(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147959
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
H01H13/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-49163(P2012-49163)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-186961(P2013-186961A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131164
【氏名又は名称】株式会社サンミューロン
(74)【代理人】
【識別番号】100101731
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 春季
(72)【発明者】
【氏名】成島 勲
(72)【発明者】
【氏名】金谷 和憲
(72)【発明者】
【氏名】北田 昭
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−093254(JP,A)
【文献】
特開2011−204550(JP,A)
【文献】
実開昭49−138134(JP,U)
【文献】
実開平06−084650(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00− 13/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ本体のベース部の四隅近傍内壁に縦方向に断面半円形状の案内溝と,
前記案内溝に対向する位置の作動棹外側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴と,
各作動球挿入穴に装着した作動球とよりなり,
作動棹側壁の作動球挿着穴内に装着した作動球が,スイッチ本体の案内溝内を上下移動可能とすることで作動棹の動作を円滑にすることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
スイッチ本体のベース部の対向する内面のそれぞれ端部に縦方向に断面半円形状の案内溝と,
前記案内溝に対向する位置の作動棹側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴と,
各作動球挿入穴に装着した作動球とよりなり,
作動棹側壁の作動球挿着穴内に装着した作動球が,スイッチ本体の案内溝内を上下移動可能とすることで作動棹の動作を円滑にすることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項3】
前記案内溝に対向する位置の作動棹側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴に潤滑用に用いるオイルを装着した後,各作動球挿入穴に装着した作動球を挿着することを特徴とする請求項1又は2記載の押しボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,押しボタンスイッチに係り,自動復帰型の押ボタンスイッチのプッシュ動作を円滑にする機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動復帰型の押ボタンスイッチは,繊維強化PBT等からなるスイッチ本体に直接ポリアセタール等の作動棹プランジャを摺動させるような構造とするのが一般的でこれを改良した技術として特許文献1に記載する技術がある。
【0003】
この技術は,ケースの内壁の縦方向に半球形状の第1の係合溝と,プランジャの側壁の縦方向に半球形状の第2の係合溝を形成し,前記第1の係合溝と前記第2の係合溝とが対向して形成される円形状の係合溝の径よりは小さい径を有する丸ピンを前記円形状の係合溝に遊嵌するように配設し,前記丸ピンをレールとして前記ケースに対する前記プランジャの移動をガイドさせる構成とし,スイッチ本体とプランジャを、丸ピンを介して摺動することより,プランジャのガタつきも小さく抑えることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−93254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の特許文献1に記載の技術では,100万回程度にスイッチの寿命が大幅に伸びたが,本発明では更に同様にスイッチ本体と,作動棹のガタをなくし,長時間にわたって使用できる自動復帰型の押ボタンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち,上記課題を解決する本発明に係るスイッチ本体は,
スイッチ本体のベース部の四隅近傍内壁に縦方向に
断面半円形状の案内溝と,前記案内溝に対向する位置の作動棹外側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴と,各作動球挿入穴に装着した作動球とよりなり,作動棹側壁の作動球挿着穴内に装着した作動球が,スイッチ本体の案内溝内を上下移動可能とすることで作動棹の動作を円滑にすることを特徴とする。
また,スイッチ本体のベース部の対向する内面のそれぞれ端部に縦方向に
断面半円形状の案内溝と,前記案内溝に対向する位置の作動棹側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴と,各作動球挿入穴に装着した作動球とよりなり,作動棹側壁の作動球挿着穴内に装着した作動球が,スイッチ本体の案内溝内を上下移動可能とすることで作動棹の動作を円滑にすることを特徴とする。
更に,前記案内溝に対向する位置の作動棹側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴に潤滑用に用いるオイルを装着した後,各作動球挿入穴に装着した作動球を挿着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上,本発明によれば,スイッチ本体の四隅近傍内壁に縦方向に半球形状の案内溝と,前記案内溝に対向する位置の作動棹側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴に装着した作動球により,作動棹の四隅を支持し,安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るスイッチ本体の分解図である。
【
図2】実施形態に係るスイッチ本体に作動桿を挿入時の説明図である。
【
図3】実施形態に係るスイッチ本体にカバー部を挿着時の説明図である。
【
図4】実施形態に係るスイッチ本体にカバー部を挿着後の説明図である。
【
図5】実施形態に係るスイッチ本体にボタン部を取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下,本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり,以下に示す実施形態で用いた例示にのみ限定されるものではない。
【0010】
図1は,本実施形態に係る押ボタンスイッチのスイッチ本体の斜視図であり,
図2は,スイッチ本体に作動桿を挿入時の説明図であり,
図3,4はスイッチ本体にカバー部4を挿着時の説明図である。
【0011】
これらの図で示されるように,本発明に係る押ボタンスイッチは,耐熱性ポリアミド樹脂(PA),液晶ポリマー(LCP)等適宜材質よりなる。そして,スイッチ本体は,ベース部2と,ベース部2内を上下に上下方向に摺動自在に収納する作動棹3と,ベース部2と組み合わされ作動桿3の摺動域を制限する樹脂からなるカバー部4と,作動棹3内に上方から挿着し,作動棹を摺動させるボタン部6とよりなる。
以下,これらについて説明する。
【0012】
<ベース部2>
ベース部2は,側壁22と開口部23と底部24からなり,対向した側壁22の内面の四隅近傍内壁に縦方向に
断面半円形状の案内溝21を設けている。
ベース部2の側壁22外面には,後述するカバー部4の係止片41を挿入する係止凹面部25と,係止片41の係止穴42を係止する係止突起26が設けられて,
ボタン部6内に内蔵されている反発部材が挿入され,ボタン部6内の発光ダイオード等の照光部材に電気を導通するボタン部導通用接続体27が起立して設けている。
【0013】
<作動棹3>
作動棹3は,ベース部2内の開口部23内を上方から上下方向に摺動自在に収納する構成となっており,作動桿3は,側壁31によって囲まれて構成され,押片挿着孔32を有する筒状となっている。
更に作動桿3の側壁31の外側面にはベース部2に対する摺動方向を規定する。即ち,前記ベース部2の案内溝21に対向する位置の側壁31の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴33を設けている。
そして,作動球挿着穴33には,後述する球体よりなる作動球5が回動可能に収納されており,前記ベース部2の案内溝21内を上下移動可能となっている。
ここで,作動球挿着穴33を設ける位置は,前記した案内溝21に対向する位置に設けるのであるが,実施例では,作動棹3の対向する2面に設けている。これは作動球5の挿入作業等を考慮したものであるが,4面それぞれに設ける構成であっても良いことは言うまでもない。
【0014】
なお,作動棹3は,図示しないボタン部6内に内蔵されている反発部材をボタン部導通用接続体27に装入すると,上側への反発力を受け,上側から押されない限りベース部2の底面から浮き上がった状態に保持される。
この結果,作動桿3及びこれに一体化されるボタン部6は,使用者が押したときはベース部2の底面側に深く沈みこむが,使用者がボタン部6から指を離すと反発部材により上側に再び浮き上がる。このようにすることで,ボタン部6を押す又は離すことにより,オンオフすることができる。
【0015】
<カバー部4>
カバー部4は,ベース部2と組み合わされ作動桿3の摺動域を制限するもので,ベース部2及び作動棹3の上方から被冠するように装着し,前記したベース部2の側壁22の係止凹み部25に係止片41を挿入し,係止穴42を係止突起26に係止し,カバー部4の固定を完了し,作動棹3の上方への抜け止めを防止する。
なお,本実施形態に係るカバー部4の柱体43は,上述の作動桿3の側壁において形成される溝に挿入されるものであるが,スイッチのクリック動作に使用されることを目的とするとともに,スイッチ本体の組立ての際,間違った方向にカバー部4を取り付けてしまうことを防止する機能も有する。
【0016】
<作動球5>
作動球は,上下に摺動する作動棹3とベース部2間に介在し,スムーズに摺動させるためのもので,ステンレス等適宜金属よりなる。本発明においては,1mmφのものを8個使用した。この作動球5は,上述のように小型であることより,作業性が悪くなる。そこで,作動球挿着穴33にオイルを付けてから,作動球5を装着すると,作動球5の作動球挿着穴33内での保持状体が良くなり,作業球5を取り付けた作動棹3の挿着作業を行っても,作動球5は,作動棹3に保持され続き,作業性が極めて良好となる。
【0017】
<ボタン部6>
ボタン部6は,作動桿3の押片挿着孔32に挿入されるとともに,一度挿入すると一体化される。ボタン部6は,スイッチを使用する者が押すことができる程度に大きなものであれば特に限定されないが,透過性のある樹脂で形成され,その内部にLED等の小型照明装置を設け,スイッチを押すたびに照明がオン又はオフするように設けても良い。
【0018】
本発明は上述のように構成し,ボタン部6に押圧をくわえると,作動棹が下方に移動する。このとき作動棹側壁の上下端部近傍に形成した半球形状の作動球挿着穴に装着した作動球5は回動しながら,スイッチ本体のベース部2の四隅近傍内壁に縦方向に
断面半円形状の案内溝21内を下方に移動する。このため,作動球5と案内溝21は点接触となり,長時間の使用が可能となり,実験では600万回以上の使用が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は,自動復帰型の押ボタンスイッチとして産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0020】
2…ベース部
21…案内溝
22…側壁
23…開口部
24…底部
25…係止凹み部
26…係止突起
27…ボタン部導通用接続体
3…作動桿
31…側壁
32…押片挿着孔
33…作動球挿着穴
34…切り欠き部
4…カバー部
41…係止片
42…係止穴
43…位置決め柱
5…作動球
6…ボタン部