(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のグリーンシートが積層された前記グリーンシート成形体は、前記グリーンシートごとに形成された異なる大きさのビアホールが連通するように複数のグリーンシートを積層したものであり、かかるグリーンシート成形体を形成した後に、上記ビアホール内に前記導体含有ペーストが充填される、
ことを特徴とする請求項1に記載のセラミック基板の製造方法。
前記導体含有ペーストを充填する工程は、複数のグリーンシートおよびシート材を積層して形成される前記シート材付き成形体における一対の表面のうち、前記ビアホールの開口部が大きい側の表面側から行われる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、セラミックからなる基板本体および該基板本体を貫通する比較的大径の放熱ビア導体を備え、該放熱ビア導体の上端面に実装される発光素子などの発熱量の多い実装素子からの熱を基板本体の裏面側から外部に効率良く放熱でき且つ安定した電気的導通性を有するセラミック基板の製造方法を提供する、ことを課題とする。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、基板本体となるグリーンシートにおける少なくとも一方の表面にシート材を被覆し、該シート材を含む上記グリーンシートを貫通して設けたビアホールに放熱ビア導体となる導体含有ペーストを充填し且つ乾燥させた後、上記シート材を剥離して、上記一方の表面に上記導体含有ペーストの突出部を形成する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明によるセラミック基板の製造方法(請求項1)は、一対の表面を有し且つセラミックからなる基板本体と、該基板本体における前記一対の表面間を貫通する放熱ビア導体とを含むセラミック基板の製造方法であって、単数のグリーンシートからなり、あるいは複数のグリーンシートを積層して形成されてなり、一対の表面を有する基板本体となるグリーンシート成形体における少なくとも一方の表面にシート材を被覆したシート材付き成形体を準備する工程と、該シート材付き成形体の厚み方向に沿って貫通するビアホールを形成する工程と、該ビアホール内に放熱ビア導体となる導体含有ペーストを充填する工程と、該導体含有ペーストの乾燥後に、上記シート材を剥離する工程と、上記導体含有ペーストを含むグリーンシート成形体をこれらの厚み方向に沿って圧力を加えて圧縮する押圧工程と、
該押圧工程の後に行われ、上記シート材が剥離された上記グリーンシート成形体の表面において、該表面から突出する上記導体含有ペーストの突出部を覆う表面導体層を形成する工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、単数のグリーンシートあるいは複数のグリーンシートを積層したグリーンシート成形体における少なくとも一方の表面にシート材を被覆したシート材付き成形体にその表・裏面間を貫通する比較的大きなビアホールが形成され、該ビアホール内に導体含有ペーストを充填し、上記シート材を剥離した後で、導体含有ペーストを含むグリーンシート成形体がこれらの厚み方向に沿って圧力を加えられる。その結果、自然乾燥などによって、導体含有ペーストの両端面に凹みが生じても、上記シート材の剥離後に、グリーンシート成形体の表面から突出する上記導体含有ペーストの突出部が出現し、該突出部は、前記押圧工程によって解消される。
即ち、上記シート材の剥離および上記グリーンシート成形体の圧縮後に、上記導体含有ペーストの突出部の表面および反対側の表面に乾燥に伴って溶剤などの蒸発により球面状の凹みが生じるが、上記突出部を覆って、例えば、電極用のパッドなどの表面導体層が印刷により形成される。そのため、該表面導体層の印刷時に用いるスキージなどによる厚み方向に沿った押し込み圧力によって、上記凹みを解消して、導体含有ペーストと表面導体層とを両者の境界面全体において面接触させることができる。
従って、上記突出部および押圧工程を活用することにより、上記凹みを解消して、グリーンシート成形体における一対の表面において、実装素子の平坦な実装面や平坦な表面導体層を確実に形成することが可能となる。
【0008】
尚、前記グリーンシートは、アルミナなどの高温焼成セラミックを含むもの、あるいは低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックなどからなり、例えば、アルミナなどのセラミック粉末、バインダ樹脂、溶剤などを配合して得られたセラミックスラリを、ドクターブレード法などにてシート化したものである。
また、前記基板本体となる単数または複数のグリーンシートにおける一対の表面のうち、一方の表面は、発熱量が比較的多い発光素子(発光ダイオードあるいは半導体レーザ)やパワー半導体素子などが搭載される搭載面を構成する前記導体含有ペーストからなる放熱ビア導体の端面を含む表面となり、上記一対の表面のうち、他方の表面は、前記放熱ビア導体と接続する表面導体層(裏面パッド)が形成される裏面となる。上記一対の表面とは、互いを区別するための相対的な呼称であり、例えば、一方を表面と称し、且つ他方を裏面と称することもある。
更に、前記ビアホールは、平面視で円形、矩形(正方形または長方形あるいはこれらの各隅部に曲線部を有するもの)、長円形、楕円形などを呈する。かかるビアホールの内径、長径、あるいは一辺の長さは、少なくとも0.5mm以上、例えば、0.8mm以上あるいは約1mm以上のサイズである。該ビアホールは、1個の基板本体となる前記グリーンシートに2個以上を併設しても良い。但し、上記サイズは、内径などが異なる複数のビアホールを連通させた形態の場合には、比較的小さい方のビアホールの内径などを指している。
加えて、前記シート材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)などからなり、且つ柔軟性を有する樹脂製のキャリアフィルムを兼用しても良い。
【0009】
また、本発明には、複数のグリーンシートが積層された前記グリーンシート成形体は、前記グリーンシートごとに形成された異なる大きさのビアホールが連通するように複数のグリーンシートを積層したものであり、
かかるグリーンシート成形体を形成した後に、上記ビアホール内に前記導体含有ペーストが充填される、セラミック基板の製造方法(請求項2)も含まれる。
これによれば、複数のグリーンシートごとに異なる内径あるいは一辺の長さが相違する比較的大きなビアホール(異径ビアホールあるいは異形ビアホール)が形成されていても、かかる複数のビアホールを同心にて連通するように上記複数のグリーンシートが積層され、且つ上記形態のビアホール内に前記導体含有ペーストが充填される。従って、かかる複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート成形体における一対の表面間において、熱伝導性および電気的導通性が安定した放熱ビア導体を確実に配設できる。
尚、単数のグリーンシートあるいは複数のグリーンシートを積層した前記グリーンシート成形体における一方の表面上には、該表面を底面として囲む円錐形状、円柱形、長円錐形状、長円柱形などの貫通孔を有する別個のグリーンシートを更に積層することにより、上記表面側にキャビティを形成することも可能である。
また、本発明には、前記導体含有ペーストを充填する工程は、複数のグリーンシートおよびシート材を積層して形成される前記シート材付き成形体における一対の表面のうち、前記ビアホールの開口部が大きい側の表面側から行われる、セラミック基板の製造方法(請求項3)も含まれる。
これよれば、内径が異なるビアホール同士の境界にリング状の段部が位置していても、かかる段部付近に空隙を生じることなく、異なる内径などを有する複数のビアホールの全体に、前記導体含有ペーストを確実に充填できる。
【0010】
尚、前記シート材を剥離した後において前記グリーンシート成形体の表面に突出する前記導体含有ペーストの突出部は、例えば自然乾燥(常温×数時間)や加熱による強制乾燥による溶剤などの除去により、該突出部の表面に浅い球面状の凹みを生じるが、該突出部を覆って形成される前記表面導体層(裏面パッド)は、前記同様の導体含有ペーストをスクリーン印刷する際や、メタルマスクを用いるスキージの移動に伴う押圧作用により、該表面導体層の表面を平坦化することが可能となる。
また、前記表面導体層を形成する工程の後に、該表面導体層および放熱ビア導体を含む生のグリーンシート成形体を脱バインダおよび焼成する工程が行われる。
【0011】
加えて、本発明には、前記シート材の厚みは、前記導体含有ペーストの突出部の表面に生じる凹みの深さの2倍以上である、セラミック基板の製造方法(請求項
4)も含まれる。
これによれば、前記突出部の表面および該突出部と反対側の表面とに導体含有ペーストの乾燥に伴う球面状の凹みがそれぞれ生じても、前記シート材の厚みおよび突出部の周辺部の厚みが、該突出部の表面などに生じる上記凹みの深さの2倍以上となる。そのため、前記表面導体層を形成する工程において、該導体層を印刷する際の厚み方向に沿った圧力によって、上記凹みを確実に解消することができる。従って、焼成後に得られる基板本体における一対の表面間に、空隙のない放熱ビア導体を確実に製作することが可能となる。
尚、前記シート材は、前記グリーンシート成形体の両表面に被覆しても良く、この場合、各シート材を剥離した後に出現する一対の前記導体含有ペーストの突出部の厚みの和は、該突出部ごとの表面に形成される凹みの深さの総和以上であることが必要である。
【0012】
尚、前記各工程は、いわゆる大判のグリーンシートを用いる多数個取りの方法によっても行われ得る。この場合、前記焼成工程の後に個々の基板本体に個片化して、複数個のセラミック基板とする個片化工程が行われる。更に、隣接する基板本体ごとの境界面に厚み方向に沿って設けた貫通孔の内壁面に沿って前記同様のペーストを円筒形状に形成することで、基板本体ごとにおける一対の表面間を導通する断面半円形あるいは断面円弧形状の凹型導体(接続配線)が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のシート材付き成形体を準備する工程の1ステップの概略図。
【
図2】上記成形体を準備する工程の
図1に続くステップを示す概略図。
【
図3】上記成形体を準備する工程の
図2に続くステップなどを示す概略図。
【
図4】上記各ステップにより準備されシート材付き成形体を示す概略図。
【
図5】上記成形体のビアホールに導体含有ペーストを充填する工程を示す概略図。
【
図6】上記導体含有ペーストの乾燥後の状態を示す上記成形体の概略図。
【
図7】上記成形体の表面からシート材を剥離する工程を示す概略図。
【
図8】上記ペーストの突出部側に表面導体層を形成する工程を示す概略図。
【
図9】表面導体層が形成されたグリーンシート成形体の断面を示す概略図。
【
図10】上記各工程を経て得られたセラミック基板の垂直断面図。
【
図12】異なる形態のセラミック基板を得るためのシート材付き成形体を準備する工程を示す概略図。
【
図13】上記成形体のビアホールに導体含有ペーストを充填する工程を示す概略図。
【
図14】上記導体含有ペーストの乾燥後の状態を示す上記成形体の概略図。
【
図15】上記成形体の表面からシート材を剥離する工程を示す概略図。
【
図16】上記ペーストの突出部側に表面導体層を形成する工程を示す概略図。
【
図17】更に異なる形態のセラミック基板を得るためのシート材付き成形体を準備する工程を示す概略図。
【
図18】上記成形体のビアホールに導体含有ペーストを充填する工程を示す概略図。
【
図19】上記導体含有ペーストの乾燥後の状態を示す上記成形体の概略図。
【
図20】上記成形体の表面からシート材を剥離する工程を示す概略図。
【
図21】上記ペーストの突出部側に表面導体層を形成する工程を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1〜
図4は、本発明によるシート材付き成形体S1を準備する工程およびビアホールを形成する工程を示す概略の断面である。
予め、
図1に示すように、厚みが約30μmのキャリアフィルム(シート材:以下ではシート材と称する)20の片面で且つSi膜がコーティングされた表面に、上記同様の厚みであるグリーンシートG1を配設したフィルム付きグリーンシートと、厚みが約150μmずつのグリーンシートG2,G3とを用意した。該グリーンシートG1〜G3は、アルミナなどのセラミック粉末、バインダ樹脂、および溶剤などからなるセラミックスラリをドクターブレード法により、シート状に成形したものであり、
図1中の境界面21により区画され且つ平面視で一辺が約3mmである正方形の製品領域Aを縦横方向に沿って格子状に配置した多数個取り用の大判サイズのものである。
また、上記シート材は、柔軟性を有するPET製のフィルムからなる。
【0015】
次に、
図2に示すように、シート材20上に配設した下層のグリーンシートG1と、中層のグリーンシートG2とを、前記境界面21が連続するようにして積層した。かかる状態で、
図3に示すように、上層のグリーンシートG3の中心部には、内径が約1mmである比較的大径のビアホール12を、パンチとダイを用いる打ち抜き加工により形成すると共に、中層と下層のグリーンシートG2,G1およびシート材20の中心部には、内径が約1.2mmである比較的大径のビアホール13を打ち抜き加工により形成した。
尚、前記のように内径が異なるビアホール12,13を設ける理由は、追って基板本体(2)となる次述するグリーンシート成形体(2a)の表面(一方の表面)3と裏面(他方の表面)4とに形成すべき表面導体層ごとの面積や配置形態に対応するためである。また、中層のグリーンシートG2の上面あるいは上層のグリーンシートG3の下面に、後述する導体含有ペーストと同様のペーストをスクリーン印刷して、所定パターンの配線層を予め形成しておいても良い。
【0016】
次いで、
図4に示すように、シート材20を含む下層および中層のグリーンシートG1,G2の上に、上層のグリーンシートG3を前記境界面21が連続し、且つ前記ビアホール12,13が同心で連通するようにして積層した。
その結果、図示のように、製品領域Aごとには、複数のグリーンシートG1〜G3が積層され、追って基板本体(2)となるグリーンシート成形体2aと、その裏面(他方の表面)4にシート材20が被覆されたシート材付き成形体S1が得られた(シート材付き成形体を準備する工程)。同時に、上記シート材付き成形体S1の厚み方向に沿って同心で貫通するビアホール12,13が形成された(ビアホールを形成する工程)。
尚、内径が異なり且つ同心で連通する2つのビアホール(以下、異径ビアホールと称する)12,13の内部には、リング状の段部14が位置している。また、製品領域Aごとにシート材付き成形体S1を有する多数個取り用のグリーンシートG1〜G3の積層体は、以下において、グリーンシート積層体とも称する。
【0017】
更に、
図5に示すように、製品領域Aごとにおけるシート材20側の開口部から導体含有ペースト10aをスクリーン印刷などにより充填した(導体含有ペーストを充填する工程)。この際、かかる導体含有ペースト10aの表面8は、前記グリーンシート成形体2aの表面3と面一となり、且つ該導体含有ペースト10aの裏面9は、シート材20の裏面と面一となっていた。
上記導体含有ペースト10aは、例えば、W粉末やMo粉末などの導体、バインダ樹脂、および溶剤などからなる。かかる導体含有ペースト10aは、予め、開口部の内径が小さい上層のグリーンシートG3の表面3を図示しない平板で閉塞した状態で、
図5中の矢印で示すように、シート材20側の開口部から充填された。このように、開口部の内径が大きいシート材20側および下層・中層のグリーンシートG1,G2側から充填することで、前記段部14の直下付近に不用意な空隙が生じる事態を防止することができた。
【0018】
前記導体含有ペースト10aを充填する工程の後、該ペースト10aを常温で約数時間(約1〜3時間)放置する自然乾燥を行った。その際、異径ビアホール12,13内に充填された前記導体含有ペースト10aから揮発性の溶剤などが外部に蒸発した。その結果、
図6に示すように、導体含有ペースト10aの表面8と裏面9とには、浅い球面状の凹み8h,9hが生じた。
次に、
図7に示すように、多数個取りのシート材20をそのSiコート面側が複数の製品領域Aごとの下層のグリーンシートG1の裏面4から離れるように剥離した(シート材を剥離する工程)。
【0019】
その結果、
図7に示すように、製品領域Aごとにおけるグリーンシート成形体2aの裏面4には、全体がほぼクレーター形状を呈する前記導体含有ペースト10aの突出部11が出現した。かかる突出部11の周辺部における厚みt1は、シート材20の厚みt1と同じであり、該突出部11の中心部(最深部)での深さd1は、上記厚みt1の半分以下となっていた。更に、該深さd1に対し、グリーンシート成形体2aの表面3側に露出する導体含有ペースト10aの表面8に位置する凹み8hの中心部(最深部)での深さd2を加えても、これらの合計深さの値(d1+d2)は、上記突出部11またはシート材20の厚みt1以下であった。
即ち、前記シート材20の厚みt1は、導体含有ペースト10aの表面8に生じた深さd1または裏面9に生じた深さd2の2倍以上となるように予め選定されていた。
【0020】
更に、前記シート材20の剥離後に、導体含有ペースト10aの突出部11を含むグリーンシート成形体2aの表面3と裏面4とに対し、一対の平板を厚み方向に沿って接近させつつ挟み込んで圧力を加えることで、突出部11を解消し且つ平坦な表・裏面8,9を有する導体含有ペースト10aにした(押圧工程)。
次いで、
図8に示すように、前記複数のグリーンシート成形体2aを併有するグリーンシート積層体を上下逆にし、且つ定盤15上に載置して固定した。かかる状態で、上記複数の製品領域Aごとのグリーンシート成形体2aの裏面4上に、各製品領域Aごとの裏面4の中央部側に円形の開口部を有し且つ平面視の全体が格子枠形状を呈するメタルマスク19を配置した。更に、該メタルマスク19の上面に沿って斜め姿勢で水平方向に沿って移動するスキージ17により、前記同様の導体含有ペースト16を、上記メタルマスク19の開口部を経て製品領域Aごとのグリーンシート成形体2aの裏面4上および該裏面4から突出する前記導体含有ペースト10aを覆うように印刷して、底面視が円形で且つ薄膜状の裏面パッド(表面導体層)18を形成した(表面導体層を形成する工程)。
【0021】
その結果、前記スキージ17の水平移動と共に該スキージ17をグリーンシート成形体2aの厚み方向に沿って圧力を加えていたので、
図9に示すように、前記突出部11が消滅して平坦な裏面9に復帰すると共に、裏面パッド18と異径ビアホ−ル12,13内の導体含有ペースト10aとは、両者の境界面全体で面接触していた。同時に、導体含有ペースト10aの表面8側の凹み8hも消滅した結果、前記同様の平坦な表面8に復帰していた。
以上のように、導体含有ペースト10aが異径ビアホール12,13内に隙間なく充填され且つ平坦な表面8および裏面9を有すると共に、該裏面9の全面に裏面パッド18を面接触させることができたのは、前記シート材20の厚みt1と同じ厚みである突出部11の厚みt1を、前記凹み8h,9hの深さd1,d2の合計値以上に設定したことに依るものと推定される。
【0022】
更に、製品領域Aごとにグリーンシート成形体2a、異径ビアホール12,13内の導体含有ペースト10a、裏面パッド18が形成された多数個取り用のグリーンシート積層体に対し、製品領域A,A間を区分する前記境界面21に沿って刃物(図示せず)を厚み方向に沿って挿入し、断面V字状の分割溝(図示せず)を表面3側および裏面4側の少なくとも一方に格子状に形成した。尚、上記刃物の挿入深さは、表・裏面側ごとの分割溝の深さを合計した場合で、グリーンシート積層体の厚みの約1/2程度とした。
この状態で、上記グリーンシート積層体を所定温度帯に加熱して、脱バインダ処理し、引き続き焼成した(脱バインダおよび焼成工程)。そして、焼成後のセラミック積層体を、上記分割溝に沿って曲げ応力を加えて前記製品領域Aごとに個片化した。
その結果、
図10,
図11に示すように、正形状の表面3および裏面4を有し且つ複数のセラミック層C1〜C3が積層されてなる基板本体2と、該基板本体2の表面3と裏面4との間を貫通する異径ビアホール12,13内に充填された比較的大径でWまたはMoからなる放熱ビア導体10と、該放熱ビア導体10の裏面4側に接続された裏面パッド18とを備えたセラミック基板1が得られた。
尚、前記焼成工程において、グリーンシートG1〜G3は、セラミック層C1〜C3になり、導体含有ペースト10aは、放熱ビア導体10になり、前記生の裏面パッド18は、WまたはMoなどを主成分とする焼成済みの裏面パッド18になった。
【0023】
図10,
図11に示すように、セラミック基板1は、基板本体2の表面3における中心部付近に位置する放熱ビア導体10の表面8の中央部には、例えば、発光ダイオード(発光素子)24が追って実装され、且つ放熱ビア導体10の表面8の周辺の付近には、該放熱ビア導体10と対の電極である表面パッド22が形成されていた。該表面パッド22は、例えば、前記裏面パッド18の形成後に、前記同様の導体含有ペーストをスクリーン印刷することで形成されていた。
更に、基板本体2の四隅における表面3と裏面4との間には、断面円弧形の凹部6が形成され、該凹部6ごとの内壁面に沿って、WまたはMoからなる凹形導体7が形成されている。かかる凹形導体7は、前記グリーンシート積層体において直交する境界面21,21の交点付近ごとに穿孔した比較的細径の貫通孔に、負圧を利用して前記導体含有ペーストを吸引し、円筒形状の接続導体を形成した後、焼成後の前記個片化において軸方向に沿って4分割されたものである。
尚、放熱ビア導体10の表面8と、例えば、互いに隣接する一対の凹形導体7とは、基板本体2の表面3に形成された図示しない配線により接続され、表面パッド22と、上記とは別の一対の凹形導体7とは、基板本体2の表面3に形成された図示しない別の配線により接続されている。
更に、放熱ビア導体10の表面8上に実装された発光ダイオード24は、基板本体2の表面上に、追ってドーム形状にして形成される図示しない光透過性の封止樹脂によって外部から封止される。また、各凹形導体7は、予め前記グリーンシートG2,G3間に形成された配線層と接続させても良い。
【0024】
以上のような各工程を経るセラミック基板1の製造方法によれば、複数のグリーンシートG1〜G3を積層したグリーンシート成形体2aの裏面4にシート材20を被覆してシート材付き成形体S1を用意し、該成形体S1の表面3と裏面4側との間を貫通する比較的大径の異径ビアホール12,13が形成され、該ビアホール12,13内に導体含有ペースト10aを充填して、上記シート材20を剥離した後、該シート材20が剥離されたグリーンシート成形体2aの裏面4において、該裏面4から突出する導体含有ペースト10aの突出部11を覆って裏面パッド(表面導体層)18を形成する工程が行われている。
しかも、前記シート材20の剥離後に、グリーンシート成形体2aの裏面4側から突出する突出部11の厚みt1および該厚みt1を規定する上記シート材20の厚みt1は、異径ビアホール12,13に充填された導体含有ペースト10aの自然乾燥後における裏面9の凹み9hと表面8の凹み8hとの合計値以上である。その結果、上記突出部11を覆って裏面パッド18を印刷形成する際に、該突出部11と凹み8h,9hとは解消され、導体含有ペースト10aと裏面パッド18とは、全面で接触し且つ表面8と裏面9との間に空隙が生じていない。
【0025】
従って、前記グリーンシート成形体2aを焼成し且つ個片化して得られたセラミック基板1は、基板本体2の表面3と裏面4との間を貫通する比較的大径の放熱ビア導体10の内部や放熱ビア導体10と裏面パッド18との接続部には、空隙がなくなるため、放熱ビア導体10の表面8に実装される発光ダイオード24などが発する多量の熱を効果的に基板本体2の裏面4側に伝達できると共に、上記発光ダイオード24と外部との電気的導通も安定して取ることが可能となる
。
【0026】
図12〜16は、異なる形態のセラミック基板(1a)を得るための製造工程に関する。
先ず、
図12に示すように、厚みが約150μmで且つ前記同様の材料からなり、複数の製品領域Aを併有する多数個取り用のグリーンシートGにおいて、製品領域Aごとにおける単数のグリーンシートGを、その表面3および裏面4を有するグリーンシート成形体2aとし、その裏面4に前記同様のシート材20を被覆することにより、シート材付き成形体S2とした(シート材付き成形体を準備する工程)。
次いで、
図12に示すように、製品領域Aごとにおけるシート材付き成形体S2の中心部付近に対し、前記同様の打ち抜き加工を行って、内径が約1mmと比較的大径のビアホール12を形成した(ビアホールを形成する工程)。
【0027】
次に、
図13に示すように、前記ビアホール12内に前記同様の導体含有ペースト10aを何れか一方の開口部から充填した(導体含有ペーストを充填する工程)。この際、導体含有ペースト10aの表面8は、グリーンシート成形体2aの表面3と面一となり、且つ該導体含有ペースト10aの裏面9は、シート材20の裏面と面一となった。この状態で、充填された導体含有ペースト10aに対し前記同様の自然乾燥を施した。その結果、
図14に示すように、導体含有ペースト10aの表面8,裏面9には、前記同様の球面状の凹み8h,9hが生じた。
更に、グリーンシート成形体2aの裏面4から、前記シート材20を剥離した(シート材を剥離する工程)。その結果、
図15に示すように、製品領域ごとにおけるグリーンシート成形体2aの裏面4の中央部には、全体がほぼクレーター状を呈する導体含有ペースト10aの突出部11が出現した。
上記突出部11の周辺部における厚みt1は、前記シート材20の厚みt1と同じであり、該突出部11の中心部(最深部)での深さd2は、上記厚みt1の半分以下であった。更に、該深さd2に対し、更に導体含有ペースト10aの表面8に位置する凹み8hの中心部(最深部)での深さd2を加えても、上記突出部11あるいはシート材20の厚みt1以下であった。
【0028】
更に、
前記同様の押圧工程を行った後、図16に示すように、前記同様の方法により、導体含有ペースト10aの突出部11を覆うように、グリーンシート成形体2aの裏面4の中央部に対し、前記導体含有ペースト16を印刷して、底面視が円形で且つ薄膜状の裏面パッド(表面導体層)18を形成した(表面導体層を形成する工程)。かかる工程において、前記突出部11、および前記凹み8h,9hは、前記同様にして消滅すると共に、平坦な裏面パッド18が得られた。
これ以降は、前記同様の脱バインダおよび焼成工程と、個片化工程とを施した。その結果、
図16に示すように、製品領域Aごとにおいて、グリーンシートGが焼成されたセラミック層Cからなり、表面3および裏面4を有する基板本体2、導体含有ペースト10aが焼成され且つ内部に空隙がない円柱形の放熱ビア導体10、および焼成された前記裏面パッド18を備えたセラミック基板(1a)が得られた。これによっても、放熱ビア導体10の表面8に実装される発光ダイオード24が発する熱を効果的に基板本体2の裏面4側に伝達できると共に、上記発光ダイオード24と外部との電気的導通も安定して取ることが可能となる。
【0029】
図17〜
図21は、更に異なる形態のセラミック基板(1b)を得るための製造工程に関する。
先ず、
図17に示すように、前記同様の材料および厚みからなり、複数の製品領域Aを併有する多数個取り用のグリーンシートGにおいて、製品領域Aごとにおける単数のグリーンシートGを、その表面3および裏面4を有するグリーンシート成形体2aとし、その表面3および裏面4に厚み(t2)が約10〜20μmと比較的薄いシート材20a,20bを個別に被覆して、シート材付き成形体S3を準備した(シート材付き成形体を準備する工程)。
次いで、
図17に示すように、製品領域Aごとにおけるシート材付き成形体S3の中心部付近に対し、前記同様の打ち抜き加工を行って、前記同様のビアホール12を形成した(ビアホールを形成する工程)。
【0030】
次に、
図18に示すように、前記ビアホール12内に前記同様の導体含有ペースト10aを何れか一方の開口部から充填した(導体含有ペーストを充填する工程)。この際、導体含有ペースト10aの表面8は、グリーンシート成形体2aの表面3と面一となり、且つ該導体含有ペースト10aの裏面9は、シート材20の裏面と面一となった。この状態で、充填された導体含有ペースト10aに対し前記同様の自然乾燥を施した。その結果、
図19に示すように、導体含有ペースト10aの表面8,裏面9には、前記同様の球面状の凹み8h,9hが生じた。
更に、グリーンシート成形体2aの表・裏面3,4から、シート材20a,20bをそれぞれ剥離した(シート材を剥離する工程)。その結果、
図20に示すように、製品領域Aごとにおけるグリーンシート成形体2aの表面3および裏面4の中央部には、導体含有ペースト10aからなるクレーター状の一対の突出部11が上下対称に出現した。
【0031】
前記突出部11ごとの周辺部における厚みt2は、前記シート材20a,20bの厚みt2と同じであり、該突出部11ごとの中心部(最深部)での深さd2は、上記厚みt2以下であった。更に、2つの該深さd2を合計しても、上下2つの突出部11(シート材20)の厚みt2の合計値(2×t2)以下であった。
更に、
前記同様の押圧工程を行った後、図21に示すように、前記同様の方法により、導体含有ペースト10aにおける裏面4側の突出部11を覆うように、グリーンシート成形体2aの裏面4の中央部に対し、前記導体含有ペースト16を印刷して、底面視が円形で且つ薄膜状の裏面パッド(表面導体層)18を形成した(表面導体層を形成する工程)。かかる工程において、前記2つの突出部11、および前記凹み8h,9hは、消滅すると共に、平坦な裏面パッド18が得られた。
【0032】
これ以降は、前記同様の脱バインダおよび焼成工程と、個片化工程とを施した。その結果、
図21に示すように、製品領域Aごとにおいて、前記グリーンシートGが焼成されたセラミック層Cからなり、表面3および裏面4を有する基板本体2、導体含有ペースト10aが焼成され且つ内部に空隙がない円柱形の放熱ビア導体10、および焼成された前記裏面パッド18を備えたセラミック基板(1b)が得られた。これによっても、放熱ビア導体10の表面8に実装される発光ダイオード24が発する熱を効果的に基板本体2の裏面4側に伝達できると共に、上記発光ダイオード24と外部との電気的導通も安定して取ることが可能となる。
尚、導体含有ペースト10aにおける表面3側の突出部11を覆うように、グリーンシート成形体2aの表面3の中央部に対しても、前記同様の導体含有ペースト16を印刷して、比較的小径の表面パッド(表面導体層)を形成しても良い。この場合、前記発光ダイオード24は、該表面パッドの上に実装される。
【0033】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記セラミック基板1を製造する工程においても、グリーンシート成形体2aの表・裏面3,4に比較的薄いシート材20a,20bを個別に被覆して、前記同様のシート材付き成形体S3とし、これを貫通する異径ビアホール12,13内に充填した導体含有ペースト10aの両面に、凹み8,9を含む表面8,9を有する上下一対の突出部11を形成しても良い。
また、前記セラミック基板1,1aを製造する工程においても、グリーンシート成形体2aの表面3側に表面パッドを形成するようにしても良い。
更に、前記グリーンシートG,G1〜G3は、アルミナ以外の高温焼成セラミックとなるセラミック材料としたり、低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックとなるセラミック材料としても良い。尚、前記グリーンシートG,G1〜G3が低温焼成セラミックである場合、導体含有ペースト10aにはAgやCuなどの導体粉末、バインダ樹脂、および溶剤などからなるものが適用される。
【0034】
また、前記グリーンシート成形体は、2層のグリーンシートを積層した形態や4層以上のグリーンシートを積層した形態としても良く、これらの裏面4のみに前記シート材20を被覆したシート材付き成形体としたり、表・裏面3,4に前記シート材20a,20bを個別に被覆したシート材付き成形体としても良い。
更に、前記グリーンシート成形体は、前記表面3を有する最上層のグリーンシートG3や単層のグリーンシートGの表面3上に、中心部側に円柱形や円錐形状などの貫通孔を有する別のグリーンシートを積層して、前記放熱ビア導体10の表面8や、その上を覆って形成した表面パッドを底面に含むキャビティを有する形態としても良い。
また、前記ビアホール12や異径ビアホール12,13を、同じ製品領域A内に複数個形成し、それぞれに導体含有ペースト10aを形成して、複数の放熱ビア導体を併有するセラミック基板とすることも可能である。
【0035】
更に、前記ビアホールは、グリーンシート成形体2aの表面3と裏面4との間を該表面3側が小径で且つ裏面4側が大径となる円錐形状とし、これと相似形の放熱ビア導体を形成することも可能である。あるいは、断面が正方形状で且つ一辺の長さが1mm以上や長方形状で短辺の長さが1mm以上のビアホールを形成することによって、これらと相似形の断面を有する放熱ビア導体を形成することも可能である。この際、断面がそれぞれ矩形状で互いに一辺または各辺の寸法が互いに異なる複数のビアホールを同心で連通させて、異形ビアホールを形成しても良い。
また、前記シート材は、PET以外の樹脂フィルムからなり、所要の強度、柔軟性、および適度の剥離性を有するものとしても良い。
更に、前記放熱ビア10の表面8上やその上に形成される表面パッドの上には、前記発光ダイオード24に限らず、半導体レーザやパワー半導体素子を実装することも可能である。
加えて、本発明は、前述した多数個取りの形態に限らず、1個のセラミック基板を単独に製造する方法にも適用することが可能である。