特許第6147816号(P6147816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6147816電力融通システム及びそれを具備する住宅街区
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147816
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電力融通システム及びそれを具備する住宅街区
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20170607BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H02J3/46
   H02J3/32
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-142521(P2015-142521)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-28776(P2017-28776A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年3月31日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス:http://www.daiwahouse.co.jp/release/20150319111458.html ウェブサイトの掲載日:平成27年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅一
【審査官】 安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−205871(JP,A)
【文献】 特開2002−176736(JP,A)
【文献】 特開2014−27779(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/066651(WO,A1)
【文献】 特開2014−57448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 19/00
G06Q 10/00−10/10
30/00−30/08
50/00−50/20
50/26−99/00
H02J 3/00− 7/12
7/34−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が消費される負荷を有する複数の建物の間で電力を融通させる電力融通システムであって、
前記複数の建物と独立して設けられ、系統電源からの電力を充放電可能な独立蓄電装置と、
前記複数の建物のそれぞれに設けられ、前記系統電源及び前記独立蓄電装置からの電力を充放電可能な個別蓄電装置と、
前記複数の建物のそれぞれに設けられ、前記個別蓄電装置の負荷追従運転を行うパワーコンディショナと、
停電が発生していない場合には、前記系統電源及び前記独立蓄電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能とすると共に、停電が発生した場合には、前記独立蓄電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能とする第一の切替部と、
を具備する電力融通システム。
【請求項2】
前記複数の建物のそれぞれに設けられ、当該各建物の前記負荷及び前記個別蓄電装置へと電力を供給可能な個別発電装置をさらに具備する、
請求項1に記載の電力融通システム。
【請求項3】
前記複数の建物と独立して設けられた独立発電装置をさらに具備し、
前記第一の切替部は、
停電が発生していない場合には、前記系統電源、前記独立蓄電装置及び前記独立発電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能とすると共に、停電が発生した場合には、前記独立蓄電装置及び前記独立発電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能とする、
請求項1又は請求項2に記載の電力融通システム。
【請求項4】
前記負荷は、
制限負荷を含み、
前記複数の建物にそれぞれ設けられ、停電が発生した場合には、電力を前記制限負荷へ供給不能とする第二の切替部をさらに具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電力融通システム。
【請求項5】
前記負荷は、
重要負荷を含み、
前記複数の建物にそれぞれ設けられ、停電が発生し、かつ前記独立蓄電装置に蓄えられた電力量が所定値以下になった場合には、前記個別蓄電装置からの電力を前記重要負荷のみへと供給可能とする第三の切替部をさらに具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電力融通システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電力融通システムと、
前記電力融通システムによって互いに電力を融通可能に構成された複数の融通住宅と、
を具備する住宅街区。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の建物の間で電力を融通させる電力融通システム及びそれを具備する住宅街区の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の建物の間で電力を融通させる電力融通システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、複数の住宅それぞれに蓄電池を備えて、電気料金の安い時間帯(深夜等)に系統電源から充電した蓄電池の電力を当該住宅で利用することができる。また、蓄電池の充電量に余裕がある住宅から、電力が不足する住宅に電力を融通する。電力を融通する際には、各住宅の日々の電力使用量を予測して、当該電力使用量と蓄電池の充電量に基づいて電力の融通量を決定する。制御装置は、決定された融通量に応じて電力を融通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−220428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、停電(系統電源からの電力供給の停止)が発生した場合の電力の融通方法については何ら考慮されていない。したがって、停電が発生した場合には、適切な電力の融通が困難となるおそれがある。例えば、停電が発生した場合には、十分な電力を各住宅の蓄電池に充電することができないため、電力が不足する可能性がある。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、停電が発生した場合であっても適切に電力を融通することが可能な電力融通システム及びそれを具備する住宅街区を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、電力が消費される負荷を有する複数の建物の間で電力を融通させる電力融通システムであって、前記複数の建物と独立して設けられ、系統電源からの電力を充放電可能な独立蓄電装置と、前記複数の建物のそれぞれに設けられ、前記系統電源及び前記独立蓄電装置からの電力を充放電可能な個別蓄電装置と、前記複数の建物のそれぞれに設けられ、前記個別蓄電装置の負荷追従運転を行うパワーコンディショナと、停電が発生していない場合には、前記系統電源及び前記独立蓄電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能とすると共に、停電が発生した場合には、前記独立蓄電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能とする第一の切替部と、を具備するものである。
【0009】
電力融通システムは、前記複数の建物のそれぞれに設けられ、当該各建物の前記負荷及び前記個別蓄電装置へと電力を供給可能な個別発電装置をさらに具備してもよい。
このような構成により、個別発電装置において発電された電力を前記複数の建物で利用することができる。
【0010】
電力融通システムは、前記複数の建物と独立して設けられた独立発電装置をさらに具備し、前記第一の切替部は、停電が発生していない場合には、前記系統電源、前記独立蓄電装置及び前記独立発電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能とすると共に、停電が発生した場合には、前記独立蓄電装置及び前記独立発電装置からの電力を前記負荷及び前記個別蓄電装置へと供給可能としてもよい。
このような構成により、独立発電装置において発電された電力を前記複数の建物で利用することができる。
【0011】
前記負荷は、制限負荷を含み、前記複数の建物にそれぞれ設けられ、停電が発生した場合には、電力を前記制限負荷へ供給不能とする第二の切替部をさらに具備してもよい。
このような構成により、停電時における電力の無駄な消費を抑制することができる。
【0012】
前記負荷は、重要負荷を含み、前記複数の建物にそれぞれ設けられ、停電が発生し、かつ前記独立蓄電装置に蓄えられた電力量が所定値以下になった場合には、前記個別蓄電装置からの電力を前記重要負荷のみへと供給可能とする第三の切替部をさらに具備してもよい。
このような構成により、停電が発生し、さらに独立蓄電装置に蓄えられた電力が少なくなった場合には、個別蓄電装置の電力を利用することができる。
【0013】
住宅街区は、前記電力融通システムと、前記電力融通システムによって互いに電力を融通可能に構成された複数の融通住宅と、を具備するものである。
このような構成により、停電が発生した場合であっても複数の住宅の間で適切に電力を融通することができる。
【発明の効果】
【0014】
停電が発生した場合であっても適切に電力を融通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施形態に係る電力融通システムを具備するスマートシティを示した概略図。
図2】第一実施形態に係る電力融通システムを示した単線結線図。
図3】電力小売り事業者から見た電力の売買契約の概要を示した図。
図4】切替盤の詳細な構成を示した単線結線図。
図5】通常時における切替盤の様子を示した単線結線図。
図6】通常時における電力融通システムの様子を示した単線結線図。
図7】非常時における切替盤の様子を示した単線結線図。
図8】非常時における電力融通システムの様子を示した単線結線図。
図9】非常時に独立蓄電装置の電力がなくなった場合の電力融通システムの様子を示した単線結線図。
図10】第二実施形態に係る電力融通システムを示した単線結線図。
図11】第三実施形態に係る電力融通システムを示した単線結線図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図1を用いて、第一実施形態に係る電力融通システム100を具備するスマートシティ1の概要について説明する。
【0017】
スマートシティ1は、主としてエネルギーの有効利用を図ることを目的として建設される都市である。本実施形態に係るスマートシティ1は、主に複数の戸建住宅から構成される住宅街区を想定している。スマートシティ1には、設置された建物や機器の間で互いにエネルギー(主に電力)を融通し合うエネルギー融通エリア10が設けられる。本実施形態に係るエネルギー融通エリア10には、3つの住宅(第一住宅11、第二住宅12及び第三住宅13)、防犯灯14、急速充電器15及び共同ステーション21が設けられる。
【0018】
3つの住宅(第一住宅11、第二住宅12及び第三住宅13)は、人が居住する建物である。当該住宅には適宜の電気製品が設けられ、電力が消費される。当該住宅には、それぞれ後述する太陽光発電部117、蓄電装置118等が設けられる。
【0019】
防犯灯14は、防犯を目的として設置される街灯である。防犯灯14は、エネルギー融通エリア10の適宜の場所に設置される。
【0020】
急速充電器15は、電気自動車を充電するための機器である。急速充電器15は、エネルギー融通エリア10の適宜の場所に設置される。
【0021】
共同ステーション21は、発電や蓄電を行うための施設である。共同ステーション21は、前記3つの住宅とは独立して設けられる。共同ステーション21は、調整池、防災倉庫等により構成される。当該共同ステーション21には、後述する独立太陽光発電部201、独立蓄電装置202等(図2参照)が設けられる。
【0022】
前記3つの住宅、防犯灯14、急速充電器15及び共同ステーション21は、電力会社の系統電源Sからの電力を引き込む引込分電盤101にそれぞれ接続される。系統電源Sからの電力は、当該引込分電盤101を介して前記3つの住宅、防犯灯14、急速充電器15及び共同ステーション21に供給される。当該電力、並びに太陽光発電部117又は独立太陽光発電部201により発電された電力は、適宜蓄電装置118又は独立蓄電装置202に蓄えられる。また、いずれかの住宅や共同ステーション21で余剰した電力(蓄電装置118又は独立蓄電装置202に蓄えきれない電力)は、引込分電盤101を介して電力が不足している他の住宅に適宜融通される。
【0023】
なお、本実施形態においては、将来的な電力小売り自由化を考慮して、電力小売り事業者が電力会社から電力を一括購入し、当該電力を前記3つの住宅へと供給する場合を想定している。具体的には、電力小売り事業者は引込分電盤101及び共同ステーション21を管轄する。電力小売り事業者は、電力会社の系統電源Sから購入した電力を、引込分電盤101を介して前記3つの住宅へと適宜売却すると共に、共同ステーション21に適宜蓄電する。また電力小売り事業者は、前記3つの住宅のうちいずれかの住宅で電力が余っている場合には、当該電力(余剰電力)を購入し、電力が不足している他の住宅へと売却する。また電力小売り事業者は、共同ステーション21からの余剰電力も、電力が不足している住宅へと売却する。このようにして、エネルギー融通エリア10の3つの住宅及び共同ステーション21の間で、電力の融通が行われる。
【0024】
以下では、図2を用いて、電力融通システム100の詳細な構成について説明する。電力融通システム100は、適宜電力を供給すると共に、3つの住宅(第一住宅11、第二住宅12及び第三住宅13)及び共同ステーション21の間で電力を融通させるものである。電力融通システム100は、主として引込分電盤101、子買電メーター111、漏電ブレーカー112、切替盤113、一般回路114、第一特定回路115、第二特定回路116、太陽光発電部117、蓄電装置118、パワーコンディショナ119、独立太陽光発電部201、独立蓄電装置202、独立パワーコンディショナ203及び電源トランス204等を具備する。
【0025】
引込分電盤101は、スマートシティ1に供給された電力を適宜分配するものである。引込分電盤101は、主として親買電メーター102、親売電メーター103、第一電力取出部104、第二電力取出部105、第一電流センサ106、第二電流センサ107、第三電流センサ108、第四電流センサ109及び切替盤110を具備する。
【0026】
なお、以下の説明では、引込分電盤101内の配電線Lを基準として、各部の位置関係を説明する。配電線Lの一端は、系統電源Sと接続される。図2において、配電線Lは、系統電源S側から紙面右方へと直線状に延びる線で示している。以下の説明では、便宜上、配電線Lが延びる方向(紙面左右方向)において、左側(系統電源Sに近い側)を上流側、右側を下流側とそれぞれ称する。
【0027】
親買電メーター102は、引込分電盤101が系統電源S(電力会社)から購入する電力量を検出するものである。親買電メーター102は、配電線Lの中途部(上流側端部近傍)に設けられる。
【0028】
親売電メーター103は、引込分電盤101が系統電源S(電力会社)へと売却する電力量を検出するものである。親売電メーター103は、配電線Lの中途部(親買電メーター102の下流側)に設けられる。
【0029】
第一電力取出部104は、配電線Lを流通する電力を取り出す部分である。第一電力取出部104は、配電線Lの中途部(親売電メーター103の下流側)に配置される連系点P1に接続される。第一電力取出部104には、防犯灯14が接続される。防犯灯14は、引込分電盤101を介して系統電源Sから供給される電力を用いることができる。
【0030】
第二電力取出部105は、配電線Lを流通する電力を取り出す部分である。第二電力取出部105は、配電線Lの中途部(連系点P1の下流側)に配置される連系点P2に接続される。第二電力取出部105には、急速充電器15が接続される。急速充電器15は、引込分電盤101を介して系統電源Sから供給される電力を用いることができる。
【0031】
第一電流センサ106は、配電線Lを流通する電力量を検出するものである。第一電流センサ106は、配電線Lの中途部(連系点P2の下流側)に設けられる。第一電流センサ106による検出値は、後述する第一住宅11に設けられる蓄電装置118の負荷追従運転に用いられる。
【0032】
第二電流センサ107は、配電線Lを流通する電力量を検出するものである。第二電流センサ107は、配電線Lの中途部(第一電流センサ106の下流側)に設けられる。第二電流センサ107による検出値は、後述する第二住宅12に設けられる蓄電装置118の負荷追従運転に用いられる。
【0033】
第三電流センサ108は、配電線Lを流通する電力量を検出するものである。第三電流センサ108は、配電線Lの中途部(第二電流センサ107の下流側)に設けられる。第三電流センサ108による検出値は、後述する第三住宅13に設けられる蓄電装置118の負荷追従運転に用いられる。
【0034】
第四電流センサ109は、配電線Lを流通する電力量を検出するものである。第四電流センサ109は、配電線Lの中途部(親売電メーター103の下流側、かつ連系点P1の上流側)に設けられる。第四電流センサ109による検出値は、後述する共同ステーション21に設けられる独立蓄電装置202の負荷追従運転等に用いられる。
【0035】
切替盤110は、電力の流通経路を切り替えるものである。切替盤110は、配電線Lの中途部(第四電流センサ109の下流側、かつ連系点P1の上流側)に設けられる。
なお、切替盤110の詳細な構成については後述する。
【0036】
子買電メーター111、漏電ブレーカー112、切替盤113、一般回路114、第一特定回路115、第二特定回路116、太陽光発電部117、蓄電装置118及びパワーコンディショナ119は、各住宅(第一住宅11、第二住宅12及び第三住宅13)にそれぞれ設けられる。よって以下では、第一住宅11に設けられる子買電メーター111等についてのみ詳細に説明し、他の住宅に設けられる子買電メーター111等については、第一住宅11に設けられるものとの相違点についてのみ簡単に説明する。
【0037】
子買電メーター111は、第一住宅11が引込分電盤101を介して購入(買電)する電力量を検出するものである。子買電メーター111は、第一住宅11に設けられる。子買電メーター111は、配電線Lの下流側端部に配置される連系点P3に接続される。
【0038】
漏電ブレーカー112は、過電流や漏電が発生した際に電力の流通を遮断するものである。漏電ブレーカー112は、子買電メーター111に接続される。
【0039】
切替盤113は、第一住宅11に供給された電力を適宜分配すると共に、電力の流通経路を切り替えるものである。切替盤113は、漏電ブレーカー112に接続される。
なお、切替盤113の詳細な構成については後述する。
【0040】
一般回路114は、第一住宅11に設けられて適宜の電気製品等(電力負荷)へと電力を供給するものである。一般回路114は切替盤113に接続され、当該切替盤113によって分配された電力を受け取る。一般回路114には、第一住宅11に設けられた電力負荷のうち、停電発生時に電力が供給されなくても比較的支障のないもの(例えば、音響機器等)が接続される。
【0041】
第一特定回路115は、第一住宅11に設けられて適宜の電気製品等(電力負荷)へと電力を供給するものである。第一特定回路115は後述するパワーコンディショナ119に接続され、当該パワーコンディショナ119を介して供給される電力を受け取る。第一特定回路115には、第一住宅11に設けられた電力負荷のうち、停電発生時においても電力が供給されることが好ましいもの(例えば、冷蔵庫、リビングのコンセント等)が接続される。
【0042】
第二特定回路116は、第一住宅11に設けられて適宜の電気製品等(電力負荷)へと電力を供給するものである。第二特定回路116は切替盤113に接続され、当該切替盤113によって分配された電力を受け取る。第二特定回路116には、第一住宅11に設けられた電力負荷のうち、停電発生時においても電力が供給されることが好ましいもの(例えば、リビングの照明等)が接続される。
【0043】
なお、第一特定回路115に接続される電力負荷としては、第二特定回路116に接続される電力負荷よりも重要なもの(停電発生時において電力が供給されることがより好ましいもの)が選択される。
【0044】
太陽光発電部117は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部117は、第一住宅11の屋根の上など、日当たりのよい場所に設置される。
【0045】
蓄電装置118は、電力を充放電可能な装置である。蓄電装置118は、電力を充放電可能なリチウムイオン電池やニッケル水素電池等からなる蓄電池や、供給されてくる交流電力を整流して前記蓄電池に充電させる充電器等を具備する。
【0046】
パワーコンディショナ119は、太陽光発電部117及び蓄電装置118に接続されるハイブリッドパワーコンディショナである。パワーコンディショナ119は、直流電力と交流電力とを適宜変換する変換装置や、当該変換装置を制御する制御部等を具備する。パワーコンディショナ119は、第一住宅11の切替盤113と接続される。なお、図2においては、パワーコンディショナ119と切替盤113とを接続する配電線を一部省略している。またパワーコンディショナ119は、配電線Lの中途部(第一電流センサ106の下流側、かつ第二電流センサ107の上流側)に配置される連系点P6に接続される。またパワーコンディショナ119は、自立運転用の端子を介して、第一住宅11の第一特定回路115と接続される。またパワーコンディショナ119は、第一電流センサ106による検出値(配電線Lを流通する電力量)を受信することができる。
【0047】
パワーコンディショナ119は、太陽光発電部117で発電された電力及び蓄電装置118から放電された電力を適宜変換して、第一住宅11の切替盤113及び第一特定回路115へ供給することができる。またパワーコンディショナ119は、切替盤113から供給される電力(系統電源Sからの電力)及び太陽光発電部117で発電された電力を第一特定回路115へ供給、及び蓄電装置118へ供給(蓄電)することができる。またパワーコンディショナ119は、太陽光発電部117で発電した電力を、引込分電盤101を介して売却(売電)することができる。
【0048】
またパワーコンディショナ119は、系統連系及び自立運転を行うことができる。系統連系は、系統電源Sと連系して太陽光発電部117及び蓄電装置118を運転させるものである。パワーコンディショナ119は、系統連系を行う場合、第一電流センサ106の検出値に基づいた負荷追従運転(一般回路114を介して使用される電力に基づいた制御)を行うことができる。自立運転は、系統電源Sから独立して太陽光発電部117及び蓄電装置118を運転させるものである。パワーコンディショナ119は、停電が発生した場合には、自立運転(前記自立運転用の端子からの電力の出力)を行う。
【0049】
第二住宅12及び第三住宅13にも、第一住宅11と同様に子買電メーター111、漏電ブレーカー112、切替盤113、一般回路114、第一特定回路115、第二特定回路116、太陽光発電部117、蓄電装置118及びパワーコンディショナ119が設けられる。
【0050】
第二住宅12の子買電メーター111は、配電線Lの中途部(第三電流センサ108よりも下流側、かつ連系点P3よりも上流側)に配置される連系点P4に接続される。第三住宅13の子買電メーター111は、配電線Lの中途部(第三電流センサ108よりも下流側、かつ連系点P4よりも上流側)に配置される連系点P5に接続される。
【0051】
第二住宅12のパワーコンディショナ119は、配電線Lの中途部(第二電流センサ107よりも下流側、かつ第三電流センサ108よりも上流側)に配置される連系点P7に接続される。第三住宅13のパワーコンディショナ119は、配電線Lの中途部(第三電流センサ108よりも下流側、かつ連系点P5よりも上流側)に配置される連系点P8に接続される。
【0052】
独立太陽光発電部201は、太陽光を利用して発電する装置である。独立太陽光発電部201は、共同ステーション21に設けられる。独立太陽光発電部201は、前記調整池の上部など、日当たりのよい場所に設置される。
【0053】
独立蓄電装置202は、電力を充放電可能な装置である。独立蓄電装置202は、共同ステーション21に設けられる。独立蓄電装置202は、電力を充放電可能なリチウムイオン電池やニッケル水素電池等からなる蓄電池や、供給されてくる交流電力を整流して前記蓄電池に充電させる充電器等を具備する。独立蓄電装置202は、前記防災倉庫等に設置される。
【0054】
独立パワーコンディショナ203は、独立太陽光発電部201及び独立蓄電装置202に接続されるハイブリッドパワーコンディショナである。独立パワーコンディショナ203は、共同ステーション21に設けられる。独立パワーコンディショナ203は、配電線Lの中途部(第四電流センサ109の下流側、かつ切替盤110の上流側)に配置される連系点P9に接続される。また独立パワーコンディショナ203は、自立運転用の端子を介して、切替盤110と接続される。また独立パワーコンディショナ203は、第四電流センサ109による検出値(配電線Lを流通する電力量)を受信することができる。
【0055】
独立パワーコンディショナ203は、独立太陽光発電部201で発電された電力及び独立蓄電装置202から放電された電力を適宜変換して、引込分電盤101へ供給することができる。この際、独立パワーコンディショナ203は、連系点P9又は切替盤110のいずれか一方を介して、引込分電盤101へと電力を供給する。また独立パワーコンディショナ203は、引込分電盤101(連系点P9)から供給される電力(系統電源Sからの電力)及び独立太陽光発電部201で発電された電力を独立蓄電装置202へ供給(蓄電)することができる。
【0056】
また独立パワーコンディショナ203は、系統連系及び自立運転を行うことができる。系統連系は、系統電源Sと連系して独立太陽光発電部201及び独立蓄電装置202を運転させるものである。独立パワーコンディショナ203は、系統連系を行う場合、第四電流センサ109の検出値に基づいた負荷追従運転を行うことができる。自立運転は、系統電源Sから独立して独立太陽光発電部201及び独立蓄電装置202を運転させるものである。独立パワーコンディショナ203は、第四電流センサ109の検出値に基づいて、停電の発生の有無(系統電源Sからの電力の供給の有無)を検出することができる。独立パワーコンディショナ203は、停電が発生した場合には、自立運転(前記自立運転用の端子からの電力の出力)を行う。
【0057】
電源トランス204は、独立パワーコンディショナ203からの電力の電圧を変換するものである。電源トランス204は、独立パワーコンディショナ203と切替盤110との間に配置される。
【0058】
以下では、上述の如く構成された電力融通システム100によって、前記3つの住宅の間で電力が融通される様子について説明する。
【0059】
電力小売り事業者は、電力会社の系統電源Sから電力を購入し、引込分電盤101を介して当該電力を前記3つの住宅及び共同ステーション21へと適宜供給する。
【0060】
各住宅では、パワーコンディショナ119によって蓄電装置118の負荷追従運転が行われる。具体的には、一般回路114、第一特定回路115及び第二特定回路116から要求される電力量(電力負荷)に応じて、蓄電装置118の充放電が行われる。この際、太陽光発電部117において発電された電力を極力利用する(一般回路114、第一特定回路115及び第二特定回路116へ供給したり、余剰分を蓄電装置118に蓄えたりする)ことで、購入する電力を削減し、経済的な負担を軽減することができる。
【0061】
各住宅では、必要に応じて引込分電盤101(電力小売り事業者)から購入した電力が利用される。当該電力は子買電メーター111によって検出される。電力小売り事業者は、子買電メーター111の検出値から、各住宅が電力小売り事業者から購入した電力量を把握することができる。
【0062】
また、各住宅の太陽光発電部117で発電されたものの、当該住宅内で使用されることなく余った電力(余剰電力)は、適宜引込分電盤101(電力小売り事業者)へと売却される。
【0063】
各住宅が電力小売り事業者へと売却した電力は、連系点P6、連系点P7又は連系点P8を介して配電線Lへと供給される。当該電力は、さらに下流側の連系点P3、連系点P4又は連系点P5から各住宅へと供給することができる。すなわち、各住宅から電力小売り事業者へと売却された電力は、引込分電盤101を介して、電力が不足している他の住宅へと供給(融通)することができる。
【0064】
このように各住宅は、特別な設備や制御を必要とすることなく、通常通りに電力を利用(買電又は売電)するだけで、互いに電力を融通し合うことができる。
【0065】
さらに、電力小売り事業者が管轄する共同ステーション21においても、発電や蓄電を行うことができる。具体的には、独立太陽光発電部201で発電を行い、当該独立太陽光発電部201からの電力を独立蓄電装置202に蓄電することができる。また、系統電源Sから購入した電力(例えば、安価な夜間の電力)を独立蓄電装置202に蓄電することができる。当該独立蓄電装置202に蓄えられた電力は、適宜引込分電盤101へと供給される。当該電力は、配電線Lの下流側に接続された前記3つの住宅へと融通することができる。
【0066】
このように3つの住宅及び共同ステーション21の間で電力を融通するため、当該3つの住宅及び共同ステーション21(スマートシティ1)における電力の自給率の向上を図ることができる。すなわち、ある住宅で不足する電力を、他の住宅等から融通することで、電力会社の系統電源Sから購入する電力を削減することができる。またこのように複数の住宅等の間で電力を融通するため、太陽光発電部117及び独立太陽光発電部201の発電能力(発電量、発電効率等)や蓄電装置118及び独立蓄電装置202の蓄電容量を抑えることができる。これによって、各住宅や共同ステーション21の設備投資を抑えることができる。
【0067】
なお、太陽光発電部117及び独立太陽光発電部201の発電能力や蓄電装置118及び独立蓄電装置202の蓄電容量は、晴天の日にスマートシティ1で電力を完全に自給することができるように設計されることが望ましい。
【0068】
以下では、図3を用いて、上述の電力融通システム100を用いることによる、電力小売り事業者及び各住宅(居住者)の利点について説明する。当該説明のために、図3には、電力会社、電力小売り事業者及び各住宅の間での電力の売買契約の概要(具体例)を示している。
【0069】
電力小売り事業者は、電力会社と時間帯別契約(具体的には、夜間の電力料金が安く、昼間の電力料金が高いプラン)を結び、電力を一括購入(受電)する(図3の(A)参照)。また電力小売り事業者は、各住宅に対して1日中定額で安価(但し、時間帯別契約の夜間の電力料金より高価)な電力を供給(販売)する(図3の(B)参照)。この際、各住宅の蓄電装置118には、電力小売り事業者が電力会社から夜間に購入した安価な電力を蓄電するようにする。
【0070】
電力小売り事業者は、各住宅からの余剰電力を固定買取価格(電力会社へと売電する際の電力の価格)よりも安い価格で買い取る(図3の(C)参照)。また電力小売り事業者は、余剰電力を固定買取価格で電力会社へと売却する(図3の(D)参照)。
【0071】
このような例において、電力小売り事業者は、固定買取価格(図3の(D)参照)と各住宅からの買取価格(図3の(C)参照)との差額分、並びに夜間の電力料金(図3の(A)参照)と各住宅へ販売する際の電力料金(図3の(B)参照)との差額分から、利益を得ることができる。
【0072】
また、各住宅(居住者)は、通常の従量電灯契約よりも安いプランで電力小売り事業者から電力を購入することができる。また、固定買取価格よりは単価が下がるものの、電力小売り事業者へと電力を売却することで、利益を得ることができる。また、自宅(住宅)に蓄電装置118を設置したことに伴って、停電時に当該蓄電装置118に蓄えられた電力を利用することができるようになる。
【0073】
以下では、切替盤110及び切替盤113の詳細な構成、及び切替盤110及び切替盤113による電力の流通経路の切り替えの様子について説明する。
【0074】
まず、図2及び図4を用いて、切替盤110及び切替盤113の詳細な構成について説明する。なお図4においては、説明の便宜上、切替盤110及び切替盤113の詳細な構成を図示すると共に、他の部材の図示を適宜省略している。
【0075】
切替盤110は、主として第一リレー110a及び第二リレー110bを具備する。
【0076】
第一リレー110aは、電力の流通の可否を切り替えるものである。第一リレー110aは、切替盤110内において、配電線Lの中途部に設けられる。第一リレー110aが閉状態になると、当該第一リレー110aの接点同士が接続され、電力が配電線Lを流通可能となる。一方、第一リレー110aが開状態となると、当該第一リレー110aの接点同士の接続が解除され、電力が配電線Lを流通不能となる。
【0077】
第二リレー110bは、電力の流通の可否を切り替えるものである。第二リレー110bは、切替盤110内において、電源トランス204と配電線Lとを接続する配電線(以下、配電線L1と称する)の中途部に設けられる。ここで、配電線L1の一端は、切替盤110内において、配電線Lの中途部(第一リレー110aの下流側)に接続される。第二リレー110bが閉状態になると、当該第二リレー110bの接点同士が接続され、電力が配電線L1を流通可能となる。一方、第二リレー110bが開状態となると、当該第二リレー110bの接点同士の接続が解除され、電力が配電線L1を流通不能となる。
【0078】
切替盤110は、第一リレー110a及び第二リレー110bの動作を制御することができる。具体的には、切替盤110は、第一リレー110a又は第二リレー110bのうちいずれか一方を開状態とした場合には、他方を閉状態とする制御(いわゆる、排他制御)を行う。また切替盤110は第四電流センサ109と接続され、当該第四電流センサ109の検出値に基づいて、停電の発生の有無を検出することができる。
【0079】
切替盤113は、主としてリレー113a及び分岐ブレーカー113bを具備する。
【0080】
リレー113aは、電力の流通の可否を切り替えるものである。リレー113aは、切替盤113内において、漏電ブレーカー112と一般回路114とを接続する配電線(以下、配電線L2と称する)の中途部に設けられる。リレー113aが閉状態になると、当該リレー113aの接点同士が接続され、電力が配電線L2を流通可能となる。一方、リレー113aが開状態となると、当該リレー113aの接点同士の接続が解除され、電力が配電線L2を流通不能となる。
【0081】
分岐ブレーカー113bは、過電流や漏電が発生した際に電力の流通を遮断するものである。分岐ブレーカー113bは、切替盤113内において、当該切替盤113と第二特定回路116とを接続する配電線(以下、配電線L3と称する)の中途部に設けられる。ここで、配電線L3の一端は、切替盤113内において、配電線L2の中途部(リレー113aの上流側(漏電ブレーカー112側))に接続される。
【0082】
切替盤113は、リレー113aの動作を制御することができる。また切替盤113は第四電流センサ109と接続され、当該第四電流センサ109の検出値に基づいて、停電の発生の有無を検出することができる。
【0083】
次に、図5から図9までを用いて、切替盤110及び切替盤113による電力の流通経路の切り替えの様子について説明する。
【0084】
まず、図5及び図6を用いて、停電が発生していない場合(以下、通常時と称する)について説明する。
【0085】
通常時において、切替盤110は、第一リレー110aを閉状態に切り替えると共に、第二リレー110bを開状態に切り替える。また切替盤113は、リレー113aを閉状態に切り替える。また独立パワーコンディショナ203は、系統連系(負荷追従運転)を行う。
【0086】
この状態では、系統電源S、並びに独立太陽光発電部201及び独立蓄電装置202からの電力は、連系点P9を介して引込分電盤101へと供給される。当該電力は、下流側に配置された連系点P1及び連系点P2を介して、適宜防犯灯14及び急速充電器15へと供給される。また、当該電力は、連系点P3、連系点P4及び連系点P5を介して、各住宅へと供給される。
【0087】
第一住宅11に着目すると、引込分電盤101からの電力(買電した電力)は、切替盤113を介して一般回路114及び第二特定回路116へと供給される。また、引込分電盤101からの電力は、切替盤113及びパワーコンディショナ119を介して第一特定回路115へと供給される。この際、パワーコンディショナ119は、当該パワーコンディショナ119の内部に設けられたバイパス回路を介して、切替盤113からの電力を自立運転用の端子から第一特定回路115へと供給することができる。
【0088】
また前述の如く、パワーコンディショナ119は系統連系(負荷追従運転)を行い、余剰電力は適宜引込分電盤101(電力小売り事業者)へと売却(売電)される。これによって、他の住宅との電力の融通が適宜行われる。
【0089】
次に、図7及び図8を用いて、停電が発生した場合(以下、非常時と称する)について説明する。
【0090】
非常時において、切替盤110は、第一リレー110aを開状態に切り替えると共に、第二リレー110bを閉状態に切り替える。また切替盤113は、リレー113aを開状態に切り替える。また独立パワーコンディショナ203は、自立運転を行う。
【0091】
この状態では、独立太陽光発電部201及び独立蓄電装置202からの電力は、電源トランス204を介して引込分電盤101へと供給される。当該電力は、下流側に配置された連系点P1及び連系点P2を介して、適宜防犯灯14及び急速充電器15へと供給される。また、当該電力は、連系点P3、連系点P4及び連系点P5を介して、各住宅へと供給される。
【0092】
第一住宅11に着目すると、引込分電盤101からの電力(買電した電力)は、切替盤113を介して第二特定回路116へと供給される。この際、一般回路114への電力の供給は遮断されている。このように、停電時には電力の必要性が比較的低い一般回路114への電力の供給を遮断することで、電力の消費量を抑制することができる。これによって、蓄電装置(独立蓄電装置202や蓄電装置118)に蓄えられた電力の無駄な消費を抑えることができる。また、引込分電盤101からの電力は、切替盤113及びパワーコンディショナ119を介して第一特定回路115へと供給される。
【0093】
またこの状態では、第一電流センサ106によって電流が検出されているため、パワーコンディショナ119は停電が発生していないものと判断し、通常時と同様に系統連系(負荷追従運転)を行う。これによって、他の住宅との電力の融通が適宜行われる。
【0094】
なお、厳密には、停電が発生した直後(切替盤110の第二リレー110bが閉状態に切り替えられる前)には、第一電流センサ106によって電流が検知されなくなる。このため、パワーコンディショナ119は停電が発生したものと判断し、系統連系を停止する。しかし、その後すぐに第二リレー110bが閉状態に切り替えられ、第一電流センサ106が電流を検出することになる。このため、パワーコンディショナ119は再び系統連系を開始する。
【0095】
図9に示すように、停電が発生した状態で、独立蓄電装置202に蓄えられた電力量(蓄電量)がなくなった場合(厳密には、独立パワーコンディショナ203の自立運転用の端子から出力不能な程度まで蓄電量が減少した場合)には、独立パワーコンディショナ203から引込分電盤101への電力の供給ができなくなる。この場合、各住宅のパワーコンディショナ119は、第一電流センサ106等によって電流が検出されなくなるため、停電が発生したものと判断し、自立運転を行う。
【0096】
すなわちこの場合には、各住宅において、太陽光発電部117及び蓄電装置118からの電力が、パワーコンディショナ119の自立運転用の端子を介して第一特定回路115へと供給される。このように、停電時において、独立蓄電装置202の蓄電量が所定値以下になった場合には、各住宅において、第一特定回路115のみに電力が供給される。これによって、電力の無駄な消費をより効果的に抑えることができる。
【0097】
以上の如く、本実施形態に係る電力融通システム100は、
電力が消費される負荷(一般回路114、第一特定回路115及び第二特定回路116)を有する3つの住宅(建物)の間で電力を融通させる電力融通システム100であって、
前記3つの住宅と独立して設けられ、系統電源Sからの電力を充放電可能な独立蓄電装置202と、
前記3つの住宅のそれぞれに設けられ、系統電源S及び独立蓄電装置202からの電力を充放電可能な蓄電装置118(個別蓄電装置)と、
停電が発生していない場合には、系統電源S及び独立蓄電装置202からの電力を前記負荷及び蓄電装置118へと供給可能とすると共に、停電が発生した場合には、独立蓄電装置202からの電力を前記負荷及び蓄電装置118へと供給可能とする独立パワーコンディショナ203(第一の切替部)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、停電が発生した場合であっても適切に電力を融通することができる。すなわち、停電時であっても独立蓄電装置202に蓄えられた電力を前記3つの住宅へと供給することができ、電力不足の発生を抑制することができる。特に本実施形態においては、独立蓄電装置202からの電力に基づいて各住宅の蓄電装置118が通常時と同様に系統連系(負荷追従運転)を行うため、停電時であっても住宅間の電力の融通を円滑に行うことができる。
【0098】
また、電力融通システム100は、
前記3つの住宅のそれぞれに設けられ、当該各住宅の前記負荷及び蓄電装置118へと電力を供給可能な太陽光発電部117(個別発電装置)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、太陽光発電部117において発電された電力を前記3つの住宅で利用することができる。特に停電時において当該太陽光発電部117からの電力を利用することで、電力不足の発生を抑制することができる。
【0099】
また、電力融通システム100は、
前記3つの住宅と独立して設けられた独立太陽光発電部201(独立発電装置)をさらに具備し、
独立パワーコンディショナ203は、
停電が発生していない場合には、系統電源S、独立蓄電装置202及び独立太陽光発電部201からの電力を前記負荷及び蓄電装置118へと供給可能とすると共に、停電が発生した場合には、独立蓄電装置202及び独立太陽光発電部201からの電力を前記負荷及び蓄電装置118へと供給可能とするものである。
このように構成することにより、独立太陽光発電部201において発電された電力を前記3つの住宅で利用することができる。特に停電時において当該独立太陽光発電部201からの電力を利用することで、電力不足の発生を抑制することができる。
【0100】
また、前記負荷は、
一般回路114(制限負荷)を含み、
前記3つの住宅にそれぞれ設けられ、停電が発生した場合には、電力を一般回路114へ供給不能とする切替盤113(第二の切替部)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、停電時における電力の無駄な消費を抑制することができる。これによって、停電時において、電力が使用可能な期間を長期間に亘って確保することができる。
【0101】
また、前記負荷は、
第一特定回路115(重要負荷)を含み、
前記3つの住宅にそれぞれ設けられ、停電が発生し、かつ独立蓄電装置202に蓄えられた電力量が所定値以下になった場合には、蓄電装置118からの電力を第一特定回路115のみへと供給可能とするパワーコンディショナ119(第三の切替部)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、停電が発生し、さらに独立蓄電装置に蓄えられた電力が少なくなった場合には、蓄電装置118の電力を利用することができる。またこれと同時に、さらに電力の無駄な消費を抑制することができる。これによって、独立蓄電装置202の電力が少なくなっても、各住宅で電力を利用することができる。
【0102】
また、本実施形態に係るスマートシティ1(住宅街区)は、
電力融通システム100と、
電力融通システム100によって互いに電力を融通可能に構成された複数の住宅(融通住宅)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、停電が発生した場合であっても複数の住宅の間で適切に電力を融通することができる。
【0103】
なお、一般回路114、第一特定回路115及び第二特定回路116は、負荷の実施の一形態である。
また、一般回路114は、制限負荷の実施の一形態である。
また、第一特定回路115は、重要負荷の実施の一形態である。
また、前記3つの住宅(第一住宅11、第二住宅12及び第三住宅13)は、建物及び融通住宅の実施の一形態である。
また、蓄電装置118は、個別蓄電装置の実施の一形態である。
また、独立パワーコンディショナ203は、第一の切替部の実施の一形態である。
また、太陽光発電部117は、個別発電装置の実施の一形態である。
また、独立太陽光発電部201は、独立発電装置の実施の一形態である。
また、切替盤113は、第二の切替部の実施の一形態である。
また、パワーコンディショナ119は、第三の切替部の実施の一形態である。
また、スマートシティ1は、住宅街区の実施の一形態である。
【0104】
以上、第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0105】
例えば、建物は住宅(人の居住を目的とするもの)に限らず、その他種々の建物であってもよい。
【0106】
また、一般回路114、第一特定回路115及び第二特定回路116に接続される電気製品等は、任意に選定することが可能である。
【0107】
また、個別発電装置及び独立発電装置は、太陽光発電部117及び独立太陽光発電部201に限らず、その他発電可能な装置(例えば、自然エネルギーを利用した発電装置(風力発電装置等)や、燃料電池等)であってもよい。
【0108】
また、本実施形態においては、独立蓄電装置202に蓄えられた電力量(蓄電量)がなくなった(所定値以下になった)場合に、第一特定回路115のみに電力が供給される構成としたが、当該蓄電量の値(所定値)は任意に設定することが可能である。
【0109】
また、住宅街区が有する住宅は3つに限るものではなく、任意の戸数の住宅を設けることが可能である。
【0110】
また、第一電力取出部104及び第二電力取出部105には、それぞれ防犯灯14及び急速充電器15が接続されるものとしたが、その他の任意の電気製品等を接続することが可能である。
【0111】
また、電力融通システム100の各部材の動作の制御は、各部材に設けられた制御部がそれぞれ行うことも、電力融通システム100全体の動作を管理する制御部が一括して行うことも可能である。
【0112】
以下では、図10を用いて、第二実施形態に係る電力融通システム200について説明する。なお、第二実施形態に係る電力融通システム200が、第一実施形態に係る電力融通システム100と主に異なる点は、子売電メーター120を具備する点である。よって以下では、当該相違点について説明し、その他第一実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0113】
子売電メーター120は、各住宅が引込分電盤101を介して売却(売電)する電力量を検出するものである。子売電メーター120は、各住宅(第一住宅11、第二住宅12及び第三住宅13)にそれぞれ設けられる。具体的には、第一住宅11の子売電メーター120は、当該第一住宅11のパワーコンディショナ119と連系点P6との間に配置される。また第二住宅12の子売電メーター120は、当該第二住宅12のパワーコンディショナ119と連系点P7との間に配置される。また第三住宅13の子売電メーター120は、当該第三住宅13のパワーコンディショナ119と連系点P8との間に配置される。
【0114】
このように構成することにより、各住宅が売買する電力量は、各住宅に設けられた子買電メーター111及び子売電メーター120によって検出され、電力小売り事業者が把握することができる。このため、ある住宅の太陽光発電部117で発電された電力が、知らぬ間に他の住宅で利用されるなどの事態の発生を抑制し、ひいては電力を融通する際の不公平感を低減することができる。
【0115】
以下では、図11を用いて、第三実施形態に係る電力融通システム300について説明する。なお、第三実施形態に係る電力融通システム300が、第二実施形態に係る電力融通システム200と主に異なる点は、V2Hシステム30を具備する点である。よって以下では、当該相違点について説明し、その他第二実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。また図11においては、第二住宅12及び第三住宅13を適宜簡略化して図示している。
【0116】
V2H(Vehicle to Home)システム30とは、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池車(FCV)等の自動車が有する蓄電装置に蓄えた電力を、エネルギー融通エリア10の第一住宅11等で利用するためのものである。V2Hシステム30は、主として太陽光発電部301、EV302及びパワーコンディショナ303等を具備する。
【0117】
パワーコンディショナ303は、配電線Lの中途部に配置される連系点P9に接続される。またパワーコンディショナ303は、自立運転用の端子を介して、切替盤110と接続される。またパワーコンディショナ303は、配電線Lの中途部(親売電メーター103の下流側、かつ連系点P9の上流側)に設けられた第五電流センサ304による検出値(配電線Lを流通する電力量)を受信することができる。
【0118】
なお、その他、太陽光発電部301及びパワーコンディショナ303の構成は、独立太陽光発電部201及び独立パワーコンディショナ203の構成と略同一であるため説明を省略する。
【0119】
EV302は、電力を充放電可能な蓄電装置を備える。EV302はパワーコンディショナ303に接続することができる。パワーコンディショナ303は、EV302が接続された場合、当該EV302の蓄電装置に蓄えられた電力を、第一住宅11等に融通することができる。また、系統電源Sからの電力を適宜EV302の蓄電装置に蓄えることができる。
【0120】
なお、このようなV2Hシステム30を設けた場合、共同ステーション21の独立パワーコンディショナ203等は、配電線LにおいてV2Hシステム30よりも下流側に接続される。具体的には、共同ステーション21の独立パワーコンディショナ203は、配電線Lにおいて、切替盤110の下流側、かつ連系点P1の上流側に配置される連系点P10に接続される。
【0121】
このように構成された電力融通システム300において、停電時には切替盤110によって電力の流通経路が切り替えられ、太陽光発電部301及びEV302からの電力が、切替盤110を介して各住宅へと供給可能とされる。
【0122】
なお、電力融通システム400にV2Hシステム30を設ける場合、第二実施形態等に示したような急速充電器15は不要となる。
【0123】
また、図11の例ではEV302をパワーコンディショナ303に接続した例を示したが、EV302に代えてPHV、FCV等を接続することも可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 スマートシティ
100 電力融通システム
110 切替盤
114 一般回路
115 第一特定回路
116 第二特定回路
117 太陽光発電部
118 蓄電装置
201 独立太陽光発電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11