(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147911
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】可動家具部品用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/453 20170101AFI20170607BHJP
A47B 88/40 20170101ALI20170607BHJP
【FI】
A47B88/00 H
A47B88/04 E
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-506719(P2016-506719)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公表番号】特表2016-518178(P2016-518178A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】AT2014000058
(87)【国際公開番号】WO2014165876
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年10月13日
(31)【優先権主張番号】A295/2013
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランマイヤー,ハラルド
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−513263(JP,A)
【文献】
特表2009−506847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/944
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック可能な取り出し装置(3)を備えた、可動家具部品(2)用の駆動装置(1)であって、
前記取り出し装置(3)は、閉じ位置(SS)から開き位置(OS)へ取り出し部(A)に沿って可動家具部品(2)を取り出すための、力で作動される取り出しレバー(4)を備え、
前記取り出しレバー(4)は、取り出しレバーベースプレート(8)に回動可能に取り付けられており、取り出し力貯蔵手段(9)が、前記取り出しレバー(4)の力による作動を提供し、
閉じ位置(SS)にある前記取り出しレバー(4)は、ロック位置(V)にあるロック要素(5)にもたれかかり、
前記取り出し装置(3)は、前記ロック要素(5)が前記取り出しレバー(4)のために第1の進行路(W1)を前記取り出し部(A)に連絡可能にすることで、閉じ方向において閉じ位置(SS)の後ろにある超過押圧位置(US)へ可動家具部品(2)を動かすことにより、ロック解除可能になる、
駆動装置において、
可動家具部品(2)を引き寄せることにより、前記取り出し装置(3)が、閉じ位置(SS)から、開き方向(OR)において前記閉じ位置(SS)の前にある引張りロック解除位置(ZS)に動かされ、その結果、前記取り出しレバー(4)が、前記第1の進行路(W1)から間隔を置いた第2の進行路(W2)を経由して取り出し部(A)に到ることができる、ことを特徴とする可動家具部品用の駆動装置。
【請求項2】
前記可動家具部品(2)は、主取り出し面(6)を経由して前記取り出し部(A)にある前記取り出しレバー(4)によって、開き方向(OR)に移動可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記主取り出し面(6)から間隔を隔てた第2の取り出し面(7)が、前記第2の進行路(W2)に沿って設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第2の取り出し面(7)は前記ロック要素(5)上に設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記取り出し力貯蔵手段(9)は、前記取り出しレバー(4)の脚部(10)に作用する引張りバネである、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動装置(1)は、前記取り出しレバー(4)用のガイド経路(11)を有し、
そのガイド経路(11)は、自由走行部(F)、前記取り出し力貯蔵手段(9)にストレス付与するためのストレス付与部(S)、可動家具部品(2)を開き位置(OS)から閉じ位置(SS)に引き戻すための引き戻し部(E)、前記第1の進行路(W1)、前記第2の進行路(W2)、及び、前記取り出し部(A)を有している、
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ストレス付与部(S)および前記引き戻し部(E)は、前記第1の進行路(W1)および第2の進行路(W2)とは異なっている、ことを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
制御プレート(12)、及び、その制御プレート(12)に移動可能に取り付けられた制御要素(13)が設けられており、
前記制御要素(13)は、少なくとも前記ストレス付与部(S)および前記引き戻し部(E)を形成する、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記ロック要素(5)は、前記制御プレート(12)に対して、移動可能に取り付けられている、ことを特徴とする請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記ロック要素(5)は、前記制御要素(13)に移動可能に取り付けられている、ことを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
家具枠体(17)、可動家具部品(2)、及び、請求項1〜10のいずれか一項に記載の駆動装置(1)を有してなる家具製品。
【請求項12】
前記可動家具部品(2)は、延出ガイド手段(18)を介して前記家具枠体(17)に移動可能に取り付けられており、前記延出ガイド手段(18)は、少なくともカーカスレール(19)及び引出しレールを有してなる、ことを特徴とする請求項11に記載の家具製品。
【請求項13】
前記駆動装置(1)の制御プレート(12)が前記カーカスレール(19)に固定されており、取り出しレバーベースプレート(8)が、前記引出しレールまたは可動家具部品(2)に固定されている、ことを特徴とする請求項12に記載の家具製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック可能な取り出し装置を備えた、可動家具部品用の駆動装置に関するものである。ここで、前記取り出し装置は、閉じ位置から開き位置へ取り出し部に沿って可動家具部品を取り出すための、力で作動される取り出しレバーを有し、
閉じ位置にある前記取り出しレバーは、ロック位置にあるロック要素にもたれかかり、
前記取り出し装置は、前記ロック要素が前記取り出しレバーのために第1の進行路を前記取り出し部に連絡可能にすることで、閉じ方向において閉じ位置の後ろにある超過押圧位置へ可動家具部品を動かすことにより、ロック解除可能になる、
という可動家具部品用の駆動装置である。
本発明はまた、そのような駆動装置を有する家具製品に関する。
【背景技術】
【0002】
家具用取付け器具産業においては長年にわたり、いわゆるタッチラッチ機構が既に存在している。タッチラッチ機構を用いれば、閉じ位置にある可動家具部品(例えば、引出し、家具用扉、家具用フラップなど)を押圧することでロック解除(アンロック)が有効となり、すると、可動家具部品がメカニズム(取り出し装置)によって開き方向に能動的にイジェクト(取り出し)される。その点で、ロック用の構造形態と取り出し用の構造形態とでは違いがある。
【0003】
その点に関して、異種構造の第1の形態は、心臓形のガイド経路でロック可能なガイドピンによって取り出し要素をロックすることを含む。その点に関して、ロックの機能および取り出しの機能は、異なるコンポーネントに由来する。一方で、ロックピンは心臓形のガイド経路において機能し、他方で、分離したバネ作動式の取り出し要素は、超過押圧によるロック解除後に可動家具部品を取り出す働きをする。このようなものの例は、国際公開WO2012/149587である。
一般に、タッチラッチ機構において、超過押圧によるだけでなく可動家具部品を引き寄せることによっても、ロック解除が保証されるべきとの要望もしばしば存在する。(本発明とは)異なる種類のデバイスに関する国際公開WO2012/149587では、バネ荷重付与されたブロック要素(閉塞要素)が心臓形のガイド経路のラッチ凹部の領域に配置されており、ロックピンによって可動家具部品を引き寄せる際に前記ブロック要素が動かされて、第2のロック解除通路が解放されることで、前記要望が達成される。結果として、そのようなタッチラッチ機構では、超過押圧によるロック解除および引き寄せによるロック解除の両方、並びに、それに続く能動的なイジェクト(取り出し)が実行される。
【0004】
前述したような(本発明と)同種の装置のタッチラッチ機構において、取り出しレバーで、引くことによるそのような作動開始(トリガー)を実行することの要望もまた存在する。取り出しレバーが二つの機能を有する、即ち、取り出しレバー自体がロックされイジェクトされるところの従前知られた駆動装置の事例として、EP1921948 A1,WO2011/143682 A1,及びオーストリア出願A1249/2012(現在の出願人のもの、但し先行技術公報とはならない)がある。それらの駆動装置またはタッチラッチ機構では、取り出しレバーは、閉じ位置にあるロック要素にもたれかかっており、超過押圧位置(over-pressing position)に超過押圧することでロック要素から解放され、その結果、取り出し部への動作経路が、取り出し面にもたれかかった取り出しレバーによって開放(開拓)される。これらのメカニズムを用いて引く(引っ張る)ことで可動家具部品を開くことは確かに可能であるが、引くことで開くことは、引き出し力の貯蔵手段による能動的(積極的)な取り出しを含んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2012/149587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、前述したような種類の駆動装置において引くこと(引っ張り)による起動(動作開始、トリガー)を実行可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴を有する駆動装置によって達成される。
従って、可動家具部品を引き寄せることにより、取り出し装置(ejection device)が、閉じ位置から、開き方向において前記閉じ位置の前にある引張りロック解除位置(pulling unlocking position)に動かされ、これにより、取り出しレバーが、第1の進行路(first travel path)から間隔を置いた第2の進行路(second travel path)を経由して取り出し部に到る。よって、取り出しレバーそれ自体は、第2の進行路を経由して取り出し部に到る。それ故、ロック要素の周囲で一つの側(サイド)だけでなく、二つの側(サイド)上を通過することができ、その結果、取り出しレバーは能動的(積極的)に可動家具部品をイジェクトする(取り出す)。
【0008】
取り出しレバーが取り出し部に入るや否や、「可動家具部品が、主取り出し面を経由して前記の力で作動される取り出しレバーによって開き方向に移動可能である」とすることは好ましい。
【0009】
原理上、引張りによるロック解除時に、第2の進行路に沿ってロック要素の周囲を通過した後、取り出しレバーがまた主取り出し面にもたれかかる、というように構成することもできる。ただし、「前記主取り出し面から間隔を隔てた第2の取り出し面が、第2の進行路に沿って設けられている」とすることは好ましい。その点に関して、構造の簡素化のために、「第2の取り出し面はロック要素上に設けられている」とすることは好ましい。当然のことながら、引張りによるロック解除時に、取り出しレバーは、第2の取り出し面に及びそれに続いて主取り出し面に連続的にもたれかかることができ、又は、第2の取り出し面だけにもたれかかることができる。
【0010】
好ましい実施形態は、「取り出しレバーが取り出しレバーベースプレートに回動可能に取り付けられている」ことを提供するものであり、ここで、「取り出し力貯蔵手段(又は取り出し力畜力手段)、好ましくは前記取り出しレバーの脚部(leg)に作用する引張りバネが、取り出しレバーの力による作動を提供する」。その場合、取り出し力貯蔵手段は、一方において前記取り出しレバーに固定され、他方において前記取り出しレバーベースプレートに固定されている。
【0011】
更に、以下のようにすることは好ましい。即ち、
「前記駆動装置は、取り出しレバー用のガイド経路を有し、
前記ガイド経路は、自由走行部、前記取り出し力貯蔵手段にストレス付与するためのストレス付与部、可動家具部品を開き位置から閉じ位置に引き戻すための引き戻し部、前記第1の進行路、前記第2の進行路、及び、前記取り出し部を有している」こと、並びに、
「前記ストレス付与部および前記引き戻し部は、前記第1の進行路および第2の進行路とは異なっている」ことは、好ましい。
【0012】
更に、本発明の好ましい実施形態では、「制御プレート、及び、その制御プレートに移動可能に取り付けられた制御要素が設けられており、前記制御要素は、少なくとも前記ストレス付与部および前記引き戻し部を形成する」。好ましくは、制御プレートはまた、前記ガイド経路を実質的に形成している。
その点に関して、「制御要素は、当該制御要素に作用する力貯蔵手段(又は畜力手段)によって、前記主取り出し面から離れて対面する方向に作動される」とすることは好ましい。その場合、力貯蔵手段は、一方において制御要素に固定され、他方において制御プレートに固定される。ある態様では、力貯蔵手段は引張りバネの形態をなしている。
【0013】
加えて、「ロック要素は、制御プレートに対して、移動可能に、より好ましくはスライド可能に取り付けられている」とすることは好ましく、「ロック要素は、制御要素に移動可能に取り付けられている」ことは特に好ましい。制御要素に対するロック要素の移動を可能とするために、「ロック要素は、制御要素の方向に当該ロック要素を引っ張る力貯蔵手段(又は畜力手段)によって作動される」とすることは好ましい。好ましくは、その力貯蔵手段は引張りバネの形態をなしており、その力貯蔵手段が、一方においてロック要素に固定され、他方において制御要素に固定される。
【0014】
制御要素およびロック要素の上記構成のおかげで、「前記第1の進行路は、前記ロック要素と前記主取り出し面との間に設けられ、前記第2の進行路は、前記ロック要素と前記制御要素との間に設けられている」とすることが可能になる。
【0015】
発明の保護は、家具枠体(furniture carcass)、可動家具部品、及び、本発明に従う駆動装置を有してなる家具製品に対しても要求されている。そのような家具部品において、「可動家具部品は、延出ガイド手段を介して家具枠体に移動可能に取り付けられており、前記延出ガイド手段は、少なくともカーカスレール及び引出しレールを有してなる」とすることは好ましい。
【0016】
原理上、取り出し装置の取り出しレバーは、家具枠体と関連付け可能であり、可動家具部品を能動的(積極的)にイジェクトする(取り出す)。ただし、好ましい実施態様においては、取り出しレバーは可動家具部品と関連付けられ、家具枠体にもたれかかっている。その場合において、「駆動装置の制御プレートが前記カーカスレールに固定されており、取り出しレバーベースプレートが、好ましくは引出し底の下面において、前記引出しレールまたは可動家具部品に固定されている」とすることは好ましい。
【0017】
本発明の更なる詳細および利点は、図面に示された例示による実施形態を参照しつつ、以下の具体的な説明によって更に十分に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、延出ガイド手段および駆動装置を具備した家具製品を示す。
【
図2】
図2は、駆動装置を具備した延出ガイド手段を示す。
【
図3】
図3は、可動家具部品が自由走行条件下にある駆動装置を示す。
【
図4】
図4は、可動家具部品を引き戻したときの駆動装置を示す。
【
図5】
図5は、閉じ位置に到達したときの駆動装置を示す。
【
図6】
図6は、第2の進行路が開かれた状態での、閉じ位置における駆動装置を示す。
【
図7】
図7は、超過押圧位置における駆動装置を示す。
【
図8】
図8は、第1の進行路に沿った取り出し開始(時)の駆動装置を示す。
【
図9】
図9は、取り出し時における駆動装置を示す。
【
図11】
図11は、可動家具部品を引き寄せることによる取り出しの際の駆動装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、家具カーカス(家具枠体)17に移動可能に取り付けられた家具部品2を具備した家具製品16を示す。それら可動家具部品2は、家具カーカス17の両側に取り付けられた延出ガイド手段18によって家具カーカス17に移動可能に取り付けられている。延出ガイド手段18それ自体は、家具カーカス17に固定されたカーカスレール19と、引出しレール(図示略)と、任意的には中央レールとを備えている。この場合、可動家具部品2は、引出し底21を伴う引出しコンテナ(容器部)を持った引出しである。駆動装置1が、延出ガイド手段18に対し、及び、最上段の引出し(ここでは図示せず)の引出し底21の下面に対して取り付けられている。
【0020】
制御プレート12がカーカスレール19に取り付けられていることが、
図2から更に具体的に見て取ることができる。制御要素13が制御プレー12に対し線形的に移動可能に取り付けられており、一方で、該制御要素13は、制御ベース22、及びそれに対し旋回可能に取り付けられたフラップ片(flap)23を有している。加えて、主取り出し面6が、制御プレート12上に設けられている。取り出しレバーベースプレート8が、引出し底21の下面において制御プレート12とは反対側に取り付けられている。取り出しレバー4が、取り出しレバーベースプレート8の旋回軸Xの周りで回転可能に取り付けられている。取り出し力貯蔵手段9が、取り出しレバー4と取り出しレバーベースプレート8との間でストレス付与(または荷重付与、または畜力)されており、この場合の当該貯蔵手段9は引張りバネ(tension spring)の形態をなしている。取り出し装置3の本質的なコンポーネント(構成要素)は、取り出し力貯蔵手段9、取り出しレバー4、ロック要素5および主取り出し面6である。ロック要素5は、制御プレート12に対して移動可能に取り付けられている。具体的なケースにおいて、ロック要素5は制御要素13に移動可能に取り付けられると共に、その制御要素13を介して制御プレート12に対して間接的に移動可能に取り付けられている。原理上、取り出しレバーベースプレート8はまた、引出しレール20に固定されることも可能である。制御プレート12が家具カーカス17に直接的に固定されることも可能である。
【0021】
図3において、可動家具部品2は、レバー4がガイド経路11の自由走行部に位置するところの広く開かれた開き位置OSにある。ガイド経路11はまた、ストレス付与部S、引き戻し部(retraction portion)E、および取り出し部(ejection portion)Aを有する。取り出しローラ24が、回転ベアリング27を介して取り出しレバー4に回転可能に取り付けられている。取り出しレバー4は、取り出し力貯蔵手段9によって作動される。
【0022】
可動家具部品2が
図3の位置からスタートして閉じ方向に動かされると、取り出しレバー4は先ず、取り出しローラ24を介して通過し、制御要素13(図示せず)のストレス付与部Sとの当接状況に到る。取り出し力貯蔵手段9のバネ力は、力貯蔵手段14のそれよりも高いので、力貯蔵手段14がストレス付与(畜力)されながら、制御要素13の全体が、主取り出し面6に向かう方向Rに反対の関係で動かされる。
制御要素13が左の方へこれ以上動けなくなるや否や、それと同時に可動家具部品2に対して閉じ方向SRに押し付けられると、旋回軸Xで時計周り方向に回転する取り出しレバー4によって、取り出し力貯蔵手段9がストレス付与(畜力)される。ストレス付与部Sと引き戻し部Eとの間の過渡位置に到達すると、取り出し力貯蔵手段9は十分にストレス付与(畜力)され、引き戻し部Eに沿って引き戻し力貯蔵手段として機能する(
図4参照)。引き戻し力貯蔵手段として機能する際には、取り出し力貯蔵手段9はストレスから解放されるので、可動家具部品2は能動的に閉じ方向SRに引き戻される。その引き戻し動作はまた、減衰装置(図示略)によって減衰されてもよい。取り出しローラ24の制御ベース22との相対的に強い機械的な接触のおかげで、制御要素13は、引き戻し動作時に、制御要素13用の力貯蔵手段14がストレス付与(畜力)されたままとなる位置に保持され続ける。
【0023】
引き戻し動作(retraction movement)の終わりにおいて、取り出しローラ24と共に取り出しレバー4は、
図5に示すロック位置Vに到る。それは可動家具部品の閉じ位置SSに対応する。その場合において、取り出し力貯蔵手段9は再びストレスを部分的に解放されるが、依然として、後に起きる取り出し動作のための十分な残留エネルギーを持っている。
図5から見て取れるように、取り出しローラ24は、引き戻し動作の終了後間もなく、ロック要素5のロック表面26に単にもたれかかる。その結果として、取り出しローラ24と制御ベース22との間の機械的接触はもはや存在せず、これにより、力貯蔵手段14はストレスから解放されることができ、制御要素13は、主取り出し面6から離れて対面する方向Rに動かされる(
図6参照)。しかしながら、取り出しローラ24は依然としてロック要素5のロック面26にもたれかかっているので、そのロック要素5は制御要素13と共に方向Rに動くことはできないが、制御ベース22とロック要素5との間に配置された力貯蔵手段15はストレス付与(畜力)される。その力貯蔵手段15は、力貯蔵手段14よりも低いバネ定数を有している。力貯蔵手段14のストレスの開放は、制御要素13とロック要素5との間の第2の進行路W2を開く(又は広げる)。しかしながら、可動家具部品2は依然として、取り出しレバー4がロック要素5によってロック位置Vに保持されるところの閉じ位置SSにある。
【0024】
今その位置から始めて、圧力が可動家具部品2に閉じ方向SRに付与されるならば、可動家具部品2は、
図7に示すように超過押圧位置USにいたる。閉じ方向SRへの当該動作のために、取り出しレバーベースプレート8が制御プレート12に対して移動する。取り出しレバー4も取り出しレバーベースプレート8と一緒に動かなければならないが、同時に主取り出し面6に対してももたれかかっているので、取り出しレバー4は、旋回軸Xの周りで時計周り方向に旋回し、その結果、取り出しローラ24とロック要素5のロック面26との間の機械的接触がキャンセル(解除)される。結果的に、ロック要素5は取り出しレバー4によってもはや保持されず、力貯蔵手段15はロック要素5を方向Rに引く(引っ張る)ことができる。このようにして、ロック要素5と主取り出し面6との間の第1の進行路(first travel path)W1が有効化される(be enabled)。
【0025】
今や、取り出しレバー4又は取り出しローラ24用の取り出し部Aは、もはやロック要素5によってブロックされないので、取り出し力貯蔵手段9はストレスを開放されることができ、取り出しローラ24は、
図8に示すように、第1の進行路W1に沿って取り出し部Aに到る。このようにして、制御プレート8及びそれを伴った可動家具部品2はまた、開き方向ORに動かされ、これにより可動家具部品2は開き位置OSを占めることになる。
【0026】
取り出し力貯蔵手段9のストレスの更なる解放後、可動家具部品2は更に開かれ、
図9に示すように、取り出しローラ24は、主取り出し面6又は取り出し部Aのほぼ中央に配置される。
【0027】
引き続いて、取り出し装置3の慣性(惰性)により又は可動家具部品2を引き寄せること(操作)により、取り出しローラ24は、主取り出し面6から離れて行き、取り出し力貯蔵手段がストレスから開放され且つ可動家具部品2が自由に移動可能であるところの
図10に示す位置にいたる。可動家具部品2を開き方向ORに更に引き寄せることにより、駆動装置1は再び
図3の位置に移動する。開き方向ORへの移動の際、フラップ片23は、脚バネ(leg spring)25の力に抗して取り出しローラ24によって時計周り方向に回転され、(その結果)取り出しレバー24は
図3の位置に移動することができる。その後、フラップ片23はバネ25のバネ力の下で反時計方向に再び旋回し、その結果、後ほどの閉じ(操作)時には、取り出しローラ24が自由走行部Fに戻らないが、フラップ片23のストレス付与部Sに到るようにする。
【0028】
図6から始めて、ロック可能な取り出し装置3のロック解除(アンロック)は、超過押圧によってではなく、開き方向ORに可動家具部品2を引き寄せること(pulling on)によってもたらされるならば、取り出しローラ24は、第2の進行路(second travel path)W2を介して取り出し部Aにいたる。そのことは、
図11に示されている。
より具体的には
図6から始まって、引く力が可動家具部品2に付与されるならば、取り出しローラ24はロック表面26との接触を外れて、ロック要素5上のカーブ(湾曲)した第2の取り出し面7に接触する。取り出しローラ24が第2の進行路W2に到る、又は、カーブ(湾曲)した第2の取り出し面7に接触するや否や、取り出し力貯蔵手段9はストレスから解放され、開き方向ORへの可動家具部品2の能動的(積極的)取り出しを伴って旋回軸X周りで取り出しレバー4を旋回させる。第2の取り出し面のカーブ形状(湾曲形状)は、一方の側で押すことによって起動されるときの(注:可動家具部品2の他方の側に設けられた同構造構成の駆動装置1が引き続いて引くことにより起動されるときの)引出し(可動家具部品2)の揺動やふらついた動きを特に回避する働きをする。
前方に延びた取り出し輪郭(外形の)おかげで、取り出し進行路(ejection travel path)は、取り出しエネルギーが同じままでありながら、第2の取り出し面7に沿って延長される。このことの結果は、引出しの動きが大幅に改善されるということである。しかしながら、原理上、「ロック要素5が実質的にロック表面26だけを有し、その結果、引張りによるロック解除の直後に取り出しレバー4が主取り出し面6と接触する」という可能性は、排除されるべきである。但し、引張りによる開き時に、第2の取り出し面7が反発作用面(repulsion surface)の役割を果たすようにすることは好ましい。引張りによるロック解除時に、取り出しレバー4及び取り出しローラ24はまた引き続いて、
図10に示すように取り出し部A及び自由走行部Fを経由して開き位置OSに到る。
【0029】
このように本発明は、改良された駆動装置1を提供するものであり、この改良された駆動装置1では、二つの機能(ロック(locking)及び取り出し(ejection))を持った取り出しレバー4は、超過押圧によってロック解除されるだけでなく、開き方向ORに可動家具部品2を引くことによってもロック解除され、その結果、引張りによるロック解除の際、取り出しレバー4は可動家具部品2を開き方向ORに能動的(積極的)に取り出す。
【符号の説明】
【0030】
2 引出し(可動家具部品)
3 ロック可能な取り出し装置
4 取り出しレバー
5 ロック要素
6 主取り出し面
7 第2の取り出し面
9 取り出し力貯蔵手段
11 ガイド経路
17 家具カーカス(家具枠体)
A 取り出し部
F 自由走行部
S ストレス付与部
E 引き戻し部
W1 第1の進行路
W2 第2の進行路