(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施例について説明する。
本実施例に係る基板処理装置は、半導体装置(IC(Integrated Circuits))の製造に使用される半導体製造装置の一例として構成されているものである。下記の説明では、基板処理装置の一例として、基板に対し成膜処理等を行う縦型の装置を使用した場合について述べる。しかし、本発明は、縦型装置の使用を前提としたものでなく、例えば、枚葉装置を使用しても良い。
【0010】
<装置全体構成>
図1に示す通り、基板処理装置101では、基板の一例となるウエハ200を収納したカセット110が使用されており、ウエハ200はシリコン等の材料から構成されている。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111の内部にはカセットステージ114が設置されている。カセット110はカセットステージ114上に工程内搬送装置(図示略)によって搬入されたり、カセットステージ114上から搬出されたりされる。
【0011】
カセットステージ114は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢を保持しかつカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に右回り縦方向90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0012】
筐体111内の前後方向の略中央部にはカセット棚105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。
【0013】
カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0014】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されている。カセット搬送装置118はカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114とカセット棚105と予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0015】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ125bとで構成されている。ウエハ移載装置125aにはウエハ200をピックアップするためのツイーザ125cが設けられている。ウエハ移載装置125はウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作により、ツイーザ125cをウエハ200の載置部として、ウエハ200をボート217に対して装填(チャージング)したり、ボート217から脱装(ディスチャージング)したりするように構成されている。
【0016】
筐体111の後部上方には、ウエハ200を熱処理する処理炉202が設けられており、処理炉202の下端部が炉口シャッタ147により開閉されるように構成されている。
【0017】
処理炉202の下方には処理炉202に対しボート217を昇降させるボートエレベータ115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台にはアーム128が連結されており、アーム128にはシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219はボート217を垂直に支持するとともに、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0018】
ボート217は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0019】
カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するクリーンユニット134aが設置されている。クリーンユニット134aは供給ファン及び防塵フィルタで構成されており、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0020】
筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するクリーンユニット134bが設置されている。クリーンユニット134bも供給ファン及び防塵フィルタで構成されており、クリーンエアをウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通させるように構成されている。当該クリーンエアは、ウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通した後に、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0021】
<処理装置の動作>
続いて、基板処理装置101の主な動作について説明する。
【0022】
工程内搬送装置(図示略)によってカセット110がカセットステージ114上に搬入されると、カセット110は、ウエハ200がカセットステージ114の上で垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、筐体111の後方に右周り縦方向90°回転させられる。
【0023】
その後、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送され受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0024】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、後続のウエハ200をボート217に装填する。
【0025】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ147が開き、処理炉202の下端部が開放される。その後、ウエハ200群を保持したボート217がボートエレベータ115の上昇動作により処理炉202内に搬入(ローディング)され、処理炉202の下部がシールキャップ219により閉塞される。
【0026】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に対し任意の処理が実施される。その処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット110が筐体111の外部に搬出される。
<処理炉の構成>
【0027】
図2および
図3に示す通り、処理炉202には基板としてのウエハ200を加熱するための加熱手段(加熱機構、加熱系)であるヒータ207が設けられている。ヒータ207は上方が閉塞された円筒形状の断熱部材と複数本のヒータ素線とを備えており、断熱部材に対しヒータ素線が設けられたユニット構成を有している。ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
【0028】
反応管203の下端には、例えばステンレス等によりマニホールド209が気密部材であるOリング220を介して下端開口は蓋体であるシールキャップ219によりOリング220を介して気密に閉塞され、少なくとも、反応管203、マニホールド209およびシールキャップ219により処理室201を形成している。シールキャップ219にはボート支持台218を介して基板支持手段(基板支持具)としての基板支持部材であるボート217が立設され、ボート支持台218はボートを支持した状態で保持する保持体となっている。
【0029】
図4に記載のように、ボート217は複数のボート柱212を有し、柱212には複数の溝212aが設けられている。バッチ処理される複数のウエハ200は複数の溝212aに差し込まれ、水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。そして、ボート217は、搬送手段(搬送機構)としてのボートエレベータ115により反応管203に対し昇降(出入り)することができるようになっている。ボート支持台218の下端部には、処理の均一性を向上するためにボート217を回転させるボート回転機構267が設けられている。ボート回転機構267を駆動させることにより、ボート支持台218に支持されたボート217を回転させることができるようになっている。ヒータ207は処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0030】
処理室201内には、ノズル410(第1のノズル410)、ノズル420(第2のノズル420)、ノズル430(第3のノズル430)が反応管203の下部を貫通するように設けられている。ノズル410、ノズル420、ノズル430には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310(第1のガス供給管310)、320(第2のガス供給管320)、330(第3のガス供給管330)が、それぞれ接続されている。このように、反応管203には3本のノズル410、420、430と、3本のガス供給管310、320、330とが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは3種類のガス(処理ガス)を供給することができるように構成されている。
【0031】
ガス供給管310には上流側から順に、図示しないガス供給源、流量制御装置(流量制御部)であるマスフローコントローラ312および開閉弁であるバルブ314が設けられている。ガス供給管310の先端部にはノズル410が連結されている。ノズル410は、L字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。その垂直部は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように(つまりウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように)設けられている。すなわち、ノズル410は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
【0032】
ノズル410の側面にはガスを供給するガス供給孔410aが設けられている。ガス供給孔410aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔410aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一または、大きさに傾斜をつけた開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、ガス供給管310、マスフローコントローラ312、バルブ314、ノズル410により第1のガス供給系が構成される。
【0033】
また、ガス供給管310にはキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給管510が接続されている。キャリアガス供給管510には、図示しないガス供給源、マスフローコントローラ512およびバルブ514が設けられている。主に、キャリアガス供給管510、マスフローコントローラ512、バルブ514により第1のキャリアガス供給系が構成される。尚、第1のキャリアガス供給系を第1のガス供給系に含めても良い。
【0034】
ガス供給管320には上流側から順に図示しないガス供給源、流量制御装置(流量制御部)であるマスフローコントローラ322および開閉弁であるバルブ324が設けられている。ガス供給管320の先端部にはノズル420が連結されている。ノズル420は、L字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。その垂直部は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように(つまりウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように)設けられている。すなわち、ノズル420は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
【0035】
ノズル420の側面にはガスを供給するガス供給孔420aが設けられている。ガス供給孔420aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔420aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一または、大きさに傾斜をつけた開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、ガス供給管320、マスフローコントローラ322、バルブ324、ノズル420により第2のガス供給系が構成される。
【0036】
更にガス供給管320にはキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給管520が連結されている。キャリアガス供給管520には図示しないガス供給源、マスフローコントローラ522およびバルブ524が設けられている。主に、キャリアガス供給管520、マスフローコントローラ522、バルブ524により第2のキャリアガス供給系が構成される。尚、第2のキャリアガス供給系を第2のガス供給系に含めても良い。
【0037】
ガス供給管330には上流側から順に図示しないガス供給源、流量制御装置(流量制御部)であるマスフローコントローラ332および開閉弁であるバルブ334が設けられている。ガス供給管330の先端部にはノズル430が連結されている。ノズル430は、L字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。その垂直部は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように(つまりウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように)設けられている。すなわち、ノズル430は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
【0038】
ノズル430の側面にはガスを供給するガス供給孔430aが設けられている。ガス供給孔430aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔430aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一または、大きさに傾斜をつけた開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、ガス供給管330、マスフローコントローラ332、バルブ334、ノズル430により第3のガス供給系が構成される。
【0039】
更にガス供給管330にはキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給管530が連結されている。キャリアガス供給管530には図示しないガス供給源、マスフローコントローラ532およびバルブ534が設けられている。主に、キャリアガス供給管530、マスフローコントローラ532、バルブ534により第3のキャリアガス供給系が構成される。尚、第3のキャリアガス供給系を第3のガス供給系に含めても良い。
【0040】
このように、本実施形態におけるガス供給の方法は、反応管203の内壁と、積載された複数枚のウエハ200の端部とで定義される円弧状の縦長の空間内に配置したノズル410、420、430を経由してガスを搬送し、その後ノズル410、420、430にそれぞれ開口されたガス供給孔410a、420b、430cからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。反応管203内におけるガスの主たる流れはウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0041】
上記構成に係る一例として、ガス供給管310からは、第1の所定元素を含む第1の処理ガスとして、例えば原料ガスである少なくとも金属含有ガス(金属化合物)であってタングステン(W)元素を含むW含有原料である六フッ化タングステン(WF
6)がマスフローコントローラ312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。
【0042】
ガス供給管320からは、第2の所定元素を含む第2の処理ガスとして、例えば第1の反応ガスである少なくとも水素(H)元素を含むH含有ガス(水素原料)であるジボラン(B
2H
6)が処理室201内に供給される。
【0043】
ガス供給管330からは、第2の所定元素を含む第3の処理ガスとして、例えば第2の反応ガスである水素(H)元素を含むH含有ガス(水素原料)である水素(H2)が処理室201内に供給される。
【0044】
キャリアガス供給管510、520および530からは、例えば窒素(N
2)ガスが、それぞれマスフローコントローラ512、522および532、バルブ514、524および534、ガス供給管510、520および530、ノズル410、420および430を介して処理室201内に供給される。
【0045】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。
図3に示すように、横断面視において、排気管231は、反応管203のノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420a、およびノズル430のガス供給孔430aが設けられる側と対向する側、すなわちウエハ200を挟んでガス供給孔410a、420a、430aとは反対側に設けられている。また、
図2に示すように縦断面視において、排気管231は、ガス供給孔410a、420a、430aが設けられる箇所よりも下方に設けられている。この構成により、ガス供給孔410a、420a、430aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行な方向に向かって流れた後、下方に向かって流れ、排気管231より排気されることとなる。処理室201内におけるガスの主たる流れが水平方向へ向かう流れとなるのは上述の通りである。
【0046】
排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245、圧力調整器(圧力調整部)として構成された排気バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ243、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。また、排気管231には、排気ガス中の反応副生成物や未反応の原料ガス等を捕捉するトラップ装置や排気ガス中に含まれる腐食性成分や有毒成分等を除害する除害装置が接続されている場合がある。主に、排気管231、APCバルブ243、圧力センサ245により、排気系すなわち排気ラインが構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。さらには、トラップ装置や除害装置を排気系に含めて考えてもよい。
【0047】
なお、APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行なうことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。
【0048】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410、420および430と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0049】
図5には、コントローラ121が示されている。
図3に示されているように、コントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0050】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0051】
I/Oポート121dは、上述のマスフローコントローラ312、322、332、512、522,532、バルブ314、324、334、514、524、534、614、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0052】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、マスフローコントローラ312、322、332、512、522、532による各種ガスの流量調整動作、バルブ314、324、334、514、524、534、614の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作およびAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0053】
なお、コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、係る外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0054】
<半導体装置の製造方法>
次に、上述の基板処理装置の処理炉202を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、大規模集積回路(Large Scale IntegraWon;LSI)を製造する際などに、基板上に金属を成膜する方法の例について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0055】
[第1の実施形態]
本実施形態では、金属膜としてタングステン膜を基板上に形成する方法について説明する。タングステン膜を基板上にそれぞれ異なる成膜方法で形成するよう4つの工程に分ける。まず第1の成膜工程としてガスを交互に供給することで基板上に第1のタングステン膜を成膜する。次に、第2の成膜工程としてガスを混合雰囲気とすることで第1のタングステン膜上に第2のタングステン膜を成膜する。更に、第3の成膜工程として、ガスを交互に供給することで第2のタングステン膜上に第3のタングステン膜を成膜する。更に、第4の成膜工程として、ガスを混合雰囲気とすることで第3のタングステン膜上に第4のタングステン膜を成膜する。
【0056】
本実施形態では、タングステン(W)含有原料としてWF
6を、第1の反応ガスとしてB
2H
6を、第2の反応ガスとしてH
2を用いる例について説明する。尚、この例では、第1のガス供給系によりタングステン含有ガス供給系(金属化合物供給系)が構成され、第2のガス供給系により第1の反応ガス供給系が構成され、第3のガス供給系により第2の反応ガス供給系が構成される。
【0057】
ここで、本実施形態で処理する基板について
図6、
図7を用いて説明する。
図6(A)は本実施形態における基板処理装置に搬入されるウエハを説明するための説明図である。ウエハ200はウエハ処理面(表面)200a、ウエハ側面200b、ウエハ裏面200cを有する。
図6(B)は、
図6(A)の点線で囲んだ部分αを拡大した図である。
図7(A)は本実施形態における基板処理方法を実施した後の基板を説明する図である。
図7(B)は
図7(A)の点線で囲んだ部分βを拡大した図である。
【0058】
ウエハ200のウエハ処理面(表面)200a、ウエハ側面200b、ウエハ裏面200cには、前の工程で形成されたシリコン酸化(SiO)膜601が形成されている。SiO膜601は、例えば電化蓄積層として用いられる。
【0059】
ウエハ処理面200aにおけるSiO膜上には、バリアメタル層としての窒化チタン(TiN)膜602(第1の金属膜)が形成されている。基板搬送時にウエハ移載機125のツィーザ等が物理的に接触し、それによって膜剥がれが起きる可能性があるため、ウエハ側面200bおよびウエハ裏面200cではTiN膜602が形成されていない。ウエハ側面200bおよびウエハ裏面200cに設けられていたTiN膜602は、別の装置にて、例えばエッチング処理等で除去されている。ウエハ側面200bおよびウエハ裏面200cにTiN膜を形成しないことで、搬送系における汚染を防止している。ここでは、チタンを第1の金属成分と呼ぶ。
【0060】
図6(B)は、
図6(A)の点線で囲んだ部分αを拡大した図である。
図6(A)においては説明の便宜上SiO膜601、TiN膜602が平面状の膜として記載されているが、具体的には
図5(B)のようにウエハ処理面200aには極細溝611が複数形成され、SiO膜601、TiN膜602は溝611に埋め込まれている。
【0061】
601はシリコン酸化(SiO)膜、602はTiN膜、611は極細溝、612は溝の一部として構成される犠牲膜である。SiO膜601、TiN膜602は溝611に埋め込まれている。本実施形態においては、
図7(B)のように、溝611にタングステン膜603を形成することを目的とする。
【0062】
ところで、本実施形態では、ボート217の溝212aにウエハ200を支持し、基板処理を行う。この場合、ウエハ200の側面200bや裏面200cがガスに曝されるため、側面200b、裏面200cにも膜が付着することが考えられる。この場合、前述のように、側面200b、裏面200cにはバリアメタル層602が形成されていないため、
図7のように側面200b、裏面200cのタングステン層はSiO層の上に直接形成される。このため、ウエハ加熱時に発生する膜応力によって、側面200bや裏面200cにおいて膜剥がれが起きることが考えられる。
【0063】
ここではウエハをボートで支持する場合について説明したが、枚葉装置のような基板載置台で支持する場合でもウエハ200の側面ではSiO層の上にタングステン層が形成されることから、同様の現象が起きると考えられる。
【0064】
以上の問題点に鑑み、本実施形態では、低抵抗を実現しつつ、バリアメタル層602の無いウエハ側面200bや裏面200cに付着した膜の剥がれを抑制可能な膜を形成する。
【0065】
続いて、
図7、
図8を用いて本実施形態のフローを説明する。
図7から
図8は連続したフローであり、
図7のAは
図8のAに連続している。
(ウエハチャージ工程 S110)
まず、複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。
【0066】
(ボートロード工程 S120)
複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0067】
搬入されたウエハ200には、極細溝611が形成されており、本発明ではその極細溝611にタングステン膜を形成する。タングステン膜は、例えばフラッシュメモリのフローティングゲート電極として用いられ、低抵抗化や膜の緻密さが求められている。
【0068】
基板処理面に形成された極細溝には、予め電荷蓄積層としてのシリコン酸化(SiO2)層601がウエハ上に形成されており、更にその上にはバリアメタル層としての窒化チタン(TiN)層602(第1金属膜)が形成されている。SiO2膜やTiN膜は本実施例における基板処理装置で処理される前に、別の基板処理装置にて形成される。尚、バリアメタル層は、TiNの替わりに窒化タンタル(TaN)でも良い。バリアメタル層を用いることで、本発明で形成するW層とSiO2層との密着性を高めることが可能となる。
【0069】
(圧力・温度調整工程 S130)
成膜プロセスでは、コントローラ121が、基板処理装置101を下記の通りに制御する。すなわち、ヒータ207を制御して処理室201内を例えば180℃〜550℃の範囲の温度であって、好適には250℃以下、より好ましくは200℃に保持する。その後、複数枚のウエハ200をボート217に装填し、ボート217を処理室201に搬入する。その後、ボート217をボート駆動機構267により回転させ、ウエハ200を回転させる。その後、真空ポンプ246を作動させるとともにAPCバルブ243を開いて処理室201内を真空引きし、ウエハ200の温度が200℃に達して温度等が安定したら、処理室201内の温度を450℃に保持した状態で後述するステップを順次実行する。
【0070】
(1)第1の成膜工程(S140)
図10に、本実施形態に係る第1の成膜工程S140における第1のタングステン膜の成膜シーケンスを示す。第1のタングステン膜はシード層として用いる。ここでは、タングステンを第2の金属成分と呼ぶ。また、TiN膜601を第1金属膜と呼ぶのに対して、本工程で形成する第1のタングステン膜を第2金属膜と呼ぶ。
【0071】
(第1の反応ガス供給工程 S141)
ステップ141では、フッ素成分を還元する性質を有するB
2H
6を流す。ガス供給管320にB
2H
6を、キャリアガス供給管520にキャリアガス(N
2)を流す。ガス供給管320のバルブ324、キャリアガス供給管520のバルブ524、および排気管231のAPCバルブ243を共に開ける。キャリアガスは、キャリアガス供給管520から流れ、マスフローコントローラ522により流量調整される。B
2H
6は、ガス供給管320から流れ、マスフローコントローラ322により流量調整され、流量調整されたキャリアガスを混合し、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給されつつ排気管231から排気される。B
2H
6を流すときは、APCバルブ243を適正に調節して処理室201内圧力を50〜1000Paの範囲であって、例えば60Paに維持する。マスフローコントローラ322で制御するB2H6の供給流量は1〜20slmである。B
2H
6にウエハ200を晒す時間は10〜60秒間である。このときのヒータ207の温度は、180℃〜550℃の範囲の所定の温度であって、例えば200℃になるよう設定してある。
【0072】
上記処理と併行して、ガス供給管310の途中につながっているキャリアガス供給管510から、開閉バルブ514を開けて不活性ガスを流すと、WF
6側にB
2H
6が回り込むことを防ぐことができる。
【0073】
(残留ガス除去工程 S142)
ステップ12では、ガス供給管320のバルブ324を閉めて、B2H6の供給を止める。また、排気管231のAPCバルブ243は開いたままにし、真空ポンプ246により、処理室201を20Pa以下に排気し、残留するB
2H
6を処理室201から排除する。また、この時には、N
2等の不活性ガスを、B
2H
6供給ラインであるガス供給管320およびWF
6供給ラインであるガス供給管310からそれぞれ処理室201に供給してパージすると、残留B
2H
6を排除する効果が更に高まる。
【0074】
(金属化合物供給工程 S143)
ステップ143では、WF
6を流す。具体的には、ガス供給管310にWF
6を、キャリアガス供給管510にキャリアガス(N
2)を流す。ガス供給管310のバルブ314、キャリアガス供給管510のバルブ514、および排気管231のAPCバルブ243を共に開ける。キャリアガスは、キャリアガス供給管510から流れ、マスフローコントローラ512により流量調整される。WF
6は、ガス供給管310から流れ、マスフローコントローラ312により流量調整され、流量調整されたキャリアガスを混合し、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給されつつ排気管231から排気される。この時、APCバルブ243を適正に調整して処理室201内の圧力を20〜50Paの範囲であって、例えば30Paに維持する。マスフローコントローラ312で制御するWF
6の供給量は10〜1000sccmである。WF
6にウエハ200を晒す時間は3〜30である。このときヒータ207の温度は、ウエハの温度が180〜400℃の範囲であって、例えば200℃になるよう設定してある。
【0075】
このとき、処理室201内に流しているガスは、WF
6とN
2、Ar等の不活性ガスのみであり、B
2H
6は存在しない。したがって、WF
6は気相反応を起こすことはなく、ウエハ200の表面や下地膜と表面反応(化学吸着)して、原料(WF
6)の吸着層またはW層(以下、W含有層)を形成する。WF6の吸着層とは、原料分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。W層とは、Wにより構成される連続的な層の他、これらが重なってできるW薄膜をも含む。尚、Wにより構成される連続的な層をW薄膜という場合もある。
【0076】
これと併行して、ガス供給管320の途中につながっているキャリアガス供給管520から、バルブ524を開けて不活性ガスを流すと、B
2H
6側にWF6が回り込むことを防ぐことができる。
【0077】
(残留ガス除去工程 S144)
ガス供給管310のバルブ314を閉めて処理室へのWF6の供給を停止し、バルブ614を開けてベントラインへWF6を流す。これによりWF6を常に安定して処理室へ供給することができる。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、残留WF6を処理室201内から排除する。このときN2等の不活性ガスを処理室201内へ供給すると、更に残留WF6を排除する効果が高まる。
【0078】
上記ステップ141〜144を1サイクルとし、少なくとも1回以上行なうことによりウエハ200上に所定膜厚のタングステン膜を成膜する。具体的には、S143で基板表面に形成された原料(WF)成分に対して、第1の反応ガスの水素成分が、基板表面のフッ素成分と反応し気体となって還元され、W膜が形成される。尚、第1の反応ガスの残留成分であるホウ素(B)は、残留物としてW膜中に残留する。
【0079】
尚、各サイクル中で、上記の通りに、ステップ141におけるB
2H
6の成分により構成される雰囲気と、ステップ143におけるWF
6により構成される雰囲気の夫々の雰囲気が処理室201内で混合しないように成膜することに留意する。
【0080】
また、交互供給によるタングステン膜の膜厚は、サイクル数を制御して、0.5nm〜5nmであって、例えば0.5nm程度に調整すると良い。このときに形成されるタングステン膜は、表面が滑らか(スムーズ)であって且つ緻密な連続膜となる。
【0081】
(判定工程 S145)
上記ステップ141〜144を1サイクルとし、そのサイクルを複数回(例えばX回)実施したか否かを判定する。実施した場合、第2の成膜工程S150へ移行する。実施していない場合、所定回数に到達するまでサイクルを繰り返す。
【0082】
(2)第2の成膜工程(S150)
第2の成膜工程では、二種類のガスを混合して第1のタングステン膜上に第2のタングステン膜を形成する例について説明する。ここでは、TiN膜601を第1金属膜、第1のタングステン膜を第2金属膜と呼ぶのに対して、第2のタングステン膜を第3金属膜と呼ぶ。
【0083】
(金属化合物ガス及び第2の反応ガス供給工程 S151)
図11に、本実施形態に係る第2の成膜工程におけるタングステン膜の成膜シーケンスを示す。第2の成膜工程によるタングステン膜の堆積は、コントローラ121が、バルブ、マスフローコントローラ、真空ポンプ等を制御して、気相反応が起こるように、反応させる複数のガスが、処理室内に同時に存在するタイミングが出来るようにWF
6とH
2を処理室201内に供給する。以下に、具体的な成膜シーケンスを説明する。
【0084】
本工程では、WF
6とフッ素成分を還元する性質を有するH
2を併行して流し、処理室201内で混合させる。ガス供給管310にWF
6を、キャリアガス供給管510にキャリアガス(N
2)を流す。ガス供給管310のバルブ314、キャリアガス供給管510のバルブ514、および排気管231のAPCバルブ243を共に開ける。キャリアガスは、キャリアガス供給管510から流れ、マスフローコントローラ512により流量調整される。WF
6は、ガス供給管310から流れ、マスフローコントローラ312により流量調整され、気化器700により気化され、流量調整されたキャリアガスを混合し、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給される。
【0085】
また、ガス供給管330にH
2を、キャリアガス供給管530にキャリアガス(N
2)を流す。ガス供給管330のバルブ334、キャリアガス供給管530のバルブ534、および排気管231のAPCバルブ243を共に開ける。キャリアガスは、キャリアガス供給管520から流れ、マスフローコントローラ522により流量調整される。H
2は、ガス供給管330から流れ、マスフローコントローラ332により流量調整され、流量調整されたキャリアガスを混合し、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給される。
【0086】
そして、処理室201内に供給されたWF
6とH
2は、排気管231から排気される。この時、APCバルブ243を適正に調整して処理室201内の圧力を10〜30Paの範囲であって、例えば20Paに維持する。マスフローコントローラ312で制御するWF
6の供給量は10〜1000sccmである。マスフローコントローラ322で制御するH
2の供給量は1〜20slmである。WF
6及びH
2にウエハ200を晒す時間は所望の膜厚に達するまでである。このときヒータ207温度は、ウエハの温度が100℃〜550℃の範囲であって、例えば200℃になるよう設定してある。
【0087】
ここで、第1の成膜工程と第2の成膜工程では、実質的に同じヒータ温度になるように設定しており、この場合は200℃としている。このように実質的に同じ温度としてインサイチューで処理を行うことにより、処理時間の短縮を図り、半導体装置の生産性を高める効果がある。
【0088】
処理室201内に流しているガスは、WF
6とH
2及びN
2、Ar等の不活性ガスであり、WF
6とH
2が気相反応を起こして、第1の成膜工程で形成した第1の金属膜上に第2の金属膜が形成される。
【0089】
前述したように、CVD法のような気相反応の場合、結晶化によって微細溝に対してボイドやシームが発生することが考えられるが、その原因は膜の結晶化であると考えられる。発明者は、膜の結晶化は膜の厚みや温度に依存することを見出した。そこで、本実施形態においては、第2の成膜工程S150においては、W膜の結晶化が起きる膜厚となる前に、ガスの供給を停止する。即ち、S150においては非晶質状態の膜を形成する。
【0090】
図12は、第2の成膜工程で形成したW膜の結晶構造をX線解析手法にて評価した結果である。横軸は測定時の角度を示し、縦軸は強度を示している。更には、10nm…2nmは、膜厚を示している。この評価結果においては、αのように急峻な角度の場合は結合強度が強いため結晶化された状態であり、βのようになだらかな角度の場合は非晶質化されている状態を示す。
【0091】
この表から、4nm以下の膜厚では非晶質化されていることがわかる。したがって、第2の成膜工程で非晶質層を形成する際は、0mよりも大きく4nm以下の薄い膜厚とすることが望ましい。
【0092】
本実施形態においては、結晶化が起きない膜厚として、0mよりも大きく、4nm以下が望ましく、より良くはここでは3nmから4nmの範囲の厚みとする。
【0093】
(判定工程 S152)
判定工程S152にて、予め設定された処理時間が経過したと判断すると、ガス供給管310のバルブ314及びガス供給管320のバルブ324を閉め、WF
6及びH
2の供給を停止する。ここで、予め設定された処理時間とは、例えば成膜レートと結晶化となる膜厚から算出し、結晶化されない膜厚に収まるような処理時間とする。所定時間を経過していない場合は、引き続きガスを供給し、膜を形成する。
【0094】
このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、残留WF
6及びH
2を処理室201内から排除する。またこのとき、ガス供給管510のバルブ514及びガス供給管520のバルブ524は開けておき、不活性ガスを処理室201内へ供給すると、更に残留WF
6及びN
2を排除する効果が高まる。
【0095】
(残留ガス除去工程 S153)
結晶化されない膜厚の非晶質タングステン膜を形成する成膜処理がなされると、N
2ガス等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。
【0096】
(3)第3の成膜工程(S160)
第3の成膜工程では、二種類のガスを混合して第2のタングステン膜上に第3のタングステン膜を形成する例について説明する。ここでは、TiN膜601を第1金属膜、第1のタングステン膜を第2金属膜、第2のタングステン膜を第3金属膜と呼ぶのに対して、第3のタングステン膜を第4金属膜と呼ぶ。
【0097】
第3の成膜工程は第1の成膜工程とほぼ同様であるが、判定工程S165におけるサイクル回数の値が異なる。具体的には、S141とS161、S142とS162、S143とS163、S144とS164は同様の処理を行う。S145とS165はサイクル数において相違する。
【0098】
以下、第3の成膜工程について説明するが、S161、S162、S163、S164については第1の成膜工程と同様であるので説明を省略する。
【0099】
(判定工程 S165)
上記ステップ161〜164を1サイクルとし、そのサイクルを1回以上(例えばY回)実施したか否かを判定する。実施した場合、第2の成膜工程S150へ移行する。実施していない場合、所定回数に到達するまでサイクルを繰り返す。
【0100】
尚、各サイクル中で、上記の通りに、ステップ141におけるB
2H
6の成分により構成される雰囲気と、ステップ143におけるWF
6により構成される雰囲気の夫々の雰囲気が処理室201内で混合しないように成膜することに留意する。
【0101】
このようにして、成膜工程2で形成した非晶質のタングステン膜上に結晶化されたタングステン膜を形成する。その結果、非晶質のタングステン膜が結晶化する厚みとならないので、非晶質状態を維持した膜を実現できる。
【0102】
ところで、上記のように第1の反応ガスとしてB
2H
6を用いた場合、分解したB成分が1サイクルで形成する膜中に残留してしまう。従って、サイクル数「Y」が多いほど、B成分の残留密度が高くなる。B成分の密度が高いと電気抵抗値が上昇するため、コントロール電極等の電極として採用することは困難である。従って、B成分の少ない抵抗値が低い膜を形成することが望ましい。本実施形態においては、サイクル数Yの回数を少なくすることでB成分の密度を低減させる。
【0103】
この工程におけるタングステン膜は、抵抗値が低く、更には第2成膜工程で形成した非晶質タングステンの非晶質状態を維持する膜であればよいので、例えばサイクル数Yを1回とし、その膜厚を3Åm程度に調整すると良い。
【0104】
(判定工程 S170)
第2の成膜工程S150及び第3の成膜工程S160が所定回数(Z回)実施されたか否かを判定する。所定回数実施されている場合、第4の成膜工程S180を開始する。所定回数実施されていない場合、第3の成膜工程S160の成膜処理を開始する。このようにして、所望の膜厚の非晶質タングステン膜を形成する。
【0105】
(4)第4の成膜工程(S180)
第4の成膜工程では、二種類のガスを混合して第3のタングステン膜上に第4のタングステン膜を形成する例について説明する。第4のタングステン膜は、電極のもっとも上部に形成される膜である。ここでは、TiN膜601を第1金属膜、第1のタングステン膜を第2金属膜、第2のタングステン膜を第3金属膜、第3のタングステン膜を第4金属膜と呼ぶのに対して、第4のタングステン膜を第4金属膜と呼ぶ。
【0106】
(金属化合物ガス及び第2の反応ガス供給工程 S181)
図11に、本実施形態に係る第2の成膜工程におけるタングステン膜の成膜シーケンスを示す。第2の成膜工程によるタングステン膜の堆積は、コントローラ121が、バルブ、マスフローコントローラ、真空ポンプ等を制御して、気相反応が起こるように、反応させる複数のガスが、処理室内に同時に存在するタイミングが出来るようにWF
6とH
2を処理室201内に供給する。以下に、具体的な成膜シーケンスを説明する。
【0107】
本工程では、WF
6とH
2を併行して流し、処理室201内で混合させる。ガス供給管310にWF
6を、キャリアガス供給管510にキャリアガス(N
2)を流す。ガス供給管310のバルブ314、キャリアガス供給管510のバルブ514、および排気管231のAPCバルブ243を共に開ける。キャリアガスは、キャリアガス供給管510から流れ、マスフローコントローラ512により流量調整される。WF
6は、ガス供給管310から流れ、マスフローコントローラ312により流量調整され、気化器700により気化され、流量調整されたキャリアガスを混合し、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給される。
【0108】
また、ガス供給管330にH
2を、キャリアガス供給管530にキャリアガス(N
2)を流す。ガス供給管330のバルブ334、キャリアガス供給管530のバルブ534、および排気管231のAPCバルブ243を共に開ける。キャリアガスは、キャリアガス供給管520から流れ、マスフローコントローラ522により流量調整される。H
2は、ガス供給管330から流れ、マスフローコントローラ332により流量調整され、流量調整されたキャリアガスを混合し、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給される。
【0109】
そして、処理室201内に供給されたWF
6とH
2は、排気管231から排気される。この時、APCバルブ243を適正に調整して処理室201内の圧力を10〜30Paの範囲であって、例えば20Paに維持する。マスフローコントローラ312で制御するWF
6の供給量は0.1〜1.0g/minである。マスフローコントローラ322で制御するH
2の供給量は0.1〜0.5slmである。WF
6及びH
2にウエハ200を晒す時間は所望の膜厚に達するまでである。このときヒータ207温度は、ウエハの温度が100℃〜550℃の範囲であって、例えば200℃になるよう設定してある。
【0110】
ここで、第1の成膜工程と第2の成膜工程では、実質的に同じヒータ温度になるように設定しており、この場合は450℃としている。このように実質的に同じ温度としてインサイチューで処理を行うことにより、処理時間の短縮を図り、半導体装置の生産性を高める効果がある。
【0111】
処理室201内に流しているガスは、WF
6とH
2及びN
2、Ar等の不活性ガスであり、WF
6とH
2が気相反応を起こして、第1の成膜工程で形成した第1の金属膜上に第2の金属膜が形成される。
【0112】
前述したように、CVD法のような気相反応の場合、結晶化によって微細溝に対してボイドやシームが発生することが考えられるが、その原因は膜の結晶化であると考えられる。発明者は、膜の結晶化は膜の厚みや温度に依存することを見出した。そこで、本実施形態においては、第4の成膜工程S180においては、W膜の結晶化が起きる膜厚となる前に、ガスの供給を停止する。即ち、S180においては非晶質状態の膜を形成する。尚、結晶化が起きない膜厚として、0mよりも大きく、4nm以下が望ましく、ここでは3nmから4nmの範囲の厚みとする。
【0113】
(判定工程 S182)
判定工程S152にて、予め設定された処理時間が経過したと判断すると、ガス供給管310のバルブ314及びガス供給管320のバルブ324を閉め、WF
6及びH
2の供給を停止する。ここで、予め設定された処理時間とは、例えば成膜レートと結晶化となる膜厚から算出し、結晶化されない膜厚に収まるような処理時間とする。所定時間を経過していない場合は、引き続きガスを供給し、膜を形成する。
【0114】
このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、残留WF
6及びH
2を処理室201内から排除する。またこのとき、ガス供給管510のバルブ514及びガス供給管520のバルブ524は開けておき、不活性ガスを処理室201内へ供給すると、更に残留WF
6及びN
2を排除する効果が高まる。
【0115】
なお、判定工程S182における所定時間は、判定工程S152における所定時間と同様の時間であっても良い。しかしながら、タングステン膜の厚みを調整する場合は、結晶化しない時間であって、且つ所望の厚みを達成できる時間であればよく、したがってS152の判定時間と異なっても良い。
【0116】
(残留ガス除去工程 S173)
結晶化されない膜厚の非晶質タングステン膜を形成する成膜処理がなされると、N
2ガス等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。残留ガスを排出したら、基板処理を終了し、大気圧復帰工程S190に移行する。
【0117】
(大気圧復帰工程 S190)
その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0118】
(ボートアンロード工程 S200)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。
【0119】
(ウエハディスチャージ工程 S210)
その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。これにより1回の成膜処理(バッチ処理)が終了する。
【0120】
続いて、本実施形態に係る第1成膜工程S140、第2成膜工程S150と、第3成膜工程S160、第4成膜工程S170で形成される膜との関係について、
図8、
図9及び
図13を例に説明する。
【0121】
図13(A)は、搬入されたウエハの状態を説明した図であり、説明の便宜上、極細溝を構成する溝周囲の犠牲膜612等は省略し、形成済みの膜のみ記載している。搬入されたウエハ200には、既に電荷蓄積層としてのシリコン酸化(SiO
2)層601がウエハ上に形成されており、更にその上にはバリアメタル層としての窒化チタン(TiN)層602が形成されている。尚、バリアメタル層は、TiNの替わりに窒化タンタル(TaN)でも良い。バリアメタル層を用いることで、本発明で形成するW層とSiO
2層601との密着性を高めることが可能となる。
【0122】
図13(B)は、
図13(A)の状態のウエハに対して本発明の第1の成膜工程S140を実施した状態の説明図であり、第1の成膜工程S140にて第1の金属膜であるシード層603aを形成する。第1の成膜工程でシード層603aを形成しているので、シード層603aの表面は滑らかな状態である。したがって、この後にシード層603a上に形成される膜のラフネスを抑える事が可能となる。
【0123】
図13(C)は、
図13(B)の状態のウエハに対して、本発明の第2の成膜工程S150を実施した状態の説明図である。シード層603a上に、第2の金属膜である非晶質W層603b(1)を形成する。非晶質層603b(1)は、第1の成膜工程や第3の成膜工程である交互供給処理時に発生する残留物(本実施形態ではB成分)を含まないため電気抵抗が低い。更には結晶化されていない膜であるのでボイドやシームが発生しない状態でシード層603a上に堆積される。非晶質層603b(1)は、抵抗率が少ない状態で膜厚を稼ぐために、膜が結晶化しない範囲で後述する薄膜W層603cよりも厚くする。このようにすることで、交互供給のみによる成膜処理よりも、早い成膜速度で且つ低抵抗の膜を形成することができる。
【0124】
図13(D)は、
図13(C)の状態のウエハに対して本発明の第4の成膜工程S160を実施した状態の説明図であり、非晶質層603b(1)上に、第2の金属膜である薄膜W層603c(1)を形成する。このとき、膜中に取り込まれるボロン(B)成分が下方の非晶質層603b(1)に移動し、非晶質層の結晶化を抑制する。更には、薄膜W層603c(1)は、この直後に行われる第3の成膜工程S150によって、薄膜W層603c(1)上に形成される非晶質層603b(2)と非晶質層603b(1)との間に存在するので、非晶質層603b(2)を形成する際の非晶質層603b(1)の結晶化を抑制することができる。ここではB成分を、例えば不純物と呼ぶ。
【0125】
図13(E)は、
図13(D)の状態のウエハに対して本発明の第3の成膜工程S150を実施した状態の説明図であり、薄膜W層603c(1)上に第2の金属膜である非晶質層603b(2)を形成する。
【0126】
図13(F)は、第2の成膜工程及び第3の成膜工程を繰り返し、更に第4工程を実施しすることで形成されるW膜を説明した図である。シード層603a上には、第2の成膜工程で形成される非晶質層603b(z)と第3の成膜工程で形成される薄膜W層603c(z)が交互に形成されている。シード層603aの形成工程を含め、第2の成膜工程及び第3の成膜工程をz回繰り返すことで所望の膜厚のW膜を形成する。
【0127】
W膜の最上層603dは第4の成膜工程によって形成される膜である。薄膜W層603cは、前述のように複数回交互に供給して形成する膜であり、分解したガスを用いるため、せいぜい3Å程度の厚みである。それに対し、気相反応を用いて形成される非晶質層603bは、後述するように3nmから4nm程度である。したがって、十数nmの膜厚に制御する際は、第3の成膜工程を用いて薄膜W層を形成する場合非常に時間がかかるため、膜厚を調整する場合、第4の成膜工程を用いて非晶質膜を形成する。このようにすることで、低抵抗であり且つ所望の厚みを有する膜を効率良く形成することが可能となる。
【0128】
以上のような方法で膜を形成すると、非晶質状態の膜が主となるので、膜応力の低い膜が形成される。即ち、
図7(A)のように、ウエハ側面200aやウエハ裏面200bに膜が形成されたとしても、膜剥がれが起きにくい膜を形成することができる。
【0129】
(アニール工程)
成膜後、形成されたタングステン膜に対して、窒素雰囲気でアニール処理(加熱処理)を行うことが望ましい。アニール処理は、第2の成膜工程に引き続き、処理室201内で実施しても、他のアニール装置に基板を移動してアニール処理しても良い。ここでは、タングステン膜を形成した後、引き続き処理室201内でアニールする方法について説明する。
【0130】
第1の成膜工程から第4の成膜工程を実施したら、大気圧復帰工程S170に移行する前に、次の動作を実施する。
残留ガス除去工程S153の後、第1の成膜工程及び第2の成膜工程を所定回数実施したら、各供給系のノズルからキャリアガスとして使用していたN2ガスを処理室201内に供給し、窒素雰囲気とする。それと共に、ウエハ200の温度を600℃程度に上昇させるようヒータ207を制御し、ウエハのアニール処理を行う。
【0131】
図14は、結晶構造をX線解析手法にて評価した結果である。(A)は、第1から第4の成膜工程で形成したタングステン層の評価結果であり、(B)は(A)のタングステン層を600℃でアニール処理した層の評価結果である。横軸は測定時の角度を示し、縦軸は強度を示している。この評価結果においては、αのように急峻な角度の場合は結合強度が強いと判断される。αはβに比べ急峻な角度であるので、βに比べて結晶化化されているといえる。即ち、アニール処理をすることで、結晶化されることがわかる。
【0132】
(比較例の説明)
続いて比較例を説明する。
比較例では、本発明に係る実施形態と同様の装置を用いるが、基板処理方法及びそれに関する装置の制御方法が異なる。
【0133】
以下の説明においては、比較例の基板処理方法におけるウエハチャージ工程、ボートロード工程、圧力・温度調整工程、大気圧復帰工程、ボートアンロード工程、ウエハディスチャージ工程は、本発明に係る実施形態と同様の方法であるので説明を省略する。ここでは、相違する成膜工程について説明する。
【0134】
(比較例における基板処理方法)
(成膜工程)
比較例に係る成膜工程では、本実施形態と同様の基板を処理対象とし、溝611にW膜を形成することを目的とする。
【0135】
基板が搬入されたのち、処理室内の圧力、温度が所望の値となったら、B
2H
6とWF
6の交互供給を1サイクルとし、そのサイクルを複数回行う。そのサイクルでは、基板表面に形成された原料(WF)成分に対して、第1の反応ガスの水素成分が、基板表面のフッ素成分と反応し気体となって還元され、W膜が形成される。
【0136】
B
2H
6を供給する工程ではB
2H
6を分解し、WF
6を供給する工程ではWF
6を分解する。それら分解したガスが一サイクルごとに反応し、結合度の高い緻密な膜を形成する。
【0137】
(比較例と本実施形態との比較)
ところで、比較例は本実施形態に比べ次の問題がある。
第1に抵抗値が高い点である。比較例の場合、一層ごとにB成分が含まれ、その層が所望の膜厚になるまで積層されるので、結果的に抵抗値が上昇する。従って、本実施形態と違い、電極への採用に適さない膜となってしまう。電極に用いる際には、本実施形態における基板処理方法が望ましい。
【0138】
第2に、応力が高い点である。応力については
図14を用いて説明する。
図14は形成された膜とその膜応力をまとめたものである。
図14の「W膜(1)」は、第1の成膜工程から第4の成膜工程を実施して形成した膜である。「W膜(2)」は、W膜(1)をアニールした膜である。ここでは膜ごとに計測した応力データを掲載している。「比較例のW膜」は比較例で形成した膜である。
【0139】
図14に記載のように、W膜(1)は1110.2MPaであり、W膜(2)は1122.9MPaであり、比較例の膜応力は1991.4MPaである。このことから、比較例は本実施形態に比べ、膜応力が著しく高いことがわかる。即ち、比較例は本実施形態にべ、膜応力に基づいく膜剥がれが起きやすい。これに対して、本実施形態の場合膜応力が低いので、膜剥がれが起きにくい。
【0140】
尚、上記実施形態では非晶質膜を形成する際にWF6とH2を用いたが、本発明はそれに限るものではなく、例えばWF6とB2H6でも良い。
【0141】
また、上記実施形態では、フラッシュメモリのフローティングゲート電極の形成方法を例にして説明したが、本発明はそれに限るものではなく、例えばフラッシュメモリのコントロール電極や金属製の配線でも良い。
【0142】
また、上記実施形態では金属膜としてタングステン、極薄膜としてボロンを含んだタングステン膜を用いて説明したが本発明はそれに限るものではなく、金属膜としては窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化モリブデン(MoN)、窒化亜鉛(ZnN)などの金属窒化物や金属炭化膜、銅(Cu)やルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)などの金属膜やそれぞれを組み合わせた膜にも適応でき、極薄膜としては非晶質を保つ薄い金属膜や金属窒化膜、金属炭化膜やそれぞれを組み合わせた膜を用いた場合にも適用できる。
【0143】
また、上記実施形態は、大口径化ウエハの処理において特に有効である。具体的には次の理由による。
近年、歩留まり向上を目的として、従来のウエハ(例えば300mmウエハ)から大口径化(例えば450mm)が図られており、大きな基板になるほど成膜面積が増加している。成膜面積が増加するとより熱応力の影響が顕著になるため、熱応力の低下が求められている。これは、基板側面や基板裏面に限らず、バリア膜が形成されている基板処理面にも言える。
【0144】
本発明は、応力を低くすることが可能であるので、大口径化ウエハにおいても膜剥がれを抑制することができる。従って、大口径化ウエハにおいてはより有効な発明である。なお、上記においては大口径化について記載したが、それに限るものではなく、例えば成膜面積が増加する3次元デバイス構造においてもより有効である。
【0145】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0146】
(付記1)
基板処理面に少なくとも第1の金属成分が含有される第1の金属膜が形成され、それ以外の面に前記第1の金属膜が形成されていない基板を搬入する基板搬入工程と、
前記第1の金属成分と異なる成分である第2の金属成分を少なくとも含有する金属化合物と、前記金属化合物に対して反応性を有する第1の反応ガスを交互に複数回処理室に供給して、前記処理室内に載置された基板に第2の金属膜を形成する第1の成膜工程と、
前記金属化合物と、前記金属化合物に対して反応性を有する第2の反応ガスを互いに混合するよう前記処理室に供給して、前記第2の金属膜上に非晶質膜状態の第3の金属膜を形成する第2の成膜工程と、
前記金属化合物と、前記第1の反応ガスを交互に少なくとも1回供給して、前記第3の金属膜上に第4の金属膜を形成する第3の成膜工程と、
前記2の成膜工程と第3の成膜工程を交互に複数回行う工程と
前記金属化合物と、前記第2の反応ガスを互いに混合するよう前記処理室に供給して、前記第4の金属膜上に、非晶質膜状態の第5の金属膜を形成する第4の成膜工程と、
を有する半導体デバイスの製造方法。
【0147】
(付記2)
前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスは異なるガス種であって、それぞれの反応ガスは少なくとも還元性の性質を有するガスである付記1記載の半導体デバイスの製造方法。
【0148】
(付記3)
前記金属化合物は、少なくともフッ素成分を含有し、前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスは、前記フッ素成分を還元する性質を有する付記1または2記載の半導体デバイスの製造方法。
【0149】
(付記4)
前記成膜工程の後、前記基板を加熱する加熱工程とを有する付記1から3の内、いずれか一つに記載の半導体デバイスの製造方法。
【0150】
(付記5)
前記第4の金属膜は、前記第3の金属膜よりも薄く形成される付記1から4の内、いずれか一つに記載の半導体デバイスの製造方法。
【0151】
(付記6)
前記第2の金属成分はタングステンである付記1から5の内、いずれか一つに記載の半導体デバイスの製造方法。
【0152】
(付記7)
前記第1の金属成分はチタンである付記1から6の内、いずれか一つに記載の半導体デバイスの製造方法。
【0153】
(付記8)
基板処理面に少なくとも第1の金属成分が含有される第1の金属成分含有膜が形成され、それ以外の面に前記第1の金属成分含有膜が形成されていない基板が搬入される処理室と、
第1の成膜工程、第2の成膜工程、第3の成膜工程、第4の成膜工程を実行する際、前記処理室に前記第1の金属成分と異なる成分である第2の金属成分を少なくとも含有する金属化合物金属化合物を供給する金属化合物供給系と、
前記第1の成膜工程、前記第3の成膜工程を実行する際、前記金属化合物に対して反応性を有する第1の反応ガスを前記金属化合物と交互に前記処理室に供給する第1の反応ガス供給系と、
前記第2の成膜工程、前記第4の成膜工程を実行する際、記金属化合物に対して反応性を有する第2の反応ガスを前記金属化合物と混合させる第2の反応ガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
前記金属化合物と、前記第1の反応ガスを交互に複数回処理室に供給して、前記処理室内に載置された基板に第2の金属膜を形成する前記第1の成膜工程と、
前記金属化合物と、前記第2の反応ガスを互いに混合するよう前記処理室に供給して、前記第2の金属膜上に非晶質膜状態の第3の金属膜を形成する前記第2の成膜工程と、
前記金属化合物と前記第1の反応ガスを交互に少なくとも1回供給して、前記第3の金属膜上に第4の金属膜を形成する前記第3の成膜工程と、
前記2の成膜工程と第3の成膜工程を交互に複数回行う工程と
前記金属化合物と、前記第2の反応ガスを互いに混合するよう前記処理室に供給して、前記第4の金属膜上に、非晶質膜状態の第5の金属膜を形成する前記第4の成膜工程と、
を行うよう制御する制御部と
を有する基板処理装置。
【0154】
(付記9)
基板処理面に少なくとも第1の金属成分が含有される第1の金属膜が形成され、それ以外の面に前記第1の金属膜が形成されていない基板を搬入する基板搬入工程と、
前記第1の金属成分と異なる成分である第2の金属成分を少なくとも含有する金属化合物と、前記金属化合物に対して反応性を有する第1の反応ガスを交互に複数回処理室に供給して、前記処理室内に載置された基板に第2の金属膜を形成する第1の成膜工程と、
前記金属化合物と、前記金属化合物に対して反応性を有する第2の反応ガスを互いに混合するよう前記処理室に供給して、前記第2の金属膜上に非晶質膜状態の第3の金属膜を形成する第2の成膜工程と、
前記金属化合物と、前記第1の反応ガスを交互に少なくとも1回供給して、前記第3の金属膜上に第4の金属膜を形成する第3の成膜工程と、
前記2の成膜工程と第3の成膜工程を交互に複数回行う工程と
前記金属化合物と、前記第2の反応ガスを互いに混合するよう前記処理室に供給して、前記第4の金属膜上に、非晶質膜状態の第5の金属膜を形成する第4の成膜工程と、
をコンピュータに実行させるプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。