特許第6147729号(P6147729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6147729ガス化装置を作動させるシステム及び方法
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  • 特許6147729-ガス化装置を作動させるシステム及び方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147729
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】ガス化装置を作動させるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/54 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   C10J3/54 L
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-506575(P2014-506575)
(86)(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公表番号】特表2014-529347(P2014-529347A)
(43)【公表日】2014年11月6日
(86)【国際出願番号】US2012034454
(87)【国際公開番号】WO2012145628
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】13/091,471
(32)【優先日】2011年4月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508364749
【氏名又は名称】ケロッグ ブラウン アンド ルート エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブガーザレー、ジョン
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−088440(JP,U)
【文献】 特開2002−022126(JP,A)
【文献】 特開2009−179790(JP,A)
【文献】 特開平02−290406(JP,A)
【文献】 米国特許第05580241(US,A)
【文献】 国際公開第2010/071422(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化装置を作動させる方法において、
第1の始動用燃料を燃焼させることにより第1の燃焼ガスを生成するステップと、
前記ガス化装置に前記第1の燃焼ガスを導入することにより、開始温度から第2の始動用燃料の少なくとも自己発火温度まで前記ガス化装置内の温度を上昇させるステップと、
前記ガス化装置内の温度が前記第2の始動用燃料の少なくとも自己発火温度となった後に、前記ガス化装置に前記第2の始動用燃料を直接導入するステップと、
前記ガス化装置内にて前記第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させることより第2の燃焼ガスを生成するステップであって、前記第2の燃焼ガスにより、炭化水素供給原料のガス化温度まで前記ガス化装置内の温度を上昇させるために十分な熱が生じる、ステップと、
前記ガス化装置が前記炭化水素供給原料のガス化温度に達したのち、前記ガス化装置に炭化水素供給原料を導入するステップと、
前記ガス化装置内にて前記炭化水素供給原料の少なくとも一部分をガス化することにより合成ガスを生成するステップと、
前記第2の始動用燃料の前記少なくとも一部分を燃焼させるために十分な酸化剤の量を前記ガス化装置内にて維持するステップであって、前記第2の燃焼ガス中の前記酸化剤の濃度を1モル%未満に維持するステップと
を含む、ガス化装置を作動させる方法。
【請求項2】
前記炭化水素供給原料の一部分を燃焼させるために十分な酸化剤の量を前記ガス化装置内において維持するステップであって、前記合成ガス中の前記酸化剤の濃度を、1モル%未満に維持するステップをさらに含む、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項3】
前記第2の始動用燃料を、前記第1の燃焼ガスに比較して下流側から前記ガス化装置に導入する、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項4】
前記ガス化装置内に微粒子を循環させるステップをさらに含む、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項5】
前記ガス化装置に前記第1の燃焼ガスを導入する前に前記ガス化装置内に微粒子を循環させるステップであって、前記微粒子の循環を、前記第2の始動用燃料の導入の間及び前記炭化水素供給原料の導入の間維持するステップをさらに含む、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項6】
前記微粒子が、砂、灰、セラミック、石灰石、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項5に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項7】
前記第2の始動用燃料の導入が開始された後に前記第1の燃焼ガスの導入を停止するステップをさらに含む、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項8】
前記炭化水素供給原料の導入が開始された後に前記第2の始動用燃料の導入を停止するステップをさらに含む、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項9】
前記第2の始動用燃料の前記自己発火温度は、200℃〜560℃であり、前記炭化水素供給原料のガス化温度は、700℃以上である、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項10】
前記第1の燃焼ガスを、3以下のターンダウン比を有する始動用燃焼器内で生成する、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項11】
前記第2の始動用燃料は、1個〜25個の炭素原子を有する1つ又は複数の炭化水素を含む、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項12】
前記第2の始動用燃料が、305℃〜325℃の自己発火温度を有するディーゼルである、請求項1に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項13】
ガス化装置を作動させる方法において、
前記ガス化装置内に微粒子を循環させるステップと、
前記ガス化装置に第1の燃焼ガスを導入することにより初期温度から中間温度まで前記ガス化装置内の温度を上昇させるステップであって、第1の始動用燃料を燃焼させることにより前記第1の燃焼ガスを生成し、前記中間温度は、第2の始動用燃料が自己発火するのに十分な温度である、ステップと、
前記ガス化装置が前記中間温度になった後に前記ガス化装置に前記第2の始動用燃料を直接導入するステップであって、前記第2の始動用燃料を、前記第1の燃焼ガスよりも相対的に下流側から前記ガス化装置に導入する、ステップと、
前記ガス化装置内で前記第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させることにより、動作温度にまで前記ガス化装置内の温度を上昇させるステップであって、前記動作温度は、炭化水素供給原料をガス化するのに十分な温度である、ステップと、
前記第2の始動用燃料の導入を開始した後に前記第1の燃焼ガスの導入を停止するステップと、
前記ガス化装置が前記動作温度になった後に前記ガス化装置に前記炭化水素供給原料を導入するステップと、
前記ガス化装置内で前記炭化水素供給原料の少なくとも一部分をガス化することにより合成ガスを生成するステップと、
前記炭化水素供給原料の導入を開始した後に前記第2の始動用燃料の導入を停止するステップと
前記第2の始動用燃料の前記少なくとも一部分を燃焼させるために十分な酸化剤の量を前記ガス化装置内にて維持するステップであって、前記酸化剤を、
前記第1の燃焼ガスの一成分として、又は
直接的に、又は
前記第2の始動用燃料の一成分として、又は
1つ又は複数の不活性ガスと組み合わされて、又は
それらの任意の組合せにより、
前記ガス化装置に導入し、前記第2の燃焼ガス中の前記酸化剤の濃度を1モル%未満に維持するステップと
を含む、ガス化装置を作動させる方法。
【請求項14】
前記中間温度は200℃〜560℃であり、前記動作温度は700℃以上である、請求項13に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項15】
前記ガス化装置内の温度が前記初期温度から前記動作温度まで上昇する際に、初期圧力から動作圧力まで前記ガス化装置内の圧力を上昇させるステップをさらに含む、請求項13に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【請求項16】
前記第1の燃焼ガスを、3以下のターンダウン比を有する始動用燃焼器内にて生成する、請求項13に記載されたガス化装置を作動させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において説明される具体例は、広く言えば、ガス化装置を動作させる方法に関するものである。より詳細には、この具体例は、初期状態すなわち開始状態から炭化水素供給原料処理状態すなわち炭化水素供給原料ガス化状態へのガス化装置の移行に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ガス化は、炭素含有材料を一酸化炭素/水素ガスへと転化するために通常は高圧下において実施される高温プロセスである。このガスは、化学物質又は合成炭化水素燃料の合成にしばしば使用されるため、「合成ガス」とよく称される。
【0003】
ガス化される典型的な供給物には、重質原油、石炭、タール・サンドから回収されたビチューメン、油頁岩からの油母、コークス、及び他の高硫黄含有残渣及び/又は高金属含有残渣などの、混ぜ物を含まない又は処理材料の残渣である石油系材料、ガス、並びに様々な炭素質廃棄材料が含まれる。
【0004】
乾燥した又はスラリ状の炭化水素供給原料は、ガス化装置内の還元(酸素不足)雰囲気において高温及び(通常は)高圧にて反応させられる。結果的に得られる合成ガスは、典型的には、供給物の炭素含有量の約85%を一酸化炭素として含み、残りは二酸化炭素及びメタンの混合物である。
【0005】
ガス化装置を始動させるためには、独立した始動用燃焼器を使用することにより、始動用燃料を燃焼して燃焼ガスを生成し、これがガス化装置へと導入されることにより、ガス化装置をガス化温度まで加熱する。従来の始動用燃焼器は、動作が複雑であり、大きく、組み立てに多額の費用を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,722,690号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2008/0081844号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2008/0155899号明細書
【特許文献4】米国特許出願第2009/0188165号明細書
【特許文献5】米国特許出願第2010/0011664号明細書
【特許文献6】米国特許出願第2010/0132257号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、初期状態すなわち開始状態から炭化水素供給原料処理状態へとガス化装置を移行させるための改良されたシステム及び方法が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】説明される1つ又は複数の実施例による、1つ又は複数の炭化水素供給原料をガス化するための例示的なガス化システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ガス化装置を作動させるシステム及び方法が提供される。この方法は、第1の燃焼ガスを生成するために第1の始動用燃料を燃焼させることを含むことができる。ガス化装置内の温度を、この第1の燃焼ガスをガス化装置に導入することにより、開始温度から、第2の始動用燃料の少なくとも自己発火温度まで上昇させることができる。第2の始動用燃料を、ガス化装置内の温度が第2の始動用燃料の少なくとも自己発火温度になった後に、ガス化装置へ直接導入できる。第2の始動用燃料の少なくとも一部分は、第2の燃焼ガスを生成するために、ガス化装置内において燃焼させることができる。第2の燃焼ガスは、ガス化装置内の温度を炭化水素供給原料ガス化温度まで上昇させるのに十分な熱を生じさせることができる。炭化水素供給原料を、ガス化装置へ導入することができる。炭化水素供給原料の少なくとも一部分は、ガス化装置内においてガス化されて、合成ガスを生成できる。
【0010】
1つ又は複数の具体例においては、2つ以上の燃焼ガスの燃焼から生じる熱を利用することにより、1つ又は複数のガス化装置が、例えばオフ状態又は非ガス化状態などの第1の状態すなわち初期状態から、例えばガス化状態などの炭化水素供給原料処理状態へと移行され得る。例えば、第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスが、第1の状態から炭化水素供給原料処理状態にガス化装置を移行させるために使用され得る。第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスは、第1の始動用燃料及び第2の始動用燃料をそれぞれ燃焼させることにより生成し得る。第1の燃焼ガスから供給される熱は、第1の状態すなわち初期状態から第2の状態すなわち中間状態にガス化装置を移行させるために使用され得る。第2の燃焼ガスから供給される熱は、第2の状態すなわち中間状態から炭化水素供給原料処理状態にガス化装置を移行させるために使用され得る。換言すれば、2つ以上の燃焼ガスからの熱が、ガス化装置を始動させるために使用され得る。少なくとも部分的には、ガス化装置の第1の状態すなわち初期状態の特定の条件によっては、ガス化装置は、第2の燃焼ガスのみを使用することにより、第1の状態すなわち初期状態から炭化水素供給原料処理状態に移行され得る。例えば、第1の状態にある場合のガス化装置内の温度が、例えば第2の始動用燃料の自己発火温度を上回るなど、十分な温度である場合には、ガス化装置は、第2の燃焼ガスのみを使用することにより、第1の状態から炭化水素供給原料処理状態に移行され得る。
【0011】
第1の燃焼ガスは、ガス化装置の外部において生成され、ガス化装置に導入されることにより、ガス化装置内の温度及び/又は圧力を中間状態すなわち第2の状態まで上昇させることが可能である。例えば、第1の始動用燃料は、ガス化装置の外部において、始動用燃焼器、炉、若しくは任意の他の燃焼デバイス、燃焼システム、又はそれらの任意の組合せの中で燃焼されることにより、第1の燃焼ガスを生成することが可能であり、この第1の燃焼ガスは、導管、ダクト、ライン、又は他の手段を経由してガス化装置に導入され得る。第1の燃焼ガスは、ガス化装置に続く1つ又は複数の導管、ダクト、ライン、若しくは他の手段、又はそれらの任意の組合せを経由して、ガス化装置内の1つ又は複数の位置に導入され得る。第2の燃焼ガスは、ガス化装置内において生成され得る。例えば、第2の始動用燃料が、ガス化装置に直接的に導入され、ガス化装置の外部においてではなくガス化装置内において燃焼され得る。1つ又は複数の第2の始動用燃料ノズル又は他の注入デバイスが、ガス化装置上に配設され、ガス化装置に第2の始動用燃料を導入するように適合化又は構成され得る。本明細書においては、「第1の燃焼ガス」という用語は、ガス化装置の外部において1つ又は複数の第1の始動用燃料を燃焼させることにより発生される又は生成される燃焼ガスを指す。本明細書においては、「第2の燃焼ガス」という用語は、ガス化装置内において1つ又は複数の第2の始動用燃料を燃焼させることにより少なくとも一部分が発生される又は生成される燃焼ガスを指す。例えば、第2の燃焼ガスの全てが、ガス化装置内において第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させることにより、ガス化装置内において生成され得る。別の実例においては、第2の始動用燃料の第1の部分が、ガス化装置の外部において燃焼され、第2の始動用燃料の第2の部分が、ガス化装置内において燃焼され得る。ガス化システムの構成要素は、例えば第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスなどの任意の始動用ガスの酸素含有物の影響を受けやすい虞がある。したがって、例えば安定的な外部燃焼器の運転に必要な過剰空気などとして進入する酸素を、窒素などの1つ又は複数の不活性ガスで希釈することが可能である。
【0012】
2つ以上の燃焼ガスの組合せ、又は代替的には第2の燃焼ガスのみが、第1の状態と炭化水素供給原料処理状態との間におけるガス化装置の移行プロセスを向上させることが可能である。例えば燃焼中の燃焼器などにおけるような外部燃焼ステップは、ガス化装置内において生成され得る第2の燃焼ガスと比較すると、より高額となり、熱効率がより低く、かなりの量の過剰空気を必要とする。そのため、ガス化装置内において生成される第2の燃焼ガスは、第1の燃焼ガスを生成するために必要とされる外部始動用燃焼器のサイズを縮小させることにより、資本コスト及び稼働コストの両方を削減し得る。さらに、ガス化装置内において生成される第2の燃焼ガスを使用することにより、第1の状態と炭化水素供給原料処理状態との間においてガス化装置を移行させるために必要とされる不活性ガスの量、過剰空気の量、及び/又は燃料の量を削減することが可能となる。例えば、第2の燃焼ガス、又は第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスの組合せにより、1つ又は複数のガス化装置を移行させるために必要とされる総エネルギー入力が削減され得る。また、第2の燃焼ガス、又は第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスの組合せは、第2の始動用燃料及びこの燃料から生成される第2の燃焼ガスを使用せずに同一のガス化装置を始動する場合と比較して、第1の燃焼ガスを生成するために第1の始動用燃料を燃焼させるのに必要とされる外部始動用燃焼器のサイズを実質的に縮小させる、及び/又はこの外部始動用燃焼器の必要性を解消することが可能である。例えば、外部始動用燃焼器のサイズは、第2の始動用燃料をやはり使用しつつ第1の状態から炭化水素供給原料処理状態へとガス化装置を移行させる場合には、外部始動用燃焼器のみを使用してすなわち第2の始動用燃料を使用せずに第1の状態から炭化水素処理状態へとガス化装置を移行させるのに比べて、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、又はそれ以上だけ縮小することが可能となる。
【0013】
2つ以上の燃焼ガスの組合せによりガス化装置を始動させる際に使用される始動用燃焼器は、約4以下、約3以下、又は約2以下のターンダウン比を有することが可能である。本明細書においては、「ターンダウン比」という用語は、始動用燃焼器の最小点火能力に対する始動用燃焼器の最大点火能力の比率を指す。また、第2の燃焼ガス、又は第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスの組合せは、第1の状態から炭化水素供給原料処理状態へとガス化装置を移行させるのに必要とされる時間を、第1の燃焼ガスのみを使用して同じ第1の状態から同じ炭化水素供給原料処理状態へと同じガス化装置を移行させる場合よりも短縮することが可能である。例えば、単独で、又は第1の燃焼ガスと組み合わせて、第2の燃焼ガスを使用する場合に、第1の状態から炭化水素供給原料処理状態へとガス化装置を移行させるのに必要とされる時間は、第1の燃焼ガスのみを使用する同一のガス化装置と比較して、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、又は約35%だけ短縮することが可能である。また、このガス化装置内において生成された第2の燃焼ガスを使用することにより、ガス化装置を移行させるために必要とされる過剰空気の量を削減することも可能となる。過剰空気の量の削減により、必要とされる燃料の量を削減することが可能となり、第1の状態から炭化水素供給原料処理状態へのガス化装置の移行速度をより高速化することが可能となり得る。また、不活性ガスの消費量も削減され得る。
【0014】
第1の始動用燃料及び第2の始動用燃料は、同一のもの又は異なるものであることが可能である。第1の始動用燃料及び第2の始動用燃料は、ガス、液体、固体、又はそれらの任意の組合せであることが可能である。例えば、第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料は、1つ又は複数のガス状炭化水素を含むことが可能である。別の実例においては、第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料は、1つ又は複数の液状炭化水素を含むことが可能である。別の実例においては、第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料は、1つ又は複数の固体状炭化水素を含むことが可能である。好ましくは、第1の始動用燃料は、室温及び大気圧においてガス状及び/又は液状である1つ又は複数の炭化水素を含む。好ましくは、第2の始動用燃料は、室温及び大気圧においてガス状及び/又は液状である1つ又は複数の炭化水素を含む。
【0015】
第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料としての使用に適した炭化水素には、1〜約40個の炭素原子、1〜約30個の炭素原子、若しくは1〜約20個の炭素原子を有する任意の炭化水素又は炭化水素の組合せが含まれ得るが、それらに限定されない。第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料としての使用に適した炭化水素には、アルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、アルキン、アルカジエン、芳香族、アルコール、又はそれらの任意の組合せが含まれ得る。第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料として使用し得る適切な炭化水素の混合物には、天然ガス、ナフサ、軽油、燃料油、ディーゼル、ガソリン、灯油が含まれ得るが、それらに限定されない。第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料としての使用に適した他の材料には、タール、アスファルテン、石炭、水素、バイオマス、又はそれらの任意の組合せが含まれ得るが、それらに限定されない。少なくとも1つの実例においては、第1の始動用燃料は、石炭、木材、アスファルテン、又はそれらの任意の組合せであるか、又はそれらを含むことが可能であるが、それらに限定されない。少なくとも1つの実例においては、第2の始動用燃料は、ディーゼル、ガソリン、灯油、ナフサ、又はそれらの任意の組合せであるか、又はそれらを含むことが可能であるが、それらに限定されない。
【0016】
第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料は、硫黄含有量が低いことが可能であり、これにより、第1の状態から炭化水素供給原料処理状態へとガス化装置を移行させる際の硫黄の排出を削減又は最小限に抑えることが可能となる。例えば、第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料は、約200ppm未満、約150ppm未満、約100ppm未満、約75ppm未満、約50ppm未満、又は約30ppm未満の硫黄及び/又は硫黄含有化合物を含むことが可能である。別の実例においては、第1の始動用燃料及び/又は第2の始動用燃料は、約40ppm未満、約25ppm未満、約20ppm未満、約15ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約1ppm未満の硫黄及び/又は硫黄含有化合物を含むことが可能である。第2の始動用燃料は、約700℃未満、約650℃未満、約600℃未満、約550℃未満、約500℃未満、約450℃未満、約400℃未満、約350℃未満、約300℃未満、約250℃未満、又は約200℃未満の自己発火温度を有することが可能である。例えば、第2の始動用燃料は、約100℃〜約600℃、約500℃〜約600℃、約250℃〜約550℃、約300℃〜約600℃、約350℃〜約600℃、約400℃〜約600℃、約450℃〜約600℃、約305℃〜約325℃、約540℃〜約560℃、又は約245℃〜約265℃の範囲の自己発火温度を有することが可能である。別の実例においては、第2の始動用燃料は、少なくとも200℃、少なくとも250℃、少なくとも300℃、少なくとも350℃、少なくとも375℃、少なくとも400℃、少なくとも450℃、少なくとも500℃、及び約700℃未満、約650℃未満、又は約600℃未満の自己発火温度を有することが可能である。
【0017】
特定の第2の始動用燃料をさらに詳細に考察すると、第2の始動用燃料としての使用に適したディーゼル燃料には、約8個の炭素原子〜約25個の炭素原子を有する炭化水素(C8炭化水素〜C25炭化水素)が含まれ得る。ディーゼル燃料は、約200の平均分子量と、約0.85の比重と、約180℃〜約340℃の範囲の沸点と、約305℃〜約325℃の範囲の、例えば約315℃の自己発火温度とを有することが可能である。第2の始動用燃料としての使用に適したナフサ燃料には、約5個〜約12個の炭素原子を有する炭化水素(C5炭化水素〜C12炭化水素)が含まれ得る。ナフサ燃料は、約100〜約215の範囲の分子量と、約0.7の比重と、約30℃〜約200℃の範囲の沸点と、約540℃〜約560℃の範囲の、例えば約550℃の自己発火温度とを有することが可能である。第2の始動用燃料としての使用に適したガソリン燃料には、約4個〜約12個の炭素原子を有する炭化水素(C4炭化水素〜C12炭化水素)が含まれ得る。ガソリン燃料は、約100〜約105の範囲の分子量と、約0.72〜約0.78の比重と、約26℃〜約225℃の範囲の沸点と、約245℃〜約265℃の範囲の、例えば約257℃の自己発火温度とを有することが可能である。
【0018】
ガス化装置に第1の燃焼ガスを導入する前に、ガス化装置内の温度は、第1の温度すなわち初期/開始温度にあることが可能である。ガス化装置内のこの初期温度すなわち開始温度は、ガス化装置が第2の状態すなわち中間状態にある場合のガス化装置内の温度未満であることが可能である。例えば、ガス化装置内の初期温度すなわち開始温度は、室温であることが可能であり、例えば−20℃〜約35℃であることが可能である。別の実例においては、ガス化装置内の初期温度すなわち開始温度は、第2の始動用燃料の自己発火温度未満の任意の温度であることが可能である。第2の始動用燃料は、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、又は約550℃以上の自己発火温度を有することが可能である。そのため、第1の燃焼ガスは、初期温度すなわち開始温度から、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、若しくは約550℃以上の第2の温度すなわち中間温度である温度、又はそれを上回る温度まで、ガス化装置内の温度を上昇させるために使用することが可能となる。換言すれば、ガス化装置内の温度は、ガス化装置に第1の燃焼ガスを導入することにより、開始温度から第2の始動用燃料の少なくとも自己発火温度まで上昇され得る。さらに別の実例においては、ガス化装置内の初期温度すなわち開始温度は、第2の始動用燃料の自己発火温度を上回る、しかし、例えば炭化水素供給原料のガス化温度などの炭化水素供給原料処理温度を下回る任意の温度であることが可能である。この実例においては、第1の始動用燃料及び始動用燃焼器は、省くことが可能となり、ガス化装置は、第2の始動用燃料のみを使用することにより、第1の状態すなわち初期状態から炭化水素供給原料処理状態に移行され得る。
【0019】
ガス化装置に第1の燃焼ガスを導入する前に、ガス化装置内の圧力は、第1の圧力すなわち初期/開始圧力にあることが可能である。ガス化装置内の初期圧力すなわち開始圧力は、下は約25kPa、約50kPa、約101kPa、又は約150kPaから、上は約600kPa、約800kPa、又は約1,000kPaまでの範囲であることが可能である。例えば、ガス化装置内の初期圧力すなわち開始圧力は、約400kPa〜約800kPa、約500kPa〜約700kPa、又は約550kPa〜約650kPaであることが可能である。また、ガス化装置への第1の燃焼ガスの導入は、初期圧力すなわち開始圧力から第2の圧力すなわち中間圧力までガス化装置内の圧力を上昇させるために使用することも可能である。第2の圧力すなわち中間圧力は、下は約50kPa、約100kPa、約200kPaから、上は約600kPa、約800kPa、約1,000kPa、約1,200kPa、又は約1,400kPaまでの範囲であることが可能である。
【0020】
第2の状態すなわち中間状態にある場合のガス化装置内の温度は、第2の始動用燃料の自己発火温度以上であることが可能である。そのため、ガス化装置内の温度が、第2の状態すなわち中間状態に上昇されると、第2の始動用燃料は、ガス化装置へと直接的に導入され得るようになり、そこで第2の始動用燃料の少なくとも一部分が、自己発火及び燃焼されて、第2の燃焼ガスを生成し得る。第2の始動用燃料は、第1の燃焼ガスの下流においてガス化装置へと導入され得る。そのため、第1の燃焼ガスから供給される熱は、第2の始動用燃料を自己発火するために利用され得る。
【0021】
第2の始動用燃料の少なくとも一部分をガス化装置内で燃焼させるために十分な量の1つ又は複数の酸化剤が、ガス化装置内に存在することが可能である。この酸化剤は、任意の所望の態様でガス化装置に導入され得る。例えば、酸化剤は、例えば第1の始動用燃料の燃焼生成物としてなど、第1の燃焼ガスの一成分としてガス化装置に導入され得る、及び/又は、第1の燃焼ガスと共に添加され得る若しくは混合され得る。別の実例においては、酸化剤は、ガス化装置に単独で又は別個に導入され得る。別の実例においては、第2の始動用燃料は、酸化剤と混合又は別様に組み合わせることが可能であり、第2の始動用燃料及び酸化剤のこの混合物が、ガス化装置に導入され得る。別の実例においては、酸化剤は、蒸気及び/又は窒素などの1つ又は複数の他の流体と混合され、ガス化装置に導入され得る。別の実例においては、ガス化装置に導入される酸化剤は、ガス化装置に単独で導入される第2の始動用燃料の一成分として、少なくとも2つの第1の燃焼ガスの組合せから生成され、蒸気などの1つ又は複数の他の流体及び/又は窒素などの不活性ガスと混合され得る。
【0022】
第2の始動用燃料を燃焼させるためにガス化装置内に存在する酸化剤の量は、第2の始動用燃料の燃焼後に、第2の燃焼ガス内の酸化剤濃度が約1モル%未満、約0.5モル%未満、約0.3モル%未満、約0.1モル%未満、約0.05モル%未満、又は約0.01モル%未満となるように制御され得る。例えば、第2の始動用燃料のガス化装置内での燃焼後にガス化装置内に存在する酸化剤の量はゼロであることが可能であり、又は下は約0.05モル%、約0.1モル%、又は約0.2モル%から、上は約0.5モル%、約0.7モル%、又は約1モル%までの範囲であることが可能である。別の実例においては、ガス化装置内に導入される酸化剤の量は、第2の始動用燃料を完全燃焼させるために必要なほぼ理論空燃比に相当する量であるか、又は、第2の始動用燃料を完全燃焼させるために必要とされる酸化剤の理論空燃比に相当する量未満であることが可能である。そのため、少なくとも1つの実例においては、第2の始動用燃料の一部分は、ガス化装置に導入される酸化剤が第2の始動用燃料の燃焼において確実に消費されるように、燃焼されないままとなり得る。1つ又は複数の具体例においては、ガス化装置内に存在する酸化剤は、ガス化装置に供給される炭素の全てを完全燃焼させるのに必要とされる酸素の理論空燃比に相当する量の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、又は約40%未満であることが可能である。
【0023】
これらの1つ又は複数の酸化剤には、空気、酸素、本質的な酸素、酸素富化空気、オゾン、過酸化水素、本質的に窒素非含有の酸化剤、又はそれらの任意の組合せが含まれ得る。本明細書においては、「本質的に酸素」という用語は、50体積%超の酸素を含有する流体を指す。本明細書においては、「酸素富化空気」という用語は、約21体積%の酸素〜約50体積%の酸素を含有する流体を指す。酸素富化空気及び/又は本質的に酸素は、例えば空気の低温蒸留、圧力スイング吸着、膜分離、又はそれらの任意の組合せなどから得ることが可能である。本明細書においては、「本質的に窒素非含有の」という用語は、約5体積%以下の窒素、約4体積%以下の窒素、約3体積%以下の窒素、約2体積%以下の窒素、又は約1体積%以下の窒素を含有する酸化剤を指す。
【0024】
第2の燃焼ガスからの熱は、第2の温度すなわち中間温度から炭化水素供給原料処理温度へとガス化装置を加熱するために利用され得る。例えば、第2の燃焼ガスからの熱は、炭化水素供給原料の少なくとも一部分をガス化するのに十分な温度までガス化装置内の温度を上昇させるために利用され得る。別の実例においては、第2の燃焼ガスからの熱は、炭化水素供給原料の全てをガス化するのに十分な温度までガス化装置内の温度を上昇させるために利用され得る。そのため、「炭化水素供給原料処理温度」及び「ガス化温度」という用語は、同義的に使用することが可能であり、炭化水素供給原料の少なくとも一部分をガス化するのに十分な温度以上の温度を指す。
【0025】
炭化水素供給原料の少なくとも一部分及び/又は炭化水素供給原料の全てをガス化するのに十分な温度は、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、約850℃以上、約900℃以上、約950℃以上、約1,000℃以上、又は約1,050℃以上であることが可能である。例えば、ガス化装置内の最終温度すなわち動作温度は、約700℃〜約1,300℃、約800℃〜約1,200℃、約900℃〜約1,100℃、又は約750℃〜約1,150℃の範囲であることが可能である。
【0026】
1つ又は複数の具体例においては、ガス化装置内の開始温度すなわち初期温度が、第2の始動用燃料の自己発火温度を上回るが、炭化水素供給原料のガス化温度を下回る場合には、第2の始動用燃料は、第1の始動用燃料の使用を伴うことなく又は第1の始動用燃料を必要とせずに、ガス化装置に直接的に導入することが可能となる。換言すれば、少なくとも部分的には、第1の状態すなわち初期状態にある場合のガス化装置内の特定の温度及び/又は圧力によっては、ガス化装置は、第2の始動用燃料のみを使用することにより、第1の状態すなわち初期状態から炭化水素供給原料処理状態へと移行され得る。例えば、通常のプロセス条件における作動時にガス化装置に導入される炭化水素供給原料は、中断することが可能となり、ガス化装置内の温度は、ガス化温度未満に低下することが可能となる。そのため、第2の始動用燃料は、温度が第2の温度未満すなわち中間温度未満に下降する前に、ガス化装置に導入され得るようになり、第2の燃焼ガスは、炭化水素供給原料(又は別の炭化水素供給原料)がガス化装置に再導入され得るまで、炭化水素供給原料ガス化温度にガス化装置を維持するために使用され得る。
【0027】
また、第2の始動用燃料の燃焼は、第2の圧力すなわち中間圧力から炭化水素供給原料処理圧力へとガス化装置内の圧力を上昇させるためにも利用され得る。炭化水素供給原料処理圧力は、下は約1,200kPa、約1,300kPa、又は約1,400kPaから、上は約1,700kPa、約2,000kPa、約2,300kPa、又は約2,700kPaまでの範囲であることが可能である。例えば、炭化水素供給原料処理圧力は、約1,400kPa〜約1,800kPa、約1,700kPa〜約2,200kPa、又は約1,850kPa〜約2,450kPaの範囲であることが可能である。第2の圧力/中間圧力及び/又は炭化水素供給原料処理圧力へとガス化装置内の圧力を上昇させるために第1の燃焼ガス及び/又は第2の燃焼ガスを使用することに加えて、又はその代わりに、例えば圧縮窒素、合成ガス、二酸化炭素、又はそれらの任意の組合せなどの、1つ又は複数の圧縮ガスをガス化装置に導入して、ガス化装置内の圧力を上昇させることが可能である。
【0028】
ガス化装置が、炭化水素供給原料処理状態に移行されると、1つ又は複数の炭化水素供給原料は、ガス化装置に導入され、ガス化装置内で少なくとも部分的にガス化されて、ガス化された炭化水素又は合成ガスを生成することが可能となる。また、1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料の少なくとも一部分が、ガス化装置内において燃焼されることにより、第3の燃焼ガスを生成することも可能である。また、1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料の少なくとも一部分が、この第3の燃焼ガスの存在下において蒸気化されることにより、蒸気状炭化水素を生成することも可能である。また、1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料の少なくとも一部分が、ガス化された炭化水素の存在下において分解されることにより、分解炭化水素を生成することも可能である。また、以下においてさらに詳細に論じるように、ガス化装置は、循環微粒子又は循環固体を含むことも可能である。1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料の少なくとも一部分が、これらの微粒子上に堆積されて、炭素含有微粒子又は「コークス化」微粒子を生成することが可能である。微粒子上に堆積される炭素の少なくとも一部分は、ガス化装置内において燃焼されて、第3の燃焼ガスの一部分及び再生微粒子を生成することが可能である。そのため、炭化水素供給原料は、ガス化装置内において、燃焼、蒸気化、分解、ガス化、及び/又は固体上に堆積され得る。1つ又は複数の具体例においては、第3の燃焼ガス、ガス化された炭化水素、蒸気化された炭化水素、及び分解された炭化水素の少なくとも一部分が、高温ガス生成物又は合成ガス生成物を生成するように、炭化水素含有固体から選択的に分解され得る。また、第1の燃焼ガス及び/又は第2の燃焼ガスが存在する場合には、これらは、高温ガス生成物又は高温合成ガス生成物と共に回収され得る。
【0029】
合成ガス生成物は、約60体積%以上の一酸化炭素/水素と、主に二酸化炭素及びメタンを含むさらなる成分とを含むことが可能である。例えば、合成ガス生成物は、約90体積%以上の一酸化炭素/水素、約95体積%以上の一酸化炭素/水素、約97体積%以上の一酸化炭素/水素、又は約99体積%以上の一酸化炭素/水素を含有することが可能である。一実例においては、合成ガス生成物の一酸化炭素含有量は、下は約10体積%、約20体積%、又は約30体積%から、上は約50体積%、約70体積%、又は約85体積%までの範囲であることが可能である。別の実例においては、合成ガス生成物の一酸化炭素含有量は、下は約15体積%、約25体積%、又は約35体積%から、上は約65体積%、約75体積%、又は約85体積%までの範囲であることが可能である。合成ガス生成物の水素含有量は、下は約1体積%、約5体積%、又は約10体積%から、上は約30体積%、約40体積%、又は約50体積%までの範囲であることが可能である。例えば、合成ガス生成物の水素含有量は、約20体積%〜約30体積%の範囲であることが可能である。
【0030】
合成ガス生成物は、約25体積%以下、約20体積%以下、約15体積%以下、約10体積%以下、又は約5体積%以下の、窒素、メタン、二酸化炭素、水又は蒸気、硫化水素、及び塩化水素の組合せを含有することが可能である。合成ガス生成物の二酸化炭素含有量は、約25体積%以下、約20体積%以下、約15体積%以下、約10体積%以下、約5体積%以下、約3体積%以下、約2体積%以下、又は約1体積%以下であることが可能である。合成ガス生成物のメタン含有量は、約15体積%以下、約10体積%以下、約5体積%以下、約3体積%以下、約2体積%以下、又は約1体積%以下であることが可能である。合成ガス生成物の水含有量は、約40体積%以下、約30体積%以下、約25体積%以下、約20体積%以下、約15体積%以下、約10体積%以下、約5体積%以下、約3体積%以下、約2体積%以下、又は約1体積%以下であることが可能である。合成ガス生成物は、窒素非含有であるか、又は例えば約0.5体積%以下の窒素を含有するなど、実質的に窒素非含有であることが可能である。
【0031】
炭化水素供給原料には、ガス、液体、固体、若しくはそれらの任意の組合せであるかにかかわらず、任意の炭素含有材料又は炭素含有材料の組合せが含まれ得る。例えば、炭化水素供給原料には、バイオマス(例えば植物成分及び/又は動物成分及び/又は植物由来成分及び/又は動物由来成分)、石炭(例えば高ナトリウム亜炭及び低ナトリウム亜炭、亜炭、亜瀝青炭、並びに/又は無煙炭)、油頁岩、コークス、タール、アスファルテン、低灰分ポリマー若しくは無灰分ポリマー、炭化水素系ポリマー材料、及び/又は製造過程から導出される副生成物が含まれ得るが、それらに限定されない。炭化水素系ポリマー材料には、例えば熱可塑性プラスチック、エラストマー、ゴム(他のポリオレフィン、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマー、及びそれらの混合物を含む、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンを含む);PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリ・ブレント、酸素を含有するポリ炭化水素;炭化水素ワックスなどの、石油精製所及び石油化学工場からの重質炭化水素スラッジ及び底部生成物、それらの混合物、それらの派生物並びにそれらの組合せが含まれ得る。
【0032】
1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料には、2つ以上の炭素質材料の混合物又は組合せが含まれ得る。1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料には、2つ以上の低灰分ポリマー若しくは無灰分ポリマー、バイオマス由来材料、又は製造過程から導出される副生成物の混合物或いは組合せが含まれ得る。1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料には、カーペット及び/又はプラスチック自動車部品/構成要素(バンパー及びダッシュボードを含む)などの、1つ又は複数の廃棄された消費者製品と組み合わされた1つ又は複数の炭素質材料が含まれ得る。かかる廃棄された消費者製品は、好ましくは、ガス化装置内に適合するサイズに適切に縮小される。1つ又は複数の具体例においては、炭化水素供給原料には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、それらの誘導体、それらの混合物、又はそれらの任意の組合せなどの、1つ又は複数の再生プラスチックが含まれ得る。したがって、このプロセスは、以前に製造された材料の適切な処分に関する規定に対応するのに有用となり得る。
【0033】
炭化水素供給原料は、固体である場合には、下は約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、約150μm、又は約200μmから、上は約350μm、約400μm、約450μm、又は約500μmまでの範囲の平均粒径を有することが可能である。例えば、固体である場合の炭化水素供給原料の平均粒径は、約75μm〜約475μm、約125μm〜約425μm、又は約175μm〜約375μmの範囲であることが可能である。別の実例においては、炭化水素供給原料は、固体である場合には、約300μm以下の平均粒径を有するように細かくされ得る。炭化水素供給原料は、固体である場合には、乾燥供給物としてガス化装置に導入され得るか、又はスラリ若しくは懸濁液としてガス化装置に搬送され得る。スラリ又は懸濁液を形成するための適切な流体には、二酸化炭素、蒸気、水、窒素、空気、合成ガス、又はそれらの任意の組合せが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0034】
ガス化装置への初期炭化水素供給原料の導入速度は、通常の動作速度未満であることが可能である。例えば、炭化水素供給原料の初期導入速度は、通常の動作速度の、下は約1%、約5%、約10%、約15%、又は約20%から、上は約35%、約40%、約50%、約60%、又は約70%の範囲であることが可能である。ガス化装置内の温度が、安定化及び/又は上昇するにつれて、炭化水素供給原料の導入速度は、通常の又は最適な動作速度へと上昇され得る。例えば、炭化水素供給原料導入速度は、約0.5時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、若しくは約5時間又はそれ以上の期間で、初期速度から通常の又は最適な動作速度へと上昇され得る。別の実例においては、ガス化装置への初期炭化水素供給原料導入速度は、通常の動作速度又はほぼ通常の動作速度であることが可能である。
【0035】
ガス化装置が、第1の状態すなわち初期状態から第2の状態すなわち中間状態に移行されると、第1の燃焼ガスの導入を停止することが可能となる。第1の燃焼ガスの導入は、ガス化装置への第2の始動用燃料の導入が開始される前、間、又は後に停止することが可能である。例えば、第1の燃焼ガスの導入を停止する前に、ガス化装置への第2の始動用燃料の導入を開始し、第2の燃料の自己発火を始めさせることが可能である。別の実例においては、第1の燃焼ガスの導入により、第2の始動用燃料の自己発火温度を十分に上回るようにガス化装置内の温度を上昇させ得ることによって、ガス化装置への第1の燃焼ガスの導入を停止することが可能となり、次いで、ガス化装置内の温度が第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させるのに十分な温度に留まった状態において、第2の始動用燃料をガス化装置に導入することが可能となる。
【0036】
ガス化装置が、第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスの組合せ又は第2の燃焼ガスのみのいずれを使用するかにかかわらず、第1の状態すなわち初期状態から炭化水素供給原料処理状態へと移行されると、ガス化装置への第2の始動用燃料の導入を停止することが可能となる。第2の始動用燃料の導入は、ガス化装置への炭化水素供給原料の導入が開始される前、間、又は後に停止することが可能である。例えば、第2の始動用燃料の導入を停止する前に、ガス化装置への炭化水素供給原料の導入を開始し、炭化水素供給原料のガス化、燃焼、蒸気化、分解、及び/又は微粒子上への堆積を開始することが可能である。別の実例においては、ガス化装置への第1の燃焼ガス及び/又は第2の燃焼ガスの導入により、炭化水素供給原料のガス化温度を十分な量だけ上回るようにガス化装置内の温度を上昇させ得ることによって、ガス化装置への第2の始動用燃料の導入を停止することが可能となり、次いで、ガス化装置内の温度が炭化水素供給原料の少なくとも一部分をガス化するのに十分な温度に留まった状態において、炭化水素供給原料をガス化装置に導入することが可能となる。
【0037】
様々なタイプのガス化装置が、第2の燃焼ガス、又は第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスの組合せを使用して、第1の状態すなわち初期状態から炭化水素供給原料ガス化状態に移行され得る。例えば、ガス化装置は、1つ又は複数の循環固体ガス化装置若しくは輸送ガス化装置、1つ又は複数の固定層式ガス化装置、1つ又は複数の流動層式ガス化装置、1つ又は複数の噴流層式ガス化装置、又はそれらの組合せであることが可能であるか、或いはそれらを備えることが可能である。ガス化装置内の微粒子又は固体は、例えば炭化水素供給原料の一部分に対する堆積表面などとしての1つ又は複数の他の目的を果たすが、それに加えて、又はその代わりに、ガス化装置内に微粒子又は固体床が存在することにより、ガス化装置内の保熱及び/又はガス化装置中にわたる熱分布を向上させ得る。
【0038】
微粒子又は固体には、砂、灰、セラミック、石灰石、又はそれらの任意の組合せが含まれ得るが、それらに限定されない。石灰石は、破砕、粉砕、摩砕、粉末化、又は別様に粒径縮小され得る。灰は、任意のタイプの灰又はその混合物を含み得る。例示の灰には、フライ・アッシュ、ガス化装置灰、粗粉灰、微粉灰、又はそれらの任意の組合せが含まれ得るが、それらに限定されない。本明細書においては、「粗粉灰」及び「粗粉灰粒子」という用語は、同義的に使用され、ガス化装置内において生成された、及び下は約35μm、約45μm、約50μm、約75μm、又は約100μmから、上は約450μm、約500μm、約550μm、約600μC、又は約640μmまでの範囲の平均粒径を有する微粒子を指す。例えば、粗粉灰微粒子は、約50μm〜約350μm、約65μm〜約250μm、約40μm〜約200μm、又は約85μm〜約130μmの平均粒径を有することが可能である。本明細書においては、「微粉灰」及び「微粉灰微粒子」という用語は、同義的に使用され、ガス化装置内において生成され、下は約2μm、約5μm、又は約10μmから、上は約75μm、約85μm、又は約95μmまでの範囲の平均粒径を有する微粒子を指す。例えば、微粉灰微粒子は、約5μm〜約30μm、約7μm〜約25μm、又は約10μm〜約20μmの平均粒径を有することが可能である。
【0039】
固定微粒子床については、微粒子は、第1の状態から炭化水素供給原料ガス化状態へのガス化装置の移行の開始前に、ガス化装置内に配置され得る。循環固体ガス化装置又は輸送ガス化装置については、微粒子は、例えば第1の状態すなわち初期状態から最終状態すなわち動作状態へのガス化装置の移行の前、間、及び/又は後になど、任意の所望の時に導入され得る。例えば、微粒子は、ガス化装置への第1の燃焼ガス及び/又は第2の始動用燃料の導入前に、ガス化装置内に導入又は加えることが可能である。別の実例においては、微粒子は、ガス化装置への第1の燃焼ガス及び/又は第2の始動用燃料の導入中に、導入され得る。別の実例においては、微粒子は、第1の燃焼ガス及び/又は第2の始動用燃料がガス化装置に導入された後であるが、炭化水素供給原料の導入前に、導入され得る。別の実例においては、微粒子は、第1の燃焼ガス及び第2の始動用燃料がガス化装置に導入された後であって、且つ炭化水素供給原料の導入が開始された後に導入され得る。別の実例においては、微粒子の少なくとも一部分が、ガス化装置に第1の燃焼ガス及び第2の始動用燃料を導入する前にガス化装置に導入され得る。
【0040】
ガス化装置内の保熱に加えて、微粒子は、上記において論じ説明されたように、ガス化装置への炭化水素供給原料の導入の開始時に生成され得る炭素質材料の堆積用のキャリア又はサポートとなり得る。炭素含有微粒子又は「コークス化」微粒子は、高温ガス又は合成ガス生成物から分離され、ガス化装置内において再循環され得る。ガス化装置において、微粒子上に堆積した炭素又はコークスは、燃焼されて、熱及び再生微粒子を生成することが可能である。微粒子上の炭素を燃焼させることにより生じる熱は、動作温度にガス化装置を維持することを補助し得る。
【0041】
また、1つ又は複数の具体例においては、1つ又は複数の吸収剤が、ガス化装置に導入され得る。吸収剤は、ガス化装置内の気相のナトリウム蒸気などの合成ガスから、1つ又は複数の汚染物質を捕獲することが可能である。吸収剤は、粒子同士が凝集する傾向を低下させるために、ガス化装置の前に又はその内において炭化水素供給原料粒子に対して散布される又は被覆を行うように使用され得る。吸収剤は、約5ミクロン〜約100ミクロン、又は約10ミクロン〜約75ミクロンの平均粒径まで細かくされ得る。例示の吸収剤には、炭素富化灰、石灰石、ドロマイト、及びコークス・ブリーズが含まれ得るが、それらに限定されない。第2の始動用燃料及び/又は炭化水素供給原料から放出される残留硫黄は、第2の始動用燃料及び/又は炭化水素供給原料中の天然カルシウムにより、或いはカルシウム系吸収剤により捕獲されて、硫化カルシウムを形成することが可能である。
【0042】
図面は、1つ又は複数の具体例による、1つ又は複数の炭化水素供給原料をガス化するための例示的なガス化システム100を図示する。このガス化システム100は、単一のガス化装置(120で図示)、又は直列若しくは並列で配置された2つ以上のガス化装置(図示せず)を備えることが可能である。また、ガス化システム100は、1つ又は複数の始動用燃焼器(105で図示)を備えることも可能である。始動用燃焼器105は、ライン101を経由して導入される第1の始動用燃料を燃焼させることにより、ライン107を経由する第1の燃焼ガスを生成することが可能であり、この第1の燃焼ガスは、第1の状態すなわち初期状態から炭化水素供給原料処理状態までガス化装置120を始動又は移行させることを補助することが可能である。ライン107を経由する第1の燃焼ガスは、ライン107及び/又は複数のライン107を経由してガス化装置120内の1つ又は複数の位置に導入され得る点に留意されたい。各ガス化装置120は、1つ又は複数の混合ゾーン又は導入ゾーン(2つを125、130で図示)、1つ又は複数の上昇管ゾーン又はガス化ゾーン135、1つ又は複数の分解器又は分離器(2つを140及び145で図示)、1つ又は複数の立て管150、及び1つ又は複数の輸送ライン(4つを137、141、143及び153で図示)を備えることが可能である。ガス化システム100が、2つ以上のガス化装置120を備える場合には、各ガス化装置120は、相互独立的に構成することが可能であり、又は1つ又は複数の混合ゾーン125、130、上昇管135、分離器140、145及び立て管150の中の任意のものを共有し得るように構成することが可能である。簡略化及び説明を容易にするために、単一の反応器列のコンテクストにおいて、ガス化装置120の具体例をさらに説明する。
【0043】
ライン101を経由する第1の始動用燃料及びライン103を経由する1つ又は複数の酸化剤が、始動用燃焼器105に導入され得ると共に、この第1の始動用燃料は、この始動用燃焼器105内において燃焼されて、ライン107を経由する第1の燃焼ガスを生成し得る。始動用燃焼器105は、任意の燃焼デバイス、燃焼システム、或いは第1の始動用燃料を燃焼させることが可能なデバイス及び/又はシステムの組合せであることが可能であり、或いはそれらを備えることが可能である。例えば、始動用燃焼器105は、酸化剤及び第1の始動用燃料を混合するための混合ゾーンと、第1の始動用燃料/酸化剤混合物を燃焼させるための燃焼ゾーンとを備えることが可能である。始動用燃焼器105は、約4以下、約3以下、又は約2以下のターンダウン比を有することが可能である。始動用燃焼器は、1つ又は複数の燃焼器ノズルを備える耐熱性ライナを施されたチャンバを備えることが可能である。この1つ又は複数の燃焼器ノズルにおいては、例えば蒸気などの噴霧流などを含む液体燃料の混合物が、例えば、このチャンバ内に噴射され、加圧空気流又は他の酸化剤流中において燃焼されて、高温の燃焼生成物流を生じさせることが可能であり、この生成物は、第1の燃焼ガスとしてガス化装置に導入され得る。燃料流及び酸化剤流の制御、点火開始の検出、点火用バーナの制御、及び希釈剤の添加等々のためのシステムが、この始動用燃焼器に備えられ得ると共に、ガス化装置制御システムに連携され得る。
【0044】
ライン107を経由する第1の燃焼ガスは、ガス化装置120の第1の混合ゾーンすなわち導入ゾーン125に導入され得る。第1の燃焼ガスは、第2の混合ゾーン130及び上昇管135を通り、輸送ライン137を経由して第1の分離器140まで流れることが可能である。第1の燃焼ガスからの熱は、ガス化装置120を、及び存在する場合には、ガス化装置120中を循環する流動粒子127を加熱することが可能である。図示しないが、ライン107を経由する第1の燃焼ガスは、第1の混合ゾーン125の代わりに又はそれに追加して、第2の混合ゾーン130に、第1の混合ゾーン125と第2の混合ゾーン130との間に、及び/又は上昇管135に導入することが可能である。
【0045】
第1の燃焼ガス及び微粒子127は、上昇管135から出ることが可能であり、輸送ライン137を経由して第1の分離器140に導入されることが可能であり、この第1の分離器140においては、微粒子127の少なくとも一部分が分離されて、輸送ライン141を経由する第1の分離ガスと、輸送ライン143を経由する分離微粒子127とが生成され得る。1つ又は複数の具体例においては、輸送ライン143を経由する分離微粒子127の全て又は一部分が、立て管150に再循環され得る。1つ又は複数の具体例においては、輸送ライン143内の分離微粒子127の全て又は一部分が、ライン144を経由してガス化装置から除去され得る。ライン144を経由してガス化装置120から微粒子127を除去することを利用することにより、立て管150内の微粒子の高さ及び/又はガス化装置120内の微粒子の総量を制御することが可能となる。輸送ライン141を経由する第1の分離ガスは、第2の分離器145に導入され得るが、この第2の分離器145においては、流動微粒子127の第2の部分が(存在する場合)分離されることにより、ライン147を経由する分離ガス生成物すなわち分離された第1の燃焼ガスと、立て管150に導入され得る分離微粒子とが生成され得る。
【0046】
分離器140及び145は、第1の燃焼ガス、第2の燃焼ガス、ガス化された炭化水素若しくは合成ガス、又は任意の他の流体から、微粒子の少なくとも一部分を分離又は除去することが可能な、任意のデバイス、システム、或いはデバイス及び/又はシステムの組合せであることが可能であり、或いはそれらを備えることが可能である。例示の分離器には、サイクロン、脱塩装置、及び/又はデカンタが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0047】
立て管150内の微粒子127は、輸送ラインすなわち再循環ライン153を経由して上昇管135に再循環され得る。再循環微粒子は、第1の混合ゾーン125に、第2の混合ゾーン130に、又は図示するように第1の混合ゾーン125と第2の混合ゾーン130との間に導入され得る。上記において論じ説明したように、微粒子127は、ライン107を経由してガス化装置120に第1の燃焼ガスを導入する前に、ガス化装置120内に加えられ得るか又は別様に配置され得る。そのため、微粒子127の循環は、ライン107を経由して第1の混合ゾーン125に第1の燃焼ガスを導入する前に開始され得る。別の実例においては、微粒子127の導入及び循環は、ライン107を経由して第1の燃焼ガスが導入されている間及び/又はその後に開始され得る。1つ又は複数の流体導入ライン(3つを142、149、及び152で図示)を経由する1つ又は複数の流体は、輸送ライン143、立て管150、及び再循環ライン153にそれぞれ導入されて、ガス化装置120内において微粒子127を循環させるための動因流体をガス化装置120内に生成することが可能である。ライン142、149及び152を経由して導入される例示的な流体には、窒素などの不活性ガス、再循環合成ガスなどの可燃ガス、それらの混合物、二酸化炭素、又はそれらの任意の組合せが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0048】
ライン107を経由してガス化装置120に導入される第1の燃焼ガスは、第1の温度すなわち初期温度から第2の温度すなわち中間温度まで、ガス化装置120内の温度を上昇させ、及び存在する場合にはガス化装置120内を循環する微粒子127の温度を上昇させ得る。ガス化装置120が、第1の状態すなわち初期状態から移行すると、ライン109を経由する第2の始動用燃料は、ガス化装置120に導入され得る。図示するように、ライン109を経由する第2の始動用燃料は、上昇管135に直接的に導入され得る。例えば、第2の始動用燃料は、1つ又は複数のノズル、或いは任意の他の注入デバイス、又はガス化装置120に配設される注入デバイスの組合せを通して導入され得る。別の実例においては、ライン109を経由する第2の始動用燃料は、1つ又は複数のノズル、或いは他の注入デバイス、又はそれらの組合せを通して、上昇管135、第2の混合ゾーン130、及び/又は第1の混合ゾーン125に導入され得る。好ましくは、第2の始動用燃料は、ライン107を経由する第1の燃焼ガスの下流においてガス化装置に導入される。
【0049】
第2の始動用燃料の少なくとも一部分は、例えば上昇管135などのガス化装置内において燃焼して、第2の燃焼ガス及び熱を生じさせることが可能である。この熱は、炭化水素供給原料動作温度へとガス化装置120内の温度をさらに上昇させるために利用され得る。第2の始動用燃料を燃焼させるために使用可能なガス化装置120内の酸化剤の量は、ライン117を経由して第1の混合ゾーンに導入される、ライン109を経由する第2の始動用燃料と共にライン113を経由して第2の混合ゾーンに導入される、及び/又はライン107を経由する第1の燃焼ガスの一成分として導入される、1つ又は複数の酸化剤を導入する及び/又は減少させることによって制御することが可能である。
【0050】
第2の燃焼ガス、並びに存在する場合には第1の燃焼ガス及び/又は循環微粒子127は、輸送ライン137を経由して第1の分離器に導入されることにより、輸送ライン143を経由する分離微粒子と、輸送ライン141を経由する第2の燃焼ガス及び第1の燃焼ガスとを生成し得る。第2の燃焼ガス、及び存在する場合には第1の燃焼ガスは、輸送ライン141を経由して第2の分離器145に導入され得るが、この第2の分離器においては、任意の残留微粒子127の少なくとも一部分が、分離され、立て管150に戻され得ると共に、第2の燃焼ガス及び第1の燃焼ガスが、ライン147を経由して回収される。
【0051】
ライン107を経由しての第1の燃焼ガスの導入は、ライン109を経由する第2の始動用燃料の導入が開始される前、その時、又はその後に、停止され得る。ライン107を経由しての第1の燃焼ガスの導入は、例えば約1分未満などの短期間の間に、又は例えば数分、数十分、若しくは数時間などの長期間の間に徐々に、停止され得る。そのため、ライン107を経由した第1の混合ゾーン125への第1の燃焼ガスの導入の停止は、短期間の間に行うことが可能であり、又は全速の導入速度からゼロへと徐々に移行させることが可能である。
【0052】
ガス化装置120が、第2の状態すなわち中間状態から炭化水素供給原料処理状態へと移行すると、ライン111を経由する炭化水素供給原料は、ガス化装置120に導入され得る。図示するように、ライン111を経由する炭化水素供給原料は、第2の混合ゾーン130に導入され得る。別の実例においては、炭化水素供給原料111は、第1の混合ゾーン125、第2の混合ゾーン130、及び/又は上昇管135に導入され得る。炭化水素供給原料の一部分を燃焼させるために使用可能なガス化装置120内の酸化剤の量は、ライン117を経由して第1の混合ゾーンに導入される、ライン109を経由する第2の始動用燃料と共にライン113を経由して第2の混合ゾーンに導入される、及び/又はライン107を経由する第1の燃焼ガスの一成分として導入される、1つ又は複数の酸化剤の量を調節することによって、制御することが可能である。上記において論じ説明したように、ライン111を経由して導入される炭化水素供給原料の少なくとも一部分は、ガス化装置120内においてガス化され得る。また、1つ又は複数の具体例においては、ライン111を経由して導入される炭化水素供給原料の少なくとも一部分は、燃焼、蒸気化、分解、及び/又は循環微粒子127上に堆積されることにより、第3の燃焼ガス、蒸気化された炭化水素、分解された炭化水素、及び/又は炭素含有微粒子を生成することも可能である。高温のガス生成物又は合成ガスは、第1の分離器140及び第2の分離器145を経由してこれらの微粒子(存在する場合)から分離され、ライン147を経由する高温のガス生成物又は合成ガスとして回収され得る。
【0053】
分離された炭素含有微粒子の少なくとも一部分は、輸送ライン143を経由して立て管150へと再循環され、次いで輸送ライン153を経由して第1の混合ゾーン125、第2の混合ゾーン130、及び/又は上昇管135まで再循環されて、そこで、これらの微粒子上に堆積された炭素の少なくとも一部分が、燃焼されることにより熱を発生させ得る。
【0054】
ライン109を経由しての第2の始動用燃料の導入は、ライン111を経由する炭化水素供給原料の導入が開始される前、その時、又はその後に停止され得る。ライン109を経由しての第2の始動用燃料の導入は、例えば約1分未満などの短期間の間に、又は例えば数分、数十分、若しくは数時間などの長期間の間に徐々に停止され得る。そのため、ライン109を経由した上昇管135への第2の始動用燃料の導入の停止は、短期間の間に行うことが可能であり、又は全速の導入速度からゼロへと徐々に移行させることが可能である。
【0055】
図示しないが、1つ又は複数の弁或いは他の流れ制限デバイスが、ライン103、117、及び113内の酸化剤、ライン101内の第1の始動用燃料、ライン109内の第2の始動用燃料、ライン111内の炭化水素供給原料、ライン107内の第1の燃焼ガス、ライン147内の燃焼ガス又は合成ガス生成物、ライン142、149及び152内の流体、並びにライン144内の微粒子の量を制御又は調節するために使用され得る。
【0056】
任意の適切なタイプの循環固体ガス化装置が、第1の燃焼ガス及び第2の燃焼ガスの組合せ、及び/又は第2の燃焼ガスのみを使用することにより、第1の状態すなわち初期状態から炭化水素供給原料処理状態に移行され得る。適切な循環固体又は輸送ガス化装置は、米国特許第7,722,690号、米国特許出願第2008/0081844号、米国特許出願第2008/0155899号、米国特許出願第2009/0188165号、米国特許出願第2010/0011664号、及び米国特許出願第2010/0132257号において論じられ説明されるようなものが可能である。
【0057】
本明細書において説明される具体例は、以下の段落の中の任意の1つ又は複数のものにさらに関する。
【0058】
段落1.ガス化装置を作動させる方法において、
第1の始動用燃料を燃焼させることにより第1の燃焼ガスを生成するステップと、
ガス化装置に第1の燃焼ガスを導入することにより、開始温度から第2の始動用燃料の少なくとも自己発火温度までガス化装置内の温度を上昇させるステップと、
ガス化装置内の温度が第2の始動用燃料の少なくとも自己発火温度となった後に、ガス化装置に第2の始動用燃料を直接的に導入するステップと、
ガス化装置内にて第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させることより第2の燃焼ガスを生成するステップであって、第2の燃焼ガスにより、炭化水素供給原料のガス化温度までガス化装置内の温度を上昇させるのに十分な熱が生じる、ステップと、
ガス化装置に炭化水素供給原料を導入するステップと、
ガス化装置内にて炭化水素供給原料の少なくとも一部分をガス化することにより合成ガスを生成するステップとを含む、ガス化装置を作動させる方法。
【0059】
段落2.第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させるために十分な酸化剤の量をガス化装置内にて維持するステップであって、第2の燃焼ガス中の酸化剤の濃度を約1モル%未満に維持する、ステップをさらに含む、段落1に記載の方法。
【0060】
段落3.炭化水素供給原料の一部分を燃焼させるために十分な酸化剤の量をガス化装置内において維持するステップであって、合成ガス中の酸化剤の濃度を、約1モル%未満に維持するステップをさらに含む、段落1又は2に記載の方法。
【0061】
段落4.第2の始動用燃料を、第1の燃焼ガス比較して下流側からガス化装置に導入する、段落1から3までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0062】
段落5.ガス化装置内に微粒子を循環させるステップをさらに含む、段落1から4までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0063】
段落6.ガス化装置に第1の燃焼ガスを導入する前にガス化装置内に微粒子を循環させるステップであって、微粒子の循環を、第2の始動用燃料の導入の間、及び炭化水素供給原料の導入の間維持するステップをさらに含む、段落1から5までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0064】
段落7.微粒子は、砂、灰、セラミック、石灰石、又はそれらの任意の組合せを含む、段落5又は6に記載の方法。
【0065】
段落8.第2の始動用燃料の導入が開始された後に第1の燃焼ガスの導入を停止するステップをさらに含む、段落1から7までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0066】
段落9.炭化水素供給原料の導入が開始された後に第2の始動用燃料の導入を停止するステップをさらに含む、段落1から8までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0067】
段落10.第2の始動用燃料の自己発火温度は、約200℃〜約560℃の範囲であり、炭化水素供給原料のガス化温度は、約700℃以上である、段落1から9までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0068】
段落11.第1の燃焼ガスを、約3以下のターンダウン比を有する始動用燃焼器内で生成する、段落1から10までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0069】
段落12.第2の始動用燃料は、1個〜約25個の炭素原子を有する1つ又は複数の炭化水素を含む、段落1から11までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0070】
段落13.第2の始動用燃料が、約305℃〜約325℃の範囲の自己発火温度を有するディーゼルである、段落1から12までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0071】
段落14.ガス化装置を動作させる方法において、
ガス化装置内に微粒子を循環させるステップと、
ガス化装置に第1の燃焼ガスを導入することにより初期温度から中間温度にガス化装置内の温度を上昇させるステップであって、第1の燃焼ガスは、第1の始動用燃料を燃焼させることにより生成され、中間温度は、第2の始動用燃料が自己発火するのに十分な温度である、ステップと、
ガス化装置が中間温度になった後にガス化装置に第2の始動用燃料を直接的に導入するステップであって、第2の始動用燃料w、第1の燃焼ガスよりも相対的に下流側からガス化装置に導入する、ステップと、
ガス化装置内で第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させることにより、動作温度にまでガス化装置内の温度を上昇させるステップであって、動作温度は、炭化水素供給原料をガス化するのに十分な温度である、ステップと、
第2の始動用燃料の導入を開始した後に第1の燃焼ガスの導入を停止するステップと、
ガス化装置が動作温度になった後にガス化装置に炭化水素供給原料を導入するステップと、
ガス化装置内で炭化水素供給原料の少なくとも一部分をガス化することにより合成ガスを生成するステップと、
炭化水素供給原料の導入を開始した後に第2の始動用燃料の導入を停止するステップとを含む、方法。
【0072】
段落15.中間温度は、約200℃〜約560℃であり、動作温度は約700℃以上である、段落14に記載の方法。
【0073】
段落16.第2の始動用燃料の少なくとも一部分を燃焼させるために十分な酸化剤の量をガス化装置内にて維持するステップであって、酸化剤を、
第1の燃焼ガスの一成分として、又は
直接的に、又は
第2の始動用燃料の一成分として、又は
1つ又は複数の不活性ガスと組み合わされて、又は
それらの任意の組合せにより、
ガス化装置に導入し、第2の燃焼ガス中の酸化剤の濃度を約1モル%未満に維持するステップをさらに含む、段落14又は15に記載の方法。
【0074】
段落17.ガス化装置内の温度が初期温度から動作温度まで上昇される際に、初期圧力から動作圧力までガス化装置内の圧力を上昇させるステップをさらに含む、段落14から16までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0075】
段落18.第1の燃焼ガスを、約3以下のターンダウン比を有する始動用燃焼器内にて生成する、段落14から17までのいずれか1つの段落に記載の方法。
【0076】
段落19.ガス化装置と、
第1の始動用燃料を燃焼させることにより第1の燃焼ガスを生成するための始動用燃焼器と、
始動用燃焼器の燃焼ガス排出口及びガス化装置に第1の燃焼ガスを導入するためのガス化装置の燃焼ガス注入口と流体連通状態にある輸送ラインと、
ガス化装置上に配置され、ガス化装置に第2の始動用燃料を導入するように適合化された、第2の始動用燃料ノズルとを備える、炭化水素供給原料をガス化するシステム。
【0077】
段落20.第2の始動用燃料ノズルは、ガス化装置の燃焼ガス注入口の下流側にてガス化装置に配置される、段落19に記載のシステム。
【0078】
いくつかの具体例及び構成を、一連の上限値及び一連の下限値を使用して説明した。別途示されない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲が予期されるものとして認識されたい。ある下限、上限、及び範囲が、以下の1つ又は複数の請求項に示される。全ての数値は、示唆される値の「近似値」であり、当業者により予想される実験誤差及びばらつきが考慮される。
【0079】
上記においては様々な用語を定義した。上記において定義されていない請求項で使用される用語は、少なくとも1つの公開刊行物又は特許に反映されるような、当業者がその用語に対して与えてきた最大限の広さの定義を与えられるべきである。さらに、本出願に引用した全ての特許、試験手順、及び他の文献は、それらの開示が本出願と矛盾しない限り、及びその援用が許可されているあらゆる法域で、完全に援用する。
【0080】
以上に記載は、本発明の具体例に関するものであるが、本発明の基本範囲から逸脱することなく、本発明の他の具体例が案出され得る。その範囲は、以下の特許請求の範囲により決定される。
図1