特許第6147984号(P6147984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147984
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電子キー登録システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20170607BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20170607BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
   B60R25/24
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-225170(P2012-225170)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-77281(P2014-77281A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】名和 佑記
(72)【発明者】
【氏名】河村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩下 明暁
【審査官】 古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−036659(JP,A)
【文献】 特開平08−150898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
B60R 25/24
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象の制御装置に電子キーID及び暗号鍵を関連付けて書き込むことにより、前記通信対象及び電子キーを暗号通信可能として、当該電子キーを前記通信対象のキーとする電子キー登録システムにおいて、
前記通信対象に載せ替えられた交換後制御装置を登録モードに移行させる登録ツールと、
交換前制御装置に登録された電子キーにより、前記通信対象が機械的に操作されたことを検出するイグニッション状態監視部と、
前記機械的な操作を検出すると、前記電子キーIDと、前記電子キーに登録済みの前記交換前制御装置のIDである交換前制御装置IDとを取り込み、当該電子キーIDの正当性を認証し、前記交換前制御装置IDのID照合が成立すれば、電子キー登録の動作を許可するセンターのID照合部
を備えたことを特徴とする電子キー登録システム。
【請求項2】
前記機械的な操作は、前記電子キーに設けられたキープレートで、前記通信対象に配設されたキーシリンダを回す操作である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キー登録システム。
【請求項3】
前記ID照合部は、前記電子キーによる機械的な操作を検出すると、前記電子キーから前記交換前制御装置ID及び電子キーIDを取り込み、前記交換後制御装置からIDを取り込み、
前記ID照合は、前記交換前制御装置ID及び前記電子キーIDの組み合わせの正当性を検証する照合である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キー登録システム。
【請求項4】
前記交換後制御装置は、前記電子キーによる機械的な操作を検出すると、少なくとも前記交換前制御装置IDを有するID情報を、キー登録時に使用する端末である前記登録ツールを通じて前記センターの前記ID照合部に送信し、
前記センターの前記ID照合部は、前記登録ツールから受信した前記ID情報を基に、前記ID照合を実行する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キー登録システム。
【請求項5】
前記交換後制御装置及び前記センターの制御装置データベースは、これら両者の間で対応付けられたキー登録用の暗号鍵の一種である制御装置センター鍵を各々備え、
前記センターの暗号処理部は、前記ID照合が成立することを確認すると、前記電子キーID、前記暗号鍵及び前記交換後制御装置のIDである交換後制御装置IDのうち少なくとも1つを有する情報を、前記制御装置センター鍵で暗号化することにより登録コードを生成し、前記センターの登録コード送信部は、当該登録コードを前記登録ツールに送信し、
前記交換後制御装置は、前記登録ツールを通じて前記登録コードを取得し、当該登録コードを自身の前記制御装置センター鍵に通して復号し、この復号を正しく実行できれば、前記電子キーID及び前記暗号鍵を自身に登録する
ことを特徴とする請求項4に記載の電子キー登録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーをその通信対象に登録する電子キー登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から周知のように、多くの車両では、電子キーから無線送信される電子キーIDにてキー照合を行う電子キーシステムが搭載されている。この種の電子キーシステムでは、使用する電子キーを車両に登録する必要があり、この場合、電子キーのキーIDや暗号鍵を、車両において電子キーシステムの動作を管理する制御装置(ECU(Electronic Control Unit)など)に予め登録しておくことが必要となる。この電子キー登録システムとしては、例えば特許文献1〜3などに具体例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−61328号公報
【特許文献2】特開2003−148018号公報
【特許文献3】特開2004−107959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子キー登録システムとしては、例えば登録ツールを使用して、電子キーIDを車両のECUに書き込むことにより、電子キー登録を行うシステムが検討されている。ところで、車両の制御装置は故障等したとき、別の新しい制御装置に交換する必要が生じるので、このときも電子キー登録システムを使用してキー登録を行うことになる。しかし、このシステムの場合、登録に必要な新規ECU、新規電子キー及び登録ツールが揃えば、誰でも車両に電子キーを登録できてしまう問題があった。このため、仮に登録ツールが盗難されてしまうと、これが電子キーの不正登録に繋がるリスクがあった。
【0005】
本発明の目的は、電子キー登録のセキュリティ性を確保することができる電子キー登録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信対象の制御装置に電子キーID及び暗号鍵を関連付けて書き込むことにより、前記通信対象及び電子キーを暗号通信可能として、当該電子キーを前記通信対象のキーとする電子キー登録システムにおいて、前記通信対象に載せ替えられた交換後制御装置を登録モードに移行させる登録ツールと、交換前制御装置に登録された電子キーにより、前記通信対象が機械的に操作されたことを検出するイグニッション状態監視部と、前記機械的な操作を検出すると、前記電子キーIDと、前記電子キーに登録済みの前記交換前制御装置のIDである交換前制御装置IDとを取り込み、当該電子キーIDの正当性を認証し、前記交換前制御装置IDのID照合が成立すれば、電子キー登録の動作を許可するセンターのID照合部とを備えたことを要旨とする。
【0007】
本発明の構成によれば、交換した制御装置に電子キーを登録するには、交換後制御装置を電子キーの登録モードとし、交換前制御装置のときに使用していた電子キーによって、通信対象を機械的操作する。このとき、電子キーに登録済みの電子キーID及び交換前制御装置IDを読み出し、この電子キーIDの正当性を確認するID照合を行い、ID照合が成立すれば電子キー登録を許可する。このため、交換後制御装置には交換前制御装置に登録されていた電子キーしか登録することができないので、電子キー登録に制限がかかることになる。よって、電子キー登録のセキュリティ性を確保することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記機械的な操作は、前記電子キーに設けられたキープレートで、前記通信対象に配設されたキーシリンダを回す操作であることを要旨とする。この構成によれば、交換後制御装置へ電子キーを登録するのに必要な操作が、電子キーのキープレートをキーシリンダに挿し込んで回す操作となるので、電子キーの登録作業が分かり易い。
【0009】
本発明では、前記ID照合部は、前記電子キーによる機械的な操作を検出すると、前記電子キーから前記交換前制御装置ID及び電子キーIDを取り込み、前記交換後制御装置からIDを取り込み、前記ID照合は、前記交換前制御装置ID及び前記電子キーIDの組み合わせの正当性を検証する照合であることを要旨とする。この構成によれば、ID照合において交換前制御装置ID及び電子キーIDの組み合わせの正否を検証するので、いま登録しようとしている電子キーの正当性を精度よく照合することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記交換後制御装置は、前記電子キーによる機械的な操作を検出すると、少なくとも前記交換前制御装置IDを有するID情報を、キー登録時に使用する端末である前記登録ツールを通じて前記センターの前記ID照合部に送信し、前記センターの前記ID照合部は、前記登録ツールから受信した前記ID情報を基に、前記ID照合を実行することを要旨とする。この構成によれば、ID照合をセンターのID照合部で行うようにしたので、ID照合を精度よく実行することが可能となる。
【0011】
本発明では、前記交換後制御装置及び前記センターの制御装置データベースは、これら両者の間で対応付けられたキー登録用の暗号鍵の一種である制御装置センター鍵を各々備え、前記センターの暗号処理部は、前記ID照合が成立することを確認すると、前記電子キーID、前記暗号鍵及び前記交換後制御装置のIDである交換後制御装置IDのうち少なくとも1つを有する情報を、前記制御装置センター鍵で暗号化することにより登録コードを生成し、前記センターの登録コード送信部は、当該登録コードを前記登録ツールに送信し、前記交換後制御装置は、前記登録ツールを通じて前記登録コードを取得し、当該登録コードを自身の前記制御装置センター鍵に通して復号し、この復号を正しく実行できれば、前記電子キーID及び前記暗号鍵を自身に登録することを要旨とする。この構成によれば、電子キー登録に必要な情報をセンターの登録コード送信部から登録ツールに送信する際、この情報をセンターの暗号処理部で暗号化することにより生成した登録コードとして送信するので、電子キー登録に必要な情報が第三者によって不正取得される可能性が低くなる。よって、電子キー登録のセキュリティ性確保に一層寄与する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子キー登録のセキュリティ性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の電子キーシステムの構成図。
図2】電子キーのID照合時に通信シーケンス図。
図3】電子キー登録システムの初回登録の概念図。
図4】電子キー登録システムの追加登録の概念図。
図5】ECU交換後の電子キー登録機能の概念図。
図6】電子キー登録の具体的な流れを示すフローチャート。
図7】交換後ECUへのキー登録完了後の状態図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体化した電子キー登録システムの一実施形態を図1図7に従って説明する。
[電子キーシステム]
図1に示すように、車両1には、電子キー2の正当性を無線通信により行う電子キーシステム3が設けられている。電子キーシステム3には、例えば車両1からの通信を契機に、狭域無線(通信距離:数m)によって電子キー2のID(電子キーID)をID照合(スマート照合)するキー操作フリーシステムがある。また、電子キーシステム3には、近距離無線によって電子キーIDをID照合(近距離無線照合)する近距離無線認証システムがある。なお、車両1が通信対象に相当する。
【0015】
車両1には、電子キー2の正当性を認証する照合ECU4と、車載電装品の電源を管理するボディECU5と、エンジン7を制御するエンジンECU6とが設けられ、これらが車内のバス8を通じて接続されている。照合ECU4のメモリ9には、電子キーID、ID照合時に行うチャレンジレスポンス認証で使用するキー認証暗号鍵、車両1の固有IDである車載器ID(ビークルID)等が書き込み保存されている。電子キーID及びキー認証暗号鍵の組は、登録されるキー数に応じて複数登録可能である。照合ECU4には、LF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車両送信機10と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両受信機11と、LF電波の双方向による近距離無線通信が可能な通信アンテナ12とが接続されている。なお、照合ECU4が制御装置に相当する。
【0016】
電子キー2には、電子キー2の動作を管理するキー制御部13が設けられている。キー制御部13のメモリ14には、電子キーID、キー認証暗号鍵、車載器ID等が書き込み保存されている。キー制御部13には、LF電波を受信可能な受信部15と、UHF電波を送信可能な送信部16と、近距離無線通信用の通信アンテナ17とが接続されている。
【0017】
図2に示すように、車両駐停車時、車外の車両送信機10は、車外にLFのウェイク信号Swkを断続的に送信して、車外スマート通信を実行する。電子キー2は、ウェイク信号Swkを受信すると起動し、アック信号Sack1を車両1にUHF送信する。照合ECU4は、アック信号Sack1を車両受信機11で受信すると、車載器ID信号SviをLF送信し、電子キー2に車載器ID照合を実行させる。電子キー2は、車載器ID照合が成立すれば、アック信号Sack2を車両1にUHF送信する。
【0018】
続いて、照合ECU4は、チャレンジレスポンス認証を実行するために、チャレンジ信号Schを電子キー2にLF送信する。チャレンジ信号Schには、送信の度にコードが毎回異なるチャレンジコードと、車両1の何番目の登録キーかを表すキー番号とが含まれている。電子キー2は、チャレンジ信号Schを受信すると、まずキー番号照合を行い、キー番号照合が成立すれば、チャレンジコードを自身のキー認証暗号鍵に通してレスポンスコードを生成する。電子キー2は、このレスポンスコードと自身の電子キーIDとを含むレスポンス信号Srsを車両1にUHF送信する。照合ECU4は、レスポンス信号Srsを車両受信機11で受信すると、自身も同様に演算したレスポンスコードと、電子キー2が演算したレスポンスコードとを比較することにより、レスポンス照合を行う。また、照合ECU4は、電子キー2から受信した電子キーIDを確認する電子キーID照合も行う。照合ECU4は、両照合が成立したことを確認すると、スマート照合(車外スマート照合)を成立とし、ボディECU5によるドアロック施解錠を許可又は実行する。
【0019】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ(図示略)等により検出されると、今度は車内の車両送信機10が車内にウェイク信号Swkの送信を開始する。このとき、電子キー2が車内においてウェイク信号Swkを受信すると、車内スマート照合が実行される。そして、車内スマート照合が成立すると、エンジンスイッチ18の操作による車両1の電源遷移操作(エンジン始動操作)が許可される。
【0020】
近距離無線認証システムは、車両1から送信される電力電波を電子キー2の電源とするシステムであり、電子キー2を電源レスで動作させることが可能である。近距離無線には、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)やNFC(Near Field Communication)等の規格が使用されている。例えば、車内で近距離無線照合が成立すれば、エンジンスイッチ18の操作による車両1の電源遷移操作(エンジン始動操作)が許可される。
【0021】
[電子キー登録システム]
図3及び図4に示すように、電子キー2を車両1に登録する電子キー登録システム19は、車両1、電子キー2、登録ツール20及びセンター21の4者により構築される。本例の電子キー登録システム19は、登録ツール20をセンター21にネットワーク接続してキー登録を行うオンライン登録方式をとる。なお、本例の電子キー登録システム19は、車両1に始めて電子キー2を登録する初回登録でもよいし、車両1にサブキーを登録する追加登録のどちらでもよい。
【0022】
照合ECU4及びキー制御部13には、電子キー登録の動作を実行する登録機能部22,23が各々設けられている。照合ECU4のメモリ9には、電子キー登録時に照合ECU4及びセンター21の間で使用する車載器センター鍵が書き込み保存されている。車載器センター鍵は、照合ECU4とセンター21との間で対応付けられた暗号鍵の一種であって、照合ECU4のそれぞれに割り振られる。車載器センター鍵は、例えばAES(Advanced Encryption Standard)暗号に準拠した暗号鍵である。
【0023】
登録ツール20には、登録ツール20の動作を制御するツール制御部24と、例えばテンキー等の各種ボタンからなる操作部25と、各種画面やメッセージを表示する表示部26と、ネットワーク通信が可能な通信部27とが設けられている。ネットワーク通信は、例えば汎用のインターネット通信が使用される。登録ツール20は、例えば通信ケーブル28を通じて有線により車両1(照合ECU4)と接続される。
【0024】
センター21には、各車両1(照合ECU4)に登録された車載器ID、車載器センター鍵、電子キーID及びキー認証暗号鍵を管理する車載器データベース29が設けられている。センター21には、各電子キー2に登録された電子キーID、キー認証暗号鍵及びSEEDコードを管理する電子キーデータベース30が設けられている。SEEDコードは、センター21においてキー認証暗号鍵を、対応する車載器センター鍵に通すことより作成される鍵の一種である。
【0025】
[電子キーの初回登録]
図3に示すように、電子キー2aの初回登録は、例えば工場等で行われる作業であり、登録ツール20をセンター21にリアルタイムでネットワーク接続せず、車両1、電子キー2a及び登録ツール20の3者のみで実行する。この場合、登録対象となる電子キー2aには、SEEDコード「SC−1」が予め書き込み保存されている。また、車両1及び電子キー2の各々には、キー認証暗号鍵の生成に必要な鍵生成ロジックfが書き込み保存されている。電子キー2aは、SEEDコード「SC−1」を自身の鍵生成ロジックfに通すことによりキー認証暗号鍵「鍵−1」を生成し、これをメモリ14に書き込み保存する。
【0026】
照合ECU4は、登録ツール20から初回登録開始トリガを入力すると、例えば近距離無線通信システムの通信インフラを通じて、電子キー2aから電子キーID「ID−1」及びSEEDコード「SC−1」を取得する。照合ECU4は、電子キー2aから取得した電子キーID「ID−1」をメモリ9に書き込み保存する。また、照合ECU4は、電子キー2aから取得したSEEDコード「SC−1」を、車両1の鍵生成ロジックfに通すことにより暗号鍵「鍵−1」を生成し、これをメモリ9に書き込み保存する。電子キー2aのSEEDコード「SC−1」は、車両1に送信された後、メモリ14から消去される。電子キー2aの車載器IDは、予め書き込まれていてもよいし、登録の過程で車両1から通知されて登録されてもよい。電子キー2aの初回登録が完了すると、初期登録フラグが「受入」→「拒否」に換わり、初回登録が不可となる。
【0027】
初回登録の完了後、センター21で管理されている車載器データベース29及び電子キーデータベース30を更新する必要がある。初回登録の場合、登録ツール20はセンター21とリアルタイム接続されていないので、初回登録完了後、あるタイミングで登録ツール20をセンター21に接続して、車載器データベース29及び電子キーデータベース30を更新する。
【0028】
[電子キーの追加登録]
図4に示すように、電子キー2bの追加登録は、例えばディーラ等で行われる作業であり、車両1、電子キー2b、登録ツール20及びセンター21の4者が協同して実行する。照合ECU4は、登録ツール20から追加登録開始トリガを入力すると、例えば近距離無線通信システムの通信インフラを通じて、電子キー2bから電子キーID「ID−2」を取得し、これをメモリ9に書き込んで保存する。
【0029】
また、登録ツール20は、ネットワーク通信を通じてセンター21にSEED作成要求を送信し、いま登録対象となっている電子キー2bのSEEDコードをセンター21に作成させる。センター21は、車載器データベース29を参照して、SEED作成要求から使用すべき車載器センター鍵→「鍵−A」を割り出し、いま登録対象となっている電子キー2bの暗号鍵「鍵−2」を「鍵−A」に通すことにより、SEEDコード「SC−A2」を作成する。センター21は、作成したSEEDコード「SC−A2」を、ネットワーク通信を通じて登録ツール20に送信する。登録ツール20は、センター21から受信したSEEDコード「SC−A2」を車両1に転送する。照合ECU4は、センター21から取得したSEEDコード「SC−A2」を、自身の車載器センター鍵「鍵−A」に通して復号することのより暗号鍵「鍵−2」を生成し、これをメモリ9に書き込んで保存する。電子キー2bの車載器IDは、予め書き込まれていてもよいし、登録の過程で車両1から通知されて登録されてもよい。
【0030】
センター21は、登録ツール20からSEED作成要求を取得した際、いま追加登録されようとしている電子キー2bの電子キーIDが分かるので、追加登録される電子キー2b電子キーID「ID−2」を車載器データベース29に反映する。また、センター21は、登録ツール20へのSEEDコード「SC−A2」の送付後、追加登録される電子キー2bの暗号鍵「鍵−2」を車載器データベース29に反映する。
【0031】
[ECU交換後の電子キー登録機能]
図5に示すように、電子キー登録システム19は、例えば故障した照合ECU(以降、交換前ECU31と記す)を新規のECU(以降、交換後ECU32と記す)に変更したとき、交換後ECU32に対しても電子キー登録が可能である。電子キー2は、ECU交換前に使用していたキーをECU交換後も続けて使用する。交換後ECU32のメモリ33には、交換後ECU32を識別する固有IDとして交換後車載器IDが書き込み保存されている。なお、交換前ECU31が交換前制御装置に相当し、交換後ECU32が交換後制御装置に相当し、交換後車載器IDが交換後制御装置IDに相当する。
【0032】
ツール制御部24には、登録ツール20に電子キー登録開始トリガが入力されたとき、電子キー登録開始コマンドを車両1に出力する登録開始コマンド出力部34と、照合ECU4及びセンター21の間のデータの受け渡しを実行するデータ転送部35とが設けられている。交換後ECU32には、登録ツール20から入力する各種命令に基づき照合ECU4の電子キー登録に関するモードを切り替えるモード切替部36が設けられている。モード切替部36は、登録ツール20から電子キー登録開始コマンドを入力すると、交換後ECU32の動作モードを登録モードに切り替える。
【0033】
電子キー2のメモリ14には、電子キーID及びキー認証暗号鍵の他に、交換前ECU31のID(交換前車載器ID)が書き込み保存されている。キー制御部13には、交換後ECU32からの命令に基づき、自身のメモリ14に書き込み保存された各種ID(電子キーID、交換前車載器ID)を交換後ECU32に通知するID通知部37が設けられている。なお、交換前車載器IDが交換前制御装置IDに相当する。
【0034】
交換後ECU32には、登録モード下において車両1のイグニッションスイッチ38のスイッチ状態を監視するイグニッション状態監視部39と、登録モード下でイグニッションスイッチ38がオンになったとき、電子キー2から各種ID(電子キーID、交換前車載器ID)を取得するID取得部40と、交換後ECU32において収集したID群を、ID情報Didとして登録ツール20を通じてセンター21に転送するID情報送信部41とが設けられている。イグニッションスイッチ38は、電子キー2に配設されたキープレート42により回転操作されるキーシリンダ43の回転位置を検出し、キーシリンダ43がイグニッションオン位置に操作されると、イグニッションオン信号を交換後ECU32に出力する。ID情報Didは、例えば電子キーID、交換前車載器ID及び交換後車載器IDを有する情報である。
【0035】
センター21には、登録ツール20から受信したID情報Didを基にID照合を実行するID照合部44と、車載器センター鍵での暗号化により登録コードDcdを作成する暗号処理部45と、登録コードDcdを登録ツール20にネットワーク送信する登録コード送信部46とが設けられている。暗号処理部45は、例えば電子キーID、キー認証暗号鍵及び交換後車載器IDを車載器センター鍵に通すことにより登録コードDcdを作成する。即ち、登録コードDcdは、交換後ECU32に通知すべきデータを、車載器センター鍵で暗号化した情報である。
【0036】
交換後ECU32には、センター21から受信した登録コードDcdを、自身に登録された車載器センター鍵により復号する復号処理部47と、復号後のデータの正当性を検証する復号後ID検証部48と、その検証結果が正しければ電子キー登録を実行するID登録部49とが設けられている。
【0037】
次に、本例のECU交換後の電子キー登録の動作を、図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、ステップ101において、サービスマンは、登録ツール20を操作して、登録ツール20に電子キー登録開始トリガを入力する。登録開始コマンド出力部34は、登録ツール20において電子キー登録開始トリガを入力すると、通信ケーブル28を通じて電子キー登録開始コマンドを交換後ECU32に出力する。
【0038】
ステップ102において、モード切替部36は、電子キー登録開始コマンドに基づき、交換後ECU32の動作モードを登録モードに切り替える。よって、交換後ECU32は、電子キー登録が可能な状態に入る。また、イグニッション状態監視部39は、起動を開始し、イグニッションスイッチ38のスイッチ状態を監視する。なお、ステップ101,102が登録モード移行ステップに相当する。
【0039】
ステップ103において、サービスマンは、電子キー2のキープレート42をキーシリンダ43に挿し込み、キーシリンダ43をイグニッションオン位置に回転操作する。このとき、イグニッションスイッチ38は、イグニッションオン信号を交換後ECU32に出力する。
【0040】
ステップ104において、ID取得部40は、イグニッション状態監視部39の監視結果を基に、キーシリンダ43がイグニッションオン操作されたことを検出する。なお、ステップ103,104が機械的操作検出ステップに相当する。
【0041】
ステップ105において、ID取得部40は、近距離無線通信システムの通信インフラを通じて、ID取得要求を電子キー2にLF送信する。
ステップ106において、ID通知部37は、車両1からID取得要求を受信すると、ID通知信号を車両1にLF送信する。ID通知信号は、電子キー2に書き込まれた電子キーID、交換前車載器ID、コマンド等を有する信号である。
【0042】
ステップ107において、ID情報送信部41は、電子キー2からID通知信号を受信すると、電子キーID、交換前車載器ID及び交換後車載器IDを有するID情報Didを生成し、このID情報Didを、通信ケーブル28を通じて登録ツール20に出力する。
【0043】
ステップ108において、データ転送部35は、車両1から入力したID情報Didを、ネットワーク通信を通じてセンター21に送信する。
ステップ109において、ID照合部44は、ID情報Didを基にID照合を実行する。このとき、ID照合部44は、車載器データベース29を参照して、受信した電子キーIDが、交換前車載器に登録されている電子キーか否かを検証する。そして、電子キーIDが登録されていた電子キーのIDであれば、登録を許可し、電子キーIDが登録されていた電子キーのIDでなければ、登録を不可とする。
【0044】
ステップ110において、暗号処理部45は、電子キー登録が許可されたとき、電子キーID、キー認証暗号鍵及び交換後車載器IDを、対応する車載器センター鍵に通すことにより、登録コードDcdを作成する。なお、ステップ105〜110が照合ステップに相当する。
【0045】
ステップ111において、登録コード送信部46は、センター21で作成した登録コードDcdを、ネットワーク通信を通じて登録ツール20に送信する。
ステップ112において、データ転送部35は、センター21から受信した登録コードDcdを、通信ケーブル28を通じて車両1に出力する。
【0046】
ステップ113において、復号処理部47は、登録ツール20から入力した登録コードDcdを、交換後ECU32に登録された車載器センター鍵で復号する。このとき、交換後ECU32の車載器センター鍵が正規鍵であれば、登録コードDcdは正常に復号される。
【0047】
ステップ114において、復号後ID検証部48は、復号後の登録コードDcdに含まれる交換後車載器IDの正否を検証する。このとき、復号後ID検証部48は、復号後の登録コードDcdに含まれる交換後車載器IDが、交換後ECU32に登録された交換後車載器IDと一致すれば検証を成立として、キー登録動作を継続する。一方、復号後ID検証部48は、これらIDが一致しなければ検証を不成立とし、キー登録動作を強制終了する。なお、交換後ECU32は、復号後に行う検証が成立したとき、自身のIDである交換後車載器IDを、近距離無線通信システムのインフラを通じて、電子キー2に通知する。なお、ステップ111〜114が登録許可ステップに相当する。
【0048】
ステップ115において、ID登録部49は、交換後車載器IDの検証が成立するとき、復号後の登録コードDcdに含まれる電子キーID及びキー認証暗号鍵を、交換後ECU32のメモリ33に書き込み保存する。これにより、交換後ECU32のキー登録の動作が完了する。
【0049】
ステップ116において、電子キー2は、車両1から受信した交換後車載器IDを、自身のメモリ14に上書き保存する。これにより、電子キー2のキー登録の動作が完了する。
【0050】
図7に、交換後ECU32へのキー登録完了後の状態図を示す。同図からも分かるように、車載器ID「ID−B」の交換後ECU32は、登録キーとして電子キーID「ID−1」及び暗号鍵「鍵−1」の組が書き込み保存される。また、電子キー2は、車載器IDの欄に「ID−B」が上書きされる。さらに、車載器データベース29は、車載器ID「ID−B」の欄に、電子キーID「ID−1」及び暗号鍵「鍵−1」が書き込まれることにより、データが更新される。
【0051】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)交換後ECU32にキー登録を行うには、まず交換後ECU32を登録ツール20によって電子キー2の登録モードに切り替え、交換前ECU31のときに使用していた電子キー2を車両1のキーシリンダ43に挿し込んでオン位置に回動操作する。このとき、交換後ECU32は、電子キー2から電子キーID及び交換前車載器IDを無線により読み出し、ID情報Didとして、電子キーID、交換前車載器ID及び交換後車載器IDをセンター21に送信する。センター21は、登録ツール20から受信したID情報DidでID照合を行い、ID照合が成立すれば、電子キー登録を許可する。このため、交換後ECU32には交換前ECU31に登録されていた電子キー2しか登録することができないので、電子キー登録に制限をかけることができる。よって、電子キー登録のセキュリティ性を確保することができる。
【0052】
(2)キー登録動作時、電子キー2の交換前車載器IDを手入力ではなく、無線により自動で読み取るので、キー登録の制限を確実に行うことができる。
(3)キー登録時、キーシリンダ43を回すことができる電子キー2からのみ交換前車載器IDを読み取ることができないので、他車に登録済みの電子キー2はキー登録することができず、電子キー登録のセキュリティ性確保に一層寄与する。
【0053】
(4)交換後ECU32に電子キー2を登録するのに必要な操作が、電子キー2をキーシリンダ43に挿し込んでオン位置に回す操作としたので、作業者にとって電子キー2の登録作業が分かり易い。
【0054】
(5)センター21で行うID照合は、交換後車載器ID及び電子キーIDの組み合わせの正否を検証するので、いま登録しようとしている電子キー2の正当性を精度よく照合することができる。
【0055】
(6)ID情報DidのID照合をセンター21で行うようにしたので、高い検索機能を持つセンター21で照合を行うようにすれば、ID照合を精度よく行うことができる。
(7)センター21は、電子キー登録に必要な情報である交換後車載器ID、電子キーID及びキー認証暗号鍵を登録ツール20に送信する際、この情報を暗号化した登録コードDcdとして送信する。よって、電子キー登録に必要な情報が第三者によって不正取得される可能性が低くなり、これが電子キー登録のセキュリティ性確保に一層寄与する。
【0056】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・電子キーシステム3は、例えばワイヤレスキーシステム等の他のシステムに変更してもよい。ワイヤレスキーシステムは、例えば電子キー2からの通信を契機に狭域無線によりID照合を行うシステムである。
【0057】
・電子キー2の認証シーケンスは、例えば電子キー2から車載器ID、キー番号及びチャレンジレスポンスを一度に送信するなど、他の態様に適宜変更してもよい。
・電子キーID及びキー認証暗号鍵は、キー操作フリーシステム及び近距離無線通信システムで共用としてもよい。
【0058】
・電子キー登録時の車両1及び電子キー2の間の通信インフラは、有線としてもよい。
・電子キー登録時の車両1及び電子キー2の間の通信は、例えばキー操作フリーシステムの通信インフラを使用してもよい。また、この通信インフラは、キー操作フリーシステムや近距離無線通信システム以外の通信インフラとしてもよい。
【0059】
・車両1及び登録ツール20の間の通信は、無線としてもよい。
・サービスマンIDのセンター21への送信は、例えば車両1や電子キー2が実行してもよい。
【0060】
・ネットワーク通信は、インターネット通信に限らず、例えば電話通信網等の他の通信に変更可能である。
・登録モードへの移行は、例えば車両1を所定操作(車載部材の操作順、操作回数等)することにより切り替える態様をとってもよい。
【0061】
・キーシリンダ43の操作は、キーシリンダ43をIGオン位置まで回す操作に限らず、例えばACC位置など、他の位置への操作に変更してもよい。
・キーシリンダ43は、エンジン始動用として運転席に配設されたシリンダに限定されず、例えば車両ドア、ダッシュボード、コンソールボックス等に配設されたシリンダでもよい。
【0062】
・機械的操作は、電子キー2のキープレート42によるキーシリンダ43の回動操作に限定されず、作業者に電子キー2を用いた機械的な作業を課す態様であれば、他の形式に変更可能である。
【0063】
・ID照合は、交換後車載器IDを使用した照合であれば、種々の形式に変更可能である。
・ID照合は、センター21ではなく、例えば登録ツール20や交換後ECU32が行ってもよい。
【0064】
・登録ツール20は、自らが電子キー2に問い合せてして、電子キー2に書き込まれた交換前車載器IDを取得してもよい。
・センター21が登録ツール20に自ら問い合せて、電子キーID,交換前車載器ID及び交換後車載器ID等を取得するものでもよい。
【0065】
・キー認証暗号鍵は、チャレンジレスポンス認証用に限らず、2者間の暗号通信に使用される鍵であればよい。
・制御装置センター鍵は、車載器センター鍵に限らず、センター21と交換後ECU32との間で互いが所持し合う鍵であればよい。
【0066】
・制御装置は、照合ECU4に限定されず、電子キーIDの登録先となるコントロールユニットであればよい。
・登録ツール20は、車両1に1機能として組み込まれてもよい。
【0067】
・通信対象は、車両1に限定されず、他の装置や機器に変更可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0068】
(イ)電子キー登録システムにおいて、前記交換後制御装置は、前記電子キーによる機械的な操作を検出すると、前記電子キーから前記交換前制御装置ID及び電子キーIDを取り込むとともに、自身に登録された交換後制御装置IDを読み出し、これらIDを有する前記ID情報をセンターに送信し、前記センターは、前記ID情報内の前記交換前制御装置ID、前記電子キーID及び前記交換後制御装置IDを基に、前記ID照合を実行すること。この構成によれば、不正登録の防止に効果が高くなる。
【符号の説明】
【0069】
1…通信対象としての車両、2(2a,2b)…電子キー、4…制御装置としての照合ECU、19…電子キー登録システム、20…登録ツール、21…センター、31…交換前制御装置としての交換前ECU、32…交換後制御装置としての交換後ECU、42…キープレート、43…キーシリンダ、Did…ID情報、Dcd…登録コード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7