(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回動支持部材は、前記カッターが切羽側を向いた状態の前記カッターホルダの退避状態で、該カッターホルダの係止部が当接される座面を有している、請求項1に記載のカッター支持装置。
【背景技術】
【0002】
従来、地山等にトンネルを形成する場合、その地質に応じたトンネル掘削機やシールド掘進機が用いられている。例えば、海底トンネルのように切羽からの水圧が作用している環境でトンネルを掘削する場合、切羽密閉型の泥水式、泥土圧式シールド掘進機、トンネル掘削機等(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、総称して「トンネル掘削機」という。)が用いられる。このようなトンネル掘削機のカッターヘッドには、岩盤層や砂礫層などの掘削地盤に応じてローラーカッターやティースカッター等が設けられている。
【0003】
例えば、通常、岩盤の掘削は、カッターヘッドに取付けられたローラーカッターを、切羽に押付けてカッターヘッドを回転させることにより転動させて切羽を圧砕しながら掘削する。そのため、ローラーカッターは切羽を圧砕する際、カッターの刃先が磨耗する。このローラーカッターの摩耗が進行すると、切羽の掘削ができなくなり、トンネル掘削機による掘進ができなくなる。
【0004】
しかも、近年、このようなトンネル掘削機による掘削距離の長距離化に伴い、刃先が摩耗したローラーカッターを掘削途中において交換する必要が生じている。このローラーカッターの交換方法としては、一般的に、カッターヘッドと掘削機本体との間のチャンバー内に作業者が入って交換するが、地山の崩壊等防止するとともに、切羽部の泥土を排出する必要があり、多くの時間と労力を要している。特に、切羽に水圧や土圧を作用させながら掘削する環境では、被圧水(地中の水圧・土圧等を含む)下であるため、切羽が崩壊しないために地山に薬液注入することによって、地山からの湧水を止めると共に地山の崩壊を防ぐ処置が必要であり、更に多くの時間を要し、その間、トンネル掘削機が停止して掘削効率を悪化させている。そのため、経済性、施工効率の観点から、トンネル掘削機のカッター交換の作業効率向上が求められている。
【0005】
なお、この種の先行技術として、例えば、
図17に示すように、ローラーカッター100をカッター面板105から突出させた支持状態と、このローラーカッター100を支持し、反転させることで切羽側Fを遮蔽してローラーカッター100を交換状態に変化させることが可能なカッター取付部材101を設け、このカッター取付部材101の反切羽側Rを球面102で形成し、この球面部分を球面座103で支持するようにしたカッター交換装置104がある(例えば、特許文献1参照)。このカッター交換装置104では、カッター取付部材101を180°回転させることで切羽側Fを遮蔽してローラーカッター100を反切羽側Rのカッターフレーム106内に向け、このカッターフレーム106内からローラーカッター100を交換できるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記カッター交換装置104の場合、カッター面板105のドーム部107において、ローラーカッター100のカッター面板105からの突出量を確保しようとすると、カッター取付部材101の駆動軸108がドーム部107と干渉してしまう。そのため、駆動軸108がドーム部107と干渉しないように、ドーム部107の一部を突出させなければならないが、このドーム部107の突出部分Pが掘削時の性能低下を招くおそれがある。
【0008】
また、切羽側Fを遮蔽するためにカッター取付部材101を回転させる駆動軸108の回転軸線110が、カッター面板105の中心からの半径方向軸線と平行に配置されるローラーカッター100の回転軸線111と平行であるため、カッター取付部材101を回転させるために工具等を挿入する空間が各カッター交換装置104の間に必要となり、カッター交換装置104の半径方向配設間隔Hを広く取る必要がある。
【0009】
さらに、カッター取付部材101は、球面102の部分を切羽側Fに向けた状態にするため、切羽との接触等によって傷つく場合があるが、その場合にはスムーズに反切羽側Rに向けて回転させることが難しくなるおそれがある。また、カッター取付部材101は、傷ついても交換が難しい。
【0010】
そこで、本発明は、カッターを切羽側に突出させた掘削状態から反切羽側に向けた交換状態に切替えて交換できるとともに、カッターを支持する部分の面板からの突出量を抑えることができるカッター支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、
カッターフレームの前方を閉塞するカッター面板に配設
されたトンネル掘削機のカッター支持装置であって、カッター
を着脱自在に支持するためのカッターホルダと、
切羽側から反切羽側に向けて延びて前記カッターホルダがスライド可能に収容される内部空間が設けられた本体ケーシングと、を備え、前記内部空間は、その切羽側の一端が前記カッター面板の前方に開放されると共に、その反切羽側の他端が前記カッターフレームの内部に開放されており、前記本体ケーシングは、前記カッターホルダを前記内部空間で反切羽側にスライドさせた退避状態で、前記カッターホルダをカッターが切羽側を向いた状態と反切羽側
を向いた状態とに亘って回動可能に支持する回動支持部材
を有する、ことを特徴とする。
【0012】
この構成により、カッターホルダ
を退避状
態に移動させて
回動支持部材でカッターが反切羽側に向くように回動させてカッターを取り外すため、カッターホルダを回動させる回動支持部材の回動軸を面板から離れた退避状態の位置に配置してカッター面板と干渉しないようにできるので、カッター支持装置のカッター面板からの飛び出し量を抑えて掘削性能が向上させることができる。
【0013】
また、前記回動支持部材は、
前記カッターが切羽側を向いた状態の前記カッターホルダ
の退避状態
で、該カッターホルダの係止部が当接される座面を有していてもよい。このように構成すれば、カッターホルダを退避状態に退避させたときに切羽側からの圧力が作用したとしても、カッターホルダを回動支持部材の座面で受けて退避位置に保持することができる。しかも、閉鎖空間での作業でも、安定してカッターホルダを退避位置に退避させることができる。
【0014】
また、前記退避状態のカッターホルダの反切羽側を覆うように前記回動支持部材に取付け可能な遮蔽部材を備え、前記遮蔽部材は、前記回動支持部材を回動させて前記カッターを反切羽側に向けた交換状態時に切羽側に位置し、切羽側と反切羽側とを遮断するように構成されていてもよい。このように構成すれば、カッターの交換時に切羽側と反切羽側とを遮蔽部材で遮断することができるので、カッターの取外し後に、カッターホルダも取外して交換することができる。
【0015】
また、前記回動支持部材は、反切羽側から回動させる駆動部を備え、前記駆動部は、回動支持部材を回動させて前記カッターを反切羽側に向けた交換状態の位置で停止させる回動ストッパーを有していてもよい。このように構成すれば、反切羽側から回動支持部材の駆動部を回動させ、回動ストッパーに当接させることでカッターを反切羽側に向けた交換状態にすることができる。しかも、閉鎖空間での作業でも、安定して回動支持部材を所定角度で回動させることができる。
【0016】
また、前記カッターホルダは、前記カッターを切羽側に突出させた掘削状態を保持するエンドプレートを反切羽側に具備していてもよい。このように構成すれば、カッターホルダを掘削状態と退避状態との間で安定して移動させることができるとともに、掘削状態のカッターからの反力を受けるカッターホルダをカッター面板に容易に固定することができる。
【0017】
また、前記カッターは、前記カッターホルダに軸部を支持したローラーカッターであってもよい。このように構成すれば、岩盤を圧砕するローラーカッターを容易に交換できるカッター支持装置を構成することができる。
【0018】
また、前記ローラーカッターの軸部と、前記回動支持部材の駆動部と、の軸線を所定の角度でずらして配置してもよい。このように構成すれば、ローラーカッターの回転軸線と回動支持部材の回動軸線とが平行ではなく異なる軸線となるため、各カッター支持装置における回動支持部材の駆動部を隣接するカッター支持装置から離れた位置に配置することができる。しかも、隣接する回動支持部材の駆動部が離れるため、カッター支持装置を配置する間隔を狭くしてローラーカッターの配置間隔を狭くすることができる。
【0019】
また、前記カッターホルダは、前記ローラーカッターに向けて洗浄液を噴射するカッター洗浄手段を有していてもよい。このように構成すれば、ローラーカッターの交換前にカッター洗浄手段でローラーカッターを洗浄することができる。
【0020】
一方、本発明に係るトンネル掘削機は、前記いずれかのカッター支持装置を備えたトンネル掘削機であって、前記カッター支持装置は、カッター面板のカッターフレームに沿って半径方向に複数個が配設され、前記カッター支持装置の回動支持部材は、回動軸線がカッター面板の半径方向軸線に対して所定の角度で傾いて配置されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「所定の角度」は、カッター面板の半径方向軸線に対し直交する角度までの範囲をいう。この構成により、カッター面板の中心からの半径方向軸線と平行に配置されるローラーカッターの回転軸線に対して回動支持部材の回動軸線をずらすことができるので、所定間隔で配置するカッター支持装置の半径方向配設間隔を狭くすることができ、カッター面板に配置するカッターの間隔を狭くして掘削効率よく掘削できるトンネル掘削機を構成することができる。しかも、カッターフレーム内の大気圧下において、カッターの交換作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、切羽側に突出させたカッターを反切羽側に退避させた状態で反切羽側に向けて交換できるので、カッター支持装置の面板からの突出量を抑えることができ、カッター交換が可能なカッター支持装置を構成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、カッター面板2に設けられるカッターがローラーカッター11の例を説明する。また、掘削方向前方を切羽側F、後方を反切羽側Rという。
【0024】
図1,2に示すように、トンネル掘削機1は、そのカッター面板2に複数のカッター支持装置10が設けられたカッターヘッド3を有している。カッター支持装置10は、ローラーカッター11がカッター面板2の半径方向に所定間隔で配設されている。ローラーカッター11は、カッター面板2の回転中心から半径方向に所定間隔で複数個が配設されており、カッター面板2の外周部分に形成されるドーム部5にも配設されている。これらのカッター支持装置10は、通常、同一円周上に1つのローラーカッター11が配設されている。ローラーカッター11は、カッター面板2を岩盤等の切羽Gに向けて押圧して回転させることで切羽に溝を形成して切羽Gを砕いて掘削する。
【0025】
また、上記カッター面板2の掘削機本体7側にはカッターフレーム6が設けられ、このカッターフレーム6と掘削機本体7との間にカッターヘッド3を旋回させる支柱8が設けられている。この支柱8にカッターヘッド3のカッターフレーム6と掘削機本体7との内部を連通させるマンホール9が設けられている。このマンホール9により、掘削機本体7からカッターフレーム6内に作業者が入り、後述するように、カッターフレーム6内でローラーカッター11の交換ができるようになっている。
【0026】
図3に示すように、上記カッター支持装置10は、ローラーカッター11をカッター面板2から突出させた掘削状態では、カッター面板2に固定された本体ケーシング12によって全体が支持されている。本体ケーシング12は、円筒形状に形成されており、カッター面板2の所定位置に配設された取付部4に固定されている。この実施形態の本体ケーシング12は、取付部4に複数のボルト13(周方向に配置:軸部のみ図示)で固定されている。
【0027】
本体ケーシング12の径方向内面には、上記ローラーカッター11を回動させる回動支持部材20が設けられている。この回動支持部材20は、外面に形成された球面部21が本体ケーシング12の内面に形成された球面座14と接するように設けられている。回動支持部材20は、外面は上記球面部21に形成され、内面はカッターホルダ30を切羽側Fから反切羽側Rにスライドさせる筒状の案内部22に形成されている。この案内部22の反切羽側には、カッターホルダ30のスライドを所定位置で止める座面23が設けられている。また、本体ケーシング12の球面座14には、回動支持部材20との間をシールするシール部材15が設けられている。
【0028】
カッターホルダ30は、中央部にローラーカッター11を配置する凹状空間31を有し、
図4に示すように、ローラーカッター11の軸部16がボルト17で取付けられている。
図3に示すように、カッターホルダ30の外周には、上記カッター面板2の取付部4から回動支持部材20の案内部22に沿ってスライドする筒状のスライド部32が形成されている。このスライド部32には、上記回動支持部材20の座面23に当接する係止部33が設けられている。またスライド部32の外周には、上記取付部4の内面との間をシールするシール部材35が設けられている。
【0029】
上記回動支持部材20は、
図3に示す状態で、ローラーカッター11の回転軸線18(紙面直交方向)に対して直交する回動軸線25を有している。この回動軸線25上に、回動支持部材20の駆動部24が設けられている。このように、カッター面板2の中心から同心円状に配置されて回転するローラーカッター11の回転軸線18(カッター面板2の中心から半径方向に延びる線と同一)に対して、回動支持部材20を回動させる駆動部24の回動軸線25が平行とはならないように、回動支持部材20を配置している。
【0030】
この実施形態のカッター支持装置10は、回動支持部材20の回動軸線25とローラーカッター11の回転軸線18とが直交する構造となっているが、これらの軸線は平行でない構造であればよい。例えば、上記回動支持部材20の回動軸線25は、ローラーカッター11の回転軸線18に対して45°の角度で傾いた構造であってもよい。
【0031】
さらに、上記カッターホルダ30には、反切羽側に設けられたエンドプレート40がボルト41で固定され、このエンドプレート40がボルト42で本体ケーシング12に固定されている。このエンドプレート40を介して、掘削状態のローラーカッター11からカッターホルダ30を介して受ける掘削反力を、カッター面板2及びカッターフレーム6で受けている。
【0032】
また、カッターホルダ30の反切羽側Rには、空間31に配置されたローラーカッター11に向けて洗浄液を噴射する洗浄ノズル(洗浄手段)34が設けられている。この洗浄ノズル34から洗浄液を噴射することにより、空間31内に溜った土砂等の排出や、交換前のローラーカッター11を洗浄することができる。なお、この洗浄ノズル34は、例えば、カッターホルダ30の最深部(反切羽側)からローラーカッター11に向けて放射状に高圧の洗浄水を噴射するノズル等が採用される。
【0033】
図5に示すように、上記回動支持部材20の駆動部24は、軸端部が六角頭26に形成されている。このように軸端部を六角頭26に形成することにより、電動又は油圧トルクレンチ等の汎用工具によって容易に回動させることができるようにしている。
【0034】
また、この駆動部24には、回動ストッパー27が設けられている。この回動ストッパー27は、軸端部の六角頭26を工具で回動させ、回動ストッパー27が当接面28に当接した状態で回動を止めるものである。
図5では、当接面28を太線で示し、回動ストッパー27にハッチングを付して示す。このような回動ストッパー27を設けることにより、六角頭26を止まる位置まで回動させれば、回動支持部材20が正確に180°回動するようにしている。
【0035】
つまり、回動支持部材20の回動を制限して、ローラーカッター11を取外し状態にする動作を容易に行うことができるようにしている。しかも、六角頭26を逆方向に回動させて回動ストッパー27が元の位置に戻って当接面28に当接すれば、回動支持部材20を正確に180°回動させて戻すことが容易にできる。
【0036】
図6に示すように、上記カッター支持装置10は、上記エンドプレート40を本体ケーシング12に固定しているボルト42を取外し、このエンドプレート40と一体的にカッターホルダ30及びローラーカッター11を切羽側Fから反切羽側Rに向けてスライドさせることができるようになっている。ローラーカッター11を反切羽側Rに退避させるスライド量としては、ローラーカッター11の前端がカッター面板2の前面と一致する程度に退避させるようになっている。このようにローラーカッター11を退避させることにより、切羽Gを掘削していたローラーカッター11を切羽Gから離すことができる。図示する状態は、カッターホルダ30を退避させた退避状態であり、この退避状態の位置は、カッターホルダ30の係止部33が回動支持部材20の座面23に当接して正確な位置で停止するようになっている。
【0037】
図7に示すように、上記退避状態の位置に退避させたカッターホルダ30は、このカッターホルダ30を覆うようにエンドキャップ(遮蔽部材)50が回動支持部材20にボルト53で取付けられる。また、このエンドキャップ50を覆うようにリッド(蓋部材)51が本体ケーシング12にボルト54で取付けられる。
図7では、回動支持部材20に取付けられたエンドキャップ50が、回動支持部材20の回動によって切羽側Fに回動させられた状態を示している。この状態では、カッターホルダ30及びローラーカッター11は、
図6の状態から反転して反切羽側Rを向いた状態となる。
【0038】
このように回動支持部材20に取付けたエンドキャップ50は、回動支持部材20を回動させることで、切羽側Fと反切羽側Rとを遮蔽する遮蔽機構となる。また、このようなエンドキャップ50を設けて遮蔽することにより、ローラーカッター11を取外した後、カッターホルダ30を交換することができるようになっている。詳細は後述する。
【0039】
従って、上記カッター支持装置10によれば、ローラーカッター11をカッターホルダ30と一体的に反切羽側Rに退避させて退避状態とし(
図6)、その退避状態の位置で切羽側Fに向いているローラーカッター11とカッターホルダ30を一体的に反切羽側Rに回動させ(
図7)、その状態で反切羽側Rからローラーカッター11を交換することができる。
【0040】
そして、
図8に示すように、上記カッター支持装置10をカッター面板2に配設した場合、ローラーカッター11を交換する時にはカッターホルダ30と一体的に退避させるため、カッター面板2のドーム部5において回動支持部材20の駆動部24がドーム部5(カッター面板2)と干渉しないようにできる。そのため、カッター支持装置10のカッター面板2から前方への突出部分Pを小さくすることができる。
【0041】
従って、カッター面板2の前面におけるカッター支持装置10の突出部分Pが切羽Gと接するのを抑え、トンネル掘削機1の掘削性能を安定して保つことができる。
【0042】
また、図示するカッター支持装置10は、回動支持部材20を回動させる駆動部24(
図3)の回動軸線25がローラーカッター11の回転軸線18と直交しているため、駆動部24で回動支持部材20を回動させる工具等を挿入する作業空間をローラーカッター11の回転軸線18からずらすことができ(この実施形態では、紙面直交方向から工具等で駆動部24を操作)、カッター面板2に設けるカッター支持装置10の配設間隔を狭めることができる。
【0043】
従って、ローラーカッター11の半径方向配設間隔Hを狭くして、ローラーカッター11による切羽Gの掘削効率を向上させることができる。
【0044】
さらに、この回動支持部材20の回動軸線25をローラーカッター11の回転軸線18とは平行ではない所定角度で傾ければ(例えば、45°等)、カッター支持装置10においてローラーカッター11等を交換するために要する幅方向寸法を抑えることができ、カッターフレーム6の幅を小さくすることもできる。
【0045】
なお、
図8では、回動支持部材20の回動軸線25がローラーカッター11の回転軸線18と90°で直交した例を示しているが、回動支持部材20の回動軸線25は、45°や他の角度で傾いていてもよく、カッター面板2の形状やカッター支持装置10の配設場所に応じて好ましい角度でローラーカッター11の回転軸線18と平行ではないようにすればよい。
【0046】
[交換手順]
次に、
図9〜
図16に基づいて、上記カッター支持装置10におけるローラーカッター11の交換と、カッターホルダ30の交換を行う手順を説明する。以下の説明では、カッターフレーム6を水平にした状態で交換する手順を説明する。
【0047】
図9に示すように、この実施形態のトンネル掘削機1におけるカッターフレーム6は、作業者Mが入ってローラーカッター11を交換することができる作業空間Sに形成されている。この作業空間Sは、掘削機本体7(
図2)とマンホール9(
図2)で連通可能となっており、作業時には大気圧下で作業ができるようになっている。そして、カッター支持装置10に設けられたローラーカッター11の交換作業は、まずエンドプレート40を本体ケーシング12に固定しているボルト42を取外す。
【0048】
次に、
図10に示すように、カッターフレーム6内におけるカッター支持装置10の反切羽側Rにブラケット60を設け、このブラケット60に油圧ジャッキ(液圧ジャッキ:以下、単に「ジャッキ」という)61を設置する。そして、このジャッキ61によってエンドプレート40とカッターホルダ30とを一体的に反切羽側に退避(スライド)させる。この時、カッターホルダ30に支持されたローラーカッター11も一体的に退避させられる。
【0049】
そして、退避させるカッターホルダ30の係止部33を回動支持部材20の座面23に当接させることで、回動支持部材20の回動位置である退避状態の位置にカッターホルダ30を退避させる。このように、カッターホルダ30を回動支持部材20の退避状態の位置に退避させる作業は、カッターホルダ30の係止部33を回動支持部材20の座面23に当接させることでできるので、閉鎖空間で作業を行っても安定して行うことができる。
【0050】
つまり、カッターホルダ30を退避状態の位置に退避させる作業は、回動支持部材20に設けられた座面23にカッターホルダ30が当接した時に退避完了と判断することができ、特別な構造や手順を要することなくカッターホルダ30を回動支持部材20の所定位置に位置させることができる。
【0051】
また、このように回動支持部材20の座面23でカッターホルダ30を受けることにより、退避状態のカッターホルダ30に切羽側から水圧が作用したとしても、回動支持部材20を介して本体ケーシング12で受けることができる。
【0052】
次に、
図11に示すように、カッターフレーム6に支持レール6を設け、この支持レール62にウインチ63を取付ける。そして、このウインチ63でエンドプレート40とジャッキ61とを一体的に吊下げ、エンドプレート40とカッターホルダ30から取外して、これらエンドプレート40とジャッキ61とを取外す。
【0053】
次に、
図12に示すように、エンドプレート40を取外したカッターホルダ30の反切羽側に、このカッターホルダ30を覆うようにエンドキャップ50を回動支持部材20に取付ける。また、そのエンドキャップ50を覆うように、本体ケーシング12にリッド51を取付ける。これらの取付け時も、上記ウインチ63を用いて取付けられる。
【0054】
なお、リッド51には、後述するように、ローラーカッター11を取外す前にカッターホルダ30の内部圧力をカッターフレーム6の内圧(大気圧)にするためのバルブ52が設けられている。
【0055】
次に、
図13に示すように、上記回動支持部材20の駆動部24に形成された六角頭26が、電動又は油圧トルクレンチ等(図示する二点鎖線)の汎用工具によって回動させられる。この駆動部24を回動させることにより、回動支持部材20と一体的にカッターホルダ30とエンドキャップ50とが回動させられる。この回動支持部材20の回動により、カッターホルダ30が反転してローラーカッター11が切羽側Fから反切羽側Rのカッターフレーム6側に向けて切替えられる。この切替え状態が、ローラーカッター11を反切羽側Rから交換できる交換状態である。
【0056】
また、上記駆動部24の回動は、上述したように回動ストッパー27により(
図5)、六角頭26を工具で回動させて、その回動が止まる状態(回動ストッパー27が当接面28に当接した状態)まで回動させることにより、カッターフレーム6の限られた作業スペースS内で正確に180°回動させることができる。
【0057】
この状態で、リッド51に設けられたバルブ52を開放して、リッド51とカッターホルダ30とで囲われた空間内の圧力をカッターフレーム6の内圧(大気圧)と平衡状態にする。
【0058】
次に、
図14に示すように、上記ウインチ63によってリッド51を吊下げ、このリッド51を本体ケーシング12に取付けているボルト54を取外し、リッド51が本体ケーシング12から取外される。この例では、取外したリッド51をスタンド64に立てるようにしている。このリッド51を取外すことにより、反切羽側Rに向いたローラーカッター11がカッターフレーム6内に現れる。
【0059】
また、このリッド51を取外すときには、エンドキャップ50が切羽Gに面する状態となっているため、このエンドキャップ50及び回動支持部材20によって切羽側Fからカッターフレーム6内への水等の浸入防止が図られている。
【0060】
その後、
図15に示すように、上記ブラケット60にスライドレール65が取付けられる。そして、上記ウインチ63によってローラーカッター11が吊下げられ、このローラーカッター11がカッターホルダ30から外されてスライドレール65に沿って反切羽側Rに取外される。
【0061】
このローラーカッター11の取外し時も、エンドキャップ50が切羽Gに面する状態となっているため、このエンドキャップ50及び回動支持部材20によって切羽側Fからカッターフレーム6への水等の浸入防止が図られているので、カッターフレーム6内でローラーカッター11を効率よく取外すことができる。
【0062】
さらに、
図16に示すように、この実施形態では、上記したようにエンドキャップ50及び回動支持部材20によって切羽G側からの水等の浸入防止が図られているため、ローラーカッター11を取外した後、カッターホルダ30をウインチ63で吊下げて取外し、交換することができる。
【0063】
このカッターホルダ30の交換は、カッターホルダ30の摩耗状態等に応じて交換すればよい。また、カッターホルダ30を交換することにより、このカッターホルダ30に設けられている洗浄ノズル34を交換することもできる。
【0064】
以上が、上記カッター支持装置10におけるローラーカッター11とカッターホルダ30の取外し手順であり、新しいローラーカッター11とカッターホルダ30との取付けは、逆手順によって組込まれる。この組込み手順は上記取外し手順の逆手順であるため、説明は省略する。
【0065】
以上のように、上記カッター支持装置10によれば、上記手順によって、水圧・土圧を有する環境下でも効率よくローラーカッター11を交換することができる。また、カッターホルダ30が磨耗している場合には、ローラーカッター11の交換時にカッターホルダ30を交換することができる。
【0066】
さらに、カッターホルダ30を退避状態に位置させる作業、回動支持部材20を所定の角度で回動させる作業で自動的に位置決めできるようにしているので、限られた空間のカッターフレーム6内で行う交換作業を、作業時間を短縮した効率の良い作業として行うことができる。
【0067】
その上、交換作業の多くを機械的手段で補助することができるので、人力を軽減して作業者の負担を軽減することができる。また、交換に必要なスペースも小さくすることができる。
【0068】
また、上記カッター支持装置10を備えたトンネル掘削機1によれば、上述した
図8に示すように、ローラーカッター11をカッターホルダ30と一体的に反切羽側に退避させてから交換するため、カッター面板2のドーム部5においてカッター支持装置10が前方への突出する量を抑えることができ、カッター支持装置10が切羽Gと接するのを抑えて、トンネル掘削機1の掘削性能を安定して保つことができる。
【0069】
しかも、カッター支持装置10の半径方向配設ピッチを狭くすることでローラーカッター11の半径方向ピッチを狭くし、掘削効率の良いカッター面板2を構成することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、ローラーカッター11を例に説明したが、カッタービットを交換可能に支持するカッター支持装置として構成することもでき、カッターの構成は上記実施形態に限定されるものではない。
【0071】
また、上記実施形態では、回動支持部材20の駆動部24を一般的な工具で回動させるように六角頭としたが、特に形状は限定されるものではなく、回動支持部材20を工具や他の手段を用いて回動させることができるように構成されていればよい。
【0072】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。