少しているが依然として周囲条件よりも高い温度及び圧力状態で出力する。
【0035】
このシステム100は、CO
2分離システムを更に備えているのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、ガス状排出物流122は、CO
2分離器140に差し向けられる。CO
2分離器140は、ガス状排出物流122をリッチCO
2流142及びリーンCO
2流144に分離するよう設計された種々の分離プロセスのうちの任意のものを採用することができる。例えば、分離器140は、化学的分離プロセス、例えば高温炭酸カリウム(「ホットポット」)分離、アミン分離又は溶剤、例えばグリコールを用いる分離を利用してガス状排出物流を分離するよう設計されているのが良い。他の分離プロセスとしては、メンブレンを用いた物理的分離又は例えば吸着反応速度論的分離若しくは制御凍結ゾーン分離のようなプロセスが挙げられる。幾つかの実施形態では、上述の分離方法の組み合わせを用いることができる。リッチCO
2流142を種々の下流側用途、例えば石油・原油回収増進(EOR)のための炭化水素貯留層中への注入、炭素隔離、貯蔵、販売又は圧縮酸化剤114及び第1の燃料112の燃焼を容易にすると共に放出排出物流116中のCO
2濃度を増大させる希釈剤としての使用のために第1の燃焼チャンバ110への再循環のために使用できる。リッチCO
2流142は又、逃がされても良く、焼尽されても良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、CO
2分離プロセスは、リーンCO
2流144の温度又は圧力を最大にするよう構成されているのが良い。
【0036】
1つ又は2つ以上の実施形態では、リーンCO
2流144は、オプションとして、追加の動力発生又は発電のために使用できる。例えば、リーンCO
2流144は、ガス状排出物流122からの熱をリーンCO
2流144に伝達するよう構成された熱交換器150内で加熱されるのが良い。熱交換器150を出ると、リーンCO
2流144は、次に、第2の燃料流132を燃焼させて追加の熱をリーンCO
2流144に加えるよう構成された第2の燃焼チャンバ130に差し向けられるのが良い。第2の燃料流は、第1の燃料流112と同一の組成を有しても良く、これとは異なる組成を有しても良い。例えば、第2の燃料流132は、主として水素から成っていても良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、第2の燃焼チャンバ130の作業圧力は、第1の燃焼チャンバ110の作業圧力よりも低い。
【0037】
再熱されたリーンCO
2流162は、第2の燃焼チャンバ110から第2の膨張機160に差し向けられる。第2の膨張機160は、一般に、第1の膨張機106の圧力よりも低い圧力で作動する。例えば、1つ又は2つ以上の実施形態では、第2の膨張機は、周囲よりも高い圧力状態でCO
2分離プロセスから再熱リーンCO
2流162を受け入れ、そしてこのようなガスを膨張後のリーンCO
2流164を介してほぼ周囲圧力で出力する。第2の膨張機160により生じた動力は、種々の目的に使用でき、例えば、第1の圧縮機118又は1つ若しくは2つ以上の追加の圧縮機(図示せず)を少なくとも部分的に駆動し又は発電機を駆動するよう使用できる。幾つかの実施形態では、リッチCO
2かリーンCO
2かのいずれかが貯蔵又はEORのために貯留層中に注入される場合、第2の膨張機160は、パイプライン又は噴射圧縮機を駆動するために使用できる。
【0038】
1つ又は2つ以上の実施形態では、膨張リーンCO
2流164は、蒸気174を発生させるために膨張リーンCO
2流164中の残留熱を使用するよう構成された排熱回収蒸気発生器(HRSG)(「排熱回収ボイラ」又は「排熱回収熱交換器」と呼ばれる場合もある)170に差し向けられるのが良い。蒸気174は、種々の用途を有することができ、例えば、蒸気タービン発電機をランキンサイクルで駆動することによって追加の電力を発生させるために又は淡水化のために利用できる。リッチCO
2流142と同様、HRSG170を出た冷却されたリーンCO
2流172は、EOR、貯蔵、販売、逃がし又は焼尽を含む種々の用途にも使用できる。
【0039】
次に
図2を参照すると、システム200として具体化されると共に説明される
図1の動力発生システム100の変形構成例が示されている。したがって、
図2は、
図1を参照すると最も良く理解できる。
図2のシステム200では、リッチCO
2流142の少なくとも一部分が燃焼チャンバに再循環されて動力発生システムの作業流体中にCO
2の高い濃度を達成し、それにより次の隔離、圧力維持又はEOR用途のために効果的なCO
2分離が可能になる。これを達成するため、第1の燃焼チャンバ110は、第1の燃料112と圧縮酸化剤114の到来混合物を化学量論的に燃焼させるようになっている。第1の膨張機106の入口温度及びコンポーネント冷却要件を満たすよう燃焼温度を加減するため、リッチCO
2流の一部分を希釈剤として第1の燃焼チャンバ110中に注入するのが良い。かくして、本発明の実施形態は、作業流体から過剰の酸素を本質的になくすことができると同時にそのCO
2組成を増大させることができる。
【0040】
図2に示されている再循環ループは、種々の装置を含んでいるが、図示の構成は、例示であるに過ぎず、本明細書に記載した目的を達成するためにリッチCO
2流142を再循環させて第1の燃焼チャンバ110に戻す任意のシステムを使用することができる。1つ又は2つ以上の実施形態では、リッチCO
2流142を第2のHRSG210に送ることができ、その目的は、蒸気216及び冷却リッチCO
2ガス212の流れを生じさせることにある。蒸気216は、オプションとして、追加の電力を発生させるために蒸気ガスタービン(図示せず)に送られても良い。このような構成では、第2のHRSG210と蒸気ガスタービンの組み合わせは、閉鎖ランキンサイクルとして特徴付けできる。
【0041】
1つ又は2つ以上の実施形態では、第2のHRSG210を出た冷却リッチCO
2ガス212は、少なくとも1つの冷却ユニット230に送られるのが良く、このような少なくとも1つの冷却ユニットは、冷却リッチCO
2ガス212の温度を減少させて冷却された再循環CO
2流232を発生させる。1つ又は2つ以上の実施形態では、冷却ユニット230は、本明細書においては、直接接触型冷却器(DCC)であると見なされるが、任意適当な冷却装置、例えば直接接触型冷却器、トリム冷却器、機械的冷凍ユニット又はこれらの組み合わせであっても良い。冷却ユニット230は又、水ドロップアウト流234を経て凝縮水の一部分を除去するよう構成されているのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、冷却リッチCO
2ガス212は、冷却ユニット230に流体結合されたブロワ又はブースト圧縮機220に差し向けられるのが良い。このような実施形態では、圧縮状態の冷却リッチCO
2流212は、ブロワ220を出て冷却ユニット230に差し向けられる。
【0042】
さらに、
図2のシステム200に示されている再循環ループは、CO
2の100%再循環を示しているが、幾つかの状況では、再循環ループ中のCO
2の一部分だけを燃焼チャンバ110に再循環させることが望ましい場合がある。このような場合、1つ又は2つ以上の抽出流(図示せず)は、再循環ループからCO
2の一部分を反らすよう加えられるのが良く、他方、CO
2の残部は、本明細書で説明するように再循環される。CO
2の抽出された部分は、多くの場所(図示せず)で抽出流を経て再循環ループから、例えば流れ212,222,232又は242から引き出されるのが良い。抽出されたCO
2は、種々の目的、例えばEOR、隔離、貯蔵、販売又は逃がしのために使用できる。
【0043】
ブロワ220は、冷却リッチCO
2ガス212を再循環圧縮機240中に導入する前に冷却リッチCO
2ガス212の圧力を増大させるよう構成されているのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、ブロワ220は、冷却リッチCO
2ガス212の全体的密度を増大させ、それにより体積流量が同一の場合に増大した質量流量が再循環圧縮機240に差し向けられる。再循環圧縮機240は、代表的には体積流量が制限されているので、より多くの質量流量を再循環圧縮機240中に差し向けると、その結果として、再循環圧縮機240からの吐出し圧力が高くなる場合があり、それにより膨張機106前後の圧力比が高くなる。膨張機106前後で生じる高い圧力比により、入口温度を高くすることができ、従って膨張機106の電力及び効率が増大する。これは、CO
2リッチ(濃厚)放出物116が一般に高い比熱容量を維持するので有利であると言える。したがって、冷却ユニット230及びブロワ220は、組み込まれた場合、各々、動力発生システム200の作動を最適化し又は向上させるよう構成できる。
【0044】
再循環圧縮機240は、冷却された再循環CO
2流232を名目上第1の燃焼チャンバ110の圧力よりも高い圧力まで圧縮するよう構成されているのが良く、それにより圧縮されたリッチCO
2再循環流242が生じる。少なくとも1つの実施形態では、パージ流(図示せず)をリッチCO
2再循環流242から取り出すことができ、そしてオプションとして追加のCO
2分離器(例えば、CO
2分離器140とほぼ同じ分離器)又はCO
2を捕捉するための他の装置(図示せず)で処理するのが良い。分離されたCO
2は、販売のために使用でき、二酸化炭素を必要とする別のプロセスで使用できると共に/或いは圧縮されて石油・原油回収増進(EOR)、隔離又は別の目的のために地質学的貯留層中に注入可能である。
【0045】
図示していない幾つかの実施形態では、高圧流は又、再循環リッチCO
2流に変えて又はこれに加えて燃焼プロセス中の冷却剤として使用できる。このような実施形態では、蒸気の追加により、再循環ループの動力及びサイズの要件が緩和され(又は、再循環ループが全く不要になる)が、水再循環ループの追加が必要になる。
更に、図示していない別の実施形態では、燃焼チャンバへの圧縮酸化剤供給物は、アルゴンを含むのが良い。例えば、酸化剤は、約0.1〜約5.0体積%アルゴン、約1.0〜約4.5体積%アルゴン、約2.0〜約4.0体積%アルゴン、約2.5〜約3.5体積%アルゴン又は約3.0体積%のアルゴンを含むのが良い。当業者であれば理解されるように、圧縮酸化剤供給物中へのアルゴンの混入に当たり、主圧縮機と燃焼チャンバとの間に、再循環流から過剰CO
2を除去してアルゴンを適当な燃焼温度で燃焼チャンバに戻すよう構成された公差型交換器又は類似の装置を加えることが必要な場合がある。
【0046】
図3を参照すると、システム300として具体化されると共に説明される
図1の動力発生システム100の変形構成例が示されている。したがって、
図3は、
図1を参照すると最も良く理解できる。
図3のシステム300では、第2の圧縮機310が供給物酸化剤120の追加の初期圧縮を可能にするよう設けられている。第2の圧縮機310は、共通シャフト308又は他の機械的、電気的若しくは他の動力カップリングを介して第2の膨張機160に結合されるのが良く、それにより、第2の膨張機160により生じた機械的エネルギーの一部分が第2の圧縮機310を駆動することができるようにする。加圧酸化剤流312が第2の圧縮機を出て、第1の圧縮機118に差し向けられ、第1の圧縮機は、酸化剤を更に圧縮して圧縮状態の酸化剤114を生じさせ、このような圧縮酸化剤114を第1の燃焼チャンバに差し向ける。
【0047】
次に
図4を参照すると、システム400として具体化されると共に説明される
図1の動力発生システム100の単純化された変形構成例が示されている。したがって、
図4は、
図1を参照すると最も良く理解できる。
図4のシステム400では、CO
2分離プロセスが第1の膨張機106の上流側に設けられている。したがって、放出排出物流116は、第1の燃焼チャンバ110を出て直接分離器140に送られる。上述したように、分離器140は、放出排出物流116をリッチCO
2流142及びリーンCO
2流144に分離する。リッチCO
2流142を上記において詳細に説明したように更に処理し、再循環させ又は使用することができる。リーンCO
2流を第1の膨張機106内で膨張させ、結果的に生じたリーンCO
2放出物流410も又、上記において詳細に説明したように更に処理し又は使用することができる。例えば、リーンCO
2放出物流410を第2の燃焼器内で再熱し、再び膨張させて追加の動力(図示せず)を生じさせることができる。
【0048】
本発明は、種々の改造及び変形形態で実施できるが、上述の例示の実施形態は、例示として示されているに過ぎない。本明細書において説明した実施形態の特徴又は形態はどれも任意他の実施形態と又は多数の他の実施形態(実行可能な程度まで)組み合わせ可能であり、このような全ての組み合わせは、本発明の範囲に含まれるものである。更に、本発明は、本明細書に開示した特定の実施形態に限定されるものではないことが理解されるべきである。確かに、本発明は、特許請求の範囲に記載された真の精神及び範囲に属する全ての変形例、改造例及び均等例を含む。