特許第6147866号(P6147866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6147866HTTPアダプティブストリーミング動画を受信するための方法およびクライアント装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147866
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】HTTPアダプティブストリーミング動画を受信するための方法およびクライアント装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/437 20110101AFI20170607BHJP
   H04L 12/853 20130101ALI20170607BHJP
   H04L 29/08 20060101ALI20170607BHJP
   H04L 12/829 20130101ALI20170607BHJP
   H04N 21/442 20110101ALI20170607BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20170607BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H04N21/437
   H04L12/853
   H04L13/00 307C
   H04L12/829
   H04N21/442
   G06F13/00 353A
   H04M11/00 302
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-544425(P2015-544425)
(86)(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公表番号】特表2016-506644(P2016-506644A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2013074530
(87)【国際公開番号】WO2014082942
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年7月27日
(31)【優先権主張番号】12306495.8
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・フェレスハウエル,ダニー
(72)【発明者】
【氏名】デ・フリーント,ヨハン
【審査官】 福西 章人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−172830(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/156224(WO,A1)
【文献】 特表2012−530469(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/108379(WO,A1)
【文献】 特開2007−259162(JP,A)
【文献】 特開2001−268131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
G06F 13/00
H04L 12/00−12/955
H04L 29/08
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバからハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)アダプティブストリーミング動画を受信するための方法であって、前記サーバに動作可能に接続されたクライアントにおいて、
前記動画のチャンクを受信すると、前記サーバから前記クライアントへの伝送のための現在の伝送速度を決定することと、
期待される将来の伝送速度に関係する統計情報を、少なくとも前記現在の伝送速度の関数として取得することと、
前記統計情報のみから目標伝送速度を導出することと、
前記目標伝送速度に従って前記動画の後続チャンクを要求することとを含み、
さらに、前記決定した現在の伝送速度を使用して前記統計情報を更新することを含み、
前記統計情報が前記クライアントとは別のネットワークノードから取得され、かつ前記ネットワークノードにおいて更新され、前記ネットワークノードが複数のクライアントからの統計情報を格納するように構成されており、
前記統計情報がヒストグラムを含み、前記導出することが前記ヒストグラムから所定の分位点を計算することを含み、
前記分位点が5パーセンタイル、1パーセンタイル、0.1パーセンタイルのいずれか1つであり、
前記伝送速度の情報が、関連するネットワークのタイプ、時刻、曜日の少なくとも1つを含む補助情報と関連付けて前記ネットワークノードに記憶される、方法。
【請求項2】
前記統計情報の前記取得することが前記クライアントが起動すると行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記統計情報の前記取得することが時間間隔をおいて行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プロセッサにより実行したときに、プロセッサに、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータプログラムを含む非一時的コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項5】
サーバからハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)アダプティブストリーミング動画を受信するための装置であって、
前記装置を前記サーバに動作可能に接続するように適合されたネットワークインタフェースと、
前記装置を統計値データベースに動作可能に接続するように適合されたデータベースインタフェースと、
前記ネットワークインタフェースおよび前記データベースインタフェースに動作可能に接続されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサが、
前記サーバから前記装置への現在の伝送速度を決定し、
期待される将来の伝送速度に関係する統計情報を、少なくとも前記現在の伝送速度の関数として前記統計値データベースから取得し、
前記統計情報のみから目標伝送速度を導出し、
前記目標伝送速度に従って前記サーバからの前記動画の後続チャンクを要求するように構成されており、前記プロセッサがさらに前記決定した現在の伝送速度を前記統計値データベースに調達するように構成され、
前記統計情報がヒストグラムを含み、前記導出することが前記ヒストグラムから所定の分位点を計算することを含み、
前記分位点が5パーセンタイル、1パーセンタイル、0.1パーセンタイルのいずれか1つであり、
前記伝送速度の情報が、関連するネットワークのタイプ、時刻、曜日の少なくとも1つを含む補助情報と関連付けて前記統計値データベースに記憶される、装置。
【請求項6】
前記データベースインタフェースに動作可能に接続された前記統計値データベースをさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の装置を備えるセットトップボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHTTPアダプティブストリーミング(HAS)の分野に関し、特に、要求されるチャンクの公称ビット伝送速度の決定の問題に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンなインターネット上で動画を配信するための重要な1つの技法は、HAS(HTTP(ハイパーテキスト転送プロトコル)アダプティブストリーミング)である。この技法には簡単に配備できるという利点があり、その理由は、他のプロトコルよりも簡単にファイアウォールを越えられること、TCP(伝送制御プロトコル)から受け継いだ輻輳制御を有すること、ならびに既存のHTTPインフラストラクチャ、特にHTTPキャッシュおよびCDN(コンテンツ配信ネットワーク)ノードを利用できることである。
【0003】
HASの設計原理によれば、動画は異なるビット伝送速度で符号化され、クライアントは指定された時点で、これらのビット伝送速度の間で切り替わることができる。連続した2つの切り替え時間の間隔はビデオセグメントと呼ばれることが多く、その間隔に関連するビットストリングはチャンクと呼ばれることが多い(つまり、ビット伝送速度の種類と同じ数だけの異なるチャンクが利用可能である)。
【0004】
現在のところ、ネットワーク性能に対して最適なチャンクを選択するために十分満足できる仕組みはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、HAS動画ストリームを受信するための、より満足な方法およびクライアントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、サーバからHTTPアダプティブストリーミング動画を受信するための方法が提供され、この方法は、サーバに動作可能に接続されたクライアントにおいて:動画のチャンクを受信すると、サーバからクライアントへの伝送のための現在の伝送速度を決定することと、期待される将来の伝送速度に関係する統計情報を、少なくとも現在の伝送速度の関数として取得することと、統計情報から目標伝送速度を導出することと、目標伝送速度に従ってプログラムの後続チャンクを要求することとを含む。
【0007】
この本発明による方法の1つの利点は、現在の(および任意選択で、最近の)伝送速度の観測およびそれに統計的に関連した期待される将来の伝送速度に基づき、伝送速度の観点からネットワーク性能を予想することである。このことは、特に、クライアントが異なる時点で異なるタイプのネットワーク上で動作することができる場合に有意義である。特に、クライアントとサーバの間のネットワークは、無線リンク(例えば、IEEE802.11WLANリンクや、UMTS、3G、LTEなどの移動体通信リンクなど)および/または有線リンク(例えば、IEEE802.3「Ethernet(登録商標)」リンク、PLCリンク、xDSLリンク、同軸リンクなど)を含んでもよい。(期待される)将来のネットワーク挙動を観測された挙動に関連付ける統計値を考慮に入れることにより、実際に存在するネットワークトポロジーのために、より最適に近い要求戦略を展開することができる。このように、本発明は、簡単に評価できるメトリック、すなわちサーバからクライアントへのネットワークリンク上の伝送速度を使って実装することができる。
【0008】
本発明による方法の一実施形態では、統計情報はヒストグラムを含み、導出することはヒストグラムから所定の分位点を計算することを含む。
【0009】
この実施形態の1つの利点は、この方法により現在の(および、任意で過去の)ネットワーク性能から将来への適切な外挿が得られるだけでなく、将来のネットワーク性能が過大評価されないという一定レベルの確信が示唆されることである。ネットワーク性能の過大評価および、それに関連する、実際の将来のネットワーク性能から見て適時に配信するには大きすぎるチャンクの要求は、バッファアンダランおよびHASストリームのエンドユーザの体感品質の容認しがたい低下(「フリーズ」や、動画イメージが完全に消失する可能性さえある)を招くことがあるので、後者の利点は重要である。
【0010】
事業者および/またはユーザの要件に従って、様々な分位点を選択してもよい。好ましくは、分位点は、少なくとも50%最適事例(この点では、選択された分位点は中央値)、または75%最適事例(つまり、分位点は25パーセンタイル)、さらには95%最適事例(つまり、分位点は95パーセンタイル)、またはそれらの間の適切な分位点を対象とするように選択される。
【0011】
特定の実施形態では、分位点は5パーセンタイル、1パーセンタイル、0.1パーセンタイルのいずれか1つである。
【0012】
これらの実施形態の1つの利点は、ネットワーク性能の問題に起因して中断されることなく、ストリームされたコンテンツの消費が可能であることを極めて高いレベルで保証するために、これらの実施形態を使用できることである。
【0013】
一実施形態では、本発明による方法は、決定した現在の伝送速度を使って統計情報を更新することをさらに含む。
【0014】
この実施形態の1つの利点は、観測されたネットワーク性能のパターンを統計情報として累積的に格納して、その後の目標伝送速度の決定を向上させるという意味で、システムが自己学習を行うことである。好ましくは、現在のセッションの情報を使用するだけではなく、クライアントのセッションのいくつかまたはすべてに渡って知識を積み上げる(また、任意選択で長期に積み上げる)。
【0015】
特定の実施形態では、統計情報はクライアントとは別のネットワークノードから取得され、そのネットワークノードにおいて更新され、そのネットワークノードは複数のクライアントからの統計情報を格納するように構成される。
【0016】
この実施形態の1つの利点は、クライアントの数が多いおかげで、より正確な統計値が収集され、それにより、関与するすべてのクライアントのためにより良い性能が達成されることである。
【0017】
さらに特定な実施形態では、伝送速度の情報は、関連するネットワークのタイプ、時刻、曜日などの補助情報と関連付けてネットワークノードに格納される。
【0018】
この実施形態の1つの利点は、サービスを受けるクライアントの実際の状況に最も適した情報だけを使用することにより、より正確に統計情報を適用できることである。
【0019】
本発明による方法の一実施形態では、統計情報の取得はクライアントが起動すると行われる。
【0020】
この実施形態では、統計値データベース(このデータベースはクライアント内部のコンポーネント上に格納されてもよいし、任意選択で様々なクライアントから統計値を収集する別のネットワークノード上に保存されてもよい)から関連する最新の統計値を取得することは、クライアントデバイスのブートまたは初期化シーケンスの一部である。
【0021】
本発明による方法の一実施形態では、統計情報の取得は時間間隔をおいて行われる。
【0022】
この実施形態では、統計情報は一定の時間間隔でクライアントに提供される。これらの時間間隔は、固定、または所定の様式で時間にわたり可変でもよく、さらにはネットワーク状況において観測または予想される一定の変化によって決まってもよい。統計情報の伝送は、クライアント主導で発生してもよいし(つまり、クライアントが、例えばデータベースをホストしているサーバをポーリングすることにより、データベースから関連情報をプルする)、サーバ主導で発生してもよい(つまり、サーバが統計情報の更新を1つまたは複数のクライアントにプッシュする)。例えば、移動体通信デバイスの場合のように、クライアントデバイスが最初に起動したときと、HASトラフィックを消費し始めるときとの間に大きな時間経過があり得る事態では、この実施形態により、要求されるHASチャンクに必要な品質レベルの計算に古い統計値を使用することが防止される。
【0023】
本発明の一態様によれば、前述の方法を実行するように構成されたコード手段を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0024】
本発明の一態様によれば、サーバからHTTPアダプティブストリーミング動画を受信するための装置が提供され、装置は:装置をサーバに動作可能に接続するように適合されたネットワークインタフェースと、装置を統計値データベースに動作可能に接続するように適合されたデータベースインタフェースと、ネットワークインタフェースおよびデータベースインタフェースに動作可能に接続されたプロセッサとを備え、プロセッサは:サーバから装置への伝送の現在の伝送速度を決定し、期待される将来の伝送速度に関係する統計情報を、現在の伝送速度の関数として統計値データベースから取得し、統計情報から目標伝送速度を導出し、目標伝送速度に従ってサーバからのプログラムの後続チャンクを要求するように構成される。
【0025】
本発明による装置の一実施形態では、統計情報はヒストグラムを含み、導出することはヒストグラムから所定の分位点を計算することを含む。
【0026】
特定の実施形態では、分位点は5パーセンタイル、1パーセンタイル、0.1パーセンタイルのいずれか1つである。
【0027】
本発明による装置の一実施形態では、プロセッサは、決定した現在の伝送速度を統計値データベースに調達するようにさらに構成される。
【0028】
一実施形態では、本発明による装置は、データベースインタフェースに動作可能に接続された統計値データベースをさらに備える。
【0029】
この実施形態では、クライアント装置は、本発明の原理によって動作するために実在の外部データベースエンティティとインタフェースする必要はない。
【0030】
本発明の一態様によれば、前述した装置を備えるセットトップボックスが提供される。
【0031】
本発明による装置、コンピュータプログラム製品およびセットトップボックスの実施形態の技術的効果および利点は、本発明による方法の対応する実施形態の技術的効果および利点について、必要な変更を加えて対応する。
【0032】
本発明の実施形態による装置および/または方法のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付図面を参照しながら次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】HASクライアントの伝送速度決定アルゴリズム(RDA)の動作を示す図である。
図2】HASクライアントの伝送速度決定アルゴリズム(RDA)の動作をさらに示す図である。
図3】本発明の一実施形態でのRDAの例示的動作を示す図である。
図4】本発明による方法の一実施形態のフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態による装置を備えるネットワークの概略全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
それぞれの動画間隔にどのチャンクをダウンロードするかを選択するために、HASクライアントは自身から見た利用可能なネットワークスループット、特にTCPが提供するスループットを監視し、この利用可能なネットワークスループットに(次のチャンクのための)動画ビット伝送速度を一致させるよう試みる。
要求される動画ビット伝送速度は利用可能なネットワークビット伝送速度に正確に一致することはできないので、クライアントは再生バッファを維持する必要がある。
【0035】
図1および2は、クライアントの決定をつかさどる伝送速度決定アルゴリズム(RDA)を示す。クライアントは、デコーダが必要とするだけのバイトが、デコーダが必要とする時点より少し前にすでに受信済みになるようなバージョンの、次のチャンクをダウンロードする。図1および2を参照すると、これは、階段状のコンテンツ受信曲線(下の曲線)が伝送速度の包絡線(上の曲線)と交差してはならないことを意味し、ここで後者はバイトデータがどれぐらいの速さでクライアントに到着するかを示し、前者はデコーダがどれくらいの速さでバイトデータを必要とするかを示す。図示されるコンテンツ受信曲線は鋭い段を示し、このことは、デコーダがデータバッファをチャンク単位で空にすることを表す。1つのチャンクの消費は曲線の垂直部分で表され、連続する2つのチャンクが消費される間の時間は曲線の水平部分で表される。
【0036】
本発明は、改良された伝送速度決定アルゴリズムを使用する方法および装置に関する。次に、(サーバからクライアントへの)ネットワークスループットに関係する統計情報を使用する伝送速度決定アルゴリズムを参照しながら、本発明を詳しく説明する。
【0037】
スループットの過去のある挙動を与えられたとき、先行する時間間隔におけるスループットT[B,A],T[C,B],...が、それぞれ値t[B,A],t[C,B],...であると仮定するとすれば、スループットの漸進的変化に関連する知識は、決定点Aの直後のスループットT[A,.]がある値t[A,.]をとるという条件付き確率
Pr[T[A,.]=t[A,.]|T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...](式1)
で獲得される。
【0038】
図3は、この実施形態を示す。各決定点Aで、現在バージョンのPr[T[A,.]=t[A,.]|T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...]を使用して、次のチャンクがダウンロードされる品質バージョンを決定する。この戦略は、知られている従来の決定アルゴリズムの設計原理と容易に組み合わせ得る。
【0039】
好ましくは、Pr[T[A,.]=t[A,.]|T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...]は(成功した)決定の後に毎回更新され、この情報は、当該のクライアントデバイスの全セッションに渡って維持される。このようにして、本発明によるRDAは従来のアルゴリズムよりもスループットの漸進的変化を予測する能力が高く、したがって、より良い決定を行うことができる。
【0040】
式1は、条件付き確率密度関数推定の形での伝送速度についての統計情報である。実際的な計算上の理由から、統計情報は離散化された形で使用されることが好ましく、ここではこれを「ヒストグラム情報」と呼ぶ。
【0041】
Pr[T[A,.]=t[A,.]|T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...]を最新の状態に維持するための実現性のある1つの方法は、次のように進行する。
【0042】
(K+1)次元のベクトルのベクトル空間がビン(ベクトル空間全体をカバーし、ここでビンは四角形または他の任意の形状でよい)内に量子化され、ここでKは考慮される過去の時間間隔の数である。各ビンはPr[T[A,.]=t[A,.]|T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...]の推定値(実際は、ビンが対象とする領域上の積分)を維持する。
【0043】
決定点Aで、各ビンの確率値(乗算の前はすべての確率の合計は1になる)は、αを乗算され、観測されたベクトル(t[A,.],t[B,A],t[C,B],...)がどのビンに入るかが決定された後(ここでt[B,A],t[C,B],...は、決定点の前のK個の時間間隔において測定されたスループットで、t[A,.]は、決定点の後の時間間隔におけるスループットである)、その特定のビンの確率値は(1−α)倍に増大される(すべての確率の合計が更新処理の後に確実に1になるようにする)。
【0044】
本発明で提案されるRDAに必要な条件付き確率は、次の式で与えられる。
【0045】
Pr[T[A,.]=t[A,.]|T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...]=
Pr[T[A,.]=t[A,.],T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...]/
Pr[T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...](式2)
【0046】
Pr[T[A,.]=t[A,.]|T[B,A]=t[B,A],T[C,B]=t[C,B],...]を維持するための別の方法は、(スライドする窓越しに)各ビンに入るイベントの数を単に数え、(スライドする窓の中の)イベントの総数を数えて、各ビンに入るイベントの数を総数で除算することである。
【0047】
本発明の好ましい変形例では、スループットの過去の挙動を与えられてのスループットの漸進的変化に関連する知識は、過去のスループットTだけでなく、ダウンロードされる動画が通るネットワーク(例えば、WiFi、3G、LTEなど)、時刻(例えば、最繁時か非最繁時か)、SINR(信号対干渉雑音比)の値(無線の場合)や競合するクライアントの数(知られている場合)などの1つまたは複数の他のパラメータにも依存する。
【0048】
図4は、本発明による方法の一実施形態のフローチャートである。このフローチャートはクライアント側でとられるステップを示し、クライアントは(例えば、図5に示される全体的配置で)サーバに動作可能に接続されている。
【0049】
最初の準備ステップ410で、クライアントは(図示されていない、先行する要求の結果として)対象の動画のチャンクを受信する。このチャンクを受信すると、クライアントは420で、サーバからクライアントへの伝送のための現在の伝送速度Rcurrentを決定する。図4では、一般性を失うことなく、現在の伝送速度の決定のみに言及する。この方法が複数の伝送速度観測、すなわち過去のK個のチャンクのセットなどに対する観測に頼る場合にも、本発明が全く類似した様式で働くことは、当業者には明らかであろう。この場合、クライアントは将来使用するために関連する先行の値を格納する。
【0050】
少なくとも現在のネットワーク性能レベルRcurrent(および、任意選択で最近受信したK個のチャンクでのレベル)に基づいて、クライアントは430で、期待される将来のネットワーク性能レベルに関係する統計情報を取得する。クライアントは、例えば、前述の、好ましくは適切な形でパラメータ化された確率密度関数、または離散化された形のヒストグラム情報を取得してもよい。
【0051】
最後に、クライアントは440で、例えば確率密度関数の特定の分位点またはヒストグラム情報などの統計情報から目標の伝送速度Rtargetを導出し、450で、目標の伝送速度に従って動画の次のチャンクを要求する。
【0052】
クライアントでの最新の伝送速度の観測値は、好ましくは統計値データベースにフィードバックされ、例えば前述のスキームに従って、統計値データベースを最新に維持する(図4には示されず)。
【0053】
好ましくは、現在のネットワーク性能レベルと、先行して観測された1つまたは複数のネットワーク性能レベルとを組み合わせて、適切な統計値を選択する。実際に、ネットワーク性能の漸進的変化における特定のパターンは、特定のネットワークタイプ、またはネットワーク利用状況に関係する特定の繰り返されるイベントを示していることがある。
【0054】
さらに好ましくは、付加的情報を使用して適切な統計値を選択する。付加的情報の例には、時刻や曜日などがある。実際に、ネットワーク性能は瞬間的なアクティブユーザ数に激しく影響されることがあるという事実から、毎日または毎週のように繰り返される一定のネットワーク利用状況パターンを指針として最適な統計値を選択することができる。
【0055】
図5は、本発明の一実施形態による装置を含むネットワークの概略全体図である。
【0056】
図示されたネットワークは、ネットワーク550を介して互いに動作可能に接続されたクライアント510およびサーバ530を含み、ネットワーク550は、アクセスネットワークおよび、インターネットなどのコアネットワークを含んでよい。サーバ530については詳細に説明しない。ネットワーク550との接続を確立することを目的として、クライアント510はネットワークインタフェース515をもつ。「インタフェース」という用語は、当業者にはよく知られているように、プロトコルスタックの様々な階層に渡ってデータ通信の接続性を確立するために必要な必須のハードウェアおよびソフトウェアを指す。
【0057】
好ましくは、標準化されたプロトコルを使用する。アクセスインタフェースは、例えば、xDSL、xPON、WMANまたは3Gリンクのためのインタフェースを含んでよい。LAN(ローカルエリアネットワーク)インタフェースは、例えば、1つまたは複数のIEEE802.3「Ethernet」リンクまたはIEEE802.11「無線LAN」リンクのためのインタフェースを含んでよい。PAN(パーソナルエリアネットワーク)インタフェースは、例えば、USBインタフェースまたはBluetooth(登録商標)インタフェースを含んでよい。
【0058】
ネットワーク接続550を使用して、クライアント510からサーバ530へ要求(特に、所望のプログラムの個々のチャンクに対する要求)を中継し、サーバ530からクライアント510へコンテンツ(特に、要求されたチャンク)を中継する。
【0059】
クライアント装置510はまた、統計値データベース520とインタフェースする。この目的で、クライアント装置510は、データベースインタフェース512を備える。データベースインタフェース512および統計値データベース520は、特に、フラッシュメモリや磁気ディスクドライブなどの不揮発性メモリの形で、クライアント装置510に統合されていてもよい。
【0060】
図5では、データベースインタフェース512はネットワークインタフェース515とは別に示されているが、統計値データベース520をネットワーク550に直接接続することも可能であり、この場合、ネットワークインタフェース515を介してアクセスが可能になる。統計値データベース520は、例えば、ネットワークアタッチストレージ(NAS)インフラストラクチャまたはストレージエリアネットワーク(SAN)に格納されてもよい。この構成では、単一のネットワーク統計値データベース520が複数のクライアント装置510から統計値を収集してもよく、これにより、より正確な統計値が得られるので、関与するすべてのクライアントのために、この発明の方法をより効果的に実施し得る。
【0061】
クライアント装置510は、ネットワークインタフェース515およびデータベースインタフェース512に動作可能に接続されたプロセッサ513をさらに備え、プロセッサ513は、サーバ530からクライアント装置510への伝送のための現在のネットワーク性能レベル(つまり、伝送速度)を決定し、期待される将来の伝送速度に関係する統計情報を、現在(および、任意選択で過去のK個のチャンク)の伝送速度の関数として統計値データベース520から取得し、統計情報から目標伝送速度を導出し、目標伝送速度に従ってサーバ530からの動画の後続チャンクを要求するように構成される。
【0062】
前述の部分において、方法および装置を別々の実施形態として説明したが、これは明確さのみを目的とし、方法の実施形態のみに関連して説明した特徴は、同じ技術的効果を得るために、本発明による装置に適用してもよいし、その逆もまた同様であることに留意されたい。
【0063】
図に示される様々な要素の機能は、「プロセッサ」と分類される任意の機能ブロックを含め、専用のハードウェアを使用して提供してもよいし、適切なソフトウェアと協働してソフトウェアを実行することができるハードウェアを使用して提供してもよい。機能は、プロセッサにより提供される場合は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、または複数の個別のプロセッサにより提供されてよく、個別のプロセッサのいくつかは共有されてもよい。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアのみを排他的に指すと解釈されてはならず、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶するための読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)および不揮発性記憶装置を暗示的に含んでよいが、これらに限定されない。他の、従来型および/またはカスタムのハードウェアもまた、含まれてもよい。同様に、図に示されるスイッチはどれも、概念のみを表す。これらの機能は、プログラム論理の動作を通じて、専用論理を通じて、プログラム制御と専用論理の相互作用を通じて、または手作業により実行されてよく、文脈からより具体的に理解されるように、実装者によって特定の技法が選択可能である。
【0064】
当業者は、前述の様々な方法のステップはプログラムされたコンピュータにより実行できることを容易に理解できるであろう。本明細書において、いくつかの実施形態は、例えば、機械またはコンピュータによる読み取りが可能なデジタルデータ記憶媒体などのプログラム記憶デバイスを対象とし、機械による実行またはコンピュータによる実行が可能な命令のプログラムを符号化するようにも意図されており、この命令は前述の方法の一部または全部のステップを実行する。プログラム記憶デバイスは、例えば、デジタルメモリ、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、または光学読み取り可能なデジタルデータ記憶媒体でもよい。実施形態は、前述の方法の前記ステップを実行するようプログラムされたコンピュータも対象とする。
図1
図2
図3
図4
図5