(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動バスケットを移動させる際には、搭乗作業者が移動バスケットの周囲を確認しながら上記操作台を操作するが、操作に集中していると、移動バスケットが周囲の障害物に接近しつつあっても、見逃してしまう場合がある。移動バスケットの大きさはまちまちであり、資材を載せるようなかなり大きいサイズの場合には、死角も大きくなるので、特に見逃し易くなる。
そのため、気が付いた時点では接触回避操作が間に合わずに、搭乗作業者がその障害物と移動バスケットとの間に挟まれたり、移動バスケットが衝突したりする等、思わぬ事故を招いてしまうことがある。
【0005】
そのため、周囲の障害物の接近を予め検知できるよう構成した安全装置が、特許文献1に提案されているが、この特許文献1では、移動バスケットと障害物との間の距離が所定距離よりも小さくなった場合に、移動バスケットの移動速度を低下させることで、搭乗作業者に対して注意を喚起すると共に、移動バスケットが障害物に接触するまでの時間を引き延ばして搭乗作業者に接触回避操作をさせる時間を与えられるようになっている。
而して、特許文献1のアイデアを具体化した安全装置は、障害物を検知する検知センサと、コントローラ(CPU、ROM、RAM)、ブームの動作を制御するコントロールバルブとで構成されて複雑なものとなっており、コスト面での負担が重い。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、簡易な構成でありながら、作業対象物を含む周囲の障害物への異常な接近を作業者に十分な時間的余裕をもって報知することができる、新規且つ有用な安全装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、作業者が搭乗する移動バスケットを備えた高所作業車用の安全装置であって、弾性変形可能で、導電性の外周部を有する軸部と、前記軸部に隙間を開けて囲むよう配設された導電性の囲み部とを含み、前記軸部と前記囲み部との接触導通により閉成する障害物検知回路と、前記軸部に連結されて前記移動バスケットの外方に延びる障害物検知部と、前記障害物検知回路の閉成により作動する音、光等の報知手段を備え、前記障害物検知部が障害物に当たることで押された前記軸部の弾性変形により、前記軸部と前記囲み部が接触導通
し、前記囲み部も弾性変形可能に構成されていることを特徴とする高所作業者用安全装置である。
【0009】
請求項
2の発明は、請求項
1に記載した高所作業車用安全装置において、コイルスプリングを導電性素材として利用したことを特徴とする安全装置である。
【0010】
請求項
3の発明は、請求項
2に記載した高所作業車用安全装置において、軸部は、囲み部を抜け出て突出しており、前記突出部分に障害物検知部が連結されていることを特徴とする安全装置である。
【0011】
請求項
4の発明は、請求項
3に記載した高所作業者用安全装置において、障害物検知部は、連結部分を支持軸としてフレーム状に構成されていることを特徴とする安全装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の安全装置は、簡易な構成でありながら、作業対象物を含む周囲の障害物への異常な接近を、作業者に十分な時間的余裕をもって報知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る高所作業車用安全装置を、図面にしたがって説明する。
高所作業車1(
図3)には、車輪を備えて走行可能な車体に、
図1に示すブーム3が取り付けられている。ブーム3の基端側が車体に連結されており、油圧シリンダ等の駆動手段により駆動されて伸縮自在だけでなく、旋回、起伏及び首振りも可能となっている。
ブーム3の先端側には移動バスケット5が備えられており、この移動バスケット5はブーム3の伸縮等により、所定の高所作業位置まで移動することができる。
【0015】
移動バスケット5では、四角形状の作業床7上に作業者が載るようになっている。この作業床7の四辺縁にはガイドフレーム9が複数立設されており、作業床7がこのガイドフレーム9により囲まれた状態となっている。ガイドフレーム9は四辺縁の角隅部では屈曲して跨っている。
ガイドフレーム9は、作業者の作業の邪魔にならないよう、ある程度の高さに抑えられており、その上端側のフレーム部材は手摺11として利用されている。なお、図示省略するが、ガイドフレーム9の内側にはメッシュ状の安全幕が張られている。
作業床7には、ブーム3を動かすための上部操作台13が設置されている。この操作台13には、旋回などの動作内容に応じて各別に操作レバー15が配設されている。
【0016】
上記した構成は、高所作業車に共通のものであり、これに本発明の特徴をなす安全装置17が設置されている。
符号19は円筒状の支柱を示す。この支柱19は剛性材で構成されたものであり、作業床7の4つの角隅部上にそれぞれ立設されている。各支柱19は、ガイドフレーム9の横フレーム部材に対して固定されており、安定的に立ち上がっている。
【0017】
図2に示すように、支柱19は入れ子構造になっており、直状の外筒21に対して直状の内筒23を引き出すことで上方に伸ばすことができ、高さが調整可能となっている。外筒21側にはネジ孔が形成され、そこにネジの切られた押圧用操作軸25が差し込まれており、その操作軸25を緩める方向に回すと、内筒23が矢印に示すように昇降可能となる。
内筒23の上端側には取付け筒27が連結されている。この取付け筒27は、両端側が垂直に逆方向に屈曲しており、内筒23に連結したときには、中間が水平になっている。なお、取付け筒27は実際には一対の「く」の字状筒体と一つの直状筒体とで構成されているが、視認の便宜のため、一つの部材で構成したように図示している。
取付け筒27の2つの屈曲部分のうち、内筒23側に貫通孔29が形成されている。この貫通孔29は取付け筒27の上面側を貫通している。
【0018】
取付け筒27の両端側の一方は内筒23に連結されているが、他方は上側を向いて開口している。この開口部分に取付け軸31の基端側が差し込まれて固定されており、取付け軸31が取付け筒27の上方に延びている。
この取付け軸31は絶縁性で弾性変形可能となっている。取付け軸31の上方に突出した部分の上端には、絶縁性のナット33が固定されている。
符号35はコイルスプリングを示す。このコイルスプリング35が上記した取付け軸31を囲むように配設されており、その下端側は取付け軸31に対して固定されて下降が規制されている。コイルスプリング35も弾性変形可能なので、取付け軸31の撓みに追従して無理なく弾性的に撓む。取付け軸31とコイルスプリング35とで軸部が構成されている。
コイルスプリング35は導電性の金属材で構成されており、導通可能となっている。このコイルスプリング35には導電コード37の一端が接続されている。
【0019】
符号39は障害物検知部を示す。この障害物検知部39は、フレーム状になっており、中心軸41の先端には、4つの支持フレーム43の一端側が放射状に均等の間隔をあけてそれぞれ連結されている。符号45は円環状の検知フレームを示し、この検知フレーム45の内周側に上記した支持フレーム43の他端側が連結されている。従って、検知フレーム45は中心軸41から外方に大きく張り出した状態になっている。障害物検知部39は全体として絶縁性になっている。
障害物検知部39の中心軸41の基端側にはネジ軸47が連設されており、このネジ軸47が取付け軸31側のナット33に螺合連結して一体となっている。
【0020】
取付け筒27の中間の水平部分はガイドフレーム9を超えて外方に延出しており、その延出した先端側の上方に障害物検知部39が位置しており、周囲の障害物が移動バスケット5や搭乗した作業者Hに当たる前に、障害物検知部39に当たることになる。
【0021】
上記したコイルスプリング35を内側コイルスプリングとすると、その内側コイルスプリング35を外側から隙間をあけて囲んだ状態で、外側に別のコイルスプリング49が配置されている。この外側コイルスプリング49も、内側コイルスプリング35と同様に導電性の金属材で構成されており、導通可能となっている。外側コイルスプリング49には導電コード51の一端が接続されている。
外側コイルスプリング49の下端は取付け筒27の上端縁に固定されている。外側コイルスプリング49の上端は取付け軸31の上端より低くなっており、取付け軸31の上方に取り付けられた障害物検知部39の動きを邪魔することはない。
【0022】
内側コイルスプリング35に接続された導電コード37と、外側コイルスプリング49に接続された導電コード51は、取付け筒27内を通され、貫通孔29から外に引き出されている。導電コード37、51は外では、保護筒53に共に通されて一旦束ねられている。
導電コード37、51は長く延びて、その先端側は作業床7上まで至っている。
導電コード37、51は障害物検知回路55の一部を成しており、電源としての2本の並列接続された乾電池57、57を介して接続されている。この障害物検知回路55の分岐回路に報知手段としての報知ブザー59と報知ランプ61が介装されている。
乾電池57、57と報知ブザー59と報知ランプ61は報知ボックス63内にまとめて収容されている。なお、
図2では、電気的構成は視認し易さを優先して概略的に示されている。
【0023】
障害物検知回路55は、内側コイルスプリング35〜導電コード37〜乾電池57〜導電コード51〜外側コイルスプリング49で構成されており、内側コイルスプリング35と外側コイルスプリング49が接触して導通すると、閉成する。すなわち、内側コイルスプリング35と外側コイルスプリング49がスイッチ部分を構成している。
回路の閉成により、電源が報知手段側の分岐回路に供給され、報知ブザー59が鳴動すると共に、報知ランプ61が点滅することになる。
【0024】
安全装置17は上記したように構成されており、次に、その動作を説明する。
図3に示すように、高所作業車1は、トンネルT内の維持・修繕作業用であり、作業者Hが移動バスケット5に搭乗した後に、ブーム3を駆動させて上昇させる。
障害物検知部39の検知フレーム45が周囲の障害物に当たっていないときには、
図4に示すように、内側コイルスプリング35の外側に隙間をあけて外側コイルスプリング49が位置しており、相互に接触していないので、障害物検知回路55は開成している。
【0025】
高所作業車1が更に上昇すると、障害物、この場合にはトンネルTの天井面に近づくことになる。
そして、
図5に示すように、障害物検知部39の検知フレーム45がトンネルTの天井面に当たり、更に天井面に近づくと、取付け軸31とそれを囲んだ内側コイルスプリング35が、障害物検知部39に掛かる応力を逃がす方向に倒そうと弾性変形して撓む。この撓みにより、内側コイルスプリング35の軸方向が倒れるので、外側コイルスプリング49に当たる、すなわち接触する。この接触により、内側コイルスプリング35と外側コイルスプリング49は導通し、障害物検知回路55が閉成するので、乾電池57から電源が報知ブザー59と報知ランプ61に供給され、報知ブザー59が鳴動すると共に、報知ランプ61が点滅する。
【0026】
従って、作業者Hは、トンネルTの天正面に異常に接近しつつあることを、音や光で感知することができるので、回避操作をすることができ、作業床7と天井面との間に挟み込まれるような事態が回避される。
【0027】
なお、取付け軸31及び内側コイルスプリング35が撓んで外側コイルスプリング49を押すと、外側コイルスプリング49に負荷が掛かるが、外側コイルスプリング49も弾性変形して撓むことが可能なので、自らも逃げ方向に撓んで負荷が軽減されるようになっている。
また、障害物検知部39がトンネルTの天井面から離れると、取付け軸31及び内側コイルスプリング35が弾性的に復元するので、外側コイルスプリング49との間に再び隙間ができ、非接触状態となる。これにより、障害物検知経路55が再び開成するので、報知ブザー59や報知ランプ61は作動を停止する。
なお、外側コイルスプリング49も弾性的に復元するので、内側コイルスプリング35との間の隙間は一定に維持される。
【0028】
上記のように、障害物検知部39が障害物に当たって押されたときに、スイッチ部が弾性的にON/OFFするので、安全装置の構成が簡易なものとなっている。
障害物検知部39の検知フレーム45の設置高さは、支柱19の高さを変更することで調整できる。また、検知フレーム45側は支柱19に対して着脱自在になっているので、種々の大きさの検知フレーム45を準備しておき、作業環境に応じて使い分けるようにすることも可能である。
更に、安全装置自体が、高所作業車3に対して容易に設置でき、且つ取り外しできるので、現場での作業の際に設置するだけで済む。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、障害物検知部は、
図7に示すように、円盤状65に構成することも考えられる。