【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は請求項1に従うボタンにより解消される。詳しくは、本発明に従うボタンによれば、ボタンの胴部の周縁部あるいはその近辺に装着手段を設けたことを特徴とするボタンが提供される。ボタン止着状態で前記装着手段が布地の相手側のセクションのスリット形状のボタンホール上又はその付近に来るよう、ボタンをその縁部位置付近で布地に取り付けることで、ボタンを、2つの布地セクションを引き離すことで手際よく外すことができる。前記装着手段は、ボタンを引き外す動作の適用時にボタンをボタンホールを通して案内する。
【0010】
ボタン縁部あるいはその付近の装着手段は、前記案内機能上、ボタン縁部を布地方向に部分的に配向又は偏向させる構成を有することが好ましい。前記装着手段は、ボタンの、特には半分を、ボタンホールを通して引き外し方向にボタンを案内する構成を有することが好ましい。前記装着手段はボタンの半分位置に伸延されるのが好ましい。
ボタン縁部の複数位置に沿って装着手段を設け得るが、装着手段をボタンの周縁部あるいはその付近の一カ所に設けることが好ましい。そうすればボタンは設計上簡単に外せる形状となる。
【0011】
ボタンの胴部の中央位置には更に装着手段が設けられる。これらの中央の装着手段は、例えば、ボタンにおいて伝統的に使用されてきた結合手段に相当するものであり、複数の貫通孔あるいはシャンクを含み得る。この実施態様では、伝統的な装着手段がボタンの中央部内あるいはその周囲に、例えば一定パターンで位置付けられ、他方、ボタン縁部付近あるいは縁部位置の前記装着手段はボタン中央から半径方向外側に離れた、好ましくは一カ所に伸延される。
【0012】
ボタンの胴部は、ボタン外し中にボタンをボタンホールを通してボタンを更に案内するための、装着手段方向に傾斜されたテーパ付け部分をその縁部付近に有することが好ましい。テーパ付け、即ち、幅及び又は高さ低減は、ここでは止着位置でのボタンの、スリット状ボタンホールの長手方向におけるものであることが好ましい。
【0013】
詳しくは、ボタンの胴部は、この胴部の下面の平面と平行に見える方向で、縁部あるいはその付近の装着手段位置に向けてテーパ付けされた幅を有する。換言すれば、胴部の幅は、胴部の縁部あるいはその付近の装着手段に向けて減少される。伝統的なボタンは円盤形状であり、その外側縁部は円形であるが、本発明に従うボタンはテーパ付けされた外側縁部を有し、この外側縁部のテーパ付けセクションは以下に説明されるように実質的に直線的に伸延されることが好ましい。
【0014】
ボタンの底部は一般に実質的に平坦面であることから、ボタンの幅はこの平坦面に関して形成される。しかしながら、より一般的にはボタンの胴部は高さ、幅及び長さを有し、高さは幅や長さより実質的に小さい。長さは胴部の縁部あるいはその付近の装着手段を貫いて伸延するラインに沿って形成される。幅は長さに直角方向に伸延する。
好ましい実施態様によればボタンの胴部は、この胴部の下面の平面に直角の方向で縁部あるいはその付近の装着手段位置に向けてテーパ付けされた、案内を更に改善するための高さ部分を有する。言い換えると、胴部のこの高さ部分は縁部付近の装着手段に向けて低くなって行く。
【0015】
胴部が、縁部あるいはその付近の装着手段から胴部の中心までを伸延するラインに沿って測定される胴部長さの少なくとも半分、好ましくは半分以上に沿ってテーパ付けされれば案内は更に改善される。胴部が実質的に直線的あるいは平面的にテーパ付けされれば案内は更に良好化される。
ボタンは胴部を貫いて伸延する孔を使用して布地に効率的に装着され得る。従って、更に他の好ましい実施態様によれば、周縁部あるいはその付近の装着手段は、ボタンの胴部の上側表面と下面との間を伸延する少なくとも1つの貫通孔を含む。貫通孔は糸を受ける構成を有する。
【0016】
胴部は、ボタンの縁部あるいはその付近に、隣り合って位置付けられた2つの貫通孔を含み得る。これによりボタンの縫い付けが容易化され得る。
しかしながら、胴部の周縁部あるいはその付近に単一の貫通孔を設けても良い。その場合は、ボタンを布地に取り付ける糸がこの貫通孔に通され且つボタンの外側縁部に沿ってループ掛けされる。これにより、ボタンを引張して外す間にボタンが引張方向のボタンホールをずっと効率的に貫いて送られるため、ボタン外し効率が更に向上する。
胴部の貫通孔付近の周縁部には、ボタンの外側縁部に沿わせた糸を見えにくくするための、前記上下の各側面間を延びる凹所が含まれ得る。前記凹所は糸を受けるように構成され、その構成上、好ましくは糸が凹所内に埋め込まれるような形状とされる。
【0017】
本発明のボタンの他の好ましい実施態様では、周縁部あるいはその付近の装着手段は胴部を貫いて伸延する2つの端部を有する通路を含み、前記端部は胴部の下面及び又は周縁部に位置付けられる。本実施態様では上側表面は端部を含まず、かくして、縁部付近の装着手段は見えない又は非常に見えにくい。前記通路は適切に湾曲され得る。
本発明の他の好ましい実施態様では、胴部は、胴部の縁部あるいはその付近の装着手段及び胴部の中心を貫いて伸びるラインに直角の横断面で見た場合に、一方の表面から他方の表面の側縁部に向けて高さが低くなるように伸延する傾斜面を有する。この傾斜面により、ボタンは外される際にスリットを通して案内されるように回転動作する。他方の表面に関する傾斜面の角度は実質的に90°より小さい、好ましくは45°より小さい角度であることが好ましい。傾斜表面は好ましくはライン、特には長手方向軸から前記縁部方向に伸延され、より好ましくは側縁部及び前記ライン間の距離の少なくとも半分に沿って伸延される。
【0018】
ボタン外しを更に容易化するには、第1表面から第2表面の側縁部に向けて高さが低くなるように伸延する第1傾斜面と、第2表面から第1表面の反対側の側縁部に向けて高さが低くなるように伸延する第2傾斜面とを有することが好ましい。この場合、ボタンは対向する2つの傾斜面を有する。断面の1点に沿って見た2つの前記表面の平面は実質的に平行に延びることが好ましい。換言すれば、前記表面が他方の表面に関して伸延する角度は実質的に同一であることが好ましい。ボタンを外そうとしてボタンを引っ張ると、前記2つの傾斜面がボタンに回転動作を誘起させてボタンをスリットに通し易くする。
【0019】
横断面で見て、一方の表面が他方の表面に関してある角度を成し、この角度が装着手段の縁部付近の小さい第1値から装着装置の縁部から遠い方向のもっと大きい第2値に増大する場合にボタンがスムーズに外れる作用が得られる。追加的な装着手段付近の場所、即ち胴部の傾斜先端部位置における角度は小さく、例えば5〜15°、好ましくは約10°であり、この角度が前記傾斜先端位置から側縁部に沿った方向で、例えば40〜50°、好ましくは約45°に増大される。ボタンをスリットを通して移動させるとボタンは角度が増大するに従い徐々に回転し、かくしてボタンは効率的に外され得る。
【0020】
本発明に従うボタンは、ボタンを、胴部の幅の傾斜に従うボタン外し方向に引っ張ることで効率的に外され得る。しかしながら、対向する2方向に引張する間のボタン外しを容易化させるために、胴部の第1縁部位置の第1装着手段と実質的に対向する第2装着手段を周縁部あるいはその付近に更に設け、胴部の幅を前記縁部あるいはその付近の第2装着手段の位置に向けて傾斜させることも好ましい。これにより胴部は、好ましくはその中心と、縁部位置の2つの装着手段とを通して延びるラインに沿って見た場合に2つの方向にテーパ付けされる。これによりボタンは前記中心を通して延びる対称軸に関してミラー対称性を有することが好ましい。そのようなボタンはその胴部の形状自体に、ボタン外しを容易化する上で有益な効果があるため、追加的な装着手段を設けないようにしても良い。
【0021】
先に記載されたように両方向への引っ張り時にボタン外しを容易化させる回転動作を誘起させるためには、傾斜、即ち、幅方向に傾斜する両端部に、回転動作を誘起する傾斜面を設けるのが好ましい。詳しくは、胴部が4つの側縁部セクションを含み、2つの第1側縁部セクションが第1縁部位置の第1装着手段方向に伸延され、2つの側縁部セクションが第1縁部位置の第2装着手段方向に伸延され、胴部の好ましくは対向する2つの側縁部セクション位置に傾斜面を含むことが好ましい。これにより胴部は少なくとも、第1側縁部セクションと、前記第1側縁部セクションと対向する第2側縁部セクション位置とにおいて傾斜面を含むものとなる。
【0022】
2つの傾斜面が底面に直角な前記ラインを通して伸延する平面に関してミラー対称であればボタン外し作用は更に改善される。第1或いは第2側縁部の各々に傾斜面を設け、第1側縁部セクション位置の各傾斜面の平面が平行で且つ第2側縁部セクション位置の各傾斜面の平面が平行になるように配向させ得る。
【0023】
傾斜面は、縁部あるいはその付近に追加的な装着装置を持たないボタン、あるいは下面の平面に傾斜する幅部分を有さないボタン、即ち、例えば、一般に使用されるような丸形ボタンでも使用され得る。これらのボタンは外す、特にはこれらボタンを収受するスリットを通してボタンを案内するのが困難な点が問題である。
【0024】
従って、本発明によれば更に、布地、例えば衣服用のボタンであって、胴部を含み、前記胴部の中央位置には装着手段が設けられ、前記装着手段は、例えば縫合によりボタンを布地に装着させるような構成を有し、前記胴部が、胴部の下面の平面に平行な平面内の、前記装着手段を貫いて伸びるラインに直角な横断平面から見た場合に、一方の表面から他方の表面の側縁部方向に高さが低くなるように伸延する傾斜面を有し、前記傾斜面が、前記側縁部と前記ラインとの間の距離の少なくとも半分に沿って伸延されるボタンが提供される。前記傾斜面は胴部の回転動作を誘起させ、この回転動作が先に記載されたようにボタン外しを容易化させる。ボタンは丸形の、あるいは、例えば、テーパ付けされた幅部分を有する胴部を含み得、前記胴部は中心を貫いて伸びる前記ラインの方向にテーパ付けされる。胴部は、先に説明した理由から、第1表面から第2表面の側縁部方向に高さが低くなるように伸延する第1傾斜面と、前記第2表面から前記第1表面の対向する側縁部方向に高さが低くなるように伸延する第2傾斜面とを有するのがやはり好ましい。同じく先に説明した理由から、横断面で見た場合に、前記傾斜面が他方の表面に関してある角度を形成し、前記ある角度が、装着手段を設けた縁部付近における小さい第1値から前記装着手段を設けた縁部から離れる方向でもっと大きい第2値に増大することが好ましい。
【0025】
本発明の他の実施態様によれば、ボタンを引っ張る力を加える際に対応するスリットを容易に通過し、かくして効率的に外せる、布地、例えば衣服を止着させるための使い易いボタンであって、胴部を含み、前記胴部が、例えば縫合によりボタンを衣服に装着するように構成された装着手段を備え、前記ボタンの前記胴部が、胴部の下面の平面に平行な方向から見てテーパ付け方向に沿って減少する傾斜する幅部分を有し、前記装着手段が、前記胴部の中心位置から前記ラインに沿った縁部方向に可動であるボタンが提供される。前記装着手段が縁部方向に可動であることから、ボタンはスリットを通して効率的に付勢され、かくして容易に外され得る。装着手段はボタンを外すために付加される引張力により可動であることが好ましい。装着手段は引張されると縁部方向にずれ、かくして前記縁部をスリット方向に付勢し且つ、更に引張されるとこのスリットを通してボタンを案内する。
【0026】
装着手段は、例えばリング形状の部材構成を有し、好ましくは、ボタンの胴部の下面上あるいは下側表面に平行な平面内を可動であることが好ましい。前記下面には、装着手段を受け且つ案内するための、例えば、案内手段、例えば溝を設け得る。
【0027】
装着手段は、この装着手段を中央位置方向に偏倚させる偏倚手段を含むことが好ましい。この偏倚手段により、装着手段は無負荷時は中央位置に伸延してボタンの偶発的な外れを防止し、引張力の付加時には縁部方向にずれる。引張力を解放すると装着手段はずれて中央位置に戻る。装着手段は、この装着手段を中央方向に偏倚させるための、例えばバネ形態の弾性手段を含むことが好ましい。糸を受ける、例えばリング形態の装着手段は、例えば、特にはバネ形態の偏倚手段を介して胴部内に結合される。装着手段は更に、糸を受けるためのバネ内に配置された穴形態のものであり得る。好ましくはバネ形態のものである偏倚手段は、溝形態の案内手段内に配置され得る。
【0028】
更には本発明によれば、少なくとも部分的には布地から作製される、特には衣類である製品であって、前記布地には本発明に従う少なくとも1つのボタンが設けられる製品が提供される。
本発明の更に好ましい実施態様によれば、長手方向に伸延し且つボタンを受ける構成を有するスリットを含む製品であって、前記ボタン及び対応するスリットが、ボタンの胴部の周縁部あるいはその付近の装着装置が前記スリットの長手方向上を配向される製品が提供される。これにより、先に記載されたようにボタン外し作用が更に効率化される。
【0029】
ボタン外しに際してボタンをボタンホール方向に更に配向させるため、更に好ましい実施態様では、縁部あるいはその付近の装着手段の位置におけるボタンと布地との間の距離が、ボタンの中央位置における前記距離より短い。
【0030】
本発明の更に好ましい実施態様によれば、製品に設けたスリットを通してボタンを外す際のボタン用の通路を提供するために、前記スリットには、スリットの一部、例えばスリットの端部をボタンを容易に外せるよう拡幅する拡幅手段が設けられる。拡幅手段は、ボタン外し時にボタンがスリットを通過する位置に設けることが好ましい。拡幅手段は少なくとも1つのスリットを含むことが好ましい。好ましくは複数であるスリットは主たるスリットより狭幅であることが好ましい。拡幅手段のスリットの長さは、好ましくは主たるスリット長の5〜30%、より好ましくは5〜15%である。スリットは主たるスリットと整列して設け得るが、スリットの長手方向軸に関する角度下に拡幅手段に従い伸延させることが好ましい。これにより胴部の幅はスリットを通過し得るものとなる。
【0031】
製品は、前記拡幅手段をその閉鎖位置に偏倚させるように前記拡幅手段に関連する、ボタンが誤って外れないようにする弾性手段を含むことが好ましい。拡幅手段は、ボタンを外す際にスリットを拡幅させてボタンが通過できるようにする構成を有する。前記拡幅手段に関連する、例えば、上述したようにスリット形態の弾性手段を設けることにより、スリットは弾性手段の偏倚力に抗して引張力が付加され、かくして主たるスリットを拡幅させるまで閉鎖状態に維持される。弾性手段は、例えば、前記拡幅手段を、例えばスリット形態で包囲する弾性の布地を含み得る。
【0032】
拡幅手段を設けたボタン用のスリットを設けた製品は従来のボタンと共に使用できる。従って、本発明は製品、特には、少なくとも部分的には布地から作製された衣服であって、前記布地には少なくとも1つのボタンと、前記ボタンを受ける少なくとも1つのスリットとが設けられ、前記スリットには、ボタンを容易に外せるようにするための、スリットの一部、例えば端部を拡幅する拡幅手段を設けた製品が提供される。