(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147871
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】歩行者エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/36 20110101AFI20170607BHJP
【FI】
B60R21/36
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-555744(P2015-555744)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-513035(P2016-513035A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2014052098
(87)【国際公開番号】WO2014122108
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年11月20日
(31)【優先権主張番号】13154175.7
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510136301
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン、ジャック
(72)【発明者】
【氏名】オストリング、マーチン
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ、ケン
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−219116(JP,A)
【文献】
特開2004−338678(JP,A)
【文献】
特開2007−261510(JP,A)
【文献】
特表2014−533637(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02428412(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラス(27)を有する自動車(24)の歩行者エアバッグ装置であって、
膨張ガスを受け取るための膨張可能な空間を形成するエアバッグ(1)を有し、前記膨張可能な空間(1)が、前記エアバッグが展開する際にフロントガラス(27)の少なくとも一部を覆うように、またはそれを横切るように延在するように膨らむように構成された一次室(8)と、前記一次室の外側の少なくとも1つの二次室(20)とを有し、前記少なくとも1つの二次室(20)が、前記エアバッグ(1)が展開する際、前記一次室(8)と、前記フロントガラス(27)の間でそれぞれの展開位置を採るように膨らむことで前記一次室(8)を前記フロントガラス(27)から隔てるように構成され、
前記一次室(8)が分割構造部(4)を備え、それによって前記一次室を少なくとも部分的に個々の膨張セル(9、10)に分割し、これら膨張セルは互いに分割構造部の反対側に位置し、
前記少なくとも1つの二次室(20)が、前記一次室(8)の外側において、前記分割構造部(4)の一方の側(9)から前記分割構造部(4)の対向する反対側(10)まで延在するように前記分割構造部(4)を横切り、
前記一次室(8)および前記少なくとも1つの二次室(20)が、可撓性の材料から形成され、前記少なくとも1つの二次室(20)を形成する前記材料が、前記分割構造部(4)の一方の側に位置する第1の位置(18)と、前記分割構造部(4)の他方の側に位置する第2の位置(19)のみにおいて前記一次室(8)を形成する前記材料に接続されており、前記少なくとも1つの二次室(20)の前記材料が、前記第1の位置(18)と第2の位置(19)の間の前記分割構造部(4)の領域において前記一次室(8)の前記材料に接続されないことを特徴とする歩行者エアバッグ装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの二次室(20)を形成する前記材料が、縫い付け(18、19)、接着剤、熱の利用の少なくとも1つによって前記一次室(8)を形成する前記材料に接続される、請求項1に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項3】
前記分割構造部(4)が、前記一次室(8)の内側に設けられた内部バッフルを含む、請求項1または2に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項4】
前記一次室(8)が、前記可撓性の材料の1枚のシート(3)から形成され、前記バッフル(4)が、前記一次室(8)の内部の前記パネル(3)の表面に接続されており、前記少なくとも1つの二次室(20)が、前記第1および第2の位置(18、19)において前記一次室(8)の外側の前記パネル(3)の表面に接続されている、請求項3に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの二次室(20)が、膨らんだときに概ね細長い形状になるように構成され、その各々の端部の領域において前記一次室(8)を形成する前記材料に接続される、請求項1から4のいずれかに記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの二次室(20)を形成する前記材料が少なくとも部分的に、引き裂きシームによって前記一次室(8)を形成する前記材料に接続される、請求項1から5のいずれかに記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの二次室(20)が、少なくとも1つの各々のフローポート(21)によって前記一次室(8)と流体連通するように設けられる、請求項1乃至6の何れか1項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項8】
前記フローポート(21)またはその各々が前記分割構造部(4)から離間される、請求項7に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項9】
作動する際、前記一次室(8)に直接膨張ガスの流れ(29)を誘導するように配置されたインフレータ(25)をさらに含み、前記少なくとも1つの二次室(20)が、前記膨張ガスの前記一次室(8)から前記フローポート(21)またはその各々を通る流れ(30)によって膨らむように配置される、請求項7または8に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの二次室(20)が、前記一次室(8)との流体連通を実現する単一の前記フローポート(21)のみを有し、前記フローポート(21)が、前記インフレータ(25)に対して前記分割構造部(4)の対向する側(10)に配置される、請求項9に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項11】
前記フローポート(21)またはその各々が、前記二次室(20)の各々の端部の領域内に位置する、請求項5に従属する請求項7から10のいずれか一項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの二次室(20)の前記材料が、前記フローポート(21)またはその各々の領域内で前記一次室(8)の前記材料に接続される、請求項7から11のいずれか一項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの二次室(20)の前記材料が、前記フローポート(21)またはその各々を取り囲む接続部(18)を介して前記一次室(8)の前記材料に接続される、請求項12に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項14】
それぞれの展開位置が前記車両(24)を横切る横断方向で互いから離間されるように配置された複数の前記二次室(20)を備える、請求項1から13のいずれかに記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項15】
前記一次室(8)および前記二次室(20)またはその各々が、膨らんだとき実質的に細長い構成を有し、前記二次室(20)またはその各々の展開位置が、前記一次室(8)の膨らんだ位置に概ね直交する、請求項1から14のいずれかに記載の歩行者エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者エアバッグ装置に関し、より詳細にはフロントガラスを有する自動車にある歩行者エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が歩行者との正面衝突に巻き込まれた場合、歩行者の身体が車両のフロントガラスにぶつかることが一般的であり、これにより歩行者の重篤な負傷と、車両に対する相当な損害が生じる可能性がある。これを改善しようとする中で、車両センサが歩行者との衝突が発生した、または発生しそうなことを示した場合、フロントガラスの中心部分および/または車両の左右のフロントピラーを覆うように膨らむ、いわゆる歩行者エアバッグを備えた自動車を提供することが提案されている。典型的には、このような一般的なタイプのエアバッグは、最初はきっちりと折り畳まれたおよび/または巻かれたパッケージで提供され、車両のフードまたはボンネットの後部の下、あるいはフロントガラスの底部とフードまたはボンネットの後部の間に設けられたカウルの下に保管される。フードまたはボンネットの後部が、好適なエアバッグ、ピストンまたは他の設備によって持ち上げられることで、歩行者エアバッグが膨らむのに十分な空間を可能にすることができ、その結果歩行者エアバッグが車両のフロントガラスまたはフロントピラーの少なくとも一部を覆うのに効果的なやり方で展開することにより、歩行者の車両のこのような部分との衝突を和らげることができる。あるいは、歩行者エアバッグが膨らみ始めるとき、それ自体がフード持ち上げ機能を果たすように歩行者エアバッグを構成することも可能である。このような設備は、フードの下に歩行者エアバッグに対するセル構造を内蔵する場合もあり、あるいはフードまたはボンネットの後部を持ち上げるのに有効な方向で膨らむようにエアバッグを誘導するためにエアバッグに隣接する構造を備える場合もある。
【0003】
しかしながら、理解されるように、車両のフードまたはボンネットの後部の下の空間は極めて制限される可能性があり、これにより歩行者にとって適切な保護を保証するのに十分に大きいエアバッグをうまい具合に詰め込むことが難しくなる。また、このような設備内で上手く詰め込まれるエアバッグが大きくなると、エアバッグを膨らませるのに必要な気体の体積も大きくなる(これはまたより大きなインフレータを必要とする)。歩行者エアバッグを膨らませるための大きな体積の気体に頼ることは一般に、展開時間を遅らせる結果となり、これは歩行者の負傷を回避するまたは緩和させるエアバッグの効力に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
したがって、比較的大きな一次室と、複数の比較的小さな二次室とを備える歩行者エアバッグを提供することがこれまで提案されており、このエアバッグは、二次室が互いに離間した関係で、かつ各々が一次室と車両のフロントガラスの間でそれぞれの位置に膨らむことで、一次室をフロントガラスから隔てるように構成されている。このような設備は、エアバッグを膨らませるのに過度な体積の気体を必要とせずに比較的「薄い」エアバッグの形態で歩行者に対して優れた保護を提供することがわかっている。
【0005】
それでもなお、上記に記載するこれまで提案されてきた種類のエアバッグは、特に構造の点においてその問題点がないわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の好ましい目的は、改善された歩行者エアバッグ装置を提供することがである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって、フロントガラスを有する自動車に歩行者エアバッグ装置が提供されており、この設備は、膨張ガスを受け取るための膨張可能な空間を形成するエアバッグを有し、前記膨張可能な空間は、エアバッグが展開する際にウィンドシールドの少なくとも一部を覆うように、またはそれを横切るように延在するように膨らむように構成された一次室と、一次室の外側の少なくとも1つの二次室とを有し、少なくとも1つの二次室は、エアバッグが展開する際、一次室と、フロントガラスの間でそれぞれの展開位置を採るように膨らむことで一次室をフロントガラスから隔てるように構成されており、この設備は、前記一次室が、一次室を少なくとも部分的に分割構造の対向する側部に位置するそれぞれの膨張セルにさらに分割する分離構造を有し、前記少なくとも1つの二次室は、一次室の外側で分割構造の一方の側から分割構造の対向する側まで延在するように分割構造を横切ることを特徴とし、前記一次室および少なくとも1つの二次室は、可撓性の材料から形成され、少なくとも1つの二次室を形成する材料は、分割構造の一方の側に位置する第1の位置と、分割構造の他方の側に位置する第2の位置のみにおいて一次室を形成する材料に接続されており、少なくとも1つの二次室の材料は、前記第1の位置と第2の位置の間の前記分割構造の領域において一次室の材料に接続されない。
【0008】
好ましくは少なくとも1つの二次室を形成する材料は、縫合、接着、熱の利用の少なくとも1つによって一次室を形成する材料に接続される。
【0009】
有利には、前記分割構造は、一次室の内側に設けられた内部バッフルを含む。
【0010】
好都合には、一次室は、前記可撓性の材料の1枚のシートから形成され、バッフルは、一次室の内部のシートの表面に接続されており、少なくとも1つの二次室は、前記第1および第2の位置において一次室の外側のシートの表面に接続されている。
【0011】
好ましくは少なくとも1つの二次室は、膨らんだときに概ね細長い形状になるように構成され、その各々の端部の領域において一次室を形成する材料に接続される。
【0012】
有利には、少なくとも1つの二次室を形成する材料は少なくとも部分的に、引き裂きシームによって一次室を形成する材料に接続される。
【0013】
好都合には、少なくとも1つの二次室は、少なくとも1つの各々のフローポートによって前記一次室と流体連通するように設けられる。
【0014】
好ましくは前記フローポート、またはその各々は、分割構造から離間される。
【0015】
有利には、設備はさらに、作動する際、前記一次室に直接膨張ガスの流れを誘導するように配置されたインフレータを含み、前記少なくとも1つの二次室は、前記膨張ガスの一次室から前記フローポートまたはその各々を通る流れによって膨らむように配置される。
【0016】
好都合には、少なくとも1つの二次室は、一次室との流体連通を実現する単一の前記フローポートのみを有し、フローポートは、インフレータに対して分割構造の対向する側に配置される。
【0017】
好ましくは前記フローポートまたはその各々は、二次室の各々の端部の領域内に位置する。
【0018】
有利には、少なくとも1つの二次室の材料は、フローポートまたはその各々の領域内で一次室の材料に接続される。
【0019】
好都合には、少なくとも1つの二次室の材料は、フローポートまたはその各々を取り囲む接続部を介して一次室の材料に接続される。
【0020】
好ましくは設備は、それぞれの展開位置が車両を横切る横断方向で互いから離間されるように配置された複数の前記二次室を備える。
【0021】
有利には、前記一次室および前記二次室またはその各々は、膨らんだとき実質的に細長い構成を有し、前記二次室のまたはその各々の展開位置は、一次室の膨らんだ位置に概ね直交する。
【0022】
好ましくは少なくとも1つの二次室の膨張可能な空間は、前記一次室の膨張可能な空間より小さい。
【0023】
複数の前記二次室を有する設備では、前記二次室の全体の膨張可能な空間が、前記一次室の膨張可能な空間より小さくなることが好ましい。
【0024】
好都合には、少なくとも1つの二次室は、車両のフロントガラスに向かって湾曲した外側面を提示する膨らんだ構成を有する。
【0025】
本発明をより理解し易くすることができるように、およびそのさらなる特徴が理解され得るように、本発明の実施形態を添付の図面を参照する一例によって次に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】その間にバッフルシートが配置された可撓性の材料の2つの重ね合わせたシートを例示する、本発明を具現化する歩行者エアバッグの製造における最初の段階を示す平面図である。
【
図2】
図1のものと概ね対応する図であり、一次膨張式室を形成するためにそれぞれの周辺縁部を囲むように接続された重ね合せたシートを示しており、バッフルシートが各々の側に沿って各メインシートに接続された図である。
【
図3】
図2のものと同様であるが、エアバッグの製造におけるその後の段階を示す平面図である。
【
図4】エアバッグの製造におけるさらなる段階を示しており、詳細にはエアバッグの複数の二次室の形成を示す別の平面図である。
【
図5】
図4の線V−Vに沿って切り取った断面図である。
【
図6】
図4の線VI−VIに沿って切り取った断面図である。
【
図7】自動車のフロントガラスを横切る展開位置における
図4から
図6のエアバッグを示す斜視図である。
【
図8】
図7の線VIII−VIIIに沿って切り取った断面図であり、車両のフロントガラスに対して膨らんだエアバッグの断面構成を示す図である。
【
図9】本発明の別の実施形態によるエアバッグを示す斜視図である。
【
図10】エアバッグの一部に対する代替の外形を示す
図5のものと同様の断面図である。
【
図11】エアバッグの一部に対する代替の外形を示す
図5および
図10のものと同様の断面図である。
【
図13】
図5のものと同様であるが、エアバッグの一次室の代替の構成を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
最初に
図1から
図6を参照すると、本発明による歩行者エアバッグの簡素な形態の構造および結果として生じる構成が記載される。以降で説明するように、クレーム主張される発明の範囲から逸脱することなく、より複雑なエアバッグ構造も可能である。
【0028】
図1は、そこから歩行者エアバッグ1が製造される一対の可撓性材料の実質的に同一の主要なシート2、3を示す。シート2、3は好ましくは織物繊維材料から形成され、例示される実施形態では共に概ね矩形である。シート2、3は、
図1において互いに対して重ね合わせた関係で示されている。また
図1に示されるのは(架空で)、同様の可撓性材料の中間シート4であり、これは2つの主要なシート2、3の間に位置決めされて示されている。中間シート4は、細長い矩形の形態を有し、その2つの長い側縁部5、6がそれぞれの主要なシート2、3の対向する面に当たるように配置されて示されている。指摘されるように、例示される構成において、中間シート4は、2つの主要なシート2、3の全長より幾分短い長さを有し、その端部が2つの主要なシート2、3の端縁部から内向きに隔てられるように配置されている。
【0029】
図2に示されるように、2つの主要なシート2、3は、周辺シーム7によってそれぞれの周辺縁部の実質的な全範囲に沿って相互に接続されることで、膨張ガスを受け取るためにシート2、3の間に膨張式の一次室8を形成する。一次室8は、細長く、主要なシート2、3の形状によって概ね画定されるように概ね矩形である。中間シート4は、例えば縫合によってその長手方向の側縁部5、6に沿ってそれぞれの主要なシート2、3の内面に接続されることで、膨張式の室8を横切るように延在するバッフルまたはつなぎ綱を画定し、これが2つの主要なシート2、3をその長さに沿って相互に接続する。結果として生じるバッフル4はこのように、膨張式の一次室8の分割構造を形成し、この分割構造は、この室をバッフル4の各々の側における2つの別個の膨張式セル9、10に再分割するのに効果的である。2つのセル9、10は、バッフル4の端部を囲むように互いに流体連通するように設けられる。しかしながらこの構成の変形形態において、バッフル4は、その長さに沿って1つまたは複数のフローポートを備える場合もあり、あるいはさらに2つのセル9、10の間に流体連通を実現するためにその長さに沿って切れ目を含む場合もある。
【0030】
指摘されるように、各々の主要なシート2、3は、その長い側部の一方に沿って概ね中心位置において外向きに突出するタブ11を備える。2つのタブ11は、シートが重ねられる際に整列され、シートを相互に接続する周辺シーム7は、整列したタブ11の一端において始まり、矩形のシートの周辺を囲むように伸び、整列したタブ11の対向する端部において終端する。タブ11はよって、それぞれの長さに沿って接続されず、そのようにして協働してエアバッグ1に対するネック12を形成し、このネックはエアバッグに対するガス入口開口13を形成する。ネック12は、既知のやり方のガス生成器などのインフレータに装着されることが意図されており、そのためインフレータが作動すると、大容量の膨張ガスが、一次膨張室8の内部空間に誘導されることになり、これによりエアバッグ1を膨らませる。
【0031】
しかしながら、
図1および
図2に例示される2つの主要な繊維シート3の下部は、複数の開口14を備えることに留意されたい。開口14は、シート3の長さに沿って互いから離間されており、各々がそれぞれのガスフローポートを画定し、この目的は以下でより詳細に記載する。
【0032】
次に
図3を考慮するように注目すると、エアバッグ1は上向きで示されており、そのため
図1に示される2つの主要な繊維シート3および2の下部はこのとき頂部にある。好ましくは2つの主要なシート2、3と同種の繊維の可撓性材料の4つの相対的に小さな矩形のシート15が、上向きに提示される下部の主要なシート3の上に載せられる。しかしながらこの点において、好ましい実施形態において矩形シートは、一次室より薄い材料から形成されることに留意されたい。例えば一次室は、480dTex繊維から形成され、より小さい矩形シート15は、235dTex繊維から形成され得ることが想定される。
【0033】
小さな矩形シート15の各々は、シートの端部領域を貫通するように形成されたそれぞれの開口16を有し、シート15にある開口16はそれぞれ、エアバッグの底部シート3を貫通するように設けられた開口14のサイズおよび形状と概ね同等である。シート15は、それぞれの開口16が、エアバッグの底部シート3に形成されたそれぞれの開口14の上に重ね合わされるように、かつシートの長手方向軸17が、エアバッグの主要なシート2、3の長手方向軸に概ね直交するように互いに離間した関係で配置される。重要なことには、バッフルの一方の側からバッフルの他方の側まで延在するように各々のシート5がバッフル4を横切ることに留意されたい。
【0034】
図3に示される特定の実施形態において、各々のシート15の繊維は、シート15の一端に位置し、整列した開口14、16を取り囲む第1のシーム18を形成する縫合の円形ラインと、第2の円形シーム19を形成するシート15の対向する端部における縫合の別の同様の円形ラインとによって、エアバッグの下部シート3の繊維に接続される。各々のシート15はこのように、バッフル4の対向する側に位置する位置においてエアバッグ1の下部の主要なシート3に接続される。
【0035】
図4は、エアバッグ1に対してそれぞれの二次室20を形成するために操作され縫い合わされた各々のシート15を示しており、各々の二次室20は、一次室8の外側にあるが、それぞれの重ね合わされた一対の開口14、16によって画定されるそれぞれのフローポート21によって一次室と流体連通するように設けられている。指摘されるように、フローポート21は、インフレータを受け取るように構成されたエアバッグ1のネック13に対してバッフル4の対向する側にそれぞれ配置される。
【0036】
より詳細には、各々のシート15は、その対向する縁部を、接続される繊維の下部シート3から離れるように、かつ互いに向かって移動させることによって、
図3に示されるその概ね平坦な構成から操作される。例えば各々のシートの対向する長い側縁部は、シート15の実質的なそれぞれの全長に沿って併せて縫合され各々の二次室20に対して中心シーム22を画定し、その一方でより短い端縁部はこのとき、半分に折り畳まれ、各々の縁部の各1/2が他方の1/2に縫い付けられて二次室に対する端部シーム23を形成する。
【0037】
次に
図5および
図6を考慮することに注目すると、結果として生じるエアバッグが断面図で示されている。指摘するように、各々の二次室20は、概ね細長い矩形構成を有しており、その長手方向軸は、一次室8の長手方向軸に実質的に直交するように位置している。
図6に最もはっきりと示されるように、この詳細な実施形態において二次室20は、一次室の長さを横切るように互いに対して離間した関係で配置され、互いに対して概ね平行である。
【0038】
図5は、本発明のエアバッグ装置の重要な特徴を示している。指摘されるように、二次室20は各々、一次膨張室8の内側に設けられた内部バッフル4を横切ることで一次室8の外側でバッフル4の一方の側からバッフルの他方の側まで延在する。さらに例示される実施形態において、二次室は各々、それぞれのシーム18、19によって、二次室20の対向する端部に位置する位置において一次室の外側に接続されることに留意されたい。このような接続の位置の間では、二次室の材料は一次室8の下部シート3に接続されず、これは、バッフル4の領域において一次室と二次室は接続されないことを意味する。二次室20をバッフル4から離間した二次室の端部領域のみにおいて一次室8に接続することによって、バッフル4が、エアバッグ1の製造中に一次室と二次室を相互に接続するシームに関係することになるリスクがなくなる。バッフル4が歩行者エアバッグの製造においてこのような相互に接続するシームに関係した場合、このとき結果として生じるエアバッグは、適切に展開しない恐れがあり、その理由は、
図5に示される、バッフル4が一次室8の頂部パネル2と底部パネル3の間に延在することでその膨張時の設計構成になる一次室8の適切な展開を補佐するその展開状態まで、バッフル4がその全長に沿って適切に広がらなくなるためである。
【0039】
図7および
図8は、上記に記載した実施形態によって歩行者エアバッグ1が装着された自動車24を例示しており、エアバッグ1は、エアバッグが車両24のフードまたはボンネット26の下にある場合、ネック領域13に設けられたインフレータ25が作動した後の膨らんだ状況で示されている。フードまたはボンネット26の後部は、例えば別のエアバッグ、ピストンまたは他の持ち上げ設備によって持ち上げられることで、エアバッグ1が車両のフロントガラス27および隣接するフロントピラー28の少なくとも一部を効果的に覆うようなやり方で展開し、これにより歩行者のこれらの部分との衝突を和らげるように歩行者エアバッグ1が膨らむために十分な空間を可能にする。
【0040】
より詳細には、
図8に関連して、インフレータ25が最初に作動すると、矢印29によって概略的に示されるように大量の膨張ガスが高速でネック13を経由して、エアバッグのメインの前方繊維シート2と後方繊維シート3の間に画定された一次室8へと誘導されることに留意されたい。このガスの流れは、エアバッグ1の一次室8を急速に膨らませるように働き、これにより
図7に例示されるようにエアバッグ1がその最初の小さく畳まれた構成から迅速に展開することで車両26のフロントガラス27を全体的に横切るように延在することを保証する。より詳細には一次室8の中にバッフル4があること、および自動車の幅を横方向に横切るように延在することは、大半の比率の最初のガス流25をエアバッグの対向する縁部に向かって直線的にではなく、一次室1の側部に向かって外向きにそらすように働く。バッフル4はしたがって、インフレータ25およびフロントガラス27の底部に最も近づいて配置された一次室8の第1のセル9が、バッフル4の端部を囲むおよび/またはバッフルの長さに沿って設けられた何らかの開口または切れ目を介するガスの流れによって膨らみ始める第2のセル10より前に実質的に完全に膨らんだ状態に達することを保証する。バッフル4はこのように、エアバッグ1が、フロントガラス27の幅を実質的に完全に横切ってフロントピラー28に向かって延在する構成まで迅速に膨らむことを確実にするのに役立つ。
【0041】
一次室8の第2のセル10が実質的に完全に膨らんだ状態に達したとき、膨張ガスの二次的な流れがフローポート21を介して生じ、これにより矢印30によって概略的に示されるように二次室20へと流れ込み、これにより二次室20が
図4から
図6に示されるそれぞれの細長い膨らんだ構成を採るようにそれらを膨らませる。
【0042】
図7に詳細に示されるように、それぞれの膨らんだ展開位置において、二次室20は、車両を横切る横方向で互いから離間される。より詳細には、二次室20の展開位置は互いに概ね平行であり、一次室8の長さに直交することに留意されたい。
【0043】
さらに
図8に示されるように、二次室20は、エアバッグ1の一次室8と車両のフロントガラス27の間で展開位置を採るように膨らみ、これにより一次室8の後方シート3をフロントガラスから隔てるように働き、一次室8とフロントガラスの間に空洞31を形成し、各々の空洞31は隣接する二次室20の間に形成される。各々の二次室20は、その膨らんだ構成において「フェンダー」を表すようにみなされ、一次室8をフロントガラスから隔てるのに効果的であり、これにより一次室の衝撃を和らげる特性を向上させることができる。
【0044】
エアバッグの一次室8が隣接する二次室20の間の空洞31によって車両のフロントガラス27から離間される上記に挙げた膨張特性は、エアバッグ1にぶつかる歩行者の頭部にもたらされる保護を有意に改善させることがわかってきた。保護レベルにおけるこのような改善は、エアバッグ全体の所与の総膨張可能体積に対してエアバッグ1によってエネルギーを吸収することができる距離の拡大に起因すると思われる。エアバッグのより大きな一次室8をフロントガラス27から隔てる「フェンダー」を形成するようにエアバッグが展開する際に膨らむ二次室20を設置することで、バッグに衝突する歩行者の頭や胴体に提供される衝撃保護のレベルを何ら下げることなく、エアバッグ1全体の総膨張可能体積を従来技術の設備と比べて縮小させることが可能になる。
【0045】
さらに二次室20が、フロントガラス27の表面に直交するように測定される際十分な深さを有するように構成された場合、このときそれらはまた、万一エアバッグ1が作動された場合には、一次室8をフロントガラス27の表面から十分に隔てることで運転手が一次室8の下を見ることを可能にすることによって、車両の運転手に改善された道路の前方の視界を提供するという追加の利点を提供し得ることがわかっている。関連する車両の特定のタイプに応じて、このような作用は、二次室20を車両の運転手側において互いからさらに離間することによってさらに改善することができ、その一方でまた、(少なくとも)運転手側にある二次室は、運転手の視線を横切るというより、それに対して概ね平行して位置することを保証している。
【0046】
上記に述べたように、二次室20は各々、一次室8が形成される繊維よりかなり薄い、したがってかなり軽量の繊維から形成される。これは恐らく、二次室20が、ガス生成器25からのよりずっと精力的なガスの一次流れ29によってではなく、ガスの二次的流れ30によって膨らむことがその理由である。これは、二次室20の繊維は、一次ガス流29の大きな力に耐えるために強靱である必要がないため、それらをより軽量の繊維から作製することが可能になり、これにより展開する前エアバッグ全体をきっちりと梱包することを容易にすることを意味している。
【0047】
本発明を特有の実施形態を参照して上記に記載してきたが、クレーム主張される範囲から逸脱することなく、このエアバッグ装置に対して種々の修正形態または代替形態を作製することが可能であることを理解されたい。例えば上記に記載され
図1から
図8に例示される実施形態は、それぞれのフローポート21から離れた二次室20の端部領域が、円形シーム19によって一次室8の繊維に縫い付けられるように構成されるが、他の構成のシームを利用することも可能である。例えば二次室20の端部領域は、一連の線形またはジグザグの縫い付けシームによって一次室8に接続される場合もある。あるいは二次室20は、接着剤の利用によって両端部において一次室の繊維に接続される場合もあり、あるいはそれらは熱処理技術によって一次室8の繊維に溶融される場合もある。
【0048】
別の提案される実施形態では、二次室20の端部領域および詳細にはフローポート21から離れた端部は、それぞれの端縁部を一次室8の2つの主要なシート2、3を相互に接続する周辺シーム7に関連させる、よってそこに組み込むことによって一次室8に接続される場合もある。
【0049】
本発明の変形形態において、二次室20の端部領域のいずれかまたはその両方は、万一二次室20が自動車の部品によって、例えばフロントガラスワイパーなどによってひっかけられる、またはもつれてしまった場合、裂けることで二次室20の一次室8からの少なくとも部分的な切れ目を可能にする引き裂きシームによって一次室8の下部シート3に接続される場合があることも想定される。これは、万一車両のフロントガラスワイパーが展開したそのときに稼働中であった場合、エアバッグ1全体が望ましくない構成に変形してしまう特定の例において好ましいとみなされる可能性がある。
【0050】
図9は、本発明によるエアバッグ実施形態を概略的に示しており、これは多くの点において上記に記載され
図1から
図8に示される簡素な設備と同様である。
図9の設備と
図1から
図8の設備との原理の違いは、
図9に示される設備が、より複雑に成形された一次室8を有する点である。詳細には、一次室8は、
図9において上から見たとき概ね弓形の構成を有することに留意されたい。さらに全部で6つの二次室20がこの修正された実施形態には設けられており、二次室20は、例示されるそれぞれの細長い膨らんだ構成において互いに対してもはや平行ではないことに留意されたい。より詳細には、二次室20は、その膨らんだ位置において互いに対して、それらがエアバッグ1の横軸32(これは展開する際、車両の長手方向軸と概ね一致する)に向かってインフレータ25(これはこの設備において一次室8の内部に設けられべきであることが提案されている)から離れる後方への方向で集束するように配置されている。それでもなお、一次室8の弓形の構成により、各々の二次室20はなおもそれが装着されるまたは形成される細長い一次室9のそれぞれの部分に概ね直交している。
【0051】
次に
図10から
図12について、二次室20がその完全に膨らんだ展開構成になったとき、二次室20に関して種々の異なる形状が可能であることを理解されたい。例えば
図10は、二次室20がそれぞれ、フローポート21が設けられるその端部においてバッフル4の他方側に位置するそれぞれの対向する端部より大きな深さを有するような先細の外形を有する設備を示す。
図11は、フロントガラス27に向かって概ね凸面を提示するように構成された二次室20を有する設備を示し、
図12は、二次室20がフロントガラスに向かって概ね凹面を提示するように構成された設備を示す。クレーム主張される範囲から逸脱することなく、二次室20の多くの他の構成もまた可能である。例えば二次室が、その幅(車両を概ね横方向に横切るように測定される際)が先細になる構成を有することも可能である。
【0052】
図13は、本発明によるエアバッグの代替の構成の断面を示している。この設備では、一次室を別個の膨張式セル9、10にさらに分割する一次室8の分割構造は、先に記載した実施形態の意味においてバッフル4によって形成されず、代わりに
図13の32で示されるように、一次室の前方および後方シート2、3を相互に接続することによって形成されるくびれ(締付け部)によって形成される。くびれ32は好ましくは、一次室8の主軸に概ね平行に伸びるラインによって形成され、先に記載したバッフル4と同様のやり方でその長さに沿った隙間または切れ目を有することで、膨張ガスの流れが前方セル8から後方セル9まで流れることを可能にすることができる。くびれ32は、シート2と3の間の縫い付けられたシームとして形成される場合、あるいはシート2、3を併せて接着することによって、またはさらにはシート2、3を併せて熱融着することによって形成される場合もある。
【0053】
図13から指摘されるように、エアバッグの二次室20はなおも、くびれ32によって画定される分割構造を横切っており、したがって一次室32の外側を一方の側から他方の側まで延在し、分割構造から離間された位置18、19においてのみ一次室に接続される。一次室に対するそれぞれの接続地点18と19の間の二次室20の中心領域はよって、一次室8に接続されないままであり、これにより分割構造が二次室と一次室の間の接続部に関係する可能性を回避する。
【0054】
この明細書およびクレームにおいて利用される際、用語「comprises(備える)」および「comprising(備えている)」およびその変形形態は、特有の特徴、ステップまたは整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップまたは整数の存在を除外するように解釈すべきではない。
【0055】
その特有の形態においてまたは開示される機能を果たすための手段の点で表現される上述の記載または以下のクレームにおいて、または添付の図面において開示される特徴、あるいは開示される結果を得るための方法またはプロセスは適宜別々にまたはこのような特徴のいずれかの組み合わせで、本発明をその様々な形態で実現するために利用することができる。
【0056】
本発明を上記に記載される例示の実施形態と併せて記載してきたが、本開示が与えられたとき、当業者にとって多くの等価な修正形態および変形形態が明らかであろう。したがって上記に記載される本発明の例示の実施形態は、例示とみなすべきであり、限定するものではない。記載される実施形態に対する種々の変更を本発明の精神および範囲から逸脱することなく行なうことができる。