(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147813
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】射出装置の駆動装置のフレーム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
B29C45/17
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-131929(P2015-131929)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-13348(P2017-13348A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】松崎 孝治
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−111020(JP,A)
【文献】
特開2004−322321(JP,A)
【文献】
特開2003−291189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダとスクリュとからなる射出装置の駆動装置のフレームであって、前記フレームはフレーム本体と射出プレートとから構成され、
前記フレーム本体は、前プレート部と、後プレート部と、前記前プレート部と前記後プレート部の間に位置する枠体部と、前記前プレート部と前記枠体部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第1の接続部と、前記枠体部と前記後プレート部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第2の接続部とを備え、少なくとも前記前プレート部と前記後プレート部と前記枠体部と一対の前記第1の接続部と一対の前記第2の接続部は単一の部材から各部が形成されており、
一対の前記第1の接続部には一対のリニアガイドが設けられ、前記射出プレートが前記リニアガイドに案内されてスライドするようになっており、
前記加熱シリンダが前プレート部に固定されていると共に前記スクリュの後端部が前記射出プレートの前面側に回転可能に支持され、前記射出プレートの後面側と前記後プレートとの間に設けられている所定の軸駆動機構を駆動すると前記射出プレートと共に前記スクリュが軸方向に駆動されるようになっていることを特徴とする射出装置の駆動装置のフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載のフレームにおいて、前記フレーム本体は鋳造により得られた鋳造品から切削加工により形成されていることを特徴とする射出装置の駆動装置のフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の射出装置の駆動装置が取付けられるフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型を型締めする型締装置、型締めされた金型に射出材料を射出する射出装置、金型から成形品を突き出す突出装置等から構成されている。射出装置は加熱シリンダ、該加熱シリンダ内で軸方向と回転方向とに駆動可能なスクリュ等から構成されている。
【0003】
射出装置はスクリュを駆動する駆動装置を備え、該駆動装置のフレームに加熱シリンダとスクリュとが取付けられている。
図5には従来の一般的な駆動装置のフレーム60が示されているが、フレーム60は、フレーム本体61と、フレーム本体61に対してスライドするようになっている射出プレート62とからなる。フレーム本体61は複数の部材からなり、加熱シリンダが取付けられる前プレート64と、後プレート66と、前プレート64と後プレート66とを固定的に接続する接続部材とから構成されている。接続部材は、複数本の、例えば4本の連結バー67、67、…から構成され、前プレート64と後プレート66は連結バー67、67、…によってボルト等の締結手段によって固定されている。フレーム本体61は所定の取付台に取付けられているが、この取付台には射出プレート62をガイドするリニアガイド68、68も設けられている。射出プレート62はこのリニアガイド68、68にガイドされて、前プレート64と後プレート66の間をスライド自在に設けられている。スクリュは、このような射出プレート62に、その後端部が回転自在に取付けられるようになっており、スクリュを回転する回転駆動機構も図には示されていないが射出プレート62に設けられている。また同様に図には示されていないが、スクリュを軸方向に駆動する軸駆動機構は、後プレート66と射出プレート62の間に設けられている。従って軸駆動機構を駆動すると、射出プレート62に設けられているスクリュが軸方向に駆動されることになる。
【0004】
従来のフレームには、リニアガイドが設けられていないものもあり、そのようなフレームにおいては射出プレートが、4本の連結バーにガイドされるようになっている。具体的に説明すると、このようなフレームにおいては、射出プレートが比較的横幅が広く形成されていて、射出プレートの上下の側部近傍に4個のガイド穴が空けられている。これらの4個のガイド穴にブッシュを介して連結バーが挿通され、射出プレートが連結バーに案内されて滑らかにスライドするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5401079号公報
【0006】
射出装置の駆動装置のフレームについては、特許文献によって色々と提案されている。例えば特許文献1には、中間プレートすなわち射出プレートをガイドするリニアガイドの取付け位置に特徴を有するフレームが記載されている。特許文献1に記載の射出装置の駆動装置のフレーム70は、
図6の(ア)に示されているように、フレーム本体71と射出プレート72とから構成されており、フレーム本体71は、加熱シリンダが取付けられる前壁すなわち前プレート74と、スクリュの軸駆動装置が設けられる後壁すなわち後プレート75と、前プレート74と後プレート75とを接続する2本の接続部材77、77とから構成されている。特許文献1に記載のフレーム70は、これらの接続部材77、77の取付け位置に特徴があり、前プレート74と後プレート75の側方に設けられている。つまり側方部材77、77になっている。射出プレート72をガイドするリニアガイド79、79は、これらの側方部材77、77の上面に設けられ、射出プレート72がリニアガイド79、79に沿ってスライドするようになっている。射出プレート72には、図示されていないスクリュがその後端部において回転可能に取付けられていると共に、同様に図示されていないが該スクリュの回転駆動機構がその上部に設けられている。このように構成されているので、射出プレート72に対して、スクリュと回転駆動機構は、2本のリニアガイド79、79が構成する水平面を考えたとき、水平面の下側と上側とに位置するように設けられていることになる。これによって特許文献1に記載のフレーム70は、軸駆動装置を駆動してスクリュを軸方向に駆動するときに、射出フレーム72をスムーズにリニアガイド79、79上をスライドさせることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示されている従来のフレームも、射出プレートが連結バーにガイドされるようになっている従来のフレームも、そして特許文献1に記載のフレーム70も、それぞれに優れた点があるが、いずれにも解決すべき課題が見受けられる。まず、これは全てのフレームについて共通している課題であるが、これらのフレームのフレーム本体は、複数の部材から組立てによって形成されている点に問題が見受けられる。組立てはボルト等によって実施されているが、ボルトは右回りで締め付けるようになっている。そうすると前プレートと後プレートと接続部材とを組立てると、
図5において符号69の矢印で示されているようにフレーム本体に右回りの捻れが生じ易くなる。捻れは射出装置の性能を低下させてしまうので、捻れが生じないように組立てる必要があるが、捻れを完全に無くすことは実質的に不可能であるし、捻れが少なくなるように精度良く組立てるには熟練を要し製品のコストが大きくなってしまう。次に個別のフレームについて検討すると、
図5に示されている従来のフレームについては、リニアガイド68、68をフレーム本体61とは独立して取付台に取付けなければならない。つまりリニアガイド68、68とフレーム本体61は別々の部材になっている。そうするとこれらの平行度が正確になるように取付ける必要があり、組立てコストが大きくなってしまう。射出プレートが連結バーにガイドされるようになっている従来のフレームを検討すると、このフレームにおいてはブッシュが摩耗したときに問題がある。
ブッシュは摺動部材であるので長期の使用による摩耗は避けられないが、ブッシュが摩耗するとその分だけ射出プレートが下がってくる。そうするとスクリュとシリンダの間でカジリが発生してしまう。また、経年変化によりフレームと射出プレートとの平行度が狂ってくる場合もあり、この場合もスクリュとシリンダのカジリの原因になる。また組立における捻れを完全に無くすことは困難であるので、同一の機種であっても製品毎に摺動摩擦抵抗に差が出てしまう。あるいは同一の製品であっても計量ストローク中において摺動摩擦抵抗の大きさが一様でない場合もある。そうすると計量する溶融樹脂密度にバラツキが生じて成形品の品質を低下させる。特許文献1に記載のフレーム70においては側方部材77、77は2本だけでありフレーム本体71を構成する部品数は少ない。従って組立てによる捻れは比較的小さくすることが容易である。またリニアガイド79、79は側方部材77、77に設けられているので、フレーム本体71との平行度は容易に得られる。従って特許文献1に記載のフレーム70は優れていると言えるが、問題もある。特許文献1に記載のフレーム70も、従来のフレームと同様にスクリュを軸方向に駆動するときに、
図6の(イ)に示されているように前プレート74と後プレート75とにおいて、その中心部近傍で同じ大きさで向きが反対の荷重81、81が作用する。前後プレート74、75には、接続部材77、77から荷重81、81の1/2に相当する引っぱり荷重86、86、…を受け、荷重81と引っぱり荷重86、86の作用点が離間していることによって、前後プレート74、75には曲げモーメントが作用する。前後プレート74、75と接続部材77、77の接続部分は一体的に拘束されてモーメントが伝達されるので、接続部材77、77の両端部には曲げモーメント82、82が作用する。側方部材77、77には実質的に他の荷重は作用しないから、側方部材77、77は曲げモーメント82、82によっていわゆる純粋曲げに近い状態になる。そうすると側方部材77、77は、符号84の点線で示されているように変形してしまう。仮に側方部材77、77の断面係数が長さ方向において一様であれば、最大のたわみは側方部材77、77の中央部近傍になるが、たわみ量は曲げモーメントによる変形の長さ方向の積算量が関係し、この側方部材77、77においては長さ方向に実質的に一定の曲げモーメントが作用するので、たわみ量は大きい。このようにたわみ量が大きくなるので、側方部材77、77が変形するとリニアガイド79、79も変形して射出プレート72を滑らかにスライドできなくなる。一応特許文献1に記載のフレーム70においては、リニアガイド79、79の側方部材77、77への取付けは、その両端の2カ所においてのみボルトによって取付けているので、リニアガイド79、79は側方部材77、77の変形の影響を受け難くなるように考慮されてはいる。しかしながら完全に変形の影響を受けないようにするにはボルトによって取付けるときに遊びを確保して緩やかに取付ける必要があり、ガタの原因になり、射出プレート72のスライドに悪影響を与える可能性がある。
【0008】
本発明は、上記したような問題点を解決した、射出装置の駆動装置のフレームを提供することを目的としており、具体的には、組立てによる捻れの発生の問題がなく、ブッシュ等の摩耗の問題もなく、製造のコストが小さく、スクリュを軸方向に駆動するときに滑らかに射出プレートをスライドさせることができる、射出装置の駆動装置のフレームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本発明の目的を達成するために、射出装置の駆動装置のフレームを、単一の部材から形成されたフレーム本体と、射出プレートとから構成する。フレーム本体は、加熱シリンダが固定される前プレート部と、スクリュを軸方向に駆動する軸駆動機構が設けられる後プレート部と、前プレート部と後プレート部の間に位置する枠体部と、前プレート部と枠体部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第1の接続部と、枠体部と後プレート部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第2の接続部とを備える。そして第1の接続部にはリニアガイドを設け、射出プレートがスライドするようにする。
【0010】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、加熱シリンダとスクリュとからなる射出装置の駆動装置のフレームであって、前記フレームはフレーム本体と射出プレートとから構成され、前記フレーム本体は、前プレート部と、後プレート部と、前記前プレート部と前記後プレート部の間に位置する枠体部と、前記前プレート部と前記枠体部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第1の接続部と、前記枠体部と前記後プレート部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第2の接続部とを備え、少なくとも前記前プレート部と前記後プレート部と前記枠体部と一対の前記第1の接続部と一対の前記第2の接続部は単一の部材から各部が形成されており、一対の前記第1の接続部には一対のリニアガイドが設けられ、前記射出プレート
が前記リニアガイドに案内されてスライドするようになって
おり、前記加熱シリンダが前プレート部に固定されていると共に前記スクリュの後端部が前記射出プレートの前面側に回転可能に支持され、前記射出プレートの後面側と前記後プレートとの間に設けられている所定の軸駆動機構を駆動すると前記射出プレートと共に前記スクリュが軸方向に駆動されるようになっていることを特徴とする射出装置の駆動装置のフレームとして構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフレームにおいて、前記フレーム本体は鋳造により得られた鋳造品から切削加工により形成されていることを特徴とする射出装置の駆動装置のフレームとして構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、加熱シリンダとスクリュとからなる射出装置の駆動装置のフレームであって、フレームはフレーム本体と、射出プレートとから構成されている。そしてフレーム本体は、前プレート部と、後プレート部と、前プレート部と後プレート部の間に位置する枠体部と、前プレート部と枠体部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第1の接続部と、枠体部と後プレート部とをそれぞれの左端と右端において接続する一対の第2の接続部とを備え、少なくとも前プレート部と後プレート部と枠体部と一対の第1の接続部と一対の第2の接続部は単一の部材から各部が形成されている。つまり本発明はフレーム本体の主要な各部を単一の部材からなるように形成されている。そうするとフレーム本体は、複数の部材からボルト等によって組立て加工をする必要がないので、組立時に発生するような捻れが生じない。つまり精度良くフレーム本体を製造することができ、製造コストが小さくなる。そして本発明によると、一対の第1の接続部には一対のリニアガイドが設けられ、射出プレートはリニアガイドに案内されてスライドするようになっている。このように構成されているのでリニアガイドとフレーム本体とは一体的になっており、これらの平行度を調整する必要がない。そして、以下の実施の形態の説明において詳しく説明するように、フレーム本体は枠体部が設けられているので第1の接続部は変形しにくい。従ってリニアガイドも変形し難くなっており、スクリュを軸方向に駆動するときに射出プレートとスクリュとは滑らかにスライドすることが保証される。またブッシュ等の部材が設けられていないので摩耗の心配もない。他の発明によると、フレーム本体は鋳造により得られた鋳造品から切削加工により形成されている。このように加工するようにすると、さらに製造コストを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る射出装置の駆動装置のフレームを示す図で、その(ア)はフレームの斜視図、その(イ)はフレームの上面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る射出装置の駆動装置のフレームの作用を模式的に示す、フレームの上面図である。
【
図3】第2の実施の形態に係る射出装置の駆動装置のフレームを示す図で、その(ア)はフレームの斜視図、その(イ)はフレームの上面図である。
【
図4】第2の実施の形態に係る射出装置の駆動装置のフレームの作用を模式的に示す、フレームの上面図である。
【
図5】従来の射出装置の駆動装置のフレームを示す斜視図である。
【
図6】従来の射出装置の駆動装置の他のフレームを示す図で、その(ア)はフレームの斜視図、その(イ)はフレームの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るフレーム1は、射出成形機の射出装置の駆動装置が設けられるフレームとして構成されている。フレーム1は、
図1の(ア)に示されているように、フレーム本体2と、このフレーム本体2に対してスライドされる射出プレート3とから構成されている。
【0014】
本実施の形態に係るフレーム1には本発明に特有の特徴がいくつかあるが、第1の特徴は、フレーム本体2が単一の部材から構成されている点である。フレーム本体2の形状については次に詳しく説明するが、本実施の形態においてフレーム本体2は、鋳造により大まかな形状の鋳造品を得、この鋳造品を切削加工等の機械加工を施して製造されている。つまりフレーム本体2は、複数の部材から一体的に組立てられていない点に特徴がある。なお、フレーム本体2は鋳造品を切削加工して製造するようにすることが、最も製造コストが小さく、かつ容易に精度の高い製品を得る方法であると考えられるが、他の方法で製造してもよい。例えば、複数の部材を溶接により溶着して一体化した後に切削加工等の機械加工を施してフレーム本体2を得るようにしてもよい。このように複数の部材から溶接するような場合であっても、溶接により一体化されたらその後は単一の部材から構成されていると見なすことができる。つまりフレーム本体2は単一の部材から構成されていると言うことができる。
【0015】
フレーム本体2の形状を説明する。フレーム本体2は、射出装置の加熱シリンダ31が固定される前プレート部6と、スクリュを軸方向に駆動するためのボールねじ機構等からなる軸駆動機構32が設けられる後プレート部7と、前プレート部6と後プレート部7の間に位置する枠体部9と、前プレート部6と枠体部9とをそれぞれの左端と右端において互いに接続する一対の第1の接続部11、11と、枠体部9と後プレート部7とをそれぞれの左端と右端において互いに接続する一対の第2の接続部12、12とから構成され、これらの各部が既に説明したように単一の部材からなるように形成されている。加熱シリンダ31、軸駆動機構32は
図1の(ア)には示されていないが、
図1の(イ)においてこれらが取付けられた状態が二点鎖線で示されている。本実施の形態において第2の接続部12、12は、
図1の(ア)に示されているように、後プレート部7に接続される部分が二股に形成され、枠体部9に接続されている部分は1本に形成されている。しかしながらこのような形状に技術的な意義は特になく、第2の接続部12、12が二股に形成されないで、それぞれ2本から構成されていても、あるいはそれぞれ1本から構成されていてもよい。前プレート部6には加熱シリンダ31が取付けられる大径の穴15と、加熱シリンダ31をボルトによって固定するための取付け穴13、13、…とが開けられている。枠体部9は、軸駆動機構32が入れられるように内部が所定の大きさでくり抜かれている。そして後プレート部7は、
図1において簡略的に描かれているが、所定の穴16が開けられて軸駆動機構32の後端部が貫通するようになっていると共に、軸駆動機構32が軸方向への移動が規制された状態で回転自在に後プレート部7に固定されるようになっている。このように構成されているフレーム本体2において、一対のリニアガイド19、19が第1の接続部11、11の上面に固定されている。これらのリニアガイド19、19によって、射出プレート3が軸方向にスライドされるようになっている。
【0016】
射出プレート3は、その両端部にリニアガイド19、19上をスライドするスライダー部21、21を備えている。これによって射出プレート3はリニアガイド19、19上を滑らかにスライドされることになる。射出プレート3は、
図1の(イ)に示されているように、前面側にはスクリュ33の後端部が回転可能に支持されるようになっており、後面側には軸駆動機構32の先端部が接続されている。従って軸駆動機構32を駆動すると射出プレート3が軸方向に駆動され、それによってスクリュ33が軸方向に駆動されることになる。
【0017】
本実施の形態に係る射出装置の駆動装置のフレーム1の作用を説明する。加熱シリンダ31においてスクリュ33の先端に射出材料を計量する。この状態で軸駆動機構32を駆動して射出工程を実施すると、
図2に示されているように、軸駆動機構32が射出プレート3を軸方向に押し出してスクリュ33が軸方向に駆動される。そうすると後プレート部7にはスクリュ33を駆動するための反力としての荷重41が作用する。また加熱シリンダ31にも射出材料の圧力が作用するので、前プレート部6には荷重41と同じ大きさで向きが反対の荷重42が作用する。これらの荷重41、42の作用点は前、後プレート部6、7の中央である。これに対して、前、後プレート部6、7は、第1、2の接続部11、12、…から荷重41、42の1/2の大きさの引っ張り方向の荷重43、43’、…を受けるが荷重41、42との作用線がズレいているので、モーメントが作用して前、後プレート部6、7は点線によって示されているようにわずかに変形する。そうすると、第1、2の接続部11、12、…には、前、後プレート部6、7と固定的に接続されている一方の端部においてモーメント44、44’、…が作用する。ところで第1、2の接続部11、12、…の他方の端部は枠体部9に接続されていて、この部分には引っ張り荷重43、43’、…と同じ大きさの引っ張り荷重45、45’、…が作用する。引っ張り荷重45、45’は、同一作用線上において作用するのでこの部分において引っ張り荷重45、45’に基づくモーメントは発生しない。しかしながら第1、2の接続部11、12、…の他方の端部は、枠体部9と一体的に形成されて変形が拘束されているので、この部分においてたわみが生じないように若干の大きさのモーメント46、46’が発生する。第1、2の接続部11、12、…はこれらのモーメント46、46’、…、によって変形することになる。そこでリニアガイド19、19が設けられている第1の接続部11、11における変形の影響について検討する。第1の接続部11、11を考えると、モーメント44、44と、モーメント46、46により第1の接続部11、11は点線で示されているように変形する。しかしながら、モーメント44、44と、モーメント46、46は反対向きになっているので、変形に寄与する曲げモーメントが打ち消されるような関係になっている。前記したようにモーメント46、46は若干の大きさであり、モーメント44、44の方が大きいので完全に打ち消し合うことはできないので、第1の接続部11、11はわずかに変形するが、変形量は無視できる程小さい。あるいは次のように説明することもできる。第1の接続部11、11において長さ方向の曲げモーメントの変化、つまりB.M.Dを考えると、一方の端部においてはその大きさがモーメント44の大きさで正の向き、他方の端部においてはその大きさがモーメント46の大きさで負の向きになり、長さ方向で一様に曲げモーメントが変化している。変形の曲率に影響するのは曲げモーメントであり、最大のたわみ量は変形の長さ方向の積算値に関係する。このことを考慮すると、曲げモーメントが第1の接続部11、11において一方の端部から他方の端部に向かって減少し、正の大きさから負の大きさに変化するようになっているので、積算量は小さく、最大のたわみ量は十分に小さくなる。つまり、本実施の形態に係るフレーム1においては、実質的に第1の接続部11、11のたわみ量は無視することができる。従って、本実施の形態に係るフレーム1においてはリニアガイド19、19は実質的に変形しないことが保証される。本実施の形態に係るフレーム1は、射出工程において荷重41、42が作用してもリニアガイド19、19はほとんど変形しないので、射出プレート3は滑らかにスライドすることになる。
【0018】
本実施の形態に係るフレーム1は色々な変形が可能であるが、
図3には変形された第2の実施の形態に係るフレーム1’が示されている。前実施の形態と同様の部材については同じ符号を付して説明を省略する。第2の実施の形態に係るフレーム1’は、フレーム本体2’の第2の接続部12’、12’が第1の実施の形態に係るフレーム1と相違している。この第2の接続部12’、12’は、
図3の(イ)に示されているように、第1の接続部11、11より若干外側になるように配置されている。つまり一対の第2の接続部12’、12’の間隔は、一対の第1の接続部11、11の間隔より広い。このような第2の実施の形態に係るフレーム1’も、第1の接続部11、11の変形を抑制してリニアガイド19、19が変形し難いようになっているが、前実施の形態に比してさらに変形が抑制されている。
図4により簡単に説明するが、前実施の形態において作用した荷重、モーメントについては同じ符号を付して説明を省略する。第2の実施の形態においては、第1、2の接続部11、12’、…の他方の端部において作用する引っ張り荷重45、45’、…は、作用線が一致していない。これによって枠体部9にはモーメントが作用する。このモーメントにより、第1の接続部11、11には符号49、49で示されているモーメントが作用し、第2の接続部12’、12’には符号48、48で示されているモーメントが作用することになる。第2の接続部12’、12’においてはモーメント44’、44’とモーメント48、48は同じ向きなので、互いに打ち消し合うことはなく曲げモーメントによるたわみ量は点線で示されているように大きくなる。しかしながら第1の接続部11、11に関してはモーメント44、44とモーメント49、49は、互いに逆向きになっている。またモーメント49、49は比較的大きい。従って第1の接続部11、11においては、モーメント44、44とモーメント49、49による変形は効率的に打ち消し合うことになり、第1の接続部11、11は点線で示されているようにわずかに変形するだけになる。すなわち、たわみ量はさらに小さく、リニアガイド19、19はほとんど変形しない。従って射出プレート3は滑らかにスライドすることが保証される。
【0019】
本実施の形態に係るフレーム1は他の変形も可能である。例えば、第1の接続部11、11や第2の接続部12、12は、フレーム本体2の左右にそれぞれ1本ずつ設けられているが、2本ずつ設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 フレーム 2 フレーム本体
3 射出プレート 6 前プレート部
7 後プレート部 9 枠体部
11 第1の接続部 12 第2の接続部
19 リニアガイド 21 スライダー部
31 加熱シリンダ 32 軸駆動機構
33 スクリュ